JP2024009443A - α-オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法 - Google Patents

α-オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法 Download PDF

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光平 松山
Kohei Matsuyama
伸浩 岩井
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Abstract

【課題】触媒活性が良好で、かつ、α-オレフィン重合体の製造において重合体中の微粉量を減らすことができる固体触媒成分の製造方法、及び装置への微粉付着を抑えて生産安定性が高い製造方法を提供する。【解決手段】α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法は、下記成分(A1)~(A4)を、特定の条件下、不活性溶媒中で接触させる接触工程、及び得られた接触生成物にエチレン性不飽和炭化水素を接触させて、重量比で1.6倍以上となる量のエチレン性不飽和炭化水素重合体を含有する予備重合生成物からなるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を得る予備重合工程を含む。(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を含有する固体成分、(A2):アルケニル基を有するシラン化合物、(A3):アルコキシシラン化合物[但し、アルケニル基を有するシラン化合物とは異なる。]、(A4):有機アルミニウム化合物。【選択図】なし

Description

本発明は、α-オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、及びそれを用いたα-オレフィン重合体の製造方法に関し、より詳しくは、触媒活性などの触媒性能において高い性能を示す触媒に用いる固体触媒成分であって、さらに、微粉の含有量が低減されたオレフィン重合体を製造することができる固体触媒成分の製造方法に関する。
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンは、産業資材として最も重要なプラスチック材料であり、押出成形品等として包装材料及び電気材料などに、射出成形品等として自動車部材や家電製品などの工業材料に、さらに、繊維材料や建築材料などの各種の用途に、広範に汎用されている。
このように利用用途が非常に広く多岐にわたるために、ポリオレフィンにおいては、それらの用途面から、多種の性質においての改良、向上が求め続けられ、それらの要望に応じるために、主として重合触媒の改良による技術開発が展開されてきた。
遷移金属化合物と有機金属化合物を利用したチーグラー系の触媒により、触媒活性が高められて、工業生産が実現化されたが、その後に触媒活性の向上に生産コストダウンや、微粉の低減によるプラントの安定生産性の改善など、多種の性能の改良がなされている。
具体的には、触媒成分とビニルシラン化合物を重合前に不活性有機溶媒中で接触させ、ビニルシラン化合物を配位させた高収率で重合体を得ることができる触媒を製造する方法が開発された(例えば、特許文献1参照。)。その後には、ビニルシラン化合物と触媒を接触させた後、待機期間を置いて熟成させる触媒の製造方法なども開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、固体触媒成分そのものに含まれる微粉を洗浄によって除去することでα-オレフィン重合時の微粉発生を抑える方法なども開発されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2010-229277号 特開2017-115142号 特開平6-287225号
しかしながら、これらのいずれの触媒系においても、生成するα-オレフィン重合体に対する触媒活性、α-オレフィン重合によって得られるα-オレフィン重合体中の微粉量、等の触媒性能の全てにおいて、高い性能を示すものはなく、触媒性能の更なる改良技術の開発が望まれている。
本発明の目的は、かかる従来技術の状況において、触媒活性を含む触媒性能において良好な性能を示す触媒、具体的には触媒活性が高いだけでなく、α-オレフィン重合体の製造において生産効率を著しく低下させるα-オレフィン重合体中の微粉量を減らすことができるα-オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、上記本発明の固体触媒成分を用いて、α-オレフィン重合体の生産性及び生産安定性が高い製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題に鑑み、チーグラー触媒における各種の触媒成分の性質や化学的構造などについて、全般的な思考及び探索を行い、多種の触媒成分および製造条件について、鋭意検討を行った。
その結果、本発明者らは、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含有する成分(A1)に、アルケニル基を有するシラン化合物(A2)とアルコキシシラン化合物(A3)と有機アルミニウム化合物(A4)を接触処理する際、接触処理液の温度を17℃以上30℃未満とすることにより、触媒活性とα-オレフィン重合体中の微粉量低減効果のいずれも良好な重合触媒が得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法であって、
下記の成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)を、成分(A3)であるアルコキシシラン化合物の添加量を、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で0.01以上1.9未満の範囲内とし、接触温度17℃以上30℃未満の範囲内として、不活性溶媒中で接触させることにより接触生成物を得る接触工程、及び、
前記接触生成物に、エチレン性不飽和炭化水素を20℃以下で接触させてエチレン性不飽和炭化水素重合体を生成させることにより、前記接触生成物の重量に対する重量比(エチレン性不飽和炭化水素重合体の重量/接触生成物の重量)で1.6倍以上となる量のエチレン性不飽和炭化水素重合体を含有する予備重合生成物からなるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を得る予備重合工程を含む、製造方法が提供される。
成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を含有する固体成分
成分(A2):アルケニル基を有するシラン化合物
成分(A3):アルコキシシラン化合物[但し、アルケニル基を有するシラン化合物とは異なる。]
成分(A4):有機アルミニウム化合物
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明の予備重合工程において、前記接触生成物の重量に対する重量比(エチレン性不飽和炭化水素重合体の重量/接触生成物の重量)で2.0倍以上となる量のエチレン性不飽和炭化水素重合体を含有する予備重合生成物からなるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を得る、製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1乃至第2の発明において、前記成分(A2)がビニルシラン化合物である、製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1乃至第3の発明において、前記成分(A2)がジビニルシラン化合物である、製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1乃至第4の発明の接触工程において、成分(A3)であるアルコキシシラン化合物の添加量が、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で、0.01以上1.8以下の範囲内である、製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1乃至第5の発明において、前記接触生成物を洗浄しない状態で、エチレン性不飽和炭化水素と接触させる、製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1乃至第6の発明によって製造されたα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)、並びに下記成分(B)、および/または下記成分(C)を構成成分とする重合用触媒に、α-オレフィンを接触させて重合させることを特徴とする、α-オレフィン重合体の製造方法が提供される。
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):アルコキシシラン化合物[但し、アルケニル基を有するシラン化合物とは異なる。]
本発明の製造方法により製造されるα-オレフィン重合用固体触媒成分を用いたα-オレフィン重合用触媒は、触媒活性が高く、重合時の収率に優れている。
また、本発明により製造されるα-オレフィン重合用固体触媒成分を用いたα-オレフィン重合用触媒にて重合されるα-オレフィン重合体は、重合体中の微粉量が少なく、優れた粒子性状を有するものである。
したがって、本発明により得られるα-オレフィン重合体は、プラントでの生産性が高く、しかも重合体中の微粉が少ないため重合反応器への微粉の付着を抑制し、安定的に生産することができる。
本発明を以下に詳しく説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」両端の上限および下限の数値を含む範囲であることを意味する。
1.α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法
本発明は、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法である。この製造方法は、下記の成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)を、成分(A3)であるアルコキシシラン化合物の添加量を、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で0.01以上1.9未満の範囲内とし、接触温度17℃以上30℃未満の範囲内として、不活性溶媒中で接触させることにより接触生成物を得る接触工程、及び、前記接触生成物に、エチレン性不飽和炭化水素を20℃以下で接触させてエチレン性不飽和炭化水素重合体を生成させることにより、前記接触生成物の重量に対する重量比(エチレン性不飽和炭化水素重合体の重量/接触生成物の重量)で1.6倍以上となる量のエチレン性不飽和炭化水素重合体を含有する予備重合生成物からなるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を得る予備重合工程を含むことを特徴とする。
成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を含有する固体成分
成分(A2):アルケニル基を有するシラン化合物
成分(A3):アルコキシシラン化合物[但し、アルケニル基を有するシラン化合物とは異なる。]
成分(A4):有機アルミニウム化合物
以下に各構成成分を詳述する。
(1)成分(A1)
本発明で用いる成分(A1)は、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を含有する固体成分である。成分(A1)は、上記した4成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでもよい。
(1-1)チタン
成分(A1)で用いるチタンのチタン源としては、任意のチタン化合物を用いることができる。チタン化合物の代表的な例としては、特開平3-234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。
チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが好ましい。
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)Ti-O-Ti(OBu)に代表されるTi-O-Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物、などを挙げることができる。
また、3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物などを挙げることができる。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることができる。
上記のチタン化合物は、単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)Cl4-m;0<m<4などの化合物)、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COBu)・TiClなどの化合物)、などを用いることができる。
この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
(1-2)マグネシウム
成分(A1)で用いるマグネシウムのマグネシウム源としては、任意のマグネシウム化合物を用いることができる。マグネシウム化合物の代表的な例としては、特開平3-234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。
マグネシウム化合物の具体例としては、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機マグネシウム化合物、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物などを挙げることができる。上記のマグネシウム化合物は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記マグネシウム化合物の混合物や、平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)Cl2-m;0<m<2などの化合物)、などを用いることができる。
この中で好ましいのは、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドである。
(1-3)ハロゲン
成分(A1)で用いるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が特に好ましい。
ハロゲンは、上記のチタン源となるチタン化合物及び/又はマグネシウム源となるマグネシウム化合物から供給されるのが一般的であるが、その他のハロゲン化合物より供給することもできる。その他のハロゲン化合物の具体例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物、1,2-ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物、などを挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で、四塩化ケイ素が特に好ましい。
(1-4)電子供与性化合物
成分(A1)で用いる電子供与性化合物としては、任意のものを用いることができる。電子供与性化合物の代表的な例としては、特開2004-124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。
一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、アミン化合物、などを用いることが好ましい。
有機酸の具体例としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物、2-n-ブチル-マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2-n-ブチル-コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物等のカルボン酸化合物、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物、などを例示することができる。
これらのカルボン酸化合物及びスルホン酸化合物は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に、分子中の任意の位置に任意の数だけ不飽和結合を有してもよい。
有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドなどを例示することができる。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基等の炭素数1~20の脂肪族の炭化水素基からなるアルコールが好ましい。更に炭素数2~12の脂肪族の炭化水素基からなるアルコールが好ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の脂環式の炭化水素基からなるアルコールを用いることもできる。
多価有機酸のエステルは、モノエステルでもポリエステルでもよい。多価有機酸のポリエステルの場合は、複数のアルコール残基の炭化水素基は、同一であっても異なっていてもよい。
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のハライドは、モノハライドでもポリハライドでもよい。多価有機酸のポリハライドの場合は、複数のハロゲンは同一であっても異なっていてもよい。
アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることができる。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の炭化水素基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することができる。
無機酸としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することができる。無機酸の誘導体化合物としては、上記無機酸のエステルを用いることが好ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、リン酸トリブチル、などを具体例として挙げることができる。
エーテル化合物の具体例としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパンや2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3-ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の炭化水素基を分子内に有する多価エーテル化合物、などを例示することができる。
ケトン化合物としては、メチルエチルケトンに代表される脂肪族ケトン化合物、アセトフェノンに代表される芳香族ケトン化合物、2,2,4,6,6-ペンタメチル-3,5-ヘプタンジオンに代表される多価ケトン化合物、などを例示することができる。
アルデヒド化合物の具体例としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物、などを例示することができる。
アルコール化合物の具体例としては、ブタノールや2-エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物、フェノールやクレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物、グリセリンや1,1’-ビス-2-ナフトールに代表される脂肪族若しくは芳香族の多価アルコール化合物、などを例示することができる。
アミン化合物の具体例としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物、2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物、アニリンに代表される芳香族アミン化合物、1,3-ビス(ジメチルアミノ)-2,2-ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物、また、窒素原子含有芳香族化合物、などを例示することができる。
さらに、電子供与性化合物として、上記の複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることもできる。その様な化合物の例として、酢酸-(2-エトキシエチル)や3-エトキシ-2-t-ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコキシ基を分子内に有するエステル化合物、2-ベンゾイル-安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物、(1-t-ブチル-2-メトキシエチル)メチルケトンに代表されるケトエーテル化合物、N,N-ジメチル-2,2-ジメチル-3-メトキシプロピルアミンに代表されるアミノエーテル化合物、エポキシクロロプロパンに代表されるハロゲノエーテル化合物、などを挙げることができる。
これらの電子供与性化合物は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物、2-n-ブチル-マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物、2-n-ブチル-コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパンや2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3-ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の炭化水素基を分子内に有する多価エーテル化合物などである。
(1-5)成分(A1)の調製
本発明に係る成分(A1)を構成する各成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
チタン化合物の使用量は、使用するマグネシウム化合物の使用量に対するモル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001~1,000の範囲内であり、より好ましくは0.001~100の範囲であり、さらに好ましくは0.01~50の範囲内である。
マグネシウム化合物及びチタン化合物以外にハロゲン源となる化合物(すなわちハロゲン化合物)を使用する場合は、その使用量は、マグネシウム化合物及びチタン化合物の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物の使用量に対するモル比(ハロゲン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01~1,000の範囲内であり、より好ましくは0.1~100の範囲内である。
電子供与性化合物の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対するモル比(電子供与性化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001~10の範囲内であり、より好ましくは0.01~5の範囲内である。
本発明に係る成分(A1)は、成分(A1)を構成する上記各成分を、好ましくは上記の量比で接触させて得られる。
各成分の接触条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、不活性ガス雰囲気下又は不活性溶媒中で接触させることが好ましく、さらに次の条件が好ましい。
接触温度は、-50~200℃程度、好ましくは0~150℃である。接触方法としては、不活性溶媒中で撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。
成分(A1)を調製する際には、中間及び/又は最後に不活性溶媒で洗浄を行ってもよい。
好ましい不活性溶媒としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、などを例示することができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
なお、成分(A1)の調製方法としては、任意の方法を用いることができるが、具体的には、次に説明する方法を例示することができる。ただし、本発明は、下記例示により何ら制限されるものではない。
(i)共粉砕法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを共粉砕することにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法である。電子供与性化合物を、同時に又は別工程で、粉砕しても良い。粉砕機としては、回転ボールミルや振動ミル等の任意の粉砕機を用いることができる。粉砕方法としては、溶媒を用いない乾式粉砕法だけでなく、不活性溶媒共存下で共粉砕する湿式粉砕法を用いることもできる。
(ii)加熱処理法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを不活性溶媒中で接触処理を行うことにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法である。電子供与性化合物を、同時に又は別工程で、接触処理しても良い。チタン化合物として四塩化チタンなどの液状の化合物を用いる場合は、不活性溶媒なしで接触処理することもできる。また、必要に応じて、ハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を、同時に又は別工程で、接触させても良い。接触温度に特に制限はないが、90℃~130℃程度の比較的高い温度に加熱して接触処理する方が好ましい場合が多い。
(iii)溶解析出法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と接触させることにより溶解し、生じた溶解液と析出剤を接触させて析出反応を起こすことにより粒子形成を行う工程を含む方法である。
溶解に用いる電子供与性化合物の例としては、アルコール化合物、エポキシ化合物、リン酸エステル化合物、アルコキシ基を有するケイ素化合物、アルコキシ基を有するチタン化合物、エーテル化合物、などを挙げることができる。
析出剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ケイ素化合物、塩化水素、ハロゲン含有炭化水素化合物、Si-H結合を有するシロキサン化合物(ポリシロキサン化合物を含む)、アルミニウム化合物、などを例示することができる。
溶解液と析出剤の接触方法としては、溶解液に析出剤を添加しても良いし、析出剤に溶解液を添加しても良い。溶解、析出のどちらの工程でもチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子を、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ケイ素化合物、電子供与性化合物、などの任意成分と接触させても良い。この際、電子供与性化合物は、溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解、析出、チタン化合物との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、溶解、析出、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
(iv)造粒法
溶解析出法と同様に塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と接触させることにより溶解し、生じた溶解液を主に物理的な手法により造粒する工程を含む方法である。
溶解に用いる電子供与性化合物の例は、溶解析出法の例に同じである。造粒手法の例としては、高温の溶解液を低温の不活性溶媒中に滴下する方法、高温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して乾燥する方法、低温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して冷却する方法、などを挙げることができる。造粒により形成した粒子をチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に、必要に応じて、こうして形成した粒子を、ハロゲン化ケイ素化合物、電子供与性化合物、などの任意成分と接触させても良い。この際、電子供与性化合物は、溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解やチタン化合物との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、溶解、チタン化合物との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
(v)マグネシウム化合物のハロゲン化法
ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物に対して、ハロゲン化剤を接触させてハロゲン化する工程を含む方法である。
ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物の例としては、アルコキシマグネシウム化合物、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、脂肪酸のマグネシウム塩、などを挙げることができる。ジアルコキシマグネシウム化合物を用いる場合は、金属マグネシウムとアルコールとの反応により系中で調製したものを用いることもできる。この調製法を用いる場合は、出発原料であるハロゲンを含まないマグネシウム化合物の段階で造粒等により粒子形成を行うのが一般的である。ハロゲン化剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化リン化合物、などを挙げることができる。ハロゲン化剤として、ハロゲン化チタン化合物を用いない場合は、ハロゲン化により形成したハロゲン含有マグネシウム化合物を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。こうして形成した粒子を、電子供与性化合物と接触させる。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ケイ素化合物、などの任意成分と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、ハロゲンを含まないマグネシウム化合物のハロゲン化やチタン化合物との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、ハロゲン化、チタン化合物との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
(vi)有機マグネシウム化合物からの析出法
ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物、ジアルキルマグネシウム化合物などの有機マグネシウム化合物の溶液に析出剤を接触させる工程を含む方法である。
析出剤の例としては、チタン化合物、ケイ素化合物、塩化水素、などを挙げることができる。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。こうして形成した粒子を、電子供与性化合物と接触させる。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ケイ素化合物などの任意成分と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、析出やチタン化合物との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、析出、チタン化合物との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
(vii)含浸法
有機マグネシウム化合物の溶液、若しくは、マグネシウム化合物を電子供与性化合物で溶解した溶液を、無機化合物の担体、若しくは、有機化合物の担体に含浸させる工程を含む方法である。
有機マグネシウム化合物の例は、有機マグネシウム化合物からの析出法の例に同じである。マグネシウム化合物の溶解に用いる電子供与性化合物は、ハロゲンを含んでいても含んでいなくても良い。電子供与性化合物の例は溶解析出法の例に同じである。マグネシウム化合物がハロゲンを含んでいない場合には、後述するハロゲン化チタン化合物やハロゲン化ケイ素化合物などの任意成分と接触させてハロゲンを成分(A1)に含有させる。
無機化合物の担体の例としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、などを挙げることができる。有機化合物の担体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、などを挙げることができる。含浸処理後の担体粒子は、析出剤との化学反応や乾燥等の物理的処理によりマグネシウム化合物を析出させて固定化する。析出剤の例は、溶解析出法の例に同じである。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、こうして形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物やハロゲン化ケイ素化合物などの任意成分と接触させても良く、電子供与性化合物と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、含浸、析出、乾燥、チタン化合物との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、含浸、析出、チタン化合物との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
(viii)複合法
上記(i)~(vii)に記載した方法を組み合わせて用いることもできる。組み合わせの例としては、「塩化マグネシウムを電子供与性化合物と共粉砕した後にハロゲン化チタン化合物と加熱処理する方法」、「塩化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と共粉砕した後に別の電子供与性化合物を用いて溶解し、更に析出剤を用いて析出する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物を電子供与性化合物により溶解し、ハロゲン化チタン化合物と接触させることにより析出させると同時にマグネシウム化合物をハロゲン化する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物に二酸化炭素を接触させることにより、炭酸エステルマグネシウム化合物を生成すると同時に溶解し、形成した溶解液をシリカに含浸させ、その後塩化水素と接触させることによりマグネシウム化合物をハロゲン化すると同時に析出固定化し、更にハロゲン化チタン化合物と接触させることによりチタン化合物を担持する方法」、などを挙げることができる。
(2)成分(A2):アルケニル基を有するシラン化合物(A2)
アルケニル基を有するシラン化合物は、モノシラン(SiH)の水素原子の少なくとも一つがアルケニル基(好ましくは炭素数2~10のアルケニル基)に置き換えられた構造を示すものである。そして残りの水素原子はそのままか、水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくは塩素)、アルキル基(好ましくは炭素数1~12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
本発明に用いられるアルケニル基を有するシラン化合物(A2)としては、特開平3-234707号公報、特開2003-292522号公報、および特開2006-169283号公報に開示された化合物等を用いることができる。
より具体的には、ビニルシラン、メチルビニルシラン、ジメチルビニルシラン、トリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、クロロジメチルビニルシラン、クロロメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、ジクロロエチルビニルシラン、ジメチルエチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、トリペンチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、CH=CH-Si(CH(CCH)、(CH=CH)(CHSi-O-Si(CH(CH=CH)、ジビニルシラン、ジクロロジビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルメチルビニルシラン、ジアリルメチルクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリアリルエチルシラン、トリアリルビニルシラン、トリアリルクロロシラン、トリアリルブロモシラン、テトラアリルシラン、ジ-3-ブテニルジメチルシラン、ジ-3-ブテニルジエチルシラン、ジ-3-ブテニルジビニルシラン、ジ-3-ブテニルメチルビニルシラン、ジ-3-ブテニルメチルクロロシラン、ジ-3-ブテニルジクロロシラン、ジ-3-ブテニルジブロモシラン、トリ-3-ブテニルメチルシラン、トリ-3-ブテニルエチルシラン、トリ-3-ブテニルビニルシラン、トリ-3-ブテニルクロロシラン、トリ-3-ブテニルブロモシラン、テトラ-3-ブテニルシラン、などを例示することができる。
これらの中でも、トリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジメチルジビニルシラン等のビニルシラン化合物(ビニル基を有するシラン化合物)が好ましく、ジメチルジビニルシラン等のジビニルシラン化合物(二個のビニル基を有するシラン化合物)がより好ましい。
アルケニル基を有するシラン化合物(A2)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
アルケニル基を有するシラン化合物(A2)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
アルケニル基を有するシラン化合物(A2)の使用量は、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルケニル基を有するシラン化合物(A2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001~1,000の範囲内であり、より好ましくは0.01~100の範囲内である。
本発明で用いられるアルケニル基を有するシラン化合物(A2)は、通常、α-オレフィンモノマーに較べて、立体障害が大きく、チーグラー触媒では、重合することができない。しかし、電子供与性の非常に強い有機シリル基が存在するために、炭素-炭素二重結合部の電荷密度は非常に高くなっており、活性中心であるチタン原子への配位は、非常に速いと考えられる。したがって、アルケニル基を有するシラン化合物(A2)には、有機アルミニウム化合物によるチタン原子の過還元や不純物などによる活性点の失活を防ぐ効果があると考えられる。ただし、係る作用機構は本発明の技術的範囲を制限するものと解釈するものではない。
(3)成分(A3):アルコキシシラン化合物(A3)
本発明で用いられるアルコキシシラン化合物(A3)としては、一般的には、下記一般式(1)にて表される化合物等を用いることが好ましい。
Si(OR ・・・(1)
(式中、Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rは、炭化水素基を表す。0≦m≦2,1≦n≦3,m+n=3を示す。)
一般式(1)中、Rは、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基または炭化水素基含有アミノ基を表す。
が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1~20、好ましくは炭素数3~10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体例としては、n-プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i-プロピル基やt-ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが好ましく、とりわけ、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが好ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが好ましく、とりわけ、窒素又は酸素であることが好ましい。Rのヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことが好ましい。とりわけ、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
が炭化水素基含有アミノ基である場合は、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~8の炭化水素基が1つまたは2つ置換したアミノ基から選ばれることが好ましく、とりわけN,N-ジエチルアミノ基、N-エチルアミノ基などが好ましい。
一般式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基または炭化水素基含有アミノ基を表す。
として用いることのできるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。
が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i-プロピル基やt-ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが好ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが好ましい。とりわけ、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
が炭化水素基含有アミノ基である場合は、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~8の炭化水素基が1つまたは2つ置換したアミノ基から選ばれることが好ましく、とりわけN,N-ジエチルアミノ基、N-エチルアミノ基などが好ましい。
mの値が2の場合、二つあるRは、同一であっても異なっても良い。また、mの値に関わらず、Rは、Rと同一であっても異なってもよい。
一般式(1)中、Rは炭化水素基を表す。Rは、一般に炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、更に好ましくは炭素数1~5のものである。Rの具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i-プロピル基やt-ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が好ましい。nの値が2以上である場合、複数存在するRは、同一であっても異なってもよい。
本発明で用いることのできるアルコキシシラン化合物(A3)の好ましい例としては、t-Bu(Me)Si(OMe)、t-Bu(Me)Si(OEt)、t-Bu(Et)Si(OMe)、t-Bu(n-Pr)Si(OMe)、c-Hex(Me)Si(OMe)、c-Hex(Et)Si(OMe)、c-PenSi(OMe)、i-PrSi(OMe)、i-BuSi(OMe)、i-Pr(i-Bu)Si(OMe)、n-Pr(Me)Si(OMe)、t-BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN-Si(OEt)
Figure 2024009443000001
、などを挙げることができる。
アルコキシシラン化合物(A3)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。また、アルコキシシラン化合物(A3)は、前述のアルケニル基を有するシラン化合物(A2)とは、異なるものである。
本発明で用いられるアルコキシシラン化合物(A3)は、活性中心となり得るチタン原子の近傍、例えばマグネシウム担体上のルイス酸点等、に配位し、触媒活性やポリマーの規則性といった触媒性能を制御していると、考えられている。ただし、係る作用機構は本発明の技術的範囲を制限するものと解釈するものではない。
アルコキシシラン化合物(A3)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
アルコキシシラン化合物(A3)の使用量は、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01以上1.9未満の範囲内であり、より好ましくは0.01以上1.8以下の範囲内である。
アルコキシシラン化合物(A3)の使用量が上記モル比で0.01未満では、触媒活性やポリマーの規則性の制御が不充分となりやすい。アルコキシシラン化合物(A3)の使用量が上記モル比で1.9以上になると、成分(A1)から(A4)の接触時における接触生成物の粒子破壊が起こりやすいため、得られるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を含む触媒を用いて合成したオレフィン重合体の微粉量が多くなる。
(4)成分(A4):有機アルミニウム化合物(A4)
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物(A4)としては、一般的には、下記一般式(2)にて表される化合物等を用いることが好ましい。
AlX(OR …(2)
(式中、Rは炭化水素基を表す。Xはハロゲン原子または水素原子を表す。Rは炭化水素基またはAlによる架橋基を表す。1≦a≦3、0≦b≦2、0≦c≦2、a+b+c=3である。)
一般式(2)中、Rは、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~10、更に好ましくは炭素数1~8、特に好ましくは炭素数1~6、のものを用いることが好ましい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることができる。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基が最も好ましい。
一般式(2)中、Xは、ハロゲン原子または水素原子である。Xとして用いることのできるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。この中で、塩素が特に好ましい。
一般式(2)中、Rは、炭化水素基またはAlによる架橋基である。Rが炭化水素基である場合には、Rの炭化水素基の例示と同じ群からRを選択することができる。また、有機アルミニウム化合物(A4)として、メチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物を用いることも可能であり、その場合Rは、Alによる架橋基を表す。
有機アルミニウム化合物(A4)の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
有機アルミニウム化合物(A4)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4)の使用量は、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1~100の範囲内であり、より好ましくは1~50の範囲内である。
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(A4)は、接触生成物中にアルコキシシラン化合物(A3)を効率よく担持させることを目的として用いられる。従って、本重合時に、助触媒として用いられる有機アルミニウム化合物(B)とは、使用目的が異なり、区別される。
本発明では、成分(A1)に対して、下記成分(A5)、成分(A6)等の任意成分を任意の方法で接触させてもよい。
(5)成分(A5):少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)
本発明で用いることのできる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)としては、特開平3-294302号公報及び特開平8-333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(3)にて表される化合物を用いることが好ましい。
O-C(R-C(R-C(R-OR ・・・(3)
(式中、複数存在するR及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。複数存在するRは、それぞれ独立して炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
一般式(3)中、Rは、水素原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。
として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体例としては、n-プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i-プロピル基やt-ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが好ましく、とりわけ、i-プロピル基、i-ブチル基、i-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが好ましい。
二つのRは、結合して一つ以上の環を形成してもよい。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることもできる。また、他の環式構造と縮合していてもよい。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していてもよい。環上の置換基は、一般に炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のものである。具体的な例としては、n-プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i-プロピル基やt-ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
一般式(3)中、Rは、水素原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。具体的には、Rは、Rの例示から選ぶことができる。好ましくは水素である。
一般式(3)中、Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、Rは、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことができる。好ましくは、炭素数1~6の炭化水素基であることが好ましく、更に好ましくはアルキル基であることが好ましい。最も好ましくはメチル基である。
~Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが好ましい。また、R~Rが炭化水素基であるか、ヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいてもよい。R~Rがヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は、炭化水素基である場合の例示から選ばれることが好ましい。また、R~Rは、お互いに同一であっても、異なっても良い。
本発明で用いることのできる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の好ましい例としては、2,2-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジエトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-tert-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(メトキシメチル)-1,8-ジクロロフルオレン、9,9-ビス(メトキシメチル)-2,7-ジシクロペンチルフルオレン、9,9-ビス(メトキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロフルオレン、1,1-ビス(1’-ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1-ビス(α-メトキシベンジル)インデン、1,1-ビス(フェノキシメチル)-3,6-ジシクロヘキシルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7-ビス(メトキシメチル)-2,5-ノボルナジエン、などを挙げる事が出来る。中でも、2,2-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンが特に好ましい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
また、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)は、成分(A1)中の電子供与性化合物として用いられる多価エーテル化合物と同一であっても異なってもよい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の使用量は、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01~10,000の範囲内であり、より好ましくは0.5~500の範囲内である。
(6)成分(A6):少なくとも1つの酸素原子を含む不飽和環状エーテル化合物(A6-1)及びアミド結合を有する環状化合物(A6-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物
本発明で用いることのできる少なくとも1つの酸素原子を含む不飽和の環状エーテル化合物(A6―1)としては、特開2022-55431号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(4)にて表される化合物を用いることが好ましい。具体的には、不飽和環状エーテル化合物としては、フラン類、ジオキセン類、ピラン類、オキセピン類が挙げられ、特にフラン類が好ましい。
Figure 2024009443000002
(一般式(4)中、RおよびRは水素原子又は炭化水素基であり、RとR は同一であっても異なっていても良い。)
一般式(4)中、RおよびRは水素原子又は炭化水素基である。RおよびRが炭化水素基の場合、炭素数1から10、より好ましくは1から5のアルキル基、シクロアルキル基などの構造的に嵩が小さい置換基であることが好ましい。具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、i-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基が挙げられ、とりわけ、水素原子、メチル基、エチル基、が好ましい。
具体的な化合物としては、フラン、2-メチルフラン、2-エチルフラン、2-i-プロピルフラン、2,5-ジメチルフラン、2,5-ジエチルフラン、2,5-ジイソプロピルフランなどのフラン化合物を挙げることができる。これらのフラン化合物の中で、フラン、2-メチルフラン、2-エチルフラン、2,5-ジメチルフラン、2,5-ジエチルフランが好ましく、フラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、2,5-ジエチルフランがとりわけ好ましい。
また、これらのフラン化合物は、二種類以上用いることもできる。
不飽和環状エーテル化合物(A6-1)の使用量は、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
不飽和環状エーテル化合物(A6-1)の使用量は、成分(A1)に含まれるチタン成分に対してモル比(成分(A6-1)/チタン)で、2.0~30であってもよいし、5.3~26.8であってもよい。
本発明で用いることのできるアミド結合を有する環状化合物(A6―2)としては、特開2022―55431号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(5)にて表される化合物を用いることが好ましい。具体的には、ピロリドン類、ピペリドン類、イミダゾリジノン類、ピリミジノン類、オキサゾリドン類が挙げられ、特に5員環であるピロリドン類、イミダゾリジノン類、オキサゾリドン類が好ましい。
Figure 2024009443000003
一般式(5)中、Xは炭素原子、窒素原子又は酸素原子である。RおよびRは水素原子又は炭化水素基であり、RとRは同一であっても異なっていても良い。ただし、Xが酸素原子の場合、Rは存在しない。RおよびRが炭化水素基の場合、炭素数1~10、より好ましくは1~5のアルキル基、シクロアルキル基などの構造的に嵩が小さい置換基であることが好ましい。具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、i-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基が挙げられ、とりわけ、水素原子、メチル基、エチル基、が好ましい。
具体的な化合物としては、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、1-ヘキシル-2-ピロリドン、1-ペンチル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン類、2-イミダゾリドン、1-メチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-エチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノンなどのイミダゾリジノン類、2-オキサゾリドン、3-メチル-2-オキサゾリドン、3-エチル-2-オキサゾリドンなどのオキサゾリドン類を挙げることができる。これらの中で、1-エチル-2-ピロリドン、3-メチル-2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンがとりわけ好ましい。
また、これらのアミド結合を有する環状化合物は、二種類以上用いることもできる。
また、不飽和環状エーテル化合物とアミド結合を有する環状化合物は、併用してもよい。
アミド結合を有する環状化合物(A6-2)の使用量は、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
アミド結合を有する環状化合物(A6-2)の使用量は、成分(A1)に含まれるチタン成分に対してモル比(成分(A6-2)/チタン)で、2.0~30であってもよいし、5.3~26.8であってもよい。
不飽和環状エーテル化合物(A6-1)およびアミド結合を有する環状化合物(A6-2)を併用する際の使用量は、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
不飽和環状エーテル化合物(A6-1)およびアミド結合を有する環状化合物(A6-2)を併用する際の総使用量は、成分(A1)に含まれるチタン成分に対してモル比({成分(A6-1)+成分(A6-2)}/チタン)で、2.0~30であってもよいし、5.3~26.8であってもよい。
(6)成分(A1)~(A4)の接触
本発明のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法においては、前記各成分(A1)~(A4)を、不活性溶媒中で17℃以上30℃未満で接触させることにより、接触生成物を生成させる。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)、少なくとも1つの酸素原子を含む不飽和の環状エーテル化合物(A6―1)、アミド結合を有する環状化合物(A6-2)等の他の任意成分を、さらに接触させてもよい。
好ましい不活性溶媒としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、などを例示することができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
接触温度は、17℃以上30℃未満、好ましくは18℃~28℃、更に好ましくは19℃~25℃である。接触方法としては、不活性溶媒中で接触させさえすれば制限はなく、撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。好ましくは、不活性溶媒の存在下に撹拌により接触させる方法を用いることが好ましい。
接触温度が17℃未満では、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を含む触媒を用いて合成したオレフィン重合体の微粉量は少ないが、触媒活性を充分に高くすることが難しい。また、接触温度が30℃以上では、30℃よりも低い接触温度で得られるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を含む触媒と比べて触媒活性が低くなり、また、接触時における接触生成物の粒子破壊が起こりやすいため、得られるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を含む触媒を用いて合成したオレフィン重合体の微粉量が多くなる。
成分(A1)、アルケニル基を有するシラン化合物(A2)、アルコキシシラン化合物(A3)、及び有機アルミニウム化合物(A4)の接触手順に関しては、任意の手順を用いることができる。具体的な例としては、下記の手順(i)~手順(iv)、などが挙げられるが、この中でも、手順(i)及び手順(ii)が好ましい。
手順(i):成分(A1)にアルケニル基を有するシラン化合物(A2)を接触させ、次いでアルコキシシラン化合物(A3)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法。
手順(ii):成分(A1)にアルケニル基を有するシラン化合物(A2)及びアルコキシシラン化合物(A3)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法。
手順(iii):成分(A1)にアルコキシシラン化合物(A3)を接触させ、次いでアルケニル基を有するシラン化合物(A2)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法。
手順(iv):全ての化合物を同時に接触させる方法。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)等の他の任意成分を用いる場合も、上記と同様に任意の順序で接触させることができる。
また、成分(A1)、アルケニル基を有するシラン化合物(A2)、アルコキシシラン化合物(A3)、及び有機アルミニウム化合物(A4)のいずれも、任意の回数接触させることもできる。この際、アルケニル基を有するシラン化合物(A2)、アルコキシシラン化合物(A3)、及び有機アルミニウム化合物(A4)のいずれも複数回の接触で用いる化合物がお互いに同一であっても、異なっても良い。
成分(A1)乃至(A4)及び任意成分の接触工程において、ある一つの成分を複数回接触させる場合、全ての接触処理における当該成分の使用量の合計を、当該成分について上記した使用量の範囲内とすることが好ましい。
例えば、成分(A2)であるアルケニル基を有するシラン化合物を2回接触させる場合には、成分(A2)の1回目の使用量と2回目の使用量の合計を、上記した範囲内、すなわち、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルケニル基を有するシラン化合物(A2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001~1,000の範囲内、より好ましくは0.01~100の範囲内とする。
また、成分(A1)を複数回接触させる場合、全ての接触処理における成分(A1)の使用量の合計を基準として、他の成分の使用量を決定する。例えば、成分(A1)を2回接触させ、かつ、成分(A2)であるアルケニル基を有するシラン化合物を2回接触させる場合には、成分(A1)の1回目の使用量と2回目の使用量の合計を基準として、成分(A2)の1回目の使用量と2回目の使用量の合計を、上記した範囲内とする。
成分(A1)乃至(A4)を接触させることにより得られた接触生成物は、接触生成物そのものに含まれる微粉を除去することによりα-オレフィン重合時に重合体中の微粉発生を抑えるために、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄してもよい。
また、当該接触生成物は、洗浄せずに、その後の予備重合に使用しても良い。接触生成物を洗浄しない状態で予備重合する場合には、洗浄廃液を処理する必要がないこと、予備重合する際に有機アルミニウムを追加添加しなくてもよいこと、アルケニル基を有するシラン化合物(成分(A2))が触媒スラリー中に残るため接触生成物を洗浄する場合と同等以上の触媒活性が得られること、などの点で有利である。
α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製の際には、液量を調整するための希釈、濃縮、またはデカンテーション、の各操作を行っても良い。これらの操作を行う場合、接触生成物の濃度変化が0.01倍以上100倍以下であることが好ましく、0.1倍以上10倍以内であることがより好ましい。また濃度を変じない分割等の操作は自由に行ってよい。
(7)接触生成物の予備重合
本発明においては、成分(A1)乃至(A4)及び任意成分を接触させることにより得られた接触生成物に、エチレン性不飽和炭化水素を接触させて予備重合処理を行うことにより、接触生成物中にエチレン性不飽和炭化水素重合体が生成し、エチレン性不飽和炭化水素重合体を含有する予備重合生成物が得られる。
予備重合処理におけるエチレン性不飽和炭化水素としては、特開2004-124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α-メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、2,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物、などを挙げることができる。中でも、エチレン、プロピレン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
エチレン性不飽和炭化水素は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
接触生成物とエチレン性不飽和炭化水素との反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、以下の範囲が好ましい。
本発明においては、成分(A1)乃至(A4)をさせることにより得られた接触生成物中に予備重合処理によって生成させる重合体の量、すなわち、予備重合生成物中に含有させるエチレン性不飽和炭化水素重合体の重量が、成分(A1)乃至(A4)を接触させることにより得られた接触生成物の重量の1.6倍以上、好ましくは2.0倍以上になる量とする。
固体触媒成分中の重合体含有量をある程度よりも多くすることにより、当該固体触媒成分を用いて本重合を行う際に、触媒粒子の破壊が抑えられるため、得られる重合体の微粉発生を抑えることができる。
このようにして所定量のエチレン性不飽和炭化水素重合体を含有させた予備重合生成物が、本発明のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)として用いられる。すなわち本発明のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)は、上記方法によって製造された予備重合生成物からなるものである。
また、予備重合時の反応温度は、20℃以下、好ましくは15℃以下とする。予備重合時の反応温度の下限は特に制限されないが、通常、0℃以上である。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。予備重合は、複数回行っても良く、この際用いるモノマーは、同一であっても、異なってもよい。
予備重合の反応温度を20℃以下とすることにより、予備重合時における触媒粒子の破壊が抑えられるため、得られる重合体の微粉発生を抑えることができる。
2.α-オレフィン重合用触媒
α-オレフィン重合用触媒としては、上記のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を用いることが必須要件であり、さらに、一種又は二種以上の任意成分を接触させてα-オレフィン重合用触媒としても良い。
本発明においては、少なくとも、有機アルミニウム化合物(B)、及びアルコキシシラン化合物(C)を接触させて、α-オレフィン重合用触媒とすることが好ましい。
(1)有機アルミニウム化合物(B)
本発明において用いることのできる有機アルミニウム化合物(B)としては、特開2004-124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を調製する際の成分である有機アルミニウム化合物(A4)における例示と同じ群から選択することができる。触媒成分として用いることのできる有機アルミニウム化合物(B)が、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を調製する際に用いることのできる有機アルミニウム化合物(A4)と同一であっても、異なってもよい。
有機アルミニウム化合物(B)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1~5,000の範囲内であり、より好ましくは10~500の範囲内である。
(2)アルコキシシラン化合物(C)
本発明のα-オレフィン重合用触媒において、任意成分として用いられるアルコキシシラン化合物(C)としては、特開2004-124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を調製する際の成分であるアルコキシシラン化合物(A3)における例示と同じ群から選択することができる。
また、ここで使用されるアルコキシシラン化合物(C)は、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を調製する際に用いることのできるアルコキシシラン化合物(A3)と同一であっても異なってもよい。
アルコキシシラン化合物(C)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
アルコキシシラン化合物(C)を用いる場合の使用量は、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01~10000の範囲内であり、より好ましくは0.5~500の範囲内である。
(3)触媒における任意成分
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、触媒成分として、さらに下記に説明する少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)などの任意成分を用いることができる。
(3-1)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)
本発明の触媒において任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)としては、特開平3-294302号公報および特開平8-333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)において用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)における例示と同じ群から選択することができる。この際、触媒の任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)が、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を調製する際に任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)と同一であっても、異なってもよい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)を用いる場合の使用量は、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01~10,000の範囲内であり、より好ましくは0.5~500の範囲内である。
(3-2)分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)
本発明の効果を損なわない限り、上記のアルコキシシラン化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)以外の成分を、触媒の任意成分として用いることができる。例えば、特開2004-124090号公報に開示された様に、分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)を挙げることができる。化合物(E)を用いることにより、p-キシレン可溶分の様な非晶性成分の生成を抑制することができる。具体的には、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-エチル-2-ピロリジノン、などを好ましい例として挙げることができる。また、ジエチル亜鉛の様なAl以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることもできる。
分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)を用いる場合の使用量は、α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を構成するチタン成分に対するモル比(化合物(E)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001~1,000の範囲内であり、より好ましくは0.05~500の範囲内である。
3.α-オレフィンの重合
本発明により得られるα-オレフィン重合用触媒は、α-オレフィン重合の優れた触媒活性を示す。触媒活性は高い方が、収率が高いことを示し、好ましくは42000g(α-オレフィン重合体)/g(触媒)以上で、より好ましくは45000g(α-オレフィン重合体)/g(触媒)以上である。
ここで、触媒活性は、下記実施例の中で定められた手法により測定する値である。
本発明のα-オレフィン重合用触媒を使用するα-オレフィンの重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合または気相重合などに適用される。スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、などの炭化水素溶媒が用いられる。
特に、本発明のα-オレフィン重合用触媒を使用するα-オレフィンの重合は、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する横型反応器を用いて気相重合することが好ましい。
採用される重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合などいかなる方法でもよい。重合温度は、通常30~200℃程度、好ましくは50~150℃である。分子量調節剤として水素を用いることができる。
(1)α-オレフィンモノマー原料
本発明のα-オレフィン重合用触媒を用いて重合するα-オレフィンは、下記一般式で表されるものである。
R-CH=CH
(式中、Rは、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、炭化水素基は分岐を有してもよい。)
具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンである。これらのα-オレフィンの単独重合のほかに、二種以上のα-オレフィンとのランダム共重合、及び、α-オレフィンと共重合可能なモノマー(例えば、ジエン類、スチレン類など)とのランダム共重合も行うことができる。
また、1段目に単独重合またはランダム共重合した後に、2段目にランダム共重合を行うブロック共重合も実施可能である。共重合性モノマーは、ランダム共重合においては15重量%まで、ブロック共重合においては50重量%まで使用することができる。
中でも、α-オレフィンの単独重合およびブロック共重合が好ましく、特にプロピレンの単独重合および1段目がプロピレンの単独重合であるブロック共重合が最も好ましい。
(2)α-オレフィン重合体
本発明により重合されるα-オレフィン重合体のインデックスについては、特に制限はなく、各種用途に合わせて、適宜調節することができる。
一般的には、α-オレフィン重合体のMFRは、好ましくは0.01~10,000g/10分の範囲内であり、より好ましくは0.1~1,000g/10分の範囲内である。
また、α-オレフィン重合体中に含まれる微粉は、少ない方が重合体移送時における配管閉塞を低減することができる。微粉量は、好ましくは重合体全体の1.0重量%以下であり、より好ましくは0.9重量%以下であり、よりさらに好ましくは0.8重量%以下である。
ここで、MFR、微粉率の値は、下記実施例の中で定められた手法により測定する値である。
本発明により得られるα-オレフィン重合用触媒は、α-オレフィン重合体の品質を維持しつつ、α-オレフィン重合体の製造において生産効率を著しく低下させる微粉の発生を抑え、生産性を向上させ、製造コストを低減させることができる。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
4.実施例
(1)各種物性の測定
(1-1)触媒活性:
重合後のパウダー試料を秤量し、パウダー重量を、重合に用いた触媒の前駆材料であった予備重合前接触生成物の重量で割ることにより算出した。
(1-2)MFR:
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K6921に基づき、230℃、21.18N(2.16kg)の条件で評価した。
(1-3)微粉率:
重合後のパウダー試料を秤量した後、目の開きが212μmステンレス製メッシュの篩を用いて、パウダーをふるい分け、篩を通過したパウダーを秤量した。篩を通過したパウダーの重量を、ふるい分け前パウダー試料の重量で割ることで、微粉率を評価した。
(2)試料の調製
[実施例1]
(2-1)成分(A1)の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ-n-ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn-ヘプタンを用いて、トルエンをn-ヘプタンで置換し、成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、成分(A1)のTi含量は2.7wt%であった。
(2-2)オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製
(i)接触工程
次に精製したn-ヘプタンを導入して、成分(A1)4gの濃度が20g/Lとなる様に液レベルを調整し、成分(A2)としてジメチルジビニルシランを1.0ml、成分(A3)としてジイソブチルジメトキシシランを0.64ml、成分(A4)としてトリエチルアルミニウムのn-ヘプタン希釈液をトリエチルアルミニウムとして2.4ml添加した。その後20℃で2時間反応を行うことで、接触生成物である固体成分(A)を含むスラリーを得た。
(ii)予備重合工程
上記で得られた固体成分(A)を含むスラリーを用いて、以下の手順により予備重合を行った。スラリーを10℃に冷却した後、8gのプロピレンを15分かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に10分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換した。得られたα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)は、固体成分1g当たり2.10gのポリプロピレンを含んでいた。
(2-3)プロピレンの重合
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0Lのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(B)としてトリエチルアルミニウムを550mg、成分(C)としてジイソプロピルジメトキシシランを85mg、及び水素を3000ml導入し、次いで、液体プロピレンを750g導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、上記のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を予備重合前接触生成物の重量換算で10mg圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表1に示す。
[実施例2]
オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製において、実施例1のジブチルジメトキシシラン(成分(A3))の添加量を0.28mlとした点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製において、実施例1のトリエチルアルミニウム(成分(A4))を添加した後の反応温度を15℃とした点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製において、実施例1のトリエチルアルミニウム(成分(A4))を添加した後の反応温度を30℃とした点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製において、実施例1のトリエチルアルミニウム(成分(A4))を添加した後の反応温度を40℃とした点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
予備重合において、実施例1の予備重合時のプロピレンの反応を30℃とした点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製において、実施例1の予備重合におけるプロピレンの添加量を6gとした点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
[比較例6]
オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の調製において、実施例1のジブチルジメトキシシランの添加量を1.0mlとした点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
Figure 2024009443000004
(3)各実施例と各比較例の評価結果と考察
表1から明らかなように、実施例1~2および比較例1~6を対比検討することにより、実施例1~2の触媒が微粉率と触媒活性において優れていることがわかる。
具体的には、実施例1においてα-オレフィン重合用触媒成分(Ab)の調製温度、すなわち成分(A1)から(A4)の接触温度を20℃にしたときに、比較例1において調製温度を15℃にしたときと比べて触媒活性が向上していることから、α-オレフィン重合用触媒成分(Ab)の調製温度を15℃よりも高い温度とすることが望ましいことが分かる。
また、実施例1と比較例2~3から、α-オレフィン重合用触媒成分(Ab)の調製温度が20℃以上の領域においては、調製温度が低い程、活性が上がり、また、微粉発生量を抑えられることが分かる。また、調製温度が30℃以上になると、20℃における活性と比べてやや低下し、微粉量も多くなることが分かる。
α-オレフィン重合用触媒成分(Ab)調製のための反応では、成分(A1)中の電子供与性化合物が成分(A4)である有機アルミニウム化合物との反応を経て成分(A1)の外に抽出され、その空隙に成分(A3)であるアルコキシシラン化合物が補われることで高活性かつ高立体規則性の重合触媒の元となる接触生成物に至ると考えられる。ただし、この際、成分(A4)である有機アルミニウム化合物によるチタンの還元が同時に進行し、過剰に還元されたチタン種を発生させることは好ましくない。この過剰な還元を抑制するために、成分(A2)であるアルケニル基を有するシラン化合物が効果的な働きをしており、チタンへの速やかな配位を通じて成分(A4)の攻撃からチタンを守ると考えられる。α-オレフィン重合用触媒成分(Ab)調製の反応を目的通り進めるためには、調製温度を高くすることが望ましいものの、温度が高くなるに伴い、α-オレフィン重合用触媒成分(Ab)の調製反応が促進され、反応熱による粒子破壊が進むと考えられる。
また実施例1と比較例4から、予備重合温度が30℃では微粉量が多くなりすぎ、予備重合温度が低い程、微粉の発生を抑えることができることがわかる。予備重合温度が高い程、α-オレフィン重合用触媒成分(Ab)の調製反応が促進され、反応熱による粒子破壊が進むと考えられる。
また、実施例1と比較例5から、予備重合後のプロピレン量が1.5g-PP/g-触媒(比較例5)では活性が低く、微粉も多いのに対し、予備重合後のプロピレン量が多い程、微粉の発生を抑えることができることがわかる。予備重合の温和な条件で、ある程度重合を進めておくことで、本重合における急激な反応を抑えることができ、粒子破壊が抑えられるためと考えられる。
また、実験例1~2と比較例6から、触媒成分(Ab)の調製におけるジブチルジメトキシシラン(成分(A3))の添加量を、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(ジブチルジメトキシシランのモル数/成分(A1)中のチタン原子のモル数)で1.9未満(ジブチルジメトキシシランの添加量0.25ml/触媒g未満)とすることで、微粉の発生を抑えられることがわかる。ジブチルジメトキシシラン添加量が成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比で1.9以上になると、ジブチルジメトキシシランの触媒への配位量は増えるものの、それに伴い、成分(A4)の有機アルミニウム化合物との反応による成分(A1)中の電子供与性化合物の成分(A1)外への抽出量が急激に増加し、粒子強度が低下したと考えられる。
従って、本発明の実験例の触媒の製造方法は、水素応答性や粒径といった重合性能やパウダー品質を維持しつつ、微粉発生を抑えることができ、また、触媒活性を向上させることができる触媒の製造方法であるといえる。
本発明のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を用いて得られるα-オレフィン重合用触媒は、α-オレフィン重合体の品質を維持しつつ、α-オレフィン重合体の製造において生産効率を著しく低下させる微粉の発生を抑え、生産性を向上させ、製造コストを低減させることができ、産業上、利用可能性が高いものである。
したがって、本発明により得られるα-オレフィン重合体は、プラントでの生産性が高く、しかも重合体中の微粉が少ないため重合反応器への微粉の付着を抑制し、安定的に生産することができる。
また、本発明の触媒を用いて得られたα-オレフィン重合体、特にポリプロピレンは、自動車部品や家電部品に代表される射出成形用途、二軸延伸フィルムに代表される押出成形用途、並びに、スパンボンドに代表される繊維等に好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. α-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法であって、
    下記の成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)を、成分(A3)であるアルコキシシラン化合物の添加量を、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で0.01以上1.9未満の範囲内とし、接触温度17℃以上30℃未満の範囲内として、不活性溶媒中で接触させることにより接触生成物を得る接触工程、及び、
    前記接触生成物に、エチレン性不飽和炭化水素を20℃以下で接触させてエチレン性不飽和炭化水素重合体を生成させることにより、前記接触生成物の重量に対する重量比(エチレン性不飽和炭化水素重合体の重量/接触生成物の重量)で1.6倍以上となる量のエチレン性不飽和炭化水素重合体を含有する予備重合生成物からなるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を得る予備重合工程を含む、製造方法。
    成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を含有する固体成分
    成分(A2):アルケニル基を有するシラン化合物
    成分(A3):アルコキシシラン化合物[但し、アルケニル基を有するシラン化合物とは異なる。]
    成分(A4):有機アルミニウム化合物
  2. 前記予備重合工程において、前記接触生成物の重量に対する重量比(エチレン性不飽和炭化水素重合体の重量/接触生成物の重量)で2.0倍以上となる量のエチレン性不飽和炭化水素重合体を含有する予備重合生成物からなるα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)を得る、請求項1に記載のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法。
  3. 前記成分(A2)がビニルシラン化合物である、請求項1に記載のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法。
  4. 前記成分(A2)がジビニルシラン化合物である、請求項1に記載のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法。
  5. 前記接触工程において、成分(A3)であるアルコキシシラン化合物の添加量が、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で、0.01以上1.8以下の範囲内である、請求項1に記載のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法。
  6. 前記接触生成物を洗浄しない状態で、エチレン性不飽和炭化水素と接触させる、請求項1に記載のα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたα-オレフィン重合用固体触媒成分(Ab)、並びに下記成分(B)、および/または下記成分(C)を構成成分とする重合用触媒に、α-オレフィンを接触させて重合させる、α-オレフィン重合体の製造方法。
    成分(B):有機アルミニウム化合物
    成分(C):アルコキシシラン化合物[但し、アルケニル基を有するシラン化合物とは異なる。]
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