JP6917251B2 - 測定解析装置、燃料電池システム及び測定解析方法 - Google Patents

測定解析装置、燃料電池システム及び測定解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6917251B2
JP6917251B2 JP2017177216A JP2017177216A JP6917251B2 JP 6917251 B2 JP6917251 B2 JP 6917251B2 JP 2017177216 A JP2017177216 A JP 2017177216A JP 2017177216 A JP2017177216 A JP 2017177216A JP 6917251 B2 JP6917251 B2 JP 6917251B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
current
magnetic field
estimation
region
sample
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017177216A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019052941A (ja
Inventor
邦康 小川
邦康 小川
達佳 佐々木
達佳 佐々木
茂樹 米田
茂樹 米田
久美子 辻中
久美子 辻中
律子 朝井
律子 朝井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kansai Research Institute KRI Inc
Keio University
Original Assignee
Kansai Research Institute KRI Inc
Keio University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kansai Research Institute KRI Inc, Keio University filed Critical Kansai Research Institute KRI Inc
Priority to JP2017177216A priority Critical patent/JP6917251B2/ja
Publication of JP2019052941A publication Critical patent/JP2019052941A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6917251B2 publication Critical patent/JP6917251B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)
  • Measuring Magnetic Variables (AREA)
  • Measuring Instrument Details And Bridges, And Automatic Balancing Devices (AREA)

Description

本発明は、二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、試料において、試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析装置に関し、さらに、このような測定解析装置を備えた燃料電池システムに関する。
また、本発明は、この測定解析装置において電流推定に使用する測定解析方法に関する。
燃料電池の運転状態(特に発電状態)を的確に把握することは、非常に重要な技術的課題である。
発明者らは、燃料電池(特に固体高分子形燃料電池)を対象として、電池各部を流れる電流を測定する技術を開発してきた。これらは核磁気共鳴法を利用する技術であり、小型表面コイル(小型RFコイル)で検出される核磁気共鳴信号(磁場関連情報の一種であり、以下「NMR信号」とも記載する)を利用して、検出位置における周波数シフト量、さらには電流を求めることができる。即ち、平板形の燃料電池に流れる電流(発電電流)をその電池面に沿った分布として求めている(特許文献1、非特許文献1等)。
発明者らが提案してきた技術は、基本的に、以下の二通りの手法を採用していた。
(1)周波数シフト量Δωと電流Iを単純な関係式で結び付けて電流を算出する、
(2)周波数シフト量Δωに適合する電流Iを探索する際に、両者間を単純な関係式で結ぶとともに、試料に分布する電流を離散的に増加させて、実際に測定される周波数シフト量に最も近くなる電流を真の電流とする(電流逆解析)。
ここで、周波数シフト量Δωと電流Iは、図1に示す燃料電池の高さ方向xと幅方向zに測定する。因みにyは燃料電池の厚み方向である。
上記のような単純な手法が適用できた理由は、燃料電池で発電した電流が流れる方向は、膜電極接合体(MEA(Membrane Electrode Assembly))に直交する厚み方向yのみであり、エンドプレート(図2参照、このプレート241は、電池の厚み方向両端に設けられ、x、z方向に広がる平板形状とされ、通常真鍮板が使用される)に、付属の導線も、電池の厚み方向であるy方向に延出されていると想定していたためである(非特許文献1の図1、図2に電流(current)と記載された矢印)。ただし、この非特許文献1ではMEAの厚み方向はx方向とされている。
発明者等がこれまで使用してきた実験装置でも、電流が導出される方向は一様にy方向としていた。この状況は特許文献1でも変わらない(図46参照)。
一方、ホール素子を使用して磁場強度(磁気関連情報の一つ)を測定する方法が提案されている(非特許文献2)。ホール素子は、素子に印加された磁場強度に応じて素子の電気抵抗が変化する素子であり、この文献に開示の技術では、ホール素子を燃料電池に近づけ空間的に走査することで、磁場強度の空間マップ(磁場強度の分布)を測定し、それを逆解析問題として解析して、電流分布を求めている。
この技術においても、電流は基本的に燃料電池の厚み方向にのみ流れる。
特開2009−302040号公報
小川邦康、他著、「核磁気共鳴を利用した小型表面コイルによるPEFC内の電流分布測定法の開発」(第3報:PEFC 積層方向に流れる電流分布の逆解析法)」、日本機械学会論文集、Vol.80,No.812,2014 泉政明、後藤雄治、「固体高分子形燃料電池の測定技術とモデリングに関する研究開発」、NEDO燃料電池・水素技術開発中間報告会要旨集、平成17年12月27日発表、p.39−40
しかし、実際の燃料電池では、図1、2に示すように、導線240はエンドプレート241(真鍮板)の端(図示する例では左下部位)に取り付けられており、電流Iはy方向のみではなく、x、z方向の成分を持って導線240に向かって流れる。この結果、周波数シフト量Δωと電流Iの関係を単純な関係式で正確に表すことができない。
さらに、本発明に係る測定解析装置は、燃料電池の運転状態を実験的に確認するほか、その使用目的として、燃料電池の運転状態において、その電流を的確に測定し、得られた測定結果に基づいて「燃料電池に供給するガス(燃料ガスg1や酸化性ガスg2)の圧力や流量、間欠的なガス流動などのガス制御を行う他、温度制御などを適切に行い、出来るだけ低い電流領域(発電領域)の形成を低減する制御を可能」とすることが期待されている。このような目的を実現するには、測定解析装置において、電流の空間分布を可能な限り細かい領域単位(例えば、全領域を50分割した領域単位)で、さらに、その電流量を可能な限り高い電流分解能(例えば、最大電流の0.1%程度まで)で得ることが必要となる。
逆解析では、考えられる電流Iを段階的に分割最小電流値ΔI(以下単に「増分」と呼ぶこともある)ずつ変えて、すべての場合について磁場及びその磁場に対応する周波数シフト量Δωanaを空間分布として求め、実際に測定された周波数シフト量Δωexp(本発明の「実周波数シフト量」)の空間分布に最も適合する電流Iを探索する必要がある。
これを全数探索法と呼ぶ。
しかしながら、このような全数探索法を用いると、探索総数が膨大な数となる。このため演算負荷が膨大になり、電流分布を求めることができない。
一例として、今回測定対象とした燃料電池に合わせた条件で探索総数Ntを見積もってみる。実験装置に挿入された小型RFコイルの数NCはx方向に7、z方向に7の合計49個とした。(図18参照)
全数探索では、電流を飛び飛びの値である離散値とし、それを全ての小型RFコイルの位置での電流値として設定して計算された周波数シフト量Δωanaが、測定された周波数シフト量Δωexpに一致する電流Iを探す。
この際、電流Iを分割して離散化する分割最小電流値ΔIは小さいほど細かく電流Iが求められて、解析者にとって望ましい。しかし、ΔIが小さいほど電流分割数Npが増えるために探索総数Ntが増える。ここでは探索する電流Iの最小値Iminと最大値Imaxを、実験的に確認されている値、それぞれ0.6A、1.5Aとする。電流の増分ΔIを0.1AとしてNp=10で分割すると、この条件では探索総数NtはNt = NpNC = 1049となる。
探索総数Ntの解析に要する時間を概算する。コンピュータの演算性能を100GFPS(1秒間の演算回数が1011回)とした場合、1回の演算で一つの探索が済むと仮定すると(実際には1000のオーダの演算が必要)、探索総数Ntを探索するのに要する時間は1030年以上となる。これは非常に長い時間であり、燃料電池の制御に使用できるような時間単位で解(目的とする電流の分布)を得ることができない。
一方、非特許文献2に記載のホール素子を用いた方法では、電極中に電流が流れることで発生する磁場強度(磁気関連情報のひとつ)を測定するが、この磁場強度は地磁気の強さにほぼ等しく、微弱な値である。このような微弱な磁場強度を正確に測定するには、ホール素子が高い分解能と高い再現性を持つことを要求される。
さらに、燃料電池の測定にホール素子を用いる場合、ホール素子は温度変化にも敏感であり、発熱を伴う燃料電池の内部やその周囲に設置してホール素子で磁場を測定するには、各温度で測定されたホール素子に流れる電流または抵抗値と印加した磁場強度との関係を予め校正曲線として素子の非線形性を補正できるように準備し、燃料電池に適用した際のホール素子自体の温度を非常に高い精度で測定した上で、校正曲線から磁場を算出するという非常に手間がかかる手法をとらねばならない。さらに、真のホール素子温度を測定することが困難であるという問題もあった。
即ち、このようなホール素子を用いる方法では、磁場強度の分布から電流の分布を求めるという本来の電流逆解析に加えて、温度の影響等を加味することが必要となり、有効な電流逆解析結果を得るうえで、大きな障害となっていた。
以上の実情に鑑み、本発明の主たる課題は、二次元に広がった試料面を有し、その表面における磁場関連情報を分布として得ることが可能な試料(例えば、固体高分子形燃料電池)を対象とし、その電流の分布(特に発電電流の分布)を、高い電流分解能且つ多くの領域分割数(換言すると高い空間分解能)で得ることができる測定解析装置を提供する点にある。
上記目的を達成するための、
二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析装置の第1の特徴構成は、
試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定部と、
前記電流推定用領域設定部において設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算部と、
前記推定磁場関連情報演算部により演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と判定する電流判定処理部とを備え、
前記推定磁場関連情報演算部における演算において、前記所定の電流分解能より低い分解能の第1分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理部による適合判定を実行して電流推定を行う電流第1推定処理部と、
前記電流第1推定処理部で、適合度が高いと判定された前記電流を電流第1推定量として、当該電流第1推定量を含み、前記第1分解能より分解能が高く、前記所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第2分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理部による適合判定を実行して電流推定を行う電流第2推定処理部とを含む、ことにある。
この測定解析装置においては、最初に磁場関連情報の試料面における分布を取得する。この分布の取得単位は試料分割領域単位であり、この情報に基づいて、電流の分布を解析する。ここで使用する解析手法は、所謂、逆解析であり、推定用電流を仮設定して、その仮設定された電流が試料を流れた場合に得られるべき磁場関連情報(推定磁場関連情報)を演算し、その演算結果の実際に所得された磁場関連情報(実磁場関連情報)に対する適合度を判定し、適合度の高い電流(電流分布)を、実磁場関連情報が観測された試料面における電流の状態とする。
このような電流推定処理において、先に説明したように全数検索を実行すると、演算数が膨大となるが、電流推定処理を、少なくとも電流第1推定処理部により実行する電流第1推定と、電流第2推定処理部により実行する電流第2推定とを含む処理とするとで、これら個々の電流推定処理における、その電流の分解能を低く抑えることが可能となる。
この場合、後に示すように、演算負荷を格段に低下でき、それを複数段繰り返すことで最終的には目標とする電流分解能(所定の電流分解能)まで到達可能であり、実用的な測定解析装置を得ることができる。
本発明において、「所定の電流分解能」は、測定解析装置で最終的に目標とする電流の分解能であり、電流推定を多段で行う場合は、その最終段における電流の分解能となる。後述するように、本発明には、領域設定を単段または多段で行う両方の場合が含まれる。そして、領域設定を単段で行う場合は、その単段の領域設定で、電流推定を多段で行う場合の最終段の電流分解能が「所定の電流分解能」となり、領域設定を多段で行う場合は、最終段の領域設定における最終段の電流推定での電流分解能が「所定の電流分解能」となる。
逆に、2段目の電流推定に注目すると、領域設定を単段で行い、電流推定を2段で行う場合は、最終段である2段目の電流の分解能(第2分解能)が「所定の電流分解能」と等しくなり、電流推定を2段を超える多段で行う場合は、2段目の電流の分解能(第2分解能)は「所定の電流分解能」より低くなる。一方、領域設定を多段で、さらに電流推定を2段で行う場合は、領域設定最終段における電流推定最終段である2段目の電流の分解能(第2分解能)が「所定の電流分解能」と等しくなり、領域設定最終段における電流推定を2段を超えた多段で行う場合は、2段目の電流の分解能(第2分解能)は「所定の電流分解能」より低くなる。
さて、この測定解析装置で使用する測定解析方法の第1の特徴手段は、以下のステップを含む構成となる。
二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析方法であって、
試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定ステップと、
前記電流推定用領域設定ステップにおいて設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算ステップと、
前記推定磁場関連情報演算ステップにより演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と判定する電流判定処理ステップとを備え、
前記推定磁場関連情報演算ステップにおける演算において、前記所定の電流分解能より低い分解能の第1分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理ステップによる適合判定を実行して電流推定を行う電流第1推定処理ステップと、
前記電流第1推定処理ステップで、適合度が高いと判定された前記電流を電流第1推定量として、当該電流第1推定量を含み、前記第1分解能より分解能が高く、前記所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第2分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理ステップによる適合判定を実行して電流推定を行う電流第2推定処理ステップを含む。
前記電流推定において、処理対象とする電流の範囲の入力を受付ける電流推定範囲入力受付部を備えることが好ましい。
本発明においは、推定用電流の仮設定において、できるだけ真の電流に近い電流範囲で電流推定を行うことが真の電流を得るための演算負荷の低減の用をなす。そこで、電流推定範囲入力受付部を設けて、電流推定において処理対象とする電流の範囲を的確なものとして、迅速かつ的確に電流推定処理を進めることができる。
上記の測定解析装置に関し、
後段の前記電流推定において、
前段の前記電流推定で最も適合度が高いと判断された電流を、処理対象とする電流の範囲内に含み、前段の電流分解能より高い分解能に基づいた電流推定を実行することが好ましい。
この構成を採用することにより、本発明が目的とする段階的に電流推定を多段で進める状態で、前段において適合度が最も高いと判定された電流を利用して、電流分解能を高めながら、処理を進めることができる。
また、前記第2分解能が前記所定の電流分解能より低い分解能とされ、前記電流第2推定処理部で適合度が高いと判定された前記電流を電流第2推定量として、当該電流第2推定量を含み、前記第2分解能より分解能が高く、前記所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第3分解能で、前記電流推定用領域について前記磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理部による適合判定を実行して電流推定を行う電流第3推定処理部とを含むことが好ましい。
この構成を備えることにより、電流推定処理を、各段階における電流分解能を高くしながら、少なくとも3段で行うことができ、結果的に、本発明で問題となる演算負荷をさらに低減して、実用的な測定解析装置を得ることができる。
この構成において、3段目の電流推定に注目すると、領域設定を単段で行い、電流推定を3段で行う場合は、最終段である3段目の電流の分解能(第3分解能)が「所定の電流分解能」と等しくなり、電流推定を3段を超えて多段で行う場合は、3段目の電流の分解能(第3分解能)は「所定の電流分解能」より低くなる。一方、領域設定を多段で、さらに電流推定を3段で行う場合は、領域設定最終段における電流推定最終段である3段目の電流の分解能(第3分解能)が「所定の電流分解能」と等しくなり、領域設定最終段における電流推定を3段を超えた多段で行う場合は、3段目の電流の分解能(第3分解能)は「所定の電流分解能」より低くなる。
これまでの説明は、基本的に電流分解能を高くする上での工夫であったが、本発明においては、電流推定の対象とする領域設定に関しても、工夫がされている。
即ち、本発明の測定解析装置の第2の特徴構成は、
前記電流推定用領域設定部による領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定部と、
前記第1領域設定部で各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定部とを含むことにある。
電流推定の対象とする領域であって、その目的とする領域の最小単位は、試料分割領域となるが、本構成では、このような試料分割領域まで進む前に、領域を粗く分割する。
即ち、電流推定の対象とする領域(電流推定用領域)を、第1領域設定における分割では粗く、第2領域設定における分割でも、試料分割領域の数より小さい数で分割する。無論、第2領域分割数が第1領域分割数以下とされていてもよい。ただし、粗い領域分割において、電流推定用領域を試料分割領域と同じとした領域に関しては、その領域分割の形態を守り、新たな分割は行わない。
このように分割を進めることで、電流推定用領域を最終的に試料分割領域まで狭めてゆくことが可能となる。
そしてこのようにすると、後にも示すように、電流推定用領域が設定された各段階において、電流推定の対象とする領域の数を比較的限定された数に抑えることが可能となり、演算負荷を低減することができる。
この構成において使用する測定解析方法の第2の特徴手段は、第1の特徴手段に加えて、以下のステップを含む構成となる。
前記電流推定用領域設定ステップによる領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定ステップと、
前記第1領域設定ステップで各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定ステップとを含む。
さて、これまで説明してきた測定解析装置及びその装置が使用する測定解析方法は、少なくとも電流第1推定、電流第2推定を実行し、電流推定用の領域設定に関しては、これが単段であっても、多段(これまで説明してきた例は2段又は3段)であってもよいものであった。
以下に示す例は、測定解析装置あるいは測定解析方法において、電流解析を単段で行い、領域設定を多段で行うものを含む。この場合も、領域設定が多段となることで、その各段での領域数を低減して、先の段落〔0032〕で説明した作用・効果により演算負荷を低減することができ、実用的な測定解析装置を得ることができる。
先にも説明したように、本発明において、「所定の電流分解能」は、測定解析装置で最終的に目標とする電流の分解能である。領域設定を多段で行う場合、その演算負荷の低減を領域設定のみで得ることもできる。この場合、電流推定における電流の分解能は、本来、測定解析装置で目標とする電流分解能となるため、「所定の電流分解能」は、その電流分解能となる。
即ち、二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析装置の第3の特徴構成は、
試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定部と、
前記電流推定用領域設定部において設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算部と、
前記推定磁場関連情報演算部により演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と推定する電流判定処理部とを備え、
前記電流推定用領域設定部による領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定部と、
前記第1領域設定部で各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定部とを含むこととできる。
さらに、二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析方法の第3の特徴手段は、
試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定ステップと、
前記電流推定用領域設定ステップにおいて設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算ステップと、
前記推定磁場関連情報演算ステップにより演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と判定する電流判定処理ステップとを備え、
前記電流推定用領域設定ステップによる領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定ステップと、
前記第1領域設定ステップで各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定ステップとを含むこととなる。
さて、上記した測定解析装置において、前記試料が固体高分子形燃料電池であることが好ましい。
この構成を採用することにより、固体高分子形燃料電池の発電状態を的確に把握して、この燃料電池の改良やその良好な運転等に寄与できる。
本発明においては、電流推定に供する磁場関連情報として、周波数シフト量と磁気強度の例(共に空間勾配を含む)を挙げることができる。
以下、このような周波数シフト量あるいは磁気強度を測定する場合の構成に関して説明する。
1.磁場関連情報を周波数シフト量とする構成
この構成は、
前記試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場の印加により前記試料で発生する核磁気共鳴信号を取得する小型RFコイルを、前記磁気センサとして複数備え、
前記小型RFコイルで取得される前記核磁気共鳴信号の周波数に関し、前記固体高分子形燃料電池の非発電時と発電時との間における差分である周波数シフト量を実周波数シフト量として求める実周波数シフト量演算部とを備え、
前記磁場関連情報が、前記周波数シフト量又は周波数シフト量の空間勾配とすることができる。
ここで、前記固体高分子形燃料電池の非発電時と発電時との間における、前記核磁気共鳴信号の周波数の差分は、以下のようにして求めることができる。
(1)核磁気共鳴信号の実部および虚部を検波する検波部をさらに備え、この検波部で検波された実部および虚部を用いて演算する。
(2)小型Fコイルが、パルス状の励起用振動磁場を印加するとともに、この励起用振動磁場に対応するFID信号を取得し、前記FID信号の実部および虚部を取得し、演算する。
(3)小型RFコイルが、
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
を含むパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加するとともに、この励起用振動磁場に対応するエコー信号を取得し、エコー信号の実部および虚部を取得し、演算する。
2.磁場関連情報を磁場強度とする構成
この構成は、
磁気センサが検出位置の磁場強度を検出するホール素子であり、
前記磁場関連情報が、前記固体高分子形燃料電池の発電時における、前記ホール素子により測定される磁場強度又は磁場強度の空間勾配とすることができる。
以上、本発明の測定解析装置及びその装置で使用する測定解析方法について、これまで説明してきたが、これまで説明した測定解析装置を燃料電池に対して備え、前記測定解析装置から出力される前記電流に基づいて前記固体高分子形燃料電池の運転状態を制御する電池制御部を備えた燃料電池システムを構築することで、効率の高い燃料電池システムを得ることができ、または、良好な運転を長時間に渡って維持することができる。
燃料電池システムの主要機能部位を示す説明図 燃料電池内を流れる電流の説明図 実周波数シフト量測定演算と電流逆解析の順を示すフローチャート 実周波数シフト量の測定演算処理を示すフローチャート スピンエコー法によりNMR信号を取得する原理を示す原理説明図 CPMG法の補償機能を説明する図 燃料電池の概略構成を示す図 燃料電池システムの機能ブロックを示す図(PC内の機能ブロックを含む) 測定解析装置の一部の構成を示す図 小型RFコイルを示す図 励起用振動磁場の印加およびNMR信号の検出を行うLC回路の一例を示す図 励起用振動磁場の印加およびNMR信号の検出を行うLC回路の一例を示す図 Gコイルの別配置構成を示す模式図 NMR信号の位相差のずれを説明する図 電流逆解析部の構成を示す機能ブロック図 電流逆解析の全体を示すフローチャート 電流推定処理の内容を示すフローチャート 実施形態で対象とした試料の領域分割形態(小型RFコイルの分布に対応)を示す図 電流推定用領域の設定状態を示す図 電流推定処理における推定用電流の仮設定状態を示す図 測定解析結果を示す図 測定解析結果を示す図 測定解析結果を示す図
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明に関わる燃料電池システム1の主要機能部位の構成を模式的に示した。
燃料電池システム1は、燃料電池5と、この燃料電池5に付属して設けられる測定解析装置100とにより構成されている。さらに、燃料電池5の運転状態を制御するための電池制御部55が備えられ、測定解析装置100から出力される、各電池部位での電流Iに基づいて、燃料電池5に供給するガス(燃料ガスg1(具体的には水素H)や酸化性ガスg2(具体的には空気air等の酸素含有ガス))の圧力や流量、間欠的なガス流動などのガス制御を行う他、温度制御などを適切に行い、例えば、低い電流領域(発電電流領域)の形成を回避するように構成されている。
測定解析装置100は、燃料電池5に備えられる複数の小型表面コイル(小型RFコイル)114からの測定情報に基づいて、当該小型RFコイル114が配置された位置に対応した分割領域Zi(この領域を、本発明では「試料分割領域」と呼んでいる;図18参照)における実周波数シフト量Δωexpを求める実周波数シフト量演算部200と、試料分割領域Ziにおける電流Iを所定の電流分解能(電流の増分ΔIに相当)で求める電流逆解析部300とを備えている。従って、この測定解析装置100では、実周波数シフト量Δωexpと電流Iとを、試料分割領域Ziに対応した分布として求めることができる。
図3は、測定解析装置100で実行する測定解析処理の概略をフローで示したものである。同図からも判明するように、処理は、小型RFコイル114を所定のシーケンスで駆動させて実周波数シフト量Δωexpを求める演算処理(ステップS1)と、各試料分割領域Ziでの電流Iを推定する電流逆解析処理(ステップS2)との組み合わせとされ、前者の演算処理が実周波数シフト量演算部200で実行され、後者の逆解析処理が電流逆解析部300で実行される。これら処理の結果は、それぞれ出力される(ステップS3)。
以下、1.測定解析原理、2.燃料電池システムの構成、3.測定解析結果、の順に説明する。
1.測定解析原理
1−1 実周波数シフト量の測定演算
燃料電池システム1では、電流Iを分布として求めることができるが、実周波数シフト量Δωexpは、小型RFコイル114により試料分割領域Zi毎に求めこととなる。よって、この項目は単位試料分割領域Ziでの説明である。
図4に、実周波数シフト量の測定演算処理の手順の概要を示した。
測定演算処理においては、以下のステップを順次行い、核磁気共鳴法(NMR法)を用いて試料5に設定される試料分割領域Zi毎の実周波数シフト量Δωexpを求める。
NMR法においては、磁場中に置かれた原子核のスピン共鳴現象により核磁化の運動を核磁気共鳴信号(NMR信号)として検出する。小型RFコイル114を用いてNMR信号を測定すれば、コイル周辺部の局所NMR測定が可能となる。
ステップS101:試料を磁石が配置された空間に置き、試料に静磁場を印加する、
ステップS103:静磁場に置かれた試料の特定箇所に対し、試料より小さい小型RFコイル114を用いて、励起用振動磁場を印加するとともに、発生したNMR信号を取得する、
ステップS105:ステップS103で取得したNMR信号の周波数と励起用振動磁場の周波数とに基づく周波数の差分(実周波数シフト量)を演算する、
ステップS107:ステップS101からステップS105までの処理を、すべての試料分割領域について実行する、
ステップS109:得られた差分を、領域毎に記憶する。
以下、さらに詳細に説明する。
(i)ステップS103(励起用振動磁場印加・核磁気共鳴信号取得)
本ステップでは、励起用振動磁場として、試料内の測定対象核に照射する高周波パルスを印加する。また、励起用振動磁場による核磁気共鳴現象によって試料内の測定対象核から放出されるNMR信号を取得する。
NMR信号は、具体的には、励起用高周波パルスに対応する自由誘導減衰信号(FID(Free Induction decay)信号)またはエコー信号である。FID信号であっても周波数の差分を求めることはできる。エコー信号の場合には、ステップS105における周波数の差分を確実に求めることができるように、位相が収束していることが好ましい。また、励起用高周波パルスを、エコー信号の位相がそろうようなパルスシーケンスで印加することが好ましい。
このようなパルスシーケンスの具体例については、図5を参照して後述する。
また、NMR信号は、位相敏感検波方式により、実部と虚部とを分離して検波される。これにより、ステップS105における周波数の差分と、その増減(正負の符号)を取得することができる。
(ii)ステップS105(実周波数シフト量演算)
本ステップでは、ステップS103で取得したNMR信号の周波数と励起用振動磁場の周波数との差分(実周波数シフト量Δωexp)を求める。
具体的には、位相敏感検波方式により取得されたエコー信号の実部Reと虚部Imgからtan−1(Img/Re)を算出することにより位相φを求める。そして、図9のRF発振器102から出力される波形を基準波形としてエコー信号の位相φと基準波形φの位相差Δφ=φ−φを求める。この関係は図14にも示されている。さらに、実周波数シフト量Δωexpを、単位時間あたりの位相差Δφとして換算する。
(iii)ステップS107
ここまでの処理を、試料分割領域Zi全てで実行する。
(iV)ステップS109(実周波数シフト量Δωexpの記憶)
本ステップでは、ステップS105で取得した周波数の差分である実周波数シフト量Δωexpを、試料分割領域Zi毎に記憶する。
上記(i)ステップS103で印加する励起用高周波パルスの具体例を示す。
実際の測定においては、試料や装置特性に起因する磁場の不均一が生じ、周波数の差分が正確に得られないことがある。そこで、以下の実施形態においては、スピンエコー法を用い、励起用高周波パルスを、たとえば以下の(a)および(b)を含む複数のパルスからなるパルスシーケンスとする(図5参照)。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
上記(a)および(b)のパルスシーケンスに従う励起用振動磁場を印加することにより、エコー信号の位相が収束し、こうした磁場の不均一に起因する測定誤差が効果的に低減される。また、対応するエコー信号の位相のばらつきを抑制することができるため、目的とする電流をさらに正確に求めることができる。
以下、この理由について説明する。
図5に示したように、共鳴励起された磁化ベクトルMx−yは時間と共に緩和してゆく。
この際に実際に観測される磁気共鳴信号の時間変化は、スピン−格子緩和時定数T1(図示していない)、スピン−スピン緩和時定数T2のみでは表すことができない別の時定数のT2により緩和していく。この様子が図5の最下段に信号強度の時間変化として90°励起用振動パルスの直後から示されている。一般的に、この波線で示された実際に測定される磁気共鳴信号強度は急速に減衰し、その時定数T2はT2よりも短い。T2緩和による減衰曲線よりも実際に観測される減衰信号が速く減衰してしまう原因は、静磁場マグネットの作る外部静磁場の不均一性、試料の磁気的性質や形状による試料内磁場の不均一性などにより試料の全体に渡って均一な磁場が確保されていないことによる。
この試料や装置特性としての磁場の不均一性による位相のずれを補正する方法として「スピンエコー」がある。これは、90°励起パルスのτ時間後に、その2倍の励起パルス強度を持つ180°励起パルスを印加して、磁化ベクトルMの位相がxy平面上で乱れていく途中でその位相の乱れを反転させ、2τ時間後には位相を収束させてT2減衰曲線上にのるエコー信号を得るという手法である(図5の最上段参照)。
なお、静磁場に沿った方向を便宜上z方向としたとき、上記(b)で印加する180°励起パルスとしては、x方向でもy方向でもどちらの180°励起パルスでも使用できる。
また、上記(b)の時間2τ経過後にさらに180°パルスを印加し、これに対応するエコー信号を用いて電流測定を行ってもよい。ただし、複数回目のエコー信号を用いて電流測定を行う際には、できるだけ強いエコー信号を観測できるように、y軸方向の180度励起パルスを複数回照射することが有効である。その理由は、後述する図6(a)〜図6(d)の磁化ベクトルの動きに示した。
これらの方法を採用することによって、磁化ベクトルの位相を収束させ、できるだけ強いエコー信号を取得することができる。このようなエコー信号であれば、NMR信号をより高い精度で実部、虚部を検波し、基準周波数(励起用振動磁場の周波数)からの位相の変化量を確実に求めることができる。
なお、(a)と、(b)との間に、一定時間勾配磁場パルスを印加し、さらに、(b)の後に、一定時間勾配磁場パルスを印加してPGSE(Pulsed−Gradient Spin−Echo)法により、NMR信号を取得し、実周波数シフト量を求めることとしてもよい。
この際、NMRの検波方式では、ppmオーダの周波数分解能を持ち、これにより高分解能、高感度で磁場強度の変化を捉えることができる。たとえば、励起用振動磁場の周波数が43MHzである場合、10Hz程度の分解能は充分に得られる。
1−2 電流逆解析原理
試料に電流Iが流れれば、ビオ・サバールの法則から電流Iに正比例した磁場Hが発生する。そして、その磁場強度は電流Iが流れた位置と測定位置との距離rに反比例する。
一方、核磁気共鳴現象では、核磁化の共鳴周波数ωが磁場強度Hに正比例する。小型RFコイルで磁気共鳴信号を取得している場合には、小型RFコイルが測定している領域(試料分割領域Ziに相当)の磁場強度Hを磁気共鳴周波数ωとして間接的に測定していることになる。
磁石が作る空間的にも時間的にも安定した磁場ベクトルHの中で、電流Iを流して磁場ベクトルHを作れば、ある位置での磁場強度Hiは、両者の合成ベクトル(Hi=H+H)で表される。磁場ベクトルHは一定であるから、核磁化の共鳴周波数ωがΔωだけ増減した場合には、ある位置での磁場強度Hiは電流Iと距離rに関係することになる。試料が燃料電池の場合、非発電時が電流Iが流れていない状態に対応し、発電時が電流Iが流れている状態に対応する。
よって、複数の小型RFコイル114を試料に配置して、試料中の複数の位置について核磁化の共鳴周波数の増減Δωを測定すれば、電流Iとそれが流れた位置rを逆解析によって推定することができる。
すなわち、後にも示すように、例えば試料分割領域Zi毎に電流Iを仮設定し、この電流Iにより形成される磁場Hをビオ・サバールの法則に基づいて、全ての試料分割領域Ziについて求めるとともに、そのようにして形成される磁場Hに於ける核磁化の共鳴周波数ωをΔωだけ増減した量(周波数シフト量Δω)として求める。
そして、仮設定した電流Iの分布から求まる周波数シフト量Δωanaの分布と、実際の測定された周波数シフト量Δωexpの分布との適合度合を調べることで、実際に発生している電流分布I(真の電流分布)を推定することができる。
2.燃料電池システムの構成
先にも示したように、燃料電池システム1は、燃料電池5と、この燃料電池5の運転状態を測定する測定解析装置100とを備えて構成される。
2−1 燃料電池
燃料電池5は、図7に示すように、固体高分子電解質膜511を有する膜電極接合体51(MEA)と、一対の拡散層52、53と、セパレータ54,55とを有する。
膜電極接合体51は、固体高分子電解質膜511と、この固体高分子電解質膜511の両側に設けられた触媒層512、513とを有する。
固体高分子電解質膜511は、プロトン性溶媒(本実施形態では水)を含有しており、この水を含有した状態でイオンを伝導することができる膜である。固体高分子電解質膜511としては、たとえば、ナフィオン(登録商標)等を使用することができる。
一対の触媒層512、513のうち、一方の触媒層512は、固体高分子電解質膜511の一方の面に接触するように設けられ、他方の触媒層513は、固体高分子電解質膜511の他方の面に接触するように設けられる。これらの触媒層512、513は、たとえば、カーボン粒子の表面に白金触媒を担持させたものを固体高分子電解質膜511の表面に積層することで形成される。
一方の触媒層512は、酸化剤極(酸素極、カソード)として機能する。他方の触媒層513は、燃料極(水素極、アノード)として機能する。燃料電池5の運転中(発電中)は、電流Iは、電気回路(電子負荷装置)57を通って水素極(触媒層513)から酸素極(触媒層512)に移動する。
なお、触媒層512,513の固体高分子電解質膜511とは反対側の面には、拡散層52、53、さらにはセパレータ54,55が設けられ、これらセパレータ54、55に設けられた流路541、551を通るガスg1,g2(H,air)は、拡散層52,53を介して触媒層512,513に流通する。燃料電池5で発電した電流Iは、セパレータ54、55を通して取り出される。
拡散層52は、触媒層512の固体高分子電解質膜511側の面と反対の面側に設けられる。同様に、拡散層53は、触媒層513の固体高分子電解質膜511側の面と反対の面側に設けられる。拡散層52,53としては、たとえば、撥水処理されたカーボンペーパとすることができる。膜電極接合体51内に存在する水は、拡散層52,53を伝わって外部に排出される。
セパレータ54,55は拡散層52、53の非膜電極接合体51側にそれぞれ設けられ、導線を介して、電気回路57に接続されることとなる。
図2に示す模式例と異なり、燃料電池5が複数積層された構造では、導線240は、各電池から発電電力を集積するようにセパレータ54,55に接続される。
図7において、Hが静磁場であり、Hが発電電流により形成される磁場であり、Hiが測定される磁場を示している。
2−2 測定解析装置
図8に、測定解析装置100の概略構成を示した。
なお、測定解析装置100の各構成要素は、CPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム等を中心に、ハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
測定解析装置100は、
試料(固体高分子形燃料電池5)に対して静磁場を印加する静磁場印加部(磁石113)と、
試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場の印加により試料で発生する核磁気共鳴信号を取得する、小型RFコイル114を複数備え(図8にはその一つのみを示している)、
小型RFコイル114で取得された核磁気共鳴信号の周波数と励起用振動磁場の周波数との差分である周波数シフト量を実周波数シフト量Δωexpとして求める実周波数シフト量演算部200と、
小型RFコイル114が載置されるコイル載置箇所それぞれに対応して、試料領域を分割した試料分割領域Ziについて、実周波数シフト量演算部200で演算される実周波数シフト量Δωexpに基づいて、当該試料分割領域Ziを流れる電流Iを所定の電流分解能で求める電流逆解析部300が備えられている。
これら実周波数シフト量演算部200及び電流逆解析部300は、それぞれ、図示は省力するが、所定のデータを受け入れ、所定の演算処理を実行し、その演算結果を出力できるように構成されている。
測定解析装置100は、他に、RF発振器102、変調器104、RF増幅器(RF増幅部)106、プリアンプ112、検波器140、A/D変換器118、スイッチ部170、測定制御部150、計時部128、シーケンステーブル127、データ受付部120等を備える。
また、測定解析装置100は、図9を参照して後述する構造を備えていてもよい。
前記磁石113は、固体高分子電解質膜511に対して静磁場Hを印加する(図4のS101)。この静磁場Hが印加された状態で励起用振動磁場が固体高分子電解質膜511(具体的には触媒層512、513を含む膜電極接合体51)に印加され、実周波数シフト量の測定がなされる。
前記小型RFコイル114は、固体高分子電解質膜511の特定箇所に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に対応するNMR信号を取得する(図4のS103)。NMR信号は、具体的には、励起用振動磁場が核磁気共鳴を発生させるための励起用高周波パルスである。
小型RFコイル114は、図7にも示すように、固体高分子電解質膜511の面方向に沿って複数配置されている。この小型RFコイル114は、拡散層52と固体高分子電解質膜511との間、拡散層53と固体高分子電解質膜511との間に配置される。
小型RFコイル114の測定領域は、固体高分子電解質膜511の表面から、固体高分子電解質膜511の厚みの途中位置までとしてもよいし、固体高分子電解質膜の厚さ方向に渡り膜全体としても良い。
そして、拡散層52と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の測定領域と、拡散層53と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の測定領域とは重なっていない。
小型RFコイル114は、固体高分子電解質膜511全体の大きさの1/2以下とすることが好ましく、1/10以下とすることがより好ましい。このようなサイズとすることにより、固体高分子電解質膜511中の実周波数シフト量を短時間で正確に測定することが可能となる。
なお、固体高分子電解質膜511の大きさとは、固体高分子電解質膜511の表面の大きさである。小型RFコイル114の専有面積を、上記固体高分子電解質膜511の好ましくは1/2以下、より好ましくは、1/10以下とすることで、短時間で正確な測定が可能となる。小型RFコイル114の大きさは、たとえば、直径10mm以下とすることが好ましい。
小型RFコイル114は、たとえば実施例にて後述する図10に示すようなものを用いることができる。図示したような平面型コイルを用いることで、測定領域を限定し、局所的な測定を行うことができる。このような渦巻き型のコイルの測定領域は、たとえば幅がコイルの直径程度、深さがコイル半径程度である。また、このコイルは、通常のソレノイド型コイルと異なり、平面状であるために、平面状の固体高分子電解質膜511の上に貼り付けるだけで、NMR信号を取得することができる。
また、小型RFコイル114は、平面型の渦巻き型コイルに限られず、種々の形態のものを用いることができる。たとえば、平面型の8の字コイル(バタフライコイル、Double−D型コイル等と呼ばれることもある。)等も利用可能である。8の字コイルは、二つの渦巻き型コイルを含むものであり、磁石の主磁場方向にコイルの渦巻きの軸が平行である場合でも、または、両者に角度がある場合でも、固体高分子電解質膜からのNMR信号を検知することができる。また、渦巻き型コイルは巻いたコイルの軸方向に感度を有するのに対し、8の字コイルは巻いたコイルと同じ平面内で感度を有する。
図8に戻り、小型RFコイル114により印加される振動磁場(励起用振動磁場)は、RF発振器102、変調器104、RF増幅器106、測定制御部150中のパルス制御部151、スイッチ部170、および小型RFコイル114の連携により生成される。
また、本実施形態において、小型RFコイル114に励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成機能部は、RF発振器102、変調器104、RF増幅器106を含んで構成される。RF発振器102から発振した励起用振動磁場は、測定制御部150中のパルス制御部151による制御に基づいて変調器104にて変調され、パルス形状となる。生成されたRFパルスはRF増幅器106により増幅された後、小型RFコイル114へ送出される。
なお、図示しないがRFパルス生成機能部は、各小型RFコイル114それぞれに対応して設けられ、複数のRFパルス生成部は、測定制御部150に接続される。
励起用振動磁場の周波数は、静磁場における電流が流れていない状態でのNMR信号の共鳴周波数と略一致する。RF発振器102には、この共鳴周波数が記憶されている。
パルス制御部151は、小型RFコイル114が固体高分子電解質膜511に印加する励起用振動磁場が上述のパルスシーケンスに従って実行するように、上記の連携を制御する。
パルス制御部151は、シーケンステーブル127および計時部128に接続されており、シーケンステーブル127から取得したシーケンスデータと計時部128での測定時間とに基づいて、励起用高周波パルスを発生させる。シーケンステーブル127には、実周波数シフト量Δωexpを測定する際の励起用高周波パルスのシーケンスデータが記憶されている。具体的には、励起用高周波パルスの発生時刻とその間隔が設定されたタイミングダイアグラムと、タイミングダイアグラムに基づいて印加する励起用高周波パルスの強度、位相が記憶されている。
小型RFコイル114は、このRFパルスを固体高分子電解質膜511の特定箇所に印加する。そして、印加されたRFパルスのNMR信号を小型RFコイル114が取得する。NMR信号は、たとえば励起用振動磁場に対応するエコー信号である。
小型RFコイル114が固体高分子電解質膜511に印加する励起用振動磁場は、先にも、測定解析原理の項で説明したように、たとえば、
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
からなるパルスシーケンスとする。
なお、小型RFコイル114を用いる場合、(a)および(b)の励起パルス強度の調整が困難となる場合がある。たとえば、測定対象の領域、つまり小型RFコイル114で囲まれた領域のうち、中央部と周縁部とで励起のされかたに差異が生じてしまい、全体を均一の励起角度となるように、つまり(a)および(b)における励起磁場の強度比が一定となるように励起することが困難となる場合がある。(a)および(b)における励起角度比がばらつくと、適切なスピンエコー信号の取得が困難となる。
そこで、このような場合には、パルス制御部151が、上記パルスシーケンスに加え、90°パルス(a)より時間τだけ前の時刻に、180°パルスを印加するステップを加えた別のシーケンスを実行するようにする(図5 上段)。そして、これら2つのシーケンスに対応する180°パルス(b)の減衰曲線の挙動を比較することにより、90°パルス(a)および180°パルス(b)の励起パルス強度が正確であるか否かを判別できる。
この結果、装置の異常等により励起パルス強度がずれた場合でも、測定を行う前の段階で異常を検知でき、測定値をより正確なものとすることができる。また、(a)90°パルスが第1位相にあり、(b)180°パルスが、第1位相と90°ずれた第2位相にある構成とすることもできる。
なお、以下のようなパルスシーケンスとしてもよい。
(a)励起用振動磁場の90°パルス、
(b)(a)のパルスを照射した後に、一定時間dだけ印加される、勾配磁場パルス、
(c)(a)のパルス照射から時間τだけ経過した後に印加される励起用振動磁場の180°パルス、および、
(d)(c)のパルスを照射した後に、一定時間dだけ印加される、勾配磁場パルス。
からなるパルスシーケンス。
上記(a)〜(c)のパルスシーケンスに従う励起用振動磁場を印加することにより、エコー信号の位相が収束し、こうした磁場の不均一に起因する測定誤差が効果的に低減される。
以下、この理由について図6(a)〜図6(d)を 参照して説明する。
静磁場中に置かれた水素原子核は、静磁場に沿った方向(便宜上、Z方向とする)に正味の磁化ベクトルを持ち、特定の周波数(これを共鳴周波数と呼ぶ)のRF波をZ軸に垂直なX軸方向で外部から照射することで磁化ベクトルはY軸の正方向に傾斜し、核磁気共 鳴信号を観測することができる。
この際、最大強度のNMR信号を 取得するために照射されたX軸方向の励起パルスを90°パルスと呼ぶ。そして、磁化ベクトルを90°パルスによってY軸の正方向に傾斜させた後、τ時間後に「Y軸方向」に 外部から180°励起パルスを照射して、磁化ベクトルを「Y軸を対称軸として」反転させる。この結果、2τ時間後には磁化ベクトルがY軸の「正の方向」上で収束し、大きな 振幅を持つNMR信号が観測される。
このように磁化ベクトルを「Y軸を対称軸として」反転させるため、以下の補償機能が発現する。図6(a)〜図6(d)は、スピンエコー法の補償機能を説明する図である。
なお、図で示される座標は、回転座標系である。
試料の中に、静磁場の不均一性が無視できるような小さな領域の核磁化として、PとQを考える。Pにおける磁場がQにおける磁場より強いものとする。
このとき、図6(a)に示すように、90°パルスをx’軸方向へ印加すると、P、Qの核磁化は、回転座標系で同じ場所(y’軸)から歳差運動を始め、時間の経過とともに、Pの位相がQの位相より進んだものとなる(図6(b))。
そこで、90°パルスから時間τ経過した時点でy’軸方向に180°パルスを印加すると、P、Qの核磁化はy’軸の周りに180°回転し、パルスを印加する前とy’軸に関して対称な配置になる(図6(c))。
この配置では、より進んだ位相をもっていた核磁化Pが、逆にQより遅れた位相をもつため、これからさらに時間τ経過した時刻では、どちらの核磁化も同時にy′軸に達することになる(図6(d))。
このような関係は、試料の中のあらゆる領域の核磁化について成り立つため、すべての核磁化は、この時刻にy’軸に集まり、その結果、大きなNMR信号が得られる。
以上のように、はじめにx’軸方向へ90°パルスを印加し、次いでy’軸方向に180°パルスを印加することにより、図6(c)で示したように、P、Qの核磁化はx’y’平 面内で反転する。この核磁化の反転により、補償機能が良好に発現する。たとえば、(a)磁場の不均一性、(b)RFコイルが照射する励起パルス強度の不均一性等の原因により、P、Qの位置がx’y’平面上方または下方の位置にずれた場合でも、x’y’平面内で 核磁化が反転することにより、位相のずれが補償される。
以上より、2τ時間後には磁化ベクトルがY軸の「正の方向」上で収束し、大きな振幅を持つエコー信号が観測される。さらに、上記(c)では、3τ時間後に磁化ベクトルに「Y軸方向」に外部から180°励起パルスを照射して、再度、Y軸の「正の方向」上で収束させて、4τ時間後に大きな振幅を持つエコー信号を観測する。さらに、同様の2τ間隔で、180°パルスを照射し続ける。この間、2τ,4τ,6τ,・・・の偶数番目のエコー信号のピーク強度を抽出し、ステップS106において指数関数でフィッティングすることで、CPMG法によるT2(横)緩和時定数を算出することができる。
再度、 図8に戻って、NMR信号の検出について説明する。
NMR信号検出においては、小型RFコイル114で取得したNMR信号を検出し、このNMR信号をデータ受付部120を介して実周波数シフト量演算部200に送出する。NMR信号検出機能部は、プリアンプ112、検波器140およびA/D変換器118を含んで構成される。検出されたNMR信号は、プリアンプ112により増幅された後、検波器140へ送出される。
なお、図示しないがNMR信号検出機能部は、各小型RFコイル114それぞれに対応して設けられ、複数のNMR信号検出機能部は、データ受付部120に接続される。
検波器140は、位相敏感検波法により、NMR信号の実部および虚部を検波するよう構成されている。検波器140において取得したNMR波形が実部と虚部に正確に分離するために、復調の元となる基本波のsin波とcos波の位相差が正確に90度になるように、厳密に調整することが好ましい。二つの基本波が厳密に90度の位相差となるように調整することにより、後述する実部と虚部のtan−1を用いた位相差の算出をさらに正確に行うことができる。なお、復調の元となる基準波は、たとえば図9を参照して後述する90°ハイブリッドによって作られる。
検波器140は、検波した実部と虚部をA/D変換器118へ送出する。A/D変換器118はNMR信号をA/D変換した後、データ受付部120に送出する。実周波数シフト量演算部200は、データ受付部120に送出されたデータを取得する。
以上、励起用振動磁場の印加およびNMR信号の検出について述べたが、これらは、小型コイル114を含むLC回路により実現することができる。以上示したように、このようなLC回路は、RFパルス生成機能部と、NMR信号検出機能部とに接続される構造とできる。
図11は、このようなLC回路の一例を示す図である。図11においては、共振回路のコイル部(インダクタンス部)は、直径1.4mmの小型RFコイル114としている。核磁気共鳴(NMR)法においては、磁場中に置かれた原子核のスピン共鳴現象により核磁化の運動をNMR信号として検出することで原子数密度とスピン緩和時定数を測定することができる。1Teslaの磁場中でのスピン共鳴周波数は約43MHzであり、その周波数帯を高感度に選択的に検出するために、図11に示すようなLC共振回路が用いられる。
また、図11に示すLC共振回路にかえて、図12に示すような構成でLC共振回路を構成してもよい。図12のLC共振回路は、RFパルス生成部と、NMR信号検出部とに接続される。図12では、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサCT、CMとの間に同軸ケーブルLを配置している。
チューニング用の可変容量コンデンサCT(可変容量素子)は、特定の周波数で回路が共振し、NMR信号を受信しやすくするように小型RFコイル114に対して挿入されている。
一方、アンプを含む伝送系を同一のインピーダンスに整合させるために、マッチング用可変容量コンデンサCM(可変容量素子)が上述の共振回路に含まれている。
これらの共振回路の構成は、一つの例であり、同じように特定の周波数で共振し、伝送系とのインピーダンス整合が取れる回路であれば、他の構成としても良い。
同軸ケーブルLは、コイルと、キャパシタとが組みあわされた等価回路として表すことができる。
同軸ケーブルLの長さを調整すると、図12の点Pから見たインダクタンスとキャパシタンスが増減するように見える。
ここで、測定解析装置100では、送受信系、伝送系のケーブル等がすべてたとえば、特定のインピーダンス(たとえば、50Ω)でインピーダンス整合されている。そこで、同軸ケーブルLの長さを調整し、小型RFコイル114を含む共振回路の特性インピーダンスを、所定のインピーダンスとすればよい。
図11に示したような共振回路を使用した場合、小型RFコイル114を、可変容量コンデンサCTに直接接続した構成となるため、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサCTとの距離が近くなりやすい。そのため、固体高分子電解質膜511に対し、小型RFコイル114を近づけて測定を行う場合、可変容量コンデンサCTがじゃまになることがある。特に、本実施形態のように複数の小型RFコイル114を使用する場合には、複数の可変容量コンデンサCTが必要となり、複数の小型RFコイル114を所望の位置に配置しづらくなったり、複数の小型RFコイル114を密に配置することが困難となったりする可能性がある。
また、可変容量コンデンサCTには大きな電圧がかかるため、可変容量コンデンサCT自体を小さくすることは難しい。一方で、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサとを一定距離離間することも考えられるが、この場合、単にコイルの線を延長させて、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサとを接続したのでは、ノイズを拾う原因となる。
そこで、図12に示すような共振回路を使用することで、ノイズの強度を大きくせずに、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサとの間の距離を長く確保することができる。これにより、測定精度を低下させずに、測定操作しやすくすることができる。また、複数の小型RFコイル114を使用する場合にも、小型RFコイル114を所望の位置に設置したり、密に配置したりすることが可能となる。
図8に戻り、スイッチ部170は、小型RFコイル114、RF増幅器106およびプリアンプ112を接続する分岐部に設けられており、小型RFコイル114とRF信号生成部(RF増幅器106)とが接続された第1状態、および、小型RFコイル114とプリアンプ112とが接続された第2状態を切り替える機能を有する。
つまり、スイッチ部170は、「送受信切り替えスイッチ」の役目を果たす。この役目は、RFpower−ampで増幅された励起パルスを小型RFコイル114に伝送する際には、受信系のプリアンプ112を切り離して大電圧から保護し、励起後にNMR信号を受信する際には、RF増幅器106から漏れてくる増幅用大型トランジスタが発するノイズを受信系のプリアンプ112に伝送しないように遮断することである。小型RFコイル114を用いて測定する場合には、微弱な信号を取り扱うため、以下の理由でスイッチ部170が必要となる。一方、小型RFコイル114を用いない大型測定システムでは、「クロスダイオード」を用いれば充分に対処ができる。なお、クロスダイオードは、所定値以上の電圧が印加された際にオン状態となり、所定値未満の場合にはオフ状態となるダイオードである。
また、スイッチ部170は各小型RFコイル114に対応して複数設けられている。
小型RFコイル114を用いる場合に特に「送受信切り替えスイッチ」すなわちスイッチ部170が必要な理由は以下の通りである。
(i)小型RFコイル114で検出できる固体高分子電解質膜体積は、大型コイルに比べて小さくなる。この検出可能な固体高分子電解質膜体積は、おおよそ、(コイルの内側面積×コイル半径の深さ)である。体積に比例して減少する微弱なNMR信号を、低ノイズ、高感度で測定するためには、送信系において、RF増幅器106の増幅用大型トランジスタから漏れてくるノイズを遮断することが必要となる。また、受信系では高感度のプリアンプ112を使用する必要がある。高感度のプリアンプ112の使用に当たっては、送信時に小型コイルに送られる大電圧の励起パルスからプリアンプ112を保護できるように、プリアンプ112を切断しなければならない。
(ii)固体高分子電解質膜体積内の核磁化を励起する際に、適切な励起パルスパワーで、具体的には、90度パルスと180度パルスの強度が1対2の関係、または照射エネルギーが1対4、またはパルス印加時間が1対2の関係になるように、核磁化を励起する必要がある。励起パルスパワーの調整を適切に行うことができないと、目的としているスピンエコー法のパルス系列とならず、その結果、適切なスピンエコー信号の取得ができないために、NMR信号波形測定の信頼性が低下する。この現象は、従来のクロスダイオードを用いて、小型コイルの送受信切り替えを行う際には顕著に現れる。大型コイルでは、励起パルス強度が非常に大きく、クロスダイオードでの損失が無視できるほど小さいとみなせるが、小型コイルの場合には、励起パルス強度が大型コイルのそれよりも小さいために、クロスダイオードでの損失が無視できない。このため、適切な励起パルス強度とするためには損失が極力少ない「送受信切り替えスイッチ」が必要となる。
上記分岐部にスイッチ部170を設けることにより、小型RFコイル114から固体高分子電解質膜511に印加される励起用振動磁場信号の損失を低減し、この結果、90°パルスおよび180°パルスのパルス角を正確に制御することが可能となる。パルス角の正確な制御は、スピンエコー法における補償効果を確実に得る上で重要な技術的課題であり、本実施形態では、かかる課題をスイッチ部170の配設により解決している。
また、局所測定のためのRF検出コイルは微小化し、NMR受信時の低ノイズ化が、測定の確からしさを確実なものとするためには重要な因子となる。NMR信号を受信する際に、プリアンプ112に入り込むノイズには、RF波の送信系が主にあり、励起用パルスを増幅するRF増幅器106からの「RF波の漏れ」や「大電力増幅器が発するノイズ」がある。NMR信号の受信時には、送信側から漏れてくる励起波をスイッチ部170で確実に遮断し、低ノイズでNMR信号を受信する必要がある。本実施形態では、かかる課題についても、スイッチ部170の配設により解決している。
スイッチ部170は、種々の構成を採用することができる。
また、図8に示すように、測定解析装置100は、固体高分子電解質膜511に対して勾配磁場を印加する勾配磁場印加部(一対のGコイル251)および一対のGコイル251にパルス電流を供給する電流駆動用電源159をさらに備える。
このようなGコイル251の配置構成としては、図8に示す一対とする他、後述する図13に示すような構成とすることも可能である。
図8からも判明するように、一対のGコイル251は、小型RFコイル114から離間して配置された勾配磁場印加コイルである。一対のGコイル251は、固体高分子電解質膜511に勾配磁場を印加できるように配置される。
Gコイル251の形状は、種々のものを採用し得るが、本実施形態では平板状コイルを用いる。Gコイル251は、たとえば、図13のような半月状のものであってもよい。なお、図8では、一つの固体高分子電解質膜511に複数の小型RFコイル114を設け、複数の小型RFコイル114に対して一対のGコイル251を配置する場合が例示されている。
図13には、各小型RFコイル114に対して、一対のGコイル251が配置される場合が例示されている。
Gコイル251は、固体高分子電解質膜511の表面に対し平行に配置される。
また、Gコイル251は、小型RFコイル114よりも上方に配置する。これにより、小型RFコイル114の中心軸上に、z軸方向に静磁場方向を持つとした時にz軸方向に磁場の勾配を持つ勾配磁場を形成することができる。
小型RFコイル114と一方のGコイル251との間、小型RFコイル114と他方のGコイル251との間には、図示しない遮蔽シールドが設けられている。この遮蔽シールドにより、Gコイル251からのノイズが、小型RFコイル114に影響するのを防止している。遮蔽シールドは、ノイズの通過を防止し、かつ、磁場が通過できるような厚さとなっている。
実周波数シフト量演算部
以上、固体高分子電解質膜511周辺の装置構成について説明した。
つづいて、NMR信号の処理ブロックである実周波数シフト量演算部200について説明する。この実周波数シフト量演算部200は実磁場関連情報演算部の一例である。
図8に戻り、検波器140で検波されたNMR信号(エコー信号)の実部および虚部は、データ受付部120により取得されて、実周波数シフト量演算部200に送られる。
実周波数シフト量演算部200は、検波器140で検波されたエコー信号の実部および虚部を取得し、これらを用いてエコー信号と励起用振動磁場との位相差を演算し、この位相差から、エコー信号の周波数と励起用振動磁場の周波数とに基づく周波数の差分(実周波数シフト量)Δωexpを演算する(図4のS105)。
具体的には、検波された実部と虚部よりtan−1(Img/Re)を求める。この値は、NMR信号の位相差ΔΦ[rad]に相当する。ΔΦは、図14に示すように、時間的に変化しない周波数で進行する基準波(位相φ)と、測定したNMR信号との位相の差である。ここで、基準の周波数は、電流が流れていない状態でのNMR信号の共鳴周波数に予め設定しておく。
実周波数シフト量演算部200は、得られた位相差ΔΦの単位時間あたりの変化量から、Δωexpを得る。結果、実周波数シフト量Δωexpに基づいた電流Iの推定が可能となる。
次に、図8及び9を参照して、RF発振器102、変調器104、RF増幅器106、パルス制御部151、スイッチ部170、小型RFコイル114、プリアンプ112、検波器140およびA/D変換器118の連携について説明する。
図9において、変調器104は、ミキサー177、ミキサー179および合成器181を含んで構成される。検波器140は、ミキサー183、ミキサー185および分配器187を含んで構成される。A/D変換器118は、第一A/D変換器118Aおよび第二A/D変換器118Bを備える。
また、図9においては、RF発振器102と変調器104との間に、90°ハイブリッド171および分配器173と175がさらにこの順に配置され、90°ハイブリッド171と検波器140との間にさらに分配器173と175が配置されている。
この構成において、RF発振器102から出力される波形を90°ハイブリッド171によって、同一周波数だが90°だけ位相が異なる二つの波形とする。この二つの基準波形を分配器173と175で分けた後に、二つの基準波形をパルス制御部から送られてくる波形108と合成器181で合成することによって励起用の信号を形成する。さらには、小型RFコイル114で受信したNMR信号をスイッチ部170で切替え、プリアンプ112で増幅した後に、二つの基準波形を元にして検波器140でNMR信号が検波されて、RealとImaginary成分となる。
ここで、90°ハイブリッド171から出力されている二つの波形は、具体的にはsin波、cos波であり、二つの波形が精度良く直交していることが位相を求める上で重要な点である。
電流逆解析部
以下に、電流逆解析部300について説明する。
図15は、電流逆解析部300の機能構成を示したブロック図であり、図16に電流逆解析のメインフローを示し、図17に電流第1推定処理、電流第2推定処理、電流第3推定処理、各段階における電流推定処理のフローを示した。
電流逆解析処理は、
1.試料領域Zallに関し、試料分割領域Ziの数(実際は小型RFコイル114の数:図18に示す例では7×7=49)に対応する分割領域まで電流推定用領域Zicを狭める処理と、
2.電流分解能を目標とする電流分解能まで高める処理とを、
含むものとなる。
電流逆解析部300は、図15に示すように、
試料領域Zallを、試料分割領域Ziの集合体又は試料分割領域Zi自体として構成される、複数の電流推定用領域Zicに分割する電流推定用領域設定部301と、
電流推定用領域設定部301において設定される電流推定用領域Zicについて、当該電流推定用領域Zicに流れる推定用電流Iiを仮設定するとともに、当該推定用電流Iiに基づいた試料分割領域Ziの各々における周波数シフト量Δωである推定周波数シフト量Δωanaを演算する推定周波数シフト量演算部302と、
推定周波数シフト量演算部302により演算された推定周波数シフト量Δωanaに関し、実周波数シフト量Δωexpと比較し、適合度が高い推定周波数シフト量Δωとなる推定用電流Iiを、試料における真の電流Iと判定する電流判定処理部303とを備えて構成されている。この推定周波数シフト量演算部302は、推定磁場関連情報演算部の一例である。さらに、図19(b)に示すように、電流推定用領域Zicが集合体とされる場合は、この集合体内において、試料分割領域Ziは、他の試料分割領域Ziと何れかの辺で接続する。
各機能部位301、302、303は、それぞれ所定の機能を果たすように構築されるが、本発明に係る電流逆解析部300では、これらの機能部位を働かせて逆解析を少なくとも2段階で行う。
図15に主制御部300Mと記載しているのは、これらの各機能部位301、302,303を所定の順に(以下に示す例では図16に示す手順で)、働かせる制御部である。
以下に示す例では、試料領域Zallの分割に関しては2段階でこれを実行し、電流Iの分割(電流分解能を上げる処理)に関しては3段階で、これを実行する例を示す。
前記電流推定用領域設定部301による領域設定に関しては、試料分割領域Ziの数より小さい第1領域分割数となる電流推定用領域Zicを設定する第1領域設定部301Aと、前記第1領域設定部301Aで各々設定した前記電流推定用領域Zicを、前記試料分割領域Ziを最小単位とし、前記第1領域分割数より小さい分割数(試料分割領域Ziの数より小さい数の一例)で分割した領域を、新たな電流推定用領域Zicとして設定する第2領域設定部301Bとを含む構成とされている。電流推定用領域Zicの設定は、その最小単位が試料分割領域Ziであり、外部入力が可能となるように、電流推定領域受付部301Cが設けられている。
電流推定処理を行うに関し、電流推定において目標とする所定の電流分解能より低い分解能の第1分解能で、電流推定用領域Zicについて推定周波数シフト量Δωanaを求めるとともに、電流判定処理部303による適合判定を実行して電流推定を行う電流第1推定処理部310、
電流第1推定処理部310で、適合度が高いと判定された電流を第1電流推定量として、当該第1電流推定量を含み、前記第1分解能より分解能が高く、所定の電流分解能より低い第2分解能で、電流推定用領域Zicについて推定周波数シフト量Δωanaを求めるとともに、電流判定処理部303による適合判定を実行して電流推定を行う電流第2推定処理部320とを少なくとも備える構成とされている。
また、電流第2推定処理部320に加えて、電流第3推定処理部330が備えられている。当該電流第3推定処理部330は、電流第2推定処理部320で適合度が高いと判定された電流を電流第2推定量として、当該電流第2推定量を含み、第2分解能より分解能が高く、所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第3分解能で、前記電流推定用領域について前記推定周波数シフト量を求めるとともに、前記電流判定処理部303による適合判定を実行して電流推定を行う構成とされている。
さらに、同図からも判明するように、前記電流第1、第2、第3推定処理部310,320、330における電流推定において、処理対象とする電流の範囲の入力を受付ける電流推定範囲入力受付部311,321,331が備えられている。
また、それぞれの電流推定で取り扱う電流分解能を受付ける電流分解能受付部312、322、332も備えられている。
これら電流推定範囲入力受入部311、321、331と、電流分解能受付部312、322、332は、それぞれ電流第1、第2、第3推定処理部310,320、330に対応して設けられているが、その理由は、図17に示すフロー、および段落〔0190〕〜〔0195〕で説明するように、これら処理部310,320、330で行う、電流推定処理が、領域設定の段、電流推定の段で異なるためである。原則としては、領域設定の段及び電流推定の段が進むに従って、電流推定の範囲は狭くされ、電流の分解能(電流範囲の分割数が相当)は高くされる。この構成より、領域設定を2段、電流推定を3段で行う実施形態における「所定の電流分解能」は、第2領域設定において電流第3推定処理で受け付ける第3分解能となる。一方、電流第3推定処理部330は、第1領域設定では、所定の電流分解能より低い電流の分解能を第3分解能とし、第2領域設定では、所定の電流分解能に等しい電流の分解能を第3分解能として、電流推定処理を実行する。
前記電流第1推定処理部310に於ける電流推定処理は、処理対象とする電流Iiの範囲を最大値(図20、Iimax,1)、最小値(図20、Iimin,1)の間に設定し、第1分解能(図20、電流の増分ΔI=(Iimax,1−Iimin,1)/NΔIi,1が相当)に基づいて、電流Iiを仮設定して実行する推定処理となる。
前記電流第2推定処理部320に於ける電流推定処理は、電流第1推定処理部310での推定処理で、最も適合度が高いと判断された電流(図20、Iisol,1)を最大値(図20、Iimax,2)と最小値(図20、Iimin,2)の間に含み、処理対象とする電流の範囲を設定して前記第2分解能(図20、電流の増分ΔIiが相当)に基づいた推定処理となるように構成されている。
前記電流第3推定処理部330に於ける電流推定処理は、電流第2推定処理部320での推定処理で、最も適合度が高いと判断された電流(図20、Iisol,2)を最大値(図20、Iimax,3)と最小値(図20、Iimin,3)の間に含み、処理対象とする電流の範囲を設定して前記第3分解能(図20、電流の増分ΔIiが相当)に基づいた推定処理となるようにシステムが構成されている。
また、実施形態では、電流第1推定処理部310に於ける推定処理における、処理対象とする電流範囲の分割数(図20、NΔIi,1=4)、電流第2推定処理部320に於ける推定処理における、処理対象とする電流範囲の分割数(図20、NΔIi,2=4)、および電流第3推定処理部330に於ける推定処理における、処理対象とする電流範囲の分割数(図20、NΔIi,3=4)、を同じとしている。
これまで説明してきた、各機能部位の働きについて、図16、図17を参照して、その働きに関して説明する。
図16は、電流逆解析の全体を示すフローチャート(メインフロー)であり、図17は、電流推定処理の内容を示すフローチャートである
先に説明した、推定周波数シフト量演算部302より実行される推定周波数シフト量演算処理及び電流判定処理部303により実行される電流判定処理は、図16に記載の電流第1推定処理(電流第1推定処理部310により実行)、電流第2推定処理(電流第2推定処理部320により実行)及び電流第3推定処理(電流第3推定処理部330により実行)における、それぞれ所謂サブルーチンとしての処理とされている。
以下、メインフロー(図16)、電流推定フロー(図17)の順に説明するが、説明に際して、本発明の理解を容易とするため、適宜、図18、19、20に記載の一実施形態を例示しながら説明を進める。
メインフロー
本発明における電流逆解析は、電流推定用領域設定部301に備えられる第1領域設定部301A(第1領域設定処理)、第2領域設定部301B(第2領域設定処理)により設定される領域設定に従って実行される。
処理は、図16のメインフローに示すように、最初、第1領域設定処理(ステップS301)で設定される電流推定用領域Zicでの処理(電流第1〜3推定処理が順に実行される)として進み、その後、第2領域設定処理(ステップS310)で設定される電流推定用領域Zicでの処理(電流第1〜3推定処理が順に実行される)として進められる。
図19(b)に示す例では、第1領域設定処理で設定される電流推定用流域Zicは、同図に太線で示す分割線で分割された16の領域である。
一方、第2領域設定処理で設定される電流推定用領域Zicは、図19(c)に太線で示す分割線で分割した新たな領域Zicとされ、実際の試料分割状態に相当する試料分割領域Ziとされている(同図に、この形態をZic(=Zi)として示した)。
領域設定処理ステップの詳細は以下の通りである。
ステップS301:第1領域設定処理ステップ
電流推定用領域設定ステップでの領域設定において、試料分割領域Ziの数より小さい第1領域分割数となる電流推定用領域Zicから電流推定を開始する。
ステップS310:第2領域設定処理ステップ
電流推定用領域設定ステップでの領域設定において、前記第1領域設定処理ステップで各々設定した各電流推定用領域Zicを第1領域分割数より小さい分割数で分割した領域として、新たな電流推定用領域Zicを設定して電流推定を実行する。
このように、後段の領域設定処理で前段の各電流推定用領域Zicをさらに分割して、新たな電流推定用領域Zicを設定する場合、段数が進むに従って、電流推定用領域Zic内では、その分割数を小さくする形態で分割を進めても良いし、ある程度、大きくしても構わない。ただし、演算負荷を上げないという本発明の主旨より、上限は試料分割領域Ziの数より小さい数となる。前段の電流推定用領域Zicを構成する試料分割領域Ziの数に対して、数マトリックス程度の増加は許容できる。
図19(c)に示す例では、この新たな電流推定用領域Zicは、目的とする試料分割の単位である試料分割領域Ziとされている。
以下は、電流推定用領域Zicを設定した状態で実行する電流推定である。
ステップS303:電流第1推定処理ステップ
推定周波数シフト量演算ステップにおける演算において、所定の電流分解能より低い分解能の第1分解能で、電流推定用領域について推定周波数シフト量を求めるとともに、前記電流判定処理部303による適合判定を実行して電流推定を行う、
ステップS305:電流第2推定処理ステップ
電流第1推定処理ステップで、適合度が高いと判定された電流を電流第1推定量として、当該電流第1推定量を含み、第1分解能より分解能が高く、所定の電流分解能より低い第2分解能で、電流推定用領域について推定周波数シフト量を求めるとともに、電流判定処理部303による適合判定を実行し電流推定を行う、
ステップS307:電流第3推定処理ステップ
電流第2推定処理ステップで、適合度が高いと判定された電流を電流第2推定量として、当該電流第2推定量を含み、第2分解能より分解能が高く、所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第3分解能で、電流推定用領域について推定周波数シフト量を求めるとともに、電流判定処理部303による適合判定を実行し電流推定を行う。
ステップS309:領域内電流推定完了判定ステップ
この判定ステップでは、このステップに達した状態での領域設定の段数が判定され、領域設定として最終的な領域設定である試料分割領域Ziとなっているかどうかが判定される。図19に示す実施形態では、第2領域設定での領域設定が終了したかどうかは、試料分割領域Zi単位での電流推定を終了したかの判定に相当する。
即ち、第2領域設定での電流推定を終了したかどうかが判定され、第1領域設定の状態にある(S309;No)場合に、第2領域設定(S310)に進む。
一方、第2領域設定の状態にある(S309;Yes)場合に、電流推定を終え、電流出力(S320)に進む。
このようにメインフローを実行することにより、第1領域設定、第2領域設定の各段を経て電流推定用領域Zicを試料分割領域Ziまで狭めながら、各領域設定段階で、複数段の電流推定(電流第1推定、電流第2推定、電流第3推定)を実行できる。
電流推定フロー
以下、メインフローに記載の電流推定処理(電流第1推定処理〜電流第3推定処理)について、図17を参照して説明する。
電流第1推定処理部310〜電流第3推定処理部330が、それぞれの処理を実行するが、その処理形態は基本的に同じである。
ステップS501:電流情報受付ステップ
各電流推定ステップに入る段階で、電流推定の対象とする電流情報を受付ける。
電流情報には、電流推定の対象とするその電流(推定用電流)Iiの最大値Iimax、最小値Iiminが含まれるとともに、この電流範囲内での推定対象とする電流Iiの数(分割数NΔIi,n)又は電流Iiの増分ΔIi,nが含まれる。ここで、nは電流推定の段に相当する。
前者は、電流推定範囲入力受付部311、321、322により受付られ、後者は、実質的に推定対象とする電流の分解能に相当するため電流分解能受付部312、322、332により受付られる。ここでの受付は、測定解析装置100内では、予め設定されている電流情報の読み込みとなる。この段階で「所定の電流分解能」及び第1領域設定での電流推定において対象とする電流の分解能(第1分解能、第2分解能、第3分解能)及び第2領域設定での電流推定において対象とする電流の分解能(第1分解能、第2分解能、第3分解能)は、それぞれ確定する。
これまでも説明してきたように、本発明にかかる電流逆解析では、電流Iを分布として求めるため、各電流推定用領域Zicで、推定用電流Iiを先に受入れた電流情報に基づいて、順次変更しながら、その全ての候補となる分布に対して処理を進める。
ステップS503:演算対象特定ステップ
演算対象とする推定用電流Ii及び電流推定用領域Zicを特定する。
この特定において、推定用電流Iiはその取りうる値が、順次、電流推定用領域Zic毎に特定される。即ち、試料領域Zallが電流推定用領域Zicで分割された状態での推定用電流Ziの分布として特定される。例えば、図19(b)に示すように、試料領域Zallが16の電流推定用領域Zicに分割された状態で、図20の電流第1推定で示すように、推定用電流Iiを4分割とする場合は、対象となる分布の数は、推定用電流Iiの数(4)の電流推定用領域Zicの数(16)のべき乗(416)となる。
図19(b)に示す第1領域設定の場合は、電流推定用領域Zicが主に複数の試料分割領域Ziの集合体となっている領域として設定される。この集合体を構成する個々の試料分割領域Ziに於ける推定用電流Iiは、その代表値で仮設定する。従って、この電流推定用領域Zic内では、全ての試料分割領域Ziについて推定用電流Iiは同一の値(代表値)となる。
図19(c)に示す第2領域設定の場合は、第2領域設定では、電流推定用領域Zicが試料分割領域Ziに一致されるため(Zic=Zi)、個々の試料分割領域Ziについて推定用電流Iiを仮設定することとなる。
以下に示すステップS513,S515までの処理を、各分布について繰り返す。
ステップS505;推定周波数シフト量Δωanaを演算ステップ
ステップS503で仮設定される推定用電流Iiに対して、各試料分割領域Ziにおける推定周波数シフト量Δωanaを演算する。
ステップS507;誤差演算ステップ
ステップS505で全試料分割領域Ziについて測定・演算されている、各試料分割領域Ziにおける実周波数シフト量Δωexpからの推定周波数シフト量Δωanaの誤差を演算する。
ステップS509;誤差積算ステップ
ステップS507で求められた誤差を全試料分割領域Ziで積算する。
ステップS511;記憶ステップ
演算した積算値Sを、演算対象とした推定用電流Ii及び全電流推定用領域Zicに対応つけて記憶する。一の電流分布に対する一の積算値Sを得ることとなる。ここで、図19(b)に示す第1領域設定の場合は、電流推定用領域Zic内で電流分布はないが、図19(c)に示す第2領域設定の場合は、試料分割領域Zi単位での電流分布となる。
ステップS513,S515;積算値演算完了判定ステップ
上記のステップS503〜ステップS511の処理を全推定用電流Iiおよび全電流推定用領域Zicについて繰返し、完了後、以下のステップS517に移行する。
ここで、推定用電流Iiについての繰返し回数は「電流分割数」に対応し、図20(a)等の場合は4回となる。
一方、電流推定用領域Zicについての繰返し回数は「電流推定用領域Zicの数」に対応し、図19(b)に示す第1領域設定の場合は16回となる。図19(c)に示す第2領域設定の場合は、第1領域設定において設定される電流推定用領域Zicを試料分割領域Ziに分割して演算するため、後に詳述するように、9+6+4+3+2回となる。第1領域設定において、電流推定用領域Zicが試料分割領域Ziとなっている領域に関しては、重複して演算しない。
ステップS517;電流判定ステップ
上記のステップS511で、推定用電流Iiの分布毎に記憶されている積算値Sの最も小さい電流Iiを、適合度が高い電流Iisol,nとする。ここで、nは電流推定の段数に対応している(図20参照)。
このステップS517は、先に説明した電流判定処理部303が実行する処理であり、処理中の電流推定処理において、推定用電流Iiの分布毎に記憶されている積算値Sについて、それが最も小さい電流Ii(電流分布)を、適合度が高い真の電流Iisol,nとする。この処理が「適合判定」である。
上記のステップS501(電流情報受付ステップ)における電流情報の受付例としては、以下の例を挙げることができる。この電流情報は、本発明の測定解析装置100の運転開始前に予め使用者により入力され、装置に記憶させておく情報である。
第1領域設定に於ける電流情報の受付例
電流第1推定処理での推定用電流Iiの最大値Iimax,1、及び最小値Iimin,1は、初期設定値Iiintの±25%とする。この初期設定値Iiintも、測定解析装置100の使用者により予め設定される。
電流第1推定処理での推定用電流Iiの分割数NΔI、1は4とする(図20(a)参照)
電流第2推定処理での推定用電流Iiの最大値Iimax,2、及び最小値Iimin,2は、初期設定値Iiintの±12%とする。
この段階での初期設定値Iiintとしては、先の電流第1推定処理で最適と判定された電流(図20、Iisol,1)を使用する。以下、後段の電流推定で使用する初期設定値Iiintは、前段の電流推定で最適と判定された電流Iisol,nである。
電流第2推定処理での推定用電流Iiの分割数NΔI,2は4とする(図20(b)参照)
電流第3推定処理での推定用電流Iiの最大値Iimax,3、及び最小値Iimin,3は、初期設定値Iiintの±6%とする。
電流第3推定処理での推定用電流Iiの分割数NΔI、3は4とする(図20(c)参照)
2.第2領域設定に於ける電流情報の受付例
電流第1推定処理での推定用電流Iiの最大値Iimax,1、及び最小値Iimin,1は、初期設定値Iiintの±15%とする。
この第2領域設定での電流第1推定処理における初期設定値Iiintには、第1領域設定での電流第3推定処理で最適と判定された電流Iisol,3を使用する。即ち、第1領域設定で電流推定用領域Zic毎の代表値となっている電流I(電流分布)を、その電流推定用領域Zicを構成する試料分割領域Zi毎に当てはめて使用する。
電流第1推定処理での推定用電流Iiの分割数NΔI,1は4とする。
電流第2推定処理での推定用電流Iiの最大値Iimax,2、及び最小値Iimin,2は、初期設定値Iiintの±8%とする。
電流第2推定処理での推定用電流Iiの分割数NΔI,2は4とする。
電流第3推定処理での推定用電流Iiの最大値Iimax,3、及び最小値Iimin,3は、初期設定値Iiintの±4%とする。
電流第3推定処理での推定用電流Iiの分割数NΔI,3は4とする。
演算負荷の軽減
これまでも説明してきたように、本発明においては、電流逆解析における演算負荷を格段に軽減することが可能となるが、以下、図18に示した具体例に沿って説明する。
この例の場合、小型RFコイル数Ncが49であり、電流Iの分割数がNp=10であるため、そのまま演算すると、Nt=NpNc=1049となる。
電流推定用領域設定
先にも説明したように、本発明の燃料電池システム1には、第1領域設定部301Aおよび第2領域設定部301Bが設けられている。
図19(b)に示す、縦横に伸びる太実線で分割され、太実線で区切られた一つの区分としての領域が、第1領域設定部301Aにおいて設定される電流推定用領域Zicの例である。この例の場合の電流推定用領域Zicの数は、4×4=16となる。
同図、左上の領域は、9個の試料分割領域Ziからなり、その他、6個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが2カ所、4個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが1カ所、3個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが4ケ所、2個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが4カ所、1個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが4カ所とされる。
ここで、複数個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicにおける電流Iiは、先に示したように、その領域に含まれる試料分割領域Ziの代表値とする。
図9(b)に示すように、不均一な大きさで電流推定用領域分割をしている理由は、実測された周波数シフト量Δωexpの分布が、図19(a)に示すように、右下側の領域で急勾配となっており、左上側の領域で平坦となっているためであり、左上側程、電流推定用領域Zicは大きく採っている。即ち、電流の分布においてその勾配が大きい領域程、電流推定用領域Zicを小さくし、各試料分割領域Ziでの各実周波数シフト量Δωexpが平均値から大きくずれないようにしている。
このような設定が可能な理由は、実験的にある程度、周波数シフト量Δωの分布が明らかになっていること、及び、本発明の測定解析装置100に電流推定領域受付部301Cを備え、電流推定用領域設定情報を外部入力として受け付けて、その情報に従った電流推定用領域Zicの設定が可能とされているためである。
第1領域設定部301Aにより設定された電流推定用領域Zic(総数4×4=16)を対象として、電流推定を実行すると、その演算負荷はN1=NpNc=1016となる。
引き続いて、このようにして設定された電流推定用領域Zicについて、電流推定を実行する。この電流推定における電流推定用領域Zicは、第2領域設定部301Bに対応するような最終的な領域設定部において試料分割領域Ziに一致させている(図19(c)参照)。
領域設定は、第2領域設定部301Bにおいて、試料分割領域Ziと同じ領域を電流推定量領域Zicとされる。このようにすると、9個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが1カ所、6個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが2カ所、4個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが1カ所、3個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが4ケ所、2個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが4カ所、1個の試料分割領域Ziからなる電流推定用領域Zicが4カ所とそれぞれ存在することから、演算数は、N2=1×10、N3=2×10、N4=1×10、N5=4×10、N6=4×10となる。
結果、この場合の演算負荷は
Nt=N1+N2+N3+N4+N5+N6+N7
=1016+1×10+2×10+1×10+4×10+4×10
≒1016
となり、大幅に軽減される。また、第2項以降の演算負荷は小さい。
以上は、電流の分割数を一定(先の例では10)とした場合の演算負荷の低減例である。次に、領域の分割数は試料分割領域Ziの数(49)として、電流の分解能を変化させる例に関して説明する。
電流分解能
図20に、3段階で電流の分解能を高める場合の例を示している。
同図において、最も左に示しているのが、電流第1推定で採用する電流(推定用電流)Iiであり、この段階での電流推定では、電流Iiの最大値Iimax,1と最小値Iimin,1との間を分割数NΔIi,1の4値に分割している。電流第2推定、電流第3推定でも同様に分割数NΔIi,2、NΔIi,3で分割しているが、分割された電流Iiの増分ΔIi、ΔIi、ΔIiは順次小さくされている。すなわち、電流の分解能の点からは分解能が高まっている。
電流第1推定での電流Iiの最大値Iimax,1と最小値Iimin,1および分割数NΔIi,1またはΔIiは、電流推定範囲入力受付部311で受け付ける。
電流第2推定、電流第3推定においては、その段階でも電流の分解能(ΔIi,ΔIiに相当)または分割数NΔIi,2,NΔIi,3を電流分解能受付部322、332で受付ける。
電流第3推定の分解能(ΔIiに相当)は、測定解析装置100に求められる所定の電流分解能に合わせる。同時に、その最大・最小電流範囲内に前段の電流推定で求めた適合度の高い電流(Iisol,1、Iisol,2)を含むものとする。
この場合、電流第1推定処理で、演算数N1は(電流Iiの仮設定数4)の(試料分割領域の数49)べき乗となる。即ち、N1=449 となる。
電流第2推定処理、電流第3推定処理でも、電流の分解能は高く設定されるが、演算負荷はN2=449 、N3=449と変わることはない。
結果、この場合の演算負荷も
Nt=N1+N2+N3
=449+449+449
となり、1049に対して大幅に軽減される。
そして、領域分割と電流推定の軽減の両方を行った場合、
第1領域設定に伴って、その各電流推定段階で、電流推定用領域の数が16、電流の仮設定数が、それぞれの段階で4であるため、
N1=416+416+416
となり、
第2領域設定に伴って、その各電流推定段階で、電流推定用領域Zic(=Zi)の数が9の領域が1カ所、電流推定用領域Zic(=Zi)の数が6の領域が2カ所、電流推定用領域Zic(=Zi)の数が4の領域が1カ所、電流推定用領域Zic(=Zi)の数が3の領域が4カ所であるため、電流推定用領域Zic(=Zi)の数が2の領域が4カ所、電流推定用領域Zic(=Zi)の数が1の領域が4カ所とそれぞれ存在することから、
N2(9)=(4+4+4)×1
N2(6)=(4+4+4)×2
N2(4)=(4+4+4)×1
N2(3)=(4+4+4)×4
N2(2)=(4+4+4)×4
となる。
ここで、N2に付した括弧付き添え字は、電流推定用領域Zicを構成する試料分割領域Ziの数に対応させている。
結果、演算負荷
Nt=N1+N2(9)+N2(6)+N2(4)+N2(3)+N2(2)
≒N1
となり、先の1049と比較すると、大幅な低減となる。
また、第2項以降の演算負荷は小さいため、後に別実施形態で説明するように、第2項以降の電流分解能を上げても、大きな演算負荷の増大にはつながらない。
本発明のように、電流推定用領域Zicを租な状態から密な状態へ低減しながら、順次、設定される当該電流推定用領域Zic内で、真の電流Iを推定探索し、最終的に実際の分割状態に相当する試料分割領域Ziに近づける方法を取ることで、演算負荷が低減された実用的なシステム1を得ることができた。
3.測定解析結果:周波数シフト量と電流の空間分布
図21〜図23に、以上説明した測定解析装置100により得られた実周波数シフト量Δωexp(a)と電流I(b)との空間分布を示した。各図において電流Iは、電流密度(電流を面積で除した値 i[A/cm])の形態で示している。
これらの3図で、測定解析対象とした発電電流量が、100A,50A,25Aと異なっている。発電開始からの発電時間はともに、148秒後である。
これらの図において、右下が、本発明の課題となる導線240の接続部位である。重力方向は下向きである。
所定の電流分解能に対応する電流分割の電流の増分ΔIは0.03Aである。
試料分割領域Ziの位置は、図18に示す符号(縦:A〜G、横:1〜7)に従ったものであり、図示される領域は、図18に示した試料分割領域Ziの領域中心である格子の中央で分割された形態で示している。
これらの図から導線部近傍では発電電流が非常に大きく、反対に中央部では発電電流が小さいことが分かる。
この解析では、実周波数シフト量Δωexpに適合する、電流Iの仮設定から求められた周波数シフト量Δωanaを探索するが、従来、実質的に不可能と考えられてきた電流逆解析を、実用的な時間単位で可能とできた。
さらに、これらの結果からも判明するように、本発明の測定解析装置100を使用することで、任意の運転条件における燃料電池5の発電状態を的確に把握できるため、燃料電池の開発、高効率で安定的に発電が維持できる燃料電池の提供という点で大きな進歩である。
〔別実施形態〕
1.上記の実施形態では、電流推定用領域設定を行う場合に、第1領域設定部301Aと第2領域設定部301Bとを設けて、2段階で電流推定用領域の設定を行ったが、本発明では、電流推定側で演算負荷の低減を図ることが可能であるため、領域設定に関しては単段としてもかまわない。この場合、電流推定用領域Zicは試料分割領域Ziと一致することとなる。
逆に領域設定を2段以上の多段としてもかまわない。ただし、段が進むに従って、試料領域Zall全体における領域分割を細かくし、最終段の領域設定は試料分割領域Ziと一致するようにすることで、小型RFコイルに対応する数の空間分解能での電流分布を得ることができる。
さらに、領域設定で採用する分割数も、試料分割領域Ziの数より小さければ任意である。
また、電流推定用領域の分割形態は、空間における電流分布において、その変化の大きい部位と、小さい部位とで、異ならせることが好ましい。
2.上記の実施形態では、電流推定を行う場合に、電流第1推定処理部310、電流第2推定処理部320、電流第3推定処理部330を設けて、3段階で電流推定を行ったが、本発明の目的が、演算負荷の低減を目的とするため、最終的に必要となる電流の分解能になるように多段で電流推定を行えばよい。無論、この電流の分解能は、必要に応じて任意の値とでき、本発明における「所定の電流分解能」となる。すなわち、2段以上で電流推定をおこなえば、単段で必要とされる分解能での処理を行うより、演算負荷は低減される。
一方、上記の実施形態では、領域設定との関係において、第1領域設定により設定される電流推定用領域での電流推定の段数(3)と、第2領域設定により設定される電流推定用領域での電流推定の段数(3)とを同じとしたが、前段側に位置する領域設定段における電流推定の段数を多くし、後段側に位置する領域設定段における電流推定を、前段側より少なくすることもできる。
例えば、図16に示すメインフローにおいて、第1領域設定における電流推定の段数を、4段とし(ステップS307とS309との間に電流第4推定処理を追加する)、第2領域設定における電流推定の段数を3段に維持しておく。この場合、段落〔0190〕〜〔0192〕で示した、第1領域設定下における電流推定に関して、電流第4推定処理での推定用電流Iiの最大値Iimax,4、及び最小値Iimin,4,は、例えば、初期設定値Iiintの±3%とする。この電流第4推定処理での推定用電流Iiの分割数NΔI、4は4でよい。
このように電流推定の段数を領域設定段で変える理由は、電流推定用領域Zicとして粗い領域を対象とする前段側(例えば、上記の第1領域設定)では、電流の分解能(電流の増分ΔI)が自然と低くなりがち(電流Iiの増分ΔIiが大きい)であるが、電流推定の段数を多くすることで、良好に目標とする所定の電流分解能まで到達することが可能となるためである。
また、本発明の領域設定処理は、基本的に、多くの試料分割領域Ziが含まれる電流推定用領域Zic(粗い領域)から、少ない試料分割領域Ziが含まれる電流推定用領域Zic(細かな領域)に、段を追うごとに進むこととなるが、前者の多くの試料分割領域Ziから構成される電流推定用領域Zicに関して、その領域分割を領域分割の最小単位である試料分割領域Zi単位まで進めて電流推定を完了する演算時間と、後者の少ない試料分割領域Ziから構成される電流推定用領域Zicに関して、その領域分割を領域分割の最小単位である試料分割領域Zi単位まで進めて電流推定を完了する演算時間とは、大きく異なる。例えば、前者が4×4のマトリックスであり、後者が3×3のマトリックスである場合でさえ、その演算時間は、前者が後者の数十倍のオーダなる。
結果、電流推定用領域Zicが試料分割領域Ziに近づく、領域設定の後段側程、電流Iの分解能を高く(電流分割の分割数を大きく)しても、演算負荷の増大を招くことはない。
即ち、領域設定を多段で行う場合に、多段で行う後段側程、電流の分解能を高くする(分割数を上げる)ことができる。先に例示した段落〔0190〕〜〔0195〕に記載の第1領域設定、第2領域設定を経る処理では、前者における電流分割数を4、後者における電流分割数も4としているが、前者側を4に維持し、後者側を7とすることもできる。この分割数の上限は、目標とする電流の分割数(これまでの説明では10)となる。
この場合、段落〔0208〕に記載の第2領域設定におけるN2は以下のようになる。
N2(9)=(7+7+7)×1
N2(6)=(7+7+7)×2
N2(4)=(7+7+7)×1
N2(3)=(7+7+7)×4
N2(2)=(7+7+7)×4
即ち、所定の電流分解能より低い分解能の範囲で、領域分割の段数が進むに従って、その分解能を上げることとしてもよい。このようにしても、本発明において本来低減されている演算負荷を低いままで維持して、有用な(高い)電流の分解能での計測解析結果を得ることができる。
3.さらに、先に記載の実施形態では、各領域設定段内において多段とする電流推定に関して、各段での電流の分割数は同じ(第1領域設定段では4、第2領域設定段では4又は7)としているが、領域設定の各段内での電流推定において、その分割数を異ならせることとしてもよい。
4.電流推定の各段において、前段で確からしいと判定された電流を中心推定電流とすることもできる。例えば、後段における電流の分割数を奇数とすると、前段で適合度が高いと判定された電流を中心推定電流とすることも可能である。
5.これまで説明してきた実施形態においては、粗い領域分割である第1領域設定を実行し、第2領域設定では、第1領域設定で設定された電流推定用領域Zic内を試料分割領域Ziまで分割する例について示した。この実施形態は、第2領域設定を経て得られた結果(電流分布)をそのまま出力するものとしている。即ち、第2領域設定で得られた結果を、さらに、精度の高い電流推定に利用する構造は採っていない(広い電流推定用領域側へのフィードバックを行ってない)。
しかしながら、第1領域設定、第2領域設定をセットとして、繰り返してもよい。この場合、初回の第1領域設定では、この段で設定される推定用電流Iiは一の代表値とする。そして、第2領域設定まで進み、電流の分布を求める。引き続いて、第1領域設定に戻るのであるが、この場合に使用する推定用電流Iiは、初回の第2領域設定で細分化された領域(先の例では試料分割領域Zi)毎に得られた電流で、その空間分布としての電流値の大小の比例関係を維持するもの(空間分布において比例関係を保ったもの)を使用する。
このようにすることで、2回目の第1領域設定に基づいた電流推定と、2回目の第2領域設定に基づいた電流推定を、追加するだけで、さらに精度の高い電流分布を得ることができる。
6.これまでの説明では、電流に関して、特に述べなかったが、電流は試料分割領域Ziあるいは電流推定用領域Zicに対して定義される電流Iであるため、当該領域を流れる電流の量に対応する電流値としても、その電流値を領域の面積で割った電流密度としても取り扱うことができる。
7.これまで説明してきた実施形態は、電流推定に核磁気共鳴法により求まる周波数シフト量を使用する例を示したが、二次元に広がる試料面の近傍で観測される磁場を対象として、その試料を流れる電流を分布として求める場合、非特許文献2に開示のホール素子により磁場強度を磁場関連情報として測定する場合にも、電流分布を求める解析を実行する逆解析を行う場合には適応可能である。
8.これまで説明してきた実施形態では、磁場関連情報が、周波数シフト量、磁場強度である場合に関しては、本発明は電流Iの空間分布を問題とし、電流Iは周波数シフト量、磁場強度の空間勾配にも一定の関係を有するため、磁場関連情報として、それら情報(周波数シフト量、磁場強度)の空間勾配も使用することも好ましい。
1 燃料電池システム
5 燃料電池
51 膜電極接合体
113 磁石
114 小型RFコイル
200 実周波数シフト量演算部(実磁場関連情報演算部)
300 電流逆解析部
301 電流推定用領域設定部
301A 第1領域設定部
301B 第2領域設定部
302 推定周波数シフト量演算部(推定磁場関連情報演算部)
303 電流判定処理部
310 電流第1推定処理部
311 電流推定範囲入力受付部
320 電流第2推定処理部
330 電流第3推定処理部

Claims (17)

  1. 二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析装置であって、
    試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定部と、
    前記電流推定用領域設定部において設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算部と、
    前記推定磁場関連情報演算部により演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と判定する電流判定処理部とを備え、
    前記推定磁場関連情報演算部における演算において、前記所定の電流分解能より低い分解能の第1分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理部による適合判定を実行して電流推定を行う電流第1推定処理部と、
    前記電流第1推定処理部で、適合度が高いと判定された前記電流を電流第1推定量として、当該電流第1推定量を含み、前記第1分解能より分解能が高く、前記所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第2分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理部による適合判定を実行して電流推定を行う電流第2推定処理部とを含む、
    測定解析装置。
  2. 前記電流推定において、処理対象とする電流の範囲の入力を受付ける電流推定範囲入力受付部を備える請求項1記載の測定解析装置。
  3. 後段の前記電流推定において、
    前段の前記電流推定で最も適合度が高いと判断された電流を、処理対象とする電流の範囲内に含み、前段の電流分解能より高い分解能に基づいた電流推定を実行する請求項1または2記載の測定解析装置。
  4. 前記第2分解能が前記所定の電流分解能より低い分解能とされ、
    前記電流第2推定処理部で適合度が高いと判定された前記電流を電流第2推定量として、当該電流第2推定量を含み、前記第2分解能より分解能が高く、前記所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第3分解能で、前記電流推定用領域について前記磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理部による適合判定を実行して電流推定を行う電流第3推定処理部とを含む、
    請求項1〜3の何れか一項記載の測定解析装置。
  5. 前記電流推定用領域設定部による領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定部と、
    前記第1領域設定部で各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定部とを含む、請求項1〜4の何れか一項記載の測定解析装置。
  6. 前記電流推定用領域設定部による領域設定において、外部入力される電流推定用領域設定情報に基づいて、当該電流推定用領域設定を実行する請求項1〜5の何れか一項記載の測定解析装置。
  7. 二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析装置であって、
    試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定部と、
    前記電流推定用領域設定部において設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算部と、
    前記推定磁場関連情報演算部により演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と判定する電流判定処理部とを備え、
    前記電流推定用領域設定部による領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定部と、
    前記第1領域設定部で各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定部とを含む、測定解析装置。
  8. 前記試料が固体高分子形燃料電池である請求項1〜7の何れか一項記載の測定解析装置。
  9. 前記試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
    前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場の印加により前記試料で発生する核磁気共鳴信号を取得する小型RFコイルを、前記磁気センサとして複数備え、
    前記小型RFコイルで取得される前記核磁気共鳴信号の周波数に関し、前記固体高分子形燃料電池の非発電時と発電時との間における差分である周波数シフト量を実周波数シフト量として求める実周波数シフト量演算部とを備え、
    前記磁場関連情報が、前記周波数シフト量又は周波数シフト量の空間勾配である、
    請求項8記載の測定解析装置。
  10. 前記核磁気共鳴信号の実部および虚部を検波する検波部をさらに備え、
    前記検波部で検波された前記実部および前記虚部を用いて、前記固体高分子形燃料電池の非発電時と発電時との間における、前記核磁気共鳴信号の周波数の差分を演算する、
    請求項9記載の測定解析装置。
  11. 前記小型RFコイルが、パルス状の前記励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するFID信号を取得し、
    前記実周波数シフト量演算部が、前記FID信号の実部および虚部を取得し、前記固体高分子形燃料電池の非発電時と発電時との間における、前記核磁気共鳴信号の周波数の差分を演算する、請求項9記載の測定解析装置。
  12. 前記小型RFコイルが、
    (a)90°パルス、および、
    (b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
    を含むパルスシーケンスで、前記励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するエコー信号を取得し、
    前記実周波数シフト量演算部が、前記エコー信号の実部および虚部を取得し、前記固体高分子形燃料電池の非発電時と発電時との間における、前記核磁気共鳴信号の周波数の差分を演算する、請求項9記載の測定解析装置。
  13. 前記磁気センサが検出位置の磁場強度を検出するホール素子であり、
    前記磁場関連情報が、前記固体高分子形燃料電池の発電時における、前記ホール素子により測定される磁場強度又は磁場強度の空間勾配である、請求項8記載の測定解析装置。
  14. 前記試料としての固体高分子形燃料電池と、請求項1〜13の何れか一項記載の測定解析装置とから構成され、
    前記測定解析装置から出力される前記電流に基づいて前記固体高分子形燃料電池の運転状態を制御する電池制御部を備えた燃料電池システム。
  15. 二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析方法であって、
    試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定ステップと、
    前記電流推定用領域設定ステップにおいて設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算ステップと、
    前記推定磁場関連情報演算ステップにより演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と判定する電流判定処理ステップとを備え、
    前記推定磁場関連情報演算ステップにおける演算において、前記所定の電流分解能より低い分解能の第1分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理ステップによる適合判定を実行して電流推定する電流第1推定処理ステップと、
    前記電流第1推定処理ステップで、適合度が高いと判定された前記電流を電流第1推定量として、当該電流第1推定量を含み、前記第1分解能より分解能が高く、前記所定の電流分解能に等しいか当該電流分解能より低い第2分解能で、前記電流推定用領域について前記推定磁場関連情報を求めるとともに、前記電流判定処理ステップによる適合判定を実行して電流推定する電流第2推定処理ステップを含む、測定解析方法。
  16. 前記電流推定用領域設定ステップによる領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定ステップと、
    前記第1領域設定ステップで各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定ステップとを含む、請求項15記載の測定解析方法。
  17. 二次元に広がった試料面を有する試料に対して、磁気センサにより、当該試料面における磁場関連情報を、当該磁場関連情報の取得単位である試料分割領域単位で取得して、実磁場関連情報の分布を得るとともに、前記試料において、前記試料面に沿った電流の分布を、所定の電流分解能で前記実磁場関連情報に基づいて逆解析により解析する測定解析方法であって、
    試料領域を、前記試料分割領域の集合体又は前記試料分割領域自体として構成される、複数の電流推定用領域に分割する電流推定用領域設定ステップと、
    前記電流推定用領域設定ステップにおいて設定される前記電流推定用領域について、当該電流推定用領域に流れる推定用電流を仮設定するとともに、当該推定用電流に基づいた前記試料分割領域の各々における磁場関連情報である推定磁場関連情報を演算する推定磁場関連情報演算ステップと、
    前記推定磁場関連情報演算ステップにより演算された前記推定磁場関連情報の分布に関し、前記実磁場関連情報の分布と比較し、適合度が高い推定磁場関連情報の分布となる電流分布を、前記試料における真の電流と判定する電流判定処理ステップとを備え、
    前記電流推定用領域設定ステップによる領域設定において、前記試料分割領域の数より小さい第1領域分割数となる前記電流推定用領域を設定する第1領域設定ステップと、
    前記第1領域設定ステップで各々設定した前記電流推定用領域を、前記試料分割領域を最小単位とし、前記試料分割領域の数より小さい分割数で分割した領域を、新たな電流推定用領域として設定する第2領域設定ステップとを含む、測定解析方法。

JP2017177216A 2017-09-15 2017-09-15 測定解析装置、燃料電池システム及び測定解析方法 Active JP6917251B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017177216A JP6917251B2 (ja) 2017-09-15 2017-09-15 測定解析装置、燃料電池システム及び測定解析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017177216A JP6917251B2 (ja) 2017-09-15 2017-09-15 測定解析装置、燃料電池システム及び測定解析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019052941A JP2019052941A (ja) 2019-04-04
JP6917251B2 true JP6917251B2 (ja) 2021-08-11

Family

ID=66014654

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017177216A Active JP6917251B2 (ja) 2017-09-15 2017-09-15 測定解析装置、燃料電池システム及び測定解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6917251B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020187951A (ja) * 2019-05-16 2020-11-19 トヨタ自動車株式会社 電池の検査方法、電池の検査装置および電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019052941A (ja) 2019-04-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5826251B2 (ja) 非選択的調整rfパルスによって磁気共鳴画像法におけるb1不均一性を補償するための方法および装置
Siaw et al. A versatile and modular quasi optics-based 200 GHz dual dynamic nuclear polarization and electron paramagnetic resonance instrument
US9551688B2 (en) Property measuring device for object to be measured and property measuring method for object to be measured
US9720066B2 (en) Magnetic resonance imaging apparatus and control method thereof
US8319495B1 (en) Multi-port RF systems and methods for MRI
CN108303661B (zh) 磁共振发射信号的校正
Borowiak et al. A battery-driven, low-field NMR unit for thermally and hyperpolarized samples
EP0177855B1 (en) Radio frequency field coil for nmr
US9632151B2 (en) Magnetic resonance measuring equipment
Yu et al. A low-cost home-built NMR using Halbach magnet
Liu et al. Pulsed-field nuclear magnetic resonance: Status and prospects
JP5170686B2 (ja) 核磁気共鳴法を用いた測定装置および測定方法
US20140218025A1 (en) Transverse volume coils and related magnetic resonance systems and methods
JP6917251B2 (ja) 測定解析装置、燃料電池システム及び測定解析方法
Lin et al. A review of Air-Core coil sensors in surface geophysical exploration
Takeda Microcoils and microsamples in solid-state NMR
Aguilera et al. The parallel-plate resonator: an RF probe for MR and MRI studies over a wide frequency range
Geschewski et al. Optimum coupling and multimode excitation of traveling‐waves in a whole‐body 9.4 T scanner
US20180052123A1 (en) Systems and methods for super-resolution surface-layer microscopy using magnetic resonance
JP5212972B2 (ja) 計測装置および計測方法
JP5337569B2 (ja) 燃料電池システム
Liu et al. A comprehensive study on the weak magnetic sensor character of different geometries for proton precession magnetometer
Parzy et al. Enzymatic activity monitoring through dynamic nuclear polarization in Earth magnetic field
US5068611A (en) Measuring procedure for the elimination of faults from an NMR signal by comparing RF field components spinning in opposite directions
JP2016145723A (ja) セルモデル、計測システム及び同時計測方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170919

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200710

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210531

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210713

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210719

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6917251

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150