JP2014098716A - 測定装置および燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】静磁場印加部113の前記一対の磁極113A,113B間には、一対の磁極113A,113Bにより形成される静磁場H0の方向が前記試料の表裏面に直交するように、前記試料511が配置される。また、平面RFコイル114は、一つの軸の周りを囲むように環状に巻かれたものであり、その軸Axが前記試料表裏面と直交するように前記試料511に対して配置されるとともに、平面RFコイル114の軸Axは、前記静磁場印加部113により形成される静磁場H0方向と平行である。さらに、平面RFコイル114のDl/Dsは2以上である。
【選択図】図1
Description
このような測定装置では、たとえば、静磁場におかれた試料の特定箇所に対し、試料より小さい小型RFコイルを用いて、励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に応じたNMR(核磁気共鳴)信号を取得している。そして、小型RFコイルで取得したNMR信号に基づき、試料中の溶媒量や、溶媒分子の易動性等を算出している。
はじめに第一の課題について説明する。
以上のような測定装置では、図64に示すように、静磁場印加部からの静磁場H0の方向と、小型RFコイルの軸の方向とが直交するように小型RFコイル、静磁場印加部が配置されている。
より詳細に説明すると、上述した測定装置において測定を行う際には、核磁化の励起を行う必要がある。核磁化の励起を行い、核磁化が静磁場に対し一定角度傾いた状態で回転運動する、すなわち核磁化が歳差運動することで、小型RFコイルを貫く磁束の時間変化が生じ、小型RFコイルによりNMR信号として検出することができる。
熱平衡状態にある核磁化は静磁場H0方向を向き、小型RFコイルを貫く磁束に時間変化は生じない。小型RFコイルがNMR信号を受信するためには、核磁化を励起させ、静磁場H0方向を回転中心として歳差運動をさせる必要がある。核磁化を励起するには、静磁場H0方向と直交する励起用振動磁場を印加して、核磁化を静磁場H0方向に対し傾ける必要がある。すなわち、核磁化の励起には、静磁場H0方向を向く核磁化ベクトルと、励起用振動磁場ベクトルとの外積が十分に大きく、有意な値を持つ必要がある。
そのため静磁場H0方向と、小型RFコイルが作る励起用振動磁場H1の方向とを直交させる必要がある。
静磁場H0方向と、小型RFコイルからの励起用振動磁場H1の方向とを直交させるためには、静磁場H0方向と、小型RFコイルの軸方向とを直交させなければならない。従って、たとえば、図65に示すように、膜状の試料511を計測する場合には、一対の磁極113A,113Bの表面と、試料511の表面とが直交するように配置する必要がある。そのため、大きな面積を有する試料を計測しようとした場合には、一対の磁極間の寸法を大きくする必要があり、測定装置の大型化を招く。
なお、図65において、符号914は、小型RFコイルを示す。
上述した従来の測定装置にて、測定を行う際、非常に厚みの薄い試料を計測する場合がある。そして、この非常に厚みの薄い膜の表面側の状態や、裏面側の状態を計測することが要求されることがある。たとえば、試料が、燃料電池に使用される固体高分子電解質膜であり、水素極側における固体高分子電解質膜の含水量と、酸素極側における固体高分子電解質膜の含水量との計測が要求される場合がある。このとき、小型RFコイルの内径が大きく、小型RFコイルの計測深度が深い場合、固体高分子電解質膜の水素極側、酸素極側のいずれもが計測領域に含まれてしまい、酸素極側における含水量、水素極側における含水量の区別を行うことができなくなる。
そこで、このような問題を解決するために、小型RFコイルの内径を小さくすることが考えられる。計測深度は、小型RFコイルの内径に比例して浅くなるからである。しかしながら、この場合には、NMR信号強度が低下し、正確な計測が難しくなる。
第一の発明によれば、プロトン性溶媒を含んだ膜状あるいは平板状の試料に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するNMR信号を検出する測定装置であって、
対向配置された極性の異なる一対の磁極を有し、前記磁極間に配置された前記膜状あるいは平板状の試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に応じたNMR信号を取得する平面RFコイルとを備え、
前記静磁場印加部の前記一対の磁極間には、前記一対の磁極により形成される静磁場の方向が前記試料の表裏面を垂直に貫くように、前記試料が配置され、
前記平面RFコイルは、一つの軸の周りを囲むように環状に巻かれたものであり、その軸が前記試料表裏面と直交するように前記試料に対して前記平面RFコイルが配置されるとともに、前記平面RFコイルの軸は、前記静磁場印加部により形成される静磁場の方向と平行である測定装置が提供される。
試料の表面が、一対の磁極と対向するように配置されるので、一つの磁極間の距離は、少なくとも、試料の厚み以上であればよい。従って、表裏面の面積の大きな試料を計測する場合であっても、一対の磁極間の距離を大きくする必要がなく、測定装置の大型化を抑制することができる。
ここで、試料の表裏面とは、試料の厚み方向と直交する面のことである。
第二の発明によれば、
プロトン性溶媒を含んだ試料に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に対応するNMR信号を検出する測定装置であって、
前記試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に応じたNMR信号を取得する平面RFコイルとを備え、
前記平面RFコイルは、互いに略平行に延在する一対の第一の部分と、この一対の第一の部分の対向する端部間を結ぶ第二の部分とを有し、
前記一対の第一の部分間の距離をDsとし、
前記第一の部分と平行に延在し、前記一対の第一の部分間の距離の中心点を通る直線が前記一対の第二の部分と交わる一対の交点間の距離をDlとした場合、
Dl/Dsが2以上である測定装置が提供される。
さらに、本発明では、プロトン性溶媒を含んだ固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極とを有する燃料電池と、
測定装置とを含む燃料電池システムであって、前記測定装置が上述したいずれかの測定装置である燃料電池システムも提供できる。
第二の発明によれば、計測深度を浅くしつつ、かつ、信号強度の低下を抑制することができる測定装置が提供される。
なお、すべての図面において、共通の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第一実施形態)
図1には、本実施形態の燃料電池システム1を示す。
この燃料電池システム1は、燃料電池5と、この燃料電池5の運転状態を計測する測定装置100とを備える。
(燃料電池の構成)
燃料電池5は、図2に示すように、固体高分子電解質膜511を有する膜電極接合体51と、一対の拡散層52、53と、セパレータ54,55とを有する。
膜電極接合体51は、固体高分子電解質膜511と、この固体高分子電解質膜511の両側に設けられた触媒層512、513とを有する。
一対の触媒層512、513のうち、一方の触媒層512は、固体高分子電解質膜511の一方の面に接触するように設けられ、他方の触媒層513は、固体高分子電解質膜511の他方の面に接触するように設けられる。触媒層512、513は、たとえば、カーボン粒子の表面に白金触媒を担持させたものを固体高分子電解質膜511の表面に積層することで形成される。
一方の触媒層512は、酸化剤極(酸素極、カソード)として機能する。他方の触媒層513は、燃料極(水素極、アノード)として機能する。燃料電池5の運転中は、電流は、電気回路(電子負荷装置)57を通って水素極(触媒層513)から酸素極(触媒層512)に移動する。
なお、拡散層52,53には、燃料電池5で発電した電流を取り出すための集電用の電極(集電体)56がそれぞれ取り付けられている。
なお、セパレータ54,55は、導電性の材料で構成してもよい。
はじめに、図1を参照して、本実施形態の測定装置の概要について説明する。
本実施形態の測定装置100は、プロトン性溶媒を含んだ膜状あるいは平板状の試料(本実施形態では、膜状の試料である固体高分子電解質膜511)に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に対応するNMR信号を検出するものである。
この測定装置100は、対向配置された極性の異なる一対の磁極113A,113Bを有し、磁極113A,113B間に配置された試料511に対して静磁場を印加する静磁場印加部113と、
試料511に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に応じたNMR信号を取得する平面RFコイル(以下、小型RFコイルという場合もある)114とを備える。
静磁場印加部113の前記一対の磁極113A,113B間には、一対の磁極113A,113Bにより形成される静磁場H0の方向が前記試料の表裏面を垂直に貫くように、前記試料511が配置される。
また、平面RFコイル114は、一つの軸の周りを囲むように環状に巻かれたものであり、その軸Axが前記試料表裏面と直交するように前記試料511に対して配置されるとともに、平面RFコイル114の軸Axは、前記静磁場印加部113により形成される静磁場H0方向と平行である。
なお、第一の部分1140,1141は、完全に平行でなくてもよく、計測深度が正確に把握できれば、平行から若干ずれていてもよい。
測定装置100は、固体高分子電解質膜511の特定箇所の電流の測定、水分量の測定、易動性の測定を行うものである。
本実施形態では、静磁場印加部113は、所定の間隔をあけて対向配置された一対の磁極(磁石)113A,113Bを含んで構成される。磁石113A、113Bは、それぞ平板状の永久磁石であり、その表面(磁石の厚み方向と直交する面)が対向するように配置されている。図4に示すように磁石113A,113Bの表面の大きさ形状は、燃料電池5よりも大きく、磁石113A,113B間のスペースから燃料電池5がはみ出さないように燃料電池5が配置されている。
また、磁石113A,113Bの表面と、燃料電池5の表面(裏面)とが対向するように燃料電池5が配置される。すなわち、磁石113A,113Bにより形成される静磁場方向が、燃料電池5表裏面(すなわち、固体高分子電解質膜511表裏面)を垂直に貫くように、燃料電池5が配置される。
小型RFコイル114の軸Axが固体高分子電解質膜511の表裏面と直交するように配置される。
小型RFコイル114は、拡散層52と固体高分子電解質膜511との間、拡散層53と固体高分子電解質膜511との間に配置される。
小型RFコイル114の軸Axが、磁石113A,113Bにより形成される静磁場方向と平行となるように、複数の小型RFコイル114が固体高分子電解質膜511の表裏面に沿って配置される。
小型RFコイル114の計測領域は、固体高分子電解質膜511の表面から、固体高分子電解質膜511の厚みの途中位置までである。そして、拡散層52と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の計測領域と、拡散層53と固体高分子電解質膜511との間に配置された小型RFコイル114の計測領域とは重なっていない。さらに、隣接する小型RFコイル114同士の計測領域も重なっていない。
なお、固体高分子電解質膜511の大きさとは、固体高分子電解質膜511の表面の大きさである。小型RFコイル114の専有面積を、上記固体高分子電解質膜511の好ましくは1/2以下、より好ましくは、1/10以下とすることで、短時間で正確な測定が可能となる。小型RFコイル114の大きさは、たとえば、直径10mm以下とすることが好ましい。
小型RFコイル114は、互いに略平行に延在する一対の第一の部分1140,1141と、この一対の第一の部分1140,1141の対向する端部間を結ぶ第二の部分1142,1143とを有する。一対の第一の部分1140,1141間の距離(ここでは、一対の第一の部分1140,1141を結ぶ最も短い直線である第一直線の長さ)をDsとし、第一直線の中心を通るとともに、第一の部分1140,1141と平行に延在する第二直線Lが第二の部分1142,1143と交差す交点間の距離をDlとした場合、Dl/Dsが2以上、好ましくは3以上である。
また、Dl/Dsは、小型RFコイル114の成形性、形状保持性、取り扱い性観点から、15以下、さらには10以下、特に7以下であることが好ましい。コイルにフィルム等を貼り、形状を保持するように工夫すれば(たとえば、コイル全体をポリイミドフィルム等で挟み形状を保持しやすくする)、Dl/Dsは、100以下とすることもできる。しかしながら、コイルにより、ガスの透過が抑制されてしまう可能性があるので、燃料電池の計測においては、フィルム等を貼ることは好ましくなく、Dl/Dsを10以下とすることが好ましい。
小型RFコイルによる計測領域(計測体積)は、小型RFコイルに囲まれた領域の面積×小型RFコイルの計測深度に依存する。外形が円形状の小型RFコイルを使用した場合には、計測体積は、ID3に依存する(IDは円形状の小型RFコイルの内径である)。計測深度を浅くするためには、IDを小さくすればよいが、計測体積が小さくなり、信号強度が低下して信号対雑音比が低下する。
一方、本実施形態の小型RFコイル114を使用した場合においても、計測体積は、小型RFコイル114で囲まれた領域の面積×小型RFコイル114の計測深度に依存する。
ここで、本発明者らが鋭意検討を行った結果、小型RFコイル114の形状を、互いに略平行に延在する一対の第一の部分1140,1141と、この一対の第一の部分1140,1141の対向する端部間を結ぶ第二の部分1142,1143とを有するものとし、Dl/Dsを2以上とすることで、計測深度を浅くしつつ、かつ、信号対雑音比の低下を防止できることがわかった。計測深度は、小型RFコイル114のDsに比例することがわかった(詳しくは後述する実施例3参照)ため、Dlを大きくしつつ、Dsを小さくすることで、計測深度を浅くしつつ、かつ、信号対雑音比の低下を防止できることがわかたのである。
ここで、Dlは成形性、形状保持性、取り扱い性という観点から、0.1mm以上、20mm以下程度が好ましく、Dsは計測深度の観点から、0.01mm以上、10mm以下程度が好ましい。
トラック形状とは、図3に示すように、第一の部分1140,1141が直線状であり、第二の部分1142,1143が湾曲し、弧を描く形状である。
小型RFコイル114により印加される振動磁場(励起用振動磁場)は、図1に示すように、RF発振器102、変調器104、RF増幅器106、制御部150中のパルス制御部151(図5参照)、スイッチ部170、および小型RFコイル114の連携により生成される。また、本実施形態において、小型RFコイル114に励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部は、RF発振器102、変調器104、RF増幅器106を含んで構成される。RF発振器102から発振した励起用振動磁場は、制御部150中のパルス制御部151による制御に基づいて変調器104にて変調され、パルス形状となる。生成されたRFパルスはRF増幅器106により増幅された後、小型RFコイル114へ送出される。
なお、図示しないがRFパルス生成部は、各小型RFコイル114それぞれに対応して設けられ、複数のRFパルス生成部は、制御部150に接続される。
モード切替制御部152に接続された操作信号受付部129は、作業者の測定モードの要求を受け付ける。そして、操作信号受付部129が、この要求をモード切替制御部152に送出する。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
からなるパルスシーケンスとする。
(a)90°パルス、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス、および
(c)(b)のパルスの時間2τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス(nは自然数である。)
である。
(a)励起用振動磁場の90°パルス、
(b)(a)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス、
(c)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される励起用振動磁場の180°パルス、および、
(d)(c)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス。
NMR信号検出部は、小型RFコイル114で取得したNMR信号を検出し、このNMR信号を演算部130に送出する。NMR信号検出部は、プリアンプ112、検波器140およびA/D変換器118を含んで構成される。検出されたNMR信号は、プリアンプ112により増幅された後、検波器140へ送出される。
なお、図示しないがNMR信号検出部は、各小型RFコイル114それぞれに対応して設けられ、複数のNMR信号検出部は、データ受付部120に接続される。
小型RFコイル114とRF信号生成部(RF増幅器106)とが接続された第1状態、および、
小型RFコイル114とNMR信号検出部(プリアンプ112)とが接続された第2状態を切り替える機能を有する。
つまり、スイッチ部170は、「送受信切り替えスイッチ」の役目を果たす。この役目は、RF power−ampで増幅された励起パルスを小型RFコイル114に伝送する際には、受信系のプリアンプ112を切り離して大電圧から保護し、励起後にNMR信号を受信する際には、RF増幅器106から漏れてくる増幅用大型トランジスタが発するノイズを受信系のプリアンプ112に伝送しないように遮断することである。小型RFコイル114を用いて計測する場合には、微弱な信号を取り扱うため、スイッチ部170が必要となる。スイッチ部170は各小型RFコイル114に対応して複数設けられている。
なお、各小型RFコイル114に対して、一対のGコイル251が配置されていなくてもよく、たとえば、一対のGコイルにより、燃料電池5全体が挟まれるように配置されていてもよい。
図1に戻り、検波器140で検波されたNMR信号(エコー信号)の実部および虚部は、データ受付部120により取得されて、演算部130に送出される。演算部130は、電流値を算出する第一算出部130Aと、水分量を算出する第二算出部130Bと、易動性を算出する第三算出部130Cとを有する。
第一測定モードにおいては、第一算出部130Aは、検波器140で検波されたエコー信号の実部および虚部を取得し、これらを用いてエコー信号と励起用振動磁場との位相差を時系列で算出し、この位相差の時間変化から、エコー信号の周波数と励起用振動磁場の周波数とに基づく周波数の差分(周波数シフト量)Δωを算出する。
エコー信号の周波数は、電流が流れて形成される磁場により、基準の周波数となる励起用振動磁場の周波数から変化する。このため、周波数の変化量(差分)と電流値との関係を予め取得しておくことにより、測定されたエコー信号の周波数の差分から、固体高分子電解質膜511を流れる電流が求められる。周波数の差分は、ある時間間隔での位相の変化量を単位時間あたりに換算することにより求められる。
Δωと電流との関係は、記憶部190の第一記憶部191に記憶されている。第一記憶部191には、たとえば、実験的に得られた周波数の差分Δωと電流との対応付けのデータが格納されている。これは、さらに具体的には周波数の差分Δωと電流との検量線データである。演算部130中の第一算出部130Aは、記憶部190の第一記憶部191から検量線データを取得し、これに基づいて周波数の差分Δωに対応する電流を算出する。
第二算出部130Bでは、T2緩和時定数が算出し、算出したT2緩和時定数に対応する水分量を第二記憶部192に記憶されたデータから読み出し、水分量を算出する。
第二記憶部192には、T2緩和時定数と、このT2緩和時定数に対応する水分量とが記憶されているのである。
ここで、プロトン性溶媒(水)の量の算出する際に、必要となる「NMR信号の強度」は、検波器140にて取得されたRealとImaginaryの成分を基に、
(Real^2+Imaginary^2)^1/2
によってその強度に変換すればよい。すなわち、この演算は図9の円の半径を求めていることに相当する。
第三算出部130Cは、試料511に対し、励起用振動磁場の印加を行うことにより得られたNMR信号及び異なる勾配磁場の印加を行うことにより得られたNMR信号に基づいて、試料511の特定箇所における水分子の自己拡散係数を算出する。
第三算出部130Cでは、取得したNMR信号から、以下の式(I)を用いて、自己拡散係数を算出する。
NMR信号のピーク強度Sは、印加するパルス勾配磁場強度Gz[gauss/m]、印加時間d、パルス間隔Δに依存し、以下のような関係式でz方向の自己拡散係数Dz[m2/s]と関係付けられる。
ln(S/S0)=−γ2DzΔ2dGz2 (I)
一対の磁極113A,113B間には、一対の磁極113A,113Bにより形成される静磁場H0が試料511の表裏面を垂直に貫くように、試料511が配置される。そして、平面RFコイル114は、その軸Axが試料511表裏面と直交するように試料511に対して配置されるとともに、平面RFコイル114の軸Axは、静磁場印加部113により形成される静磁場H0方向と平行である。
試料511の表面が、一対の磁極113A,113Bと対向するように配置されるので、一つの磁極113A,113B間の距離は、少なくとも、試料511の厚み以上であればよい。従って、表裏面の面積の大きな試料511を計測する場合であっても、一対の磁極113A,113B間の距離を大きくする必要がなく、測定装置100の大型化を抑制することができる。
背景技術の項でも説明したが、従来の測定装置では、静磁場印加部からの静磁場の方向と、小型RFコイルの軸の方向とが直交するように小型RFコイル、静磁場印加部が配置されている。
このように配置しているのは、NMR信号を検出するためには、静磁場方向と、小型RFコイルから印加される励起用振動磁場の方向とを直交させる必要があるためである。そのため、静磁場印加部からの静磁場の方向と、小型RFコイルの軸の方向とが直交するように小型RFコイル、静磁場印加部を配置することが通常であった。これは、固体高分子膜等の水分量等を計測するための測定装置に限らず、一般的なNMR装置においても同じである。すなわち、NMR信号を検出するため、コイルの軸と、静磁場印加部からの静磁場の方向とを直交配置することが行われている。たとえば、「コロナ社、医用画像診断装置−CT、MRIを中心として−」の第144頁、第148頁にも、静磁場の向きと、コイルの軸とを直交させて配置することが開示されている。
核磁化を励起させるためには、静磁場方向と直交する方向から励起用振動磁場をかけて、核磁化を静磁場方向に対し傾ける必要があるため、静磁場方向と、コイルから印加される励起用振動磁場の方向とを直交させなければならず、静磁場方向と、コイルの軸とを平行に配置した場合には、核磁化を静磁場方向に対し傾けることが効果的にできず、NMR信号は得られないと考えられていた。
これは、図1に示した測定装置100の小型RFコイル114をソレノイドコイルとし、試料を外形2mmのポリプロピレン円管に水を封入したものとして測定したものである。
ソレノイドコイルは、線径0.1mm、巻き数19回であり、ポリプロピレン円管の周囲を囲むように配置されている。ソレノイドコイルの軸と、静磁場の方向とがなす角度をθとし、静磁場H0と励起磁場H1(ソレノイドコイルの軸)とがなす角度θを90°、45°、0°とした場合に取得されるスピンエコー信号強度を図10に示す。
第一励起パルスの照射時間は40μs、第二励起パルスの照射時間は80μs、第一励起パルス、第二励起パルスの振幅は等しい。第一励起パルスと第二励起パルスの間隔は5ms(スピンエコー時間TEは10 msに相当)、第一励起パルスの繰返し時間TRは20秒、ダミー計測は4回、信号の積算回数は1回、第二励起パルスの照射後に1msの勾配磁場を印加して、FID信号をスポイルした。全ての計測で、受信機のアンプゲイン(増幅率)は同一とした。
この結果からも、静磁場方向と、コイルから印加される励起用振動磁場の方向とを直交させなければならず、静磁場方向と、コイルの軸とを平行に配置した場合には、核磁化を静磁場方向に対し傾けることはできないと考えることが通常であることがわかる。
測定対象となる試料の表面側、裏面側の水分量等の測定が要求される場合がある。
たとえば、燃料電池5の運転においては、固体高分子電解質膜511の表面側、裏面側の水分量、易動性、発電量が非常に重要な因子となる。燃料電池5においては、水素を加湿し、固体高分子電解質膜511に送る。そして、固体高分子電解質膜511中では水素極側からの水素と、酸素極側からの酸素とが反応し水が生成する。この水は、酸素極側から排出されるため、酸素極側に水がたまり過ぎると、水が触媒を覆ってしまい酸素が固体高分子電解質膜511に到達しなくなる。一方で、水素極側に供給される水素の加湿量が少なすぎる場合には、水素イオンと共に酸素極側に移動する水分子によって、固体高分子電解質膜511が乾燥してしまい、固体高分子電解質膜511におけるイオン伝導性が悪化する。
燃料電池5を効率よく運転するためには、酸素極側の水分量と、水素極側の水分量とを一定程度に保つ必要があり、固体高分子電解質膜511の表面側、裏面側の水分量、さらには、易動性、発電量を正確に把握する必要がある。
ここで、固体高分子電解質膜511は、非常に薄いものであり、その厚みは、20μm〜50μm程度である。このように非常に薄い固体高分子電解質膜511の表面側、裏面側の水分量等を正確に計測することは非常に難しい。
従来、小型RFコイルとしては、円形コイルが使用されてきた。その理由は以下の点にあると考えられる。
(i)製造の歩留まりや、製造しやすさを考慮すると、円形が最も作成しやすい。
(ii)円形のコイルは、計測領域となる部分、すなわち、円形コイルで囲まれた部分が円形であるため、円形コイルの配置方向等を考慮せずに、配置することができ、取り扱い性に優れている。
(iii)円形コイルは、円形であるがために、変形に対する機械的強度が大きく、形状保持性が高い。
従って、従来小型RFコイルとしては、外形が円のものが使用されており、製造誤差等を考慮しても、長径と短径との比が、1.1〜0.9程度の円形コイルが使用されていると考えられる。
しかしながら、このような円形コイルを使用して、固体高分子電解質膜511の表面側、裏面側の水分量等を計測しようとすると、円形コイルの径を小さくする必要がある。円形コイルの径を小さくすると、計測体積が非常に小さくなるため、信号対雑音比が低下してしまい、正確な計測を行うことができない。
従って、従来の技術では、非常に薄い固体高分子電解質膜511の表面側、裏面側の水分量等を正確に計測することは非常に難しかったのである。
これに対し、本発明者らは、小型RFコイル114を互いに略平行に延在する一対の第一の部分1140,1141と、この一対の第一の部分1140,1141の対向する端部間を結ぶ第二の部分1142,1143とを有するものとし、Dl/Dsを2以上とした。これにより、計測深度を浅くしつつ、かつ、信号対雑音比の低下を防止でき、固体高分子電解質膜511の表面側、裏面側とでの水分量、水分子の易動性、発電量を確実に計測することができる(詳しくは、後述する実施例3参照)。
図11を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。
前記実施形態では、静磁場印加部113は、一対の磁極113A,113Bを有するものであり、静磁場印加部113は、永久磁石であった。これに対し、本実施形態の静磁場印加部213は、電磁石で構成され、対向配置される一対の磁極213A,213Bと、対向配置される他の一対の磁極214A,214Bとを備えている。他の点は前記実施形態と同様である。なお、本実施形態の測定装置も前記実施形態と同様、小型RFコイルを複数備えているが、図11には、小型RFコイル114を一つのみ示している。また図11には、燃料電池5の固体高分子電解質膜511、拡散層52,53のみを示し、他の部材については記載を省略している。
換言すると、小型RFコイルの軸Axは、磁極213A,213Bにより、形成される静磁場H01方向と平行であり、磁極214A,214Bにより形成される静磁場H02の方向と直交する。
このような測定装置では、一対の磁極213A,213B間に静磁場H01を発生させるタイミングと、一対の磁極214A,214B間に静磁場H02を発生させるタイミングとを切り替える切り替え手段を備え、対の磁極213A,213B間に静磁場H01を発生させるタイミングと、一対の磁極214A,214B間に静磁場H02を発生させるタイミングとを切り替えて測定を行う。静磁場H01と、静磁場H02とは交互に試料511に印加され、同時には印加されない。
詳しくは実施例で後述するが、一対の磁極213A,213Bで静磁場H01を発生させて計測した場合の小型RFコイル114の計測領域と、一対の磁極214A,214B間で静磁場H02を発生させた場合の小型RFコイル114の計測領域とは異なっている。
そのため、本実施形態によれば、一つの小型RFコイル114において、異なる領域を計測することができる。
さらに、Gコイル251を第一実施形態と同様に、固体高分子電解質膜511を表裏面側から挟むようにして、配置してもよい。
図12を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。
第一実施形態では、静磁場印加部113は、一対の磁極113A,113Bを有するものであった。これに対し、本実施形態の静磁場印加部313は、複数対の磁極113A,113Bを備える。その他の点は、第一実施形態と同様である。
複数対の磁極113A,113Bにおいて一方の磁極113Aが試料511の表面側に試料511の表面に沿って配置され、他方の磁極113Bが試料の裏面側に試料511の裏面に沿って配置される。磁極113A同士、磁極113B同士は、離間配置されている。
各磁極113A,113Bは、平板状であるが、試料511の表面または裏面よりも大きさ(試料511と対向する側の面の面積)が小さい。
このようにすることで、非常に大きな試料511であっても、試料511面内の水分量等を計測することができる。
従来の測定装置では、静磁場方向と、試料の面方向とが平行となるように、試料を配置する必要があったため、一対の磁極のスペース間に、試料の面方向の幅が入るように一対の磁極のスペースを大きくとる必要があった。従って、静磁場印加部が非常に大きなものとなり、装置が大型化するとともに、装置が高価なものとなってしまう。
これに対し、本実施形態のように、試料511が非常に大きなものであっても、複数対の磁極113A,113Bを使用すればよいので、非常に大きな静磁場印加部を用意する必要が無く、装置の大型化、さらには、コストの増加を抑制することができる。
たとえば、前記実施形態では、測定装置100により、固体高分子電解質膜511一枚の測定を行っていたが、これに限らず、燃料電池5をスタックさせて、各固体高分子電解質膜511に対応させて小型RFコイル114を用い、各固体高分子電解質膜511の測定を行ってもよい。
また、固体高分子電解質膜511が、静磁場印加部の磁石113A,113Bよりも非常に大きな場合には、図13に示すように、静磁場印加部の磁石113A,113Bにより形成される静磁場が固体高分子電解質膜511の表裏面を垂直に貫通する状態を保ちながら、試料511,すなわち燃料電池を図13(A)の矢印方向に上下させたり、図13(A)の奥行き方向(図13(B)の矢印方向)に燃料電池5を移動させたりして、固体高分子電解質膜511の特定箇所の水分量等を測定してもよい。
また、静磁場印加部の磁石113A,113Bにより形成される静磁場が固体高分子電解質膜511の表裏面を垂直に貫通する状態を保ちながら、磁石113A,113Bを、固体高分子電解質膜511に対し相対的に移動させてもよい。
いずれの場合も、測定装置は、固体高分子電解質膜511や、磁石113A,113Bを移動させる移動手段を備えるものとなる。
図13(A)は、試料511の側面方向から見た図であり、図13(B)は、試料511の表面側から見た図である。
さらに、前記実施形態では、測定装置による測定対象を燃料電池5の固体高分子電解質膜511としたが、これに限られるものではない。プロトン性溶媒を含む試料であればよい。
以下の実施例では、
I.小型RFコイルの軸と、静磁場方向とを平行とした場合の検討
II.小型RFコイルの外形形状に関する検討
の2つの検討を行った。
はじめに、Iについて説明する。
(実施例1)
実施例1では、以下の実験例1,2を実施するとともに、MR画像の解析、磁場分布の解析を行った。
(1)実験例1
図1に示した測定装置を使用し、スピンエコー信号の検出を行った。
図14には、用いた小型RFコイルの写真を示した。小型RFコイルは、外形がトラック形状であり、線径0.04 mmのポリウレタン被膜の銅線を、一つの軸の周りに3回巻きしたものである。この小型RFコイル(以下、トラック形状コイルという場合もある)は、Dsが0.5 mm、Dlが3.5 mmである平面コイルである。
蒸留水を試料容器に入れて、容器表面にトラック形状コイルをカプトンテープで貼り付けて固定した。
試料容器の水を封入できる領域は、直方体形状であり、平面視において正方形で一辺の長さが14mmである。また、深さは5mmである。試料容器のトラック形状コイルが接する面に、厚さ0.16 mmのカバーガラスを貼り付けて、容器とした。容器内には蒸留水を封入した。図15には、トラック形状コイルと水の位置関係を示した。水はトラック形状コイルから0.16 mmだけ離れた位置zsにある。
トラック形状コイルでLC共振回路を組み、共振周波数を44.2MHzとした。この測定装置では、トラック形状コイルと試料を共に静磁場H0に対して回転させることができる。
トラック形状コイルの軸と、静磁場の方向とがなす角度θを0°とした場合に取得されるスピンエコー信号強度を図16に示す。
計測条件は以下の通りである。
第一励起パルスの照射時間は40μs、第二励起パルスの照射時間は80μs、第一励起パルス、第二励起パルスの振幅は等しい。第一励起パルスと第二励起パルスの間隔は5ms(スピンエコー時間TEは10 msに相当)、第一励起パルスの繰返し時間TRは20秒、ダミー計測は4回、信号の積算回数は1回、第二励起パルスの照射後に1msの勾配磁場を印加して、FID信号をスポイルした。全ての計測で、受信機のアンプゲイン(増幅率)は同一とした。
なお、参考までに角度θが45°、90°の場合の測定結果も示す。
図16より、角度θが0°の場合でもスピンエコー信号は取得され、その強度が90°の時よりも大きくなることが分かる。角度θが小さくなるにつれて、スピンエコー信号が最大となる励起パルス出力TXは大きくなり、スピンエコー信号の強度も大きくなる。
小型RFコイルを用いると、角度θが変わってもH0×H1の値はゼロとはならず、スピンエコー信号が取得できることを示している。
実験例1では、小型RFコイルとして外形がトラック形状であるものを使用したが、ここでは、小型RFコイルとして、平面円形コイル(以下、円形コイルという場合もある)を使用した。
図17には、用いた円形コイルの写真を示した。円形コイルは、内径1.0mmとして、線径0.04 mmのポリウレタン被膜の銅線を平面状に10回巻いて製作した。
他の点は、実験例1と同じである。
角度θが0°の場合のスピンエコー信号強度を図18に示す。また、参考までに角度θが45°、90°の場合の測定結果も示す。図18より、角度θが0°の場合でもスピンエコー信号は取得され、その強度は角度θによらず、どの角度でもほぼ同じ値となることがわかる。ただし、角度θが小さくなるにつれて、スピンエコー信号が最大となる励起パルス出力TXは大きくなることがこの円形コイルでの特徴である。
実験例1の小型RFコイル(トラック形状コイル)を使用して、角度θを0、90°とした際のMR画像を取得した。MR画像はNMR信号強度の空間分布を表しており、この画像によってどの領域からNMR信号がどの程度の強さで放出されているかが分かる。MR計測の典型例としては、水の濃度の空間分布が挙げられよう。
励起パルスが90°―180°条件(核磁化ベクトルが第一励起パルスによって静磁場H0方向からの角度α [deg]が90°だけ倒れた状態に励起され、その後、第二励起パルスによってさらに180度だけ励起されるような条件)を満たして、スピンエコー信号を取得した場合には、スピンエコー信号の強度SSE(α=90°)は、以下の式(A)で示される。
A、TR、TE、T1、T2が同一となる条件で計測すれば、スピンエコー信号強度の空間分布は水の濃度の空間分布を表すこととなる。
SSE (α)= B sin3(α) 式(B)
によって表される。Bは装置定数、試料体積、コイルの受信感度などによって決まる定数である。
試料として水を用いて、空間的に一様な濃度で分布(ρが一様)しており、TR、TE、T1、T2が同一となる条件でMR画像を取得した時、MR画像に信号強度の空間分布が現れれば、その空間分布は、式(B)によって示される、核磁化ベクトルの励起角度αの空間分布である。(これに対し、空間的に一様な励起角度αで核磁化ベクトルを励起できるソレノイドコイルでMR画像を取得した場合には、ソレノイドコイルの中に挿入された水のMR画像は空間的に一様な信号強度となる。)
これより、小型RFコイルを用いて水試料のMR画像を取得すれば、励起角度αの空間分布を知ることができる。すなわち、小型RFコイルの軸方向と静磁場H0の方向とがなす角度θを90°と0°としてそれぞれのMR画像を取得し、その信号強度の空間分布を見ることによって、角度θが変わった際の小型RFコイルの励起角度αの空間分布を知ることができる。
第一励起パルスと第二励起パルスとの時間間隔は7ms(エコー時間TEは14ms)、第一励起パルスと第二励起パルスとの出力は1対2の関係、第一励起パルスの繰返し時間は5秒、積算回数は1回、MR画像のピクセルサイズは一辺が0.0625 mmの正方形、スライスはせずに厚さ方向に積分されたMR画像である。励起パルスの出力TXを変え、3つのTXにおいてMR画像を取得した。
また、図16に示したスピンエコー信号強度は、取得されたMR画像の信号強度を全空間で積分した値に対応すると考えて良い。ただし、両者は完全には一致しない。その理由は、MR画像の取得では、TEが14msと長いこと、周波数・位相エンコードを行う際に印加された勾配磁場の印加時間(約3倍)と強度(約2倍)が大きく異なるために水の自己拡散による位相分散が生じて信号が低下していることなどに因っている。
トラック形状コイルの軸Ax方向と静磁場H0の方向とがなす角度θを90°として、励起パルス出力TXを7.0とした場合に取得されたMR画像を信号強度の等値線図として図20に示す。TX=7.0という励起パルス出力は、図16で示した、全空間で積分したスピンエコー信号強度が最大となるTX(約8.0)よりも小さい場合である。また、図中にはコイルの位置を加筆して、位置関係をわかり易くした。
励起パルス出力TXを8.0(図16での信号強度の最大値)とした場合に取得されたMR画像を図21に示す。図20と同様に、トラック形状コイルの内側領域で信号強度が強いが、全体として、信号強度の強い領域は遠くに押されたような形状になっている。詳しく見ると、トラック形状コイルの中心軸上で、かつ、トラック形状コイル平面に近い領域(図中の領域Aとして示した部分)での信号強度は小さくなっており、トラック形状コイル平面から少し離れた位置で信号が最大値となっている。この理由は、領域Aでの励起パルス出力が大きくなりすぎ、核磁化ベクトルの励起角度αが90°を超えて、式(B)の値が小さくなり、信号強度が低下したためであると考えられる。このように、励起パルス出力の増減が、NMR信号を主として放出する領域を変化させることとなる。
さらにTXを増加させた場合のMR画像を図22に示す。領域Aの部分では、大きな励起パルスの照射によって、さらに励起角度は大きくなり、ついには、270°近くに達して、再度、信号強度が大きくなる。トラック形状コイルの中心軸上ではトラック形状コイルから離れるに従い、励起角度が順次低下して、信号強度は増減を繰り返す分布となる。
このように、トラック形状コイルの軸方向と静磁場H0の方向とがなす角度θが90°の場合には、コイルの内側領域が励起され、その領域からNMR信号が取得されていることが分かる。また、励起パルス出力TXを変えることで主たるNMR信号の放出領域がトラック形状コイル平面から遠くなったり、近くなったりすることが分かる。
トラック形状コイルと水試料を回転させ、図23に示すように、トラック形状コイルの軸Axと静磁場H0の方向とがなす角度θを0°として、MR画像を取得した。
トラック形状コイルの軸Axと静磁場H0の方向とがなす角度θを0°として、励起パルス出力TXを7.0とした場合に取得されたMR画像を信号強度の等値線図として図24に示す。TX=7.0という励起パルス出力は、図16で示した、全空間で積分したスピンエコー信号強度が最大となるTX(約8.4)よりもかなり小さい場合である。また、図中にはトラック形状コイルの位置を加筆して、位置関係をわかり易くした。
図24より、角度θが0°になると、トラック形状コイルの導線近くの二つの領域からNMR信号が放出され、トラック形状コイル中心軸近くからの信号が弱いことが分かる。図24の信号強度分布は、図20で示した半円状の分布とは大きく異なり、角度θを変えることで信号放出領域を変えることができることが分かる。
励起パルス出力TXを8.0とした場合のMR画像を図25に示す。励起される領域が広がり、さらにトラック形状コイル平面から少し遠くの領域で信号が最大となることが分かる。すなわち、トラック形状コイル近くの領域では励起角度が90°を超え、信号が小さくなっていると推測される。
励起パルス出力TXを9.0とした場合のMR画像を図26に示す。NMR信号を放出している領域はさらに広がり、コイル平面から遠ざかっていることが分かる。
これより、トラック形状コイルの軸方向と静磁場H0の方向とがなす角度θが0°の場合には、コイル導線近傍の領域が励起され、この領域からのNMR信号が強く計測される。トラック形状コイル中心軸Ax上の領域からの信号は弱い。
次に、角度θをかえた場合のトラック形状コイルが作る磁場分布の解析を行った。
コイルの幾何学形状については以下の仮定をおいた。
・コイルの線径はゼロとする。(無限小の線径)
・導電時に表皮効果はないとする。(線径がゼロとしたことから、コイルの表面のみで電流が流れる効果も無視したこととなる。)
・三回巻きコイルでは、直径の異なる三つの円を同心円状に配置する。(渦巻状にはしない。)
・コイルは導線のみでできており、被覆膜は無視する。(誘電率、透磁率は真空の値を使用する。)
・試料はない。(空間全域で誘電率、透磁率は真空の値を使用する。)
・リード部(円形コイル以外の配線部)は無視する。
ビオ・サバールの法則に基づいた理論解析
導電体に流れる電流Iが作る磁場Hはビオ・サバールの法則に基づいて算出することができる。表面コイルが真空中(透磁率が4π×10-7 N/A2)に置かれた場合に、表面コイルが位置(xp, yp, zp)に作る磁場H(xp, yp, zp)は式(1)で表される。この式での座標系は図27にようにとった。振動磁場Hzはコイルのz軸方向の磁場強度である。
r:空間中の点Pの位置 (xp, yp, zp) [m](ベクトル)
r':コイル上の点Qの位置 (xq, yq, zq) [m](ベクトル)
I:電流 [A](スカラー)
t:電流が流れる方向を表す単位ベクトル(点Qでのコイルの形状を表す。図27において、点Qとx軸との角度αとするとき、tはt =(sinα, cosα, 0)である。) [-](ベクトル)
積分の意味:コイル全周に渡って線積分を行う。(点Pに生ずる磁場は、コイル上にある点Qをコイルに沿って移動させ、各点Qの位置で作られる磁場をコイル全周に渡って積分する(総和を取る)ことで求められる。)
図27(A)、(B)に示すように、トラック形状コイルの軸方向はz軸方向に固定し、静磁場H0の印加方向を、角度θが0°と90°の二つの場合によって変えた。小型RFコイルの軸方向(z)と静磁場H0の角度θが90°の場合には、静磁場H0はy軸方向を向き、H0_yのみが印加されるとした。もう一方の角度θが0°の場合には、静磁場H0はz軸方向を向き、H0_zのみが印加されるとした。
トラック形状コイルの軸方向(z)と静磁場H0の角度θが90°の場合に、コイルに電流Iを流した際に形成される磁場強度を理論解析した。この際、核磁化ベクトルの励起に関わる振動磁場方向は、H0_yに垂直な方向のH1_zである。x方向は短軸方向であり、小型RFコイル内部の大部分においてH1_zに比べて、H1_xは小さく、スピンエコー信号に対する寄与は小さいとして、無視した。
図28に、試料表面(z=zs)での励起角度αを90°とした際のスピンエコー信号強度のyz分布を示す。この図では、最大信号強度の領域を基準にして規格化されている。この図の分布は、図20のMR画像の信号強度分布と非常に似ていることが分かる。(図の表示法が異なるために、図20と図28では90度だけ回転している。)
次に、励起パルス出力を増加させたことに対応する、試料表面(z=zs)での励起角度αを180°とした際のスピンエコー信号強度のyz分布を図29に示す。この図から、励起パルス出力を増加させると、信号強度が強くなる領域がコイルの平面から遠くに離れた領域となることが分かる。この結果は、励起パルス出力を増大させて取得したMR画像の図21と同じ結果である
以上の結果から、トラック形状コイルの軸方向と静磁場H0の方向との角度θが90°の場合には、核磁化ベクトルはコイルが作るz方向の磁場H1_zによって励起され、NMR信号(スピンエコー信号)が観測されることが分かる。
トラック形状コイルの軸方向(z)と静磁場H0の角度θが0°の場合に、核磁化ベクトルの励起に関わる振動磁場方向は、H0_zに垂直な方向のH1_yである。前節と同様に、H1_xは小さく、スピンエコー信号に対する寄与は小さいとして、無視した。
図30に、試料表面(z=zs)での励起角度αを90°とした際のスピンエコー信号強度のyz分布を示す。また、図31には、励起角度αを180°とした際の結果も示した。
図30はMR画像の図24に、図31はMR画像の図25に、信号強度の空間分布と共に、励起パルス出力に対する分布形状の変化(コイル平面から信号強度が強い領域が遠くに離れて行く現象)も非常に良く似ている。
これより、トラック形状コイルの軸方向(z)と静磁場H0の角度θが0°の場合には、核磁化ベクトルはコイルの軸方向に垂直なy方向の振動磁場H1_yによって励起されることがわかった。
以上の解析結果とMR画像との比較から、以下のことが分かった。
・小型RFコイルの軸方向(z)と静磁場H0の方向との角度θが90°の場合には、核磁化ベクトルはコイルが作るz方向の磁場H1_zによって励起される。
・小型RFコイルの軸方向(z)と静磁場H0の角度θが0°の場合には、核磁化ベクトルはコイルの軸方向に垂直なy方向の振動磁場H1_yによって励起される。
図1に示す燃料電池システムを使用して、固体高分子電解質膜中の含水量を計測した。
図32に、用いた平面状のトラック形状コイル(小型RFコイル)の写真を示す。このトラック形状コイルは、Dsが0.3mm、Dlが1.5mm、線径が0.06mm、3回巻きである。このコイルをGDL(拡散層)とPEM(固体高分子電解質膜)の間に挿入した。トラック形状コイルは等間隔で一列に並び、8個ある。水素極側に8個、空気極側に8個の合計16個である(図2参照)。
GDLは、400μm厚さのカーボンメッシュを用いた。発電電流はこのGDLを流れて、集電極を流れ、電子負荷装置で消費される。セパレータにつけられたガス流路は、水素側、空気側共に幅1.5mm、深さ2mm、ピッチ3.5mm、サーペンタイン型(一筆書き)の流路である。セパレータには温水を流して、燃料電池の温度を50℃とした。
PEM(固体高分子電解質膜)は178μm厚さのNafion 117膜を用いた。このPEMに白金触媒をホットプレス法で融着して、MEAとした。白金触媒の面積は50mm×50mmである。この寸法が発電面積である。
燃料電池の初期温度を50℃とし、温調用温水を60℃まで上昇させて(図33参照)、燃料電池の相対湿度を低下させた際のPEMの信号強度を計測した。供給ガスの水蒸気濃度はバブラー温度の45℃で決定され、それは一定であるが、供給ガスの相対湿度はセル温度で決定され、セル温度が50℃の時の相対湿度は79%、セル温度が60℃の時の相対湿度は50%となる。セル温度を上昇させることで燃料電池の相対湿度は低下する。この過程では、PEMは時間と共に徐々に乾燥していく。本実験では、乾燥過程でのPEMの含水量を計測した。ここで、PEMのスピンエコー信号の強度と含水量はほぼ正比例の関係にある(図34参照)ため、信号強度の低下によって、PEMの含水量の低下が見られると考えている。
NMR信号の計測条件は次の通りである。エコー時間(TE)は10ms、90度励起パルスの繰返し時間(TR)は10秒、180度励起パルスの前後に1msの勾配磁場を印加してFID信号をスポイルした。また、エコー信号強度は、ばらつきを低減させるために、連続した三つの時刻(10秒間隔で3点)での平均値とした。
図35のCoil Bは、図2の小型RFコイル114Bであり、Coil Dは、図2の小型RFコイル114Dであり、Coil Fは、図2の小型RFコイル114Fであり、Coil Hは、図2の小型RFコイル114Hである。また、図36のCoil Jは、図2の小型RFコイル114Jであり、Coil Lは、図2の小型RFコイル114Lであり、Coil Nは、図2の小型RFコイル114Nであり、Coil Pは、図2の小型RFコイル114Pである。
これより、小型RFコイルの軸方向と静磁場の方向との角度θが0°としても、燃料電池内のPEMの含水量を計測でき、乾燥過程においてPEMの含水量が低下していく様子を捉えられることが分かった。
燃料電池の温度を50℃(相対湿度79%)とし、発電電流を3Aとした際の水素極側と空気極(酸素極)側でのPEMの含水量を計測した。ここでも、前述の(1)と同様に、エコー信号強度を取得し、エコー信号強度と含水量が正比例の関係にあるとして、PEMの含水量の増減とする。ガス流量、バブラー温度、NMR計測条件等は全て前述の実験(1)と同一である。
発電時のエコー信号は、GDLに電流が流れることで周波数シフトが生じ、これがスピンエコー信号強度に影響を与えることが懸念された。そのため、発電と停止を50秒間隔で繰返し、発電停止時のスピンエコー信号強度のみを抽出して、測定結果を整理した。図37には、水素極側での、図38には、空気極側での規格化したスピンエコー信号を示す。 図37のCoil Bは、図2の小型RFコイル114Bであり、Coil Dは、図2の小型RFコイル114Dであり、Coil Fは、図2の小型RFコイル114Fであり、Coil Hは、図2の小型RFコイル114Hである。また、図38のCoil Jは、図2の小型RFコイル114Jであり、Coil Lは、図2の小型RFコイル114Lであり、Coil Nは、図2の小型RFコイル114Nであり、Coil Pは、図2の小型RFコイル114Pである。
水素極側の含水量を示す図37から、発電時間が長くなるにしたがって、含水量は徐々に低下していくように見える。
もう一方の空気側極の含水量を示す図38から、発電時間が長くなるにしたがって、上流(コイルJ,L)では乾燥が、下流(コイルN,P)では湿潤が進んで行く様にも見える。
なお、図37,38において、含水量の変化が明確にならなかった理由としては、相対湿度が79%と高い状態で発電したためであると考えている。その根拠は、他の実験において、相対湿度が30%程度というPEMが乾燥した状態で発電すると水素極側と酸素極側でのPEM内含水量の相違が見られたが、70%程度では相違が見られなかったことからである。
次に、上述したIIの小型RFコイルの外形形状に関する検討を行った。
ここでは、円形コイルに比べた小型RFコイル114(以下トラック形状コイルという)の優位性について検討した。
測定装置としては、図39に示す装置を使用した。この装置では、小型RFコイル114の軸方向と、静磁場方向とが直交している。他の点は、前記実施形態の測定装置100と同じである。
図40に用いたトラック形状コイルと円形コイルの写真を示す。トラック形状コイルは2種類、円形コイルは3種類(内径0.6mm、0.8mm、1.0mm)を用いた。表1、2には、コイルの詳細な寸法、巻き数等をまとめた。
図40(A)はトラック形状コイルであり、線径0.04 mmのポリウレタン被膜の銅線を3回巻き、Dsを0.5 mm、Dlを3.5 mmとした。
図40(B)もトラック形状コイルであり、線径0.06mmのポリウレタン被膜の銅線を3回巻き、Dsを0.39mm、Dlを1.29 mmとした。
一方、図40(C)は円形コイルであり、線径0.04 mmのポリウレタン被膜の銅線を5回巻き、内径IDが0.6 mmであるものを示す。
ここで、トラック形状コイルは3回巻き、円形コイルは5回巻きであり、この巻き数の差は、NMR信号の受信感度に相違を与える。巻き数が多いほど、受信感度は高い。これは、コイルに同一の電流を流した際に形成される磁場強度について考えれば理解できる。巻き数の多いコイルの方が、それが作る磁場強度は大きくなる。定量的な議論をするには、コイルに決められた電流(例えば、1A)を流した際に作られる磁場強度を理論解析して、受信感度に換算すれば良い。同様に、受信感度はコイル形状も依存する。コイル形状と巻き数を与えて、理論解析を行うことで、形状と巻き数に依存した受信感度を定量的に評価できる。
水を試料容器に入れて、容器表面にコイルをカプトンテープで貼り付けて固定した。容器は厚さ0.16 mmのカバーガラスを2枚用い、その隙間を0.58 mmとして製作し、その隙間に水を入れた。図41には、コイルと水の位置関係を示した。水はコイルから0.16 mmだけ離れた位置zsにある。
表1、2のコイルと図41の水試料を用いて、スピンエコー信号を取得した。計測条件は以下の通りである。静磁場強度は1 T、90度励起パルスの繰返し時間TRは20秒、エコー時間TEは10 ms、勾配磁場を180度励起パルスの前後に3msだけ印加した。計測前のダミー回数は4回、積算なしのワンショット計測である。NMR信号をRFコイルで受信した後のアンプゲイン、フィルター周波数帯域などは全て同一の信号取得条件とした。
各コイルで取得したスピンエコー信号強度を図42に示す。縦軸はAD変換機の読み値そのものの値である。(アンプゲインにより増減するため、任意の単位で記載したが、上述したように、信号取得条件はすべて同一であるため、相互の比較は可能である。)
図43は、図42の横軸を「計測深度」に換算して示したグラフである。計測深度は、円形コイルでは、その内径IDに0.32を掛けた値である。トラック形状コイルの場合にはDsに0.37を掛けた値とした(0.32,0.37という数値の説明については、後述する)。
これらの図より、トラック形状コイルのDsは、内径が0.6mm、0.8mmの円形コイルよりも小さく、計測深度は浅いが、信号強度は大きいことが分かる。
表1、2に示したように、トラック形状コイルの巻き数と、円形コイルの巻き数とは異なっているため、コイルの計測感度は等しくない。トラック形状コイルの巻き数を5回にすれば、さらに受信信号強度が増加する可能性がある。また、コイルの形状によっても受信感度は増減する。さらに、コイルの電気抵抗値によっても受信感度は増減する。このため、コイルの形状や巻き数、電気抵抗による受信感度の効果をなくして、同一の基準によって信号強度を比較する必要がある。同一の基準で比較することで、円形コイルとトラック形状コイルの信号強度の差が、コイルの巻き数などに因らずに評価でき、結果として、計測体積に依存していることを示すことができる。以下では、同一の基準によって信号強度を比較するために用いた補正係数を説明する。
基準は、内径IDが0.6mmの円形コイルとした。
NMR信号は、試料中の励起された磁化ベクトルが作る変動磁場によってコイルに電流が誘起されて受信される。この際、コイルの形状や巻き数によってコイルの導線の長さが異なってコイルの電気抵抗値が増減し、それに応じて、誘起される電流値も増減する。このコイルの電気抵抗値と受信感度の関係は、以下の関係に依存するとした。
コイルの受信感度はコイルの電気抵抗値の比の平方根に依存する
すなわち、ID0.6mm円形コイルの電気抵抗値を基準として用いた時の補正係数1は、以下の式で表されるとした。
補正係数1=(コイルの電気抵抗値)/(基準のID0.6mm円形コイルの電気抵抗値)の平方根
補正係数1が上式で表される理由を以下に示す。
変動磁場によってコイルに電流が誘起され、それはコイルを含むLC共振回路を共振させるエネルギーEとなる。このLC共振回路において、コイルを形成する細い導線部分の電気抵抗値が最も大きく、共振エネルギーEはコイルの電気抵抗によって消費されるとする。この際、コイルに流れる実効的な電流をI、コイルの両端に印加される実効的な電圧をVとすれば、共振エネルギーEはVIとなる。これを電気抵抗値R=V/Iで書き直せば、E=RI2となる。
コイル1の電気抵抗値をR1と書き、コイルに誘起される電流をI1とするとき、その共振エネルギーはE=R1 I1 2となる。同様に、コイル2の時は、E=R2 I2 2となる。
磁化ベクトルが作る変動磁場によってLC共振回路に与える共振エネルギーEが決まり、Eがコイル1と2で等しいと仮定すると、R1 I1 2= R2 I2 2となり、コイル1と2に誘起される電流の比は次式となる。
I2 / I1 = (R2/ R1)1/2
ここで、コイル1を基準のID0.6mm円形コイルとすれば、補正係数1の式となる。
コイルの形状、巻き数によって、コイルが作る磁場強度は異なる。コイルに1Aの電流を流す時、コイルの巻き数が多いほど、コイルが作る磁場は強くなる。このことは、コイルが強い磁場を作ることができるような形状と巻き数であるほど、変動磁場によってコイルに電流が強く誘起され、コイルの受信感度も高いことを意味する。
コイルの受信感度は、43MHz程度の低周波であるならば、定常電流を流した時に形成される磁場強度に比例すると考えられる。そこで、コイルの形状を模擬し、それに1Aの定常電流を流した際に形成されたコイル中心軸上の試料表面(z=zs)での磁場強度Hzを理論解析して、磁場強度Hz(z=zs)に補正係数2が比例するとした。すなわち、内径0.6mmの円形コイルが作る磁場強度を基準として、補正係数2は以下の式で表されるとした。
補正係数2=(z=zsでコイルが作る磁場強度Hz) / (基準のID0.6mm円形コイルがz=zsで作る磁場強度Hz)
I = Iexp×(補正係数1)×(補正係数2)/(ID0.6mm円形コイルの信号強度Iexp)・・・式(A)
ここで、Iexpは計測されたスピンエコー信号強度を示す。
図42,43の信号強度を式(A)によって換算した際の結果を図44,45に示す。
また、この図には、次式で算出される計測体積の曲線も合わせて示した。
トラック形状コイルの計測体積=(コイルの内側面積=Ds×(Dl−Ds)+Ds2/4)×(計測深度=Ds×0.37)・・・・・式(B2)
ここで、ID,Ds、Dlについては図46に示す。
また、これらの計測体積を図44,45に示す際には、内径0.6mmの円形コイルの計測体積を基準の1として示した。
一方、トラック形状コイルでは、トラック形状コイルの形状パラメータとして、DsとDlの二つがある。図44には、両者の比Dl/Dsを2、3、7とした時の計測体積の増加倍率を示した。実験で用いたトラック形状コイルはDl/Ds=7、3.3であり、Dl/Ds=7、3.3の換算信号強度と、Dl/Ds=7、3.3として算出した際の計測体積の実線とがよく一致していることが分かる。この図から、トラック形状コイルでも、円形コイルと同様に、計測体積に信号強度が比例していることが分かる。
また、Dl/Dsを2以上とすれば、トラック形状コイルは計測深度を浅く保ちつつも、信号強度を大きくできる効果が顕著であることががわかる。
以上の結果より、トラック形状コイルは計測深度を浅く保ちつつも、信号強度を増加させることができると言える。
ここでは、表面コイルを用いた際の計測領域と計測深度を解析し、前述した式(B2)を導く方法について説明する。
コイルの幾何学形状については以下の仮定をおいた。
・コイルの線径はゼロとする。(無限小の線径)
・導電時に表皮効果はないとする。(線径がゼロとしたことから、コイルの表面のみで電流が流れる効果も無視したこととなる。)
・三回巻きコイルでは、直径の異なる三つの円を同心円状に配置する。(渦巻状にはしない。)
・コイルは導線のみでできており、被覆膜は無視する。(誘電率、透磁率は真空の値を使用する。)
・試料はない。(空間全域で誘電率、透磁率は真空の値を使用する。)
・リード部(コイル以外の配線部)は無視する。
r:空間中の点Pの位置 (xp, yp, zp) [m](ベクトル)
r':コイル上の点Qの位置 (xq, yq, zq) [m](ベクトル)
I:電流 [A](スカラー)
t:電流が流れる方向を表す単位ベクトル(点Qでのコイルの形状を表す。図47において、点Qとx軸との角度αとするとき、tはt =(sinα, cosα, 0)である。) [-](ベクトル)
積分の意味:コイル全周に渡って線積分を行う。(点Pに生ずる磁場は、コイル上にある点Qをコイルに沿って移動させ、各点Qの位置で作られる磁場をコイル全周に渡って積分する(総和を取る)ことで求められる。)
図47に示すように、小型RFコイル(トラック形状のコイル)の中心をカーテシアン座標(xyz座標系)の原点とした。小型RFコイルの軸方向をz軸方向に、小型RFコイルの長軸方向をx軸方向に、短軸方向をy軸方向にとった。
(2−1−1)トラック形状コイルに電流1 Aが流れた場合に形成される磁場Hz(x, y, z)分布
図48には、トラック形状コイルに電流を1A流した際に、トラック形状コイルがxz平面に作る磁場Hz(x, 0, z)の空間分布を示す。この図から、長軸(x)方向の磁場Hzはほぼ一様であることが分かる。すなわち、トラック形状コイルの内側の範囲では長軸(x)方向にほぼ一様にNMR信号を励起し、取得することができる。
図49に yz平面での磁場Hz(0, y, z)を、図50にxy平面での磁場Hz(x, y, 0)の空間分布を示す。
図51に、xz平面でのFID信号強度の空間分布SFID(x, 0, z)を示す。図52には、z軸上のFID信号強度の分布SFID (0, 0, z)を、図53には、x軸上のFID信号強度の分布SFID(x, 0, 0)を示す。
図54に、xz平面でのスピンエコー信号強度の空間分布SSpinEcho(x, 0, z)を示す。図55には、z軸上のスピンエコー信号強度の分布SSpinEcho (0, 0, z)を、図56には、x軸上のスピンエコー信号強度の分布SSpinEcho (x, 0, 0)を示す。
図49から図56より、x軸方向の信号強度はトラック形状コイルの内側の範囲でほぼ一様であり、また、z軸方向の信号強度はFID信号よりもスピンエコー信号の方が狭いことが分かる。
試料の表面が位置z=0.16mmにあるとし、その位置での励起角度を90度とした際のスピンエコー信号のxy平面での強度分布SSpinEcho(x, y, 0.16mm)を図57に示す。図58,59には、y軸方向とx軸方向の信号強度分布を示す。図57〜59から、トラック形状コイルの内側の範囲内で、ほぼ一様の信号強度でNMR信号が取得できることが分かる。
比較として、内径0.6 mmの円形コイルの解析も行った。円形コイルにおいて試料の表面が位置z=0.16mmにあるとし、その位置での励起角度を90度とした際のスピンエコー信号のxy平面での強度分布SSpinEcho(x, y, 0.16mm)を図60に示す。図61には、y軸方向の信号強度分布を示す。
トラック形状コイルと円形コイルでの計測深度を比較するために、コイル周囲の全域に試料があるとし、コイル中心での励起角度を90度とした時の信号強度分布を解析した。図62には、FID信号のz軸方向分布を、図63にはスピンエコー信号のz軸方向分布を示す。本解析では、幾何学的相似性が成り立つため、これらの図では、トラック形状コイルではDsで、円形コイルでは内径IDで規格化して示した。
図62,63において、信号強度が半分となる位置を計測深度と定義する。これらの図から、計測深度を読み取り、表3にトラック形状コイルと円形コイルでの計測深度をまとめた。
この結果より、計測深度は、トラック形状コイルのDsを基準の1として、FID信号取得時で0.46、スピンエコー信号取得時で0.37となる。円形コイルの場合には、内径IDを基準の1として、FID信号取得時で0.38、スピンエコー信号取得時で0.32となる。円形コイル(内径ID=0.6mm、線径0.08mm、5回巻き)の計測深度(FIDで0.38、SEで0.32)に比べて、トラック形状コイルではわずかに深くなることが分かる。
そして、前述したように、図44,45から、算出式(B2)で算出した値と、実験データとは略一致することがわかった。
5 燃料電池
51 膜電極接合体
52,53 拡散層
54,55 セパレータ
100 測定装置
102 RF発振器
104 変調器
106 RF増幅器
112 プリアンプ
113 静磁場印加部
113A,113B 磁極
114 小型RFコイル(平面RFコイル)
114A〜114P 小型RFコイル
118 A/D変換器
118A 変換器
118B 変換器
120 データ受付部
127 シーケンステーブル
128 計時部
129 操作信号受付部
130 演算部
130A 第一算出部
130B 第二算出部
130C 第三算出部
135 出力部
140 検波器
150 制御部
151 パルス制御部
152 モード切替制御部
159 電流駆動用電源
170 スイッチ部
171 ハイブリッド
173 分配器
175 分配器
177 ミキサー
179 ミキサー
181 合成器
183 ミキサー
185 ミキサー
187 分配器
190 記憶部
191 第一記憶部
192 第二記憶部
213 静磁場印加部
213A,213B 磁極
214A,214B 磁極
251 勾配磁場印加部
251 Gコイル
313 静磁場印加部
511 固体高分子電解質膜
512,513 触媒層
541,551 流路
914 小型RFコイル
1140,1141 第一の部分
1142,1143 第二の部分
Ax 軸
たとえば、前記実施形態では、測定装置100により、固体高分子電解質膜511一枚の測定を行っていたが、これに限らず、燃料電池5をスタックさせて、各固体高分子電解質膜511に対応させて小型RFコイル114を用い、各固体高分子電解質膜511の測定を行ってもよい。
また、固体高分子電解質膜511が、静磁場印加部の磁石113A,113Bよりも非常に大きな場合には、図13に示すように、静磁場印加部の磁石113A,113Bにより形成される静磁場が固体高分子電解質膜511の表裏面を垂直に貫通する状態を保ちながら、試料511,すなわち燃料電池を図13(A)の矢印方向に上下させたり、図13(A)の奥行き方向(図13(B)の矢印方向)に燃料電池5を移動させたりして、固体高分子電解質膜511の特定箇所の水分量等を測定してもよい。
また、静磁場印加部の磁石113A,113Bにより形成される静磁場が固体高分子電解質膜511の表裏面を垂直に貫通する状態を保ちながら、磁石113A,113Bを、固体高分子電解質膜511に対し相対的に移動させてもよい。
いずれの場合も、測定装置は、固体高分子電解質膜511や、磁石113A,113Bを移動させる移動手段を備えるものとなる。
図13(A)は、試料511の側面方向から見た図であり、図13(B)は、試料511の表面側から見た図である。
さらに、前記実施形態では、測定装置による測定対象を燃料電池5の固体高分子電解質膜511としたが、これに限られるものではない。プロトン性溶媒を含む試料であればよい。
以下、参考形態の例を付記する。
1. プロトン性溶媒を含んだ膜状あるいは平板状の試料に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するNMR信号を検出する測定装置であって、
対向配置された極性の異なる一対の磁極を有し、前記一対の磁極間に配置された前記膜状あるいは平板状の試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に応じたNMR信号を取得する平面RFコイルとを備え、
前記静磁場印加部の前記一対の磁極間には、前記一対の磁極により形成される静磁場の方向が前記試料の表裏面を垂直に貫くように、前記試料が配置され、
前記平面RFコイルは、一つの軸の周りを囲むように環状に巻かれたものであり、その軸が前記試料表裏面と直交するように前記試料に対して前記平面RFコイルが配置されるとともに、前記平面RFコイルの軸は、前記静磁場印加部により形成される静磁場の方向と平行である測定装置。
2. 1.に記載の測定装置において、
前記平面RFコイルは、互いに略平行に延在する一対の第一の部分と、この一対の第一の部分の対向する端部間を結ぶ第二の部分とを有し、
前記一対の第一の部分の距離をDsとし、
前記第一の部分と平行に延在し、前記一対の第一の部分間の距離の中心点を通る直線が前記一対の第二の部分と交わる一対の交点間の距離をDlとした場合、
Dl/Dsが2以上である測定装置。
3. 1.または2.に記載の測定装置において、
複数の平面RFコイルを備え、
前記平面RFコイルは前記試料の表面に沿って離間配置されている測定装置。
4. 1.乃至3.のいずれかに記載の測定装置において、
前記一対の磁極により形成される静磁場の方向が前記試料の表裏面を垂直に貫通する位置関係を保った状態で、前記試料と、前記静磁場印加部の前記一対の磁極とを相対的に移動させる移動手段を備える測定装置。
5. 1.乃至4.のいずれかに記載の測定装置において、
前記静磁場印加部からの静磁場の方向が前記平面RFコイルの軸と直交するように、静磁場の印加方向あるいは、前記静磁場印加部に対する前記試料の配置方向を切り替える切り替え手段を備える測定装置。
6. 1.乃至5.のいずれかに記載の測定装置において、
前記静磁場印加部は、前記一対の磁極を複数対有しており、
前記複数対の磁極において、一方の磁極が前記試料表面側に前記試料表面に沿って離間配置され、前記一方の磁極と極性の異なる他方の磁極が試料裏面側に前記試料裏面に沿って配置される測定装置。
7. プロトン性溶媒を含んだ試料に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に対応するNMR信号を検出する測定装置であって、
前記試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に応じたNMR信号を取得する平面RFコイルとを備え、
前記平面RFコイルは、互いに略平行に延在する一対の第一の部分と、この一対の第一の部分の対向する端部間を結ぶ第二の部分とを有し、
前記一対の第一の部分間の距離をDsとし、
前記第一の部分と平行に延在し、前記一対の第一の部分間の距離の中心点を通る直線が前記一対の第二の部分と交わる一対の交点間の距離をDlとした場合、
Dl/Dsが2以上である測定装置。
8. 7.に記載の測定装置において、
Dl/Dsが10以下である測定装置。
9. 7.または8.に記載の測定装置において、
前記平面RFコイルの外形がトラック形状である測定装置。
10. 7.乃至9.のいずれかに記載の測定装置において、
複数の平面RFコイルを備え、
前記平面RFコイルは前記試料の表面に沿って離間配置されている測定装置。
11. 1.乃至10.のいずれかに記載の測定装置において、
前記試料は、固体高分子電解質膜である測定装置。
12. 1.乃至11.のいずれかに記載の測定装置において、
前記平面RFコイルで取得した核磁気共鳴信号に基づいて、前記試料中のプロトン性溶媒量を算出する算出部を有する測定装置。
13. 1.乃至12.のいずれかに記載の測定装置において、
前記試料に対して、勾配磁場を印加する勾配磁場印加部と、
前記勾配磁場および前記励起用振動磁場の印加を所定のパルスシーケンスに従って実行させる制御部と、
第二算出部とを有し、
前記平面RFコイルは、励起用振動磁場および勾配磁場に対応するNMR信号を取得し、
前記第二算出部では、異なる勾配磁場に対応して得られ、前記平面RFコイルで取得したNMR信号に基づいて、前記固試料の特定箇所におけるプロトン性溶媒の易動性を算出する測定装置。
14. 1.乃至13.のいずれかに記載の測定装置において、
前記試料は、試料中で電流が発生するものであり、
前記平面RFコイルで取得された前記NMR信号の周波数と前記励起用振動磁場の周波数との差分を算出し、前記差分から、前記試料の特定箇所の電流を算出する第三算出部を有する測定装置。
15. プロトン性溶媒を含んだ固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極とを有する燃料電池と、
測定装置とを含む燃料電池システムであって、
前記測定装置が1.乃至14.のいずれかに記載の測定装置である燃料電池システム。
Claims (15)
- プロトン性溶媒を含んだ膜状あるいは平板状の試料に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応するNMR信号を検出する測定装置であって、
対向配置された極性の異なる一対の磁極を有し、前記一対の磁極間に配置された前記膜状あるいは平板状の試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に応じたNMR信号を取得する平面RFコイルとを備え、
前記静磁場印加部の前記一対の磁極間には、前記一対の磁極により形成される静磁場の方向が前記試料の表裏面を垂直に貫くように、前記試料が配置され、
前記平面RFコイルは、一つの軸の周りを囲むように環状に巻かれたものであり、その軸が前記試料表裏面と直交するように前記試料に対して前記平面RFコイルが配置されるとともに、前記平面RFコイルの軸は、前記静磁場印加部により形成される静磁場の方向と平行である測定装置。 - 請求項1に記載の測定装置において、
前記平面RFコイルは、互いに略平行に延在する一対の第一の部分と、この一対の第一の部分の対向する端部間を結ぶ第二の部分とを有し、
前記一対の第一の部分の距離をDsとし、
前記第一の部分と平行に延在し、前記一対の第一の部分間の距離の中心点を通る直線が前記一対の第二の部分と交わる一対の交点間の距離をDlとした場合、
Dl/Dsが2以上である測定装置。 - 請求項1または2に記載の測定装置において、
複数の平面RFコイルを備え、
前記平面RFコイルは前記試料の表面に沿って離間配置されている測定装置。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の測定装置において、
前記一対の磁極により形成される静磁場の方向が前記試料の表裏面を垂直に貫通する位置関係を保った状態で、前記試料と、前記静磁場印加部の前記一対の磁極とを相対的に移動させる移動手段を備える測定装置。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載の測定装置において、
前記静磁場印加部からの静磁場の方向が前記平面RFコイルの軸と直交するように、静磁場の印加方向あるいは、前記静磁場印加部に対する前記試料の配置方向を切り替える切り替え手段を備える測定装置。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の測定装置において、
前記静磁場印加部は、前記一対の磁極を複数対有しており、
前記複数対の磁極において、一方の磁極が前記試料表面側に前記試料表面に沿って離間配置され、前記一方の磁極と極性の異なる他方の磁極が試料裏面側に前記試料裏面に沿って配置される測定装置。 - プロトン性溶媒を含んだ試料に対し、励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に対応するNMR信号を検出する測定装置であって、
前記試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に応じたNMR信号を取得する平面RFコイルとを備え、
前記平面RFコイルは、互いに略平行に延在する一対の第一の部分と、この一対の第一の部分の対向する端部間を結ぶ第二の部分とを有し、
前記一対の第一の部分間の距離をDsとし、
前記第一の部分と平行に延在し、前記一対の第一の部分間の距離の中心点を通る直線が前記一対の第二の部分と交わる一対の交点間の距離をDlとした場合、
Dl/Dsが2以上である測定装置。 - 請求項7に記載の測定装置において、
Dl/Dsが10以下である測定装置。 - 請求項7または8に記載の測定装置において、
前記平面RFコイルの外形がトラック形状である測定装置。 - 請求項7乃至9のいずれかに記載の測定装置において、
複数の平面RFコイルを備え、
前記平面RFコイルは前記試料の表面に沿って離間配置されている測定装置。 - 請求項1乃至10のいずれかに記載の測定装置において、
前記試料は、固体高分子電解質膜である測定装置。 - 請求項1乃至11のいずれかに記載の測定装置において、
前記平面RFコイルで取得した核磁気共鳴信号に基づいて、前記試料中のプロトン性溶媒量を算出する算出部を有する測定装置。 - 請求項1乃至12のいずれかに記載の測定装置において、
前記試料に対して、勾配磁場を印加する勾配磁場印加部と、
前記勾配磁場および前記励起用振動磁場の印加を所定のパルスシーケンスに従って実行させる制御部と、
第二算出部とを有し、
前記平面RFコイルは、励起用振動磁場および勾配磁場に対応するNMR信号を取得し、
前記第二算出部では、異なる勾配磁場に対応して得られ、前記平面RFコイルで取得したNMR信号に基づいて、前記固試料の特定箇所におけるプロトン性溶媒の易動性を算出する測定装置。 - 請求項1乃至13のいずれかに記載の測定装置において、
前記試料は、試料中で電流が発生するものであり、
前記平面RFコイルで取得された前記NMR信号の周波数と前記励起用振動磁場の周波数との差分を算出し、前記差分から、前記試料の特定箇所の電流を算出する第三算出部を有する測定装置。 - プロトン性溶媒を含んだ固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の一方の側に配置される燃料極と、前記固体高分子電解質膜の他方の側に配置される酸化剤極とを有する燃料電池と、
測定装置とを含む燃料電池システムであって、
前記測定装置が請求項1乃至14のいずれかに記載の測定装置である燃料電池システム。
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