JP5333746B2 - フィルムコンデンサ - Google Patents

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Description

この発明は、フィルムコンデンサに関するもので、特に、フィルムコンデンサの信頼性を向上させるための改良に関するものである。
コンデンサの一種として、可撓性のある樹脂フィルムを誘電体として用いながら、樹脂フィルムを挟んで互いに対向する第1および第2の対向電極となる金属膜を樹脂フィルムの両主面上に形成してなる、フィルムコンデンサがある。フィルムコンデンサは、通常、上述の樹脂フィルムを巻回してなる円柱状の形態をなしており、当該円柱の互いに対向する第1および第2の端面上には、それぞれ、第1および第2の外部端子電極が形成されている。そして、前述した第1の対向電極は第1の外部端子電極と電気的に接続され、第2の対向電極は第2の外部端子電極と電気的に接続されている。
一方、フィルムコンデンサにおいて、より大きな静電容量を得るため、樹脂フィルムを構成する樹脂に、誘電率の高いセラミック粉末を添加することが行なわれている。しかしながら、樹脂にセラミック粉末を添加した複合材料は、誘電率を高めることができる反面、樹脂のみの場合に比べて絶縁耐力を低下させるという欠点もある。たとえば、車載の電源関連などの高電界下で使用される場合、特に、電界が集中する対向電極の端縁においてショートが発生することがある。
上記の問題を解決するため、たとえば特開平2‐305421号公報(特許文献1)では、図14に示すような構造、すなわち、対向電極1および2を互いに対向する各主面上にそれぞれ形成した両面金属化樹脂フィルム3の間に、複合誘電体からなるラッカー層4および5が設けられ、これらラッカー層4および5の外側に絶縁体層6が形成された構造が提案されている。
しかしながら、このような構造では、誘電率の高いラッカー層4および5の間に絶縁体層6が介在しているため、誘電率の比較的低い絶縁体層6によって、対向電極1および2間の誘電率が支配され、大きな静電容量を取得することができない。また、対向電極1および2の端縁1aおよび2aが位置する領域は、誘電率の比較的高い複合誘電体からなるラッカー層4および5によって挟む込まれた構成となっており、電界が集中する端縁1aおよび2aが位置する領域での耐電圧性の向上は望めない。
また、たとえば特開平5‐109583号公報(特許文献2)では、図15に示すように、誘電体フィルム7上に、両端縁にマージン部8を形成するように島状の電極層9を形成し、誘電体フィルム7をマージン部8の幅より狭い範囲で幅方向にずらして積層することにより、絶縁耐力の高い樹脂(図示せず。)をマージン部8近傍にまで含浸させることが開示されている。この構造によれば、絶縁耐力の高い樹脂により耐電圧の向上が図られているが、上述のずらし幅がマージン部8の幅より小さいため、電極層9の端縁が位置する領域は誘電体フィルム7に覆われることになるため、前述した特許文献1に記載のものと同様、耐電圧性の向上は不十分である。
特開平2−305421号公報 特開平5−109583号公報
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得るフィルムコンデンサを提供しようとすることである。
この発明は、誘電体樹脂フィルムと、誘電体樹脂フィルムを挟んで互いに対向する第1および第2の対向電極とを備える、フィルムコンデンサに向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
すなわち、第1の対向電極は、第2の対向電極に対向する第1の端縁を有し、第2の対向電極は、第1の対向電極に対向する第2の端縁を有しており、誘電体樹脂フィルムは、上記第1の端縁および上記第2の端縁の少なくとも一方とその近傍とが位置する第1の部分と、それ以外の第2の部分とを有し、第1の部分は、第2の部分に比べて、絶縁耐力のより高い高耐電圧領域とされ、第2の部分は、第1の部分に比べて、誘電率のより高い高誘電率領域とされていることを特徴としている。
この発明の第1の実施態様では、高誘電率領域は無機フィラーを含み、高耐電圧領域は無機フィラーを含まない。この場合、無機フィラーは、BaTiO、SrTiO、CaZrO、SiOおよび(Ba,Ca)TiOから選ばれる1種を主成分とするものであることが好ましい。また、上記高耐電圧領域および上記高誘電率領域は互いに同じ樹脂材料を含むことが好ましく、この場合、樹脂材料としては、ポリビニルアセトアセタールとトリレンジイソシアネートとの架橋物が有利に用いられる。
この発明の第2の実施態様では、高耐電圧領域および高誘電率領域は無機フィラーを含まず、高耐電圧領域は、絶縁耐力の比較的高い樹脂材料からなり、高誘電率領域は、誘電率の比較的高い樹脂材料からなる。この場合、上記高耐電圧領域を構成する樹脂材料としては、ポリビニルアセトアセタールとトリレンジイソシアネートとの架橋物が有利に用いられ、上記高誘電率領域を構成する樹脂材料としては、ポリ塩化ビニリデンが有利に用いられる。
この発明において、高耐電圧領域と高誘電率領域との境界は、第1および第2の対向電極の各々における、第1の端縁および第2の端縁の各々より0.1〜1mmの範囲で内側に位置することが好ましい。
この発明によれば、誘電体樹脂フィルムにおいて、対向電極の端縁とその近傍とが位置する第1の部分が高耐電圧領域とされ、それ以外の第2の部分が高誘電率領域とされるので、取得静電容量の低下をそれほど招くことなく、高い耐電圧性を有するフィルムコンデンサを得ることができる。
この発明の一実施形態によるフィルムコンデンサに備える誘電体樹脂フィルム12を展開状態で示す斜視図である。 図1に示した誘電体樹脂フィルム12上に対向電極15および16を形成した状態を示す斜視図であり、第1の対向電極15を形成した第1のシート17と第2の対向電極16を形成した第2のシート18とをそれぞれ示している。 図2に示した第1のシート17と第2のシート18とを積み重ねた状態を示す斜視図である。 図3の線A‐Aに沿う断面図である。 図3に示した積層構造物を巻回して得られたコンデンサ本体20を示す斜視図である。 図5の線B‐Bに沿う断面図である。 図6に示したコンデンサ本体20に第1および第2の外部端子電極21および22を形成して得られたフィルムコンデンサ11を示す断面図である。 この発明による作用効果を説明するためのフィルムコンデンサの図解的断面図である。 図8に示したフィルムコンデンサの比較例を示す図8に対応する図である。 実験例1において作製した実施例によるフィルムコンデンサを示す平面図である。 実験例1において作製した比較例によるフィルムコンデンサを示す平面図である。 実験例2において作製したフィルムコンデンサに備える誘電体樹脂フィルム41を示す平面図である。 実験例2において作製したフィルムコンデンサを示す平面図である。 この発明にとって興味ある第1の従来技術によるフィルムコンデンサを示す断面図である。 この発明にとって興味ある第2の従来技術によるフィルムコンデンサを示す断面図である。
図1ないし図7を参照して、この発明の一実施形態によるフィルムコンデンサ11の製造方法を説明しながら、その構造を明らかにする。
フィルムコンデンサ11は、図1に示すような誘電体樹脂フィルム12を備えている。誘電体樹脂フィルム12は、長尺状をなしており、その幅方向での中央部が高誘電率領域13とされ、その幅方向での両端部が高耐電圧領域14とされ、これら高誘電率領域13および高耐電圧領域14が、ともに、長尺状の誘電体樹脂フィルム12の長手方向に沿って延びている。
上述の高誘電率領域13は、高耐電圧領域14に比べて、誘電率のより高い材料から構成され、他方、高耐電圧領域14は、高誘電率領域13に比べて、絶縁耐力のより高い材料から構成される。
そのため、一例として、高誘電率領域13および高耐電圧領域14は互いに同じ樹脂材料を含みながら、高誘電率領域13のみが無機フィラーを含み、高耐電圧領域14は無機フィラーを含まない組成に選ばれる。上述した無機フィラーは、好ましくは、誘電率の高いセラミック粉末から構成され、セラミック粉末としては、たとえば、BaTiO、SrTiO、CaZrO、SiOまたは(Ba,Ca)TiOを主成分とするものが用いられる。また、高誘電率領域13および高耐電圧領域14に含まれる樹脂材料としては、たとえば、ポリビニルアセトアセタールとトリレンジイソシアネートとの架橋物が有利に用いられる。このような樹脂材料は、絶縁耐力が比較的高く、それのみで高耐電圧領域14を構成するのに適している。
上述のように、高誘電率領域13および高耐電圧領域14が互いに同じ樹脂材料を含んでいると、高誘電率領域13と高耐電圧領域14との間で高い接合状態を得ることができる。
高誘電率領域13における誘電率を高めるため、上述したような無機フィラーを添加する方法に代えて、高誘電率領域13を構成する樹脂材料自身に、誘電率の比較的高いものを用いる方法もある。この場合、たとえばポリ塩化ビニリデンが高誘電率領域13を構成する樹脂材料として有利に用いられる。なお、高耐電圧領域14を構成する材料としては、たとえば、前述したポリビニルアセトアセタールとトリレンジイソシアネートとの架橋物を用いることができる。
次に、図2(a)および(b)にそれぞれ示すように、誘電体樹脂フィルム12上に第1および第2の対向電極15および16がそれぞれ形成された第1および第2のシート17および18が作製される。対向電極15および16は、たとえばアルミニウムを真空蒸着することによって形成される。
第1のシート17では、第1の対向電極15は、誘電体樹脂フィルム12の一方側縁にまで届くように形成され、第2のシート18においては、第2の対向電極16は誘電体樹脂フィルム12の他方側縁にまで届くように形成される。第1の対向電極15と第2の対向電極16との対向状態については、後述する図3および図4によく示されているが、第1の対向電極15の、第2の対向電極16に対向する第1の端縁15aおよびその近傍は、高耐電圧領域14上に位置される。他方、第2の対向電極16の、第1の対向電極15に対向する第2の端縁16aおよびその近傍についても、高耐電圧領域14上に位置される。
なお、上述した対向電極15および16の形成態様に関して、高耐電圧領域14と高誘電率領域13との境界が、第1および第2の対向電極15および16の各々における、第1の端縁15aおよび第2の端縁16aの各々より0.1〜1mmの範囲で内側に位置するようにされることが好ましい。上記範囲を外れて、0.1mm未満の場合には、後述する積み重ね工程における積み重ね精度によっては、対向電極15および16の端縁15aおよび16aの少なくとも一方が高耐電圧領域14上に位置されないおそれがあり、他方、1mmを超える場合には、取得静電容量の低下が不所望にも大きくなってしまう。
次に、図3および図4に示すように、第1および第2のシート17および18が積み重ねられる。このとき、第1および第2の対向電極15および16の各々における誘電体樹脂フィルム12の側縁にまで届いている側の端部が露出するように、第1のシート17と第2のシート18とが互いに幅方向にずらされる。
次に、図5および図6に示すように、巻回軸19が用意されるとともに、この巻回軸19のまわりに、図3および図4に示した第1および第2のシート17および18からなる積層構造物が巻回される。このとき、積層構造物の幅方向に延びる軸線を軸として巻回される。このようにして、実質的に円柱状のコンデンサ本体20が得られる。
なお、この実施形態では、図3および図4に示した第2のシート18が第1のシート17の外側になるように、かつ第1および第2のシート17および18の各々について、対向電極15および16が内方に向くように巻回される。図5では、第1および第2のシート17および18が省略的に図示されている。また、図6および後述する図7では、誘電体樹脂フィルム12において、高誘電率領域13と高耐電圧領域14の図面上での区別が省略されている。
次に、図7に示すように、コンデンサ本体20の両端面に、たとえば亜鉛を溶射することにより、第1および第2の外部端子電極21および22が形成され、円柱状のフィルムコンデンサ11が完成される。
図7に示すように、第1の外部端子電極21は、第1の対向電極15の露出端部と接触し、それによって第1の対向電極15と電気的に接続される。他方、第2の外部端子電極22は、第2の対向電極16の露出端部と接触し、それによって第2の対向電極16と電気的に接続される。
次に、図8および図9を参照して、この発明による作用効果について説明する。図8は、この発明の場合を示し、図9は、従来の場合を示している。図8および図9において、図1ないし図7に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図8および図9において、電界の分布状態が矢印で示されている。これらの矢印の分布状態からわかるように、対向電極15および16の各々の端縁15aおよび16aの近傍において、電界が集中している。図9に示した従来の構造では、誘電体樹脂フィルム12全体が高誘電率を有する材料から一様に形成されているので、電界が集中する部分においても、高誘電率を有する部分、すなわち絶縁耐力の比較的低い部分となっている。そのため、このような電界が集中する部分で絶縁破壊が生じやすい。
これに対して、この発明による図8に示した構造では、誘電体樹脂フィルム12における電界が集中する部分は、高耐電圧領域14とされているので、絶縁破壊が生じにくくすることができる。他方、対向電極15および16が対向する部分のほとんどは、高誘電率領域13とされるので、静電容量の低下をそれほど招かないようにすることができる。
以上、この発明を、図7に示したフィルムコンデンサ11に関連して説明したが、この発明に係るフィルムコンデンサは、図7に示すような巻回型のものに限らず、後述する実験例において作製した試料のように、平面型のものであってもよい。
次に、この発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
[実験例1]
まず、溶剤としてトルエンおよびエタノールを重量比で1:1の割合で混合したものを用意し、この混合溶剤にポリビニルアセトアセタール(ガラス転移点が110℃、重合度が約2000)を溶解させ、7重量%のポリビニルアセトアセタール溶液を作製した。
他方、酢酸エチルを溶剤とし、これにTDI(トリレンジイソシアネート)系ポリイソシアネートを溶解させ、60重量%のTDI系ポリイソシアネート溶液を作製した。
次に、上記ポリビニルアセトアセタール溶液および上記TDI系ポリイソシアネート溶液を、体積比で70:30となるように配合し、1時間攪拌して、均一な混合溶液を得た。次いで、この混合溶液をフィルタでろ過して未溶解物を除去した後、気泡が消えるまで数時間静置した。
誘電体樹脂フィルムにおける高耐電圧領域となるべき高耐電圧用樹脂溶液としては、上述の混合溶液をそのまま用いた。他方、誘電体樹脂フィルムにおける高誘電率領域となるべき高誘電率用樹脂溶液を作製するため、上述した混合溶液に加えて、チタン酸ストロンチウム粉末を用意した。そして、混合溶液の固形分とチタン酸ストロンチウム粉末とが体積比で70:30となるように配合し、16時間攪拌して均一なスラリー状の高誘電率用樹脂溶液を得た。
次に、塗工機を用いて、キャリアフィルムの幅方向での両端部上に前述の高耐電圧用樹脂溶液を塗工し、90℃および1分間の条件で乾燥させて厚み10μmの高耐電圧領域となるべき未硬化のフィルムを得た。次いで、塗工機を用いて、前述の高誘電率用樹脂溶液を、同じキャリアフィルムの幅方向での中央部であって、上述した高耐電圧領域となるべき未硬化のフィルムの間を埋めるように塗工し、90℃および1分間の条件で乾燥させ、厚みが10μmの高誘電率領域となるべき未硬化のフィルムを得た。
次に、上述のように高耐電圧領域および高誘電率領域の各々となるべき未硬化のフィルムに対し、180℃および1時間の条件で硬化処理を行ない、キャリアフィルムから剥離し、この発明の範囲内の実施例となる試料1に係る誘電体樹脂フィルムを得た。図10に、このようにして得られた試料1に係る誘電体樹脂フィルム31が図示されている。誘電体樹脂フィルム31は、高誘電率領域32および高耐電圧領域33を有している。
他方、この発明の範囲外の比較例として、塗工機を用いてキャリアフィルム上に高誘電率用樹脂溶液を全面にわたって塗工し、上記試料1の場合と同様の条件で乾燥させ、厚み10μmの未硬化のフィルムを得、次いで、未硬化のフィルムに対して、上記試料1の場合と同様の条件で硬化処理を行ない、キャリアフィルムから剥離し、比較例となる試料2に係る誘電体樹脂フィルムを得た。図11に、試料2に係る誘電体樹脂フィルム36が示されている。誘電体樹脂フィルム36は、そのすべてが高誘電率領域とされている。
次に、試料1に係る誘電体樹脂フィルム31の上下面に、図10に示すように、真空蒸着法によりアルミニウムを主成分とする対向電極34および35を形成し、試料1となるフィルムコンデンサを完成させた。
他方、試料2に係る誘電体樹脂フィルム36についても、その上下面に、図11に示すように、真空蒸着法によりアルミニウムを主成分とする対向電極37および38を形成し、試料2となるフィルムコンデンサを完成させた。
図10および図11において、それぞれ、試料1および2となるフィルムコンデンサの各部分の寸法が表示されている。図10に注目すれば、試料1では、高耐電圧領域33と高誘電率領域32との境界は、対向電極34および35の各々の端縁より0.5mm内側に位置していることがわかる。
このようにして得られた試料1および試料2の各々に係るフィルムコンデンサについて、表1に示すように、静電容量、絶縁破壊電圧および破壊直前の電荷量を測定した。絶縁破壊電圧は、絶縁破壊試験装置を用いて、昇圧速度を毎秒100V/μmとしてフィルムコンデンサに電界を印加し、25℃にて測定を6点行ない、ワイブルプロットから累積故障頻度50%の値を絶縁破壊電圧とした。
Figure 0005333746
表1に示すように、実施例としての試料1によれば、比較例としての試料2と比較して、静電容量がわずかに低下するが、絶縁破壊電圧については、約1.5倍に向上させることができる。
[実験例2]
図12に示すような形状および寸法を有する高誘電率領域42および高耐電圧領域43を形成した誘電体樹脂フィルム41を作製するため、実験例1において作製した高誘電率用樹脂溶液および高耐電圧用樹脂溶液を、キャリアフィルム上にそれぞれスクリーン印刷し、90℃および1分間の条件で乾燥させて、厚み10μmの未硬化のフィルムを得た。そして、この未硬化のフィルムに対して、180℃および1時間の条件で硬化処理を行なった後、キャリアフィルムから剥離し、誘電体樹脂フィルム41を得た。
次に、この誘電体樹脂フィルムの上下面に、図13に示すように、真空蒸着法によりアルミニウムを主成分とする対向電極44および45を形成し、試料11となるフィルムコンデンサを完成させた。このフィルムコンデンサにおいて、四角形で規定される、高耐電圧領域43と高誘電率領域42との境界は、その4辺すべてについて、対向電極44および45の各々の端縁より0.5mm内側に位置していた。
この実験例2において作製した試料11に係るフィルムコンデンサについて、実験例1の場合と同様、静電容量、絶縁破壊電圧および破壊直前の電荷量を測定した。その結果が表2に示されている。
Figure 0005333746
表2に示すように、試料11に係るフィルムコンデンサによれば、実験例1の比較例としての試料1と比較して、静電容量はわずかに低下するが、絶縁破壊電圧を2倍程度向上させることができる。また、試料11に係るフィルムコンデンサによれば、実験例1の実施例としての試料1と比較して、静電容量はわずかに低下するが、絶縁破壊電圧を1.3倍以上向上させることができる。
[実験例3]
まず、誘電体樹脂フィルムにおける高耐電圧領域となるべき高耐電圧樹脂溶液として、実験例1において作製したものと同じものを用いた。
他方、高誘電率用樹脂溶液として、ブタノールにポリ塩化ビニリデンを溶解させた10重量%のポリ塩化ビニリデン溶液を作製した。
次に、実験例1において用いた高誘電率用樹脂溶液に代えて、上述したポリ塩化ビニリデン溶液を高誘電率用樹脂溶液として用いたことを除いて、実験例1の試料1を作製した場合と同様の操作を経て、前述の図10に示したのと同様の形状および寸法を有する実施例となる試料21に係るフィルムコンデンサを作製した。
他方、比較例となる試料22として、上述のポリ塩化ビニリデン溶液のみを用いて、図11に示すものと同様のフィルムコンデンサを作製した。
これら試料21および試料22の各々に係るフィルムコンデンサについて、実験例1の場合と同様の方法により測定した静電容量、絶縁破壊電圧および破壊直前の電荷量が表3に示されている。
Figure 0005333746
表3に示すように、実施例となる試料21によれば、比較例となる試料22と比較して、静電容量のわずかな低下が見られるものの、絶縁破壊電圧については1.3倍程度の向上を図ることができる。
11 フィルムコンデンサ
12 誘電体樹脂フィルム
13 高誘電率領域
14 高耐電圧領域
15,16 対向電極
15a,16a 端縁

Claims (8)

  1. 誘電体樹脂フィルムと、
    前記誘電体樹脂フィルムを挟んで互いに対向する第1および第2の対向電極と
    を備え、
    前記第1の対向電極は、前記第2の対向電極に対向する第1の端縁を有し、前記第2の対向電極は、前記第1の対向電極に対向する第2の端縁を有し、
    前記誘電体樹脂フィルムは、前記第1の端縁および前記第2の端縁の少なくとも一方とその近傍とが位置する第1の部分と、それ以外の第2の部分とを有し、
    前記第1の部分は、前記第2の部分に比べて、絶縁耐力のより高い高耐電圧領域とされ、前記第2の部分は、前記第1の部分に比べて、誘電率のより高い高誘電率領域とされている、
    フィルムコンデンサ。
  2. 前記高誘電率領域は無機フィラーを含み、前記高耐電圧領域は無機フィラーを含まない、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
  3. 前記無機フィラーは、BaTiO、SrTiO、CaZrO、SiOおよび(Ba,Ca)TiOから選ばれる1種を主成分とするものである、請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
  4. 前記高耐電圧領域および前記高誘電率領域は互いに同じ樹脂材料を含む、請求項2または3に記載のフィルムコンデンサ。
  5. 前記樹脂材料は、ポリビニルアセトアセタールとトリレンジイソシアネートとの架橋物である、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
  6. 前記高耐電圧領域および前記高誘電率領域は無機フィラーを含まず、前記高耐電圧領域は、絶縁耐力の比較的高い樹脂材料からなり、前記高誘電率領域は、誘電率の比較的高い樹脂材料からなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
  7. 前記高耐電圧領域は、ポリビニルアセトアセタールとトリレンジイソシアネートとの架橋物からなり、前記高誘電率領域は、ポリ塩化ビニリデンからなる、請求項6に記載のフィルムコンデンサ。
  8. 前記高耐電圧領域と前記高誘電率領域との境界は、前記第1および第2の対向電極の各々における、前記第1の端縁および前記第2の端縁の各々より0.1〜1mmの範囲で内側に位置する、請求項1ないし7のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
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