本発明方法を適用することができる被塗面としては、各種基材面及び該基材に塗膜が形成された塗装面が挙げられ、基材としては、例えば鉄、亜鉛、鉄/亜鉛合金、アルミニウム等の金属;木材、コンクリート、石膏ボード、スレート、サイディング材、磁器タイル壁面、軽量気泡コンクリート、モルタル、レンガ、石材、ガラス等の無機基材;プラスチック;皮革;繊維等を挙げることができる。上記被塗面は従来公知のシーラーを塗装したものであってもよく、その塗布量は、1回あたり30〜200g/m2、好ましくは50〜150g/m2に調整されることが望ましい。
本発明に用いられる水性多彩模様塗料(I)は、上記したごとき被塗面に直接塗装しても差し支えないが、予め下塗り塗料を塗装した後、形成される下塗り塗面上に該水性多彩模様塗料(I)を塗装してもよい。
上記下塗り塗料としては、被塗面の種類や状態、あるいは水性多彩模様塗料(I)の色相などに応じて適宜選択することができ、また、通常の上塗り塗料を水性多彩模様塗料(I)の下地形成用塗料として塗装することも可能である。
かかる多彩模様塗膜の下に設けられる下塗り塗料としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、生分解性樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる塗料を使用することが好ましい。形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
水性多彩模様塗料(I)
本発明方法に用いられる水性多彩模様塗料(I)は、着色塗料(a1)を粒状化してなる着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)を、着色塗料粒子(A)/塗膜形成成分(B)の固形分質量比で1/99〜60/40の範囲内で含む塗料である。
本発明における着色塗料粒子(A)としては、材料、製造方法など特に制限されるものではなく従来公知のものを使用できるが、例えば、水性樹脂並びに着色剤を含んでなる着色塗料(a1)を多糖類金属塩ゲル中に含有してなるものであることが好適である。
上記着色塗料(a1)に含まれる水性樹脂は、着色塗料粒子(A)の耐久性に貢献するものであり、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。その樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
上記水性樹脂は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、水性樹脂は、着色塗料粒子(A)の製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、例えばカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類及びアンモニア水等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
水性樹脂は、着色塗料粒子(A)の耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましい。
上記着色塗料(a1)に含まれ得る着色剤としては、着色顔料、光輝性顔料、染料及び蛍光材等を例示することができる。これらのうち着色顔料としては、例えば、二酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などを挙げることができ、光輝性顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
これら着色剤は、目的とする色彩に応じて単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、上記着色塗料(a1)においては、着色剤と共に体質顔料を使用することもできる。その具体例としては、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、珪砂、石英粉等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記着色剤の配合量は、着色塗料粒子(A)による着色性、比重、耐久性、耐水性などの観点から、水性樹脂の質量を基準にして、通常0.01〜500質量%、好ましくは0.05〜400質量%、さらに特に0.1〜300質量%の範囲内であることが好適である。
上記着色塗料(a1)は、さらに、必要に応じて、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
本発明方法において上記着色塗料粒子(A)は、例えば、上記着色塗料(a1)及び水溶性多糖類(a2)を含む組成物と金属化合物(C)を含む水性媒体と接触させることにより製造することができ、それによって、該着色塗料(a1)を多糖類金属塩ゲル中に含有してなる着色塗料粒子(A)を形成せしめることができる。
上記水溶性多糖類(a2)は、水性媒体中で、一価又は多価の金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
上記水溶性多糖類(a2)は、着色塗料(a1)の固形分質量を基準にして3.0質量%以上、好ましくは4.0〜20.0質量%の範囲内で使用することが望ましい。水溶性多糖類の使用量をこの範囲内にすることによって、本発明の塗膜形成方法により形成される塗膜に対する貼り紙防止性を向上させる効果がある。
上記金属化合物(C)は、水性媒体中で、水溶性多糖類と水不溶性もしくは難溶性の塩を形成し得る一価又は多価の金属イオンを生成し得る化合物であり、その成分の一部として有機酸金属塩(c1)を含むことが望ましい。
金属化合物(C)の一部として有機酸金属塩(c1)を使用することによって内包物の流出のない貯蔵安定性に優れた着色塗料粒子(A)を容易に形成でき、また、水性多彩模様塗料(I)から形成される多彩模様塗膜の耐水性などの塗膜物性を良好とすることができる。
かかる有機酸金属塩(c1)における金属種としては、形成される着色塗料粒子(A)の強度などの観点から、多価金属、特に二価金属が好適であり、二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2族元素、特にカルシウムが好適である。
上記有機酸金属塩(c1)における有機酸としては、上記例示したごとき金属と塩を形成しうる化合物であれば制限なく使用でき、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸等を例示することができる。中でも、分子量が50〜1000、特に50〜400、さらに特に170から400の範囲内の有機酸が着色塗料粒子(A)の貯蔵安定性などの点から適している。
上記有機酸金属塩(c1)としては上記した中でも酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸カルシウムが着色塗料粒子(A)の製造安定性、貯蔵安定性の点から適している。
また、上記金属化合物(C)としては、上記有機酸金属塩(c1)に加えて金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる金属化合物(c2)を含有するものであることが望ましい。これにより、水性多彩模様塗料(I)から鮮映性の良好な多彩模様塗膜を形成することができ、また、本発明方法により形成される塗膜の貼り紙防止性を向上させることが可能である。
かかる金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる金属化合物(c2)における金属の具体例としては有機酸金属塩(c1)の説明で例示したものに加え、周期表1族元素に属するアルカリ金属類を挙げることができる。
有機酸金属塩(c1)と金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる金属化合物(c2)を併用する場合、その使用割合は、着色塗料粒子(A)の貯蔵安定性と本発明方法により形成される塗膜の貼り紙防止性、多彩な意匠性の点から、有機酸金属塩(c1)/金属化合物(c2)のモル比で、一般に99/1〜10/90、特に90/10〜15/85、さらに特に80/20〜15/85の範囲内にあることが適している。
上記金属化合物(C)は、水などの水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより金属イオンを含有する水性媒体を調製することができる。その際、金属化合物(C)は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。
水性媒体中における金属化合物(C)の濃度は厳密に制限されるものではないが、通常0.05〜20質量%、好ましくは0.05〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%の範囲内であることができる。
上記着色塗料粒子(A)の製造において、上記着色塗料(a1)及び水溶性多糖類を含む組成物と水性媒体は、水溶性多糖類が有するカルボキシル基に由来する基1molに対して、水性媒体に含まれる金属化合物(C)の量が0.2〜3mol、特に0.4〜2molの範囲内となるような割合で使用することが、着色塗料粒子(A)の貯蔵安定性の点と本発明方法により形成される塗膜の貼り紙防止性、多彩な意匠感、耐水性が良好である点から好ましい。
上記カルボキシル基に由来する基としては、カルボキシル基、カルボン酸金属塩基及びカルボン酸イオン性基(−COO−)を挙げることができる。
本発明方法に使用される水性多彩模様塗料(I)は、形成される多彩模様塗膜の耐水性等の塗膜物性を確保するために着色塗料粒子(A)に加えて塗膜形成成分(B)を含有する。塗膜形成成分(B)は、それ自体成膜性を有するものであり、着色塗料粒子(A)との親和性や水性多彩模様塗料(I)としての貯蔵安定性などの観点から、水性樹脂を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
上記塗膜形成成分(B)に含まれる水性樹脂としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを使用することができ、例えば、着色塗料粒子(A)における水性樹脂として前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
上記着色塗料粒子(A)と塗膜形成成分(B)の配合割合は、着色塗料粒子(A)/塗膜形成成分(B)の固形分質量比で、1/99〜60/40の範囲内である。この範囲外では、本発明方法より形成される塗膜の多彩な意匠感が低下し、好ましくない。着色塗料粒子(A)/塗膜形成成分(B)の配合割合としては、10/90〜50/50、特に20/80〜45/55の範囲内が好適である。
また、本発明方法により形成される塗膜の長期の耐汚れ性等の点並びに貼り紙防止性、落書き防止性の点から、着色塗料粒子(A)と塗膜形成成分(B)は、それぞれ、互いに反応し得る官能基を含有することが望ましい。例えば着色塗料粒子(A)が、反応性官能基(x)を含有してなり、且つ塗膜形成成分(B)が、反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を有することが望ましい。
上記着色塗料粒子(A)に含まれる反応性官能基(x)と塗膜形成成分(B)中に含まれる反応性官能基(y)の組み合わせとしては、塗膜の乾燥条件下に相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、及びカルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせが挙げられ、特に、カルボニル基とヒドラジド基の組み合わせであると、常温一液架橋することができ、好適である。
また、上記水性多彩模様塗料(I)は着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)が共に反応性官能基(x)を有する樹脂を含有し、さらに着色塗料粒子(A)及び/又は塗膜形成成分(B)が反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を有する架橋剤を含有する形態であることもできる。
本発明方法により形成される塗膜の耐水性、耐候性と水性多彩模様塗料(I)の貯蔵安定性などを両立させるためには、着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)が、共にカルボニル基含有水性樹脂を含み、着色塗料粒子(A)及び/又は塗膜形成成分(B)が、架橋剤としてヒドラジン誘導体を含有することが望ましい。
着色塗料粒子(A)又は塗膜形成成分(B)に含まれ得るカルボニル基と反応するためのヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明方法に用いられる上記水性多彩模様塗料(I)は、以上に述べた着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)以外に平均粒子径が1〜40μmの樹脂ビーズ(D)を含有することが望ましい。これにより本発明方法により形成される塗膜の多彩な意匠感や触感を損なうことなく、貼り紙防止性を向上する効果がある。
上記樹脂ビーズ(D)としては、例えばアクリル樹脂ビーズ、ポリスチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ、ポリプロピレン樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ 、シリコン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズ、ポリエステル樹脂ビーズ 、ポリアミド樹脂ビーズ、ナイロン樹脂ビーズなどが挙げられ、これらのうちアクリル樹脂ビーズ特にポリメタクリル酸エステル樹脂ビーズ、さらに特にポリメタクリル酸メチル樹脂ビーズを使用すると、本発明方法により形成される塗膜の貼り紙防止性を与え、また、長期の耐水性、耐候性に優れ、しかも多彩な意匠感を損なうことがないので好適である。
上記樹脂ビーズ(D)は、平均粒子径が1〜40μmの範囲内、好ましくは5〜30μmの範囲内であることが望ましい。ここで平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)である。樹脂ビーズ(D)の平均粒子径が1μm未満では、本発明方法により形成される塗膜の貼り紙防止性の向上効果が少なく、一方40μmを超えると本発明方法により形成される塗膜にざらつき感が発生し触感が低下することがある。
上記樹脂ビーズ(D)の配合量は、本発明方法により形成される塗膜の貼り紙防止性向上効果と塗面の触感の点から塗膜形成成分(B)固形分を基準として1〜100質量%の範囲内、特に5〜50質量%の範囲内であることが好適である。
また、上記水性多彩模様塗料(I)は必要に応じて体質顔料や塗料用添加剤を含ませることができる。該塗料用添加剤としては、中和剤、粘性調整剤、沈降防止剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
上記水性多彩模様塗料(I)の塗布量は、使用する塗料組成物の組成や塗布すべき基材の種類などに応じて変えることができるが、乾燥質量で、10〜500g/m2、好ましくは30〜300g/m2の範囲内が好適である。塗布量が上記範囲内となるように複数回塗装してもよい。また、塗装手段としてはそれ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
塗料(II)
本発明方法で用いる塗料(II)に含まれるSi−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)としては、従来公知のものを制限なく使用でき、その製造方法としては例えば、分子中にSi−C結合を含有するオルガノハロシランを加水分解縮合させるとともにアルコールによってアルコキシ化する方法;分子中にSi−C結合を含有するオルガノアルコキシシランを加水分解縮合させる方法などが挙げられる。
これらの方法としては具体的には、下記式(1)〜(3)で表されるSi−C結合を含有するオルガノシラン化合物から選ばれる1種以上を含むオルガノシラン化合物を原料として、種々条件で加水分解縮合するものである。
上記式(1)〜(3)において、R1は、同一又は異なって、置換もしくは非置換の炭化水素基、重合性不飽和基であり、Xは、同一又は異なって、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。
R1として具体的には、同一又は異なって、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;ビニル基、アリル基、i−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−シクヘキセニル基、3−シクヘキセニル基、2−ビニルシクロヘキシル基、3−ビニルシクロヘキシル基、4−ビニルシクロヘキシル基等のシクロアルケニル基、2−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、4−ビニルフェニル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、3−アリルオキシプロピル基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の重合性不飽和基;アミノエチル基、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基;3−グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基等を挙げることができる。
一方、Xとしては、同一又は異なって、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、i−ヘキシルオキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基;塩素、臭素、フッ素等のハロゲン;等が挙げられる。
上記式(1)〜(3)で表されるオルガノシラン化合物の具体例としては、トリメチルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン;ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン;等を挙げることができる。
上記Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)は、一般に、式(1)及び/又は式(2)で表されるオルガノシラン化合物を原料の主成分とすることにより製造される、3次元構造を有しているオルガノポリシロキサンであることが望ましい。また、式(3)及び/又は式(4)で表されるオルガノシラン化合物を原料として適宜混合せしめることもできる。
上記式(4)で表されるオルガノシラン化合物としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラフェノキシシラン等のテトラアルコキシシラン;テトラクロロシラン等のテトラハロシラン等を挙げることができる。
また、Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)は、式(2)で表される2官能性のオルガノシラン化合物を原料の主成分とすることにより製造される、直鎖状の構造を有しているオルガノポリシロキサンであってもよい。
Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)において、加水分解性シリル基としてのケイ素原子に結合したアルコキシ基、即ちアルコキシシリル基は、空気中の湿気や水分等で加水分解され、シラノールとなり、シラノ−ル同士の縮合反応が常温で進行することが知られている。
また、本発明方法により形成される塗膜が親水性または疎水性の汚れ成分に対する汚れ防止機能を発揮するためには、Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)が置換基としてメチル基を有していることが望ましく、また、該オルガノポリシロキサン(a)のメチル基濃度が20mol%以上、好ましくは40mol%以上であることが望ましい。
本明細書においてオルガノポリシロキサン(a)のメチル基濃度は、下記式に基づいて算出することができる。
オルガノポリシロキサン(a)のメチル基濃度(mol%)=(n2/n1)×100
n1:上記式(1)、(2)、(3)及び(4)のオルガノシラン化合物における置換基R1の合計モル数、n2:置換基R1におけるメチル基のモル数
また上記Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)は、ベンゼン環構造を含有するオルガノポリシロキサン(i1)を含有していてもよい。該オルガノポリシロキサン(i1)のベンゼン環濃度は20mol%以上、好ましくは20〜70mol%であることが望ましい。
上記オルガノポリシロキサン(i1)のベンゼン環濃度は、下記式に基づいて算出することができる。
オルガノポリシロキサン(i1)のベンゼン環濃度(mol%)=(n3/n1)×100
n1:上記式(1)、(2)、(3)及び(4)のオルガノシラン化合物における置換基R1の合計モル数、n3:置換基R1におけるベンゼン環のモル数。
上記ベンゼン環構造を含有するオルガノポリシロキサン(i1)を使用する場合の配合量としては、Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)中に5〜80質量%、好ましくは5〜70質量%であることが塗膜(II)より形成される塗膜の耐ワレ性や乾燥性などの点から望ましい。
また、本発明において、Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)は、汚れ防止、貼り紙防止性、落書き防止性等の機能が向上することから、3次元構造を有するオルガノポリシロキサン骨格及び直鎖状のオルガノポリシロキサン骨格を分子中に共に含有するオルガノポリシロキサン(i2)をその成分の一部として含有することが望ましい。
直鎖状のオルガノポリシロキサン骨格としては、下記式(5)で表される構造を挙げることができる。
式(5)において、jは、2〜1,000の整数を表し、R2は、同一または異なって、置換もしくは非置換の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、飽和基であっても不飽和基であってもよく、例えば、同一又は異なって、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、アミノエチル基、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基;3−グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基等を挙げることができ、特にメチル基が好適である。
上記3次元構造を有するオルガノポリシロキサン骨格及び直鎖状のオルガノポリシロキサン骨格を分子中に共に含有するオルガノポリシロキサン(i2)の製造方法としては、例えば、(1)分子中に加水分解性シリル基及び重合性不飽和基を含有する3次元構造を有するオルガノポリシロキサンと、両末端にSi-H基を含有する直鎖状のオルガノポリシロキサンとを反応させる方法、或いは、(2)分子中に加水分解性シリル基及びSi−H基を含有する3次元構造を有するオルガノポリシロキサンと、両末端に重合性不飽和基を含有する直鎖状のオルガノポリシロキサンとを反応させる方法などが挙げられる。
重合性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、i−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等のアルケニル基;2−シクヘキセニル基、3−シクヘキセニル基、2−ビニルシクロヘキシル基、3−ビニルシクロヘキシル基、4−ビニルシクロヘキシル基等のシクロアルケニル基;2−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、4−ビニルフェニル基等のビニルフェニル基;2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基などのアリルフェニル基;3−アリルオキシプロピル基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基が挙げられ、中でもSi−H基との反応性からビニル基が望ましい。
上記(1)及び(2)の反応においては、定法に従い、必要に応じてヘキサン、ペンタン、トルエン、キシレンなどの有機溶媒の存在下で、Ni、Rh、Pd、Pt等の金属単体やその化合物、錯体を触媒としてヒドロシリル化反応をすることができる。
上記(1)及び(2)の反応において、未反応の直鎖状のオルガノポリシロキサンの量を最小限にし、目的とする化合物をゲル化することなく得るためには、直鎖状のオルガノポリシロキサンの官能性基(Si−H基又は重合性不飽和基)に対して3次元構造を有するオルガノポリシロキサンの官能性基(重合性不飽和基又はSi−H基)を過剰量となるようにすることが望ましい。
上記オルガノポリシロキサン(i2)の配合量としては、Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)の質量を基準として1〜60質量%、好ましくは3〜50質量%であることが貼り紙防止性、落書き防止性、硬化性(指触乾燥性)などの点から望ましい。
本発明において、Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)としては、「SR2406」、「SR2410」、「SR2420」、「SR2416」、「SR2402」、「AY42−161」(以上東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、「FZ−3704」、「FZ−3511」(以上日本ユニカー社製)、「KC-89S」、「KR−500」、「X−40−9225」、「X−40−9246」、「X−40−9250」、「KR−217」、「KR−9218」、「KR−213」、「KR−510」、「X−40−9227」、「X−40−9247」、「X−41−1053」、「X−41−1056」、「X−41−1805」、「X−41−1810」、「X−40−2651」、「X−40−2308」、「X−40−9238」、「X−40−2239」、「X−40−2327」、「KR−400」、「X−40−175」、「X−40−9740」(以上信越化学工業株式会社製)などの市販品も適用可能である。
本発明において、加水分解性シリル基を含有しないオルガノポリシロキサン(ii)は、それ自体実質的に加水分解縮合しないものであり、塗料(II)の塗装作業性を向上させ、形成塗膜を均一化させるために配合されるものである。
該加水分解性シリル基を含有しないオルガノポリシロキサン(ii)は、塗装作業性の点から、分子量が、200〜1,000、好ましくは300〜700の範囲内であることが好適であり、例えば、下式(6)或いは下式(8)で表される、直鎖状ポリシロキサン及び/又は環状ポリシロキサンを挙げることができる。
上記直鎖状ポリシロキサン化合物としては、下式(6)で表される化合物を挙げることができる。
R3は、同一又は異なって、置換もしくは非置換の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、アミノエチル基、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基;3−グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基等を挙げることができ、中でも炭素数が1〜3のアルキル基、特にメチル基が好適である。Yは炭素数1〜18の置換もしくは非置換のアルキル基又は下記式(7)で表されるポリオキシアルキレン基を表し、Yがアルキル基である場合には、例えば、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられ、中でも炭素数が6〜9のアルキル基が望ましい。k1は1〜8の整数を表し、k2は1〜8の整数を表す。上記式(6)で表される化合物において、塗料(II)の塗装作業性が優れることから、k1及びk2が共に1であることが望ましい。
−O−(CHR4−CH2-O)k3−R41 (7)
k3は1〜20、好ましくは2〜20の整数を表し、R4はメチル基又は水素原子を表す。R41は、水素、炭素数が1〜3の置換もしくは非置換のアルキル基を表し、特に水素、メチル基が好適である。
上記オルガノポリシロキサン(ii)として用いうる環状ポリシロキサン化合物としては、下記式(8)で表される化合物を挙げることができる。
R5は、同一又は異なって、置換もしくは非置換の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、アミノエチル基、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基;3−グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基等を挙げることができ、中でも炭素数が1〜3のアルキル基、特にメチル基が好適である。lは3〜10の整数を表す。好適な環状ポリシロキサン化合物として具体的には、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのメチルシクロポリシロキサンなどを挙げることができる。上記例示の化合物は単独であってもよいし、複数組み合わせたものであってもよい。
本発明においては、落書き防止性、貼り紙防止性や塗装作業性、乾燥性等の点から、上記Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)及び加水分解性シリル基を含有しないオルガノポリシロキサン(ii)の使用割合は、成分(i)及び成分(ii)の合計重量に対して、成分(i)の量が50〜99.9質量%、好ましくは60〜90質量%、成分(ii)の量が0.1〜50重量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内とする必要がある。Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(i)の量が、50質量%未満では、落書き防止性、貼り紙防止性や仕上り性に劣り、一方、99.9質量%を超えると塗装作業性が低下する傾向がある。
本発明方法において、上記塗料(II)はガラスフレーク顔料(iii)を含有することが望ましい。該ガラスフレーク顔料(iii)は、通常、平均粒径5〜300μm、平均厚み0.5〜20μmのリン片状の粒子であり、SiO2を主成分とし、ZnOやB2O3及びその他の成分を若干量含むこともある。その表面は金属酸化物で被覆されている又は金属メッキされていることが望ましく、その金属種としては特に制限なく公知のものが使用でき、例えばTi、Fe、Zn、Sn、Zr、Au、Ag、Cu、Ni、Alなどが挙げられる。
上記ガラスフレーク顔料(iii)の含有量は、前述の成分(i)及び成分(ii)の合計質量100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜25質量部の範囲内であることが、塗料(II)から形成される塗膜の耐ワレ性と仕上がり性の点から望ましい。
上記塗料(II)は、さらに必要に応じて、シロキサンマクロモノマー(iv1)、加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマー(iv2)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(iv3)、及び必要によりこれらと共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(iv4)の共重合により得られるアクリル樹脂(iv)を含有することが、塗料(II)から形成される塗膜の耐ワレ性や多彩模様塗膜に対する付着性の点から望ましい。
シロキサンマクロモノマー(iv1)としては、片末端もしくは両末端ビニルジメチルポリシロキサン、その側鎖のメチル基がフェニル基に一部置換された片末端もしくは両末端ビニルポリシロキサン、片末端もしくは両末端(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルポリシロキサン、その側鎖のメチル基がフェニル基に一部置換された片末端もしくは両末端(メタ)アクリロイルオキシプロピルポリシロキサンなどが挙げられる。
上記加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマー(iv2)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトオキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(iv3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸とのモノエステル;ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等とラクトン類(例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン)との付加物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有不飽和モノマーとのモノエーテル;α,β−不飽和カルボン酸と、カージュラE10(シェル化学社製)やα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−t−ブチル安息香酸、脂肪酸類のような一塩基酸との付加物;無水マレイン酸や無水イタコン酸のごとき酸無水基含有不飽和化合物と、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類とのモノエステル化物またはジエステル化物;ヒドロキシエチルビニルエーテルのごときヒドロキシアルキルビニルエーテル類、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような塩素を含んだ水酸基含有単量体、アリルアルコール等を挙げることができる。
上記他の重合性不飽和モノマー(iv4)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル(n−,i−,t−)、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等の鎖状アルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、トリビニルフェニルエーテル等のアリールビニルエーテル類;ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテル等のアラルキルビニルエーテル類;アリルグリシジルエーテル、アリルエチルエーテル等のアリルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、イソカプロン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ベオバモノマ−(シェル化学社製)等のビニルエステル;酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のプロペニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル等のオレフィン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジンなどの芳香族含窒素モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合性ニトリル;グリシジル(メタ)アクリレート,アリルグリシジルエーテル等の重合性グリシジル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、ペンタエリスリト−ルジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリルモノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレ−ト、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールアリロキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ペンタエリスリトルジアリルエ−テル、ジビニルベンゼン等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。
上記モノマー類の使用割合は、所望の物性等に応じて広い範囲にわたって変えることができるが、モノマー混合物の合計量を基準にして、シロキサンマクロモノマー(iv1)が1〜40質量%、好ましくは2〜25質量%、加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマー(iv2)が5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(iv3)が1〜40質量%、好ましくは10〜30質量%、他の重合性不飽和モノマー(iv4)が0〜93質量%、好ましくは5〜78質量%の範囲内が適当である。
上記のモノマー混合物の共重合は、通常、有機溶媒中で、モノマーの合計量100質量部あたり約0.01〜約8質量部の重合開始剤の存在下に、約−20℃〜約150℃の温度で、常圧で又は場合により約30kg/cm2Gまでの加圧下に反応させることにより行なうことができる。
上記の通り得られるアクリル樹脂(iv)は、数平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲内であることが望ましい。尚、数平均分子量は、東ソー社製HLC8120GPCを用い、検知器:示差屈折計、カラム:東ソー社製カラムG4000XL、G3000XL、G2500XL、G2000XL、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1cc/分の条件での測定値である。
上記アクリル樹脂(iv)は、塗料(II)に対して80質量%以下、好ましくは5〜70質量%の範囲内で含まれることが望ましい。
本発明方法に用いられる塗料(II)は、さらに必要に応じて、シランカップリング剤、硬化触媒、脱水剤、有機溶剤、着色顔料、コロイダルシリカ、オルガノシリケート化合物、樹脂粒子、表面調整剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、界面活性剤、造膜助剤、増粘剤等の添加剤;イソシアネート化合物やメラミン樹脂等の架橋剤などを適宜配合することができる。
これらのうちシランカップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
上記シランカップリング剤は、塗料(II)に対して10質量%以下、好ましくは0.5〜5質量%の範囲内で含まれることが落書き防止性、貼り紙防止性や乾燥性の点から望ましい。
硬化触媒としては、有機金属系硬化触媒が望ましく、例えばとしては、ジアセチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジアセチル錫ジオクトエート、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエートなどの有機錫化合物;アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)、アルミニウムアセチルアセトナート等の有機アルミニウム化合物;チタニウムテトラ(モノエチルエトキシド)、チタニウムテトラ(モノエチルエトキシド)、チタニウムテトラ(モノブチルエトキシド)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、テトラノルマルブチルチタネート等の有機チタン化合物;ジルコニウムテトラ(モノメチルエトキシド)、ジルコニウムテトラ(モノエチルエトキシド)、ジルコニウムテトラ(モノブチルエトキシド)、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)等の有機ジルコニウム化合物;ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリ(4−クロロフェニル)、ホウ酸トリヘキサフルオロイソプロピル等のホウ酸エステル等のホウ酸化合物等;が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併用して使用できる。
上記硬化触媒は、塗料(II)に対して10質量%以下、好ましくは0.5〜7質量%の範囲内で含まれることが形成される塗膜の耐ワレ性や乾燥性の点から望ましい。
上記紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線吸収剤が使用でき、有機系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレ−ト、p−オクチルフェニルサリシレ−ト、4−t−ブチルフェニルサリシレ−トなどのサリチル酸誘導体;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2´−カルボキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ルなどのベンゾトリアゾ−ル系及びその他(ヒドロキシフェニルトリアジン系、シュウ酸アニリド、シアノアクリレ−トなど)の化合物などが挙げられ、無機系紫外線吸収剤としては、例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化鉄等が挙げられる。また光安定剤としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t-ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ビス−(2,2´,6,6´−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバテ−ト、4−ベンゾイルオキシ−2,2´,6,6´−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤及び/又は光安定剤は、単独で使用してもよいし、適宜選択して組み合わせて使用することもできる。
本発明方法では、上記の通り得られる塗料(II)を多彩模様塗膜上に塗布して貼り紙防止性や落書き防止性を備えた多彩な意匠感を有する塗膜を形成することができる。
上記塗料(II)の塗装方法は、それ自体既知の塗装手段を用いて塗装することができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、刷毛、コテなどを用いて行うことができる。その塗布量は、乾燥膜厚が1〜100μm、好ましくは5〜60μmとなるように調整されることが望ましく、乾燥膜厚がこの範囲となるように複数回塗装を行っても良い。乾燥膜厚が上記範囲となることによって、本発明方法により形成される塗膜の貼り紙防止性をより効果的に発揮させることが可能である。
形成される塗膜の乾燥は、用いた塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
水性多彩模様塗料用エマルションの製造
製造例1
容量2リットルの4口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部をそれぞれ添加し、20分経過後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 120部
メチルメタクリレート 425部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 30部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
アクリル酸 10部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(EM1)を得た。エマルション(EM1)の平均粒子径は175nm、pHは8.3であった。
(注1)「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
着色塗料(白)の製造
製造例2
ステンレス容器に下記成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、白顔料ペースト(G−1)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「TITANIX JR−605」(注5) 500部
(注2)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤
(注3)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、顔料分散剤
(注4)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤
(注5)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白
次いで、別のステンレス容器に下記成分を順次配合し、攪拌機にて均一になるように攪拌混合して白色の着色塗料(A−1)を得た。
55%エマルション(EM1) 250部
白顔料ペースト(G−1) 156部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注7) 2部
(注6)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤
(注7)「アデカノールUH−438」:商品名、アデカ社製、ポリエーテルウレタン変性物、粘性調整剤。
着色塗料(赤錆)の製造
製造例3
ステンレス容器に下記成分を仕込み、攪拌機にて60分間攪拌混合することにより、赤錆顔料ペースト(G−2)を得た。
水 400部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 48部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
酸化鉄 240部
次いで、別のステンレス容器に下記成分を順次配合し、攪拌機にて均一になるように攪拌混合して赤錆色の着色塗料(A−2)を得た。
55%エマルション(EM1) 250部
赤錆顔料ペースト(G−2) 276部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注7) 2部。
着色塗料粒子用水性塗料組成物[白]の製造
製造例4
ステンレス容器に上記製造例2で得られた着色塗料(A−1)を430部仕込んだ後、2%アルギン酸ナトリウム水溶液500部を加え、均一になるまで攪拌することにより、着色塗料粒子用水性塗料組成物[白](B−1)を得た。
着色塗料粒子用水性塗料組成物[赤錆]の製造
製造例5
ステンレス容器に上記製造例3で得られた着色塗料(A−2)を550部仕込んだ後、2%アルギン酸ナトリウム水溶液600部を加え、均一になるまで攪拌することにより、着色塗料粒子用水性塗料組成物[赤錆](B−2)を得た。
着色塗料粒子用水性媒体の製造
製造例6
ステンレス容器に、酢酸カルシウム一水和物を10部、水酸化カルシウムを3部、脱イオン水を2000部仕込み、攪拌機にて均一になるように攪拌混合して水性媒体(C−1)を得た。
着色塗料粒子の製造
製造例7
4リットルステンレス容器に、上記製造例6で得られた水性媒体(C−1)を1300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数2000回転で攪拌しながら、上記製造例4で得られた水性塗料組成物(B−1)650部を徐々に容器内に滴下し、着色塗料粒子を生成させた。次いで、容器内液を同回転数でさらに10分間攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、固形分20%の着色塗料粒子(D−1)を得た。
製造例8
上記製造例7において、滴下する水性塗料組成物を(B−2)にする以外は上記製造例7と同様にして着色塗料粒子(D−2)を得た。
塗膜形成成分用水性クリヤー塗料の製造
製造例9〜10
2リットルステンレス容器に、下記表1に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、攪拌機にて均一になるまで攪拌混合することにより、水性クリヤー塗料(E−1)〜(E−2)を得た。
(注8)「MBX−15」:商品名、積水化成品工業社製、メタクリル酸メチル樹脂ビーズ、平均粒子径15μm。
水性多彩模様塗料の製造
製造例11〜14
0.5リットルステンレス容器に、下記表2に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、攪拌機にて均一になるまで攪拌混合することにより、水性多彩模様塗料(F−1)〜(F−4)を得た。
Si−C結合及び加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサンの製造
製造例15
3口フラスコにメチルトリメトキシシラン80部、ジメチルジメトキシシラン20部を加え、攪拌下0.05N塩酸水10部を滴下し、68℃で1時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを除去し、ろ過を行って加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(S−1)を得た。
製造例16
3口フラスコにメチルトリメトキシシラン50部、ジメチルジメトキシシラン20部、フェニルトリメトキシシラン30部を加え、攪拌下0.05N塩酸水10部を滴下し、68℃で1時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを除去し、ろ過を行って加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(S−2)を得た。
製造例17
3口フラスコにメチルトリメトキシシラン85部、ビニルメチルジメトキシシラン15部を加え、攪拌下0.05N塩酸水15部を滴下し、68℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを除去し、ろ過を行ってオルガノポリシロキサン(a)を得た。
別の3口フラスコにオルガノポリシロキサン(a)を250部、直鎖状のジメチルシロキサン骨格を有する成分として両末端Si−H基のジメチルシロキサンオイル(注9)125部、「CAT−PL−50T」(注10)1.5部を加え、80℃で8時間ヒドロシリル化反応を行い、これを120℃、10mmHgで2時間減圧処理し、ろ過を行い、3次元構造を有するオルガノポリシロキサン骨格と直鎖状のジメチルポリシロキサン骨格を分子中に共に含有し、且つ加水分解性シリル基を含有するオルガノポリシロキサン(S−3)を得た。
(注9)ジメチルシロキサンオイル:H−[Me2SiO]19−Me2Si−Hを主成分とする。
(注10)「CAT−PL−50T」:商品名、信越化学工業社製、Pt系触媒。
加水分解性シリル基、水酸基及びポリシロキサン鎖を有するアクリル樹脂の製造
製造例18
温度計、還流冷却器、攪拌機及び滴下装置を備えた4口フラスコに、酢酸n−ブチル81.8部を仕込み、攪拌下で加熱し、95℃に保った。次に、95℃の温度で、「サイラプレーンFM−0721」(注11)20部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、i−ブチルメタクリレート40部及び重合開始剤である2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.2部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下後95℃で2時間熟成し、固形分濃度55%及び数平均分子量1万の加水分解性シリル基、水酸基及びポリシロキサン鎖を有するアクリル樹脂(S−4)を得た。
(注11)「サイラプレーンFM−0721」:商品名、チッソ社製、メタクリル基含有シロキサンマクロモノマー。
落書き防止塗料の製造
製造例19〜26
表3に記載の配合組成で各成分を配合し、攪拌混合することで落書き防止塗料(R−1)〜(R−8)を製造した。尚、表3中の(注12)〜(注15)は下記の通りである。
(注12)「メタシャイン1020RS」:商品名、日本板硝子社製、酸化チタン被覆ガラスフレーク顔料
(注13)「デュラネートTPA−90EK」:商品名、旭化成社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、不揮発分90%、イソシアネート基含有量21%
(注14)「TINUVIN 123」:商品名、チバ社製、ヒンダードアミン系光安定剤
(注15)「TINUVIN 405」:商品名、チバ社製、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤。
試験塗板の作製
実施例1〜9及び比較例1、2
スレート板(150×70×4mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)を塗布量が100g/m2になるようにローラー塗装し、気温23℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させた。その後、「ビニデラックス300 白」(関西ペイント社製、JIS K5663 1種適合アクリルエマルション系塗料)を塗布量が100g/m2になるようにローラー塗装し、さらに気温23℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させたものを被塗板とし、この上に各水性多彩模様塗料(F−1)〜(F−4)を塗布量が300g/m2になるようにスプレー塗装した。その後、気温23℃、相対湿度60%の条件下で4日間乾燥させ、各落書き防止塗料(R−1)〜(R−8)をミネラルスピリットで希釈し、乾燥膜厚が15μmになるようにローラー塗装した。その後、気温23℃、相対湿度60%の条件下で10日間乾燥して各試験板を得た。下記性能試験に共した結果を表4に示す。
(*1)多彩感:各試験体の塗膜を目視にて観察し、次の基準で評価した。
○:種々の色が均一に散らばり、多彩な意匠感が認められる、
△:種々の色に偏りが見られ、多彩感がやや劣る、
×:種々の色が塊になり、多彩感が認められない。
(*2)落書き防止性:各試験体の塗面上に黒色のラッカースプレー(「アクリルラッカースプレー」、カンペハピオ社製)で落書きし、ハジキの程度を目視により評価した。
◎:非常によくはじいて、何を書いたか識別できない、
○:はじくが、わずかに落書きが識別できる、
△:わずかにはじくが、落書きが鮮明に識別できる、
×:全くはじかず、落書きが鮮明に識別できる。
(*3)貼り紙防止性:各試験体の塗面上にセロハン粘着テープを貼り付けて、1日間放置後、引き剥がし時の状態を評価した。
◎:全く抵抗感がなく引き剥がすことができる、
○:やや抵抗感はあるが、引き剥がすことができる、
△:抵抗感があり、引き剥がす際にセロハン粘着テープが破れる、
×:抵抗感があり、ほとんど引き剥がすことができない。