JP5337569B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
プロトン性溶媒を含んだ固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極とを有する燃料電池を含む燃料電池システムにおいて、
前記固体高分子電解質膜に対して、静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記固体高分子電解質膜よりも小さい小型RFコイルと、
前記燃料電池を停止した状態で、励起用振動磁場を印加した際に、前記小型RFコイルにて検出される核磁気共鳴信号の周波数である、基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化が記憶された第一記憶部と、
以下の(A)と(B)との周波数の差分を算出し、あるいは、以下の(A)と(B)との周波数の差分を算出しこの周波数の差分に基づいた電流量を算出する第一算出部とを備える燃料電池システムが提供される。
(A)前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した際に前記小型RFコイルにて取得した核磁気共鳴信号の周波数
(B)前記第一記憶部に記憶された基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化から取得され、前記燃料電池の運転中に前記励起用振動磁場を印加した時点での基準核磁気共鳴信号の周波数
静磁場印加部から静磁場を印加した状態で、励起用振動磁場を印加するが、このとき静磁場印加部の温度が時間とともに、変動することで、静磁場の強度が時間とともに、変動することがある。静磁場の強度が変動することに伴い、小型RFコイルで取得する核磁気共鳴信号の周波数も変動してしまう。
そこで、第一記憶部に、燃料電池を停止した状態で、励起用振動磁場を印加した際に、小型RFコイルにて検出される核磁気共鳴信号の周波数である、基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を記憶しておく。
そして、第一算出部では、前述した(A)と(B)との差分を算出する。
このようにすることで、運転中の燃料電池において、固体高分子電解質膜中の局所的な発電状態をより正確に計測することができる。
なお、第一記憶部に記憶される基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化は、以下のようにして取得することができる。
(i)燃料電池を停止した状態において、静磁場印加部から静磁場を印加するとともに、固体高分子電解質膜に対し、励起用振動磁場を印加して、固体高分子電解質膜の特定箇所で発生した核磁気共鳴信号を取得する。そして、取得した核磁気共鳴信号の周波数を基準核磁気共鳴信号の周波数とする。
(ii)(i)の操作を複数回行い、基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を取得する。
第一算出部では、このようにして取得された基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を第一記憶部から読み出し、読み出した基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化と時間との関係を補間(外挿、あるいは内挿)して、固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した時点における基準核磁気共鳴信号の周波数を算出することが好ましい。
また、本明細書において、「電流量」とは、電流の値であってもよく、また、電流密度であってもよい。
前記固体高分子電解質膜に対して、静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加するとともに、前記固体高分子電解質膜の特定箇所で生じた核磁気共鳴信号を取得する、前記固体高分子電解質膜よりも小さい小型RFコイルと、
前記燃料電池を停止した状態で、励起用振動磁場を印加した際に、前記小型RFコイルにて検出される核磁気共鳴信号の周波数である、基準核磁気共鳴信号の周波数と、
前記励起用振動磁場の周波数との差である基準周波数差の経時変化が記憶された第一記憶部と、
以下の(C)と(D)との差を算出し、
前記(C)と(D)の差から
前記基準周波数差の経時変化に基づいて取得される基準周波数差であって、燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した時点での基準周波数差を差しひいた周波数の差分を算出し、あるいは、前記周波数の差分に基づいた電流量を算出する第一算出部とを備える燃料電池システム。
(C)前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した際の励起用振動磁場の周波数
(D)前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した際に、前記小型RFコイルで取得した核磁気共鳴信号の周波数
ここで、第一記憶部に記憶される基準周波数差の経時変化は、以下のようにして取得することができる。
(i)燃料電池を停止した状態において、前記静磁場印加部から静磁場を印加するとともに、前記固体高分子電解質膜に対し、励起用振動磁場を印加して、前記固体高分子電解質膜の特定箇所で発生した核磁気共鳴信号(基準核磁気共鳴信号)を複数回取得する。
(ii)取得した各前記基準核磁気共鳴信号の周波数と、励起用振動磁場の周波数との周波数差を算出し、基準周波数差の経時変化を取得する。
第一算出部では、このようにして取得された基準周波数差の経時変化を第一記憶部から読み出し、読み出した基準周波数差と時間との関係を補間(外挿、あるいは内挿)して、前述した(C)と(D)との差分を補正することが好ましい。
このようにすることで、燃料電池の発電状況をより簡単に把握することができる。
第二記憶部は、固体高分子電解質膜の測定箇所である複数箇所それぞれに対応づけられた複数の前記所定値が記憶するものであるため、固体高分子電解質膜の電流量の分布を考慮して、前記所定値を記憶させることができる。
そして、判断部では、算出した前記複数箇所の前記周波数の差分あるいは電流量それぞれが、第二記憶部に記憶された、前記複数箇所に対応づけられた各所定値以上であるかどうかを判断することで、より正確に、燃料電池が所望の運転を行っているかどうか判別することができる。
固体高分子電解質膜は乾燥しすぎるとプロトン伝導性が低下して、オーム損失が増加し、発電電流が低下する傾向にある。
一方で、固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒量が多くなりすぎた場合には、プロトン伝導性は向上するが、酸化剤極表面にプロトン性溶媒の膜ができ、酸化剤の供給が阻害されて、発電電流が低下することがある。
たとえば、プロトン性溶媒量が所定の数値範囲外であると判断され、かつ、第一算出部で算出された電流量あるいは周波数の差分が所定値未満であると判断された場合には、発電量低下の原因として、固体高分子電解質膜のプロトン性溶媒量が不足であるか、あるいは、固体高分子電解質膜および電極に液膜が形成されてガス供給が阻害されていることが考えられる。
一方で、プロトン性溶媒量が所定の数値範囲内であり、かつ、第一算出部で算出された電流量あるいは周波数の差分が所定値未満であると判断された場合には、発電量低下の原因として、燃料電池に供給されているガス濃度の低下等が考えられる。
このように、プロトン性溶媒量を計測し、所定の数値範囲内であるかどうかを判断することで、燃料電池の運転状況をより正確に把握することができる。
この角度を任意とすることで、T1緩和時定数に関わる磁化ベクトルの回復時間を短くすることもでき、より短時間の繰り返し時間で励起パルスを照射できて、電流分布の短時間計測が可能となる。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス。
NMR法を用いた計測方法を行う場合、特定の周波数の核磁気共鳴信号を検出するために共振回路を使用することがある。この場合、共振回路の容量素子に高い電圧がかかるため、容量素子自体を小さくすることが難しい。同軸ケーブルを使用しない場合には、小型RFコイルと、容量素子とが近接して配置されることとなる。そのため、固体高分子電解質膜に対し、小型RFコイルを近づけて計測を行う場合、容量素子がじゃまになることある。
また、小型RFコイルと、容量素子とを一定距離離間することも考えられるが、この場合、単にコイルの線を延長させて、小型RFコイルと、容量素子とを接続したのでは、ノイズを拾う原因となる。
そこで、共振回路を、小型RFコイルと、容量素子とを同軸ケーブルで接続する構成とする。このようにすることで、ノイズの強度を大きくせずに、小型RFコイルと、容量素子との間の距離を長く確保することができる。これにより、測定精度を低下させずに、計測操作しやすくすることができる。
はじめに、後述する実施形態における電流の測定方法の測定原理について、例を挙げて説明する。なお、電流の測定モードを、以下、第一測定モードとも呼ぶ。
図1は、電流の測定手順の概要を示すフローチャートである。図1においては、以下のステップを順次行い、核磁気共鳴(NMR)法を用いて試料(固体高分子電解質膜)の特定箇所の電流を局所的に測定する。NMR法においては、磁場中に置かれた原子核のスピン共鳴現象により核磁化の運動をNMR信号として検出することができる。小型表面コイル(小型RFコイル)を用いてNMR信号を計測すれば、コイル周辺部の局所NMR計測が可能となる。
ステップS301:試料を磁石が配置された空間に置き、試料に静磁場を印加する、
ステップS303:静磁場に置かれた試料の特定箇所に対し、試料より小さい小型RFコイルを用いて、励起用振動磁場を印加するとともに、特定箇所で発生した核磁気共鳴(NMR)信号を取得する、
ステップS305:ステップS303で取得した核磁気共鳴信号の周波数と励起用振動磁場の周波数とに基づく周波数の差分を算出する、
ステップS307:ステップS305で得られた差分から、試料の特定箇所の電流を求め、所定値以上であるかどうか判別する
ステップS309:その後、結果を出力する。
以下、ステップS303〜307をそれぞれ詳細に説明する。
本ステップでは、励起用振動磁場として、試料内の計測対象核に照射する高周波パルスを印加する。また、励起用振動磁場による核磁気共鳴現象によって試料内の計測対象核から放出されるNMR信号を取得する。
このようなパルスシーケンスの具体例については、図4を参照して後述する。
本ステップでは、ステップS303で取得したNMR信号の周波数と励起用振動磁場の周波数との差分(周波数シフト)を求める。
本ステップでは、ステップS305で取得した周波数の差分Δωから、電流を算出する。以下、電流の算出原理を説明する。
(i)試料の特定箇所に流れる電流jと周波数の差分Δωとの関係を実験的な方法等で予め取得しておく
あるいは
(ii)燃料電池をシミュレーションし、電流jと周波数の差分Δωとの関係を取得しておくこと等により、ステップS305で得られた周波数の差分Δωから試料に流れた電流jを求めることができる。
実際の測定においては、試料や装置特性に起因する磁場の不均一が生じ、周波数の差分が正確に得られないことがある。そこで、以下の実施形態においては、スピンエコー法を用い、励起用高周波パルスを、たとえば以下の(a)および(b)を含む複数のパルスからなるパルスシーケンスとする。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
なお、上記(b)の時間2τ経過後にさらに180°パルスを印加し、これに対応するエコー信号を用いて電流計測を行ってもよい。ただし、複数回目のエコー信号を用いて電流計測を行う際には、できるだけ強いエコー信号を観測できるように、Y軸方向の180度励起パルスを複数回照射することが有効である。その理由は、後述する図2(a)〜図2(d)の磁化ベクトルの動きに示されている。
なお、(a)と、(b)との間に、一定時間勾配磁場パルスを印加し、さらに、(b)の後に、一定時間勾配磁場パルスを印加してPGSE(Pulsed-Gradient Spin-Echo)法により、NMR信号を取得し、電流の測定を行ってもよい。
つづいて、NMR法を用いた試料中のプロトン性溶媒量およびプロトン性溶媒量の移動のしやすさ(易動性)の分布の測定原理について、プロトン性溶媒が水である場合を例に挙げて説明する。これらは、第一実施形態および第二実施形態において後述するように、電流の測定装置を用いて測定することができる。なお、以下の説明において、前述した電流測定と共通のステップについては、詳細な説明を適宜省略する。
(B)水分量の測定
以下の実施形態では、後述するCPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)法により、T2(横)緩和時定数を算出し、その後、「T2と水分量」の換算表を用いて試料の局所的な水分量を算出し、水分量の分布を把握する。
図3に示した水分量測定においても、上述した電流測定と同様に、まず、試料を磁石が配置された空間に置き、試料に静磁場を印加する(S102)。この状態で、試料に対して小型RFコイルを介して励起用振動磁場(高周波パルス)を印加し、これに対応するNMR信号(エコー信号)を取得する(S104)。
(i)ステップS104(励起用高周波パルスの印加およびNMR信号の取得)
ステップ104における励起用高周波パルスは、複数のパルスからなるパルスシーケンスとし、これに対応するエコー信号群を取得するようにすることが好ましい。こうすることにより、T2緩和時定数を正確に求めることができる。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス、および
(c)(b)のパルスの時間2τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス(nは自然数である。)
上記(a)および(b)は、(A)電流の測定と共通である。
T2緩和時定数は、図4を参照して前述したスピンエコー法を利用することにより的確に測定することができる。スピンエコーを使用した際のエコー信号の強度SSEは、TR>>TEの場合には、以下の式(A)で表される。
図3に戻り、ステップS108では、T2緩和時定数から水分量を算出する。試料中の水分量とT2緩和時定数とは、正の相関を持ち、水分量の増加につれてT2緩和時定数が増大する。この相関関係は、試料の種類や形態等により異なるので、あらかじめ、水分濃度がわかっている測定対象試料と同種の試料について検量線を作成しておくことが望ましい。すなわち、水分量が既知の複数の標準試料に対して水分量とT2緩和時定数との関係を測定し、この関係を表す検量線をあらかじめ求めておくことが望ましい。このようにして作成した検量線を参照することで、T2緩和時定数測定値から試料中の水分量を算出することができる。
(C)易動性の算出
以下の実施形態では、勾配磁場を印加してPGSE(Pulsed-Gradient Spin-Echo)法による水分子の自己拡散係数を計測することにより、試料の局所的な水分子の易動性を算出し、水分子の易動性の分布を把握する。
ln(S/S0)=−γ2DzΔ2dGz2 (II)
はじめに、試料を磁石などによって作られた静磁場中に置き、試料に静磁場を印加する。この状態で、小型RFコイルを介して、試料に対して所定のパルスシーケンスに従って励起用振動磁場を印加し、小型RFコイルを介してこれに対応するNMR信号を取得する(S202)。
このような操作(ステップS202〜ステップS208)を、各小型RFコイルを介して行なうことで、自己拡散係数の分布を把握することができる。
(i)ステップS202およびステップS204(励起用振動磁場の印加、勾配磁場の印加およびNMR信号の取得)
ステップS202およびステップS204では、試料に対し励起用振動磁場および勾配磁場を所定のパルスシーケンスにしたがって印加する。励起用振動磁場は、複数のパルスからなるパルスシーケンスであり、勾配磁場は、励起用振動磁場に対応する一対のパルスシーケンスである。
(a)励起用振動磁場の90°パルス、
(b)(a)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス、
(c)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される励起用振動磁場の180°パルス、および、
(d)(c)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス。
ただし、ステップS202で勾配磁場をゼロとする場合は、上記(b)のシーケンスを行わない。
ステップS206では、ステップS202およびステップS204で得られたNMR信号のピーク強度から、試料の特定箇所における水の自己拡散係数Dを求める。プロトンの自己拡散係数Dは、PGSE法で取得されたNMR信号のピーク強度Sを用いて、前述した式(II)で表される。
図7には、本実施形態の燃料電池システム1を示す。
この燃料電池システム1は、燃料電池5と、この燃料電池5の運転状態を計測する測定装置100とを備える。
(燃料電池の構成)
燃料電池5は、図8に示すように、固体高分子電解質膜511を有する膜電極接合体51と、一対の拡散層52、53と、セパレータ54,55とを有する。
膜電極接合体51は、固体高分子電解質膜511と、この固体高分子電解質膜511の両側に設けられた触媒層512、513とを有する。
一対の触媒層512、513のうち、一方の触媒層512は、固体高分子電解質膜511の一方の面に接触するように設けられ、他方の触媒層513は、固体高分子電解質膜511の他方の面に接触するように設けられる。触媒層512、513は、たとえば、カーボン粒子の表面に白金触媒を担持させたものを固体高分子電解質膜511の表面に積層することで形成される。
一方の触媒層512は、酸化剤極(酸素極、カソード)として機能する。他方の触媒層513は、燃料極(水素極、アノード)として機能する。燃料電池5の運転中は、電流は、電気回路(電子負荷装置)57を通って水素極(触媒層513)から酸素極(触媒層512)に移動する。
なお、触媒層512,513には、燃料電池5で発電した電流を取り出すための集電用の電極(集電体)56がそれぞれ取り付けられている。
図7には、本実施形態の燃料電池システム1の測定装置100の概略構成が示されている。なお、測定装置100の各構成要素は、CPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム等を中心に、ハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
固体高分子電解質膜511に対して静磁場を印加する静磁場印加部(磁石113)、
固体高分子電解質膜511に対して励起用振動磁場を印加するとともに、固体高分子電解質膜511の特定箇所で発生したNMR信号を取得する、固体高分子電解質膜511より小さい小型RFコイル114、
小型RFコイル114で取得されたNMR信号の周波数と励起用振動磁場の周波数とに基づく周波数の差分(以下周波数シフト量という場合もある。)Δωを算出し、当該差分から、固体高分子電解質膜511の特定箇所の電流を算出する第一算出部130A、
第一算出部130Aで算出した電流値が所定値以上であるかどうか判断する第一判断部160Aを備える。
また、測定装置100は、図15を参照して後述する構造を備えていてもよい。
小型RFコイル114の計測領域は、固体高分子電解質膜511の表面から、固体高分子電解質膜511の厚みの途中位置までである。そして、拡散層52と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の計測領域と、拡散層53と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の計測領域とは重なっていない。
なお、固体高分子電解質膜511の大きさとは、固体高分子電解質膜511の表面の大きさである。小型RFコイル114の専有面積を、上記固体高分子電解質膜511の好ましくは1/2以下、より好ましくは、1/10以下とすることで、短時間で正確な測定が可能となる。小型RFコイル114の大きさは、たとえば、直径10mm以下とすることが好ましい。
なお、図示しないがRFパルス生成部は、各小型RFコイル114それぞれに対応して設けられ、複数のRFパルス生成部は、制御部150に接続される。
モード切替制御部152に接続された操作信号受付部129は、作業者の測定モードの要求を受け付ける。そして、操作信号受付部129が、この要求をモード切替制御部152に送出する。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
からなるパルスシーケンスとする。
また、第二測定モードにおいても、小型RFコイル114が固体高分子電解質膜511に印加する励起用振動磁場は、たとえば、
(a)90°パルス、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス、および
(c)(b)のパルスの時間2τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス(nは自然数である。)
である。
(a)励起用振動磁場の90°パルス、
(b)(a)のパルスを照射した後に、一定時間dだけ印加される、勾配磁場パルス、
(c)(a)のパルス照射から時間τだけ経過した後に印加される励起用振動磁場の180°パルス、および、
(d)(c)のパルスを照射した後に、一定時間dだけ印加される、勾配磁場パルス。
からなるパルスシーケンス。
NMR信号検出部は、小型RFコイル114で取得したNMR信号を検出し、このNMR信号を演算部130に送出する。NMR信号検出部は、プリアンプ112、検波器140およびA/D変換器118を含んで構成される。検出されたNMR信号は、プリアンプ112により増幅された後、検波器140へ送出される。
なお、図示しないがNMR信号検出部は、各小型RFコイル114それぞれに対応して設けられ、複数のNMR信号検出部は、データ受付部120に接続される。
チューニング用の可変容量コンデンサCT(可変容量素子)は、特定の周波数で回路が共振し、NMR信号を受信しやすくするように小型RFコイル114に対して挿入されている。
一方、アンプを含む伝送系を同一のインピーダンスに整合させるために、マッチング用可変容量コンデンサCM(可変容量素子)が上述の共振回路に含まれている。
これらの共振回路の構成は、一つの例であり、同じように特定の周波数で共振し、伝送系とのインピーダンス整合が取れる回路であれば、他の構成としても良い。
同軸ケーブルLは、図12に示すように、コイルと、キャパシタとが組みあわされた等価回路として表すことができる。
同軸ケーブルLの長さを調整すると、図11の点Pから見たインダクタンスとキャパシタンスが増減するように見える。
ここで、測定装置100では、送受信系、伝送系のケーブル等がすべてたとえば、特定のインピーダンス(たとえば、50Ω)でインピーダンス整合されている。そこで、同軸ケーブルLの長さを調整し、小型RFコイル114を含む共振回路の特性インピーダンスを、所定のインピーダンスとすればよい。
図10に示したような共振回路を使用した場合、小型RFコイル114を、可変容量コンデンサCTに直接接続した構成となるため、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサCTとの距離が近くなりやすい。そのため、固体高分子電解質膜511に対し、小型RFコイル114を近づけて計測を行う場合、可変容量コンデンサCTがじゃまになることがある。特に、本実施形態のように複数の小型RFコイル114を使用する場合には、複数の可変容量コンデンサCTが必要となり、複数の小型RFコイル114を所望の位置に配置しづらくなったり、複数の小型RFコイル114を密に配置することが困難となったりする可能性がある。
また、可変容量コンデンサCTには大きな電圧がかかるため、可変容量コンデンサCT自体を小さくすることは難しい。一方で、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサとを一定距離離間することも考えられるが、この場合、単にコイルの線を延長させて、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサとを接続したのでは、ノイズを拾う原因となる。
そこで、図11に示すような共振回路を使用することで、ノイズの強度を大きくせずに、小型RFコイル114と、可変容量コンデンサとの間の距離を長く確保することができる。これにより、測定精度を低下させずに、計測操作しやすくすることができる。また、複数の小型RFコイル114を使用する場合にも、小型RFコイル114を所望の位置に設置したり、密に配置したりすることが可能となる。
小型RFコイル114とRF信号生成部(RF増幅器106)とが接続された第1状態、および、
小型RFコイル114とNMR信号検出部(検波器140)とが接続された第2状態を切り替える機能を有する。
つまり、スイッチ部170は、「送受信切り替えスイッチ」の役目を果たす。この役目は、RF power−ampで増幅された励起パルスを小型RFコイル114に伝送する際には、受信系のプリアンプ112を切り離して大電圧から保護し、励起後にNMR信号を受信する際には、RF増幅器106から漏れてくる増幅用大型トランジスタが発するノイズを受信系のプリアンプ112に伝送しないように遮断することである。小型RFコイル114を用いて計測する場合には、微弱な信号を取り扱うため、以下の理由でスイッチ部170が必要となる。一方、小型RFコイル114を用いない大型計測システムでは、「クロスダイオード」を用いれば充分に対処ができる。なお、クロスダイオードは、所定値以上の電圧が印加された際にオン状態となり、所定値未満の場合にはオフ状態となるダイオードである。
また、スイッチ部170は各小型RFコイル114に対応して複数設けられている。
(i)本計測システムの小型コイルで検出できる固体高分子電解質膜体積は、大型コイルに比べて小さくなる。この検出可能な固体高分子電解質膜体積は、おおよそ、(コイルの内側面積×コイル半径の深さ)である。体積に比例して減少する微弱なNMR信号を、低ノイズ、高感度で計測するためには、送信系において、RF増幅器106の増幅用大型トランジスタから漏れてくるノイズを遮断することが必要となる。また、受信系では高感度のプリアンプ112を使用する必要がある。高感度のプリアンプ112の使用に当たっては、送信時に小型コイルに送られる大電圧の励起パルスからプリアンプ112を保護できるように、プリアンプ112を切断しなければならない。
(ii)固体高分子電解質膜体積内の核磁化を励起する際に、適切な励起パルスパワーで、具体的には、90度パルスと180度パルスの強度が1対2の関係、または照射エネルギーが1対4、またはパルス印加時間が1対2の関係になるように、核磁化を励起する必要がある。励起パルスパワーの調整を適切に行うことができないと、目標としているスピンエコー法のパルス系列とならず、その結果、適切なスピンエコー信号の取得ができないために、易動度の計測の信頼性が低下する。この現象は、従来のクロスダイオードを用いて、小型コイルの送受信切り替えを行う際には顕著に現れる。大型コイルでは、励起パルス強度が非常に大きく、クロスダイオードでの損失が無視できるほど小さいとみなせるが、小型コイルの場合には、励起パルス強度が大型コイルのそれよりも小さいために、クロスダイオードでの損失が無視できない。このため、適切な励起パルス強度とするためには損失が極力少ない「送受信切り替えスイッチ」が必要となる。
Gコイル251は、固体高分子電解質膜511の表面に対し平行に配置される。
図7に戻り、検波器140で検波されたNMR信号(エコー信号)の実部および虚部は、データ受付部120により取得されて、演算部130に送出される。演算部130は、第一算出部130Aと、水分量算出部である第二算出部130Bとを有する。
第一測定モードにおいては、第一算出部130Aは、検波器140で検波されたエコー信号の実部および虚部を取得し、これらを用いてエコー信号と励起用振動磁場との位相差を算出し、この位相差から、エコー信号の周波数と励起用振動磁場の周波数とに基づく周波数の差分(周波数シフト量)Δωを算出する(図1のS305)。
エコー信号の周波数は、電流が流れて形成される磁場により、基準の周波数となる励起用振動磁場の周波数から変化する。このため、周波数の変化量(差分)と電流値との関係を予め取得しておくことにより、測定されたエコー信号の周波数の差分から、固体高分子電解質膜511を流れる電流が求められる。周波数の差分は、ある時間間隔での位相の変化量を単位時間あたりに換算することにより求められる。
Δωと電流との関係は、記憶部190の第三記憶部193に記憶されている。第三記憶部193には、たとえば、実験的に得られた周波数の差分Δωと電流との対応付けのデータが格納されている。これは、さらに具体的には周波数の差分Δωと電流との検量線データである。演算部130中の第一算出部130Aは、記憶部190の第三記憶部193から検量線データを取得し、これに基づいて周波数の差分Δωに対応する電流を算出する。
そこで、第一算出部130Aでは、以下のようにして、電流値の算出を行う。
図57に示すように、第一測定モードにおける測定の前後において、電流が流れていない状態で、各小型RFコイル114から励起用振動磁場を印加する。そして、各小型RFコイル114にて、核磁気共鳴信号を取得し、これを基準核磁気共鳴信号とする。この操作を複数回行い、各小型RFコイル114に対応した基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を取得する。この基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を第一記憶部192に記憶させておく(たとえば、図57の直線A)。
第一測定モードにおいて、第一算出部130Aでは、電流値の測定を行った際、第一記憶部192に記憶された基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化に基づいて、電流値の測定を行った時点における基準核磁気共鳴信号の周波数を取得する(図57ω2)。
具体的には、第一算出部130Aでは、第一記憶部192に記憶された基準核磁気共鳴信号の周波数と時間との関係を近似直線とし、これを外挿(補間)して、燃料電池運転時の固体高分子電解質膜511に対して、励起用振動磁場を印加した際の基準核磁気共鳴信号の周波数を算出する。なお、第一算出部130Aでは、第一記憶部192に記憶された基準核磁気共鳴信号の周波数と時間との関係を近似式としてもよい。
そして、電流値の測定を行った際に各小型RFコイル114にて取得した核磁気共鳴信号の周波数(図57のω1)から、各小型RFコイルに対応した各基準核磁気共鳴信号の周波数(図57のω2)をそれぞれ差し引く。すなわち、電流値の測定を行った際に各小型RFコイル114にて取得した核磁気共鳴信号の周波数には、基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化が含まれているため、電流値の測定を行った際に各小型RFコイル114にて取得した核磁気共鳴信号の周波数(A)から、電流値の測定を行った時点(燃料電池運転中に固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した時点、すなわち、(A)の周波数を計測した時点)での各小型RFコイルに対応する基準核磁気共鳴信号の周波数(B)を差し引き、差分Δωを算出し、さらに、電流値の算出を行う。
第二記憶部191には、固体高分子電解質膜511の各小型RFコイル114の測定箇所に対応づけられた電流値が複数記憶されている。換言すると、第二記憶部191には電流値の分布が記憶されている。この第二記憶部191に記憶された電流値の分布は、固体高分子電解質膜511の各領域において各電流値以上で、燃料電池5が駆動していれば、正常に駆動していることの指標となるものである。なお、第二記憶部191に電流値が記憶されており、記憶された電流値以上で燃料電池5が駆動していれば正常に駆動しているものと判断するとしたが、第二記憶部191に電流値範囲が記憶され、算出した電流値が、第二記憶部191に記憶された電流値の下限値以上か否か、上限値以上か否か判断するものとしてもよい。
固体高分子電解質膜511における発電状態は、固体高分子電解質膜511の面内で位置(場所)ごとに異なることがある。たとえば、固体高分子電解質膜511のガス供給口付近では、電流値が高くなる一方、ガス排出口付近では電流値が低くなる傾向がある。さらに、固体高分子電解質膜511の面内方向に沿った原料ガスの供給量(たとえば、ガス濃度、圧力、ガス流量など)の不均一性、加湿量や水分除去量の不均一性、燃料電池の温度の不均一性、触媒の劣化度合いの不均一性によっても、固体高分子電解質膜511における発電状態は、固体高分子電解質膜511の面内で異なることがある。
このように、固体高分子電解質膜511における電流量は、固体高分子電解質膜511の面内で異なる。そのため、第二記憶部191には、電流値の分布が記憶されているのである。
(1)小型RFコイル114の設置位置
(2)小型RFコイル114の計測領域
(3)静磁場の方向と、電流が流れている方向との関係
(4)発電電流の空間的な分布
(5)発電電流の時間的変動
(6)燃料電池の要素構成、セル構成、スタック構成などの構造
(7)燃料電池の寸法、厚さ、および各要素部品の寸法
なお、本実施形態では、上記(1)〜(7)を考慮して、第二記憶部191に記憶される電流値を設定したが、これに限らず、たとえば、過去の実験データをもとに、第二記憶部191に記憶される電流値を設定してもよい。さらには、燃料電池が固体高分子電解質膜511内で均一に発電していると仮定し、燃料電池5をシミュレーションして第二記憶部191に記憶される電流値を設定してもよい。
固体高分子電解質膜511における水分量は、固体高分子電解質膜511の面内で異なることがある。たとえば、固体高分子電解質膜511のうち、比較的乾きやすい部分では、必然的に、水分量が少なくなる。そのため、第四記憶部194には、水分量の分布が記憶されているのである。
具体的には、図14に示すように、表示部135Aには、小型RFコイルの配置に応じて表示領域が区画されている。たとえば、電流値が所定値未満であり、水分量が所定値範囲外である領域は、第1の色で表示され、電流値が所定値未満であり、水分量が所定値範囲内である領域は、第2の色で表示される。
さらに、電流値が所定値以上であり、水分量が所定値範囲内である場合には第4の色で表示される。
ユーザは、表示部135Aの表示を見て、どの領域で発電量が低下しているか、水分量が不足であるか過剰であるかを把握することができる。
なお、本実施形態では、出力部135は、ディスプレイである表示部135Aを有するとしたが、これに限らず、リンタ出力、ファイル出力等、特に制限はない。
水素利用率を高くした場合には、ガス供給口近くでは水素濃度が高く、その場所での発電電流が大きいが、一方、ガス出口近くでは水素濃度が低く、発電電流も小さくなる。これは「物質輸送損失」が大きくなるためである。
また、高分子電解質膜511の含水量に依存してイオン伝導性は増減し、「オーム損失」が変化して、発電電流が増減する。この損失は含水量の空間的な分布に依存するために、電流も一枚の高分子電解質膜511の中であっても空間的な分布を持つことになる。
たとえば、水分量が所定範囲外で少なく、かつ、電流値が所定値未満である場合には、発電量低下の原因として、固体高分子電解質膜511の水分量不足が考えられる。そこで、燃料電池5の運転条件を調整することができる。
たとえば、
(i)水素極側での加湿量を増加する
(ii)酸素極側での水分の除去量を低下させる(たとえば、空気流量を低下させる等)
(iii)燃料電池の温度を低下させる
等の調整を行う。
一方で、水分量が所定範囲外で水分量が過剰であり、かつ、電流値が所定値未満である場合には、発電量低下の原因として、ブラデッィングの発生等が考えられる。この推測に基づいて燃料電池の運転条件を調整することができる。
たとえば、
(i)水素極側の加湿量を低下させる
(ii)酸素極側での水分の除去量を増加させる(たとえば、空気流量を増加させる等)
(iii)燃料電池の温度を上昇させる
等の調整を行う。
さらに、水分量が所定範囲内であり、かつ、電流値が所定値未満である場合には、発電量低下の原因として、水素濃度の低下、酸素濃度の低下、触媒の劣化等が考えられる。この推測に基づいて燃料電池の運転条件を調整することができる。
第二算出部130Bは、具体的には、エコー信号の強度から、T2緩和時定数を算出し、算出したT2緩和時定数から、固体高分子電解質膜511中の特定箇所におけるプロトン性溶媒の量を算出する。
ここで、プロトン性溶媒(水)の量の算出する際に、必要となる「NMR信号の強度」は、検波器140にて取得されたRealとImaginaryの成分を基に、
(Real^2+Imaginary^2)^−1/2
によってその強度に変換すればよい。すなわち、この演算は図16の円の半径を求めていることに相当する。
ステップS401:固体高分子電解質膜511に静磁場を印加する(図1のS301、図3のS102に該当)
ステップS402:燃料電池の運転を停止した状態で、
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
を含むパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、エコー信号を取得する。
ここで、180°パルスの前後に、Gコイル251から所定時間勾配磁場を印加してもよい。以上の操作を複数回行い、基準核磁気共鳴信号の周波数(燃料電池を停止した状態で小型RFコイルで取得する核磁気共鳴信号の周波数)の経時変化を取得する。
ステップS403:小型RFコイル114を介して、
(a)90°パルス、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス、および
(c)(b)のパルスの時間2τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス(nは自然数である。)
のパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、これに対応するエコー信号を取得する(図3のS104に該当)
ステップS404:ステップS403で取得した(b)および(c)のパルスに対応する複数のエコー信号の強度からT2緩和時定数を算定する(図3のS106に該当)
ステップS405:ステップS404で算出したT2緩和時定数から、固体高分子電解質膜中の局所的水分量を測定する(図3のS108に該当)
ステップS406:ステップS405で得られた局所的水分量が、所定の範囲内であるかどうか判別する(図3のS108に該当)
ステップS407:燃料電池を運転した状態で、ステップS402と同じパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、エコー信号を取得する(図1のS303に該当)。ここでも、ステップS402と同様に勾配磁場を印加してもよい。また、S407のあとに再度S402を実施してもよい。
ステップS408:ステップS407で取得したエコー信号の実部および虚部を用い、さらに、ステップS402で求めた基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を考慮して、第一算出部により、エコー信号の周波数と励起用振動磁場の周波数とに基づく周波数の差分Δωを算出する(図1のS305に該当)。
ステップS409:ステップS408で得られた差分から、固体高分子電解質膜の特定箇所の電流を求め所定値以上であるかどうか判別する(図1のステップS307に該当)
ステップS410:ステップS406,S409での結果を出力する。
本実施形態では、小型RFコイル114を用いて、局所的に励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場を印加した箇所から発せられる核磁気共鳴信号を取得し、得られた核磁気共鳴信号から固体高分子電解質膜511の特定箇所における電流を求めている。本発明者らが検討した結果、このような測定方法を使用すれば、燃料電池5の運転中に、固体高分子電解質膜511の特定箇所における電流値を正確に把握することができることがわかった。
従って、本実施形態の燃料電池システム1を採用し、運転中の燃料電池5の固体高分子電解質膜511の特定箇所において電流値が所定値以上であるかどうかを判断することで、発電状態を正確に判定することが可能となる。
また、本実施形態では、基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を計測した小型RFコイル114と、電流値を計測する小型RFコイル114とを同じものとしている。これにより、電流値を測定する領域における基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化を把握することができるので、正確な発電状況を把握することができる。
そこで、本実施形態では、発電状態を把握するための電流の基準値(所定値)を、小型RFコイル114の配置箇所に応じて設定している。これにより、固体高分子電解質膜511の各領域において、正常な発電が行われているかどうか正確に把握することができる。
本実施形態のように小型表面コイル114を用いると、計測領域が小さいために、計測領域内での静磁場均一性が高くなり、エコー信号が非常に長い時間に渡って観測できる。これにより、高い周波数分解能で周波数シフト量を計測することができる。
次に、図18〜20を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。
前記実施形態では、第二記憶部191には、各小型RFコイル114の測定箇所に対応づけられた電流値が記憶されていたが、第二記憶部191に記憶された電流値は、固定値であった。
これに対し、本実施形態では、発電電流の時間的変動を考慮し、第二記憶部191には、各小型RFコイル114の測定箇所に対応づけられた電流値の経時変化が記憶されている。この経時変化は、燃料電池5の運転を開始し、停止するまでの時間に沿った変化である。
たとえば、燃料電池5の運転を開始した直後は、十分に発電できない場合がある。また、燃料電池5を長時間運転すると、触媒の劣化や水分の蒸発等により、発電量が低下する。これらの現象を考慮し、第二記憶部191には、各小型RFコイル114の測定箇所に対応づけられた電流値の経時変化が記憶されている。
そして、第一判断部160Aでは、燃料電池5の運転開始からの時間と、第二記憶部191に記憶された各小型RFコイル114の測定箇所に対応づけられた電流値の経時変化とから、基準となる電流値(所定値)を取得し、第一算出部130Aで算出した各小型RFコイル114に対応する電流値が、所定値以上であるかどうかを判断する。
このようにすることで、第一実施形態と同様の効果を奏することができるうえ、燃料電池5の発電状態が正常であるかどうかをより正確に判断することができる。
図18に示した装置の基本構成は、図7に示した測定装置と同様であるが、演算部130が、さらに易動性算出部130Cを備えている点が異なる。
(a)励起用振動磁場の90°パルス、
(b)(a)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス、
(c)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される励起用振動磁場の180°パルス、および、
(d)(c)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス。
まず、第一実施形態と同様のステップS401〜S409までを実施する。
その後、以下のステップを実施する。
ステップS411:勾配磁場をゼロとし、上記(a)〜(d)を含むパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、これに対応するエコー信号を取得する(図6のS202に該当)、
ステップS412:勾配磁場をゼロでない所定の大きさとし、上記(a)〜(d)を含むパルスシーケンスで、励起用振動磁場を印加し、これに対応するエコー信号を取得する(図6のS204に該当)、
ステップS413:ステップS411およびステップS412で得られたNMR信号のピーク強度から、上記式(II)を用いて、固体高分子電解質膜511の特定箇所の水の自己拡散係数Dを求める(図6のS206に該当)、
ステップS414:ステップS406,S409、さらには、ステップS413での自己拡散係数の結果を出力する。
本実施形態では、第二記憶部191には、各小型RFコイル114の測定箇所に対応づけられた電流値の経時変化が記憶されている。この経時変化は、燃料電池5の運転を開始し、停止するまでの時間に沿った変化である。第一判断部160Aでは、燃料電池5の運転開始からの時間と、第二記憶部191に記憶された各小型RFコイル114の測定箇所に対応づけられた電流値の経時変化とから、基準となる電流値(所定値)を取得し、第一算出部130Aで算出した各小型RFコイル114に対応する電流値が、前記所定値以上であるかどうかを判断する。
このようにすることで、燃料電池5の発電状態が正常であるかどうかをより正確に判断することができる。
さらに、電流値、水分量、自己拡散係数の三つの値を数秒ごとに交互に計測することで、ほぼ同時刻に両者の値を取得することができる。
図46、図47を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。
本実施形態では、前記各実施形態と燃料電池の構成および小型RFコイルの配置が異なっている。本実施形態の燃料電池システムは、図47に示すように、燃料電池600と測定装置700とを備える。
図46に示すように、燃料電池600は、前記実施形態と同様の膜電極接合体51と、膜電極接合体51を挟んで配置された拡散層52,53を備える。膜電極接合体51は、固体高分子電解質膜511と、触媒層と(図示略)を備える。
セパレータ64は前記実施形態のセパレータとは異なるものであり、本実施形態では、導電性の部材、たとえば、金属で構成されている。このセパレータ64は、図46奥行き方向に直線上に延びる直方体状の複数のリブ641を備えている。複数のリブ641は、互いに平行に配置され、リブ641の間の溝部642がガスの流路となる。リブ641は、中実であってもよいし、内部に空洞が形成されていてもよい。セパレータ64は、平板状の集電体56に接続され、集電体56と一体成形されている。集電体56は、固体高分子電解質膜511の表面側からの平面視において、固体高分子電解質膜511を完全に覆うようにもうけられている。
小型RFコイル114は、図46に示すように、一方の拡散層52と、固体高分子電解質膜511との間、他方の拡散層53と固体高分子電解質膜511との間に配置される。この小型RFコイル114は固体高分子電解質膜511表面側からの平面視において、リブ641と溝との境界線を含むように、リブ641の両側に配置される。
また、本実施形態では、前記実施形態と同様の第一記憶部192、第四記憶部194を有するとともに、第五記憶部795を有する。
第五記憶部795には、所定の数値が記憶されている。
第一判断部160Aでは、第一算出部130Aで算出した一つの小型RFコイル114(リブ641とリブ641に隣接する一方の溝部642との境界部分に配置された小型RFコイル114)により計測した周波数シフト量と、この小型RFコイル114に隣接する小型RFコイル114(リブ641とリブ641に隣接する他方の溝部642との境界部分に小型RFコイル114)により計測した周波数シフト量との差を算出し、第五記憶部795に記憶された数値範囲内であるかどうかを判断する。
そして判断結果を出力部135に出力する。
このようにすることで、リブ641の両側の領域での発電状況を把握することができ、さらには、固体高分子電解質膜511中での発電状況が均一化、不均一かを把握することができる。
ここでは、以下の条件でシミュレーションを行った。
・燃料電池500の発電領域は48 mm×48 mm
・集電体56の厚さMは1mm
・セパレータ64の流路lは幅1mm、深さ1mm、ピッチPは2mm
・セパレータ64のリブ641は中実の場合と、薄板(厚さ0.1mm)の場合の2種類を考える(図48(A)、(B)参照)。
・GDL(拡散層52,53)の厚さは400μm
・PEM(表面に触媒層が塗布された高分子電解質膜511)の厚さは178μm
・燃料電池500の構造は、図46の奥行き方向に一様であるとする。(流路が一筆書き状に曲がるなどは考えない。)
座標軸は、図46に示すように、燃料電池500の発電面をyz平面とし、その面に垂直な方向をx軸方向とした。電流はx軸方向に流れるとする。
・電流はx方向のみに流れる。
・セパレータ64の導電性材料の電気伝導率は無限大、電気抵抗はゼロである。
・定常電流である。
・発電電流は0 A, 11.5 A, 23 Aの3条件とし、x方向の電流密度成分は、各位置xでのyz平面での導電体面積に依存する。(集電体56、拡散層52,53、固体高分子電解質膜511では全面で電流が流れるが、セパレータ64では、yz平面の面積が中実と薄板で異なり、導電体面積が増減するため、その面積に反比例して電流密度が増減するとした。x軸方向での電流の保存を保証するためにこのように考えた。)
・発電電流はy軸方向にのみ変化する一次元分布とし、奥行き方向には一様である。
・NMR計測での静磁場印加方向は、z軸方向である。
・NMR計測のための小型RFコイル114の大きさ、厚さは無視する。
本解析では、静磁場方向と同じz方向の磁場強度Hzのみを解析する。
図49から、全領域に渡って、磁場強度Hzのy方向分布が形成されることがわかる。磁場強度Hzはy軸方向の中心部分で位置yに対して正比例の関係にあるが、燃料電池500が一様に発電している場合であっても、端面に近づくにつれて、磁場強度Hzは中心部よりも急な勾配を持つことが分かる。
NMR計測における周波数シフトは、磁場強度Hzによって生じ、1 A/mあたり336 Hzだけシフトする。実際の計測での周波数シフト量は100 Hz程度が生ずれば、有意な値として計測できるため、このHzによる周波数シフト量は計測可能であると言える。
図50から、発電電流密度ixが増加すると、それにほぼ比例して、磁場強度Hzが増加することが分かる。また、その分布は、セパレータ64が中実であるとき、セパレータ64のリブ641の右側の領域では周波数は増加し、左側では周波数が減少していることが分かる。
図51から、要素1での発電電流密度ixが他の領域より小さくなることで、その周辺での磁場強度Hzが大きく変化し、この領域でz方向の磁場強度Hzは右下がりとなっていることが分かる。一様な発電時のix=0.5 A/cm2と比べて、非常に大きな相違があることが分かる。これは、発電電流が小さくなる場合にのみ見られる現象であり、逆に、発電電流が大きくなる場合には、右上がりの勾配が大きくなる。
この解析結果から、セパレータ64のリブ641の左右側の領域での周波数シフト量を計測することで、発電電流密度ixが他の領域よりも大きいのか小さいのかを判別することが可能となる。
図52より、薄板としても周波数シフト量は右上がりとなり、その勾配は中実の場合と変わらないが、薄板の場合は、中実の場合に比べて、セパレータのリブの左右側の領域での周波数シフト量の差が小さくなっている。ただし、それ以外の差はないため、セパレータが薄板で作られたとしても、NMRによって周波数シフト量を計測すれば、発電電流の空間分布を求めることができる。
リブ641の両側(リブ641とこのリブ641に隣接する一方の溝部642(流路)との境界部分およびリブ641とこのリブ641に隣接する他方の溝部642(流路)との境界部分)の周波数シフト量Δωn,L, Δωn,R(nは自然数)を計測し、両者の差(Δωn,L- Δωn,R)を計測することで、以下のことが判別できる。
(Δωn,L- Δωn,R)が他のリブ641の両側における(Δωn,L- Δωn,R)とほぼ同じ値(勾配が一定)であれば、均一に発電している。
(Δωn,L- Δωn,R)が右上がり(勾配が正で、大きい)であり、(Δωn,L- Δωn,R)の値が他のリブ641よりも大きければ、発電が活発である。また、(Δωn,L- Δωn,R)の値が第五記憶部795に記憶された所定の数値範囲外である場合には、特定の領域に異常が生じていることを把握することができる。
(Δωn,L- Δωn,R)が右下がり(勾配が小さいか、負)であれば、他の領域よりも発電電流密度が小さい。また、(Δωn,L- Δωn,R)の値が第五記憶部795に記憶された所定の数値範囲外である場合には、特定の領域に異常が生じていることを把握することができる。
隣り合う小型RFコイル114を介して、それぞれの領域における周波数シフト量を計測し、隣り合う小型RFコイル114に対応した領域における周波数シフト量の差を算出することで以下のことが判別できる。
周波数シフト量の差が他のリブ間の周波数シフト量の差とほぼ同じ値(勾配が一定)であれば、均一に発電している。
周波数シフト量の差が右上がり(勾配が正で、大きい)で周波数シフト量差が大きければ、他の領域よりも発電量が大きい。
周波数シフト量の差が右下がり(勾配が小さいか、負)であれば、他の領域よりも発電電流密度が小さい。
たとえば、前記各実施形態では、第一判断部160A、第二判断部160Bでの判断結果を出力部の表示部135Aに表示していたが、これに限られるものではない。たとえは、出力部が警報手段を有しており、音等で判断結果を報知してもよい。
固体高分子電解質膜511は乾燥しすぎるとプロトン伝導性が低下して、オーム損失が増加し、発電電流が低下する傾向にある。
一方で、固体高分子電解質膜511中の水分量が多くなりすぎた場合には、プロトン伝導性は向上するが、酸化剤極表面に水の膜ができ、酸化剤の供給が阻害されて、発電電流が低下する。
たとえば、水分量が所定の数値範囲外であり、かつ、電流値が所定値未満である場所が所定箇所数(多数)ある場合には、制御部135Bでは燃料電池5の運転を停止する。水分量が所定の数値範囲外であり、かつ、電流値が所定値未満である場所が所定箇所数未満である場合には、制御部135Bでは燃料電池5の運転を続けるように制御する。
この基準周波数差は、以下のようにして取得することができる。
燃料電池5を停止した状態において、静磁場印加部から静磁場を印加するとともに、固体高分子電解質膜511に対し、励起用振動磁場を印加して、固体高分子電解質膜511の特定箇所で発生した核磁気共鳴信号を複数回取得する。そして、取得した各前記核磁気共鳴信号の周波数と、RF発振器102で設定された周波数(励起用振動磁場の周波数)との差を算出して基準周波数差の経時変化を取得する。
この場合には、
(i)第一算出部130Aでは、第一記憶部192に記憶された前記基準周波数差の経時変化に基づいて求められ、燃料電池5の運転中に前記固体高分子電解質膜511に対して、励起用振動磁場を印加した時点での基準周波数差を取得する。
具体的には、第一算出部130Aでは、第一記憶部192に記憶された基準周波数差と時間との関係を外挿(補間)して、燃料電池5の運転中に前記固体高分子電解質膜511に対して、励起用振動磁場を印加した時点での基準周波数差(図57のΔω0)を推測する。または、第一算出部130Aでは、第一記憶部192に記憶された基準周波数差と時間との関係を近似式とし、燃料電池5の運転中に前記固体高分子電解質膜511に対して、励起用振動磁場を印加した時点での基準周波数差(図57のΔω0)を取得する。
(ii)一方で、第一算出部130Aでは、燃料電池5の運転中に前記固体高分子電解質膜511に対して、励起用振動磁場を印加した際に、小型RFコイル114で検出した核磁気共鳴信号の周波数(D)(図57のω1)と、RF発振器102に設定された励起用振動磁場の周波数(C)(図57のω0)との差分を求める。
そして、(ii)で求めた差分を、(i)で取得した基準周波数差に基づいて補正する。すなわち、(ii)で求めた差分は、(i)で取得した基準周波数差が含まれた値であるため、(ii)で求めた差分から、(i)で取得した基準周波数差を除く。
また、前記実施形態では、燃料電池5は、酸素と水素により駆動するものであるとしたが、これに限らず、燃料電池は、たとえば、アノード側にメタノールを供給し、カソード側に酸素を供給するダイレクトメタノール型の燃料電池であってもよい。
この場合には、PGSE法により計測されるエコー信号強度と、含水量との関係を把握しておけばよい。
ただし、CPMG法にて水分量を計測する場合には、以下の利点がある。
・複数のエコー信号を用いるので、計測のばらつき、信号対雑音比が向上する(ノイズが低減される)。
・T2(CPMG)緩和時定数を算出する際には、CPMG法が一度で複数のエコー信号を取れるため、短時間計測に向いている。また、T2(CPMG)値は減衰曲線から時定数を求めているため、単純に「信号強度」のように、アンプやコイル形状による計測装置の装置定数の影響を受けない。(信号強度では、計測装置の条件によって、増減する。絶対値が不明である。)
・T2(CPMG)は含水量に敏感に変化して増減するが、T2(Hahn)は含水量に対して鈍感で、ほとんど一定である。
水分量の計測をCPMG法にするか、PGSE法にするかは、状況に応じて適宜選択すればよい。
ここでは、運転中の燃料電池において、励起用振動磁場の周波数と、小型RFコイルで取得された核磁気共鳴信号の周波数とに基づく周波数の差分(以下周波数シフト量という場合もある)が、シミュレーション結果と一致するかどうか、また、実際の発電状況と一致するかどうかの検討を行った。
燃料電池としては、図8に示したものを使用し、小型RFコイル114A〜114Cを使用して計測を行った。
測定装置の構成は、第一実施形態(図7)と同様である。さらに、詳細な装置構成を図45に示す。また、装置構成について以下に詳細について説明する。なお、燃料電池は、測定装置において、磁場強度が1Tesla、Air-Gapが100 mmの永久磁石の内側に入れられ、静磁場H0が印加された。
(1)小型RFコイル
小型RFコイルは線径80μmの銅線を内径0.6 mmで渦巻き状に5回平面状に巻いて製作した。図22に小型RFコイルの図を示す。銅線はポリウレタン皮膜で覆われており、この皮膜により絶縁されている。また、このコイルでは、ポリウレタン皮膜同士で接着しており、そのままでコイルの形状を保っている。このため、コイル中心は貫通しており、ガスが通過できる。
この小型RFコイルは、膜電極接合体と、拡散層との間に配置されている。そして、固体高分子電解質膜の面方向にそって5 mm間隔で3点配置した。これらの3つの小型RFコイルは、発電によって拡散層に流れる電流を計測することとなり、それは、固体高分子電解質膜の面方向の電流分布になる。また、3つの小型RFコイルの計測領域は,3つの小型RFコイル表面から3つの小型RFコイル内径(0.60mm)の1/5程度の領域であり、MEA表面から厚み方向へ120μmまでの領域である。受信するNMRの周波数シフト量はこの範囲内で計測していると考えればよい。
(2)膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)
膜電極接合体は、固体高分子電解質膜上にPt触媒層をホットプレスすることで製作した。固体高分子電解質膜はNafion117(登録商標)で、その厚さは178μmである。膜電極接合体の外形は40 mm四方である。膜電極接合体のPt触媒層は固体高分子電解質膜の中央部にあり、その寸法は23 mm×20 mmである(図23に、MEAを示す)。
(3)拡散層(GDL)には厚さ400μmのカーボンメッシュを用いた。膜電極接合体をGDLおよび燃料供給用流路つきセパレータで挟み込んで燃料電池とした。その構造は、図8に示した通りである。セパレータ上のガス流路は断面2mm四方でサーペンタイン型とした。
燃料電池(セル)に、水素と空気を供給して発電を行った。水素はPEMの乾燥を防ぐために室温のバブラーを通して水蒸気を含有した状態でセルに供給した。水素の供給流量は13 ml/minとし、空気の供給流量は48ml/minとした。セルと供給燃料の温度はすべて室温(20℃)とし、その条件で発電を行った。発電された電流はGDLを通ってセル端の集電極に集められて外部負荷装置を流れる。この場合には、電流Iの流れる方向(図8中ではy方向)と、静磁場H0を印加する方向(図8中ではx方向)および、小型RFコイルが振動磁場H1を誘起する方向(図8中ではz方向)が全て垂直の関係にある。このような配置の場合には、GDLを流れる電流が磁場を新たに形成し、それをNMR信号の周波数シフト量として観測することができる。特に、この配置の場合に感度良く、電流分布を計測することができる。電流I、静磁場H0、振動磁場H1の三つが全て略垂直であれば、どのような位置関係であっても良い。また、電流I、静磁場H0、振動磁場H1の3つが完全に垂直でない場合、つまり傾いていても、直交成分があれば、信号対ノイズ比の許す範囲で計測が可能である。
この燃料電池に電子負荷装置を接続して発電を行い、電流の制御を行った。発電を行ったときのPEMを通過する電流密度と電子負荷装置端での電圧特性を表1に示した。
Case1〜Case3の電流密度条件のもと、前記実施形態で述べた方法にて、各小型RFコイルで励起用振動磁場の周波数と、核磁気共鳴信号の周波数との差分を算出した。
ここでは、NMR信号は、90度パルスと、180度励起パルスとの間隔を5msに設定し、エコー時間が10msとしてエコー信号を計測している。このシーケンスでは、180度励起パルスの前後に1msだけ勾配磁場を印加して、90度および180度励起パルス直後のNMR信号がエコー信号と干渉しないようにした。
結果を図24に示す。Case1の計測値は、□、Case2の計測値は△、Case3の計測値は○で示した。
図24から、電子負荷装置に流れる電流が小さくなるほど、周波数シフト量の絶対値が小さくなる様子が分かる。
(a)燃料電池の等価回路
燃料電池のアノードとカソード双方の電極に流れる電流がMEA内部の小型RFコイルの計測領域に形成する磁場を解析する。
燃料電池がMEA(膜電極接合体)内で一様に発電していると仮定して、電流分布計測を行った燃料電池の等価回路を、図25に示すようにモデル化した。
これは、MEAへの水素と酸素の供給が十分にあり,フラッディングが生じておらず、温度分布が一様という条件を想定している。
MEA内で一様に発電している燃料電池を、アノードとカソード間に電源と内部抵抗が一様に分布する等価回路とした(図25(B))。本実施例で用いた燃料電池では、集電用の電極をアノード側とカソード側で逆の端部に取り付けており、同様の位置から負荷の抵抗を接続した等価回路とした。
この等価回路では,電源から流れ出る電流は一旦カソード上をMEAの面方向へ流れた後に燃料電池から流れ出て負荷の抵抗へ供給される。アノード側にも同様に電極の面方向へ電流が流れる。電源はMEA内に一様に分布していることから、この電極(触媒層512上)上でMEA面方向に流れる電流は、直線的な分布となる(図25(A)参照)。
アノードとカソード双方の電極に流れる電流が,MEA内部に形成する磁場を解析し,周波数シフト量の分布を算出した。解析はCase1,Case2の電流密度条件で行い,図25(C)に示すy0軸上の周波数シフト量を算出した。y0軸はMEA表面から小型RFコイルの計測領域の厚み分内側の軸である。
解析結果を図24に示す。ここでは,y0=0をMEAの中心として、周波数シフト量の分布を実線と一点鎖線で示した。また、小型RFコイルの計測領域内でも磁場の空間分布があるが,ここでは計測領域中心での値を代表値として示した。
周波数シフト量の分布はy0=0を中心として,正方向と負方向で異なる符合となる。これは、図25(C)のMEA内に形成される磁場の方向と強度を見ることで理解できる。
アノード電極とカソード電極に流れる電流の向きは同じであるため、間に挟まれたMEA内部に発生する磁場はそれぞれ向きが逆になり,双方が作る磁場強度の差分が磁場として発生する。そのため、y0軸上での磁場の分布は,アノードとカソードで電流が等しいMEAの中心付近で0を通る分布となり,y0が正の位置と負の位置で符号が異なる分布となる。
解析値と計測値とはほぼ一致しており、本実施例では、MEA内で一様に発電していると考えられる。このように、一様に発電している場合には、周波数シフト量は、y位置に対してほぼ直線的に増減して行く分布となる。
このy位置に対する周波数シフト量をプロットすることで、燃料電池が一様に発電しているのか、または、ある部分のみが発電しているのかを知ることができる。
また、各小型RFコイルでの計測値が、たとえば、図24に示される周波数シフト量の解析値以上であるかどうかを判別することで、燃料電池が所望の運転を行っているかどうか判別することも可能である。
本実施例では、運転中の燃料電池の固体高分子電解質膜の水分量の分布と、電流分布を計測した。
(1)燃料電池システムの構成
使用した燃料電池システムは、参考例と同様である。燃料電池は、測定装置において、磁場強度が1Tesla、Air-Gapが100 mmの永久磁石の内側に入れられ、静磁場H0が印加された。
ただし、本実施例では、燃料電池セルに温調用循環水を導入し、その循環水の温度を外部チラーで制御することで、燃料電池セルの温度を20℃と50℃の二通りに変えた。図26(A)には、セル内に温調用循環水が通る流路の図を示す。また、図26(B)には循環水を供給する配管の様子を示す。
図26(A)には、燃料電池の図8下側の拡散層、小型RFコイル等が示されている。拡散層の下方に位置するセパレータの下方を循環水が流れる構成となっている。
(2)燃料電池の発電条件
燃料電池の固体高分子電解質膜を「湿った状態」「乾いた状態」の二つの条件で発電させ、その際の含水量と電流分布を小型表面コイル(小型RFコイル)で計測した。本実験での燃料電池の発電条件を表2に示す。
固体高分子電解質膜を乾燥させる方法は、燃料電池の温調用循環水の温度を50℃に昇温し、30分程度発電させて行った。これも先と同様に、固体高分子電解質膜が乾燥状態での発電時のIV特性とNMR信号の低減から推測できる。
表3に示すガス供給量で燃料電池を発電させた。ただし、表3に記載した供給圧力は、ガスボンベの減圧弁の出口圧力であり、配管やニードルバルブでの流動抵抗が含まれている。さらに、水素ガス側では加湿用バブラーがあり、これでの圧力損失分も含まれている。
本実施例では、燃料電池内MEAの含水量とMEAを流れる電流の分布とを同じ小型表面コイルで計測している。図28には、含水量を計測するためのCPMGシーケンスと、電流を計測するためのPGSEシーケンスを実行した順序を示す。
ここでは、PGSEシーケンスでは、90度パルスと、180度励起パルスとの間隔を5msに設定し、エコー時間が10msとしてエコー信号を計測している。このシーケンスでは、180度励起パルスの前後に1msだけ勾配磁場を印加して、90度および180度励起パルス直後のNMR信号がエコー信号と干渉しないようにした。
また、CPMGのシーケンスは、(a)90°パルス、(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス、および(c)(b)のパルスの時間2τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス(nは自然数である。)
とし、τ=10 ms、n=25とした。
本計測では、CPMGシーケンスを3回、その後に、PGSEシーケンスを1回実行して、これを1セットとして、7セット繰り返した。図28のCPMGの欄に示された黒い四角は、CPMGのシーケンス1回分を示し、PGSEの欄に示された黒い四角は、PGSEシーケンス1回分を示している。
計測時間として、CPMGシーケンスでは、90度励起パルスの繰り返し時間TRを10秒、PGSEシーケンスでは90度励起パルスの繰り返し時間TRを5秒とした。すなわち、CPMGシーケンスを1回実行するのに10秒を要し、PGSEシーケンスが1回実行されるのに5秒を要している。1セットで35秒を要する。
CPMG法を用いてCase1とCase2の状態での含水量計測を行った。以下に結果を示す。
(6−1)NMR信号と含水量の関係
高分子電解質膜(PEM)内の含水量とNMRのエコー信号強度、さらに、T2緩和時定数(CPMG)値の関係を図29,30に示す。含水量の増加と共に、エコー信号強度とT2緩和時定数(CPMG)値は単調に増加する。
Case1の実験条件で、CPMG法によって小型RFコイル114Aで得られたエコー信号を一例として図31に示す。CPMGシーケンスのパラメータは、90度励起パルスと180度励起パルスの時間間隔tauを10 ms、90度励起パルスの励起間隔TRを10秒とした。
図31の波形から、180度励起パルスの間にエコー信号を見ることができる。本実施例では、第1番目のエコー信号の強度のみを用いて、図29の相関関係を基に、含水量の多い・少ないを判断した。
(6−3)Case1と2の比較
図32には、第1番目のエコー信号強度を実験条件Case1と2で比較した結果を示す。この図では、Case1と2でそれぞれ9セットのCPMG計測(図28の実験手順に示された始めから9セット分のCPMG計測)を行い、すべての実験結果を示した。横軸は各セットの番号を示している。
この図から、Case1の実験条件の方が、Case2に比べて、エコー信号強度は大きいことがわかる。また、この関係は9回の計測結果全てにおいて保たれていた。
また、この計測でのばらつき(変動係数=エコー信号強度の標準偏差/エコー信号の平均値、9回分のデータの統計量)は、Case1では5.8%、Case2では9.2%であった。
小型RFコイル114A,114B,114Cでのエコー信号強度をCase1と2で比較した結果を図33に示した。この結果より、どの位置の小型RFコイルであっても、Case1の実験条件の方がCase2に比べて、エコー信号強度が大きく、含水量が多いことが分かる。
図28に示した順序でPGSEシーケンスを実行させて、燃料電池の電流がゼロの状態(開回路)で3回、電流Iを0.40Aとして2回、再度、電流がゼロの状態で2回計測した。
燃料電池は、はじめは発電電流がゼロの状態(開回路の状態)とし、この状態で電流計測に用いる基準の周波数シフト量を計測した。ここでいう基準周波数シフト量とは、RF発振器で設定された周波数(励起用振動磁場の周波数)と、燃料電池を停止した状態で励起用振動磁場を印加した際の核磁気共鳴信号の周波数との周波数差である。
次に所定の電流Iを流して、PGSEシーケンスを2回実行して、電流が流れている状態でのRF発振器で設定された周波数と、励起用振動磁場を印加した際の核磁気共鳴信号の周波数との差を求めた。その後、再度、回路を開いて発電電流をゼロとして、基準周波数シフト量を計測した。
一例として、Case1の発電条件で計測された小型RFコイル114Dでの基準周波数シフト量の変化を図34に示す。PGSEシーケンスは35秒ごとに繰り返して計測された。
図34より、燃料電池が開回路で、電流を流さない場合であっても、磁石の温度上昇に伴う静磁場強度の低下により、時間と共に基準周波数シフト量が増加していく様子が見られる。このため、電流がゼロの場合(実験番号1, 2, 3, 6, 7)の基準周波数シフト量を用いて、基準周波数シフト量が時間共に直線的に増減すると仮定して、最小自乗法により近似した。その近似直線を図34の破線で示す。これより、数分程度の時間経過の間であれば、磁石温度の増減による基準周波数シフト量はおおよそ時間の一次関数(直線)として近似できることが分かる。この破線を基準周波数シフト量とし、実験番号4、5で示される、発電電流が流れた場合に生ずる周波数シフト量は、図34に示すように、この基準周波数シフト量からの差として周波数シフト量Δωを算出した。
同様の算出方法によって、小型RFコイル114E,114Fの周波数シフト量も算出した。その結果を図35に示す。
図35には、MEA内で一様に発電して電流が一様に流れると仮定し、それらの電流がGDLに流れることで作られる磁場を解析し、それを基に算出した周波数シフト量も実線として図示した。実験結果と解析結果を比較すれば、周波数シフト量はほぼ一致しており、Case1の条件では発電電流がほぼ一様であることが分かった。
また、同様の計測をCase2でも行った。その結果を図36に示した。Case2でも、発電電流は0.40AとCase1と同じである。
図35,36から、Case1に比べ、Case2の方が発電量が少なくなることがわかる。これは、図27に示したシミュレーション結果と一致している。
従って、本発明の燃料電池システムを使用することで燃料電池の発電状態を正確に把握することができることがわかった。
実施例2では、3つの実験を行った。
実施例2−1.PEMが乾燥した状態で発電させ、生成した水によってPEMが湿潤していく様子の含水量および周波数シフト量の計測
実施例2−2.PEMが湿潤した状態で発電させ、セル温度を上昇させたことで、PEMが乾燥していく様子の含水量および周波数シフト量の計測
実施例2−3.発電時に燃料ガス側に窒素を供給して、供給水素濃度を低下させた場合の電流分布計測
(1)燃料電池システムの構成
使用した燃料電池システムは、実施例1と同様である。ただし、小型RFコイルの取り付け位置は、図37のようにした。本実験では8つのコイルが燃料電池内に挿入された。それら小型RFコイルの設置位置は、図37に示すように、燃料ガス側と空気側のそれぞれのGDLとPEMの間に4つずつ挿入した。片側のコイルの間隔は5mmとした。図37中では小型RFコイル114を区別するために、114G〜114Nまでの番号を振った。燃料電池は、測定装置において、磁場強度が1Tesla、Air-Gapが100 mmの永久磁石の内側に入れられ、静磁場H0印加された。
本実施例では、燃料電池の温度を20℃と50℃の二通りに変えた。燃料電池の発電条件を表4に示す。このPEMの「湿った状態」と「乾いた状態」の区別は、実施例2−1と実施例2−2で得られたエコー信号強度の結果からである。
計測シーケンスの実行手順は、実施例1とほぼ同様である。ただし、本実施例では、実施例1に比べて、発電させる(通電する)タイミングを約30秒間だけ早くした。これは、発電させている時間を長くするためである。本実験では、4セット目のCPMG計測の前から発電させた。発電(通電)時間は約70秒であった。
その他の計測シーケンスの実行手順は、実施例1と同様である。また実施例1と同様に、基準周波数シフト量の経時変化を計測し、この基準周波数シフト量に基づいて、周波数シフト量Δωを算出した。
MEAを蒸留水に数時間浸した後、取り出してMEA表面の水滴をキムワイプでしっかり拭いてから燃料電池内に組み込んだ。燃料電池は開回路状態(発電電流がゼロ)を保ったままで、表5に示したガス供給を燃料電池に行った。また、燃料電池の温度は20℃とした。この状態でのMEAは比較的乾燥した状態にある。
この状態から、前述した図28に示した計測シーケンス(CPMG、PGSE計測 7セット分を一つの実験とした)を実行した。
第0番目の実験(Exp #0)では、燃料電池を開回路のまま、通電せずに計測を行った。それ以降の計測(Exp #1以降)では、計測時に70秒間の通電を行った。実験番号の増加は時間の経過に対応している。
(発電電流と出力電圧の測定結果)
燃料電池の発電電流と出力電圧を電子負荷装置(KIKUSUI PLZ 152 WA)により計測した。その結果を表6に示す。この計測値は、燃料電池全体での値である。また、この表には、通電していた時間の積算値として「積算発電時間」も記載した。実験の経過と共に積算発電時間は増加する。
CPMG計測では、図28の実験手順に示されたように、始めの3回のCPMG計測(各実験番号における7セットのCPMG計測のうち、はじめの3セット分のCPMG計測)によって得られたエコー信号を用いた。始めの3回のCPMG計測でそれぞれ得られた三つの「第1番目のエコー信号強度」(はじめの3セット分のCPMG計測において、各セット中1番目のCPMG計測のエコー信号強度)を平均し、それを「平均エコー信号強度」とした。
平均エコー信号強度が大きいほど、含水量も大きいという関係にある。(実施例1参照。)
典型的な計測結果として、小型RFコイル114Mと小型RFコイル114Iでの平均エコー信号強度を図38に示した。横軸は表6で示した実験番号と対応させた。小型RFコイル114Mは水素ガス側、小型RFコイル114Iは空気側に設置された小型RFコイルであり、両者はほぼ合い向かう位置にある。
図38の計測結果から次のことが分かった。発電前は、小型RFコイル114M、小型RFコイル114I共にほぼ同じ信号強度であり、含水量がほぼ同じであると見なせる。発電を開始すると、小型RFコイル114Iの信号強度が急激に増加する。この急激な増加は、小型RFコイル114Iが空気側にあり、発電によって空気側に水が生成し、PEMが湿潤したためであると推測できる。その後、信号強度は一定となり、PEMの含水量も一定となったように見られるが、生成した水がGDL内に浸透してフラッディングが生じていると推測される。一方、水素側の小型RFコイル114Mでは増加はするが、僅かである。その後、発電の積算時間が長くなると共に、水素側の小型RFコイル114Mはゆっくりと増加していく。
小型RFコイル114K、114NでPGSE法により計測された周波数シフト量を図39中の点(◆、○)として示した。小型RFコイル114K、114Nは共に水素側にあり、両者はMEAの中心軸に対して対称の位置にある。また、横軸は図38と同様に実験番号である。
図39より次のことが分かる。燃料電池が発電していない場合(Exp #0)では、両小型RFコイル共に周波数シフト量はゼロである。発電している場合(Exp #1)には周波数シフト量が大きくなり、時間が経過していく(Exp #2以降)と共に両小型RFコイル共に周波数シフト量の絶対値は少しずつ小さくなった。この周波数シフト量の振る舞いは表6に示した燃料電池全体での計測結果と同様である。
また、図39には、破線と実線によって、MEA全体で均一に発電が起きていると仮定して解析した周波数シフト量も示した。それぞれの実験点と対応する破線または実線がほぼ一致していることから、本実験条件での燃料電池の発電はほぼ一様に起きていると言える。
以上の結果から、本発明の燃料電池システムを用いると、燃料電池が発電することで生成される水によってPEMが空気側から湿潤し、発電時間が長くなると共に水素側のPEMも湿潤していく様子を捉えることができる。
また、発電により生成した水は、PEMを湿潤させ、イオン伝導率を上昇させたが、空気側のGDLでフラッディングが発生し、酸素供給が阻害されたことによって、発電電流が低下したものと推測される。このように、燃料電池システムで計測された局所含水量と周波数シフト量を基にして多面的(例えば、水素側、空気側のそれぞれの局所含水量、および発電電流の均一性)に情報を収集することで、燃料電池内部で生じている現象をより正確に推測でき、それに応じた対策や制御を燃料電池に施すことができる。
実施例2−1の結果から、燃料電池の温度を20℃として発電すれば、PEMは湿潤していった。これとは逆に、PEMを乾燥させるために、循環水槽の温度を徐々に40℃まで上昇させ、この状態から、前述した図28に示した計測シーケンス(CPMG、PGSE計測 7セット分を一つの実験とした)を実行した。
表7には、時間の経過と共に増加する実験番号と、その際の燃料電池の温度、その際の発電電流と出力電圧を示した。図40には、表7に示した燃料電池の温度の時間経過をプロットした。実験は約10分間隔で行われ、燃料電池の温度は約20分で40℃に達した。実験番号Exp #5が終了したのは実験開始から約1時間後であった。
燃料電池の電流・電圧計測、CPMG、PGSE計測の方法はすべて実施例2−1と同様である。
前述の実施例2−1と同様に、小型RFコイル114M,114Iでの平均エコー信号強度を図41に示した。横軸は実験番号であり、時間の経過に対応する。
図41は、小型RFコイル114M,114I共に時間の経過と共に信号強度は低下していくことを示している。その際、空気側の小型RFコイル114Iの方が水素側の小型RFコイル114Mに比べて、ゆっくりと低下する。そして、実験開始から約1時間後のExp #5では、両者はほぼ同じ信号強度となる。
この計測結果から、本実験条件のように、水素ガス側への加湿量が少ない場合には、燃料電池の温度を20℃から40℃に上昇させることで、燃料電池が発電している場合であってもPEM内の含水量は低下していくことが分かる。また、その低下の様子は、水素側で早く、水が生成される空気側ではゆっくり低下することが分かった。
(PGSE法による電流計測)
前述の実施例2−1と同様に、小型RFコイル114K,114Nで計測された周波数シフト量を図42に点(◆、○)として示した。本実験では、表7に示すように、電流が僅かにしか低下しない。この結果と対応して、図42に示した周波数シフト量もほとんど一定であった。この結果からも、周波数シフト量を計測することで、燃料電池が発電する電流を知ることができる。
燃料電池に供給する水素ガスの濃度を低下させて、発電電流が低下していく様子をPGSE計測での周波数シフト量の変化(低下)として計測できることを以下で示す。
(供給水素濃度の時間変化)
供給する水素ガスの濃度を窒素ガスで希釈することで低下させた。具体的には、加湿用に用いているバブラーに予め水素ガスと水を満たしておき、その後、窒素ガスを供給して、水素ガスと窒素ガスをバブラー内で混合させ、バブラーから排出される水素ガスの濃度を時間と共に低下させる方法を用いた。この方法では、燃料ガスに含まれる水蒸気濃度は一定に保たれる。
バブラー容器の内容量は1200 mlであり、その中に800 mlの蒸留水を入れた。多孔質ガラス製のガス噴射管をバブラー内底部に固定して、始めは水素ガスを流量14 ml/minで注入した。数時間経過した後には、バブラー内は水素ガスとバブラー温度の20℃の飽和水蒸気で満たされる。この状態のバブラーに、水素ガスに代えて、窒素ガスを3.75 ml/minで注入した。窒素ガスを供給し始めた時間をゼロとした。
この条件の下で、バブラー内での水素ガスと窒素ガスが「完全に混合する」と仮定して解析を行い、バブラー出口での水素ガス濃度CH2の時間変化を算出した。その結果を図43に示す。水素ガス濃度CH2は時間と共に指数関数的に減少していくのが分かる。この図では、さらに、水素ガス濃度CH2が供給された際に、水素を全て消費したとして算出した発電電流も示した。水素ガス濃度と同様に時間と共に低下していくことが分かる。
燃料電池の温度を20℃、空気供給量を70 ml/minとし、前節(供給水素濃度の時間変化)で記述したような希釈水素ガスを供給した際の、燃料電池の発電電流と出力電圧を電子負荷装置(KIKUSUI PLZ 152 WA)により計測した。その測定結果を表8に示す。この計測値は、燃料電池全体での値である。
本実験での結果を分かりやすくするために、表8の左列に示す実験番号(Case)を付け、さらに、図43中には実験番号(Case)に対応する時間を矢印で示した。
図43と表8から、時間の経過と共に、水素ガス濃度は低下し、それと共に、発電電流および出力電圧が低下していくことが分かる。
発電電流による周波数シフト量をPGSEシーケンスにより計測した。小型RFコイル114K,114Nでの計測結果を図44の点(◆、○)として示した。小型RFコイル114K,114Nは、図37で示したように、位置がy=-7.5mmと7.5mmと両端にあり、周波数シフト量は符号が反対になって計測される。また、電流が小さくなると、周波数シフト量の絶対値は小さくなる。
実験結果の図44から、表8で示した発電電流の低下に伴って、小型RFコイル114K,114Nの周波数シフト量の絶対値が両者共に小さくなったことが分かる。すなわち、水素ガス濃度の低下によって燃料電池の発電電流が低下していく様子を周波数シフト量から知ることができる。
また、この図には、破線と実線によって、MEA全体で均一に発電が起きていると仮定して解析した周波数シフト量も示した。それぞれの実験点と対応する破線または実線がほぼ一致していることから、計測結果が確からしいと言える。
以上より、NMR信号の周波数シフト量を計測することで、燃料電池の発電電流の増減を知ることができ、さらには、燃料電池内に複数の小型RFコイルを備えることで燃料電池が全領域で均一に発電しているか、そうでないのか、不均一な場合には、どの程度の不均一性があるかを周波数シフト量の分布から知ることができると言える。
そして、周波数シフト量が所定値以上であるかどうか判断することで、燃料電池が所望の運転を行っているかどうか判断することが可能である。
ここでは、周波数シフト量から、発電電流密度を求めた。
まず、実施例2と同様の燃料電池システムを使用した(図37)。
燃料電池に、水素と空気を供給して発電を行った.水素は、固体高分子電解質膜の乾燥を防ぐために室温のバブラーを通して水蒸気を含有した状態でセルに供給した。セパレータ上のガス流路は断面2 mm×2 mmのサーペンタイン型とした。水素の供給流量は13 ml/minとし,空気の供給流量は48 ml/minとした。セルと供給燃料の温度はすべて室温(20 ℃)で発電を行った。
この燃料電池セルに電子負荷装置を接続して発電を行い,電流の制御を行った.発電を行ったときの固体高分子電解質膜を通過する電流密度と電子負荷装置端での電圧特性を表9に示す。小型RFコイルでの電流分布計測は、以下のCaseIの条件で行った。
なお、計測シーケンスの手順は、実施例2と同じであり、また、実施例2と同様に、基準周波数シフト量の経時変化を計測し、この基準周波数シフト量に基づいて、周波数シフトΔωを算出した。
結果を図53に示す。また、図35で示した解析結果と同様の方法で解析した解析結果を図53中に実線として示す。解析値と計測値とはほぼ一致しており、固体高分子電解質膜面内で一様に発電していると考えられる。
次に、固体高分子電解質膜の半分の領域(y < 0)にのみに触媒層を形成し(固体高分子電解質膜の表面側の半分の領域が触媒層により覆われ、裏面の半分の領域が触媒層に覆われる、図54)、発電が固体高分子電解質膜の半分の領域のみで起きる場合の電流分布を計測した。固体高分子電解質膜の外形は、40 mm × 40 mm、厚さは、178 μmである。触媒層は固体高分子電解質膜の中央を端部として、11.5 mm × 20 mmとした。他の点は、図37に示すものと同じである。また、水素の供給流量は13 ml/minとし,空気の供給流量は48 ml/minとした。セルと供給燃料の温度はすべて室温(20℃)で発電を行った。小型RFコイルでの電流分布計測は、以下のCaseIIの条件で行った。
なお、計測シーケンスの手順は、実施例2と同じであり、また、実施例2と同様に、基準周波数シフト量の経時変化を計測し、この基準周波数シフト量に基づいて、周波数シフトΔωを算出した。結果を図55に示す。また、図53と同様に、解析結果を実線で示す。
触媒層が形成された左側(位置y0が負の領域)では、発電電流密度は、CaseIIとして表中に記載された174mA/cm2程度であると考えられ、周波数シフト量の勾配は右上がりで、大きな勾配を取るが、一方、触媒層がない右側(位置y0が正の領域)では、発電電流密度はゼロであり、周波数シフト量の勾配はほぼゼロになっていることが分かる。
さらに、Case Iと、CaseIIで計測した周波数シフト量Δωのy0軸上分布から発電電流密度を換算した。換算にあたり,隣り合う二つの計測値から周波数シフト量の勾配を求め、y0軸上での磁場解析から得られた周波数シフト量の勾配と比較して発電電流密度を求めた。その結果を図56に示した。本計測では、小型RFコイル間の間隔を5 mmとしたため、発電電流密度の計測の空間分解能は5 mmである。図56から,全面に触媒層を形成したMEAでは発電電流密度はほぼ一様で、表9中のCaseIの87 mA/cm2にほぼ等しいことが分かる。一方、固体高分子電解質膜の半分の領域のみで発電するMEAでは,触媒層が形成された左側(位置y0が負の領域)では発電電流密度は表9中のCaseIIの174 mA/cm2程度であるが、触媒層がない右側(位置y0が正の領域)では発電電流密度がゼロに近い値となっていることが分かる。中心位置( y0 = 0 )には触媒層の境界があり、その領域では電流密度計測の空間分解能が不足し、中間的な電流密度を示している。
これらの結果から、本手法で計測された周波数シフト量の一次元分布から、燃料電池内で発電された発電電流密度の一次元分布へと換算できたと言える。
5 燃料電池
51 膜電極接合体
52 拡散層
53 拡散層
56 集電体(電極)
64 セパレータ
100 測定装置
102 発振器
104 変調器
106 増幅器
112 プリアンプ
113 磁石
114 小型RFコイル
118 変換器
118A 変換器
118B 変換器
120 データ受付部
127 シーケンステーブル
128 計時部
129 操作信号受付部
130 演算部
130A 第一算出部
130B 第二算出部
130C 易動性算出部
135 出力部
135A 表示部
135B 制御部
140 検波器
150 制御部
151 パルス制御部
152 モード切替制御部
159 電流駆動用電源
160 判断部
160A 第一判断部
160B 第二判断部
170 スイッチ部
171 ハイブリッド
173 分配器
175 分配器
177 ミキサー
179 ミキサー
181 合成器
183 ミキサー
185 ミキサー
187 分配器
190 記憶部
191 第二記憶部
192 第一記憶部
193 第三記憶部
194 第四記憶部
251 コイル
500 燃料電池
511 固体高分子電解質膜
512 触媒層
513 触媒層
541,551 流路
600 燃料電池
641 リブ
642 溝部
700 測定装置
760 判断部
790 記憶部
795 第五記憶部
A 直線
CM マッチング用可変容量コンデンサ
CT 可変容量コンデンサ
L 同軸ケーブル
Claims (13)
- プロトン性溶媒を含んだ固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極とを有する燃料電池を含む燃料電池システムにおいて、
前記固体高分子電解質膜に対して、静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記固体高分子電解質膜よりも小さい小型RFコイルと、
前記燃料電池を停止した状態で、励起用振動磁場を印加した際に、前記小型RFコイルにて検出される核磁気共鳴信号の周波数である、基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化が記憶された第一記憶部と、
以下の(A)と(B)との周波数の差分を算出し、あるいは、以下の(A)と(B)との周波数の差分を算出しこの周波数の差分に基づいた電流量を算出する第一算出部とを備える燃料電池システム。
(A)前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した際に前記小型RFコイルにて取得した核磁気共鳴信号の周波数
(B)前記第一記憶部に記憶された基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化から取得され、前記燃料電池の運転中に前記励起用振動磁場を印加した時点での基準核磁気共鳴信号の周波数 - プロトン性溶媒を含んだ固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極とを有する燃料電池を含む燃料電池システムにおいて、
前記固体高分子電解質膜に対して、静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加するとともに、前記固体高分子電解質膜の特定箇所で生じた核磁気共鳴信号を取得する、前記固体高分子電解質膜よりも小さい小型RFコイルと、
前記燃料電池を停止した状態で、励起用振動磁場を印加した際に、前記小型RFコイルにて検出される核磁気共鳴信号の周波数である、基準核磁気共鳴信号の周波数と、
前記励起用振動磁場の周波数との差である基準周波数差の経時変化が記憶された第一記憶部と、
以下の(C)と(D)との差を算出し、
前記(C)と(D)の差から
前記基準周波数差の経時変化に基づいて取得される基準周波数差であって、燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した時点での基準周波数差を差しひいた周波数の差分を算出し、あるいは、前記周波数の差分に基づいた電流量を算出する第一算出部とを備える燃料電池システム。
(C)前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した際の励起用振動磁場の周波数
(D)前記燃料電池の運転中に、前記固体高分子電解質膜に対して、励起用振動磁場を印加した際に、前記小型RFコイルで取得した核磁気共鳴信号の周波数 - 請求項1または2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記第一記憶部に記憶された前記基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化、あるいは、前記基準周波数差の経時変化は、前記燃料電池を運転する前あるいは後において、取得したものであり、
第一算出部では、前記第一記憶部に記憶された前記基準核磁気共鳴信号の周波数の経時変化、あるいは、前記基準周波数差の経時変化を補間して、得られるものである燃料電池システム。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
所定値を記憶した第二記憶部と、
前記第一算出部で算出した前記周波数の差分が前記第二記憶部に記憶された前記所定値以上か否か、あるいは、前記周波数の差分に基づいて算出される前記電流量が前記第二記憶部に記憶された所定値以上か否かを判断する判断部と、
前記判断部での判断結果が出力される出力部とを備える燃料電池システム。 - 請求項4記載の燃料電池システムにおいて、
前記固体高分子電解質膜の面方向に沿って配置された前記小型RFコイルを複数備え、
前記複数の小型RFコイルが、それぞれ、前記固体高分子電解質膜の複数箇所に対し、前記励起用振動磁場を印加するとともに、前記核磁気共鳴信号を取得し、
前記第一算出部では、前記固体高分子電解質膜の前記複数箇所における前記周波数の差分をそれぞれ算出し、
前記第二記憶部は、前記固体高分子電解質膜の前記複数箇所それぞれに対応づけられた複数の前記所定値が記憶され、
前記判断部では、算出した前記複数箇所の前記周波数の差分あるいは電流値それぞれが、前記第二記憶部に記憶され、前記複数箇所に対応づけられた前記所定値以上であるかどうかを判断する燃料電池システム。 - 請求項5に記載の燃料電池システムにおいて、
前記第二記憶部に記憶された複数の前記所定値は、変更可能である燃料電池システム。 - 請求項4乃至6のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記第二記憶部には、前記燃料電池の運転時間と前記所定値の経時変化が記憶され、
前記判断部は、前記第二記憶部に記憶された前記燃料電池の運転時間と前記所定値の経時変化との関係から、前記固体高分子電解質膜に対し、前記励起用振動磁場を印加した際の前記所定値を取得し、前記周波数の差分あるいは、電流量が前記所定値以上であるかどうかを判断する燃料電池システム。 - 請求項4乃至7のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記出力部は、前記燃料電池の駆動を制御する制御部を有し、
前記制御部では、前記判断部の判断結果に基づいて前記燃料電池の駆動を制御する燃料電池システム。 - 請求項1乃至8のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記小型RFコイルで取得された前記核磁気共鳴信号に基づいて、前記固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒の量を算出する第二算出部と、
前記固体高分子電解質膜における前記周波数の差分を測定する第一測定モードと前記固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒の量を測定する第二測定モードとを切り替える切替部と、
をさらに備え、
前記第一測定モードにあるとき、前記第一算出部が前記周波数の差分あるいは電流量を算出し、
前記第二測定モードにあるとき、前記第二算出部が、前記小型RFコイルで取得された前記核磁気共鳴信号に基づく前記固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒の量の算出を実行する燃料電池システム。 - 請求項1乃至9のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記小型RFコイルが、パルス状の前記励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するFID信号を取得し、
前記第一算出部が、前記FID信号の実部および虚部を取得する燃料電池システム。 - 請求項1乃至9のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記小型RFコイルが、
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
を含むパルスシーケンスで、前記励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するエコー信号を取得し、
前記第一算出部が、前記エコー信号の実部および虚部を取得する燃料電池システム。 - 請求項1乃至11のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部と、
前記小型RFコイルで取得した核磁気共鳴信号を検出する信号検出部と、
共振回路と、
を有し、
前記共振回路は、前記信号検出部および前記RFパルス生成部に接続され、
前記共振回路は、前記小型RFコイルと、容量素子と、前記小型RFコイルと前記容量素子とを接続する同軸ケーブルとを有する燃料電池システム。 - 請求項1または2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池は、前記燃料極側および前記酸化剤極側に、集電体とともに形成された導電性のセパレータを有し、
このセパレータは、複数の溝部と前記溝部を隔てる複数のリブとが形成され、前記溝部によって反応ガスの流路を構成し、
前記小型RFコイルは、複数設けられ、前記小型RFコイルの計測領域が、前記固体高分子電解質膜表面側からの平面視において、前記リブと前記溝部との境界線を含むように、前記リブの両側にそれぞれ配置され、
前記第一算出部では、各小型RFコイルの位置に対応した前記周波数の差分を算出するとともに、前記リブの一方の側に配置された第一の小型RFコイルの位置に対応した前記周波数の差分と、前記第一の小型RFコイルに隣接し、前記リブの他方の側に配置された第二の小型RFコイルの位置に対応した前記周波数の差分との差を算出する燃料電池システム。
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