JP5337421B2 - α−オレフィン重合用触媒及びそれを用いたα−オレフィン重合体又は共重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
この様に優れた性質を有するα−オレフィン重合体の製造に際しては、一般にチーグラー・ナッタ触媒と呼ばれる触媒成分を用いるが、更なるコストの低減及び品質の向上の為に、より高性能な触媒成分の開発が望まれている。
α−オレフィン重合用触媒成分としては、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体にチタン成分を担持したタイプの触媒が広く用いられている。
また、特に触媒活性を向上させる手法としては、ビニルシラン化合物を用いる方法(特許文献4参照)、孤立電子対を有する芳香族置換基を有する特定のビニルシラン化合物を用いる方法(特許文献5参照)、などが提案されてきた。
しかしながら、これらの方法は、いずれも必ずしも十分とはいえず、例えば、立体規則性、粒子性状、触媒活性などの触媒性能の点で充分な性能を示すことができず、そのため、更なる改良技術の開発が望まれている。
〔I〕下記の成分(i)〜(iii)を接触してなる固体触媒成分(A)
(i)チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分(A1)
(ii)下記式で表されるビニルシラン化合物(B)
(iii)下記式で表される有機ケイ素化合物(C)
〔II〕有機アルミニウム化合物(D)
成分〔I〕:下記の成分(i)〜(iii)を接触してなる固体触媒成分(A)(以下、「固体触媒成分(A)」ともいう)
(i)チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分(A1)(以下、「固体成分(A1)」ともいう)
(ii)後述の一般式で表される特定のビニルシラン化合物(B)(以下、「ビニルシラン化合物(B)」ともいう)
(iii)有機ケイ素化合物(C)
成分〔II〕:有機アルミニウム化合物(D)
また、本発明は、上記α−オレフィン重合用触媒の存在下に、α−オレフィンを重合又は共重合することを特徴とするα−オレフィン重合体又は共重合体の製造方法である。
以下、本発明の重合触媒を構成する成分や触媒の調製方法、さらにはその触媒を用いたα−オレフィン(共)重合体の製造方法等について詳細に説明する。
1.固体触媒成分(A)の構成成分
(1)固体成分(A1)
本発明で用いる固体触媒成分(A)の構成成分の固体成分(A1)としては、チタン、マグネシウム、ハロゲン、を必須成分として含有するものであれば、任意のものを用いることができる。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の三成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでも良いということを示すものである。チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分自体は公知のものである。
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)3Ti−O−Ti(OBu)3に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることが出来る。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい
3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類を挙げることが出来る。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型、など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることが出来る。
上記のチタン化合物類は単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)mCl4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(CO2Bu)2・TiCl4などの化合物)、などを用いることが出来る。
一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることが出来る。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1から20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2から12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることも出来る。
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることが出来る。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。
アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることが出来る。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することが出来る。
本発明で用いることの出来る多価エーテル化合物としては、特開平3−294302号公報及び特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
(式中、R9及びR10は水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。R11は炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
R9として用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。R9として用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。より好ましくは、R9として分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
また、式中、R11は炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、R11はR9が炭化水素基である場合の例示から選ぶことが出来る。好ましくは、炭素数1から6の炭化水素基であることが望ましく、更に好ましくはアルキル基であることが望ましい。最も好ましくはメチル基である。
R9からR11がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましい。また、R9からR11が炭化水素基であるかヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。R9からR11がヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は炭化水素基である場合の例示から選ばれることが望ましい。また、R9からR11の八個の置換基はお互いに同一であっても異なっても良い。
これらの多価エーテル化合物は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
電子供与体(E)として用いることの出来るアルデヒド化合物としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物類、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物類、などを例示することが出来る。
電子供与体(E)として用いることの出来るアミン化合物としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物類、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物類、アニリンに代表される芳香族アミン化合物類、ピリジンに代表される窒素原子含有芳香族化合物類、1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2,2−ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物類、などを例示することが出来る。
本発明における固体成分(A1)を構成する各成分の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には次の範囲が好ましい。
チタン化合物類の使用量は、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対してモル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01から10の範囲内が望ましい。マグネシウム化合物類及びチタン化合物類以外にハロゲン源となる化合物を使用する場合は、その使用量はマグネシウム化合物類及びチタン化合物類の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対してモル比(ハロゲン源となる化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
固体成分(A1)を調製する際に任意成分として用いる電子供与体(E)を用いる場合の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対してモル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001から10の範囲内であり、特に好ましくは0.01から5の範囲内が望ましい。
接触温度は、−50から200℃程度、好ましくは0から150℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、及び、不活性溶媒の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することが出来る。
これは、塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物をチタン化合物と共粉砕することにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法である。必要に応じて電子供与体等の任意成分と同時に、又は、別工程で共粉砕しても良い。機械的粉砕方法としては、回転ボールミルや振動ミル等の任意の粉砕機を用いることが出来る。溶媒を用いない乾式粉砕法だけでなく、不活性溶媒共存下で共粉砕する湿式粉砕法を用いることも出来る。
これは、塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物とチタン化合物を不活性溶媒中で撹拌することにより接触処理を行い、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法である。チタン化合物として四塩化チタンなどの液状の化合物を用いる場合は、不活性溶媒なしで接触処理することも出来る。必要に応じて電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を同時に、又は、別工程で接触させても良い。接触温度に特に制限はないが、90℃から130℃程度の比較的高い温度で接触処理する方が好ましい場合が多い。
これは、塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物を電子供与体と接触させることにより溶解し、生じた溶解液と析出剤を接触させて析出反応を起こすことにより粒子形成を行う方法である。溶解に用いる電子供与体の例としては、アルコール化合物類、エポキシ化合物類、リン酸エステル化合物類、アルコキシ基を有するケイ素化合物類、アルコキシ基を有するチタン化合物類、エーテル化合物類などを挙げることが出来る。析出剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、塩化水素、ハロゲン含有炭化水素化合物類、Si−H結合を有するシロキサン化合物類(ポリシロキサン化合物類を含む)、アルミニウム化合物類、などを例示することが出来る。溶解液と析出剤の接触方法としては、溶解液に析出剤を添加しても良いし、析出剤に溶解液を添加しても良い。溶解、析出のどちらの工程でもチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。この際、電子供与体は溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解、析出、チタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、溶解、析出、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
これは、溶解析出法と同様に塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物を電子供与体と接触させることにより溶解し、生じた溶解液を主に物理的な手法により造粒する方法である。溶解に用いる電子供与体の例は溶解析出法の例に同じ。造粒手法の例としては、高温の溶解液を低温の不活性溶媒中に滴下する方法、高温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して乾燥する方法、低温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して冷却する方法、などを挙げることが出来る。造粒により形成した粒子をチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に、必要に応じて、ハロゲン化ケイ素化合物類、電子供与体、などの任意成分と接触させても良い。この際、電子供与体は溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解やチタン化合物との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、溶解、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
これは、ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物に対して、ハロゲン化剤を接触させてハロゲン化する方法である。ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物の例としては、ジアルコキシマグネシウム化合物類、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、脂肪酸のマグネシウム塩、などを挙げることが出来る。ジアルコキシマグネシウム化合物類を用いる場合は、金属マグネシウムとアルコールとの反応により系中で調製したものを用いることも出来る。この調製法を用いる場合は、出発原料であるハロゲンを含まないマグネシウム化合物の段階で造粒等により粒子形成を行うのが一般的である。ハロゲン化剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、ハロゲン化リン化合物類、などを挙げることが出来る。ハロゲン化剤としてハロゲン化チタン化合物類を用いない場合は、ハロゲン化により形成したハロゲン含有マグネシウム化合物を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、ハロゲンを含まないマグネシウム化合物のハロゲン化やチタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、ハロゲン化、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
これは、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール試薬、ジアルキルマグネシウム化合物、などの有機マグネシウム化合物類の溶液に析出剤を接触させる方法である。析出剤の例としては、チタン化合物類、ケイ素化合物類、塩化水素、などを挙げることが出来る。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、析出やチタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、析出、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
これは、有機マグネシウム化合物類の溶液、若しくは、マグネシウム化合物を電子供与性化合物で溶解した溶液を、無機化合物の担体、若しくは、有機化合物の担体に含浸させる方法である。有機マグネシウム化合物類の例は有機マグネシウム化合物からの析出法の例に同じ。マグネシウム化合物の溶解に用いるマグネシウム化合物は、ハロゲンを含んでいても含んでいなくても良く、電子供与体の例は溶解析出法の例に同じ。無機化合物の担体の例としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、などを挙げることが出来る。有機化合物の担体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、などを挙げることが出来る。含浸処理後の担体粒子は、析出剤との化学反応や乾燥等の物理的処理によりマグネシウム化合物を析出させて固定化する。析出剤の例は溶解析出法の例に同じ。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、こうして形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、含浸、析出、乾燥、チタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、含浸、析出、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
上記した以外に、上記(i)から(vii)に記載した方法を組み合わせて用いることも出来る。組み合わせの例としては、「塩化マグネシウムを電子供与性化合物と共粉砕した後にハロゲン化チタン化合物類と加熱処理する方法」、「塩化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と共粉砕した後に別の電子供与性化合物を用いて溶解し、更に析出剤を用いて析出する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物を電子供与性化合物により溶解し、ハロゲン化チタン化合物類と接触させることにより析出させると同時にマグネシウム化合物をハロゲン化する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物に二酸化炭素を接触させることにより、炭酸エステルマグネシウム化合物類を生成すると同時に溶解し、形成した溶解液をシリカに含浸させ、その後塩化水素と接触させることによりマグネシウム化合物をハロゲン化すると同時に析出固定化し、更にハロゲン化チタン化合物類と接触させることによりチタン化合物を担持する方法」、などを挙げることが出来る。
本発明の固体触媒成分(A)で用いられるビニルシラン化合物(B)としては、特定の構造を有するビニルシラン化合物類を用いる事が重要である。これらのビニルシラン化合物は、モノシラン(SiH4)の水素原子の少なくとも一つがビニル基類に、少なくとも一つがアルコキシ基を有する脂肪族炭化水素基で置換され、残りの水素原子の一部ないし全部がその他の遊離基に置き換えられた構造を持つ化合物であり、下記一般式で表す事が出来る。
一般に、ビニルシラン化合物は、α−オレフィンモノマーに較べて立体障害が大きく、チーグラー・ナッタ触媒では重合する事が出来ない。しかし、電子供与性の非常に強い有機シリル基が存在するために炭素−炭素二重結合部の電荷密度は非常に高くなっており、活性中心であるチタン原子への配位は非常に速いと考えられる。従って、ビニルシラン化合物が担体であるマグネシウム化合物上のルイス酸点と配位・錯化する事により、チタン化合物の溶媒への抽出を抑制できるものと期待される。本発明に開示されたアルコキシアルキル基を有するビニルシラン化合物には、スペーサーとしての脂肪族炭化水素基を介して孤立電子対を有する酸素原子が存在する為に、そのようなチタン安定化による触媒活性の改良効果が、より向上したものと考えられる。芳香族炭化水素基よりも脂肪族炭化水素基が望ましいのは、前者が剛直な構造となるのに対し、後者が柔軟でありコンフォーメーションを容易に変える事が出来る為に、担体上のルイス酸点と効果的に相互作用できるからではないかと考えられる。
Si原子に直接結合する置換基R2は、上記の2つに較べると重要性は劣り、本発明の効果を阻害しない限り任意の構造とする事が出来る。しかしながら、構造が大きすぎて立体障害が著しく増大したり、酸素原子が直接Si原子に結合したりする様な構造は好ましくない。ハロゲンは酸素原子ほどSi原子との相互作用が強くないので、取りうる構造から除外されない。以下、各置換基の構造について詳細に説明する。
式中、R1は炭化水素基、水素原子、若しくは、ハロゲンを表す。R1が炭化水素基である場合、好ましくは炭素数1から20の炭化水素基、より好ましくは炭素数1から12の炭化水素基である事が望ましい。R1がハロゲンである場合、フッ素、塩素、臭素、沃素、から選ばれる事が望ましい。この中で、塩素が特に好ましい。好ましいR1の具体例としては、メチル基やブチル基に代表されるアルキル基、シクロヘキシル基に代表されるシクロアルキル基、フェニル基に代表されるアリール基、水素原子、などを挙げる事が出来る。更に好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、水素原子、などを挙げる事が出来る。最も好ましいR1の例は、水素原子である。
複数あるR1はお互いに同一であっても異なっていても良い。
式中、iはビニル基類の数を表し、1以上3以下の値を取る。より好ましくは、iの値は1又は2である。
R2が置換基を有するフェニル基である場合、置換基の位置は任意であるが、中でもパラ位に結合していることが好ましい。特に好ましい例としては、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−クロロフェニル基、2−ブロモ−4−メトキシフェニル基、などを挙げることが出来る。
また、jの値に関わらず、R2は複数あるR1のいずれかと同一であっても良いし、全てのR1と異なっていても良い。
好ましいR3の具体例としては、メチル基やブチル基に代表されるアルキル基、シクロヘキシル基に代表されるシクロアルキル基、フェニル基に代表されるアリール基、トリメチルシリル基、などを挙げる事が出来る。更に好ましいR3の例としては、メチル基、エチル基、などを挙げる事が出来る。最も好ましくはメチル基である。
kは(Y−OR3)の数を表し、1以上3以下の値を取る。より好ましくは、kの値は1以上2以下である。kの値が2である場合、二つのR3はお互いに同一であっても異なっていても良く、二つのYもお互いに同一であっても異なっていても良い。また、kの値に関わらず、R3はR1及びR2のいずれかと同一であっても良いし、全てのR1及びR2と異なっていても良い。
好ましい化合物の例としては、CH2=CH−SiMe2−CH2OMe、CH2=CH−SiMe2−CH2OEt、CH2=CH−SiMe2−CH2O−n−Pr、CH2=CH−SiMe2−CH2O−i−Pr、CH2=CH−SiMe2−CH2O−n−Bu、CH2=CH−SiMe2−CH2O−i−Bu、CH2=CH−SiMe2−CH2O−s−Bu、CH2=CH−SiMe2−CH2O−t−Bu、CH2=CH−SiMe2−CH2O−n−Hex、CH2=CH−SiMe2−CH2O−n−Oct、[CH2=CH−]2SiMe−CH2OMe、[CH2=CH−]2SiMe−CH2OEt、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−n−Pr、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−i−Pr、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−n−Bu、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−i−Bu、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−s−Bu、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−t−Bu、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−n−Hex、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−n−Oct、CH2=CH−SiMe[CH2OMe]2、CH2=CH−SiMe[CH2OEt]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−n−Pr]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−i−Pr]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−n−Bu]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−i−Bu]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−s−Bu]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−t−Bu]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−n−Hex]2、CH2=CH−SiMe[CH2O−n−Oct]2、[CH2=CH−]2Si[CH2OMe]2、[CH2=CH−]2Si[CH2OEt]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−n−Pr]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−i−Pr]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−n−Bu]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−i−Bu]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−s−Bu]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−t−Bu]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−n−Hex]2、[CH2=CH−]2Si[CH2O−n−Oct]2、CH2=CH−SiMe2−CH2O−SiMe3、CH2=CH−SiMe2−CH2O−SiEt3、CH2=CH−SiMe2−CH2O−SiMe2−i−Pr、CH2=CH−SiMe2−CH2O−SiMe2−t−Bu、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−SiMe3、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−SiEt3、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−SiMe2−i−Pr、[CH2=CH−]2SiMe−CH2O−SiMe2−t−Bu、CH2=CH−SiMe2[−CH2OMe][−CH2OEt]、[CH2=CH−]2Si[−CH2OMe][−CH2OEt]、CH2=CH−SiMe(p−MeO−Ph)−CH2OMe、CH2=CH−SiMe(p−Br−Ph)−CH2OMe、CH2=CH−SiMe2−C2H4−OMe、CH2=CH−SiMe2−C3H6−OMe、CH2=CH−SiMe2−C4H8−OMe、[CH2=CH−]2SiMe−C2H4−OMe、[CH2=CH−]2SiMe−C3H6−OMe、[CH2=CH−]2SiMe−C4H8−OMe、CH2=CH−SiMe−[C2H4−OMe]2、CH2=CH−SiMe−[C3H6−OMe]2、CH2=CH−SiMe−[C4H8−OMe]2、
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(C)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
R4として用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10のものである。R4として用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げる事が出来る。より好ましくは、R4として分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いる事が望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
R4がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれる事が望ましく、とりわけ、窒素又は酸素である事が望ましい。R4のヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、R4が炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
R5として用いることの出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示する事が出来る。R5が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。R5として用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げる事が出来る。中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
R5がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、R4がヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
aの値が2の場合、二つあるR5は同一であっても異なっていても良い。また、aの値に関わらず、はR5とR4が同一であっても異なっていても良い。
これらの有機ケイ素化合物は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
本発明の固体触媒成分(A)は、固体成分(A1)、ビニルシラン化合物(B)、及び、有機ケイ素化合物(C)を接触させてなるものであるが、この際、本発明の効果を損なわない範囲で、有機アルミニウム化合物(D’)を任意成分として接触させても良い。
本発明で用いることの出来る有機アルミニウム化合物(D’)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記の一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
R7 cAlXd(OR8)e
(式中、R7は炭化水素基を表す。Xはハロゲン若しくは水素を表す。R8は炭化水素基若しくはAlによる架橋基を表す。但し、c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
式中、Xはハロゲン若しくは水素である。Xとして用いることの出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することが出来る。この中で、塩素が特に好ましい。
式中、R8は炭化水素基若しくはAlによる架橋基である。R8が炭化水素基である場合には、R7の炭化水素基の例示と同じ群からR8を選択することが出来る。また、有機アルミニウム化合物(D’)として、メチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合R8はAlによる架橋基を表す。
有機アルミニウム化合物(D’)は単独の化合物を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
本発明で用いる固体触媒成分(A)は、固体成分(A1)、ビニルシラン化合物(B)、及び、有機ケイ素化合物(C)を接触させてなるものである。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、有機アルミニウム化合物(D’)の様な任意成分を任意の方法で接触させても良い。固体触媒成分(A)の各構成成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50から200℃程度、好ましくは−10から100℃、更に好ましくは0から70℃、とりわけ好ましくは10℃から60℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することが出来る。好ましくは、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法を用いることが望ましい。
ビニルシラン化合物(B)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(ビニルシラン化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01から100の範囲内が望ましい。
有機ケイ素化合物(C)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比で(アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
任意成分として有機アルミニウム化合物(D’)を用いる場合の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するアルミニウムの原子比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1から100の範囲内であり、特に好ましくは1から50の範囲内が望ましい。
手順(i):固体成分(A1)にビニルシラン化合物(B)を接触させた後、有機ケイ素化合物(C)を接触させる方法
手順(ii):固体成分(A1)に有機ケイ素化合物(C)を接触させた後、ビニルシラン化合物(B)を接触させる方法
手順(iii):全ての化合物を同時に接触させる方法
手順(iv):固体成分(A1)にビニルシラン化合物(B)を接触させた後、有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更に有機アルミニウム化合物(D’)を接触させる方法
手順(v):固体成分(A1)にビニルシラン化合物(B)及び有機ケイ素化合物(C)を接触させ、その後に有機アルミニウム化合物(D’)を接触させる方法
手順(vi):全ての化合物を同時に接触させる方法
本発明のα−オレフィン重合用触媒成分で用いる有機アルミニウム化合物(D)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物を用いることが出来る。好ましくは、固体触媒成分(A)を調製する際の任意成分である有機アルミニウム化合物(D’)における例示と同じ群から選択することが出来る。この際、固体触媒成分(A)を調製する際に任意成分として用いることの出来る有機アルミニウム化合物(D’)と触媒の必須成分として用いられる有機アルミニウム化合物(D)が同一であっても異なっても良い。
有機アルミニウム化合物(D)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
有機アルミニウム化合物(D)の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(D)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1から5,000の範囲内であり、特に好ましくは10から500の範囲内が望ましい。
本発明のα−オレフィン重合用触媒成分においては、固体触媒成分(A)、及び、有機アルミニウム化合物(D)を用いることが必須要件であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、有機ケイ素化合物(C’)を用いることが出来る。
本発明で用いることの出来る有機ケイ素化合物(C’)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。有機ケイ素化合物(C’)の好ましい例は、固体触媒成分(A)における必須成分である有機ケイ素化合物(C)の好ましい例と同一である。これらの有機ケイ素化合物類は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。有機ケイ素化合物(C’)は、固体触媒成分(A)の調製に用いられる有機ケイ素化合物(C)と同一であっても異なっていても良い。
本発明のα−オレフィン重合用触媒成分においては、本発明の効果を損なわない限り、上記有機ケイ素化合物(C’)以外の成分(F)を触媒の任意成分として用いることが出来る。例えば、特開2004−124090号公報に開示された様に、分子内にC(=O)N結合を有する化合物を用いることにより、冷キシレン可溶分(CXS)の様な非晶性成分の生成を抑制することが出来る。この場合、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、などを好まし例として挙げることが出来る。
分子内にC(=O)N結合を有する化合物は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
また、ジエチル亜鉛の様なアルミニウム以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることも出来る。
本発明における固体触媒成分(A)は、本重合で使用する前に予備重合されていても良い。予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン、などに代表されるジエン化合物、などを挙げることが出来る。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン、などが特に好ましい。
固体触媒成分(A)若しくは固体成分(A1)1グラムあたりの基準で、予備重合量は、0.001から100gの範囲内であり、好ましくは0.1から50g、更に好ましくは0.5から10gの範囲内が望ましい。モノマーの供給方法は、モノマーを反応槽に定速的にあるいは定圧状態若しくは一定濃度になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合時の反応温度は−150から150℃、好ましくは0から100℃である。そして、予備重合時の反応温度は、本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。予備重合の時間は、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は複数回行っても良く、この際用いるモノマーは同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うことも出来る。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
本発明の新規なα−オレフィン重合用触媒成分を使用するα−オレフィンの重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合又は気相重合に適用される。スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒が用いられる。採用される重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合等いかなる方法でもよい。重合温度は、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃であり、そのとき分子量調節剤として水素を用いることができる。
本発明の新規なα−オレフィン重合用触媒成分は、実質的に液化α−オレフィンの潜熱を用いて除熱する重合プロセスに対して適用することが特に好ましい。ここで、「実質的に」とは、液化α−オレフィンの潜熱だけを用いることを意味するのではなく、重合槽に取り付けたジャケットによる除熱等のその他の任意の方法を併用することが可能である。液化α−オレフィンの潜熱による除熱の割合は、全除熱量に対して20%以上、取り分け、全除熱量に対して40%以上であるとき、本発明の新規な触媒の効果が高くなる。この種の重合プロセスの具体例としては、リフラックスコンデンサーを有するプロピレンバルク重合プロセスや重合モノマーガスの液化機を有するプロピレン気相重合プロセスを例示することが出来る。
本発明により重合されるα−オレフィン重合体のインデックスについては、特に制限はなく、各種用途に合わせて適宜調節することが出来る。一般的には、α−オレフィン重合体のMFRは、0.01から10,000g/10分の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.1から1,000g/10分の範囲内である。α−オレフィン重合体の密度は、用途によって好ましい範囲が異なるのが一般的である。一般射出用途などの硬い成形体が好まれる用途においては、ポリプロピレンの場合、密度の値は0.9030から0.9100g/mlの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.9050から0.9095g/mlの範囲内、とりわけ好ましくは0.9070から0.9090g/mlの範囲内が望ましい。メルトブローン不織布用途などのやや柔らかい触感が好まれる用途に対しては、ポリプロピレンの場合、密度の値は0.9000から0.9090g/mlの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.9010から0.9075g/mlの範囲内、とりわけ好ましくは0.9020から0.9060g/mlの範囲内が望ましい。
(1)MFR
タカラ社製 メルトインデクサーを用い、JIS−K6921に基づき、230℃、21.18Nの条件で評価した。
(2)ポリマー嵩密度
ASTM D1895−69に準ずる装置を使用し測定した。
(3)密度
MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS−K7112 D法に準拠して密度勾配管法で行った。
(4)Ti含量:試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
(5)ケイ素化合物含量:試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較する事により、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
(1)固体成分の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)2を200g、TiCl4を1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl4を1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl4を1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A1)のTi含量は2.7wt%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A1)のスラリーを固体成分(A1)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A1)の濃度が25g/Lとなる様に調整した。ここに、信越化学工業(株)製のCH2=CH−SiMe2−CH2OMeを25ml、(i−Bu)2Si(OMe)2を11ml、Et3Alのn−ヘプタン希釈液をEt3Alとして45g添加し、30℃で2hr反応を行った。次いで反応生成物をそのまま全量予備重合に用いた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分(A)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.5wt%、(i−Bu)2Si(OMe)2が5.5wt%含まれていた。
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0Lのステンレス鋼製オートクレーブを充分に加熱乾燥した後、室温まで冷却した。プロピレンを用いてオートクレーブ内を充分に置換した後、有機アルミニウム化合物(D)としてEt3Alのn−ヘプタン希釈液をEt3Alとして550mg添加した。次に、水素を200ml、及び、プロピレンを1,000g、順次オートクレーブへ導入した。オートクレーブの内部温度を70℃に調整した後、上記で調製した固体触媒成分を7mg(ただし、予備重合ポリマーは除く)圧入して重合を開始した。1時間後にエタノールを20ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量したところ、予備重合ポリマーを除いた固体触媒成分1gあたり29,000gのポリマーが得られていた(以後、これを「触媒活性29,000g/g−触媒」と呼ぶ。)。得られたポリマーを分析したところ、MFRが4g/10min、嵩密度が0.45g/cc、密度が0.9045g/ccであった。
ビニルシラン化合物(B)として、CH2=CH−SiMe2−CH2OMeの代わりにジビニルジメチルシランを用いた以外は実施例1と同様に行った。触媒活性は24,000g/g−触媒であった。得られたポリマーを分析したところ、MFRが4g/10min、嵩密度が0.44g/cc、密度が0.9045g/ccであった。
Claims (3)
- 下記の成分〔I〕及び〔II〕からなるα−オレフィン重合用触媒。
〔I〕下記の成分(i)〜(iii)を接触してなる固体触媒成分(A)
(i)チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分(A1)
(ii)下記式で表されるビニルシラン化合物(B)
(iii)下記式で表される有機ケイ素化合物(C)
〔II〕有機アルミニウム化合物(D) - 請求項1または2に記載のα−オレフィン重合用触媒の存在下に、α−オレフィンを重合又は共重合することを特徴とする、α−オレフィン重合体又は共重合体の製造方法。
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