JP5336881B2 - 減水剤組成物及びそれを用いたモルタル又はコンクリート - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリカルボン酸塩系減水剤は、使用するセメントのロットや銘柄、種類によって、流動性(モルタルフロー値、コンクリートスランプやスランプフロー値)が顕著に異なるという課題を有する。
すなわち、同じセメントで同一工場のものでもロットによって変わり、工場間、メーカー間、セメントの種類によっても変化するものである。
本発明は、使用するセメントのロットや銘柄、種類によって、ポリカルボン酸塩系減水剤を添加したモルタル又はコンクリートの流動性が顕著に低下するなどの課題を解決するものである。
具体的には、BASFポゾリス(株)社商品名「レオビルドSP8SV/8RV、8HV、8HUなどのレオビルドSP8シリーズ」、日本シーカ(株)社商品名「シーカメント1100NT、1100NTRなどのシリーズ」、竹本油脂(株)社商品名「チュポールHPシリーズ、チュポールSR、チュポールSSP−104、チュポールNV−Gシリーズ」、グレースケミカルズ(株)社商品名「スーパー200、300,1000シリーズ」、花王(株)社商品名「マィティ21WH、21LV、21VS、21HF、21HP、マィティ3000S、3000Hシリーズ」、(株)フローリック社商品名「SF500S、SF500R、SF500H、SF500SKなどのSF500シリーズ」、その他の一般用、高強度用、超高強度用として市販されているものが使用される。
なお、ポリカルボン酸塩系減水剤は、通常、pH2〜3の状態で合成されるが、製造設備や貯蔵設備の金属の発錆や腐食を防止するために苛性ソーダを添加してpHを7〜8の弱アルカリ性とする。しかしながら、本発明の減水剤組成物は、pHを3〜6の範囲に調整して製造するものである。その理由は、シアナマイドは水溶液中ではpH3〜6の範囲で安定し、pHが3未満又は6を超えるとジシアンジアミドなどに変化し、流動性改善効果が低下するためである。
したがって、使用する市販のポリカルボン酸塩系減水剤が弱アルカリ性の場合は、酢酸や蟻酸、グルコン酸などでpH3〜6に調節するものである。なお、pH3未満の合成品を直接使用する場合は苛性ソーダで調節する。
本発明の減水剤組成物の添加量は、セメント又はセメント結合材100質量部に対してポリカルボン酸塩系減水剤の固形分とシアナマイド(固形分)を合量で0.12〜1.5質量部である。0.12質量部未満では充分な流動性の改善効果は示されなく、また、1.5質量部以上配合しても流動性の改善効果は頭打ちとなるものであり、0.15〜1.2質量部がより好ましい。
球状粒子形のポゾラン質微粉末とは、電気炉によるシリコン合金や金属シリコン製造時に発生するシリカフューム及びジルコニア由来のシリカフューム、微粉炭焚き火力発電所から副生するフライアッシュを10〜20ミクロン以下に分級したもの、ガス化した石炭を燃焼させる火力発電所から副生する石炭ガス化フライアッシュ、溶融シリカ微粉末である。これらは、ポリカルボン酸塩系減水剤と併用されて高流動・高強度モルタル又はコンクリートの製造に多用されているものである。
ポゾラン質微粉末の中でも、流動性と高強度の両方を助長又は発現するシリカフュームは、最も重要な成分であるが、数ミクロン以下の超微粉末であることからモルタル又はコンクリートの中で凝集し易く、また、輸送効率を高めるために顆粒状に増粒されているために、より分散性が低下し、流動性の改善効果を充分に発揮できないという課題も有している。しかしながら、本発明の減水剤組成物と併用することにより、分散効果が大きくなり、流動性の改善効果も大きくなるものであり、その結果、必要な流動性を一定とすると減水剤組成物の添加量を減らすことが出来、かつ、反応性も向上することから強度も高くなるので、より経済的なモルタルやコンクリートが製造できる。
通常、球状のポゾラン質微粉末の1種以上を、セメント100質量部に対して40質量部以下配合される。
無水石膏は少量で強度的効果が大きく、通常、セメント100質量部に対して6質量部以下配合される。
モルタルやコンクリートの製造に使用する細骨材や粗骨材の種類や最大寸法は、特に限定されなく、その配合割合も、適宜、目的や用途に応じて、好ましいものを組み合わせて用いる。
本発明のモルタル又はコンクリートの養生は、蒸気養生しても、しなくても良いし、オートクレーブ養生も可能であり、打設した状態で現場養生しても良く、養生方法には制限されないものである。
成型方法は、特に限定されるものではなく、高流動による流し込み、適切なスランプによる振動成形、遠心力成形、固練りとした振動加圧成型なども可能である。
ポリカルボン酸塩系減水剤:グレースケミカルズ社製、固形分濃度27質量%、pH4.0、高強度・超高強度用(表中固形分としてPCと略す)
シアナマイド:シアナマイド水溶液:シアナマイド固形分濃度36質量%の水溶液を、扱い易いように固形分濃度27質量%に調整したもの(pHは酢酸で4.0に調節した)、電気化学工業(株)社製(表中シアナマイドの固形分としてCNと略す)
高溶解性の無機塩:酢酸カルシウム1水塩(試薬)。比較用
セメント又はセメント結合材の種類(表中C又はC−Iなどと略す)
C−I:普通ポルトランドセメント(5銘柄より選択したJIS R 5201による抜き上げフロー値の最も小さい銘柄)
C−II:C−Iの普通ポルトランドセメント100質量部に顆粒状のシリカフュームを25質量部配合したセメント結合材
C−III:C−Iの普通ポルトランドセメント100質量部に顆粒状のシリカフュームを25質量部と無水石膏を2質量部配合したセメント結合材
C−IV:普通ポルトランドセメント(5銘柄より選択したJIS R 5201による抜き上げフロー値の最も大きい銘柄)100質量部に顆粒状のシリカフュームを25質量部と無水石膏を2質量部配合したセメント結合材
骨材:新潟県姫川産細骨材(1.2mm以下に調整した物と調整しない通常の5mm下
と新潟県姫川産粗骨材、砕石,最大寸法(13mm)
モルタルフローの測定:JIS R 5201に準じた。但し、抜き上げたときの自己流動による広がりを測定した。また、測定は、フローテーブルの上に50×50×2tcmのアクリル板を乗せ、その上で行った。
モルタルの成型、強度の測定方法:圧縮強度はφ5×10cmの型枠に、流し込み成型又はテーブル振動成型(フロー値が小さい場合)し、20℃室内で翌日まで標準養生し、脱型して70℃で24時間蒸気養生して冷却後、強度測定した。
コンクリートスランプの測定:JIS A 1101に準じて行った。但し、流動化した場合は横の広がりをスランプフロー値として測定した。
コンクリートの成型、圧縮強度の測定:圧縮強度はφ10×20cmの型枠に、テーブル振動成型し、20℃室内で翌日まで標準養生し、脱型して70℃で24時間蒸気養生して冷却後、強度を測定した。
セメント又はセメント結合材と、細骨材や細骨材と粗骨材を30秒間空練りした後、本発明の減水剤組成物などを溶解した練り混ぜ水を添加して練り混ぜた。モルタルの場合は、JIS R 5201によるモルタルミキサで1L分練り混ぜ、コンクリートはオムニミキサで10L分練り混ぜた。
C−IIとC−IIIのセメント結合材を使用し、その100質量部(単位量1210kg/m3)に対して1.2mm下の細骨材を80質量部配合し、水結合材比を16質量%とし、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分とシアナマイドの固形分の比率および添加量を変えて、モルタルフロー値と圧縮強度を測定した。なお、一部比較として、従来から流動性の改善効果のある高溶解性の無機塩として知られている酢酸カルシウムも用いた。その結果を表1に示す。
なお、ポリカルボン酸塩系減水剤とシアナマイド水溶液中の水分は練り混ぜ水として水結合材比に組み入れた。
C−IIのセメント結合材を使用して、ポリカルボン酸塩系減水剤固形分量を比較例の場合と同じとし、シアナマイドの固形分量を変えた実施例の実験No.1-3〜No.1-11では、シアナマイドの量を増加させてゆくとフロー値は急増するようになり、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分/シアナマイド(固形分)の質量比率が100/2より顕著な効果を発揮する。さらに、100/6以上がより好ましく、100/8以上が更に好ましい。100/30の比率よりもシアナマイド量を多くしても、それ以上にフロー値は大きくならなく、頭打ちとなる。したがって、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分/シアナマイド(固形分)質量比率は100/8〜100/25が最も好ましい。また、フロー値の向上に伴って強度も高くなることも示される。
シリカフュームと無水石膏を配合したC−IIIのセメント結合材を用いた実験No.1-12〜No.1-19では、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分/シアナマイド(固形分)の質量比率に拘わらず、シリカフュームのみ配合したC−IIの場合よりもフロー値は僅かに高くなる傾向を示し、無水石膏の溶解により生ずるSO4イオンはフロー値を低下させなく、強度が20N/mm2前後高くなることが分かる。
フロー値の最も大きいセメントを用い、C−IIIと同様にシリカフュームと無水石膏を配合したC−IVのセメント結合材を用いて、ポリカルボン酸塩系減水剤固形分量を一定としてシアナマイドの固形分量を変えた実施例の実験No.1-20〜No.1-27においてもフローの小さいセメントを用いた結合材の場合と同様に、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分/シアナマイド(固形分)の質量比率が100/2より顕著な効果を発揮する。さらに、100/6以上がより好ましく、100/8以上が更に好ましい。100/30の比率よりもシアナマイド量を多くしても、それ以上にフロー値は大きくならなく、頭打ちとなる。したがって、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分/シアナマイド(固形分)質量比率は100/8〜100/25が最も好ましい。また、フロー値の向上に伴って、C−IIIの場合よりも強度も高くなる傾向も示される。
フロー値の小さいセメントを用いたC−IIのセメント結合材を用い、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分/シアナマイド(固形分)の質量比率を100/20とし、その合量の添加量を変えた実験No.1-28〜No.1-33では、0.5質量部で比較例である実験No.1-1のポリカルボン酸塩系減水剤単独の0.810質量部と同等のフロー値が得られ、少ない量で同等のフロー値が得られる。さらに、添加量を増加させて行くとフロー値は急増するが、1.5質量部で頭打ちとなり、1.2質量部以下が経済的にも最も好ましい。
C-Iのセメントを使用し、表2のコンクリート配合を用い、ポリカルボン酸塩系減水剤の固形分/シアナマイド(固形分)質量比率を100/0と100/20として、その添加量を変えて、スランプと標準養生材齢7日の圧縮強度を測定した。なお、細骨材は5.0mm以下の通常のコンクリート用細骨材を用いた。その結果を表3に示す。
Claims (2)
- pH3〜6であるポリカルボン酸塩系減水剤とシアナマイドを含有してなる減水剤組成物。
- セメント又はセメント結合材100質量部に、pH3〜6であるポリカルボン酸塩系減水剤の固形分100質量部に対してシアナマイド2〜30質量部を含有してなる減水剤組成物を固形分で0.12〜1.5質量部添加してなるモルタル又はコンクリート。
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