以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する。)の例について、添付図面を参照しながら説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
<1.第1の実施形態>
[画像形成装置の構成及び制御系]
図2は、第1の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す断面模式図である。図3は、第1の実施形態に係る画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
図2、3に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した直接転写方式のモノクロ画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光ドラム211上に形成されたK成分(ブラック)のトナー像を用紙に直接転写することにより画像を形成する。
図2、3に示すように、画像形成装置1は、画像読取部11、操作表示部12、画像処理部13、画像形成部20、給紙部14、排紙部15、用紙搬送部16、及び制御部17を備える。
制御部17は、CPU(Central Processing Unit)171、ROM(Read Only Memory)172、RAM(Random Access Memory)173等を備える。CPU171は、ROM172又は記憶部182から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM173に展開し、展開したプログラムと協働して、画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。
通信部181は、例えばNIC(Network Interface Card)、MODEM(MOdulator-DEModulator)、USB(Universal Serial Bus)等の各種インターフェースを有する。
記憶部182は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。記憶部182には、例えば各ブロックの動作を制御する際に参照されるパラメーターや、除電出力の適否を判断する際に参照される基準値などが格納される。
制御部17は、通信部181を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の端末装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部17は、例えば外部の端末装置から送信されたページ記述言語(PDL:Page Description Language)による画像データ(入力画像データ)を受信し、これに基づいて用紙に画像を形成させる。
画像読取部11は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置111及び原稿画像走査装置112(スキャナー)等を備える。
自動原稿給紙装置111は、原稿トレイに載置された原稿を搬送機構により搬送して原稿画像走査装置112へ送り出す。自動原稿給紙装置111により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿の画像(両面を含む)を連続して読み取ることが可能となる。
原稿画像走査装置112は、自動原稿給紙装置111からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部11は、原稿画像走査装置112による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部13において所定の画像処理が施される。
操作表示部12は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部121及び操作部122として機能する。表示部121は、制御部17から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部122は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部17に出力する。
ユーザーは、操作表示部12を操作して、原稿設定、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定、片面/両面設定、及び用紙設定(用紙の坪量、光沢の有無を含む)などの画像形成に関する設定を行うことができる。設定された情報は、例えば記憶部182に記憶される。
画像処理部13は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部13は、制御部17の制御下で、階調補正データに基づいて階調補正を行う。また、画像処理部13は、入力画像データに対して、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部20が制御される。
画像形成部20は、入力画像データに基づいて、K成分のトナーによるトナー像を形成するためのトナー像形成部21、トナー像形成部21により形成されたトナー像を用紙に転写する転写部22、及び用紙に転写されたトナー像を定着する定着部23等を備える。
トナー像形成部21は、感光ドラム211、帯電装置212、露光装置213、現像装置214、除電装置216、ドラムクリーニング装置217、及び感光体電位検出計190等を備える。
感光ドラム211(感光体の例)は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。
電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置213による露光を受けて一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネート樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
帯電装置212は、例えばスコロトロン帯電装置やコロトロン帯電装置等のコロナ放電発生器で構成される。帯電装置212は、コロナ放電によって感光ドラム211の表面を一様に負極性に帯電させる。
露光装置213は、例えば複数の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が直線状に配列されたLEDアレイ、個々のLEDを駆動するためのLPH駆動部(ドライバーIC)、及びLEDアレイからの放射光を感光ドラム211上に結像させるレンズアレイ等を有するLEDプリントヘッドで構成される。LEDアレイの1つのLEDが、画像の1ドットに対応する。制御部17によってLPH駆動部が制御されることにより、LEDアレイに所定の駆動電流が流れ、特定のLEDが発光する。
露光装置213は、感光ドラム211に対してモノクロ画像に対応する光を照射する。光の照射を受けて感光ドラム211の電荷発生層で発生した正電荷が電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光ドラム211の表面電荷(負電荷)が中和される。これにより、感光ドラム211の表面には、周囲との電位差により静電潜像が形成される。
現像装置214(現像部の一例)は、K成分の現像剤(例えばトナーと磁性キャリアーとからなる二成分現像剤)を収容する。現像装置214は、感光ドラム211の表面にK成分のトナーを付着させることにより、静電潜像を可視化してトナー像を形成する。具体的には、現像剤担持体(現像ローラー)に現像バイアスが印加され、感光ドラム211と現像剤担持体との間に電界が形成される。感光ドラム211(負極性)と現像剤担持体との電位差によって、現像剤担持体上の帯電トナー(負極性)が感光ドラム211の表面の露光部に移動し、付着する。すなわち、現像装置214は、反転現像方式によって静電潜像を現像する。
除電装置216(除電部の一例)は、例えば除電電極と除電用電源を有するコロトロン帯電装置で構成される。除電装置216は、感光ドラム211の回転方向において、転写部22(転写ローラー222)と帯電装置212との間に配置される。すなわち、除電装置216は、クリーニング前除電器である。以下、除電装置216を、「PCC」(Pre-Cleaning Charger)と記述することがある。制御部17によって除電用電源の出力(除電出力、除電バイアス)が制御されることにより、感光ドラム211から除電電極に所定の除電電流が流れるようになっている。これにより、転写後に感光ドラム211の表面に残留する残留電荷が除去される。除電用電源は、定電流電源であってもよいし、定電圧電源であってもよい。除電出力の設定処理については後述する。
ドラムクリーニング装置217は、感光ドラム211の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、転写後に感光ドラム211の表面に残存する転写残トナーを除去する。
感光体電位検出計190(感光体電位検出部の一例)は、除電装置216の下流側かつ帯電装置212の上流側に設置され、除電後の感光ドラム211の表面電位(感光体電位)を検出する。感光体電位検出計190で検出される感光体電位は、帯電装置212の帯電電位(スコロトロン帯電装置のグリッド電位)が同じであっても、感光ドラム211の使用履歴等によって変化する。
温湿度センサ218は、画像形成装置1の内部の雰囲気の温度及び湿度を測定する。温度及び湿度の情報は、後述する除電出力決定ルーチン(図7参照)を実行するか否かの判断基準の一つとして制御部17に送出する。温湿度センサ218は、定期的に又はプリントを実施するタイミングで温度及び温度を測定する。温湿度センサ218が感光ドラム211を直接測定できる位置に配置された場合には、温湿度センサ218により感光ドラム211の表面に極近い位置の温度及び湿度が検出される。また、温湿度センサ218が感光ドラム211の周辺に配置された場合には、温湿度センサ218により感光ドラム211周辺の温度及び湿度が検出される。温湿度センサ218の検出結果は、不図示のインターフェースを介して制御部17に入力される。
転写部22は、転写ベルト221、転写ローラー222、複数の支持ローラー224、及び転写用電源225(図示略)等を備える。
転写ベルト221は無端状ベルトで構成され、少なくとも一つの駆動ローラー223と複数の支持ローラー224にループ状に張架される。駆動ローラーが回転することにより、転写ベルト221が走行し、一定速度で用紙が搬送される。本実施形態では、転写ベルト221が感光ドラム211に接触する転写部材である。なお、転写ローラーが感光ドラム211に直接接触する場合は、転写ローラーが感光ドラム211に接触する転写部材を構成する。
転写ローラー222は、感光ドラム211に対向して、転写ベルト221の内周面側に配置される。転写ベルト221を挟んで、転写ローラー222が感光ドラム211に圧接されることにより、感光ドラム211から用紙へトナー像を転写するための転写ニップ部が形成される。
転写用電源225は、転写ローラー222に接続される。制御部17によって転写用電源225の出力(転写出力)が制御されることにより、転写ローラー222から感光ドラム211に所定の転写電流が流れるようになっている。すなわち、転写部材である転写ベルト221に所定の転写出力が印加される。転写出力は、画像形成に用いられる用紙の紙種に応じて設定される。転写用電源225は、定電流電源であってもよいし、定電圧電源であってもよい。
用紙が転写ニップ部を通過する際、感光ドラム211上のトナー像が用紙に転写される。具体的には、転写ローラー222に転写出力(転写バイアス)を印加し、用紙の裏面側(転写ベルト221と当接する側)にトナーと逆極性の電荷(正電荷)を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部23に向けて搬送される。
定着部23は、用紙の定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部231、用紙の裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部232、定着面側部材を加熱する加熱源233、及び裏面側支持部材を定着面側部材に対して圧接する圧接離間部(図示略)等を備える。
例えば、上側定着部231がローラー加熱方式である場合は定着ローラーが定着面側部材となり、ベルト加熱方式である場合は定着ベルトが定着面側部材となる。また例えば、下側定着部232がローラー加圧方式である場合は加圧ローラーが裏面側支持部材となり、ベルト加圧方式である場合は加圧ベルトが裏面側支持部材となる。図2は、上側定着部231がローラー加熱方式で構成され、下側定着部232がローラー加圧方式で構成される場合について示している。
上側定着部231は、定着面側部材を回転させるための上側定着部用駆動部(図示略)を有する。制御部17によって上側定着部用駆動部の動作が制御されることにより、定着面側部材は所定の速度で回転(走行)する。下側定着部232は、裏面側支持部材を回転させるための下側定着部用駆動部(図示略)を有する。制御部17によって下側定着部用駆動部の動作が制御されることにより、裏面側支持部材は所定の速度で回転(走行)する。なお、定着面側部材が裏面側支持部材の回転に従動する場合は、上側定着部用駆動部は必要ない。
加熱源233は、定着面側部材の内部又は近傍に配置される。制御部17によって加熱源233の出力が制御されることにより、定着面側部材が加熱され、所定の温度(例えば定着許容温度、アイドリング温度)で保持される。制御部17は、定着面側部材に近接して配置される定着温度検出部(図示略)の検出結果に基づいて加熱源233の出力を制御する。
圧接離間部(図示略)は、裏面側支持部材を定着面側部材に向けて押圧する。圧接離間部は、例えば裏面側支持部材を支持する軸の両端部に当接し、軸の両端をそれぞれ独立して押圧する。これにより、定着ニップ部における軸方向のニップ圧のバランスを調整することができる。制御部17によって圧接離間部(図示略)の動作が制御され、定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップ部が形成される。
トナー像が転写され、通紙経路に沿って搬送されてきた用紙は、定着部23を通過する際に加熱、加圧される。これにより、用紙にトナー像が定着する。なお、定着部23は、定着面側部材又は裏面側支持部材を冷却したり、定着面側部材又は裏面側支持部材から用紙を分離したりするために、定着面側部材又は裏面側支持部材に対して送風を行う送風部を備えていてもよい。
給紙部14は、給紙トレイ部141及び手差し給紙部142を有する。給紙トレイ部141には、坪量やサイズ等に基づいて識別された枚葉紙(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された紙種ごとに収容される。給紙トレイ部141及び手差し給紙部142には、複数の給紙ローラー部が配置される。手差し給紙部142には、大容量の外部給紙装置(図示略)を接続することもできる。給紙部14は、給紙トレイ部141又は手差し給紙部142から給紙された用紙を用紙搬送部16に送り込む。
排紙部15は、排紙ローラー部151等を有し、用紙搬送部16から送出された用紙を機外に排紙する。
用紙搬送部16は、主搬送部161、スイッチバック搬送部162、裏面印刷用搬送部163、及び通紙経路切替部(図示略)等を備える。用紙搬送部16の一部は、例えば定着部23とともに1つのユニットに組み込まれ、画像形成装置1に着脱可能に装着される(用紙搬送ユニットADU)。
主搬送部161は、用紙を挟持して搬送する用紙搬送要素として、ループローラー部及びレジストローラー部を含む複数の搬送ローラー部を有する。主搬送部161は、給紙トレイ部141又は手差し給紙部142から給紙された用紙を搬送して画像形成部20(転写部22、定着部23)に通紙するとともに、画像形成部20(定着部23)から送出された用紙を排紙部15又はスイッチバック搬送部162に向けて搬送する。
スイッチバック搬送部162は、定着部23から送出された用紙を一旦停止させ、搬送方向を逆転させて、排紙部15又は裏面印刷用搬送部163に搬送する。
裏面印刷用搬送部163は、スイッチバック搬送部162でスイッチバックされた用紙を主搬送部161に循環搬送する。主搬送部161には、裏面が画像形成面となった状態で用紙が通紙されることになる。
通紙経路切替部(図示略)は、定着部23から送出された用紙をそのままの状態で排紙するか、反転させて排紙するか、又は裏面印刷用搬送部163に搬送するかによって通紙経路を切り替える。具体的には、制御部17が、画像形成処理の処理内容(片面/両面印刷、フェイスアップ/フェイスダウン排紙等)に基づいて、通紙経路切替部(図示略)の動作を制御する。
給紙部14から給紙された用紙は、主搬送部161によって画像形成部20に搬送される。そして、用紙が転写ニップ部を通過する際、感光ドラム211上のトナー像が用紙の第1面(表面)に一括して転写され、定着部23において定着処理が施される。画像が形成された用紙は、排紙部15により機外に排紙される。用紙の両面に画像を形成する場合、第1面に画像が形成された用紙はスイッチバック搬送部162に送出され、裏面印刷用搬送部163を通って主搬送部161に戻ることにより反転されて、第2面(裏面)に画像が形成される。
本実施形態では、必要最小限の除電出力によって転写メモリの発生を防止するために、非作像時の感光ドラム211の感光体電位、転写部22の転写出力、及び除電装置216の除電出力に基づいて、作像時の除電装置216の除電出力を設定する。
具体的には本実施形態は、非作像時において、一様に帯電した感光ドラム211に、転写部22により第1の転写出力及びこの第1の転写出力とは異なる第2の転写出力を交互に印加し、第1の転写出力が印加された第1の領域と、第2の転写出力が印加された第2の領域からなる一対の検査領域を複数作成する。そして、複数の一対の検査領域に対し除電装置216により一対の検査領域ごとに異なる除電出力を印加した後、感光体電位検出計190により第1の領域及び第2の領域の感光体電位を検出し、検出結果に基づいて各除電出力による除電性能の適否(転写メモリが生じるか否か)を判断する。そして、除電性能を確保できる最小の除電出力を、作像時の除電装置216の除電出力に設定する。なお、除電用電源が定電流電源である場合は除電出力として出力電流が設定され、定電圧電源である場合は除電出力として出力電圧が設定される。
例えば、感光体に除電出力を印加後、一対の検査領域内の感光体電位が予め定められた値(基準値)を超える場合が不適切な除電(除電不足)となり、感光体電位が基準値以下となる場合が適切な除電となる。除電性能の適否を判断するための基準値は、実際に感光ドラム211に転写出力を印加したときの転写メモリの発生状況から実験的に求められる。例えば、感光体電位が100Vを超える場合に除電不足になる(転写メモリが発生する虞がある)。
また、転写メモリは、感光ドラム211の使用履歴が新しいときは発生しにくいが、耐久が進み、感光ドラム211の電気的特性が劣化してくると発生しやすくなる。そこで、本実施形態では、感光ドラム211の使用履歴に応じて、基準値を設定してもよい。これにより、本実施形態は、感光ドラム211の耐久に伴う電気的特性の変化を考慮して、除電性能を判断することができる。
[感光体電位と転写電流]
ここで、感光ドラム211が転写部22を通過する前と通過した後の感光体電位と、転写部22の転写出力(転写電流)の測定結果例について、図4を参照して説明する。
図4は、一般的な感光体電位と印加転写電流の一例を示す説明図である。図4Aは転写部通過前の感光体電位と印加転写電流を示し、図4Bは転写部通過後の感光体電位と印加転写電流を示し、図4Cは先行用紙で転写電流を印加された感光ドラムの対象領域が1回転した後の該当領域の感光体電位を示す。転写部通過前(後)とは、感光ドラム211の該当位置が転写部22の転写ニップ部を通過する前(後)である。各図において、横軸は感光ドラム211の回転方向位置、左側の縦軸は感光体電位(V)、右側の縦軸は転写電流(μA)を示す。感光体電位を示す左側の縦軸は、上側がマイナス電位、下側がプラス電位を表す。また、転写電流を示す右側の縦軸は、上側がマイナスの電流値、下側がプラスの電流値を表す。
帯電装置212によって回転する感光ドラム211の表面を一様にマイナス電位(図4Aの感光体電位V0)に帯電し、露光装置213で静電潜像を形成し、現像装置214からマイナス電位に帯電したトナーを供給することで、感光ドラム211上にトナー像が形成(現像)される。そして、転写部22において転写ローラー222にプラス極性の転写電流Itを印加し(図4A、既述の状態1相当)、感光ドラム211上のトナー像を用紙Sに転写させる。
印加したプラス極性の転写電流Itにより、転写後の感光ドラム211の表面における正電荷の流入部分がプラス寄りの電位を持つ(図4B、既述の状態2相当)。プラス極性の転写電荷は(後述する帯電前露光装置192でも)消去できないため、次の帯電時にこの残留したプラス極性の転写電荷により、感光体電位V0が目標の感光体電位V0−1よりも低い感光体電位V0−2へ低下してしまう(図4C、既述の状態3相当)。そして、感光ドラム211の感光体電位V0が低下すると、画像濃度むらや画像かぶりの画像不良が発生する。
例えば感光ドラム211のトナー帯電量が少なくなり現像性が高い場合や、低い画像濃度で印刷したい場合(喪中葉書印刷時に設定される薄墨印刷モード等)には、現像電界を下げることで画像濃度を制御するために、感光体電位V0が低い値に制御される。感光体電位V0が低い状態の感光ドラム211に転写電流が印加されると、感光ドラム211に流れ込む転写電荷(例えば正電荷)により、次帯電時に転写電荷の分だけ、感光体電位V0がさらに低くなってしまう(図4B、図4C)。さらに、用紙内と用紙間とで転写出力値の切り替えを繰り返すと、用紙に画像を形成する度に転写メモリによる画像不良(感光体電位むらによる用紙搬送方向の画像濃度むらや画像かぶり)が発生する。感光体電位V0が低くなるほど、転写電荷の影響が大きくなる。
これに対し、除電装置216から感光ドラム211に転写電荷と逆極性の電圧を印加することで、転写電荷を中和することができるが、必要なPCC電流は、環境/感光体耐久履歴/転写電流値/帯電電位(感光体電位V0)に応じて変わる。最悪条件に合わせて除電装置216の出力を高くすると、除電装置216の除電電極の汚れを助長し、長期にわたり軸方向の出力均一性が低下したり、オゾン発生量が増加したりする。
そこで、本実施形態では、非作像時又は作像動作を一時中断して、以下の方法で、感光ドラム211の表面を除電するのに必要な除電装置216の除電出力(例えばPCC電流)を求める。
[作像時の除電出力の算出方法]
次に、第1の実施形態に係る作像時の除電出力の算出方法について図5を参照して説明する。図5は、第1の実施形態に係る感光体電位、及び印加除電出力の例を示す説明図である。図5Aは転写部22通過前の感光体電位を示し、図5Bは転写部22通過後の感光体電位を示し、図5CはPCC(除電装置216)通過後の感光体電位と印加PCC電流を示し、図5DはPCC通過後の感光体電位シフト量を示す。各図において、横軸は感光ドラム211の回転方向位置、左側の縦軸は感光体電位(V)、右側の縦軸はPCC電流(μA)を示す。
まず、制御部17は、帯電装置212により感光ドラム211の表面の電位を一様にマイナス極性(感光体電位V0)に帯電する(図5A)。
次に、制御部17は、転写部材(転写ベルト221と転写ローラー222)を感光ドラム211に当接させ、転写用電源225から転写ローラー222に2つの異なる転写出力を交互に印加する。すなわち、制御部17は、第1の転写出力、及び第1の転写出力とは異なる第2の転写出力を交互に印加し、第1の転写出力が印加された第1の領域A1と、第2の転写出力が印加された第2の領域A2からなる一対の検査領域を複数作成する。具体的には、制御部17は、転写用電源225から転写ローラー222に対して矩形の転写電流を印加する。
第1の転写出力と第2の転写出力の組み合わせとして、次の3パターンが考えられる。第1パターンでは、第1の転写出力は感光ドラム211の帯電極性と同じ極性の転写電流(例えば逆バイアス)、かつ、第2の転写出力は感光ドラム211上のトナー像を用紙Sに転写する際に転写ローラー222に印加する転写電流(例えば正バイアス)である。第2パターンでは、第1の転写出力は転写出力オフ、かつ、第2の転写出力は転写の際に転写ローラー222に印加する転写電流(正バイアス)である。そして、第3パターンでは、第1の転写出力は第2の転写出力よりも低い正バイアス、第2の転写出力は転写の際に転写ローラー222に印加する転写電流(正バイアス)である。一例として第1パターンの第1の転写出力と第2の転写出力が印加された感光ドラム211の感光体電位(Vdr1,Vdr2)は、図5Bのようになる。
制御部17は、感光ドラム211の第1の領域A1と第2の領域A2からなる一対の検査領域ごとに、印加するPCC電流の値を、帯電装置212の帯電出力と同じ極性で、絶対値の高い値から絶対値の低い値へ順次下げていく。このとき、除電装置216を通過後(除電後)の感光体電位は、図5CのようにPCC電流の低下に応じて、絶対値が小さくなる方向へシフトする。この図5Cの例では、感光ドラム211表面の回転方向に4つの検査領域P1〜P4が作成された様子が示されている。なお、以下の説明において、検査領域P1〜P4を区別する必要がない場合には、これらを検査領域Pと称する。
そして、制御部17は、除電装置216の下流側かつ帯電装置212の上流側に設置された感光体電位検出計190により、第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)を測定し、予め定められた値(基準値)よりも小さい電位となるようなPCC電流値を求める。言い換えると、制御部17は、一対の検査領域Pのうち、感光ドラム211の帯電極性とは反対の極性側に高い転写電流を印加した領域の感光体電位が、基準値よりも感光ドラム211の帯電極性とは反対の極性側に超えないときの除電出力を求める。このとき、第1の領域A1の感光体電位(Vdr1)と第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)は均一(差分がゼロ)でなくてもよい。
図5Dに示すように、検査領域P1における第2の領域A2の感光体電位は−200(V)である。同様に、検査領域P2における第2の領域A2の感光体電位は−100(V)、検査領域P3における第2の領域A2の感光体電位は+50(V)、そして検査領域P4における第2の領域A2の感光体電位は+100(V)である。ここで、基準値を0(V)とした場合には、3番目の検査領域P3における第2の領域A2の感光体電位(+50(V))が条件から外れる。そのため、制御部17は、2番目の検査領域P2におけるPCC電流の値を、作像時の除電装置216のPCC電流の値(除電出力)に決定する。そして、制御部17は、PCC電流の値を決定した後は、それ以降のPCC電流を下げて感光体電位を検出する処理を行わない。つまり、図5Dに検査領域P4が記載されているが、実際には検査領域P4は作成されない。
このように、第1の実施形態は、非作像時に一様に帯電した感光ドラム211に2つの異なる転写電流を印加した一対の検査領域Pを複数作成し、それぞれの一対の検査領域Pに異なる除電出力(PCC電流)を印加した後の感光体電位から、作像時の除電出力の値を決定する。
[プリント時(印刷処理)の流れ]
次に、第1の実施形態に係るプリント時(印刷処理)の流れについて図6及び図7を参照して説明する。図6は、第1の実施形態に係るプリント時の流れを示すフローチャートである。
制御部17は、ジョブの入力を監視する。そして、制御部17は、ジョブが入力されるとジョブを解析してプリント要求(すなわちプリント開始)の指示を検知する(S1)。ジョブは、例えばユーザーの指示に基づいて操作表示部12から入力されたり、通信部181を介して外部の端末装置から入力されたりする。
次いで、制御部17は、作像時における感光ドラム211表面の電位(感光体電位V0)が変更されたか否かを判定する(S2)。ここで、制御部17は、作像時の感光体電位V0が変更されたと判定した場合には(S2のYes)、ステップS5の除電装置(PCC)216の除電出力を決める除電出力決定ルーチンに進む。前回の作像時における感光体電位の情報は、例えばRAM173又は記憶部182などに記録されているものとする。
一方、ステップS2の判定処理において作像時の感光体電位V0が変更されていないと判定した場合には(S2のNo)、制御部17は、作像時に転写ローラー222から感光ドラム211に印加する転写電流が変更されたか否かを判定する(S3)。ここで、制御部17は、作像時の転写電流が変更されたと判定した場合には(S3のYes)、ステップS5の除電出力決定ルーチンに進む。前回の作像時における転写電流の情報は、例えばRAM173又は記憶部182などに記録されているものとする。
一方、ステップS3の判定処理において作像時の転写電流が変更されていないと判定した場合には(S3のNo)、制御部17は、感光ドラム211の温度又は感光ドラム211周辺の温度が予め決定された環境区分から変わったか否かを判定する(S4)。ここで、制御部17は、感光ドラム211の温度又は感光ドラム211周辺の温度の環境区分が変わったと判定した場合には(S4のYes)、ステップS5の除電出力決定ルーチンに進む。前回の作像時における感光ドラムの温度又は感光ドラム周辺の温度の情報は、例えばRAM173又は記憶部182などに記録されているものとする。
例えば第1の環境区分が25度以上35度未満に、第2の環境区分が35度以上45度未満に設定されているとする。制御部17は、温湿度センサ218による前回の測定温度が28度で、今回の測定温度が38度であった場合には、測定温度が第1の環境区分を超えて第2の環境区分に移ったと判断し、作像時の除電出力を、第1の環境区分に対する除電出力から第2の環境区分に対する除電出力に変更する。
次いで、ステップS4の判定処理において感光ドラム211の温度又は感光ドラム211周辺の温度の環境区分が変わっていないと判定した場合(S4のNo)、又は、ステップS5の除電出力決定ルーチンが終了した後、制御部17は、プリントを実行する(S6)。このとき、制御部17は、設定された値(決定値)に基づいて除電装置216が除電出力(PCC電流)を感光ドラム211に印加するように制御する。
次に、ジョブで指示されているすべてのプリントが終了したか否かを判定し、すべてのプリントが終了していない場合には(S7のNo)、制御部17は、ステップS2〜S7の処理を繰り返す。すなわち制御部17は、プリント中に感光体電位V0又は転写電流が変更されていないか、あるいは、感光ドラム211の温度もしくは感光ドラム211周辺の温度の環境区分が変わっていないかを判定し(S2〜S4)、判定結果に応じた処理を行う。また、すべてのプリントが終了した場合には(S7のYes)、制御部17は、本フローチャートの処理を終了する。
[除電出力決定ルーチン]
次に、図6に示した除電出力決定ルーチンについて図7を参照して説明する。図7は、図6に示した除電出力決定ルーチンの詳細な処理を示すフローチャートである。上述のとおり本フローチャートは、作像時の感光体電位V0が変更された場合(S2のYes)、作像時の転写電流が変更された場合(S3のYes)、あるいは、感光ドラム211の温度若しくは感光ドラム211周辺の温度の環境区分が変わった場合に(S4のYes)、実行される。
まず、制御部17は、帯電装置212を制御して感光ドラム211表面の電位(感光体電位V0)を一様に目標の電位(図5A)に帯電させる(S11)。次いで、制御部17は、転写用電源205を制御して、感光ドラム211に第1の転写出力と第2の転写出力(図5B)を交互に印加する(S12)。
次いで、制御部17は、第1の転写出力と第2の転写出力がそれぞれ印加された感光ドラム211の一対の検査領域(図5Bの検査領域P1)に、除電装置(PCC)216により最大の除電出力(例えばPCC電流)を印加する(S13)。次いで、制御部17は、除電装置216の下流において、感光体電位検出計190により第2の転写出力が印加された第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)を測定する(S14)。
次いで、制御部17は、第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)が予め決定した電位(基準電位)よりも大きいか否かを比較する(S15)。ここで、第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)が基準電位以下であれば(S15のNo)、制御部17は、次の第1の転写出力と第2の転写出力がそれぞれ印加された感光ドラム211の一対の検査領域(図5Bの検査領域P2)に、前回より低いPCC電流を印加する(S16)。
制御部17は、ステップS16の処理後にステップS14に戻り、除電装置216の下流において、感光体電位検出計190により検査領域P2の第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)を測定し、第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)と基準電位を比較する(S15)。ここで、第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)が基準電位以下であれば(S15のNo)、制御部17は、さらに電流値を下げて次の一対の検査領域(図5Bの検査領域P3)にPCC電流を印加する(S16)。そして、制御部17は、感光ドラム211の対象領域の感光体電位の測定(S14)、及び測定結果と基準電位との比較(S15)を行う。
一方、第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)が基準電位を超えていれば(S15のYes)、制御部17は、一つ前(検査領域P1)に印加したPCC電流の値を、作像時に印加するPCC電流の値(決定値)とする(S17)。制御部17は、このPCC電流の決定値を、RAM173又は記憶部182に記録する。ステップS17の処理が終了後、制御部17は、ステップS6に進み、プリントを実行する。すなわちPCC電流の決定値を用いて除電装置216が感光ドラム211の除電を行った後に転写部22による転写が行われる。
上述のように構成される第1の実施形態によれば、一様に帯電した感光ドラム211に、第1の転写出力及びこれと異なる第2の転写出力を交互に印加し、第1の転写出力が印加された第1の領域A1と、第2の転写出力が印加された第2の領域A2からなる一対の検査領域Pを作成する。次いで、第1の実施形態は、除電装置216により一対の検査領域Pごとに異なる除電出力を印加した後、第1の領域A1及び第2の領域A2の感光体電位を検出し、検出結果と基準値に基づいて各除電出力による除電性能の適否(転写メモリが生じるか否か)を判断する。そして、除電性能を確保できる最小の除電出力が、作像時の除電装置216の除電出力に設定される。第1の実施形態によれば、このような方法により必要な除電出力(例えばPCC電流)を決定することで、除電装置216に印加する除電出力を必要最小限に設定できるため、画像不良発生防止と除電電極汚れ防止を両立させることができる。
また、第1の実施形態によれば、感光ドラム211の表面電位、印加する転写電流、感光ドラム211の劣化度、温度や湿度などの条件変化(図6のステップS2〜S4)に応じて都度除電出力を設定するため、各条件に応じて必要最小限の除電出力で除電装置216を動作させることができる。そのため第1の実施形態によれば、各条件に応じて画像不良発生防止と除電電極汚れ防止を長期にわたって両立させることができる。
また、図6に示すように、第1の実施形態は、上述の除電出力決定ルーチンを実行すべき条件が成立した場合、非作像時(プリント開始前)に、又は作像中のときは一時作像動作を中断して、除電出力決定ルーチンを実行する。そのため、プリント中に除電装置216の除電出力を常に最適値となるように制御することができる。
なお、図6のステップS4において感光ドラム211の温度又は感光ドラム211表面の温度の環境区分を判定したが、温湿度センサ218で検出された湿度の環境区分を判定し、湿度の環境区分が変わった場合に除電出力決定動作を行うようにしてもよい。
さらにまた、図6においてトナー像が転写される用紙S(厚み、材質など)が変更されると、用紙Sの抵抗が変わり、感光体電位と転写出力、必要な除電出力などの関係が変わる。そのため、前回のジョブと今回のジョブで用紙設定が異なる場合や、ジョブの途中で用紙設定が変わる場合などに、除電出力決定動作を行うようにしてもよい。
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態における除電後の感光体電位を測定する感光体電位検出計190に代えて、帯電後の感光体電位を測定する感光体電位検出計191(図8参照)を配置した例である。
[トナー像形成部の構成]
図8は、第2の実施形態に係るトナー像形成部の構成例を示す説明図である。図8に示すトナー像形成部21Aには、帯電装置212の下流側かつ転写部22の上流側、望ましくは現像装置214の上流側に、感光体電位検出計191が配置されている。感光体電位検出計191(感光体電位検出部の一例)は、帯電装置212による帯電後の感光ドラム211の表面電位(感光体電位)を検出する。またドラムクリーニング装置217の下流側かつ帯電装置212の上流側には、帯電前露光装置192が配置されている。以下の説明において、帯電前露光装置192を「PCL」(Pre-Charging Lithography)と称することがある。
帯電前露光装置192は、一例として露光装置213と同様に、複数の発光ダイオード(LED)が直線状に配列されたLEDアレイ、個々のLEDを駆動するLPH駆動部(ドライバーIC)、及びレンズアレイ等を有するLEDプリントヘッドを適用することができる。帯電前露光装置192により感光ドラム211を露光すると、感光ドラム211に正電荷が発生して感光ドラム211の表面電荷(負電荷)が中和される。以下、本明細書において、このような現象を「光除電」と称する。
[感光体電位と印加転写電流]
ここで、感光ドラム211が転写部22を通過する前と通過した後の感光体電位と、転写部22の転写出力(転写電流)の測定結果例について、図4を参照して説明する。図9は、第2の実施形態に係る感光体電位と印加PCC電流の一例を示す説明図である。図9AはPCC及びPCL通過後の感光体電位と印加PCC電流を示し、図9Bは再帯電後の感光体電位を示し、図9Cは再帯電後の感光体電位差を示す。感光体電位差は、第1の領域A1の感光体電位と第1の領域A1の感光体電位との差分である。各図において、横軸は感光ドラム211の回転方向位置、左側の縦軸は感光体電位(V)、右側の縦軸は転写電流(μA)を示す。
図9Aの前提として、感光ドラム211の表面の電位を一様にマイナス極性(図5Aの感光体電位V0)に帯電し、第1の転写出力と第2の転写出力を交互に印加し(図5B)、その後、除電装置216で感光ドラム211表面を除電する(図5C)。
そして、除電装置216による除電後、帯電前露光装置192(PCL)で感光ドラム211表面を光除電すると、マイナス極性である感光体電位V0が低下する(図9A)。帯電前露光装置192の上流にある除電装置216による除電が十分な場合には、感光体電位V0はマイナス極性の低い値に除電される。しかし、図9Aに示すように、除電装置216において除電不足である場合には、転写時の正電荷が残った状態(検査領域P3,P4における各第2の領域A2の感光体電位)となる。
このような感光体電位V0のときに感光ドラム211の表面をマイナス電位に再帯電すると、図9Bに示すように、感光ドラム211の正電荷が残っている部分の感光体電位が低くなってしまう(絶対値が小さくなる)。
そこで、本実施形態では、感光体電位検出計191により、再帯電後の、第1の転写出力が印加された第1の領域A1及び第2の転写出力が印加された第2の領域A2の感光体電位を測定する。上述したように、除電装置216で除電不足となっている場合は、その影響で感光体電位が低くなる。次いで、制御部17は、第1の領域A1の感光体電位と第2の領域A2の感光体電位の差分(感光体電位差)を算出し、この感光体電位差が予め定められた値(基準電位差)よりも小さくなるときの除電出力(PCC電流)の値を、作像時の除電装置216の除電出力の値(決定値)とする。
図9Cの例では、検査領域P1,P2の感光体電位差が0(V)、検査領域P3の感光体電位差が50(V)、検査領域P4の感光体電位差が100(V)である。例えば基準電位差の値が40(V)である場合には、制御部17は、検査領域P2のPCC電流の値を決定値とする。なお、第1の実施形態の場合と同様に、制御部17は、PCC電流の値を決定した後は、それ以降のPCC電流を下げて感光体電位を検出する処理を行わない。
また、望ましくは、第1の領域A1の感光体電位と第2の領域A2の感光体電位が均一(感光体電位差がゼロ)となる場合のPCC電流の値を、PCC電流の決定値とする。この感光体電位差がゼロである条件を満たすPCC電流が複数ある場合には、最も低いPCC電流の値を、作像時の除電出力の値に決定する。図9Cの例では、検査領域P1と検査領域P2において各領域の感光体電位が同じであって感光体電位差がゼロであるが、より電流値が小さい、検査領域P2に印加したPCC電流の値が決定値となる。
[除電出力決定ルーチン]
次に、第2の実施形態に係る除電出力決定ルーチンについて図10を参照して説明する。第2の実施形態においても、プリント時の全体の流れは第1の実施形態(図6に示した流れ)と同じである。図10は、第2の実施形態に係る除電出力決定ルーチンの詳細な処理を示すフローチャートである。図10のステップS21〜S23,S26,S27の処理は、図6のステップS11〜S13,S16,S17の処理と同じであり、説明を簡略化する。
制御部17は、除電出力決定ルーチンを開始すると、ステップS21〜S23において、感光ドラム211表面の電位(感光体電位V0)を一様に目標の電位(図5A)に帯電し(S21)、次いで、制御部17は、感光ドラム211に第1の転写出力と第2の転写出力(図5B)を交互に印加する(S22)。次いで、制御部17は、第1の転写出力と第2の転写出力がそれぞれ印加された感光ドラム211の一対の検査領域(図5Bの検査領域P1)に、除電装置(PCC)216により最大の除電出力(PCC電流)を印加する(S23)。
次に、制御部17は、除電装置216の下流において、感光体電位検出計191により第1の転写出力が印加された第1の領域A1の感光体電位(Vdr1)と、第2の転写出力が印加された第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)を測定する。そして、制御部17は、第1の領域A1の感光体電位(Vdr1)と第2の領域A2の感光体電位(Vdr2)の電位差(|Vdr_def|)を算出する(S24)。
次いで、制御部17は、一対の検査領域内の電位差(|Vdr_def|)が予め決定された基準電位差よりも大きいか否かを比較する(S25)。ここで、電位差(|Vdr_def|)が基準電位差以下であれば(S25のNo)、制御部17は、次の第1の転写出力と第2の転写出力がそれぞれ印加された感光ドラム211の一対の検査領域(図5Bの検査領域P2)に、前回より低いPCC電流を印加し(S26)、ステップS24へ戻る。
一方、一対の検査領域内の電位差(|Vdr_def|)が基準電位差を超えていれば(S25のYes)、制御部17は、一つ前(検査領域P1)に印加したPCC電流の値を、作像時に印加するPCC電流の値(決定値)とする(S27)。制御部17は、このPCC電流の決定値を、RAM173又は記憶部182に記録する。ステップS27の処理が終了後、制御部17は、ステップS6に進み、PCC電流の決定値を用いて感光ドラム211のプリントを実行する。
上述のように構成される第2の実施形態によれば、帯電前露光装置192により光除電を行う場合でも、第1の実施形態の場合と同様に、必要最小限の除電出力(PCC電流)で除電装置216を動作させることができるため、画像不良発生防止と除電電極汚れ防止を両立させることができる。
なお、再帯電後の感光ドラム211の帯電部分が、転写部22と除電装置216を通過した後、感光体電位検出計190(図2参照)でその帯電部分の感光体電位を測定してもよい。この場合、再帯電後に感光ドラム211の帯電部分が転写部22と除電装置216を通過する際には、転写出力と除電出力をオフする。
さらに、本発明は上述した各実施形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成要素に置き換えることは可能である。また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成要素の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、上記の各構成要素、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路の設計などによりハードウェアで実現してもよい。