JP5337413B2 - 燃料電池用測定装置および燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、核磁気共鳴法を用いた燃料電池用測定装置および燃料電池システムに関する。
核磁気共鳴法を用いて、試料中の溶媒量や、溶媒分子の易動性等を測定する測定装置が提案されている(特許文献1参照)。
このような測定装置では、たとえば、静磁場におかれた試料の特定箇所に対し、試料より小さい小型RFコイルを用いて、励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に応じたNMR(核磁気共鳴)信号を取得している。そして、小型RFコイルで取得したNMR信号に基づき、試料中の溶媒量や、溶媒分子の易動性等を算出している。
このような測定装置では、磁場中に置かれた原子核のスピン共鳴現象により核磁化の運動をNMR信号として検出することで溶媒量等を計測することができる。
1Teslaの磁場中でのスピン共鳴周波数は約44MHzであり、その周波数帯を高感度に選択的に検出するために、特許文献1のような測定装置には、LC共振回路が用いられる。
また、LC共振回路は、励起用振動磁場を発生させるパルスを効率よく小型RFコイルに伝送するために、さらには、小型RFコイルが受信したNMR信号を効率よくプリアンプに伝送するために、インピーダンス整合用にも用いられている。
具体的には、図23に示すような、共振回路900が使用されている。
国際公開2006/109803号パンフレット
近年、特許文献1に記載したような測定装置を使用して、燃料電池の固体高分子電解質膜を計測することが望まれている。
しかしながら、図23に示すような共振回路900を使用した場合には、以下のような課題がある。
図23の共振回路900では、共振回路全体から放射される励起用振動磁場が届く領域をできるだけ小さく制限し、さらには、信号受信時に不要なノイズなどを拾う領域をできるだけ小さく制限したいために、小型RFコイル914を、可変容量コンデンサ902に直接接続する方法がとられるが、この方法では、小型RFコイル914と、可変容量コンデンサ902との距離が近くなりやすい。固体高分子電解質膜に対し、小型RFコイル914を近づけて計測を行う場合、可変容量コンデンサ902がじゃまになり、小型RFコイルを所望の位置に設置することが困難となる場合がある。そのため、所望の計測を行うことが困難となる可能性がある。
特に、燃料電池の固体高分子電解質膜の計測を行う場合には、固体高分子電解質膜という、比較的小さい領域内に小型RFコイル914を設置する必要があるので、従来の共振回路では、小型RFコイル914を所望の位置に設置することが困難となる場合がある。
なお、共振回路を用いてパルス励起を行う場合には、可変容量コンデンサ902には大きな電圧がかかるため、可変容量コンデンサ902自体を小さくすることは難しい。
一方で、小型RFコイル914と、可変容量コンデンサ902とを一定距離離間することも考えられるが、この場合、単に小型RFコイルの線を延長させて、小型RFコイル914と、可変容量コンデンサとを接続したのでは、ノイズを拾う原因となる。
本発明は、測定精度の低下を抑制し、所望の計測を行うことができる信頼性に優れた燃料電池用測定装置、燃料電池システムを提供するものである。
本発明によれば、燃料電池の固体高分子電解質膜の状態を測定するための燃料電池用測定装置であって、プロトン性溶媒を含む前記固体高分子電解質膜に対して、静磁場を印加する静磁場印加部と、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加するとともに、前記固体高分子電解質膜の特定箇所で生じた核磁気共鳴信号を取得する、前記固体高分子電解質膜よりも小さい小型RFコイルと、前記小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部と、前記小型RFコイルで取得した前記核磁気共鳴信号を検出する信号検出部と、前記小型RFコイルを含んで構成される共振回路とを有し、前記共振回路は、前記信号検出部および前記RFパルス生成部に接続され、前記共振回路は、前記小型RFコイルと、容量素子と、前記小型RFコイルと前記容量素子とを接続する同軸ケーブルとを有し、前記同軸ケーブルの長さは、前記同軸ケーブル内を伝播する電磁波の波長をλとした場合、
λ/4×0.6+(λ/2)×n以上、λ/4×0.8+(λ/2)×n以下(nは0以上の整数)である燃料電池用測定装置が提供される。
本発明によれば、小型RFコイルと、容量素子とを同軸ケーブルで接続しているため、小型RFコイルの周辺領域のみを励起し、さらに、受信されるノイズも大きくせずに、小型RFコイルと、容量素子との間の距離を長く確保することができる。これにより、測定精度を低下させずに、小型RFコイルを固体高分子電解質膜上の所望の位置に設置し、計測操作しやすくすることができる。そのため、信頼性に優れた燃料電池用測定装置とすることができる。
ここで、燃料電池用測定装置により計測される固体高分子電解質膜の状態とは、固体高分子電解質膜に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、固体高分子電解質膜の特定箇所で生じた核磁気共鳴信号を取得することで、得られる固体高分子電解質膜の情報であればよい。たとえば、固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒量、プロトン性溶媒の易動性、固体高分子電解質膜中での電流値等があげられる。
この際、前記小型RFコイルは複数設けられるとともに、複数の前記共振回路が設けられ、前記複数の小型RFコイルと、前記複数の共振回路とは、前記小型RFコイル1つに対して、1つの前記共振回路が設けられる関係にあることが好ましい。
燃料電池の固体高分子電解質膜の状態(たとえば、プロトン性溶媒量、プロトン性溶媒の易動性、発電量)は、面内で均一ではなく、ばらつきがある。たとえば、固体高分子電解質膜のうち、比較的乾きやすい部分では、必然的に、プロトン性溶媒量が少なくなる。また、燃料電池を運転している状態において、たとえば、ガス供給口付近では、電流値が高くなる一方、ガス排出口付近では電流値が低くなる傾向がある。
そのため、燃料電池の運転状態を正確に把握するためには、固体高分子電解質膜のプロトン性溶媒量等の分布を計測する必要がある。
そこで、小型RFコイルを複数設ける必要がある。このような場合において、従来の共振回路を使用した場合には、コンデンサ同士が干渉し、小型RFコイルを密に配置することが困難となる。
これに対し、本発明では、小型RFコイルと、容量素子とを同軸ケーブルで接続しているため、小型RFコイルと、容量素子とを離間して設置することができる。そのため、複数の小型RFコイルを密に配置することが可能となる。
さらに、前記固体高分子電解質膜表面側から平面視した状態において、前記複数の小型RFコイルは、前記固体高分子電解質膜の面内の領域に設置されていることが好ましい。
これに加え、前記複数の小型RFコイルのうち、一部の小型RFコイルは、前記固体高分子電解質膜の表面側に配置され、他の一部の小型RFコイルは、前記固体高分子電解質膜の裏面側に配置されていることが好ましい。
このようにすることで、たとえば、固体高分子電解質膜のプロトン性溶媒量等の分布を正確に把握することができる。
また、小型RFコイルの配置密度は、1cm2当たり0.1個以上、100個以下であることが好ましい。
さらに、前記燃料電池は、前記固体高分子電解質膜、前記固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極、および、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極を含んで構成される接合体と、前記接合体を挟んで設置される一対の拡散層とを備え、前記小型RFコイルは、一方の前記拡散層と前記接合体との間、および、他方の前記拡散層と前記接合体との間の少なくともいずれか一方に設置されることが好ましい。
このような位置に小型RFコイルを設置することで、固体高分子電解質膜の状態を確実に計測することができる。
また、接合体と、拡散層との間という非常に狭い領域に小型RFコイルを設置する場合に、従来の共振回路を使用した場合には、コンデンサと小型RFコイルとの位置が非常に近いため、コンデンサがじゃまになり、所望の位置に設置できない可能性がある。
これに対し、本発明では、小型RFコイルと、容量素子とを同軸ケーブルで接続しているため、同軸ケーブルを引き回すことができ、接合体と、拡散層との間という非常に狭い領域においても、小型RFコイルを所望の位置に設置することができる。
ここで、前記容量素子は、非磁性材料を用いて構成される必要はなく、磁性材料を用いて構成されているものでも使用することができる。これにより、容量素子の選択肢を広げることができる。
小型RFコイルと、容量素子とを同軸ケーブルにて接続しているため、小型RFコイルと、容量素子とを離間して設置することができる。そのため、容量素子を静磁場印加部からはなして設置することができる。従って、容量素子を磁性材料を用いて構成しても、その容量素子が磁場の影響を受けてその特性が変動してしまうことを抑制することができる。さらに、容量素子を磁性材料を用いて構成しても、計測領域から離すことができるため、計測領域の静磁場をほとんど乱すことはない。これにより、非磁性材料を用いた高価な容量素子を使用しなくてもよいため、測定装置にかかるコストを低減させることができる。
また、前記共振回路は、複数の前記容量素子を有し、前記複数の容量素子は、特定の周波数で当該共振回路を共振させるためのチューニング用の容量素子と、インピーダンス整合用の容量素子とを有するものであることが好ましい。
さらに、前記同軸ケーブルの長さは、前記同軸ケーブル内を伝播する電磁波の波長をλとした場合、λ/4×0.6+(λ/2)×n以上、λ/4×0.8+(λ/2)×n以下(nは0以上の整数)である。このような長さの同軸ケーブルを使用することで、共振回路のインダクタンスを大きくすることができる。これより、容量素子の容量を比較的小さなものとすることが可能となる。

さらに、上述した燃料電池用測定装置は、前記小型RFコイルで取得した核磁気共鳴信号に基づいて、前記固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒量を算出する算出部を有するものであってもよく、また、前記固体高分子電解質膜に対して、勾配磁場を印加する勾配磁場印加部と、前記勾配磁場および前記励起用振動磁場の印加を所定のパルスシーケンスに従って実行させる制御部と、第二算出部とを有し、前記小型RFコイルは、励起用振動磁場および勾配磁場に対応する核磁気共鳴信号を取得し、前記第二算出部では、異なる勾配磁場に対応して得られた核磁気共鳴信号に基づいて、前記固体高分子電解質膜の特定箇所の易動性を算出するものであってもよい。
さらには、前記小型RFコイルで取得された前記核磁気共鳴信号の周波数と前記励起用振動磁場の周波数との差分を算出し、前記差分から、前記固体高分子電解質膜の前記特定箇所の電流を算出する第三算出部を有するものであってもよい。
また、本発明では、上述したいずれかの燃料電池用測定装置と、燃料電池とを含む燃料電池システムを提供することができる。
本発明によれば、測定精度の低下を抑制し、所望の測定を行うことができる信頼性に優れた燃料電池用測定装置、燃料電池システムが提供される。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
この燃料電池システム1は、図2に示すように、燃料電池5と、この燃料電池5の固体高分子電解質膜を計測する燃料電池用測定装置(以下、単に測定装置という場合もある)100とを備える。
(燃料電池の構成)
燃料電池5は、図1に示すように、固体高分子電解質膜511を有する膜電極接合体(接合体)51と、一対の拡散層52、53と、セパレータ54,55とを有する。
膜電極接合体51は、固体高分子電解質膜511と、この固体高分子電解質膜511の両側に設けられた触媒層512、513とを有する。
固体高分子電解質膜511は、プロトン性溶媒(本実施形態では水)を含有しており、この水を含有した状態でイオンを伝導することができる膜である。固体高分子電解質膜511としては、たとえば、ナフィオン(登録商標)等を使用することができる。
一対の触媒層512、513のうち、一方の触媒層512は、固体高分子電解質膜511の一方の面に接触するように設けられ、他方の触媒層513は、固体高分子電解質膜511の他方の面に接触するように設けられる。触媒層512、513は、たとえば、カーボン粒子の表面に白金触媒を担持させたものを固体高分子電解質膜511の表面に積層することで形成される。
一方の触媒層512は、酸化剤極(酸素極、カソード)として機能する。他方の触媒層513は、燃料極(水素極、アノード)として機能する。燃料電池5の運転中は、電流は、電気回路(電子負荷装置)57を通って酸素極(触媒層512)から水素極(触媒層513)に移動する。
なお、触媒層512,513には、燃料電池5で発電した電流を取り出すための集電用の電極56がそれぞれ取り付けられている。
一対の拡散層52、53は、膜電極接合体51を挟むように配置される。拡散層52,53は、酸化剤極あるいは、燃料極へのガスを拡散させるガス拡散層である。
拡散層52は、触媒層512の固体高分子電解質膜511側の面と反対の面側に設けられる。同様に、拡散層53は、触媒層513の固体高分子電解質膜511側の面と反対の面側に設けられる。拡散層52,53としては、たとえば、撥水処理されたカーボンペーパとすることができる。膜電極接合体51内に存在する水は、拡散層52,53を伝わって外部に排出される。
セパレータ54,55は流路541,551を有しているポリカーボネイト製の板状体である。なお、セパレータ54,55はカーボンや銅合金、アルミニウム合金、ステンレスであっても良い。
セパレータ54,55の流路を通るガスは、拡散層52,53を介して触媒層512,513と接触する。
(燃料電池用測定装置の構成)
次に、図2〜図6を参照して、測定装置100について説明する。なお、測定装置100の各構成要素は、CPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム等を中心に、ハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
はじめに、本実施形態の測定装置100の概要について説明する。
測定装置100は、プロトン性溶媒を含む試料(本実施形態では固体高分子電解質膜511)に対して、静磁場を印加する静磁場印加部113と、前記固体高分子電解質膜511に対して、励起用振動磁場を印加するとともに、前記固体高分子電解質膜511の特定箇所で生じた核磁気共鳴信号を取得する、前記固体高分子電解質膜511よりも小さい小型RFコイル114と、前記小型RFコイル114に前記励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部100Aと、前記小型RFコイル114で取得した核磁気共鳴信号を検出する信号検出部100Bと、前記小型RFコイル114を含んで構成される共振回路2とを有する。共振回路2は、前記信号検出部100Bおよび前記RFパルス生成部100Aに接続され、前記共振回路2は、前記小型RFコイル114と、容量素子C,Cと、前記小型RFコイル114と前記容量素子C,Cとを接続する同軸ケーブル21とを有する。
次に、本実施形態の測定装置100について詳細に説明する。
まず、固体高分子電解質膜511周辺の装置構成について説明する。
図2に示すように、磁石113は、固体高分子電解質膜511全体に対して静磁場を印加する。この静磁場が印加された状態で励起用振動磁場が固体高分子電解質膜511に印加され、水分量、自己拡散係数(易動性)、電流値の測定がなされる。
小型RFコイル114は、固体高分子電解質膜511の特定箇所に対し、励起用振動磁場を印加する。また、励起用振動磁場に対応するNMR信号、勾配磁場に対応するNMR信号を取得する。
本実施形態では、小型RFコイル114は複数設けられている(小型RFコイル114A〜114F(図1,図3参照))。図1に示したように、小型RFコイル114は、固体高分子電解質膜511の面方向に沿って複数配置されている。すべての小型RFコイル114は、固体高分子電解質膜511を平面視した状態で、固体高分子電解質膜511の領域内に配置されている。
この小型RFコイル114は、固体高分子電解質膜511の表面側および裏面側にそれぞれ複数個配置されており、拡散層52と膜電極接合体51との間、拡散層53と膜電極接合体51との間に設置されている。
各小型RFコイル114の計測領域は、固体高分子電解質膜511の表面から、固体高分子電解質膜511の厚みの途中位置までである。そして、拡散層52と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の計測領域と、拡散層53と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の計測領域とは重なっていない。
ここで、小型RFコイル114の配置密度は、1cm2当たり0.1個以上、100個以下である。なかでも、1cm2当たり1個以上、100個以下であることが好ましい。また、さらに好ましくは、1cm2当たり1個以上、10個以下である。
このようにすることで、固体高分子電解質膜511の水分量分布等を正確に把握することができる。
小型RFコイル114としては、たとえば、平面型の渦巻きコイルを用いることができ、このような平面型コイルを使用することで、計測領域を限定することができる。なお、小型RFコイル114は、平面型の渦巻き型コイルに限られず、種々の形態のものを用いることができる。たとえば、平面型の8の字コイル(バタフライコイル、Double−D型コイル等と呼ばれることもある。)等も利用可能である。8の字コイルは、二つの渦巻き型コイルを含むものであり、磁石の主磁場方向にコイルの渦巻きの軸が平行である場合でも、または、両者に角度がある場合でも、固体高分子電解質膜からのNMR信号を検知することができる。また、渦巻き型コイルは巻いたコイルの軸方向に感度を有するのに対し、8の字コイルは巻いたコイルと同じ平面内で感度を有する。
また、平面型の渦巻きコイルである小型RFコイル114により印加される励起用振動磁場Hは、磁石113により印加される静磁場Hに対し垂直になる必要がある。
また、固体高分子電解質膜中の電流を計測する場合には、電流Iの流れる方向(図1中ではy方向)と、静磁場H0を印加する方向(図1中ではx方向)および、小型RFコイルが振動磁場H1を誘起する方向(図1中ではz方向)が全て垂直の関係にあることが好ましい。なお、電流I、静磁場H0、振動磁場H1の3つが完全に垂直でない場合、つまり傾いていても、直交成分があれば、信号対ノイズ比の許す範囲で計測が可能である。
小型RFコイル114により印加される振動磁場(励起用振動磁場)は、RF発振器102、変調器104、RF増幅器106、パルス制御部151(図6参照)、スイッチ部170および小型RFコイル114の連携により生成される。すなわち、RF発振器102から出力される励起用基本波は、パルス制御部151による制御に基づいて変調器104にて変調され、パルス形状となる。生成されたRFパルスはRF増幅器106により増幅された後、小型RFコイル114へ送出される。小型RFコイル114は、このRFパルスを固体高分子電解質膜511の特定箇所に印加する。小型RFコイルにRFパルスを送出するためのRF励起パルス生成部(RFパルス生成部)100Aは、RF発振器102、変調器104およびRF増幅器106からなる。RFパルス生成部100Aは、図3に示すように、小型RFコイル114ごとに設けられている。
印加されたRFパルスに対して放出されたNMR信号は、小型RFコイル114が検出する。このNMR信号は、プリアンプ112により増幅された後、位相検波器140へ送出される。位相検波器140は、このNMR信号を検波し、A/D変換器118へ送出する。A/D変換器118はNMR信号をA/D変換した後、演算部130へ送出する。
換言すると、小型RFコイル114により取得されたNMR信号を検出するNMR信号検出部100Bは、プリアンプ112、位相検波器140から構成される。各NMR信号検出部は、図3に示すように、小型RFコイル114ごとにそれぞれ対応して設けられている。
以上、励起用振動磁場の印加およびNMR信号の検出について述べたが、これらは、小型RFコイル114を含むLC共振回路(共振回路)2により実現することができる。図3に示すように、LC共振回路2は、スイッチ部170を介して、RF励起パルス生成部100A、NMR信号検出部100Bに接続されている。
図4に、LC共振回路2を示す。
このLC共振回路2は、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサC、Cと、同軸ケーブル21とを有する。LC共振回路2は、図3に示すように、小型RFコイル114ごとに設けられている。換言すると、測定装置100は、複数のLC共振回路2と、複数の小型RFコイル114とを有し、一つの小型RFコイル114に対し、一つのLC共振回路2が設けられる関係となっている。
チューニング用の可変容量コンデンサC(可変容量素子)は、特定の周波数で回路が共振し、NMR信号を受信しやすくするように小型RFコイル114に対して挿入されている。
一方、アンプを含む伝送系を同一のインピーダンスに整合させるために、マッチング用可変容量コンデンサC(可変容量素子)が共振回路2に含まれている。
可変容量コンデンサCは、いずれも磁性材料を使用して構成されている。そして、可変容量コンデンサC、Cの容量はたとえば、30pF以下となっている。
同軸ケーブル21は、図示しないが、第1導電体の周囲を絶縁体が被覆し、この絶縁体の周囲を第2導電体が被覆している。そして、第2導電体の周囲は、保護被膜で覆われている。
このような構造の同軸ケーブル21は、図5に示すように、コイルと、キャパシタとが組みあわされた等価回路として表すことができる。
同軸ケーブル21の長さを調整すると、図4の点Aから見たインダクタンスとキャパシタンスが増減するように見える。
ここで、測定装置100では、送受信系、伝送系のケーブル等がすべてたとえば、特定のインピーダンス(たとえば、50Ω)でインピーダンス整合されている。そこで、同軸ケーブル21の長さを調整し、小型RFコイル114を含む共振回路の特性インピーダンスを、所定のインピーダンスとすればよい。
同軸ケーブル21の長さは、同軸ケーブル21内を伝播する電磁波の波長をλとした場合、λ/4×0.6+(λ/2)×n以上、λ/4×0.8+(λ/2)×n以下(nは0以上の整数)とすることが好ましい。
再度図2に示すように、スイッチ部170は、小型RFコイル114、RF励起パルス生成部100AおよびNMR信号検出部(信号検出部)100Bを接続する分岐部に設けられている。
スイッチ部170は、
小型RFコイル114とRF励起パルス生成部100A(具体的には、RF増幅器106)とが接続された第1状態、および、
小型RFコイル114とNMR信号検出部100B(具体的には、位相検波器140)とが接続された第2状態
を切り替える機能を有する。
スイッチ部170は、このような「送受信切り替えスイッチ」の役目を果たす。この役目は、RF power−ampで増幅された励起パルスを小型RFコイル114に伝送する際には、受信系のプリアンプ112を切り離して大電圧から保護し、励起後にNMR信号を受信する際には、RF増幅器106から漏れてくる増幅用大型トランジスタが発するノイズを受信系のプリアンプ112に伝送しないように遮断することである。小型RFコイル114を用いて計測する場合には、微弱な信号を取り扱うため、スイッチ部170が必要となる。
一対のGコイル251は、固体高分子電解質膜511に勾配磁場を印加できるように配置される。一対のGコイル251の形状は種々のものを採用し得るが、本実施形態では平板状コイルを用いる。一対のGコイル251は、燃料電池5を挟むようにして配置される。そして、一対のGコイル251間には、複数の小型RFコイル114(114A〜114F)が配置されている。
小型RFコイル114とGコイル251との間には、図示しない遮蔽シールドが設けられている。この遮蔽シールドにより、Gコイル251からのノイズが、小型RFコイル114に影響するのを防止している。遮蔽シールドは、ノイズの通過を防止し、かつ、磁場が通過できるような厚さとなっている。
なお、水分量、自己拡散係数、電流値を計測する際には、小型RFコイル114のみを固体高分子電解質膜511に接触させる。
図2に示すように、RF発振器102から変調器104を介した小型RFコイル114への高周波パルスの印加ならびに電流駆動用電源159を介した第1Gコイル251および第2Gコイル251へのパルス電流の供給は、制御部150にて行われる。
制御部150は、図6に示すように、測定モードを切り替える切替部(モード切替制御部152)と、パルス制御部151と、勾配磁場制御部153とを有する。
モード切替制御部152は、水分量を測定する第1モードと、自己拡散係数を測定する第2モードと、電流値を計測する第3モードとを切り替える。
モード切替制御部152に接続された操作信号受付部129は、作業者の測定モードの要求を受け付ける。そして、操作信号受付部129が、この要求をモード切替制御部152に送出する。
パルス制御部151は、変調器104の動作を制御し、スイッチ部170の開閉動作を制御し、勾配磁場制御部153は、電流駆動用電源159の動作を制御する
制御部150には、シーケンステーブル127が接続されており、シーケンステーブル127には、水分量を測定する際の高周波パルスのシーケンスデータと、自己拡散係数を測定する際の高周波パルスおよび勾配磁場を発生させるパルス電流のシーケンスデータと、電流値を測定する際の高周波パルスのシーケンスデータおよび勾配磁場を発生させるパルス電流のシーケンスデータとが記憶されている。
また、制御部150には、計時部128が接続されている。
このような制御部150は、シーケンステーブル127から取得した上記シーケンスデータと、計時部128での計測時間とに基づいて、高周波パルス及び勾配磁場用のパルス電流を発生させる。
例えば、作業者が、水分量の測定、自己拡散係数、電流値の測定を行うという要求を入力すると、モード切替制御部152に接続された操作信号受付部129が、前記要求を受け付ける。そして、操作信号受付部129がこの要求をモード切替制御部152に送出する。モード切替制御部152は、たとえば、水分量を測定する測定モードを選択し、選択した測定モードを特定する情報をパルス制御部151及びデータ受付部120に送出する。
パルス制御部151では、シーケンステーブル127から水分量測定用のシーケンスデータを読みだす。そして、パルス制御部151が、変調器104の動作を制御し、固体高分子電解質膜511に対して所定のパルスシーケンスで励起用振動磁場を印加する。
一方で、データ受付部120は、モード切替制御部152で選択した測定モード特定情報を演算部130に送出する。演算部130は、上記測定モード特定情報に基づいて、対応する演算処理を行う。
このような操作を、自己拡散係数の測定、電流値の測定においても行う。
図2に示す電流駆動用電源159は、第1Gコイル251および第2Gコイル251への電流の供給に使用するものであり、電流駆動用電源159としては、スイッチング電源を使用せず、トランス等を使用している。
また、電流駆動用電源159が駆動していない状態では、ノイズによりトランジスタが微少発振しないように制御されている。
さらに、電流駆動用電源159が駆動していない状態において、第1Gコイル251および第2Gコイル251に接続された導線を遮断する構造を採用することもできる。
このような構成の電流駆動用電源159を使用することにより、NMR信号への電流駆動用電源159からのノイズの影響を防止することができる。
以上、試料周辺の装置構成について説明した。つづいて、NMR信号の処理ブロックについて説明する。
図2に示すように、演算部130は、第一算出部131と、第二算出部132と、第三算出部133とを有する。
まず、第一算出部131について説明する。
第一算出部131は、固体高分子電解質膜511に対し、励起振動磁場を印加することにより得られるNMR信号の強度から、T緩和時定数を算出し、このT緩和時定数から固体高分子電解質膜511の特定箇所における水分量を算出する。
水分量を算出する手順は以下のようである。
本実施形態では、CPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)法を用いてT緩和時定数を算出する。
はじめに、固体高分子電解質膜511に静磁場を印加する。次に、静磁場を印加した状態で励起用振動磁場を、小型RFコイル114を介して固体高分子電解質膜511に印加し、これに対応するエコー信号を取得する。このエコー信号からT緩和時定数を算定し、T緩和時定数から、固体高分子電解質膜511中の局所的水分量を測定する。具体的には、固体高分子電解質膜511中の水分量とT緩和時定数との相関関係を示すデータを取得し、このデータと上記T緩和時定数とから、固体高分子電解質膜511中の特定箇所における水分量を求める。
ここで、励起用振動パルスは、複数のパルスからなるシーケンスとし、これに対応するエコー信号群を取得することが好ましい。パルスシーケンスはたとえば、以下のようである。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス
上記のパルスシーケンスを用いる方法によれば、90°励起パルスのτ時間後に、その2倍の励起パルス強度を持つ180°励起パルスを印加して、磁化ベクトルMの位相がxy平面(回転座標系)上で乱れていく途中でその位相の乱れを反転させ、2τ時間後には位相を収束させてT減衰曲線上にのるエコー信号を得ることができる。
ここで、90°パルスが第1位相にあり、n個の180°パルスが、第1位相と90°ずれた第2位相にあるパルスシーケンスとすれば、T緩和時定数と固体高分子電解質膜511中の水分量との明確な相関関係を安定的に取得することができる。CPMG法は、このようなパルスシーケンスを与える方法の一例である。CPMG法では、まず、磁化ベクトルを90°パルスによってY軸の正方向に傾斜させた後、τ時間後に「Y軸方向」に外部から180°励起パルスを照射して、磁化ベクトルを「Y軸を対称軸として」反転させる。この結果、2τ時間後には磁化ベクトルがY軸の「正の方向」上で収束し、大きな振幅を持つエコー信号が観測される。さらに、3τ時間後に磁化ベクトルに「Y軸方向」に外部から180°励起パルスを照射して、再度、Y軸の「正の方向」上で収束させて、4τ時間後に大きな振幅を持つエコー信号を観測する。さらに、同様の2τ間隔で、180°パルスを照射し続ける。この間、2τ,4τ,6τ,・・・の偶数番目のエコー信号のピーク強度を抽出し、指数関数でフィッティングすることで、CPMG法によるT(横)緩和時定数を算出することができる。
次に、T2緩和時定数から水分量を算出する。固体高分子電解質膜511中の水分量とT2緩和時定数とは、正の相関を持ち、水分量の増加につれてT2緩和時定数が増大する。ここで、あらかじめ、水分濃度がわかっている固体高分子電解質膜511について検量線を作成しておき、これを図示しない記憶部に記憶しておく。すなわち、水分量が既知の固体高分子電解質膜511に対して水分量とT2緩和時定数との関係を測定し、この関係を表す検量線をあらかじめ求めておくことが望ましい。このようにして作成した検量線を参照することで、T2緩和時定数測定値から固体高分子電解質膜511中の水分量を算出することができる。
なお、本実施形態では、CPMG法により取得されたエコー信号から緩和時定数T2を算出し、算出されたT2から固体高分子電解質膜511中の水分量を算出する場合を例に説明したが、実施例で後述するように、エコー信号の信号強度から水分量を求めることも可能である。
図16に示すように、水分量が増加すると、エコー信号の強度は強くなるという関係にある。あらかじめ、水分量が既知の複数の固体高分子電解質膜511に対して水分量とエコー信号強度との関係を把握し、検量線を求めておく。これを図示しない記憶部に記憶しておく。
その後、CPMG法を用いて、固体高分子電解質膜511の特定箇所からエコー信号を計測する。第一算出部131では、計測したエコー信号の強度(一つのエコー信号の強度、あるいは、複数のエコー信号の強度の平均値)を算出し、あらかじめ作成した検量線と、エコー信号の強度とから、固体高分子電解質膜511の特定箇所の水分量を算出する。
次に、第二算出部132について説明する。第二算出部132は、プロトン性溶媒の易動性を算出する。ここで易動性とは、固体高分子電解質膜511中におけるプロトン性溶媒の移動のしやすさを表す物性値であり、例えば、自己拡散係数、移動度等があるが、本実施形態では、易動性として自己拡散係数を算出する。
算出部133は、固体高分子電解質膜511に対し、励起用振動磁場の印加を行うことにより得られたNMR信号及び異なる勾配磁場の印加を行うことにより得られたNMR信号に基づいて、固体高分子電解質膜511の特定箇所における水分子の自己拡散係数を算出する。
ここでは、PGSE法により、自己拡散係数を算出する。
液体分子内の特定の核スピンを磁気共鳴により励起させた後、数10msの間隔をおいて、一対の勾配磁場パルス(パルス状の勾配磁場)を印加すると、その間に個々の原子核がブラウン運動や、拡散により、移動して、核スピンの位相が収束しなくなるため、NMR信号の強度が低下する。段階的に変化させた勾配磁場パルスとNMR信号の強度の低下とを関連させることで、特定分子種の自己拡散係数を測定することができる。これがPGSE法による自己拡散係数の測定原理である。
ここで、小型RFコイル114は、以下の(a)〜(d)を含むパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、これに対応するエコー信号を取得する。
(a)励起用振動磁場の90°パルス、
(b)(a)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間dだけ印加される、勾配磁場パルス、
(c)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される励起用振動磁場の180°パルス、および、
(d)(c)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間dだけ印加される、勾配磁場パルス。
具体的には、以下のようなステップで自己拡散係数を測定する。
ステップS101:固体高分子電解質膜511に静磁場を印加する、
ステップS102:勾配磁場をゼロとし、上記(a)〜(d)を含むパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、これに対応するエコー信号を取得する、
ステップS103:勾配磁場をゼロでない所定の大きさとし、上記(a)〜(d)を含むパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、これに対応するエコー信号を取得する、ステップS104:ステップ102およびステップ103で得られたNMR信号のピーク強度から、以下の式(II)を用いて、固体高分子電解質膜511の特定箇所の水の自己拡散係数Dを求める、
ln(S/S0)=−γ2DzΔ2dGz2 (II)
NMR信号のピーク強度Sは、印加するパルス勾配磁場強度Gz[gauss/m]、印加時間d、パルス間隔Δに依存し、以上のような関係式(II)で自己拡散係数Dz[m2/s]と関係付けられるのである。
上記式(II)において、S0は、Gz=0とした時の通常のNMR信号強度を示す。また、d、ΔおよびGzは、それぞれ、勾配磁場パルスのパルス幅、一対の勾配磁場パルスの時間間隔、およびパルス勾配磁場強度(z方向)を示す。また、γは、磁気回転比を示し、核に固有の値である。たとえば、水素原子核1Hの場合、磁気回転比42.577×102[1/gauss・s]である。
なお、ステップS102において、勾配磁場をゼロとするとしたが、勾配磁場は、ゼロに近い値であってもよい。
さらに、第三算出部133について説明する。第三算出部133は、固体高分子電解質膜511中の局所的な電流値を計測するものである。
第三算出部133では、検波器140で検波されたエコー信号の実部および虚部を取得し、これらを用いてエコー信号と励起用振動磁場との位相差を算出し、時間とともに変化する位相差から、エコー信号の周波数と励起用振動磁場の周波数との差分(周波数シフト量)Δωを算出する。
エコー信号の周波数は、電流が流れて形成される磁場により、基準の周波数となる励起用振動磁場の周波数から変化する。このため、周波数の変化量(差分)と電流値との関係を予め取得しておくことにより、測定されたエコー信号の周波数の差分から、固体高分子電解質膜511を流れる電流が求められる。周波数の差分は、ある時間間隔での位相の変化量を単位時間あたりに換算することにより求められる。
具体的には、検波された実部と虚部よりtan-1(Re/Img)を算出する。この値は、NMR信号の位相差ΔΦ[rad]に相当する。そして、周波数シフトΔωを、単位時間あたりの位相差Δφとして換算する。
ここで、電流値は、以下のようなステップにて計測される。
ステップS201:固体高分子電解質膜511を磁石が配置された空間に置き、固体高分子電解質膜511に静磁場を印加する、
ステップS202:静磁場に置かれた固体高分子電解質膜511の特定箇所に対し、小型RFコイル114を用いて、励起用振動磁場を印加するとともに、特定箇所で発生した核磁気共鳴(NMR)信号を取得する。
ここで、励起用振動磁場は、以下のシーケンスで印加され、当該励起用振動磁場に対応するエコー信号が取得される。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
ステップS203:ステップS202で取得した核磁気共鳴信号の周波数と励起用振動磁場の周波数との差分を算出する、
ステップS204:ステップS203で得られた差分から、固体高分子電解質膜511の特定箇所の電流を求める。
なお、(a)と、(b)との間に、一定時間勾配磁場パルスを印加し、さらに、(b)の後に、一定時間勾配磁場パルスを印加してPGSE(Pulsed-Gradient Spin-Echo)法により、NMR信号を取得し、電流の測定を行ってもよい。
以上のようにして、算出された水分量、自己拡散係数、電流値は、出力部135によりユーザに提示される。提示の型式は様々な態様が可能であり、ディスプレイ上の表示、プリンタ出力、ファイル出力等、特に制限はない。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
図23の共振回路900では、共振回路全体から放射される励起用振動磁場が届く領域をできるだけ小さく制限し、さらには、信号受信時に不要なノイズなどを拾う領域をできるだけ小さく制限したいために、小型RFコイル914を、可変容量コンデンサ902に直接接続する方法がとられるが、この方法では、小型RFコイル914と、可変容量コンデンサ902との距離が近くなりやすい。そのため、固体高分子電解質膜511に対し、小型RFコイル914を近づけて計測を行う場合、可変容量コンデンサ902がじゃまになることある。本実施形態のように複数の小型RFコイル914を使用する場合には、複数の可変容量コンデンサ902が必要となり、複数の小型RFコイル914を所望の位置に配置しづらくなったり、複数の小型RFコイル914を密に配置することが困難となったりする可能性がある。
また、共振回路を用いてパルス励起を行う場合には、可変容量コンデンサ902には大きな電圧がかかるため、可変容量コンデンサ902自体を小さくすることは難しい。一方で、小型RFコイル914と、可変容量コンデンサ902とを一定距離離間することも考えられるが、この場合、単に小型RFコイル914の線を延長させて、小型RFコイル914と、可変容量コンデンサとを接続したのでは、ノイズを拾う原因となる。
そこで、本実施形態で示したような共振回路2を使用することで、小型RFコイルの周辺領域のみを励起し、さらに、受信されるノイズも大きくせずに、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサCとの間の距離を長く確保することができる。従って、本実施形態では、測定精度を低下させずに、小型RFコイル114の実装密度を向上できる。これにより、信頼性に優れた測定装置100とすることができる。
また、本実施形態のように、複数の小型RFコイル114を使用する場合にも、小型RFコイル114を所望の位置に設置したり、密に配置したりすることが可能となる。特に、燃料電池5の固体高分子電解質膜511といった比較的小さい領域内において、複数箇所計測を行う場合には、小型RFコイル114を所望の位置に、密に配置できることは非常に有用である。
また、本実施形態では、一部の複数の小型RFコイル114を固体高分子電解質膜511の表面側に配置し、他の一部の複数の小型RFコイル114を固体高分子電解質膜511の裏面側に配置している。このように小型RFコイル114を配置することで、固体高分子電解質膜の水分量等の分布を正確に把握することができる。
また、接合体と、拡散層との間という非常に狭い領域に小型RFコイルを設置する場合に、従来の共振回路900を使用した場合には、コンデンサ902と小型RFコイル914との位置が非常に近いため、コンデンサ902がじゃまになり、所望の位置に設置できない可能性がある。
これに対し、本実施形態では、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサC、Cとを同軸ケーブル21で接続しているため、同軸ケーブル21を引き回すことができ、膜電極接合体51と、拡散層52,53との間という非常に狭い領域においても、小型RFコイル114を所望の位置に設置することができる。
さらに、本実施形態の共振回路2では、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサC、Cとを同軸ケーブル21で接続しているため、可変容量コンデンサC、Cを静磁場の影響がほとんどないような位置に設置することが可能となる。そのため、可変容量コンデンサC、Cが磁場の影響を受けてその特性が変動してしまうことを抑制することができる。さらに、可変容量コンデンサC、Cを磁性材料を用いて構成しても、計測領域から離すことができるため、計測領域の静磁場をほとんど乱すことはない。
このように、本実施形態では、可変容量コンデンサC、Cを磁性材料で構成でき、非磁性材料を用いた高価な容量素子を使用しなくてもよいため、測定装置100にかかるコストを低減させることができる。
さらに、本実施形態では、同軸ケーブルの長さを、同軸ケーブル21内を伝播する電磁波の波長をλとした場合、λ/4×0.6+(λ/2)×n以上、λ/4×0.8+(λ/2)×n以下(nは0以上の整数)としている。
小型RFコイル114のインダクタンスが小さい場合でも、共振回路2にこのような長さの同軸ケーブル21を使用することで、共振回路2のインダクタンスが大きくなる。これにより、可変容量コンデンサC、Cの容量を30pF以下という小さなものとすることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、燃料電池5は、酸素と水素により駆動するものであるとしたが、これに限らず、燃料電池は、たとえば、アノード側にメタノールを供給し、カソード側に酸素を供給するダイレクトメタノール型の燃料電池であってもよい。
また、前記実施形態では、小型RFコイルは複数設けられていたが、これに限らず、小型RFコイルは一つであってもよい。ただし、前記実施形態のように小型RFコイルを複数設けることで、固体高分子電解質膜中の水分量、易動性、電流の分布を計測することができ、燃料電池の運転状態を正確に把握することが可能となる。
また、前記実施形態では、測定装置は、水分量、易動性、電流を測定することができるとしたが、これに限らず、水分量、易動性、電流のいずれか一つのみを測定できる装置であってもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
ここでは、同軸ケーブルによるインダクタンス増加の原理について検討を行った。具体的には、一端をショートさせた同軸ケーブルの長さLをかえてインピーダンス計測をおこなった。
前記実施形態でも述べたように、同軸ケーブルは、インダクタンス(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)が組み合わされた等価回路として表される。同軸ケーブルの長さLを調整すると、図4の点Aから見たインピーダンスは、インダクタンスとキャパシタンスが増減するように見える。
図7には、一端をショートした同軸ケーブルの長さLを変えて、ネットワークアナライザーでインピーダンスを計測する様子を示した。この計測は、図4での点Aから見た同軸ケーブルのインピーダンスを計測することに相当する。同軸ケーブルの長さLを増加させると、図8のスミスチャートで示すように、同軸ケーブルの長さが長くなるに従って、左端から上側を通過して右端に達し、さらに長くすると、下側を通過して左端に戻ってくる。同軸ケーブルの長さをさらに長くすれば、もう一度、同じ軌跡をたどる。この時計方向への回転を繰り返す。
ここで、スミスチャートの左端は、長さがゼロの時に示す値であり、右端は同軸ケーブルの長さが対象としている波長の4分の1になった時に示す値である。中心は50Ωである。
測定装置では、送受信系、伝送系ケーブルなどがすべて50Ωでインピーダンス整合をさせているため、小型RFコイルを含む共振回路の特性インピーダンスを50Ωにする必要がある。
ここで、前記実施形態の測定装置を使用したNMR計測では、44.1 MHzが共鳴周波数である。用いた同軸ケーブルは、フジクラ社製1.5D-QEVであり、この同軸ケーブルの波長短縮率は約0.67である。また、電波の伝播速度は、3.0×108m/sであることから、この同軸ケーブルでの波長λは
λ= 3.0×108×0.67/44.1×106 = 4.56 m
となる。これより、λ/4は1.14 m、λ/2は2.28 mとなる。
一端をショートさせた同軸ケーブルの長さLを変えて、インピーダンス計測を行った計測結果を表1に示した。さらに、図9において測定結果をスミスチャート上で示した。
この結果から、同軸ケーブルの長さを0.03mから長くしていくことで、インピーダンスの虚数成分、すなわちインダクタンスが大きくなり、同軸ケーブルの長さがλ/4を超えるとキャパシタンスが増加することが分かる。
(実施例2)
同軸ケーブル(フジクラ社製1.5D-QEV)の長さLを0.75mとして、一端に内径0.60mm、線径0.08mm、5回巻きの小型RFコイルを接続し、もう一端には可変容量コンデンサを接続して、LC共振回路を製作した(構成は、図4に示すものである)。可変容量コンデンサC,Cは、Johanson社製エアートリマー5601型(1〜30pF)を使用した(磁性材料使用)。この構成にすることで、この共振回路の特性インピーダンスを44.1MHzの周波数に対して50Ωにすることができる。
可変容量コンデンサC,Cを図10(A)に示し、共振回路を図10(B)に示す。
図11(A)には、共振回路をネットワークアナライザで計測している様子を示し、図11(B)には、計測結果を示す。この共振回路の特性インピーダンスは44.1MHzの周波数(マーカーが示す矢印の位置)に対して50Ω(スミスチャートの真ん中)になっていることが分かる。
また、この共振回路を使用して、前記実施形態と同様の測定装置にて、試料(水)の測定を行った。計測シーケンスは、勾配磁場を3msだけ180度励起パルスの前後に印加してFID信号をスポイルしたスピンエコーを用いた。エコー時間TEは10msとした。計測条件として、90度励起パルスの時間間隔TRは20sとした。また、エコー信号の後に、ノイズ強度を計測するための勾配磁場を印加した。スピンエコー信号を図12に示す。
このNMR信号波形から、スピンエコー信号の強度は1800 [a.u.]、ノイズの標準偏差は130 [a.u.]であることが分かった。これらを基に信号対雑音比を算出し、信号対雑音比13.6 [-]であった。
(実施例3)
ここでは、共振回路において、小型RFコイルは、線径が0.04mmのものと、0.08mmのものとを使用した。
小型RFコイルの線径が異なる点以外は、実施例2と同様の共振回路を使用した。また、試料は実施例2と同じである。
結果を表2に示す。
小型RFコイルの線径を大きくすれば、信号対雑音比を増加させることができることがわかる。
(実施例4)
本実施例では、前記実施形態と同様の燃料電池システムを使用して、運転中の燃料電池の固体高分子電解質膜の水分量の分布と、電流分布を計測した。
(1)燃料電池システムの構成
測定装置の構成は、第一実施形態(図2)と同様である。さらに、詳細な装置構成を図13に示す。また、装置構成について以下に詳細について説明する。なお、燃料電池は、測定装置において、磁場強度が1Tesla、Air-Gapが100 mmの永久磁石の内側に入れられ、静磁場Hが印加された。
(i)小型RFコイル
小型RFコイルは線径80μmの銅線を内径0.6 mmで渦巻き状に5回平面状に巻いて製作した。銅線はポリウレタン皮膜で覆われており、この皮膜により絶縁されている。また、このコイルでは、ポリウレタン皮膜同士で接着しており、そのままでコイルの形状を保っている。このため、コイル中心は貫通しており、ガスが通過できる。なお、この小型RFコイルは実施例2の小型RFコイルと同じである。
この小型RFコイルは、膜電極接合体と、拡散層との間に配置されている。そして、固体高分子電解質膜の面方向にそって5 mm間隔で3点配置した(図1参照)。これらの3つの小型RFコイルは、発電によって拡散層に流れる電流を計測することとなり、それは、固体高分子電解質膜の面方向の電流分布になる。また、3つの小型RFコイルの計測領域は,3つの小型RFコイル表面から3つの小型RFコイル内径(0.60mm)の1/5程度の領域であり、MEA表面から厚み方向へ120μmまでの領域である。受信するNMRの周波数シフト量はこの範囲内で計測していると考えればよい。
(ii)共振回路
共振回路は、実施例2と同様のものを使用した。同軸ケーブルの長さは0.75mである。
(iii)膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)
膜電極接合体は、固体高分子電解質膜上にPt触媒層をホットプレスすることで製作した。固体高分子電解質膜はNafion117(登録商標)で、その厚さは178μmである。膜電極接合体の外形は40 mm四方である。膜電極接合体のPt触媒層は固体高分子電解質膜の中央部にあり、その寸法は23 mm×20 mmである。
(iv)拡散層(GDL)には厚さ400μmのカーボンメッシュを用いた。膜電極接合体をGDLおよび燃料供給用流路つきセパレータで挟み込んで燃料電池とした。その構造は、図1に示した通りである。セパレータ上のガス流路は断面2mm四方でサーペンタイン型とした。
燃料電池は、測定装置において、磁場強度が1Tesla、Air-Gapが100 mmの永久磁石の内側に入れられ、静磁場Hが印加された。
ただし、本実施例では、燃料電池に温調用循環水を導入し、その循環水の温度を外部チラーで制御することで、燃料電池の温度を20℃と50℃の二通りに変えた。拡散層の下方に位置するセパレータの下方を循環水が流れる構成となっている。
(2)燃料電池の発電条件
燃料電池の固体高分子電解質膜を「湿った状態」「乾いた状態」の二つの条件で発電させ、その際の含水量と電流分布を小型表面コイル(小型RFコイル)で計測した。本実験での燃料電池の発電条件を表3に示す。
固体高分子電解質膜は実験開始前に水に浸し、実験開始直前に燃料電池内に組み込んだ。発電させても、短時間(30分程度)であれば、固体高分子電解質膜は湿った状態を保っていた。固体高分子電解質膜が湿った状態であるということは、後述する実験結果、すなわち、発電時の電流―電圧(IV)特性からも、含水量計測で取得したNMR信号強度の大きさからもわかる。
固体高分子電解質膜を乾燥させる方法は、燃料電池の温調用循環水の温度を50℃に昇温し、30分程度発電させて行った。これも先と同様に、固体高分子電解質膜が乾燥状態での発電時のIV特性とNMR信号の低減から推測できる。
(3)燃料電池の電流―電圧(IV)特性
表4に示すガス供給量で燃料電池を発電させた。ただし、表4に記載した供給圧力は、ガスボンベの減圧弁の出口圧力であり、配管やニードルバルブでの流動抵抗が含まれている。さらに、水素ガス側では加湿用バブラーがあり、これでの圧力損失分も含まれている。
電子負荷装置の電流値を変えて計測した燃料電池の電流―電圧(IV)特性を図14に示す。この図14から、燃料電池の温度を20℃から50℃に昇温すると、出力される電流が低下していることが分かる。本実験では、水素ガス側のバブラー温度は20℃であり、セルへの加湿量が非常に少ない。このため、燃料電池の温度を50℃へと昇温したことで、MEAは乾燥し、イオン伝導によるオーム損失が増加して、出力電流が低下したと推測できる。
(5)小型表面コイル(小型RFコイル)による燃料電池内の含水量と電流計測
本実施例では、燃料電池内MEAの含水量とMEAを流れる電流の分布とを同じ小型表面コイルで計測している。図15には、含水量を計測するためのCPMGシーケンスと、電流を計測するためのPGSEシーケンスを実行した順序を示す。
ここでは、PGSEシーケンスでは、90度パルスと、180度励起パルスとの間隔を5msに設定し、エコー時間が10msとしてエコー信号を計測している。このシーケンスでは、180度励起パルスの前後に1msだけ勾配磁場を印加して、90度および180度励起パルス直後のNMR信号がエコー信号と干渉しないようにした。
また、CPMGのシーケンスは、(a)90°パルス、(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス、および(c)(b)のパルスの時間2τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス(nは自然数である。)
とし、τ=10 ms、n=25とした。
本計測では、CPMGシーケンスを3回、その後に、PGSEシーケンスを1回実行して、これを1セットとして、7セット繰り返した。図15のCPMGの欄に示された黒い四角は、CPMGのシーケンス1回分を示し、PGSEの欄に示された黒い四角は、PGSEシーケンス1回分を示している。
計測時間として、CPMGシーケンスでは、90度励起パルスの繰り返し時間TRを10秒、PGSEシーケンスでは90度励起パルスの繰り返し時間TRを5秒とした。すなわち、CPMGシーケンスを1回実行するのに10秒を要し、PGSEシーケンスが1回実行されるのに5秒を要している。1セットで35秒を要する。
(6)含水量の測定
CPMG法を用いてCase1とCase2の状態での含水量計測を行った。以下に結果を示す。
(6−1)NMR信号と含水量の関係
高分子電解質膜(PEM)内の含水量とNMRのエコー信号強度、さらに、T2緩和時定数(CPMG)値の関係を図16,17に示す。含水量の増加と共に、エコー信号強度とT2緩和時定数(CPMG)値は単調に増加する。
(6−1)Case1でのNMR信号
Case 1の実験条件で、CPMG法によって小型RFコイル114Aで得られたエコー信号を一例として図18に示す。CPMGシーケンスのパラメータは、90度励起パルスと180度励起パルスの時間間隔tauを10 ms、90度励起パルスの励起間隔TRを10秒とした。
図18の波形から、180度励起パルスの間にエコー信号を見ることができる。本実施例では、第1番目のエコー信号の強度のみを用いて、図16の相関関係を基に、含水量の多い・少ないを判断した。
(6−2)Case1と2の比較
図19には、第1番目のエコー信号強度を実験条件Case1と2で比較した結果を示す。この図では、Case1と2でそれぞれ9セットのCPMG計測(図15の実験手順に示された始めから9セット分のCPMG計測)を行い、すべての実験結果を示した。横軸は各セットの番号を示している。
この図から、Case1の実験条件の方が、Case2に比べて、エコー信号強度は大きいことがわかる。また、この関係は9回の計測結果全てにおいて保たれていた。
また、この計測でのばらつき(変動係数=エコー信号強度の標準偏差/エコー信号の平均値、9回分のデータの統計量)は、Case1では5.8%、Case2では9.2%であった。
小型RFコイル114A,114B,114Cでのエコー信号強度がCase1と2で比較した結果を図20に示した。この結果より、どの位置の小型RFコイルであっても、Case1の実験条件の方がCase2に比べて、エコー信号強度が大きく、含水量が多いことが分かる。
(7)電流分布計測の結果
図15に示した順序でPGSEシーケンスを実行させて、燃料電池の電流がゼロの状態(開回路)で3回、電流Iを0.40Aとして2回、再度、電流がゼロの状態で2回計測した。
燃料電池は、はじめは発電電流がゼロの状態(開回路の状態)とし、この状態で電流計測に用いる基準の周波数シフト量を計測した。ここでいう基準周波数シフト量とは、RF発振器で設定された周波数(励起用振動磁場の周波数)と、燃料電池を停止した状態で励起用振動磁場を印加した際の核磁気共鳴信号の周波数)との周波数差である。
次に所定の電流Iを流して、PGSEシーケンスを2回実行して、電流が流れている状態でのRF発振器で設定された周波数と、励起用振動磁場を印加した際の核磁気共鳴信号の周波数との差を求めた。その後、再度、回路を開いて発電電流をゼロとして、基準周波数シフト量を計測した。
一例として、Case1の発電条件で計測された小型RFコイル114Dでの基準周波数シフト量の変化を図21に示す。PGSEシーケンスは35秒ごとに繰り返して計測された。
図21より、燃料電池が開回路で、電流を流さない場合であっても、磁石の温度低下に伴う静磁場強度の上昇により、時間と共に基準周波数シフト量が増加してく様子が見られる。このため、電流がゼロの場合(実験番号1, 2, 3, 6, 7)の基準周波数シフト量を用いて、基準周波数シフト量が時間共に直線的に増減すると仮定して、最小自乗法により近似した。その近似直線を図21の破線で示す。これより、数分程度の時間経過の間であれば、磁石温度の増減による基準周波数シフト量はおおよそ時間の一次関数(直線)として近似できることが分かる。この破線を基準周波数シフト量とし、実験番号4、5で示される、発電電流が流れた場合に生ずる周波数シフト量は、図21に示すように、この基準周波数シフト量からの差として周波数シフト量△ωを算出した。
同様の算出方法によって、小型RFコイル114E,114Fの周波数シフト量も算出した。その結果を図22に示す。
図22には、MEA内で一様に発電して電流が一様に流れると仮定し、それらの電流がGDLに流れることで作られる磁場を解析し、それを基に算出した周波数シフト量も実線として図示した。実験結果と解析結果を比較すれば、周波数シフト量はほぼ一致しており、Case1の条件では発電電流がほぼ一様であることが分かった。
以上から、同軸ケーブルを使用した場合において、燃料電池の固体高分子電解質膜の水分量、発電状況の計測を正確に行うことができることが確認された。
本発明の一実施形態にかかる燃料電池を示す模式図である。 燃料電池システムを示す模式図である。 燃料電池システムの測定装置の要部を示す図である。 燃料電池システムの測定装置の共振回路を示す図である。 同軸ケーブルの等価回路を示す図である。 燃料電池システムの測定装置の要部を示す図である。 実施例1での同軸ケーブルのインピーダンスを測定する様子を示す模式図である。 同軸ケーブルをショートさせた際のスミスチャートを示す図である。 同軸ケーブルをショートさせた際のスミスチャートを示す図である。 (A)はチューニング用キャパシタ、マッチング用キャパシタを示す図であり、(B)は、共振回路を示す図である。 (A)は、共振回路をネットワークアナライザーで計測している様子を示す図であり、(B)は、ネットワークアナライザーでの計測結果を示す図である。 実施例3における計測結果を示す図である。 実施例4で使用した測定装置を示す図である。 実施例4の燃料電池の電流−電圧特性を示す図である。 含水量を計測するためのCPMGシーケンスと、電流を計測するためのPGSEシーケンスを実行した順序を示す図である。 固体高分子電解質膜の水分量とNMRのエコー信号強度との関係を示す図である。 固体高分子電解質膜の水分量と、T2緩和時定数(CPMG)値との関係を示す図である。 CPMG法によって小型RFコイルで得られたエコー信号を示す図である。 実験条件Case1と2における、第1番目のエコー信号強度を示す図である。 小型RFコイル114A,114B,114Cでのエコー信号強度を、Case1と2で比較した結果を示す図である。 Case1の発電条件で計測された小型RFコイル114Dでの基準周波数シフト量の変化を示す図である。 Case1の発電条件で計測された小型RFコイル114D,114E,114Fの周波数シフト量と、解析結果とを示す図である。 従来の共振回路を示す図である。
符号の説明
1 燃料電池システム
2 共振回路
5 燃料電池
21 同軸ケーブル
51 膜電極接合体
52,53 拡散層
54,55 セパレータ
56 電極
57 電気回路(電子負荷装置)
100 測定装置(燃料電池用測定装置)
100A 励起パルス生成部
100B 信号検出部
102 発振器
104 変調器
106 増幅器
112 プリアンプ
113 磁石(静磁場印加部)
114(114A〜114F) 小型RFコイル
118 変換器
120 データ受付部
127 シーケンステーブル
128 計時部
129 操作信号受付部
130 演算部
131 第一算出部
132 第二算出部
133 第三算出部
135 出力部
140 位相検波器
150 制御部
151 パルス制御部
152 モード切替制御部
153 勾配磁場制御部
159 電流駆動用電源
170 スイッチ部
251 Gコイル(勾配磁場印加部)
511 固体高分子電解質膜
512,513 触媒層
541,551 流路
900 共振回路
902 コンデンサ
914 コイル
CT,CM 可変容量コンデンサ(容量素子)

Claims (11)

  1. 燃料電池の固体高分子電解質膜の状態を測定するための燃料電池用測定装置であって、
    プロトン性溶媒を含む前記固体高分子電解質膜に対して、静磁場を印加する静磁場印加部と、
    前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加するとともに、前記固体高分子電解質膜の特定箇所で生じた核磁気共鳴信号を取得する、前記固体高分子電解質膜よりも小さい小型RFコイルと、
    前記小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部と、
    前記小型RFコイルで取得した前記核磁気共鳴信号を検出する信号検出部と、
    前記小型RFコイルを含んで構成される共振回路とを有し、
    前記共振回路は、前記信号検出部および前記RFパルス生成部に接続され、
    前記共振回路は、前記小型RFコイルと、容量素子と、前記小型RFコイルと前記容量素子とを接続する同軸ケーブルとを有し、
    前記同軸ケーブルの長さは、前記同軸ケーブル内を伝播する電磁波の波長をλとした場合、
    λ/4×0.6+(λ/2)×n以上、λ/4×0.8+(λ/2)×n以下(nは0以上の整数)である燃料電池用測定装置。
  2. 請求項1に記載の燃料電池用測定装置において、
    前記小型RFコイルは複数設けられるとともに、複数の前記共振回路が設けられ、
    前記複数の小型RFコイルと、前記複数の共振回路とは、前記小型RFコイル1つに対して、1つの前記共振回路が設けられる関係にある燃料電池用測定装置。
  3. 請求項2に記載の燃料電池用測定装置において、
    前記固体高分子電解質膜表面側から平面視した状態において、前記複数の小型RFコイルは、前記固体高分子電解質膜の面内の領域に設置されている燃料電池用測定装置。
  4. 請求項3に記載の燃料電池用測定装置において、
    前記小型RFコイルの配置密度は、1cm2当たり0.1個以上、100個以下である燃料電池用測定装置。
  5. 請求項3または4に記載の燃料電池用測定装置において、
    前記複数の小型RFコイルのうち、一部の小型RFコイルは、前記固体高分子電解質膜の表面側に配置され、
    他の一部の小型RFコイルは、前記固体高分子電解質膜の裏面側に配置されている燃料電池用測定装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池用測定装置において、
    前記共振回路は、複数の前記容量素子を有し、
    前記複数の容量素子は、特定の周波数で当該共振回路を共振させるためのチューニング用の容量素子と、インピーダンス整合用の容量素子とを有する燃料電池用測定装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の燃料電池用測定装置において、
    前記燃料電池は、前記固体高分子電解質膜、
    前記固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極、
    および、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極を含んで構成される接合体と、
    前記接合体を挟んで設置される一対の拡散層とを備え、
    前記小型RFコイルは、一方の前記拡散層と前記接合体との間、および、他方の前記拡散層と前記接合体との間の少なくともいずれか一方に設置される燃料電池用測定装置。
  8. 請求項1に記載の燃料電池用測定装置において、
    前記小型RFコイルで取得した核磁気共鳴信号に基づいて、前記固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒量を算出する算出部を有する燃料電池用測定装置。
  9. 請求項1に記載の燃料電池用測定装置において、
    前記固体高分子電解質膜に対して、勾配磁場を印加する勾配磁場印加部と、
    前記勾配磁場および前記励起用振動磁場の印加を所定のパルスシーケンスに従って実行させる制御部と、
    第二算出部とを有し、
    前記小型RFコイルは、励起用振動磁場および勾配磁場に対応する核磁気共鳴信号を取得し、
    前記第二算出部では、異なる勾配磁場に対応して得られ、前記小型RFコイルで取得した核磁気共鳴信号に基づいて、前記固体高分子電解質膜の特定箇所の易動性を算出する燃料電池用測定装置。
  10. 請求項1に記載の燃料電池用測定装置において、
    前記小型RFコイルで取得された前記核磁気共鳴信号の周波数と前記励起用振動磁場の周波数との差分を算出し、前記差分から、前記固体高分子電解質膜の前記特定箇所の電流を算出する第三算出部を有する燃料電池用測定装置。
  11. プロトン性溶媒を含んだ固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極とを有する燃料電池と、
    燃料電池用測定装置とを備えた燃料電池システムであって、
    前記燃料電池用測定装置は、請求項1乃至10のいずれかに記載の燃料電池用測定装置である燃料電池システム。
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