以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体構成及び動作
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、トナー支持材(被転写体)であるエンドレズベルト型の中間転写体、即ち、中間転写ベルト31の移動方向に沿って4個の画像形成部を並置したタンデム型のフルカラーの画像形成装置である。
画像形成装置100は、画像出力部1Pを有する。画像出力部1Pは、大別して、4個の画像形成部10(10a、10b、10c、10d)、給紙ユニット20、中間転写ユニット30、定着ユニット40及び制御ユニット(制御処理部)200を有する。以下、個々のユニットについて詳しく説明する。
本実施例では、4個の画像形成部(第1、第2、第3、第4の画像形成部)10a、10b、10c、10dは、形成する画像の色が異なるが、その構成は実質的に同一である。
各画像形成部10は、像担持体としての回転可能なドラム型の電子写真感光体(感光ドラム)11(11a、11b、11c、11d)を有する。感光体11は、その中心で軸支され、駆動手段により図示矢印R1方向(反時計方向)に所定のプロセススピード(周速)で回転駆動される。感光体11の外周面に対向して、その回転方向に、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ状の帯電器、即ち、帯電部材である帯電ローラ12(12a、12b、12c、12d)である。次に、画像露光手段(情報書き込み手段)としての画像露光器(レーザスキャナユニット)13(13a、13b、13c、13d)である。次に、現像手段としての現像器14(14a、14b、14c、14d)である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置15(15a、15b、15c、15d)である。
帯電ローラ12により感光体11の表面に均一な帯電量の電荷が与えられる。本実施例では、帯電ローラ12には、帯電電圧印加手段(バイアス印加手段)としての帯電電源から、直流(DC)電圧である帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。これによって、感光体11の表面は負極性に一様に帯電される。尚、帯電電圧としては、直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を用いることもできる。
次いで、感光体11上は、画像露光器13により、記録画像信号に応じて変調したレーザービームなどの光線で露光される。これによって、感光体11上に静電潜像(静電像)が形成される。
各感光体上に形成された静電潜像は、現像剤としてイエロー、シアン、マゼンタ、ブラック各色のトナーをそれぞれ収納した現像器14a、14b、14c、14dによって顕像化される。本実施例では、現像器14は、現像剤担持体(現像部材)としての回転可能な円筒型の現像スリーブを有している。現像スリーブには、現像電圧印加手段(バイアス印加手段)としての現像電源から、直流(DC)電圧である現像電圧(現像バイアス)が印加される。この現像電圧により現像スリーブと感光体11との間に形成される電界の作用で、感光体11上の静電潜像にトナーが転移し、感光体11上にトナー像(現像像)が形成される。尚、現像電圧としては、直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を用いることもできる。本実施例では、現像器14は、反転現像方式により現像を行う。即ち、一様に帯電された感光体11上における、露光によって電荷が減衰した露光部(明部)に、感光体11の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させることで現像を行う。
顕像化された可視画像は、1次転写部(1次転写位置)N1(N1a、N1b、N1c、N1d)において、中間転写ベルト31に転写(1次転写)される。
感光体11の回転方向において1次転写部N1の下流側では、クリーニング装置15により、転写材Sに転写されずに感光体11上に残されたトナーを掻き落として、感光体11の表面の清掃を行う。
以上のプロセスにより、各トナーによる画像形成が順次行われる。例えばカラー画像の形成時には、4個の感光体11a、11b、11c、11dにそれぞれイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像が形成され、各トナー像が各1次転写部N1において順次に中間転写ベルト31上に重ね合わせて転写(1次転写)される。
感光体11としては、長寿命を図ることが可能な非晶質シリコン系感光体か、熱により硬化させるのではなく電子線によって硬化させる電子線硬化型感光体を用いることが好ましい。
クリーニング装置15としては、クリーニング部材として、感光体11の表面移動方向上流側に自由端を向けて感光体11に当接配置されるクリーニングブレードを用いた、カウンターブレード方式のものを好適に使用し得る。本実施例では、クリーニングブレードの自由長は8mmである。又、クリーニングブレードは、ウレタンを主体とした材料で作製される弾性ブレードで、感光体11に対して、線圧約35g/cmの押圧力で当接される。
給紙ユニット20は、転写材Sを収納するためのカセット21a、21b及び手差しトレイ27、カセット内若しくは手差しトレイより転写材Sを1枚ずつ送り出すためのピックアップローラ22a、22b及び26を有する。又、給紙ユニット20は、各ピックアップローラから送り出された転写材Sをレジストローラまで搬送するための給紙ローラ対23及び給紙ガイド24を有する。更に、給紙ユニット20は、画像形成部の画像形成タイミングに合わせて転写材Sを2次転写部(2次転写位置)N2へ送り出すためのレジストローラ25a、25bを有する。
中間転写ユニット30は、無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト31を有する。中間転写ベルト31の材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPVdF(ポリフッ化ビニリデン)などが好適に用いられる。中間転写ベルト31は、駆動ローラ32、テンションローラ33及び従動ローラ34に掛け回されている。駆動ローラ32は、中間転写ベルト31に駆動を伝達する。テンションローラ33は、付勢手段としてのバネの付勢によって中間転写ベルト31に適度な張力を与える。従動ローラ34は、2次転写手段としての2次転写部材である2次転写ローラ36との間で中間転写ベルト31を挟んで2次転写部N2を形成する。駆動ローラ32とテンションローラ33との間に1次転写平面31Aが形成される。中間転写ベルト31は、駆動ローラ32によって駆動が伝達されて、図示矢印R2(時計方向)に所定の周速で回転(周回移動)する。
駆動ローラ32は、金属ローラの表面に数mm厚のゴム(ウレタン又はクロロプレン)をコーティングして中間転写ベルト31とのスリップを防いでいる。駆動ローラ32は、駆動手段としてのパルスモータ(図示せず)によって回転駆動される。中間転写ベルト31を挟んで各感光体11a、11b、11c、11dと対向するように、中間転写ベルト31の内周面側に、1次転写手段としての1次転写部材である1次転写ローラ35(35a、35b、35c、35d)が配置されている。1次転写部材35が中間転写ベルト31を感光ドラム11に向けて押圧することによって、感光ドラム11と中間転写ベルト31とのニップによって1次転写部N1が形成される。各1次転写ローラ35には、それぞれ1次転写電圧印加手段(バイアス印加手段)としての1次転写電源から、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の直流電圧である1次転写電圧が印加される。これにより1次転写部N1に形成される電界の作用により、感光体11から中間転写ベルト31へとトナー像が転写(1次転写)される。
又、中間転写ベルト31を挟んで従動ローラ34に対向するように、中間転写ベルト31の外周面側に、2次転写ローラ36が配置されている。2次転写ローラ36と中間転写ベルト31とのニップによって2次転写部N2が形成される。2次転写ローラ36は中間転写体に対して適度な圧力で加圧されている。2次転写ローラ36には、2次転写電圧印加手段(バイアス印加手段)としての2次転写電源から、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の直流(DC)電圧である2次転写電圧が印加される。これにより2次転写部N2に形成される電界の作用により、中間転写ベルト31から転写材Sへとトナー像が転写(2次転写)される。
又、中間転写ベルト31の表面移動方向において2次転写部N2の下流且つ最上流の1次転写部N1aの上流側に位置して、中間転写ベルト31の画像形成面をクリーニングするための中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーナ37が配置されている。ベルトクリーナ37には、クリーニング部材としてのクリーニングブレードやブラシローラ、及び廃トナーを収納する廃トナーボックスなどが設けられていてよい。ベルトクリーナ37は、中間転写ベルト31上の2次転写残トナーを清掃する。
上述のように中間転写ベルト31上に形成されたトナー像は、2次転写部N2において、所定のタイミングで2次転写部N2まで搬送されてきた転写材Sに一括して転写(2次転写)される。トナー像が転写された転写材Sは、次に定着ユニット40へと搬送され、ここでトナー像が定着された後に、装置の外部に排出される。
定着ユニット40は、内部にハロゲンヒーターなどの熱源を備えた定着ローラ41aと、定着ローラ41aに加圧される加圧ローラ41bと、を有する。加圧ローラ41bにも熱源を備えていてよい。又、定着ユニット40は、上記ローラ対のニップ部へ転写材Sを導くためのガイド43、上記ローラ対から排出されてきた転写材Sを更に装置外部に導き出すための内排紙ローラ44及び外排紙ローラ45などを有する。
制御手段としての制御ユニット(制御処理部)200は、上記各ユニット内の機構の動作を制御するための制御基板やモータドライブ基板などを有する。
又、画像形成装置100は、環境検知手段としての環境センサ50を有する。環境センサ50は、装置内で熱源となる定着ユニット40などの影響を受けずに装置周囲の環境温度、湿度が正確に測定できるような位置に配置されている。本実施例では、環境センサ50は、中間転写ベルトユニット30を挟んで定着ユニット40と離隔された位置に配置されている。この環境センサ出力に基づいて、装置の様々な制御が行われる。
トナーの特性としては、重量平均粒径が5〜8μmであることが、良好な画像を形成する上で好ましい。重量平均粒径が、この範囲内であれば、十分な解像性を有し、鮮明で高画質の画像を形成でき、静電力よりも付着力や凝集力が小さくなり、種々のトラブルが低減する。非磁性トナー粒子の重量平均粒径は、ふるい分け法、沈降法、光子相関法などの種々の方法によって測定することができる。ここでは、測定装置としてコールター社製のコールターマルチサイザー(商品名)を用いた。測定方法は、次の通りである。特級又は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製(例えば、コールターサイエンティフイックジャパン社製の商品名:ISOTON−IIを使用)する。電解水溶液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5mL加え、更に測定試料であるトナーを2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散機で約1〜3分間分散処理し、100μmアパーチャーを用いてトナーの体積、個数を測定し、体積分布と個数分布とを算出する。そして、重量平均粒径を体積分布から求める(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)ことにより、非磁性トナー粒子の重量平均粒径を測定することができる。
非磁性トナー粒子は、従来知られている製法によって製造することができる。非磁性トナー粒子は、構成材料を加熱溶融により均一化し、これを冷却固化し、これを粉砕することによりトナー粒子を製造する粉砕法によっても製造することができる。しかし、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形であるため、略球形形状とするには機械的、熱的又は何らかの特殊な処理を行うことが必要であり、前述した範囲の重量平均粒径とするには球形化処理後のトナー粒子を分級することが必要となる。そこで、前述した非磁性トナー粒子の好ましい製造法として重合法を採用することが好ましい。
本実施例では、中間転写ベルト31としては、厚さ100μmのポリイミド製のベルトを用いた。又、本実施例では、ウレタンスポンジローラを、1次転写部N1に設置する1次転写ローラ35として使用した。本実施例では、中間転写ベルト31の周速は300mm/secであり、転写部のスラスト方向(中間転写ベルトの移動方向と略直交する方向)の幅は330mmである。
本実施例では、感光体11上のトナーの電荷保持量は30μC/gである。又、本実施例では、1次転写時に1次転写ローラ35の芯金に対して40μAの電流が流れるように1次転写電圧を印加する。この電流量は、通常環境として温度/湿度が23℃/60%の環境で設定した適性電流値である。但し、この電流量は、環境変動によるトナーの電荷保持量などの変動により変化させるのが好ましい。
本実施例では、1次転写ローラ35の具体的な構成は次のとおりである。1次転写ローラ35は、1kVの電圧印加で5×107Ωの電気抵抗値を有する。又、1次転写ローラ35は、外径が16mm、芯金の直径が8mmのウレタンスポンジローラである。このウレタンスポンジローラの製造方法においては、ポリウレタン形成材料として、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、及び所望により用いられる導電性付与剤、触媒、整泡剤などを含有するものが使用される。又、このウレタンスポンジローラは、前記ポリウレタンスポンジからなる導電性のウレタンスポンジ層と芯金などの金属部材とを構成部材とするものである。その構造は、硫黄快削鋼などの鋼材に亜鉛などのメッキを施した金属部材やアルミニウム、ステンレス鋼などの金属部材の一部又は全体を、前記導電性ポリウレタンスポンジ層で被覆したものである。これは、導電性ポリウレタンスポンジを所定の形状に成形した後接着する方法などを用いて作製することができる。その接着層としては、導電性塗料からなる接着剤やホットメルトシートなどの公知の材料を用いることができる。
本実施例では、帯電ローラ12は、その表層を、カーボンブラックなどの導電剤を分散混入させた1〜2mmの厚さを有する導電性ゴムで形成し、画像形成時の帯電ムラを防止するためにその電気抵抗値を105〜107Ωcmに制御している。そして、帯電ローラ12は、その弾性を利用してギャップを作らずに感光体11に接触させ(接触式帯電手段)、低電圧で感光体11を帯電させる。帯電ローラ12と感光体11との接触位置が帯電位置である。或いは、帯電ローラ12は、次のような構成であってもよい。ポリエーテルエステルアミドなどのイオン導電性の高分子化合物を含有し、抵抗値を105〜107Ωcmに制御したABS樹脂を射出成形により導電性支持体の表面に0.5〜1mm被覆して抵抗調整層とする。該抵抗調整層の表面に、酸化スズなどの導電性微粒子が分散した熱可塑性樹脂組成物からなる保護層を順次形成する。帯電電圧を印加するための導電性支持体としては金属製軸部材を用いる。この軸部材は、軸受け部と、電圧印加用軸受け部と、外径が14mmの被覆部が一体で構成される。被覆部の周面上には、ポリエーテルエステルアミドなどのイオン導電性の高分子化合物を含有した熱可塑性樹脂であるABS樹脂の体積抵抗値105〜107Ωcmの抵抗調整層が射出成形で0.5〜1mmの厚みで被覆成形加工される。
2.クリーニング装置の周囲の構成
次に、図2をも参照して、本実施例におけるクリーニング装置15の周囲の構成について更に説明する。尚、図2は、代表として1つの画像形成部10について示すが、本実施例では、全ての画像形成部10において実質的に同じ構成である。
クリーニング装置15は、クリーニング容器109と、このクリーニング容器109に保持され、感光体11の表面に当接しているクリーニングブレード110と、スクリュー111と、を有する。本実施例では、クリーニングブレード110は、厚み3mmのウレタンゴムで構成されている。
感光体11の回転方向において1次転写位置よりも下流側且つ帯電位置よりも上流側の位置に、感光体11を光照射により除電する前露光手段(光除電手段)として前露光装置(クリーナ前露光装置,光除電器)112が配設されている。特に、本実施例では、前露光装置112は、クリーニング装置15よりも感光体11の回転方向上流側の位置に配設されている。尚、前露光手段として、クリーニング装置15よりも感光体11の回転方向下流側に、更にクリーナ後露光装置を配置しても良い。
本実施例では、前露光装置112は、光源としてのLEDを感光体11の回転軸方向に整列させたアレイ状光源で構成されている。又、本実施例では、前露光装置112は、光源波長が400nm〜800nmにピークを有し、感光体11の表面における光量が0.1Lux・sec〜50Lux・secの範囲で制御可能であり、光源に印加する電圧を調整することで光量を調節できる。
感光体11は、図示矢印R1方向に所定の速度(周速)で回転駆動され、前露光装置112によってその表面が除電された後、帯電ローラ12によってその表面が一様に帯電される。そして、感光体11の表面に画像露光が照射されると、感光体11の表面には画像に対応する静電潜像(静電像)が形成される。この静電潜像は、上述のように、現像器14によって現像されてトナー像として顕画化される。
3.感光体
次に、図3をも参照して、感光体11に関して、その製造方法も含めて更に詳しく説明する。
本実施例で用いた感光体は、図3に示すように、支持体11Aの上に、下引き層11B、電荷発生層11C、電荷輸送層11D、表面層11Eの順で積層構成された有機感光体である。
感光体の支持体11Aとしては、導電性を示すものであって硬度の測定に影響を与えない範囲内のものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属や合金をドラム状に成形したものなどが使用できる。
下引き層11Bは、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体11Aの保護、支持体11A上の欠陥の被覆、支持体11Aからの電荷注入性改良、又は感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。下引き層11Bの材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ及びゼラチンなどを用いることができる。これらを適当な溶剤に溶解し、支持体11A上に塗布する。その際、下引き層11Bの膜厚としては、0.1〜2μmが好ましい。
次に、下引き層11Bの上に感光層を形成する。
電荷発生層11Cと電荷輸送層11Dとを機能分離し積層させた積層型感光層を形成する場合には、下引き層11B上に電荷発生層11C、電荷輸送層11Dの順で積層する。
ここで、電荷発生層11Cに用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、又各種の中心金属及び結晶系、より具体的には例えばα、β、γ、ε及びX型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン及び特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコンなどが挙げられる。
本実施例では、高画質を実現するために感度を高くできるフタロシアニン化合物を用いた電荷発生層11Cを用いた。
この積層型感光体の場合、電荷発生層11Cは、上記電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター及びロールミルなどの方法を用いて分散させ、該分散液を下引き層上に塗布し乾燥させることにより形成させるか、又は上記電荷発生物質の単独組成からなる膜を蒸着法などを用いることにより下引き層11B上に形成させる。電荷発生層11Cの膜厚は、5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
上記結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、などのビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
本実施例における表面層11Eは、上述した連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合或いは架橋させることにより形成することができる。表面層11Eは、電荷発生層11C上に電荷輸送層11Dとして形成されているか、若しくは電荷発生層11C上に電荷輸送物質と結着樹脂からなる電荷輸送層11Dを形成させた後にその上に保護層として形成されている。いずれの場合も、正孔輸送性化合物を含有する溶液を製膜し、該正孔輸送性化合物を重合或いは架橋し、膜を硬化させることにより表面層を形成することができる。溶液を製膜する方法としては、例えば浸漬コーティング法、スプレイコーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティング法などの塗布法を用いて行うことができる。中でも効率性/生産性の点から、浸漬コーティング法が好ましい。又、蒸着、プラズマその他の公知の製膜方法も適用できる。
上記重合或いは架橋は、熱や可視光、紫外線などの光、更に放射線などを用いて行うことができる。例えば、上記正孔輸送性化合物と必要によっては重合開始剤を含有させた表面層用の塗工液を用いて形成した膜に、熱を加えるか光や放射線を照射することにより、表面層11Eを形成するとよい。中でも放射線を用いるのがより好ましい。なぜなら放射線による重合は重合開始剤を特に必要としないからである。これにより非常に高純度な三次元マトリックスの表面層11Eを作製することができ、良好な電子写真特性を示す感光体を得ることができるからである。上記放射線とは電子線又はγ線などである。電子線を照射する場合には、スキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型などの加速器を用いて行うことができる。HUと弾性変形率との値が特定の範囲にあり、電気特性及び機械的劣化に対する耐久性を向上させた感光体を得る上で、電子線の照射条件を考慮することは重要である。例えば、加速電圧は250KV以下であると好ましく、より好ましくは150KV以下である。又、照射線量は0.1Mradから100Mradの範囲であると好ましく、より好ましくは0.5Mradから20Mradの範囲である。加速電圧が上記を越えると電気特性の劣化が起こる。又、照射線量が上記範囲よりも少ない場合には表面層11Eの硬化が不十分となり、一方照射線量が多い場合には電気特性の劣化が起こる。
更に、表面層11Eをより硬化させるために、電子線による重合反応時に熱を加えるとよい。熱を加えるタイミングとしてはラジカルが存在する間に感光体が一定の温度になっていれば良いため、電子線照射前、照射中、照射後、いずれの段階で加熱してもよい。加熱温度は、感光体の温度が室温〜250℃となるように調整すればよい。より好ましくは50℃〜150℃である。温度が上記範囲よりも高い場合には、感光体の材料に劣化が生じるからである。加温する時間は、その温度にもよるが、おおよそ数秒から数十分程度であるとよい。
照射及び加温時の雰囲気は、大気中、窒素及びヘリウムなどの不活性ガス中、真空中のいずれの場合であっても構わない。酸素によるラジカルの失活を抑制することができるという点で、不活性ガス中或いは真空中が好ましい。
上記正孔輸送性化合物を電荷輸送層11Dとして用いた場合の膜厚は、1〜50μmが好ましく、特には3〜30μmが好ましい。
又、上記正孔輸送性化合物を電荷発生層11C/電荷輸送層11D上に保護層として用いた場合、その下層に当たる電荷輸送層11Dは以下のようにして形成する。
適当な電荷輸送物質、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリスチリルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾールなどの複素環化合物、トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物などを適当な結着樹脂(上述した電荷発生層の箇所で説明したのと同様な樹脂が適用できる)とともに溶剤に分散/溶解し、該溶液を上述の公知の方法を用いて電荷発生層11C上に塗布し乾燥させることにより形成する。この場合の電荷輸送物質と結着樹脂の比率は、両者の全重量を100とした場合に電荷輸送物質の重量は20〜100であると好ましく、より好ましくは30〜100である。電荷輸送物質の量がそれ以下であると、電荷輸送能が低下し、感度低下及び残留電位の上昇などの問題が生ずる。保護層が形成された積層型感光体における電荷輸送層11Dの膜厚は、1〜50μmが好ましく、より好ましくは3〜30μmである。又、この時の表面層11Eの膜厚は0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜7μmである。本実施例としては、電荷輸送層11Dは18μm、表面層11Eは5μmの膜厚の感光体を用いた。
4.前露光量適正化制御
(a)原理
本実施例では、画像形成装置100は、感光体11と帯電ローラ12とが対向する帯電位置を通過する際に、帯電ローラ12から感光体11に流れる直流電流を検出する帯電電流検出手段としての電流検出器(検出回路)202(図11)を有する。そして、感光体11上の潜像形成を行わない暗部電位VD領域、潜像形成を行った明部電位VL領域がそれぞれ帯電ローラ12を通過する際の帯電直流電流を電流検出器202により検出する。その検出値に基づいて、画像形成時に前露光装置112により照射する露光量(光照射量)を制御する構成とする。特に、本実施例では、感光体11上に潜像形成を行わない暗部電位VD領域、潜像形成を行った明部電位VL領域の帯電電流を検出する動作は、前露光装置112で感光体11に照射する前露光量を少なくとも2段階に変化させて行う。そして、それぞれの暗部電位VD領域、明部電位VL領域の直流電流量の差を検出することで、所望の前露光量に制御する。
つまり、本実施例では、画像形成装置100は、帯電器12に所定の電圧を印加した際に流れる電流を検出する電流検出器202を有する。又、画像形成装置100は、次の第1の領域と第2の領域とを感光体11に形成させるテストモードを実行させる実行手段を有する。即ち、第1の領域は、帯電器12により所定の帯電条件下で帯電処理され且つ画像露光器13により所定の露光条件下で露光処理された領域である。又、第2の領域は、帯電器12により所定の帯電条件下で帯電処理され且つ画像露光器13により実質露光処理されない領域である。本実施例では、この実行手段の機能は、制御ユニット(制御処理部)200が有する。更に、画像形成装置100は、上記テストモードにおいて感光体11に形成された第1及び第2の領域が帯電位置を通過する際に得られた電流検出器202の出力に応じて光除電器112による光照射量を調整する調整手段を有する。本実施例では、この調整手段の機能は、制御ユニット(制御処理部)200が有する。特に、本実施例では、実行手段は、光除電器112により所定の複数の除電条件下で除電処理することで感光体11の第1及び第2の領域をそれぞれ複数形成させるようになっている。
斯かる構成により、環境、感光体11の劣化状況に応じて、リアルタイムで、ゴーストを消失させ得るのに必要な前露光量を算出し、設定することが可能となる。そのため、過剰な前露光量を感光体11に照射することを防止することが可能となる。従って、前露光の弊害として発生する明部電位上昇、或いは感光体11の放電劣化による画像流れやフィルミングなどの画像欠陥を抑制することが可能になり、且つ、感光体11の寿命の低下などの弊害を抑制することが可能になる。更に、本実施例では、帯電ローラ12を感光体11の電位に対応する情報を検出する手段として用いるので、特別な手段を配置することなく、当該情報を検出することが可能である。以下、更に詳しく説明する。
(b)全体シーケンス
次に、図4の制御フロー、図5のタイミングチャート、及び、図6の感光体11の明部電位VL領域、暗部電位VD領域の電位推移を示す模式図を参照して、本実施例におけるテストモードである前露光量適正化制御(電位予測制御)について説明する。
尚、以下の説明では、代表として1つの画像形成部10における動作を説明するが、本実施例では、全ての画像形成部10で同じ動作が行われる。典型的には、前露光量適正化制御は、全ての画像形成部10で実質的に同じタイミングで実行されるが、異なるタイミングで実行されてもよい。
本実施例では、前露光量適正化制御における画像形成装置100の各部の動作の制御や情報処理は、画像形成装置の動作を統括的に制御する制御手段としての制御処理部(制御ユニット)200が行う。
本実施例の画像形成装置100は、装置本体内に、画像形成装置100の使用量検知手段として出力枚数(画像形成枚数)をカウントするカウンター(カウンターメモリ)203(図11)を有する。そして、図4に示すように、画像形成動作中でも、カウンター203による出力枚数のカウント結果により、所定の出力枚数毎に1回の電位予測制御を行う。この制御間隔は、装置本体の置かれている環境や画像形成装置100のトータルの出力枚数によって変えることが可能である。通常、出力枚数約500枚〜5000枚に1回の制御を行うことが望ましい。本実施例では、画像形成装置100のトータルの出力枚数に関わらず、1000枚に1回の制御を行うように設定した。
図4、図5を参照して、先ず、装置本体内でカウンター203により出力枚数1000枚に達したと判断されると、STEP1の制御が行われる。この際、帯電ローラ12、現像器14、1次転写ローラ35などに印加されるバイアス、並びに、画像露光器13、前露光装置112が一度Off状態になり、画像形成は一度中断される。
次に、STEP1の制御において、感光体11を所定の帯電条件下で帯電処理した後、前露光装置112の光量を第1の光量とする。そして、画像露光器13の光量を制御することで感光体11上に所定の露光条件下で露光処理された明部電位VL領域(第1の領域)と、画像露光器13で実質露光処理されない暗部電位VD領域(第2の領域)とを形成する。
尚、このSTEP1の制御の際、明部電位、暗部電位領域を作成するために、像露光の光量を切り替えて行う。ここで、例えば、後述する図7のフローチャートには、暗部電位を作成する際に、像露光をOFFすると記載されているが、もちろん、感光体11上の電位に大きな影響を与えるような露光量ではなく、微弱露光であれば、像露光していても構わない。感光体11上の電位として、明部電位領域と暗部電位領域を作成することが本発明においては重要である。
そして、明部電位VL領域と暗部電位VD領域のそれぞれに関して、帯電ローラ12の電位(印加電圧の直流成分の値)と、帯電ローラ12に到達する直前の感光体11の表面の電位との電位差、即ち、帯電コントラストを算出する。詳しくは後述するように、明部電位VL領域、暗部電位VD領域のそれぞれにおける帯電コントラストは、帯電電流検出手段としての電流検出器202を用いて検出される、帯電ローラ12を通過する際の感光体11の電位に対応する。そして、明部電位VL領域と暗部電位VD領域の電位の差分(帯電コントラストの差分に対応)である電位差ΔV(D−L)を算出する。
次に、STEP1の制御において、前露光装置112の光量を第2の光量に変化させ、上記同様にして、画像露光器13の光量を制御することで感光体11上に明部電位VL領域と暗部電位VD領域とを形成する。そして、上記同様にして、明部電位VL領域と暗部電位VD領域の電位差ΔV(D−L)を算出する。
続いて、STEP2の制御に移行し、STEP1の制御における各前露光量と、各前露光量に対して算出された明部電位VL領域と暗部電位VD領域の電位差ΔV(D−L)とから、前露光量Lと電位差ΔV(D−L)との関係式Pを算出する。そして、この関係式Pより、所定の電位差ΔV’(D−L)になるような前露光量L’を算出し、画像形成時の前露光量を、この新たに算出された前露光量L’に設定する。
前露光量は、第1の光量、第2の光量の2段階に限定されるものではなく、3段階、4段階とサンプリング点を増やしていくことは、前露光量Lと電位差ΔV(D−L)との関係式の精度を上げるために有効な手段である。尚、前露光を行わないで電位を検出した結果と、単数又は複数の前露光量にて前露光を行って電位を検出した結果と、を用いて制御を行うこともできる。
更に説明すると、図6に示すように、帯電ローラ12よる帯電処理を行った後の感光体11の表面の電位は、その後の像露光を受けた部分である明部電位VL_int領域と、像露光を受けていない部分である暗部電位VD_int領域の2つの領域に分けられる。
ここで、本実施例の前露光量適正化制御は、あくまでゴースト電位を消失させることが目的であるので、明部電位は、暗部電位と最大に電位差がある状態に設定するのが好ましい。即ち、明部電位VL_int領域は、その環境下において画像形成時に使用される最大の像露光量で作像された領域であることが望ましい。典型的には、所謂、全面最大露光を行ったベタ黒状態の潜像形成を行うことが好ましい。
明部電位VL_int領域と、暗部電位VD_int領域は、いずれも1次転写部を通過する際に、帯電ローラ12による帯電部(帯電位置)で印加されたバイアスとは逆極性のバイアスを印加されるので、明部電位と暗部電位との電位差は小さくなる。しかし、この時、1次転写部の転写電位を相当大きくしなければ、明部電位と暗部電位との電位差がなくなることはない。通常使用する転写電位の設定では、一般に幾分かの電位差が残ってしまう。これが、ゴーストなどの画像不良を引き起こす原因となる。従って、本実施例では、前露光装置112を設置し、明部電位と暗部電位との電位差を更に小さくするようにする。
一般的に、転写後に残った明部電位と暗部電位との電位差を前露光によって完全に消失させるように、前露光量を設定することが多い。即ち、明部電位が前露光装置112による前露光部(前露光位置)を通過した際の電位をVL_lastとし、暗部電位が前露光部を通過した際の電位をVD_lastとする。このとき、VD_lastとVL_lastの電位差ΔV(D−L)を0Vにするように設定することが多い。典型的には、前露光量は、像露光光量の約10倍に設定されることが多く、プロセススピードなどによっても異なるが、30〜50Lux・sec程度が一般的である。
しかし、本発明者の検討によれば、ゴーストなどの画像欠陥を目視上ほとんど認識できないレベルにするには、一般的なオフィスで使う複写機などであれば、VD_lastとVL_lastの電位差ΔV(D−L)が10V程度であれば充分である。又、ゴーストなどの画像欠陥を抑制する程度を使用者によって可変とするために、この電位差ΔV(D−L)のターゲットを変えて、前露光装置112の設定を変えられるようにすることができる。即ち、本実施例は、電位差ΔV(D−L)のターゲットを設定すれば、そのターゲットに応じて適正に前露光装置112の前露光量を設定できる制御を提供する。
(c)STEP1制御
次に、本実施例の前露光量適正化制御におけるSTEP1の制御をより詳細に説明する。
前露光装置112から感光体11の表面に所定の第1の光量の前露光が照射された状態で、帯電ローラ12、1次転写ローラ35にそれぞれ所定の電圧を印加する。そして、画像露光器13の像露光を行った明部電位VL_int領域と、像露光を行わない暗部電位VD_int領域の2種類の領域を作成する。
帯電電流検出手段としての電流検出器202によって、明部電位VL_int領域、暗部電位VD_int領域の各領域における帯電直流電流を検出する。電流検出器202は、帯電電源201が帯電ローラ12に対して電圧を出力している際に帯電ローラ12から感光体11に流れる電流を検出するようになっている。これにより、明部電位VL_int領域が前露光部を通過し、帯電部に突入する直前の感光体11の表面の電位VL_lastを算出する。又、これにより、暗部電位VD_int領域が前露光部を通過し、帯電部に突入する直前の感光体11の表面の電位VD_lastを算出する。
そして、明部電位が帯電部に突入する直前の感光体11の表面の電位VL_lastと暗部電位が帯電部に突入する直前の感光体11の表面の電位VD_lastの電位差ΔV(D−L)を算出する。
続いて、前露光装置112の光量を所定の第2の光量に切り替えて、上記同様にして、電位差ΔV(D−L)を算出する。
ここで、明部電位VL_last及び暗部電位VD_lastと、帯電直流電流との関係について説明する。この関係は、より詳細には、これら両領域が帯電部に突入する直前の感光体11の表面の電位と、帯電ローラ12の電位(印加電圧の直流成分の値)との電位差、即ち、帯電コントラストに対する、帯電直流電流の関係に対応する。
帯電コントラストに対する帯電直流電流の関係は、環境、感光体11の表面の劣化、帯電手段の劣化などにはほとんど左右されず、ほぼ一義的に決まる。本実施例では、図12に示すような関係になっている。又、帯電コントラストに対する帯電直流電流の関係は、感光体11の表層の膜厚の変化によってのみ変化することが知られている。前述のように、本実施例では、感光体11の表面層として、ほとんど削れない材料を使用している。従って、本実施例では、帯電コントラストに対する帯電直流電流の関係は図12に示すように一義的に決まるものとして、この関係を使用して、帯電直流電流の検出値から感光体11の表面の電位を算出する。本実施例では、図12の関係を表す関係式は、装置本体の制御処理部200が備える記憶手段(記憶部)に記憶されている。これにより、制御処理部200は、電流検出器202の出力に応じて、感光体11の表面の電位、より詳細には、帯電コントラストを算出することができる。
尚、感光体11の表面層として膜厚の変化する削れ易い感光体11を使用する場合は、感光体11のそれぞれの膜厚状態によって、帯電コントラストに対する帯電直流電流の関係が変わることがある。この場合には、感光体11のそれぞれの膜厚状態に応じた帯電コントラストに対する帯電直流電流の関係式を設定することが好ましい。このような関係式は、装置本体が備える記憶手段に記憶させておくことができ、これを利用することで、感光体11の表面の電位の検出の精度が向上する。
STEP1の制御については、具体例を参照して後で更に詳しく説明する。
(d)STEP2制御
次に、本実施例の前露光適正化制御におけるSTEP2の制御をより詳細に説明する。
STEP1の制御で算出した2種類の前露光量に対する電位VL_lastと電位VD_lastの電位差ΔV(D−L)から、図9に示すような、前露光装置112の光量Lと電位差ΔV(D−L)との関係式Pを算出する。
続いて、電位差ΔV(D−L)が所望の値になる前露光装置112の光量L’を関係式Pから算出し、画像形成時の前露光量の設定を算出された前露光装置112の光量L’に変更する。
STEP2の制御については、具体例を参照して後で更に詳しく説明する。
(e)STEP1制御の具体例
次に、図7及び図10を参照して、STEP1の制御について一例を挙げてより詳しく説明する。
装置本体の制御処理部200は、カウンター203により出力枚数を検知して、前露光量適正化制御のタイミングである場合には、STEP1の制御に入るべく、準備段階として、画像形成を中断する。具体的には、帯電DC電圧をOff、像露光をOff、前露光をOff、現像DC電圧をOff、転写DC電圧をOffする。
又、この準備段階として、直前までの画像形成の履歴を感光体11から消去するために、像露光をOffした状態で少なくとも前露光を感光体11の1周分以上照射した後に画像形成を中止するプロセスに入るのが好ましい。画像形成の条件によっては、この工程を省略してもよい。
次に、前露光量が10Lux・secの状態で、+300Vの転写DC電圧を印加し、又−700Vの帯電DC電圧を印加する。これによって、感光体11上に像露光が行われていない暗部電位VD領域が形成され、−700Vに帯電された感光体11の表面が1次転写部に到達する。その後、この暗部電位VD領域の感光体11の電位は1次転写部を通過した後に、約−100〜−500Vになる。ここで、前露光の設定、並びに、帯電電位及び転写電位の設定は、装置本体の置かれている環境や、装置本体のプロセススピードなどの設定に応じて自由に設定してよい。本例では、1次転写部を通過した後に−300Vとなった。
次に、1次転写部を通過した後の感光体11の電位が−300Vの領域は、前露光によって除電され、約−50〜−200Vとなる。本例では、前露光部を通過した後に−100Vとなった。
次に、前露光部を通過した後の感光体11の電位が−100Vの領域は、再度、帯電部を通過し、その際の帯電ローラ12に流れる直流電流量を帯電電流検出手段(帯電電流量測定手段)としての電流検出器202で測定する。この際、制御処理部200にて、図12に示す関係を用いて、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastが算出される。即ち、本実施例では、電位センサなどがなくとも、帯電直流電流量から、前露光部を通過した後の感光体11の電位が−100Vであることが算出される。
次に、転写DC電圧、帯電DC電圧の設定はそのままで、今度は像露光が行われることによって、感光体11上に像露光された明部電位VL領域が形成され、明部電位VL領域が1次転写部を通過する。その後、この領域は、前露光部を通過した後に、再度、帯電部を通過し、その際の帯電ローラ12に流れる直流電流量から電位VL_lastが算出される。本例では、像露光を行った直後の感光体11の明部電位VL領域の電位は−200V、この領域が1次転写部を通過した後の感光体11の電位は−100V、更にこの領域が前露光部を通過した後の感光体11の電位は−50Vであった。
次に、制御処理部200において、前露光量が10Lux・secの際の、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastと明部電位VL領域が前露光部を通過した後の電位VL_lastの電位差ΔV(D−L)が算出される。この算出結果は、算出値Aとして記憶される。ここでは、算出値Aは50Vであった。
続いて、今度は前露光量の設定を30Lux・secに変更した状態で、上記露光量が10Lux・secの場合と同様の方法にて、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastを算出する。前露光を強くすることによって、本例では、前露光部を通過した後の感光体11の電位VD_lastは−50Vとなった。
次に、前露光量が30Lux・secの状態で、上記露光量が10Lux・secの場合と同様の方法にて、明部電位VL領域が前露光部を通過した後の電位VL_lastを算出する。この場合も、前露光を強くすることによって、本例では、前露光部を通過した後の感光体11の電位VL_lastは−45Vとなった。
次に、制御処理部200において、前露光量が30Lux・secの際の、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastと明部電位VL領域が前露光部を通過した後の電位VL_lastの電位差ΔV(D−L)が算出される。この算出結果は、算出値Bとして記憶される。ここでは、算出値Bは5Vであった。
(f)STEP2制御の具体例
次に、図8及び図10を参照して、STEP2の制御について一例を挙げてより詳しく説明する。
制御処理部200は、STEP1の制御で算出された電位差ΔV(D−L)の算出値A、B、及び、その際の前露光装置112の光量設定Lから、関係式Pを算出する。
本例では、制御処理部200で算出される関係式Pは、下記の通りである。
y=−2x+65 ・・・P’式
(但し、xは光量設定値L、yは電位差ΔV(D−L))
次に、帯電DC電圧及び転写DC電圧はoffされ、又、前露光はoffされ、画像形成へと移行する。この際、式P’に従って、新たに設定すべき画像形成時の前露光量L’を算出する。
本実施例では、画像形成装置100は一般的なオフィス機であるので、電位VD_lastと電位VL_lastの電位差ΔV(D−L)が10V以下であれば、ゴーストなどの画像不良が問題となることはない。そこで、本実施例では、電位差ΔV(D−L)のターゲットを10Vとして設定している。
ここで、ゴーストなどの画像不良が発生する条件としては、上述のようにして算出した電位差ΔV(D−L)、即ち、前露光部を通過した後の暗部電位VD領域と明部電位VL領域の電位差をできるだけ小さくすることが重要である。そして、図9に示すように、前露光量を上げることで、電位差ΔV(D−L)を小さくするように制御することは可能である。前露光量を極端に大きくすれば、図9に示すように、電位差ΔV(D−L)を略0Vにすることも可能である。そのため、従来は、種々の状況下において良好にゴーストを抑制できるように、一律に可及的に大きな前露光量に設定することが多い。
しかしながら、必要以上に前露光を照射して、電位差ΔV(D−L)を必要以上に小さく保つことは意味がない。前述したように、電位差ΔV(D−L)は、通常オフィスで使われる環境においては、10V以下程度で十分である。好ましくは、4〜10V程度に制御すればよい。更に、所望に応じて、例えばゴーストが目立つ画像を頻繁に出力するような場合には、電位差ΔV(D−L)を4V以下などに設定してもよい。本実施例の方法によれば、所望に応じて電位差ΔV(D−L)のターゲットを自由に変えることが可能であり、様々な状況下においても、必要最低限の前露光量に抑えることが可能となる。
従って、制御処理部200は、式P’においてyに10を代入してxを算出する。これにより、本例では、x=27.5となり、画像形成時に設定すべき前露光量L’が27.5Lux・secであることが算出される。そして、本実施例では、次に前露光量適正化制御が実施されるまで、画像形成時の前露光量の条件は、ここで新たに算出された前露光量に変更される。
このように、本実施例によれば、画像形成装置100は、帯電位置に到達する直前の感光体11の表面の電位に対応する情報を検出する検出手段202を有する。又、画像形成装置100は、次の情報を検出手段202によって検出した結果に基づいて、画像形成時における前露光手段112の露光量を制御する制御手段200を有する。即ち、第1に、帯電手段12によって帯電された後に像露光手段3による露光が行われずに再び帯電位置に到達する直前の感光体11の表面の電位に対応する情報である。第2に、帯電手段12によって帯電された後に像露光手段3による露光が行われて再び帯電位置に到達する直前の感光体11の表面の電位に対応する情報である。特に、本実施例では、上記第1、第2の情報を、それぞれ少なくとも2つの異なる露光量にて前露光手段112が感光体11を照射している状態で検出した結果に基づいて、画像形成時における前露光手段112の露光量を制御する。
以上、本実施例に従って前露光量を設定することにより、過剰な前露光の照射を避け、感光体11の劣化を抑えることが可能になる。又、本実施例では、電位センサなどを用いなくて済むので、構成はより簡易である。即ち、本実施例によれば、簡易な構成により最適な前露光量を設定することができ、前露光量が過剰であることによる感光体11の明部電位の上昇、画像流れやフィルミングの発生による画像欠陥などを抑制することができる。これにより、より画質の安定した出力を維持することが可能である。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
図13、図14、図17に示すように、本実施例では、感光体11の周囲に電位検出手段(帯電電位測定手段)としての電位センサ(電位検出器)120が配置されている。
即ち、実施例1では、感光体11上の対象の領域が帯電部を通過する際の帯電直流電流を測定した結果から前露光部を通過した後の電位VD_last及び電位VL_lastを算出した。これに対して、本実施例では、直接的に感光体11の表面電位を測定することが可能である。従って、STEP1の制御は、実施例1より簡易になる。
つまり、本実施例では、画像形成装置100は、感光体11の表面電位を検出する電位検出器120を有する。又、画像形成装置100は、実施例1と同様の第1の領域と第2の領域とを感光体11に形成させるテストモードを実行させる実行手段を有する。そして、本実施例では、画像形成装置100は更に、上記テストモードにおいて感光体11に形成された第1及び第2の領域を電位検出器120により検出された結果に応じて光除電器112による光照射量を調整する調整手段を有する。本実施例では、この調整手段の機能は、制御ユニット(制御処理部)200が有する。特に、本実施例では、実行手段は、光除電器112により所定の複数の除電条件下で除電処理することで感光体11の第1及び第2の領域をそれぞれ複数形成させるようになっている。
図13に示すような場所、即ち、感光体11の回転方向においてクリーニング装置15の下流且つ帯電ローラ12の上流に電位センサ120を配置する場合は、前露光部を通過した後の感光体11の電位は、直接電位センサ120で検知した電位の値と一致する。
しかし、図14に示すような場所、即ち、感光体11の回転方向において帯電ローラ12の下流に電位センサ120を配置する場合は、前露光部を通過した後の感光体11の電位は、直接電位センサ120で検知した電位の値と一致しなくなることがある。即ち、この場合、再び帯電部を通過して、再び暗部電位VDの状態にまで戻されてしまうと、前露光部を通過した後の感光体11の電位を正確に知ることができなくなる。従って、この場合は、図16に示すように、電位センサ120で感光体11の電位を測定する直前に帯電電圧の印加を一時的に停止し、前露光部を通過した後の感光体11の電位がそのまま電位センサ120による検出部まで到達するように制御する。そして、電位センサ120による感光体11の電位の検出は、この帯電電圧の印加を一時的に停止している間に行う。
尚、本実施例では、帯電手段として感光体11に接触した部材(接触帯電部材)である帯電ローラ12を用いる。しかし、本実施例のように電位センサ120で直接感光体11の電位を測定する場合は、コロナ帯電器や非接触帯電ローラなどの非接触式帯電手段を用いてもよい。
本実施例では、画像形成装置100は、感光体11と帯電ローラ12とが対向する帯電位置を通過する直前の感光体11上の電位を直接的に検出するために、電位検出手段としての電位センサ120を有する。そして、感光体11上に潜像形成を行わない暗部電位VD領域、潜像形成を行った明部電位VL領域がそれぞれ帯電ローラ12を通過する直前の感光体11の電位を電位センサ120により直接的に検出する。その検出値に基づいて、画像形成時に前露光装置112により照射する露光量を制御する構成とする。特に、本実施例では、感光体11上に潜像形成を行わない暗部電位VD領域、潜像形成を行った明部電位VL領域の感光体11の電位を検出する動作は、前露光装置112で感光体11に照射する前露光量を少なくとも2段階に変化させ行う。そして、それぞれの暗部電位VD領域、明部電位VL領域の感光体11の電位の差を検出することで、所望の前露光量に制御する。
斯かる構成により、実施例1と同様、環境、感光体11の劣化状況に応じて、リアルタイムで、ゴーストを消失させ得るのに必要な前露光量を算出し、設定することが可能となる。そのため、過剰な前露光量を感光体11に照射することを防止することが可能となる。従って、前露光の弊害として発生する明部電位上昇、或いは感光体11の放電劣化による画像流れやフィルミングなどの画像欠陥を抑制することが可能になり、且つ、感光体11の寿命の低下などの弊害を抑制することが可能になる。
次に、図15を参照して、本実施例の前露光量適正化制御におけるSTEP1の制御についてより詳しく説明する。
装置本体の制御処理部200は、カウンター203により出力枚数を検知して、前露光量適正化制御のタイミングである場合には、STEP1の制御に入るべく、準備段階として、画像形成を中断する。具体的には、帯電DC電圧をOff、像露光をOff、前露光をOff、現像DC電圧をOff、転写DC電圧をOffする。
又、この準備段階として、直前までの画像形成の履歴を感光体11から消去するために、像露光をOffした状態で少なくとも前露光を感光体11の1周分以上照射した後に画像形成を中止するプロセスに入るのが好ましい。画像形成の条件によっては、この工程を省略してもよい。
次に、前露光量が10Lux・secの状態で、+300Vの転写DC電圧を印加し、又−700Vの帯電DC電圧を印加する。これによって、感光体11上に像露光が行われていない暗部電位VD領域が形成され、−700Vに帯電された感光体11の表面が1次転写部に到達する。その後、この暗部電位VD領域の感光体11の電位は1次転写部を通過した後に、約−100〜−500Vになる。ここで、前露光の設定、並びに、帯電電位及び転写電位の設定は、装置本体の置かれている環境や、装置本体のプロセススピードなどの設定に応じて自由に設定してよい。本例では、1次転写部を通過した後に−300Vとなった。
次に、1次転写部を通過した後の感光体11の電位が−300Vの領域は、前露光によって除電され、約−50〜−200Vとなる。本例では、前露光部を通過した後に−100Vとなった。
次に、前露光部を通過した後の感光体11の電位が−100Vの領域は、電位センサ120の検出部に到達し、この領域の電位VD_last(本例では、−100V)が直接的に電位センサ120によって測定される。
次に、転写DC電圧、帯電DC電圧の設定はそのままで、今度は像露光が行われることによって、感光体11上に像露光された明部電位VL領域が形成され、明部電位VL領域が1次転写部を通過する。その後、この領域は、前露光部を通過した後に、電位センサ120の検出部に到達し、電位VL_lastが直接的に電位センサ120で測定される。本例では、像露光を行った直後の感光体11の明部電位VL領域の電位は−200V、この領域が1次転写部を通過した後の感光体11の電位は−100V、更にこの領域が前露光部を通過した後の感光体11の電位は−50Vであった。
次に、制御処理部200において、前露光量が10Lux・secの際の、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastと明部電位VL領域が前露光部を通過した後の電位VL_lastの電位差ΔV(D−L)が算出される。この算出結果は、算出値Aとして記憶される。ここでは、算出値Aは50Vであった。
続いて、今度は前露光量の設定を30Lux・secに変更した状態で、上記露光量が10Lux・secの場合と同様の方法にて、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastを算出する。前露光を強くすることによって、本例では、前露光部を通過した後の感光体11の電位VD_lastは−50Vとなった。
次に、前露光量が30Lux・secの状態で、上記露光量が10Lux・secの場合と同様の方法にて、明部電位VL領域が前露光部を通過した後の電位VL_lastを算出する。この場合も、前露光を強くすることによって、本例では、前露光部を通過した後の感光体11の電位VL_lastは−45Vとなった。
次に、制御処理部200において、前露光量が30Lux・secの際の、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastと明部電位VL領域が前露光部を通過した後の電位VL_lastの電位差ΔV(D−L)が算出される。この算出結果は、算出値Bとして記憶される。ここでは、算出値Bは5Vであった。
次に、STEP2の制御について説明すると、STEP2の制御は、実施例1におけるSTEP2の制御と実質的に同じである。
即ち、制御処理部200は、STEP1の制御で算出された電位差ΔV(D−L)の算出値A、B、及び、その際の前露光装置112の光量設定Lから、関係式Pを算出する。
本例では、制御処理部200で算出される関係式Pは、下記の通りである。
y=−2x+65 ・・・P’式
(但し、xは光量設定値L、yは電位差ΔV(D−L))
尚、本実施例においても、上記方法によれば、所望に応じて電位差ΔV(D−L)のターゲットを自由に変えることが可能であり、様々な状況下においても、必要最低限の前露光量に抑えることが可能となる。
本実施例では、画像形成装置100は一般的なオフィス機である。しかし、ここでは、より厳しくゴーストを抑制した場合を想定して、暗部電位VD領域が前露光部を通過した後の電位VD_lastと、明部電位VL領域が前露光部を通過した後の電位VL_lastの電位差ΔV(D−L)が5Vになるように設定した。
従って、制御処理部200は、式P’においてyに5を代入してxを算出する。これにより、本例では、x=30となり、画像形成時に設定すべき前露光量L’が30Lux・secであることが算出される。そして、本実施例では、次に前露光量適正化制御が実施されるまで、画像形成時の前露光量の条件は、ここで新たに算出された前露光量に変更される。
以上、本実施例に従って前露光量を設定することにより、過剰な前露光の照射を避け、感光体11の劣化を抑えることが可能になる。又、本実施例では、電位センサ120を使用することで、感光体11の電位を直接的に測定することができるので、制御処理はより簡易である。