JP5046203B6 - 測定装置およびこれを備える燃料電池、ならびに測定方法 - Google Patents

測定装置およびこれを備える燃料電池、ならびに測定方法 Download PDF

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本発明は、測定装置およびこれを備える燃料電池、ならびに測定方法に関し、特に、膜中のプロトン性溶媒量の分布を局所的に測定する技術に関する。
膜等の機能材料においては、材料中の溶媒量がその材料の性能を支配することがある。このような材料の設計開発にあっては、溶媒量の分布を局所的に計測することが重要な技術的課題となる。こうした機能材料の例として、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜が挙げられる。
固体高分子電解質膜を備える燃料電池においては、運転中、セパレータに形成された流路溝から、燃料および酸化剤として、水蒸気を含むガスが供給される。燃料および酸化剤の供給により、固体高分子電解質膜中の水分量には分布が生じ、また、分布状態が経時的に変化する。こうした燃料電池の運転効率を向上させるためには、固体高分子電解質膜の湿潤状態を的確に把握して、燃料および酸化剤の供給を制御することが重要となる。
以上、燃料電池の場合を例に挙げたが、膜中に含まれるプロトン性溶媒量の分布をその場で局所的に把握することができれば、材料の性能評価に有用である。
ここで、試料の特定箇所のプロトン性溶媒量を局所的に測定する技術として、従来、特許文献1に記載のものがある。同文献には、試料の特定箇所に対して局所的にマルチエコー法を適用して、1H−NMRにより緩和時定数を測定し、試料の特定箇所のプロトン性溶媒量を局所的に測定する技術が記載されている。この技術によれば、NMRの測定結果を利用して物質中の特定箇所の局所的プロトン性溶媒量を比較的短時間で測定することができる。
また、試料のNMR測定に関する他の従来技術としては、特許文献2および3に記載のものがある。
特許文献2には、U字磁石とソレノイドコイルを用いて試料のNMR測定を行うことが記載されている。
また、特許文献3には、高分子膜の水分分布測定装置が記載されている。この方法では、高分子膜のMRI画像を取得して、水分分布を取得する。
国際公開第2006/030743号パンフレット 特開昭54−127785号公報 特開2004−170297号公報 Tsushima S他2名、「Magnetic resonance imaging of the water distribution within a polymer electrolyte membrane in fuel cells」、ELECTROCHEMICAL AND SOLID-STATE LETTERS、7 (9)、A269-A272、2004年 竹中啓恭、「固体高分子電解質水電解技術とその応用」、ソーダと塩素、Vol.37、pp.323−337(1986)
ここで、膜表面の一部からプロトン性溶媒が膜中に厚さ方向と面方向に拡散していく時のプロトン性溶媒の分布を計測することができれば、膜の特性評価に有用である。また、たとえば上述の燃料電池の固体高分子電解質膜では、電池運転時における運転状態の最適制御に有用である。
燃料電池の固体高分子電解質膜では、湿潤ガス中の水(プロトン性溶媒成分)が、セパレータの溝部に対向している領域から膜中に拡散していく。膜のプロトン性溶媒量は、湿潤ガスからの水分供給と、燃料ガスと酸化剤とが反応して生成される水(プロトン性溶媒成分)によって調整されている。燃料電池のセパレータ内では、入口と出口の間に燃料ガスと酸化剤の濃度に分布があり、さらには、触媒の活性状態などによっても、膜で生成される水(プロトン性溶媒成分)の量に空間的な分布がある。また、膜の周囲に湿潤ガスを流すことによって、膜中のプロトン性溶媒量を調整する場合でも、湿潤ガスの入口と出口ではプロトン性溶媒の濃度に差があり、セパレータ流路内でもプロトン性溶媒の濃度の空間的な分布が生ずる。この結果、膜のプロトン性溶媒量には空間的な分布が形成されてしまう。
そこで、このような膜のプロトン性溶媒量分布をできるだけなくすような膜の開発を行ったり、最適なプロトン性溶媒量で燃料電池を運転できるように供給する湿潤ガスのプロトン性溶媒の濃度を制御することが必要となる。
このためには、膜のプロトン性溶媒量の空間分布を計測するための装置が必要とされるが、上述した従来の測定装置は、膜の特定箇所からプロトン性溶媒が膜中に拡散する際の膜中のプロトン性溶媒量を計測するのに、必ずしも適した構成とはなっていなかった。
本発明によれば、
核磁気共鳴法を用いて膜中の特定箇所のプロトン性溶媒の量を局所的に測定する装置であって、
前記膜に対して静磁場を印加する永久磁石と、
前記膜の一部に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するエコー信号を取得するRFコイルと、
前記エコー信号の強度から、前記膜の特定箇所における前記プロトン性溶媒の量を算出する溶媒量算出部と、
を備え、
前記永久磁石に、前記プロトン性溶媒を含む流体が流れる流路溝が設けられ、
前記膜が、前記永久磁石の流路形成面に平行に設けられる、測定装置が提供される。
また、本発明によれば、
流路溝が形成された永久磁石の流路形成面に平行に膜を配置して、核磁気共鳴法を用いて前記膜中の特定箇所のプロトン性溶媒の量を局所的に測定する方法であって、
前記永久磁石の前記流路溝に前記プロトン性溶媒を含む流体を流しつつ、永久磁石により前記膜に対して静磁場を印加し、前記静磁場におかれた前記膜の一部に対し、RFコイルを用いて励起用振動磁場を複数回順次印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応する複数のエコー信号を取得する第1ステップと、
前記複数のエコー信号の強度から、前記膜の特定箇所における前記プロトン性溶媒の量を求める第2ステップと、
を含む、測定方法が提供される。
本発明においては、流路形成面を有する特定の形状の永久磁石を用いるため、膜に静磁場を印加するとともに、流路溝にプロトン性溶媒を流して膜中のプロトン性溶媒量に分布を形成することができる。そして、プロトン性溶媒量の分布が形成された膜の一部にRFコイルを用いて励起用振動磁場を印加してエコー信号を取得することにより、膜中のプロトン性溶媒の分布を検出することができる。
また、膜が永久磁石の流路形成面と平行に配置されるため、特定形状の永久磁石とRFコイルとを用いた測定を行う際の測定箇所の位置あわせを確実に行うことができる。
よって、本発明によれば、たとえば、流路溝を流れるプロトン性溶媒が膜内に供給されたり、逆に、膜内からプロトン性溶媒が排出されたりする状態において、局所的な膜内のプロトン性溶媒の量がその場で測定できる。
また、膜に静磁場を印加するとともに、流路溝にプロトン性溶媒を流して膜にプロトン性溶媒を供給したり、逆に膜から溶媒を排出したりして、膜が所望のプロトン性溶媒量になるように調整することができる。その際、膜内のプロトン性溶媒量が空間的に均一になっているのか、空間的な分布が形成されているのかを確認するために、RFコイルを用いて膜の一部に励起用振動磁場を印加して、エコー信号を取得し、プロトン性溶媒量の分布を得ることができる。
また、膜の面内方向のプロトン性溶媒の拡散挙動を評価することが可能となるため、たとえば燃料電池の固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒の分布を評価するシミュレーション装置等の膜の評価装置にも好ましく適用することができる。また、後述するように、本発明の測定装置をたとえば燃料電池内に組み込むこともできる。
なお、本発明によれば、永久磁石の流路溝にプロトン性溶媒を含む流体を流しながら測定を行い、エコー信号を取得することができるが、プロトン性溶媒を含む流体を流路溝に流すことは本発明において必須ではなく、流体を流さない状態で測定を行ってもよい。プロトン性溶媒としては、たとえば、水や、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。
また、本明細書において、「エコー信号」は、励起用振動磁場に対応するとともにT緩和時定数の算出が可能なNMR信号として機能する信号であればよい。
また、本明細書において、「静磁場」は、エコー信号およびT2緩和時定数の取得を安定的に行うことが可能な程度に時間的に安定な磁場であれば、完全に安定な磁場でなくてもよく、その範囲内で多少の変動があってもよい。
本発明の測定装置において、前記溶媒量算出部が、前記エコー信号の強度から、T2緩和時定数を算出し、算出した前記T2緩和時定数から、前記膜の特定箇所における前記プロトン性溶媒の量を算出してもよい。
また、本発明の測定方法において、第2ステップが、前記エコー信号の強度から、T2緩和時定数を算出するステップと、前記膜中のプロトン性溶媒量とT2緩和時定数との相関関係を示すデータを取得し、該データとT2緩和時定数を算出する前記ステップで算出された前記T2緩和時定数とから、前記プロトン性溶媒の量を求めるステップと、を含んでいてもよい。
2緩和時定数からプロトン性溶媒量を算出することにより、装置構成に依存する測定値の校正操作をさらに簡素化することができる。
ここで、永久磁石の表面近傍においては、静磁場の大きさは、当該表面の法線方向に沿って変化する。また、永久磁石の表面に流路を設けた場合、流路形成面の上部において、静磁場の大きさに、流路を有しない場合とは異なる空間的な分布が生じる。膜の測定における共鳴周波数は、測定箇所における静磁場の強度に依存して変化するため、エコー信号を確実に取得するためには、永久磁石と膜の測定箇所との相対位置を確実に調整するとともに、膜中の測定箇所に励起用振動磁場を確実に形成することが重要となる。
永久磁石と膜との間隔をさらに精密に調整する観点では、たとえば、永久磁石の前記流路溝が、互いに平行に配置された複数の溝部を含む構成としてもよい。こうすることにより、測定対象がたわみやすい膜である場合にも、複数の溝部の間に形成された凸部(流路形成面)により、流路形成面から特定の間隔で、膜の一方の面を支持することができる。よって、流路形成面の放線方向についての膜と流路形成面との間隔を特定の大きさに規制した状態で保ち、膜を流路形成面の近傍に安定的に保持することができる。なお、このとき、膜の一方の面が、永久磁石の流路形成面に直接接触していてもよいし、流路形成面と膜との間に、非磁性材料により構成された間隔調整部材が介在する構成となっていてもよい。
また、本発明において、前記RFコイルが、前記流路形成面内方向であって前記溝部の延在方向に垂直な方向の振幅を有する前記励起用振動磁場を形成してもよい。このようにすれば、流路形成面の上部の領域のうち、特に以下の(i)および(ii)の領域に、流路形成面に平行な面内における静磁場強度が一様な領域を形成することができる。
(i)隣接する前記溝部に挟まれた領域であって、流路形成面の延在方向に沿った領域、および
(ii)単一の溝部の上部の領域であって、溝部の延在方向に沿った領域。
上記(i)では、溝部の延在方向に垂直な断面内における静磁場が極大となるため、上記(i)の領域は、流路形成面に平行な面内で溝部の延在方向の静磁場の変化が小さい領域である。また、上記(ii)では、溝部の延在方向に垂直な断面内における静磁場が極小となるため、上記(ii)の領域は、流路形成面に平行な面内で溝部の延在方向の静磁場の変化が小さい領域である。
よって、上記(i)または(ii)を測定領域とすることにより、局所的なプロトン性溶媒量の測定をさらに精度よく行うことができる。また、静磁場強度が一様な領域を複数形成すれば、多点測定を正確に行う観点でもさらに好適である。
上記(i)または(ii)を測定領域とする際には、たとえば前記RFコイルが、一対のコイル部を含むとともに、前記一対のコイル部に挟まれた領域に前記励起用振動磁場を形成し、前記永久磁石の前記流路形成面の上部から見たときに、前記一対のコイル部に挟まれた領域が、単一の前記溝部の形成領域内または隣接する前記溝部に挟まれた領域内に含まれる構成とすることができる。
このうち、上記(i)を測定領域とする場合、永久磁石の流路形成面、RFコイルおよび膜の位置ずれをさらに確実に抑制する観点では、前記RFコイルが、第一直線領域を含む第一コイル部と、第二直線領域を含む第二コイル部とを連結した平面型コイルであって、前記第一コイル部と前記第二コイル部とは、導線が逆巻きであって、前記第一直線領域および前記第二直線領域が、前記溝部の延在方向に平行に配置され、前記永久磁石の前記流路形成面の上部から見たときに、前記第一直線領域と前記第二直線領域との間に挟まれた領域が、隣接する前記溝部に挟まれた領域内に含まれる構成としてもよい。
永久磁石の流路形成面の上部にRFコイルの直線領域を配置することにより、流路溝形成面に平行な平面内における静磁場強度が一様な領域を計測領域とすることができる。また、流路形成面の上部に直線領域を配置することにより、直線領域を流路形成面で直接または間接的に支えることができるため、流路形成面と直線領域との間隔のずれをより一層抑制し、プロトン性溶媒量測定をさらに精度よく行うことができる。
また、上記(ii)を測定領域とする場合、前記RFコイルが、第一直線領域を含む第一コイル部と、第二直線領域を含む第二コイル部とを連結した平面型コイルであって、前記第一コイル部と前記第二コイル部とは、導線が逆巻きであって、前記第一直線領域および前記第二直線領域が、前記溝部の延在方向に平行に配置され、前記永久磁石の前記流路形成面の上部から見たときに、前記第一直線領域と前記第二直線領域との間に挟まれた領域が、単一の前記溝部の形成領域内に含まれる構成としてもよい。
溝部の上部の領域では、図3(b)を参照して後述するように、流路形成面の法線方向において、流路形成面から特定の距離で静磁場強度が極大となる。静磁場強度が極大となる領域を測定領域とすることにより、測定時の静磁場の変動をより一層抑制することができるため、プロトン性溶媒量をより一層正確に測定することができる。
また、永久磁石の流路形成面、RFコイルおよび膜の位置ずれをより一層確実に抑制する観点では、前記RFコイルが、前記永久磁石の前記流路形成面と前記膜との間に配置され、前記永久磁石の前記流路形成面と前記平面型コイルとの間、および前記平面型コイルと前記膜との間に、非磁性材料により構成された特定の厚さの間隔調整部材が配置されていてもよい。
本発明によれば、上述した本発明の測定装置を備える、燃料電池が提供される。この燃料電池は、たとえば固体高分子電解質膜を膜として含んでもよい。このとき、固体高分子電解質膜の局所的なプロトン性溶媒量を測定することができるため、固体高分子電解質膜中のプロトン性溶媒の分布を直接求めることができる。
特に、本発明の測定装置においては、永久磁石の膜との対向面に流路溝が設けられているため、たとえば燃料電池の燃料極または酸化剤極に対向して設けられたセパレータの少なくとも一部を測定装置の永久磁石で構成することができる。これにより、燃料電池全体の装置構成を簡素化しつつ、燃料電池の電極に燃料または酸化剤、さらには水蒸気を供給しつつ、固体高分子電解質膜中の局所的なプロトン性溶媒量を測定することができる。
この構成において、前記永久磁石の前記流路形成面が、当該燃料電池の燃料極に対向配置されるとともに、前記流路溝に燃料ガスが供給されてもよいし、前記永久磁石の前記流路形成面が、当該燃料電池の酸化剤極に対向配置されるとともに、前記流路溝に酸化剤ガスが供給されてもよい。
以上説明したように本発明によれば、流路形成面を有する特定形状の永久磁石により膜に静磁場を印加し、静磁場に置かれた膜の一部に対してRFコイルが励起用振動磁場を印加して、これに対応する複数のエコー信号を取得するため、膜中のプロトン性溶媒量に分布を形成するとともに、その分布状態を的確に検出することができる。
また、流路溝に、燃料または酸化剤とプロトン性溶媒とを含む流体を流すことで、膜中のプロトン性溶媒量を調整し、これに対応する複数のエコー信号を取得して、膜中のプロトン性溶媒量の空間分布状態を的確に検出することができる。
これにより、永久磁石の流路溝にプロトン性溶媒を含む流体を流しつつ、膜中の局所的なプロトン性溶媒量をその場で測定することができる。
また、膜の平面方向へのプロトン性溶媒量の拡散特性を評価することができる。
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
以下の実施形態では、核磁気共鳴(NMR)法を用いて膜中のプロトン性溶媒量を算出する。
NMR法では、磁場中に置かれた原子核のスピン共鳴現象により、核磁化の運動をNMR信号として検出することで、原子数密度や緩和時定数を取得することができる。原子数密度に対応する物理量として、たとえば、高分子電解質膜内の含水量が挙げられる。また、緩和時定数としては、たとえば、T1、T2緩和時定数があり、CPMG法を用いれば、含水量に強く依存したT2(CPMG)緩和時定数が得られる。以下、CPMG法を用い、励起用振動磁場を高周波パルスシーケンスとして与える場合を例に説明する。
また、本発明の測定装置は、流路溝を有する特定形状の永久磁石と、励起用振動磁場を印加するRF検出コイル(単に「RFコイル」とも呼ぶ。)を備える。そこで、以下においては、まず、第一の実施形態および第二の実施形態において、測定装置を構成する永久磁石およびRFコイルの具体例を示す。そして、第三の実施形態において、上記永久磁石およびRFコイルを組み合わせた測定装置の具体的構成を説明する。さらに、第四の実施形態において、第三の実施形態に記載の測定装置を備える燃料電池の具体例を示す。
(第一の実施形態)
本実施形態では、第三の実施形態で用いられる永久磁石の構成を説明する。
図1(a)および図1(b)は、本実施形態の永久磁石の構成を示す図である。図1(b)は、図1(a)のA−A'断面図である。
なお、図1(a)および図1(b)に、永久磁石113の形状および寸法の一例を示したが、永久磁石113の形状および寸法は、図示したものには限られない。図1において、特に断りのない場合、寸法の単位はmmである。なお、図2は、図1に示した寸法で作製した永久磁石を示す図である。
図1および図2に示した永久磁石は、磁性材料からなり、プロトン性溶媒量の測定装置において、計測対象となる膜に静磁場を印加する部材である。永久磁石113の材料として、たとえばNEOMAX社製NEOMAX(登録商標)等のネオジウム、鉄、ボロン系材料が挙げられる。
なお、図1(a)および図1(b)では、永久磁石113が、複数の磁性材料からなるブロックが接合されてなる構成を例示したが、永久磁石113が単一のブロック、からなり接合部を有しない構成であってもよい。
永久磁石113には、流路形成面が設けられ、流路形成面に、プロトン性溶媒を含む流体が流れる流路溝101が設けられている。測定対象となる膜は、永久磁石113の流路形成面に平行に設けられる。永久磁石113は、膜の法線方向に前記静磁場を印加する。
以下の説明において、永久磁石113の流路形成面は、凸部103の頂面に対応し、流路溝101に含まれる溝部は、凹部105に対応する。
永久磁石113の流路形成面は、連続して交互に設けられた複数の凹部105および凸部103により構成された凹凸面を含む。複数の凸部103および複数の凹部105は、いずれも互いに平行に延在している。凸部103および凹部105は、いずれも、特定の一方向(図中x方向)に直線状に延在している。
また、複数の凸部103の頂面は、いずれも同一平面内に位置しており、複数の凹部105の底面は、いずれも凸部103の頂面に平行な同一の平面内に位置している。図1(a)では、凸部103の頂面および凹部105の底面が、いずれもxy平面に水平な面である場合が例示されている。
また、A−A'断面において、複数の凸部103の幅(y方向)および複数の凹部105の幅は、いずれも略等しい。
このような構成の永久磁石113を空間内に配置すると、凸部103の上部および凹部105の上部に、流路形成面に平行な面内(図中xy平面)方向の静磁場強度が一様な領域が形成される。
このうち、凸部103の上部においては、流路形成面に平行な面内における静磁場強度が一様な領域が、凸部103の延在方向に沿って形成されるとともに、凸部103の幅方向に、特定の幅にわたって形成される。
また、凹部105の上部においても、流路形成面に平行な面内における静磁場強度が一様な領域が、凹部105の延在方向に沿って形成されるとともに、凹部105の幅方向に、特定の幅にわたって形成される。
これらの領域は、膜の局所的なNMR計測を行う際に、計測領域として好適に用いられる。
以下、凸部103および凹部105の上部に、これらの延在方向に沿って一様な静磁場の平面が形成されることをさらに具体的に説明する。
本発明者は、図2に示した永久磁石を用いて、静磁場強度の空間分布を評価した。計測装置として、ガウスメータ(KANETEC製TM−501)を用いた。静磁場強度はz方向成分のみを計測した。図3、図4および図5に、計測した静磁場強度(z方向成分)のz軸方向(流路形成面の法線方向)の位置、y軸方向(溝部の断面方向)の位置およびx軸方向(溝部の延在方向)の位置の分布を示した。ここでは、図2に示した永久磁石の5つの凸部の中央列の中心をy=0mmとした。
図3(a)および図3(b)は、静磁場強度H0(z方向成分)のz軸方向の位置分布の測定結果を説明する図である。また、図4(a)および図4(b)は、静磁場強度H0(z方向成分)のy軸方向の位置分布の測定結果を説明する図である。
図3(b)および図4(b)より、凸部103(y=0mm)の上部の領域では、磁石表面(z=0mm)で磁場強度が最も強く、磁石から離れるほど、つまりzが大きくなるほど磁場強度が減少することがわかる。一方、凹部105(y=6.35mm)の上部の領域では、磁場強度はz=5〜6mm程度で極大となり、それ以降では磁石から離れるほど磁場強度は減少する。
また、永久磁石113を用いた測定において、z方向の磁場強度の急激な変動を抑制する観点では、流路形成面の凹部105の上部の領域において、高さが凹部105の深さの1/4以上の位置、好ましくは1/3以上の位置を測定領域とすることができる。また、測定領域の高さの上限に特に制限はないが、たとえば図3(b)より、凹部105の深さの1.5倍程度の高さまでについては、z方向の静磁場の急激な変動を抑制することができる。
また、図3(b)より、凹部105の上部には、磁場強度が極大となる領域が形成される。磁場強度が極大となる領域は、流路溝101を有しない永久磁石の平面上には形成されず、流路溝101を有する永久磁石113に特有の現象である。凹部105の上部の磁場強度が極大となる領域の近傍、たとえば凹部105の深さの1/3以上3/2以下の領域の高さの領域では、流路形成面に水平な面内方向における静磁場強度の変化量がさらに小さいため、膜のNMR測定を行う際に、測定位置の位置ずれによる測定値の変化をより一層抑制することができる。
また、図3(b)より、磁石から離れた位置、たとえばz>10mmであっても、磁場強度は0.2〜0.3Tesla程度である。後述する実施例で示すように、この程度の磁場強度であれば、NMR計測は充分に可能である。
また、図4(b)より、zの位置によらず、凸部103の中心軸(y=0mm)と凹部105の中心軸(y=6.35mm)の位置で、磁場強度はそれぞれ極大値および極小値となる。この二つのy位置の近傍では磁場が平坦になっており、本実施形態では、この領域がNMR計測を行う位置となる。
図5(a)〜図5(c)は、静磁場強度H0(z方向成分)のx軸方向の位置分布の測定結果を説明する図である。図5(a)は、凸部103および凹部105の延在方向に対する永久磁石113の断面を示し、図5(b)は、凸部103および凹部105の延在方向に垂直な永久磁石113の断面を示している。
また、図5(c)は、静磁場強度H0(z方向成分)のx軸方向の位置分布を示す図である。つまり、図5(c)は、溝方向の磁場強度を示す。図5(c)より、凸部103の上部および凹部105の上部のいずれについても、磁場強度はこれらの延在方向に沿ってほぼ一様であることがわかる。また、NMR測定の際の膜の核磁気共鳴周波数が、溝部の延在方向、つまり凸部103および凹部105の延在方向には一様であることがわかる。
以上の結果より、たとえば図6に示した第一領域107および第二領域109をNMR測定領域とするように膜およびRFコイルを配置することにより、測定時の静磁場強度を適宜選定でき、さらに静磁場の空間分布も適宜選定できることで、計測したい核磁気共鳴周波数と計測領域を調整でき、装置と計測試料に合わせたより一層高い精度でのNMR計測が可能となる。
図6は、本実施形態の永久磁石113でNMR計測がしやすい第一領域107および第二領域109を示す斜視図である。図6において、第一領域107は、y=0mm近傍の凸部103上部の領域であり、第一領域107は、凸部103の延在方向に沿って形成されている。また、第二領域109は、y=6.35mm近傍の凹部105の上部の領域であり、凹部105の延在方向に沿って形成されている。
図6に示したように、永久磁石113の流路形成面の上部から見たときに、流路形成面に平行な面内における静磁場強度が一様な領域(第一領域107および第二領域109)は、凸部103の上部および凹部105の上部に、それぞれ、円筒形の領域として形成される。
なお、凹部105の延在方向の断面視において、第一領域107および第二領域109の幅は、図4(b)に示したように、z方向の位置に応じて変動するものの、たとえば第一領域107については、凸部103の中心(極大点)から両側に凸部103の幅の1/4程度の領域については、静磁場の空間的な不均一度が小さい領域とすることができる。また、第二領域109についても、凹部105の中心(極小点)から両側に凹部105の幅の1/4程度の領域については、静磁場の空間的な不均一度が小さい領域とすることができる。
また、本実施形態の永久磁石113は、凹凸面を備える形状であり、この凹凸面を膜に平行に対向配置してNMR測定が行われる。このため、たとえば永久磁石113をセパレータ(ガス流路部)として燃料電池に組み込むことが可能となる。永久磁石113を燃料電池のセパレータとして用いることにより、固体高分子電解質膜等の燃料電池の電解質層のプロトン性溶媒量の測定が可能となる。なお、永久磁石113を有する測定装置を備えた燃料電池の構成例については、第四の実施形態でさらに詳細に説明する。
なお、本実施形態においては、永久磁石113の流路形成面に、複数の凹部105(溝部)が独立に設けられた構成を例示したが、流路溝101の形状は、断面視において、複数の凸部103と凹部105とが繰り返し設けられたものであればよく、平面視においては、複数の溝部が連通している構成であってもよい。複数の溝部が連通している場合にも、図3〜図6を参照して前述した断面形状を有する永久磁石であれば、図3〜図6に示した静磁場分布に準ずる静磁場分布が形成されるため、膜中のプロトン性溶媒量の分布の測定に用いる永久磁石として用いることができる。
また、本実施形態においては、流路溝に含まれる複数の流部が互いに平行に延在している構成を例示したが、流路の平面形状および平面配置はこれには限られない。
(第二の実施形態)
本実施形態では、第三の実施形態の測定装置に用いられるRFコイルの構成を説明する。なお、以下の説明では、NMR測定対象の膜が固体高分子電解質膜である場合を例に説明する。
第一の実施形態において図6を参照して前述したように、プロトン性溶媒量の測定装置に用いられる永久磁石113においては、凸部103頂面および凹部105底面に垂直な方向(z方向、図中上向き)に静磁場H0が形成される。また、凸部103および凹部105の上部の領域に、これらの延在方向に沿って、NMR計測をさらに容易に行いやすい領域が形成される。
そこで、本実施形態においては、RFコイルとして、第一領域107または第二領域109に励起用振動磁場を形成するように構成された平面コイルを用いる。以下、平面型コイルが、静磁場に垂直な方向に励起用振動磁場を形成する、具体的には、流路形成面内方向であって溝部の延在方向に垂直な方向の振幅を有する励起用振動磁場を形成する場合を例に説明する。
図8は、平面型コイルの構成を示す図である。図8に示した平面型コイル114は、一対のコイル部(第一コイル部119、第二コイル部121)を含むとともに、一対のコイル部に挟まれた領域に励起用振動磁場を形成する。また、平面型コイル114は、たとえば、永久磁石113の流路形成面の上部から見たときに、一対のコイル部に挟まれた領域が、単一の溝部の形成領域内または隣接する溝部に挟まれた領域内に含まれる配置で用いられる。
なお、図8では、第一コイル部119が、第一直線領域123を含み導線が右巻きに巻かれたコイル部であり、第二コイル部121が、第二直線領域125を含み導線が左巻きに巻かれたコイル部である例を示したが、各コイル部の導線の巻き方はこれには限られない。第一直線領域123および第二直線領域125に同じ向きに電流が流れれば、これらの直線領域の間に、直線領域に垂直でコイル面に平行な励起用振動磁場が形成される。
平面型コイル114は、さらに具体的には、Double−D型(別名、8の字コイル、または、バタフライコイルとも呼ばれる。)である。Double−D型コイルは、導線を半円型に巻き、二つのコイルを向かい合わせにした形状であって、二つの半円の弦が直線部分に対応し、弦同士が互いに平行に配置される。
なお、図8には、具体的な平面型コイル114の寸法とLC共振回路が示されている。このコイルの共振周波数は、たとえば13.07MHzである。また、製作したコイルのクロリティファクターQ値は25である。図示した平面型コイル114の寸法は、図1に示した永久磁石113の寸法に合わせて設計した例であり、この寸法には限られない。
また、図9は、図8の設計に基づき作製したコイルを示す図である。
Double−D型コイルのように、互いに平行な二つの直線領域を有するコイル部を組み合わせた構成の平面型コイル114では、第一直線領域123と第二直線領域125との間の領域、つまり二つの半円型のコイルの対称軸の周辺に振動磁場H1が形成される。後述する実施例の解析結果に示されるように、この対称軸の周辺が平面型コイル114の検出領域(測定領域)となる。このため、平面型コイル114の検出領域に、図6に示した永久磁石113の二つの第一領域107または第二領域109を重ね合わせれば、静磁場H0と振動磁場H1とが垂直となるため、一対のコイル部の対称軸付近の領域は、NMR計測を行うのにさらに好ましい領域である。
なお、平面型コイル114により形成される振動磁場の空間分布については、後述する実施例でさらに詳細に説明する。
本実施形態の平面型コイル114を第一の実施形態と組み合わせて用いることにより、静磁場が面内で一様な領域(第一領域107、第二領域109)を形成しつつ、これらの領域に励起用振動磁場を確実に形成することができる。そして、第一領域107または第二領域109の上部に膜を配置して、第一領域107または第二領域109の上部の領域を測定領域としてエコー信号を取得することにより、膜のNMR測定の精度を向上させることができる。
また、平面型コイル114のような平面型コイルは、複数積層してもかさばらないため、膜の厚さ方向の多点測定にも適した構造である。永久磁石113の流路形成面の上部からみたときに、複数の平面型コイル114を重ねて配置すれば、膜の面内の特定箇所における厚さ方向のプロトン性溶媒量の分布を測定することができる。また、一つの平面型コイル114を用いて、膜の厚さ方向について異なる位置の測定を行うこともできる。NMR計測における共鳴周波数は静磁場強度によって変わり、この磁石では、膜の厚さ方向に磁場強度が変化していき、これに対応して共鳴周波数も変わっていくことを利用して、共鳴周波数の相違によって膜の厚さ方向の計測位置を選定してNMR計測することができる。この共鳴周波数の相違によって、NMR信号の干渉も抑制できる。
また、第一領域107または第二領域109内に複数の平面型コイル114を並べて配置すれば、同じ静磁場内での多点測定が可能となるため、膜の面内方向での分布の測定や、膜が特定の凹部105と対向する領域について、プロトン性溶媒量を複数回計測する場合にも適した構成となっている。
また、流路形成面に平行な平面内の静磁場の大きさは、凸部103の上部と凹部105の上部とで異なるため、これらのそれぞれに平面型コイル114を配置すれば、信号の干渉をさらに効果的に抑制することができる。
また、第四の実施形態で後述するように、永久磁石113を燃料電池のセパレータとして用いる場合、高分子電解質膜とセパレータ(ガス拡散層はセパレータ側)との間に、RF検出コイルを挟み込むことが望ましい。
この点、ソレノイド型コイルのような円筒形では、立体的な形状であるために、その隙間に挟み込むことはできない。
これに対し、RF検出コイルが平面状(シート状)であれば、容易にその隙間に挟み込むことができる。本実施形態において、RFコイルとして平面型コイル114を用いることにより、永久磁石113を燃料電池のセパレータとして用いて固体高分子電解質膜を測定する場合にも、燃料電池内に組み込むことが容易で、燃料電池全体の大型化を抑制することができる。
なお、以上においては、平面型コイル114が、二つの半月型のコイル部を有するDouble−D型コイルである場合を例示したが、平面型コイル114は、第一直線領域123を備える第一コイル部119および第二直線領域125を備える第二コイル部121を含み、これらのコイル部の導線が逆巻きの構成であればよく、コイル部の平面形状は半月型に限られない。たとえば、二つのコイル部の平面形状が、正方形、矩形、三角形等の多角形であってもよい。
また、平面型コイル114は、膜の一部に励起用振動磁場を印加する構成であれば、その寸法に特に制限はないが、たとえば測定対象の膜より小さくすることができる。また、平面型コイル114は、たとえば永久磁石113の流路形成面よりも小さくすることができる。さらに具体的には、永久磁石113の溝部の延在方向に対する断面視において、平面型コイル114の幅を、永久磁石113の凸部103と凹部105の幅の合計よりも大きく、凸部103、凹部105および凸部103の幅の合計より小さくしてもよい。こうすれば、平面型コイル114を永久磁石113の流路形成面と膜との間に配置する際に、平面型コイル114と永久磁石113および膜とのz方向の間隔をより一層確実に規制することができる。
(第三の実施形態)
本実施形態は、第一の実施形態に記載の永久磁石113および第二の実施形態に記載のRFコイル(平面型コイル114)を備える測定装置に関する。
図10は、本実施形態の測定装置の構成を示す図である。図10に示した測定装置100は、核磁気共鳴法を用いて膜中の特定箇所のプロトン性溶媒量を局所的に測定する装置である。以下、プロトン性溶媒が水の場合を例に説明する。
測定装置100は、
測定対象の膜115に対して、特定方向に静磁場を印加する永久磁石113、
膜115に対して、静磁場に垂直な方向に励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に対応するエコー信号を取得する、平面型コイル114、および
エコー信号の強度から、T緩和時定数を算出し、算出した前記T緩和時定数から、膜115中の特定箇所におけるプロトン性溶媒量を算出する溶媒量算出部(溶媒量算出部124)
を備える。
永久磁石113は、第一の実施形態で上述したように、磁性材料により構成される。膜115は、永久磁石113の流路形成面に平行に配置される。また、永久磁石113は、膜115の厚さ方向に静磁場を印加する。この静磁場が印加された状態で励起用高周波パルスが膜115に印加され、T2緩和時定数の測定がなされる。
平面型コイル114は、励起用高周波パルスを印加する。平面型コイル114は、さらに具体的には、第二の実施形態で前述したDouble−D型RF検出コイルである。なお、図10では、平面型コイル114の二つの直線領域を、凹部105の上部に配置する例を示したが、平面型コイル114の配置はこれには限られず、たとえば凸部103の上部に配置してもよい。
また、図11は、図10に示した測定装置100において、永久磁石113、平面型コイル114および膜115の配置をさらに詳細に示す断面図である。図11では、膜115が固体高分子電解質膜117である場合が例示されている。
平面型コイル114は、永久磁石113の流路形成面の上部に配置される、たとえば永久磁石113の流路形成面(凹凸面)と固体高分子電解質膜117との間に配置される。
また、図11に示したように、測定装置100においては、永久磁石113の凸部103と平面型コイル114との間、および平面型コイル114と固体高分子電解質膜117との間に、非磁性材料により構成された特定の厚さの間隔調整部材(第一のスペーサ127、第二のスペーサ129)が配置されている。永久磁石113が作る静磁場H0の方向と、Double−D型コイル(平面型コイル114)が作る振動磁場H1の方向は垂直の関係にある。
また、Double−D型RF検出コイルでは、固体高分子電解質膜117とのz方向の距離を変えるとエコー信号強度が変わる。これは、振動磁場H1の強度分布とコイルの受信感度が距離に依存して変わるためである。たとえば、本発明者の検討によれば、実施例で後述するように、図9に示したDouble−D型コイルにおいて、最大エコー信号強度が得られる距離は約1mmのときである。振動磁場H1の強度分布を予め実験的に取得しておくことにより、図11に示したように、Double−D型検出コイルと固体高分子電解質膜117との位置を決めることができる。
図11に示したように、測定装置100では、永久磁石113と平面型コイル114との間に特定の厚さの第一のスペーサ127を配置することにより、これらを特定の間隔に保持する。また、平面型コイル114と固体高分子電解質膜117との間に第二のスペーサ129を配置することにより、これらを特定の間隔に保持する。これらのセパレータを用いて永久磁石113の凹凸面、平面型コイル114設置面および固体高分子電解質膜117の相対位置(z方向)を調整することにより、固体高分子電解質膜117の厚さ方向の計測位置を精密に調整して、測定領域において、エコー信号の受信感度を向上させることができる。このため、固体高分子電解質膜117の局所的なT2測定を高感度で精度よく行うことができる。
また、固体高分子電解質膜117のたわみをさらに確実に抑制する観点では、平面型コイル114が配置されていない凸部103の上部に、第三のスペーサ135を設けるとともに、第三のスペーサとともに、第三のスペーサ135と固体高分子電解質膜117との間に形成された空隙137に、ビーズ状の間隔調整部材(不図示)を充填してもよい。こうすれば、永久磁石113と固体高分子電解質膜117との間隔をさらに精密に調整し、その状態で固体高分子電解質膜117を保持することができる。このとき、第三のスペーサ135の厚さは、第一のスペーサ127、第二のスペーサ129および平面型コイル114の厚さの合計よりも小さくしておき、さらに具体的には、第一のスペーサ127と第二のスペーサ129の厚さの合計と同程度の厚さとする。
また、図11に示した配置は、たとえば燃料電池用固体高分子電解質膜(PEM)をセパレータ(永久磁石113)で押さえ、両者の隙間にDouble−D型RF検出コイル(平面型コイル114)を設置する態様に容易に適用できるため、測定装置100は、燃料電池の固体高分子電解質膜の局所的な水分測定にも好適に用いられる。このように、本実施形態の測定装置100は、たとえば固体高分子電解質膜等の膜の局所的な水分量の評価装置として用いることができる。
なお、図11に示した配置で各種試料のNMR計測を行った結果および算出されたT2(CPMG)値については、実施例で後述する。
図10にもどり、測定装置100の構成をさらに説明する。
平面型コイル114は、単数でも複数でもよい。複数とすれば、膜115中の水分量分布を測定することが可能となる。この場合、膜115の表面に沿って2次元的に配置すれば、膜表面における2次元水分量分布を求めることができる。また、膜115中に3次元的に配置すれば、膜中における3次元水分量分布を求めることができる。
平面型コイル114により印加される振動磁場(励起用振動磁場)は、RF発振器102、変調器104、RF増幅器106、パルス制御部108、スイッチ部161および平面型コイル114の連携により生成される。すなわち、RF発振器102から発信した励起用高周波RFは、パルス制御部108による制御に基づいて変調器104にて変調され、パルス形状となる。生成されたRFパルスはRF増幅器106により増幅された後、平面型コイル114へ送出される。平面型コイル114は、このRFパルスを膜の一部の特定箇所に印加する。そして、印加されたRFパルスのエコー信号を平面型コイル114が検出する。このエコー信号は、プリアンプ112により増幅された後、位相検波器110へ送出される。位相検波器110は、このエコー信号を検波し、A/D変換器118へ送出する。A/D変換器118はエコー信号をA/D変換した後、演算部130へ送出する。
スイッチ部161は、平面型コイル114、RF信号生成部およびエコー信号検出部を接続する分岐部に設けられている。
RF信号生成部は、RF発振器102、変調器104およびRF増幅器106からなり、平面型コイル114に励起用振動磁場を発生させるRF信号を生成する。エコー信号検出部は、プリアンプ112、位相検波器110およびA/D変換器118から構成され、平面型コイル114により取得されたエコー信号を検出するとともに、エコー信号を演算部130に送出する。
スイッチ部161は、平面型コイル114とRF信号生成部(RF増幅器106)とが接続された第1状態、および、平面型コイル114とエコー信号検出部(位相検波器110)とが接続された第2状態を切り替える機能を有する。つまり、スイッチ部161は、このような「送受信切り替えスイッチ」の役目を果たす。
上記分岐部にスイッチ部161を設けることにより、平面型コイル114から膜115に印加される励起用高周波パルス信号の損失を低減し、この結果、90°パルスおよび180°パルスのパルス角を正確に制御することが可能となる。パルス角の正確な制御は、パルスエコー法における補償効果を確実に得る上で重要な技術的課題であり、本実施形態では、かかる課題をスイッチ部161の配設により解決している。
また、局所計測のための平面型コイル114は微小化し、NMR受信時の低ノイズ化が、計測の確からしさを確実なものとするためには重要な因子となる。NMR信号を受信する際に、プリアンプ112に入り込むノイズには、RF波の送信系が主にあり、励起用パルスを増幅するRF増幅器106からの「RF波の漏れ」や「大電力増幅器が発するノイズ」がある。NMR信号の受信時には、送信側から漏れてくる励起波をスイッチ部161で確実に遮断し、低ノイズでNMR信号を受信する必要がある。本実施形態では、かかる課題についても、スイッチ部161の配設により解決している。
以上、励起用高周波パルスの印加およびエコー信号の検出について述べたが、これらは、小型コイルを含むLC回路(図8)により実現することができる。図8においては、共振回路のコイル部(インダクタンス部)は、前述したように小型RFコイルとしている。核磁気共鳴(NMR)法は、磁場中に置かれた原子核のスピン共鳴現象により核磁化の運動をNMR信号として検出することで原子数密度とスピン緩和時定数を計測することができる。1Teslaの磁場中でのスピン共鳴周波数は約43MHz(この周波数帯をRadio frequencyと呼ぶ)であり、その周波数帯を高感度に選択的に検出するために、図8に示すようなLC共振回路が用いられる。
平面型コイル114が膜115に印加する励起用高周波パルスは、たとえば、
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス
からなるパルスシーケンスとすることができる。T緩和時定数と膜中の水分量との相関関係を明確に把握するためには、振動磁場の与え方を適切にすることが重要となる。上記のようなパターンとすることにより、T緩和時定数と膜中の水分量との相関関係を明確に把握することが可能となる。
ここで、90°パルスが第1位相にあり、n個の180°パルスが、第1位相と90°ずれた第2位相にあるパルスシーケンスとすれば、T緩和時定数と膜中の水分量との明確な相関関係を安定的に取得することができる。
なお、平面型コイル114を用いる場合、上記(a)および(b)の励起パルス強度の調整が困難となる場合がある。たとえば、測定対象の領域、つまり平面型コイル114で囲まれた領域のうち、中央部と周縁部とで励起のされかたに差異が生じてしまい、全体を均一の励起角度となるように、つまり(a)および(b)における励起磁場の強度比が一定となるように励起することが困難となる場合がある。(a)および(b)における励起角度比がばらつくと、正確なT2測定が困難となる。
そこで、このような場合には、パルス制御部108が、上記パルスシーケンスにくわえ、90°パルス(a)より時間τだけ前の時刻に、180°パルスを印加するステップを加えた別のシーケンスを実行するようにする。そして、これら2つのシーケンスに対応する180°パルス(b)の減衰曲線の挙動を比較することにより、90°パルス(a)および180°パルス(b)の励起パルス強度が正確であるか否かを判別できる。この結果、装置の異常等により励起パルス強度がずれた場合でも、測定を行う前の段階で異常を検知でき、測定値をより正確なものとすることができる。
以上、膜周辺の装置構成について説明した。つづいて、エコー信号の処理ブロックについて説明する。
演算部130は、エコー信号の強度から、T緩和時定数を算出し、算出した前記T緩和時定数から、膜中の特定箇所における前記水分量を算出する。
演算部130の内部では、まず、データ受付部120によりエコー信号が取得され、次いで、緩和時定数算出部122によるT緩和時定数が算出される。
緩和時定数が算出されると、そのデータは溶媒量算出部124へ送出される。溶媒量算出部124は、検量線テーブル(記憶部)126にアクセスし、膜に対応する検量線データを取得する。検量線テーブル126には、膜の種類毎に、膜中の水分量とT緩和時定数との相関関係を示す検量線データが格納されている。
溶媒量算出部124は、取得された検量線データと、上記のようにして算出されたT緩和時定数とを用い、膜中の水分量を算出する。算出された水分量は、出力部132によりユーザに提示される。提示の型式は様々な態様が可能であり、ディスプレイ上の表示、プリンタ出力、ファイル出力等、特に制限はない。
なお、本実施形態において、膜内部、膜表面または膜近傍に平面型コイル114を複数個配置することもできる。これにより、膜の複数箇所に対して、励起用振動磁場の印加およびこれに対応するエコー信号の取得を行うことができるように構成されている。溶媒量分布算定部128は、膜中の複数箇所における水分量に基づき、膜中の水分量分布を算出する。出力部132は、この水分量分布を出力する。
上記装置において、励起用高周波パルスは、CPMG法によるものを用いることが好ましい。こうすることにより、T緩和時定数と膜中の水分量との明確な相関関係を安定的に取得することができる。
そこで次に、測定装置100においてCPMG法により膜115のプロトン性溶媒(たとえば、水分)量を測定する方法を説明する。
この測定方法は、流路溝が形成された永久磁石113の流路形成面に平行に膜115を配置して、核磁気共鳴法を用いて膜115中の特定箇所のプロトン性溶媒の量を局所的に測定する方法であって、以下のステップを含む。
まず、永久磁石113の流路溝に上記プロトン性溶媒を含む流体を流しつつ、永久磁石113により膜115の厚さ方向に静磁場を印加する(S102)。この状態で、静磁場におかれた膜115の一部に対し、RFコイル(平面型コイル114)を用いて励起用振動磁場を複数回順次印加するとともに、励起用振動磁場に対応する複数のエコー信号を取得する(S104、以上第1ステップ)。そして、これらのエコー信号の強度から、T2緩和時定数を算出する(S106)。そして、膜115中のプロトン性溶媒量とT2緩和時定数との相関関係を示すデータを取得し、該データと第2ステップで算出されたT2緩和時定数とから、膜115中の特定箇所におけるプロトン性溶媒量を求める(S108、以上第2ステップ)。その後、結果を出力する(S110)。
ステップ104では、膜に対し励起用高周波パルスを印加するが、この励起用高周波パルスは、複数のパルスからなるパルスシーケンスとし、これに対応するエコー信号群を取得するようにすることが好ましい。こうすることにより、T緩和時定数を正確に求めることができる。パルスシーケンスは、以下の(a)、(b)からなるものとすることが好ましい。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス
緩和時定数と膜中の水分量との相関関係を明確に把握するためには、振動磁場の与え方を適切にすることが重要となる。上記のようなパターンとすることにより、T緩和時定数と膜中の水分量との相関関係を明確に把握することが可能となる。上記のパルスシーケンスを用いる方法によれば、90°励起パルスのτ時間後に、その2倍の励起パルス強度を持つ180°励起パルスを印加して、磁化ベクトルMの位相がxy平面(回転座標系)上で乱れていく途中でその位相の乱れを反転させ、2τ時間後には位相を収束させてT減衰曲線上にのるエコー信号を得ることができる。
ここで、90°パルスが第1位相にあり、n個の180°パルスが、第1位相と90°ずれた第2位相にあるパルスシーケンスとすれば、T緩和時定数と膜中の水分量との明確な相関関係を安定的に取得することができる。CPMG法は、このようなパルスシーケンスを与える方法の一例である。
CPMG法では、まず、磁化ベクトルを90°パルスによってY軸の正方向に傾斜させた後、τ時間後に「Y軸方向」に外部から180°励起パルスを照射して、磁化ベクトルを「Y軸を対称軸として」反転させる。この結果、2τ時間後には磁化ベクトルがY軸の「正の方向」上で収束し、大きな振幅を持つエコー信号が観測される。さらに、3τ時間後に磁化ベクトルに「Y軸方向」に外部から180°励起パルスを照射して、再度、Y軸の「正の方向」上で収束させて、4τ時間後に大きな振幅を持つエコー信号を観測する。さらに、同様の2τ間隔で、180°パルスを照射し続ける。この間、2τ,4τ,6τ,・・・の偶数番目のエコー信号のピーク強度を抽出し、指数関数でフィッティングすることで、CPMG法によるT(横)緩和時定数を算出することができる。
ステップ106では、スピンエコー法を利用することによりT緩和時定数を測定する。
スピンエコーを使用した際のエコー信号の強度SSEは、TR>>TEの場合には以下の式(A)で表される。
ここで、ρは位置(x,y,z)の関数としての対象核種の密度分布、TRは90°励起パルスの繰り返し時間(100msから10s程度)、TEはエコー時間(2t、1msから100ms程度)、AはRFコイル検出感度やアンプ等の装置特性を表す定数である。
減衰曲線上にのるエコー信号群と、上記式(A)から、T緩和時定数を求めることができる。
詳細に説明すると、2τ間隔で、180°パルスを照射し続け、2τ,4τ,6τ,・・・の偶数番目のエコー信号のピーク強度を取得する。この複数のエコー信号のピーク強度は時間とともに、徐々に小さくなる。時間とともに減衰する複数のエコー信号の強度を、指数関数でフィッティングし、上記式(A)から、T緩和時定数を求めることができる。
ステップ108では、緩和時定数から水分量を算出する。膜中の水分量とT緩和時定数とは、正の相関を持つ。水分量の増加につれてT緩和時定数が増大する。この相関関係は、膜の種類や形態等により異なるので、あらかじめ、水分濃度がわかっている測定対象膜と同種の膜について検量線を作成しておくことが望ましい。すなわち、水分量が既知の複数の標準試料膜に対して水分量とT緩和時定数との関係を測定し、この関係を表す検量線をあらかじめ求めておくことが望ましい。このようにして作成した検量線を参照することで、T緩和時定数測定値から膜中の水分量を算出することができる。
膜全体のT緩和時定数は、最も単純な式で表した場合には、以下の式で表される。
1/T(全体)=(吸着した水の量)/(吸着した水のT')+(自由な水の量)/(自由な水のT'')・・・(1)
観測者はこのT(全体)を計測することになる。空間を満たす自由な水が増えるとT(全体)が大きくなることから、T(全体)の測定結果より高分子中の水の量を求めることが可能となる。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態においては、永久磁石113および平面型コイル114として特定の形状のものを用いるとともに、これらと膜115とを特定の位置関係で配置している。これにより、まず、永久磁石113の凹部105にプロトン性溶媒を含む流体を流して膜115中のプロトン性溶媒量に分布を形成し、形成した分布を平面型コイル114で測定することができる。また、膜115中のプロトン性溶媒量を調整し、膜115中のプロトン性溶媒量の空間分布を平面型コイル114で測定することもできる。
よって、測定装置100によれば、たとえば膜115中の水分量分布をその場で測定することができる。また、膜115の面内方向への水の分散挙動を評価することもできる。
また、膜115の測定領域が第一領域107および第二領域109中に含まれるようにとることにより、膜115の局所的な水分量測定をより一層高精度で再現性よく行うことができる。特に、凸部103の上部の領域である第二領域109については、図3(b)を参照して前述したように、永久磁石113の流路形成面に垂直な方向(z方向)に、静磁場が極大となる位置が存在する。このような位置で測定を行えば、測定領域の位置ずれによる測定値の変動を抑制し、さらに正確な測定が可能となる。
たとえば、本実施形態においては、高分子電解質のような薄いシート状の膜115に対し、計測したい位置や場所のみに磁場を印加し、磁石と膜との隙間に平面状のRF検出コイルを用いて局所の含水量を計測できる。また、局所計測がMRI計測に比べて短時間で行うことができる。
また、測定装置100では、NMRセンサのコンパクト化が可能となるため、装置の設置箇所の制限が緩和される。また、機器の低価格化が実現できる。また、平面型コイル114と永久磁石113を組み合わせた一体型の装置とすれば、両者の位置合わせが不要で、簡便に計測ができる。
また、本実施形態においては、永久磁石113を小型化することができる。ここで、図10および図12においては、永久磁石113の凹凸面が膜115よりも大きい構成を例示したが、永久磁石113は、膜115の測定箇所に静磁場を形成することができればよく、凹凸面が膜115よりも大きい場合には限られない。永久磁石として小型磁石を用いて、膜の一部にのみ磁場を印加し、その磁場を印加した領域のみから小型RF検出コイルによってNMR信号を受信することができれば、たとえば、以下の利点を生むことが可能となる。
第一に、膜の寸法は任意であり、磁石寸法に制限されない。
第二に、磁石形状を任意にできる。よって、たとえば燃料電池に適用したときに、ガス流路部を磁石に組み込んだ構造とすることができる。
第三に、薄いシート状の高分子電解質膜に適合した磁石とRF検出コイルを用いることで、計測したい位置での膜の局所含水量が計測できる。
第四に、局所計測が可能で、かつ、MRI計測に比べて短時間計測が可能である。
第五に、使用できる装置材質の制限が緩和され、装置の全て非磁性材料にする必要はないため、実機に近い燃料電池にも搭載できる可能性がある。
第六に、NMRセンサーのコンパクト化、設置の容易さ、機器の低価格化が実現できる。
このような新しい永久磁石113を備えたNMR計測装置の開発により、NMRセンサーの適用範囲を拡大させることが可能となる。
なお、本実施形態における測定装置の構成は、たとえば図12のようにしてもよい。図12は、永久磁石113および平面型コイル114を備える測定装置の別の構成を示す図である。
(第四の実施形態)
本実施形態では、第三の実施形態に記載の測定装置100(図10)を備える固体高分子電解質型燃料電池について説明する。
燃料電池の固体高分子電解質膜の水分量をNMR法により測定しようとしたとき、被計測対象の膜全体を覆うような磁石を用いる場合には、燃料電池のすべての構成部品を非磁性材料で製作する必要があり、NMR/MRI計測のための装置を製作する必要がある。しかし、その製作は耐熱性・耐久性の面から困難である。
また、膜全体を覆うような磁石を用いる場合には、大きな磁石も実機の燃料電池に組み込んでモニタリング装置として用いることとなる。しかし、磁石が大きすぎて搭載は不可能であり、実際的なセンサーにはならない。
これに対し、第三の実施形態で前述した測定装置100は、永久磁石113の凹部105をガス流路部として用いることができる構造となっている。
そこで、本実施形態では、永久磁石113を燃料電池のセパレータの一部として燃料電池装置に組み込んで、膜115つまり固体高分子電解質膜117の水分量測定を可能とする。
測定装置100を燃料電池に組み込むことにより、燃料電池の高分子電解質膜の含水量を常時モニタリングし、高分子電解質膜が高い伝導度を常に保つことができるように制御することができるようになる。このため、燃料電池の発電効率を高く維持するように、燃料電池の運転を制御することが可能となる。
図45は、本実施形態の燃料電池の構成を示す図である。
図45に示した燃料電池131は、測定装置100、セル133と、セル133に酸化剤ガス(たとえば酸素や空気)を供給する酸化剤ガス供給部32、セル133に燃料ガス(たとえば水素ガス)を供給する燃料ガス供給部33、酸化剤ガス供給部32からセル133に向かって供給される酸化剤ガスおよび燃料ガス供給部33からセル133に向かって供給される燃料ガスに水蒸気を混合する水蒸気混合部34、水蒸気混合部35ならびに制御部36を有する。
図46は、図45に示した燃料電池131のセル133の構成を示す断面図である。
セル133は、測定対象の試料である固体高分子電解質膜117と、固体高分子電解質膜117の両側に設けられた触媒層311Aおよび触媒層311Bと、多孔質の拡散層312Aおよび拡散層312Bと、セパレータ313Aおよびセパレータ313Bとを有する。
触媒層311Aと、拡散層312Aとで、燃料極314が構成され、触媒層311Bと拡散層312Bとで、酸化剤極315が構成される。
セパレータ313Aには、燃料ガスの流路となる溝が形成されている。セパレータ313Aの流路溝には、プロトン性溶媒を含む流体として、水蒸気を含む燃料ガスが供給される。また、セパレータ313Bには、酸化剤ガスの流路となる溝が形成されている。セパレータ313Bの流路溝には、プロトン性溶媒を含む流体として、水蒸気を含む酸化剤ガスが供給される。
燃料電池131において、燃料極または酸化剤極に対向して設けられたセパレータ、つまりセパレータ313Aまたはセパレータ313Bのうち、少なくとも一方は、第一の実施形態で前述した永久磁石113から構成される。永久磁石113の流路形成面が、燃料電池131の燃料極に対向配置されて、凹部105に燃料ガスが供給されるか、または、燃料電池131の酸化剤極に対向配置されて、凹部105に酸化剤ガスが供給される。なお、セパレータ313Aまたはセパレータ313Bが永久磁石113からなる構成であってもよいし、永久磁石113がセパレータ313Aまたはセパレータ313Bの一部を構成していてもよい。
酸化剤ガス供給部32は、セル133に対して酸化剤ガスを供給する。また、燃料ガス供給部33は、セル133に対して燃料ガスを供給する。
酸化剤ガス供給部32とセル133との間には、水蒸気混合部34が設けられている。水蒸気混合部34では、水蒸気を発生させ、酸化剤ガス供給部32からセル133に向かって供給される酸化剤ガスに水蒸気を混合する。このようにして水蒸気と混合された酸化剤ガスが、セル133に供給される。
同様に、燃料ガス供給部33と、セル133との間にも、水蒸気混合部35が設けられている。この水蒸気混合部35では、水蒸気を発生させ、燃料ガス供給部33からセル133に向かって供給される燃料ガスに水蒸気を混合している。水蒸気と混合した燃料ガスは、セル133に送られる。
このように、水蒸気を酸化剤ガス、燃料ガスに混合することでセル133の固体高分子電解質膜117を湿潤させている。
セル133の固体高分子電解質膜117中の水分量の測定を行う場合には、測定装置100の複数の平面型コイル114を固体高分子電解質膜117の表面に接触させる。これにより、固体高分子電解質膜117中の水分量の測定を行うことができる。
制御部36は、測定装置100、水蒸気混合部34および水蒸気混合部35に接続されている。
制御部36では、測定装置100からの水分量の測定結果および、水分量の分布を取得し、この測定結果に基づいて、水蒸気混合部34および水蒸気混合部35で生成され、セル133に供給される水蒸気量を調整するように、水蒸気混合部34および水蒸気混合部35を制御する。
たとえば、セル133が発電を行っている場合には、燃料極314側で発生した水素イオンの移動に伴い、固体高分子電解質膜117中の水分が燃料極314側から酸化剤極315側に移動する。
また、酸化剤極315側での水素イオンと酸素ガスとの反応により水が生成する。そのため、固体高分子電解質膜117中、特に酸化剤極315側の水分量が過剰となることがある。水分量が過剰となると、セパレータ313Bの流路内に水が凝集し、酸化剤ガスの流れを妨げることとなり、発電効率が下がる可能性がある。
一方で、固体高分子電解質膜117に充分な水蒸気が供給されず、固体高分子電解質膜117が乾燥している状態になると、プロトン伝導性が低下し、セル133の発電効率が低下する。従って、固体高分子電解質膜117が乾燥状態となり、プロトン伝導性が低下することは好ましくない。
そこで、制御部36では、測定装置100から水分量の分布を取得するとともに、取得した分布における水分量の値が所定の範囲内にあるかどうか、すなわち、固体高分子電解質膜117が適度な湿潤状態となっているかどうか判断する。所定の範囲を超えると判断した場合には、制御部36は、水蒸気混合部34または水蒸気混合部35に対し、生成する水蒸気量を減らすように要求する。
一方、測定装置100から取得した水分量の分布における水分量の値が所定の範囲外であり、水分量が少ないと判断した場合には、制御部36は、水蒸気混合部34または水蒸気混合部35に対し、生成する水蒸気量を増やすように要求し、固体高分子電解質膜117の乾燥を防止する。
なお、本実施形態では、制御部36により、水蒸気混合部34および水蒸気混合部35双方の水蒸気生成量、およびセル133への水蒸気供給量を調整したが、これに限らず、たとえば、水蒸気混合部35の水蒸気生成量およびセル133への水蒸気供給量のみを調整してもよい。
これを利用すれば、内部に複数のRF検出コイルを設置することで、より内部の複数枚の高分子電解質膜のNMR計測を行うことが可能となる。たとえば後述の図7の配置とすることにより、一つの磁石で複数枚のPEMの含水量を計測することができる。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
燃料電池131では、永久磁石113をセパレータとして用いることができるため、永久磁石113の流路溝に燃料または酸化剤を流しながら、固体高分子電解質膜117の局所的な水分量分布を測定することができる。運転中の固体高分子電解質膜117中の水分量分布をその場で測定できるため、電池の運転効率を向上させる制御が可能となる。
たとえば、凹部105の上部における固体高分子電解質膜117中の水分量を測定すれば、燃料または酸化剤が膜中に供給される領域近傍における膜中の水分量をリアルタイムで測定できる。
また、凸部103の上部における固体高分子電解質膜117中の水分量を測定すれば、流路溝から供給されたプロトン性溶媒の拡散状態を把握することもできる。
また、高分子電解質膜のような薄いシート状の試料に対しては、電池の全体形状を大きく変更することなく、計測したい位置や場所のみに磁場を印加するRF検出コイルを設置できる必要がある。この点、本実施形態の燃料電池では、永久磁石113をセパレータとして用いることにより、固体高分子電解質膜117が、セパレータ表面に平行に配置されるとともにセパレータの近傍に配置される。このため、セパレータの流路形成面の近傍に形成される磁場中に配置された固体高分子電解質膜117の測定に適した構成となっている。また、RFコイルとして平面型コイル114を用いることにより、コイルを固体高分子電解質膜117の表面近傍の所定の位置に積層することが容易な構成となっており、セル133の厚さを大幅に変えることなく、水分量の測定装置を組み込むことが可能である。このように、燃料電池131においては、永久磁石113および平面型コイル114の構成が、薄いシート状の固体高分子電解質膜117に適合した構成となっており、計測したい位置での膜の局所含水量が計測可能となる。
また、本実施形態では、磁場が装置の一部にのみ印加されるために、使用できる装置材質の制限が緩和され、装置のすべてを非磁性材料にする必要はなく、実用化に適した構成となっている。
また、燃料電池131では、固体高分子電解質膜117の燃料極314側の表面、酸化剤極315側の表面それぞれに、平面型コイル114を当接させて、燃料極314側の表面近傍、酸化剤極315側の表面近傍の水分量をそれぞれ把握し、各電極の表面近傍の水分量と、発電効率との関係を把握することもできる。これにより、燃料極314側、あるいは、酸化剤極315側のどちらからの側の水蒸気の供給が、発電効率に有効であるかどうかを把握することも可能である。
さらに、本実施形態の燃料電池131は、セル133が長時間運転された際に生じる発電効率の低下の原因を探るための有用なデータを「高分子膜の含水量」という視点から提供することができる。
なお、本実施形態の燃料電池は、図7に示すように、複数のセルが積層されたスタック型であってもよい。スタック型の燃料電池の場合にも、永久磁石113を「ガス流路付永久磁石」つまりセパレータとすることができる。
図7は、固体高分子電解質膜117aおよび固体高分子電解質膜117bを含む複数のセルを備えたスタック型燃料電池の構成を示す断面図である。
図7では、永久磁石113が、最も外側のセパレータとして設けられている。永久磁石113は、燃料電池スタックの一番端のセル(固体高分子電解質膜117b)に対向して設けられており、永久磁石113の凸部103で固体高分子電解質膜117bを保持し、凹部105に燃料ガスまたは酸化剤ガスが流れる。なお、図7において、セパレータ111は、永久磁石113を有しない通常のセパレータである。
また、前述した図3(b)より、磁石から離れた位置(z>10mm)であっても、磁場強度は0.2〜0.3Tesla程度である。この程度の磁場強度であれば、NMR計測は充分に可能である。したがって、燃料電池スタックの一番端に磁石を置いたとしても、スタック内部にまで磁場は形成される。しかも、静磁場強度は距離が離れるに従って徐々に低下するため、共鳴周波数も磁石から離れるに従って低下していく。共鳴周波数がことなれば、複数のRFコイルでの励起パルスの干渉は生じにくくなる。
また、本発明の燃料電池の用途に特に制限はない。たとえば、実際に電池として用いるだけでなく、固体高分子電解質膜117の評価装置として用いてもよい。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、以上の実施形態において、測定装置100が平面型コイル114を複数備え、複数の平面型コイル114が、膜115の複数箇所に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、当該励起用振動磁場に対応するエコー信号を取得し、溶媒量算出部124が、膜115の複数箇所におけるプロトン性溶媒量を算出するように構成されていてもよい。膜115の複数箇所に平面型コイル114を配置してプロトン性溶媒量を測定することにより、膜115のプロトン性溶媒量の分布をさらに短時間で測定することが可能となる。このとき、図6を参照して前述した一つの第一領域107上または一つの第二領域109上に複数の平面型コイル114を配置すれば、膜厚方向における静磁場強度のずれを抑制し、より一層高精度な多点測定が可能となる。
また、以上の実施形態においては、CPMG法により取得されたエコー信号から緩和時定数T2を算出し、算出されたT2から膜中のプロトン性溶媒量を算出する場合を例に説明したが、実施例で後述するように、エコー信号の信号強度からプロトン性溶媒量を求めることも可能である。
なお、T2は、RFコイルの感度、アンプの倍率、フィルター特性等の装置構成に依存しないため、T2から膜中のプロトン性溶媒量を算出することにより、プロトン性溶媒量をさらに簡便に算出することができる。また、信号強度からプロトン性溶媒量を算出する際には、測定装置の構成に応じて、信号強度とプロトン性溶媒量とを対応づける校正曲線を予め実験により取得してもよい。
また、以上の実施形態において、たとえば、以下のようにすることも可能となる。
すなわち、磁石にガス流路部を付け、燃料電池のセパレータの一部として燃料電池装置に組み込みが可能なガス流路付磁石を用い、薄いシート状の高分子電解質膜に適合したDouble−D型RF検出コイルによって、計測したい位置(深度)での膜の局所含水量が計測できる。
また、ガス流路付磁石とDouble−D型コイルを燃料電池の計測したい位置や場所に設置して計測すれば、その場所のみに磁場を印加するだけでよい。これにより、磁場印加箇所以外の位置の装置は、非磁性材料で製作する必要がなくなるため、NMRセンサをより実際的な燃料電池装置に適用できる。
また、NMRセンサのコンパクト化、設置の容易さ、機器の低価格化が実現できる。
また、RF検出コイルと磁石を組み合わせた一体型の装置とすれば、両者の位置合わせが不要で、簡便に計測ができる。
また、このセンサを燃料電池に組み込めば、燃料電池の高分子電解質膜の含水量を常時モニタリングし、それが高い伝導度を常に保つことができるように制御することができるようになり、燃料電池の発電効率を高く維持することが可能となる。
また、以上の実施形態では、燃料電池の固体高分子電解質膜のプロトン性溶媒量を測定する場合を主として例示したが、測定対象の試料は、膜状のものであればよい。
また、試料は膜状であれば固体のものには限られず、たとえば、所定の厚さの空間内に充填されているプロトン性溶媒を含む液体であってもよい。また、試料は、固体高分子電解質等の膜からなるものには限られず、たとえば膜の一方の面または両面に、触媒層等の所定の層が形成されていてもよい。
(実施例1)
本実施例では、以下に示す試料A〜試料Cについて、図12に示した測定装置(第三の実施形態)を用いてCPMG法により試料のT(CPMG)値を計測した。
(試料A)液体試料(水)
(試料B)高分子電解質膜(PEM)
(試料C)電極・触媒付高分子電解質膜(MEA)
を用いた。なお、本実施例において、図2に示した永久磁石を用いた。永久磁石の材料は、NEOMAX社製NEOMAX−44Hとした。
(試料A)液体試料(水)
図13は、本実施例の試料を示す図である。試料の作製は、以下の手順で行った。まず、2枚のカバーガラス(寸法18mm×18mm、厚さ0.12mm)を0.5mmの隙間を空けて接着し、容器を製作した。その容器の中に水を注入して、容器を密閉した。水の部分の寸法は15mm×15mm×厚さ0.5mmである。以下、この試料を「0.5mm厚水試料」とも呼ぶ。
0.5mm厚水試料をPEMに見立て、図10に示した配置の固体高分子電解質膜(PEM)117の位置に置いた。図14(a)は、ガス流路付永久磁石の上にDouble−D型コイルが置かれ、その上に「0.5mm厚水試料」が置かれている様子を示す図である。
また、NMR計測に用いた装置を図14(b)に示した。磁石とコイルと試料(図14(a))は、図14(b)中左下の真鍮製電磁波シールド箱の中に入れて測定した。このシールドによって、外部からのノイズが遮断される。この装置を用いてCPMG計測を行った。
0.5mm厚水試料でCPMG計測によって得られたエコー信号を図15に示す。NMR計測のパラメータは次の値とした。90度励起パルスの繰り返し時間(TR)は5秒、90度励起パルスのダミー回数は4回、NMR信号の積算回数は64回、共鳴周波数は13.07MHzである。0.5mm厚水試料の温度は約25℃であった。
取得したエコー信号の中から、「偶数番目のエコー信号強度」のみを抽出し、それを対数プロットした様子を図16に示す。このデータを基にして、最小二乗法によって直線近似を行い、その直線の勾配からT2(CPMG)を算出した。この結果、T2(CPMG)は24msであった。
Double−D型RF検出コイルと0.5mm厚水試料の距離を0.5mm刻みで変えて、CPMG計測を行い、エコー信号強度との関係を求めた。その結果を図17に示す。
図17より、コイルと試料との距離(隙間)が1mmの時にエコー信号強度が最大となることがわかる。試料厚さが0.5mmであるから、距離が1mmという意味は、コイルから1.0mmから1.5mmの間に水試料があるということである。この距離は、Double−D型コイルの二つの半円状コイルの隙間の距離(1.2mm)に相当している。この結果から、Double−D型コイルでは、半月状コイルの隙間程度だけ離れた位置(深度)を計測でき、試料の少し内部を計測することができる。
本実施例より、Double−D型コイルでは、コイルの幾何学寸法に合わせて計測深度が変わることがわかる。よって、所望の計測深度に合わせたコイルを用いることで、高分子膜内の厚さ方向(深さ方向)分布を計測することが可能となる。
(試料B)高分子電解質膜(PEM)
高分子電解質膜(PEM)として、旭硝子株式会社製フレミオン(登録商標)を用いた。PEMの寸法は15mm×15mm×厚さ0.5mmである。膜は予め80℃の3%過酸化水素水、イオン交換水、1N塩酸、イオン交換水の順に各1時間浸して標準化処理をした。
実験直前にイオン交換水の中に浸されたPEMを取り出し、乾いたキムワイプ(登録商標)で水を拭き取り、適度に乾燥させてPEMの含水量を調整した。調整後は速やかに2枚のカバーガラス(寸法18mm×18mm、厚さ0.12mm)でPEMを挟み、ポリイミドフィルムで密封して乾燥させないようにした。図18にその様子を示す。PEMの質量を電子天秤で計測し、含水量がNMR計測の前と後で変化していないことを確認した。
PEMの含水量は、充分に乾燥させたPEMの質量を電子天秤で計測し、含水状態のPEMの質量も計測して、その質量増加分から算出した。
本実施例では、PEMの含水量を14.9[H2O/SO3 -+]と12.4[H2O/SO3 -+]と変えて行った。PEM試料そのものは同一試料であり、含水量のみが異なる状態である。
試料Aの「0.5mm厚水試料」での計測と同様に、PEMを図10に示した位置に置き、計測を行った。ガス流路付永久磁石の上にDouble−D型コイルを配置し、その上に「高分子電解質膜(PEM)」を置き、これを真鍮製のシールド箱に入れてCPMG計測を行った。
含水量が14.9[H2O/SO3 -+]のPEMを試料としてCPMG計測によって得られたエコー信号を図19に示す。NMR計測のパラメータは次の値とした。90度励起パルスの繰り返し時間(TR)は5秒、90度励起パルスのダミー回数は0回、NMR信号の積算回数は64回、共鳴周波数は13.07MHzである。高分子電解質膜(PEM)の温度は約25℃であった。
0.5mm厚水試料と同様の方法で、PEMで取得したエコー信号の中から、「偶数番目のエコー信号強度」のみを抽出し、それを対数プロットした様子を図20に示す。このデータを基にして、最小二乗法によって直線近似を行い、その直線の勾配からT2(CPMG)を算出した。この結果、T2(CPMG)は34msであった。
また、含水量が12.4[H2O/SO3 -+]のPEMでも同様の計測を行った。それぞれの含水量のPEMでCPMG計測を3回行い、算出したT2(CPMG)の値を図21に示した。直線は3回のT2(CPMG)値の平均値を基に結んだものである。
図21より、含水量が低下するほど、T2(CPMG)値が短くなることがわかる。
また、PEMの含水量が低下すると、エコー信号強度も低下した。二つの含水量のPEMから取得されたエコー信号強度と含水量の関係を図22に示す。ここで用いたエコー信号強度はCPMG計測で得られた2、4、6番目の三つのエコー信号強度の平均値である。信号強度のばらつきを抑えるためにこのような平均化操作を行った。
図21および図22より、PEMの含水量とエコー信号強度との定量的な関係が得られることがわかった。よって、エコー信号の強度を基にしてPEMの含水量を換算することもできる。
(試料C)電極・触媒付高分子電解質膜(MEA)
さらに、高分子電解質膜(PEM)の表面に電極兼触媒を付与した電極・触媒付高分子電解質膜(MEA)を試料としてT2(CPMG)値の取得実験を行った。
MEAは、非特許文献2を参考に行った。具体的には、旭硝子社製の高分子電解質膜に、アノード側にPtとIrを、カソード側にPtを無電解めっきして製作した。MEAの寸法は17mm×15mm角、500μm厚さである。
標準化処理されたMEAは実験直前にイオン交換水から引き上げ、キムワイプに押し付けて水を充分に拭き取った。実験直前のMEAの含水量は約15[H2O/SO3 -+]である。水を拭き取った後は速やかに2枚のカバーガラス(寸法18mm×18mm、厚さ0.12mm)でMEAを挟み、ポリイミドフィルムで密封して乾燥させないようにした。図23にその様子を示す。
試料Aの「0.5mm厚水試料」での計測と同様に、MEAを図10に示した位置に置き、計測を行った。ガス流路付永久磁石の上にDouble−D型コイルを配置し、その上に「電極・触媒付高分子電解質膜(MEA)」を配置した。これを真鍮製のシールド箱に入れてCPMG計測を行った。
MEAを試料としてCPMG計測によって得られたエコー信号を図24に示す。NMR計測のパラメータは次の値とした。90度励起パルスの繰り返し時間(TR)は5秒、90度励起パルスのダミー回数は0回、NMR信号の積算回数は64回、共鳴周波数は13.07MHzである。電極・触媒付高分子電解質膜(MEA)の温度は約25℃であった。
試料Aの0.5mm厚水試料と同様の方法で、MEAで取得したエコー信号の中から、「偶数番目のエコー信号強度」のみを抽出し、それを対数プロットした様子を図25に示す。このデータを基にして、最小二乗法によって直線近似を行い、その直線の勾配からT2(CPMG)を算出した。この結果、T2(CPMG)は41msであった。
以上より、試料を電極・触媒付高分子電解質膜(MEA)としても、妥当なT2(CPMG)値が計測できた。
よって、燃料電池内に実装できるように製作したガス流路付永久磁石とDouble−D型RFコイルを用いて、電極・触媒付高分子電解質膜(MEA)のCPMG計測ができ、算出されたT2(CPMG)値から高分子電解質膜内の含水量が推算できることがわかる。
以上のように、試料A〜試料Cのいずれについても、CPMG計測により、有意なT2(CPMG)値が算出できることが確認された。
なお、非特許文献1には、燃料電池の固体高分子電解質膜の含水量値は、4〜6[H2O/SO3 -+]程度であることが記載されていることから、たとえば2[H2O/SO3 -+]程度の含水量の変動を検出することができれば、燃料電池の固体高分子電解質膜の評価に好適に用いることができると考えられる。この点、本実施例の方法は、以上の測定結果より、固体高分子膜の含水量の変動を充分検出できる程度の検出感度を有することがわかる。
また、燃料電池の運転中にセパレータ流路内を流れる燃料ガスおよび酸化剤ガス中のプロトン性溶媒の単位体積あたりの濃度は、高分子電解質膜内のプロトン性溶媒の濃度に比べて非常に小さく、この結果、ガスからのエコー信号は無視できるほどに小さい。このため、永久磁石の流路溝にプロトン性溶媒を含むガスを流したとしても、流さない状態と同様の測定精度でT2(CPMG)計測ができる。
(実施例2)
本実施例では、Double-D型コイルが作る励起磁場分布Hxを理論解析し、CPMG法を用いた際のコイルが受信するエコー信号強度分布SSE_Detect(計測領域と同等)を定量的に算出した。特に、二つのD型コイルの間隔Lを変えたときに、NMR信号取得領域がコイルから離れていくことを確認した。また、間隔Lを調整することによって計測深度が変えられることを示した。
Double-D型コイルの幾何学形状は、実施例1で使用した形状とほぼ等しくし、直径D=12mm、3回巻き、二つのD型コイルの間隔はL=1.2mmとした。図26(a)および図26(b)は、本実施例で解析したDouble-D型コイルの構成を示す図である。なお、図26(a)には、1回巻きの場合のDouble-D型コイルの形状を示したが、実際の計算では、図26(b)に示したように、3回巻きとした。
形状パラメータとして、二つのD型コイルの間隔Lを0.6mm、1.2mm、1.8mmおよび2.4mmと変えて、コイルで受信されるNMR信号取得領域(計測領域)の変化を調べた。
(励起用振動磁場の形成領域の解析)
はじめに、図27に示した幾何学形状を有する3回巻きDouble-D型コイルの形成する励起磁場Hx(xp,yp,zp)を以下の仮定の下で解析した。
(i)コイルの線径はゼロとする(無限小の線径)。
(ii)導電時に表皮効果はないとする。線径をゼロとしたことから、コイルの表面のみで電流が流れる効果も無視したこととなる。
(iii)3回巻きコイルでは、図26(b)のように直径の異なる三つの円を同心円状に配置し、最大の円弧から順に1巻き目直線部導線の間隔をL1、2巻き目直線部導線の間隔をL2、3巻き目直線部導線の間隔をL3とした(L1>L2>L3)。
(iv)コイルは導線のみでできており、被覆膜は無視する。誘電率、透磁率は真空の値を使用する。
(v)試料(膜)は存在しない。空間全域で誘電率、透磁率は真空の値を使用する。
(vi)リード部(円形コイル以外の配線部)は無視する。
上記仮定の下、導電体に流れる電流Iが作る磁場Hをビオ・サバールの法則に基づいて算出した。説明のために、図28(a)および図28(b)に示した円形コイルを例に挙げて説明をする。なお、図28では、説明の便宜上、コイルの平面形状を円形としたが、解析では図26(b)に示した形状とした。
円形コイルが真空中(透磁率が4π×10-7N/A2)に置かれた場合に、円形コイルが位置(xp,yp,zp)に作る磁場H(xp,yp,zp)は式(2)で表される。
上記式(2)の座標系は図28に示した通りであり、式(2)中の記号の意味は以下の通りである。
H:位置rでの磁場の強さ[A/m](ベクトル)
r:空間中の点Pの位置(xp,yp,zp)[m](ベクトル)
r':コイル上の点Qの位置(xq,yq,zq)[m](ベクトル)
I:電流[A](スカラー)
t:電流が流れる方向を表す単位ベクトル(点Qでのコイルの形状を表す。図28において、点Qとx軸との角度をθとするとき、tはt=(sinθ,cosθ,0)である。)[−](ベクトル)
積分の意味:コイル全周に渡って線積分を行う。点Pに生ずる磁場は、コイル上にある点Qをコイルに沿って移動させ、各点Qの位置で作られる磁場をコイル全周に渡って積分する(総和を得る)ことで求められる。
Double-D型コイルの場合には、円弧部分と直線部分が組み合わされて構成されている。そこで、次のようにコイル形状を近似して、Double-D型コイルの形状とほぼ等しくした。
すなわち、Double-D型コイルの円弧部はこれを多数の区間に分割し、区間内では長さcL_ds[m]の直線で表されると近似した。その区間でのtは、角度θの増加に伴って滑らかに変化していくものとした。また、コイルの直線部は直線の要素として分割した。これによって、式(2)を数値的に計算することが可能となる。本実施例では一つの片側D型コイルを16の直線に分割し、曲線部も16の直線に分割した。この分割方法を外側の一巻き目、二巻き目、三巻き目(最内側)で同様にした。図29に、分割時のパラメータを示す。分割した要素の中心を点で記し、全体の形状を示したのが図26(b)である。
コイルに流れる電流Iを1A、L=1.2mmとして、図30に示した空間中のx方向磁場強度Hx(xp,yp,zp)を式(2)により数値解析した。yp=0mmのxz平面である。ただし、この計算ではコイル上は特異点となり計算できないために、コイル近傍の半径0.05mm以内の領域については計算対象外とした。図31は、3回巻きDouble-D型コイルの全体等高線を示す図である。また、図32は、x方向磁場強度のz位置分布Hx(zp)を示す図である。また、図34および図35は、それぞれ、図31および図32の直線導線部(図33)のみを拡大して示す図である。なお、図31および図34においては、コイルの断面を白丸(○)で示した。
図34および図35より、磁場強度が最も高くなる頂点の周辺で、一様とみなせる磁場が形成されることがわかる。この領域をDouble-D型コイルでの計測領域とするようにコイルを配置することにより、励起用振動磁場のばらつきを抑制し、より精度の高い計測が可能となる。計測領域はコイルから約0.6〜0.7mm程度離れた領域とすればよいことがわかる。
二つのD型コイルの間隔Lを0.6mm、1.2mm、1.8mmおよび2.4mmと変えて、同様の磁場解析を行った。図36(a)は、間隔Lが0.6mmの場合のコイル形状を示す図であり、図36(b)は、L=2.4mmの場合のコイル形状を示す図である。
磁場解析の一例として、二つのD型コイルの間隔Lが2.4mmの時の3回巻きDouble-D型コイルのx方向磁場強度分布Hx(xp,yp,zp)を図37に示す。また、図38は、Lが2.4mmの時x方向磁場強度のz位置分布Hx(zp)を示す図である。
図37および図38をL=1.2mmの場合の解析結果と比較すると、L=2.4mmとすることで、磁場強度が最大となり強度が一様となる計測領域がコイルから離れていることがわかる。
図39は、Double-D型コイルの二つのD型コイルの間隔Lを変えたときのx方向磁場強度のz位置分布Hx(zp)を示す図である。図39より、二つのD型コイルの間隔Lを大きくするほど、計測領域がコイルから離れていくことがわかる。
以上の解析結果より、Double-D型コイルでは、二つのD型コイルの間隔Lを調整することで、計測領域の深度を変えることができることが明らかになった。
(エコー信号強度分布の形成領域の解析)
次に、以上の磁場分布の解析結果を用い、「Double-D型コイルの信号受信感度」と、実験的な関係式に基づいた「核磁化の励起角度αと信号強度の関係」の両方を組み合わせて、以下の手順により表面コイルでの計測領域を算定した。
(i)Double-D型コイルの中心軸上でHx(0,0,zp)が最大となる位置での励起角度αを90度とした場合の励起角度分布α(xp,yp,zp)を理論的に解析した。
(ii)スピンエコー法でのエコー信号強度SSEが励起角度αとSSE=(sinα)3なる実験的な関係式を用いて、エコー信号強度分布SSE(xp,yp,zp)を算出した。この際、CPMG法とエコー法は同様であると実験結果から判断した。
(iii)Double-D型コイルの信号受信感度は、上述の磁場Hx(xp,yp,zp)に比例するとし、受信感度分布も考慮したエコー信号受信強度分布SSE,Detect(xp,yp,zp)を算出した。
図40は、Double-D型コイルの直径Dが12mm、3回巻きで二つのD型コイルの間隔がL=1.2mmの場合を解析して得られたエコー信号受信強度分布SSE,Detect(xp,yp,zp)を示す図である。図40においては、Double-D型コイルの中心部領域のみのxz平面を拡大して示した。図中には、Double-D型コイルの3本の直線部導線の断面を模式的に示した。模式的の意味は、導線の直径はゼロとして解析しているためである。
また、図40において、信号強度がおおよそ0.8以上となる領域を太線で囲んで示した。この太線で囲まれた領域でDouble-D型コイルにより主にエコー信号が取得され、この領域がこの場合のDouble-D型コイルでの計測領域とみなせる領域である。
図41は、図40のz軸上のエコー信号受信強度分布SSE,Detect(0,0,zp)を示す図である。この分布の場合には、信号強度がおおよそ0.8以上となる領域をDouble-D型コイルでの計測領域とみなせば、図41において太線で囲まれた領域と同じとなる。
また、図42は、Double-D型コイルの直径Dが12mm、3回巻きで二つのD型コイルの間隔がL=2.4mmの場合を解析して得られたエコー信号受信強度分布SSE,Detect(xp,yp,zp)を示す図である。図42においても、図40と同様に、Double-D型コイルの中心部領域のみのxz平面を拡大して示した。
また、図42においても、信号強度がおおよそ0.8以上となる領域を太線で囲んで示した。図42では、図40と比べて、信号強度がおおよそ0.8以上となる領域が広がると同時に、コイルから離れていくことがわかる。
また、図43は、図42のz軸上のエコー信号受信強度分布SSE,Detect(0,0,zp)を示す図である。図43中にもDouble-D型コイルでの計測領域と見なせる範囲を示した。図43においても、図41と比べて、計測領域が広がると同時に、コイルから離れていくことがわかる。
図44は、二つのD型コイルの間隔L=0.6mm、1.2mm、1.8mmおよび2.4mmと変えた場合のz軸上のエコー信号受信強度分布SSE,Detect(0,0,zp)を示す図である。
図44より、D型コイルの間隔Lを増加させるほど、縦軸の規格化されたエコー信号受信強度分布SSE,Detectが0.8以上となる領域は広がり、さらにそれが離れた位置へと移動していくことがわかる。これより、二つのD型コイルの間隔Lを調整することで、計測領域をコイルの近い位置から遠い位置へと変えることが可能であると言える。
以上の結果より、Double-D型コイルをたとえば燃料電池に設置する際に、間隔Lを変えた複数のコイルを設置し、送受信機から個々のコイルを切り替えて計測することで、様々な厚さ位置での含水量計測が実現できる。
なお、本実施例では、3回巻きコイルについて解析したが、実施例1で用いた5回巻きコイルについても、「コイルの束」としてみれば、コイルの束の幅は本実施例で用いたコイルとほぼ同様な形状となっている。この幅が同じ程度であれば、実施例1で用いた5回巻きのコイルと同様の磁場が形成されると考えてよい。
実施形態における永久磁石の構成を示す図である。 実施形態における永久磁石の構成を示す図である。 実施形態における永久磁石により形成される静磁場強度のz位置分布の測定結果を説明する図である。 実施形態における永久磁石により形成される静磁場強度のy位置分布の測定結果を説明する図である。 実施形態における永久磁石により形成される静磁場強度のx位置分布の測定結果を説明する図である。 実施形態における永久磁石により形成される静磁場を説明する斜視図である。 実施形態における燃料電池の構成を示す断面図である。 実施形態における平面型コイルの構成を示す図である。 実施形態における平面型コイルの構成を示す図である。 実施形態における測定装置の構成を示す図である。 実施形態の測定装置の永久磁石、平面型コイルおよび試料の配置を示す断面図である。 実施形態における測定装置の構成を示す図である。 実施例で用いた試料を示す図である。 実施例における測定装置を示す図である。 実施例におけるエコー信号の測定結果を示す図である。 実施例におけるエコー信号の測定結果を示す図である。 実施例におけるコイルと試料との距離とエコー信号強度との関係を示す図である。 実施例で用いた試料を示す図である。 実施例におけるエコー信号の測定結果を示す図である。 実施例におけるエコー信号の測定結果を示す図である。 実施例における試料の含水量とT2との関係を示す図である。 実施例における試料の含水量とエコー信号強度との関係を示す図である。 実施例で用いた試料を示す図である。 実施例におけるエコー信号の測定結果を示す図である。 実施例におけるエコー信号の測定結果を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルの構成を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルの構成を示す図である。 実施例における磁場の解析方法を説明する図である。 実施例における磁場の解析条件を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのx方向磁場強度のz位置分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルにより形成される磁場の等高線を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのx方向磁場強度のz位置分布を示す図である。 実施例における磁場の解析条件を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルにより形成される磁場の等高線を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのx方向磁場強度のz位置分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルの構成を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのx方向磁場強度分布Hxを示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのx方向磁場強度のz位置分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのx方向磁場強度のz位置分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのエコー信号受信強度分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのエコー信号受信強度のz位置分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのエコー信号受信強度分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのエコー信号受信強度のz位置分布を示す図である。 実施例におけるDouble-D型コイルのエコー信号受信強度のz位置分布を示す図である。 実施形態における燃料電池の構成を示す図である。 実施形態における燃料電池のセルの構成を示す図である。
符号の説明
32 酸化剤ガス供給部
33 燃料ガス供給部
34 水蒸気混合部
35 水蒸気混合部
36 制御部
100 測定装置
101 流路溝
102 RF発振器
103 凸部
104 変調器
105 凹部
106 RF増幅部
107 第一領域
108 パルス制御部
109 第二領域
110 位相検波器
111 セパレータ
112 プリアンプ
113 永久磁石
114 平面型コイル
115 膜
117 固体高分子電解質膜
117a 固体高分子電解質膜
117b 固体高分子電解質膜
118 A/D変換器
119 第一コイル部
120 データ受付部
121 第二コイル部
122 緩和時定数算出部
123 第一直線領域
124 溶媒量算出部
125 第二直線領域
126 検量線テーブル
127 第一のスペーサ
128 溶媒量分布算定部
129 第二のスペーサ
130 演算部
131 燃料電池
132 出力部
133 セル
135 第三のスペーサ
137 空隙
161 スイッチ部
311A 触媒層
311B 触媒層
312A 拡散層
312B 拡散層
313A セパレータ
313B セパレータ
314 燃料極
315 酸化剤極

Claims (15)

  1. 核磁気共鳴法を用いて膜中の特定箇所のプロトン性溶媒の量を局所的に測定する装置であって、
    前記膜に対して静磁場を印加する永久磁石と、
    前記膜の一部に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するエコー信号を取得するRFコイルと、
    前記エコー信号の強度から、前記膜の特定箇所における前記プロトン性溶媒の量を算出する溶媒量算出部と、
    を備え、
    前記永久磁石に、前記プロトン性溶媒を含む流体が流れる流路溝が設けられ、
    前記膜が、前記永久磁石の流路形成面に平行に設けられる、測定装置。
  2. 請求項1に記載の測定装置において、
    前記溶媒量算出部が、前記エコー信号の強度から、T2緩和時定数を算出し、算出した前記T2緩和時定数から、前記膜の特定箇所における前記プロトン性溶媒の量を算出する、測定装置。
  3. 請求項1または2に記載の測定装置において、
    前記永久磁石の前記流路溝が、複数の溝部からなり、これらの前記溝部が互いに平行に配置された、測定装置。
  4. 請求項3に記載の測定装置において、
    前記RFコイルが、前記流路形成面内方向であって前記溝部の延在方向に垂直な方向の振幅を有する前記励起用振動磁場を形成する、測定装置。
  5. 請求項4に記載の測定装置において、
    前記RFコイルが、一対のコイル部を含むとともに、前記一対のコイル部に挟まれた領域に前記励起用振動磁場を形成し、
    前記永久磁石の前記流路形成面の上部から見たときに、前記一対のコイル部に挟まれた領域が、単一の前記溝部の形成領域内または隣接する前記溝部に挟まれた領域内に含まれる、測定装置。
  6. 請求項3乃至5いずれかに記載の測定装置において、
    前記RFコイルが、第一直線領域を含む第一コイル部と、第二直線領域を含む第二コイル部とを連結した平面型コイルであって、
    前記第一コイル部と前記第二コイル部とは、導線が逆巻きであって、
    前記第一直線領域および前記第二直線領域が、前記溝部の延在方向に平行に配置され、
    前記永久磁石の前記流路形成面の上部から見たときに、前記第一直線領域と前記第二直線領域との間に挟まれた領域が、隣接する前記溝部に挟まれた領域内に含まれる、測定装置。
  7. 請求項3乃至5いずれかに記載の測定装置において、
    前記RFコイルが、第一直線領域を含む第一コイル部と、第二直線領域を含む第二コイル部とを連結した平面型コイルであって、
    前記第一コイル部と前記第二コイル部とは、導線が逆巻きであって、
    前記第一直線領域および前記第二直線領域が、前記溝部の延在方向に平行に配置され、
    前記永久磁石の前記流路形成面の上部から見たときに、前記第一直線領域と前記第二直線領域との間に挟まれた領域が、単一の前記溝部の形成領域内に含まれる、測定装置。
  8. 請求項6または7に記載の測定装置において、
    前記RFコイルが、前記永久磁石の前記流路形成面と前記膜との間に配置され、
    前記永久磁石の前記流路形成面と前記平面型コイルとの間、および前記平面型コイルと前記膜との間に、非磁性材料により構成された特定の厚さの間隔調整部材が配置された、測定装置。
  9. 請求項1乃至8いずれかに記載の測定装置において、前記プロトン性溶媒が水である、測定装置。
  10. 請求項1乃至9いずれかに記載の測定装置を備える、燃料電池。
  11. 請求項10に記載の燃料電池において、
    燃料極または酸化剤極に対向して設けられたセパレータを含み、
    前記セパレータが前記永久磁石を含む、燃料電池。
  12. 請求項11に記載の燃料電池において、
    前記永久磁石の前記流路形成面が、当該燃料電池の燃料極に対向配置されるとともに、前記流路溝に燃料ガスが供給される、燃料電池。
  13. 請求項11に記載の燃料電池において、
    前記永久磁石の前記流路形成面が、当該燃料電池の酸化剤極に対向配置されるとともに、前記流路溝に酸化剤ガスが供給される、燃料電池。
  14. 流路溝が形成された永久磁石の流路形成面に平行に膜を配置して、核磁気共鳴法を用いて前記膜中の特定箇所のプロトン性溶媒の量を局所的に測定する方法であって、
    前記永久磁石の前記流路溝に前記プロトン性溶媒を含む流体を流しつつ、永久磁石により前記膜に対して静磁場を印加し、前記静磁場におかれた前記膜の一部に対し、RFコイルを用いて励起用振動磁場を複数回順次印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応する複数のエコー信号を取得する第1ステップと、
    前記複数のエコー信号の強度から、前記膜の特定箇所における前記プロトン性溶媒の量を求める第2ステップと、
    を含む、測定方法。
  15. 請求項14に記載の測定方法において、
    前記第2ステップが、
    前記エコー信号の強度から、T2緩和時定数を算出するステップと、
    前記膜中のプロトン性溶媒量とT2緩和時定数との相関関係を示すデータを取得し、該データとT2緩和時定数を算出する前記ステップで算出された前記T2緩和時定数とから、前記プロトン性溶媒の量を求めるステップと、
    を含む、測定方法。
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