JP5331074B2 - ステアリング装置 - Google Patents
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Description
しかしながら舵角センサに異常(例えば舵角センサの検出値がオフセットするオフセット異常)が発生すると、ステアリングホイールの操舵角を精度よく検出することができず、電動モータで好適な補助トルクを発生できなくなる。
この点に関し、例えば特許文献1には、車速が所定値以上、操舵速度が所定値以下、操舵トルクが所定値以下であって、所定時間に舵角センサが検出する操舵角の平均値が所定値以上の場合に舵角センサの異常を判定できる電動パワーステアリング装置が開示されている。
操舵トルクはタイヤグリップに応じて変化し、タイヤグリップが低下する低μ路(路面摩擦係数μの小さな路面)では、通常の路面(凍結していない舗装道路など、一般的な路面摩擦係数μの路面)に比べ、ステアリングホイールの操舵角に対する操舵トルクが小さくなる。したがって、路面摩擦係数μを考慮せずに算出する操舵トルクに基づいて舵角センサの異常を判定する特許文献1の技術は、低μ路で舵角センサの異常を誤判定する虞がある。
また、車両が低μ路を走行する場合には、舵角検出手段の異常を判定するための判定条件に含まれて操舵角の異常を判定するための第2閾値を大きくすることで判定条件を厳しくして、舵角検出手段の異常を判定しにくくすることができる。
図1に示すように、本実施形態に係るステアリング装置は、転舵輪である前輪1(1L,1R)を転舵させる操舵手段(ステアリングホイール3)の操舵を電動機4で補助する操舵力補助装置110を有する電動パワーステアリング装置100であって、操舵力補助装置110を制御する操舵制御ECU130を含んで構成されて車両Vに備わる。また、車両Vには後輪2(2R,2L)が備わり、前輪1と後輪2を含んで車両Vの車輪を構成する。そして、車両Vが前輪駆動の場合は転舵輪である前輪1が駆動輪になる。
この構成によって、運転者はステアリングホイール3の操作で前輪1L,1Rを転舵し、車両Vを左右方向に旋回させることができる。
そのため、車両Vには舵角センサ24、車速センサSV、横GセンサSG、トルクセンサSTが備わっている。
操舵制御ECU130は、舵角センサ24が検出するラック軸8の動作量に基づいてステアリングホイール3の操舵角を算出する。
以下、舵角センサ24が検出するラック軸8の動作量に基づいて算出されるステアリングホイール3の操舵角を、舵角センサ24が検出する操舵角と記載する。
なお舵角センサ24は、ステアリングホイール3の操舵角を検出可能であれば、ラック位置センサに限定されるものではない。
横GセンサSGは、車両Vの前後方向に対する横方向にかかる横加速度(横G)を検出するセンサであって、車両Vに発生する横Gを検出し、例えば、横Gの大きさと方向に対応した電気信号を横G信号として出力する。
車速センサSVは、左右の前輪1L,1Rおよび左右の後輪2L,2Rに備わって各車輪の車輪速を検出する車輪速センサ1RSW,1LSW,2RSW,2LSWからの入力信号(車輪速度)に基づいて車両Vの車速(車体速)を検出する速度検出手段であり、車体速信号を出力する。
このとき、操舵制御ECU130は、舵角センサ24が検出するステアリングホイール3の操舵角をパラメータの1つとして、ステアリングシャフト3aに付与する補助トルクを決定する。
なお、操舵制御ECU130が、ステアリングホイール3の操舵角をパラメータの1つとして補助トルクを決定する方法は、例えば前記した特許文献1に記載されるように公知の技術であり、ここでの詳細な説明は適宜省略する。
ここでいう舵角センサ24の異常は、例えば、検出値がオフセットするオフセット異常である。
例えば、車両Vが所定の車体速以上の速度で直進する場合、ピニオン軸7に発生する操舵トルクは微小であり、トルクセンサSTが検出するピニオントルクTPはゼロ付近の値を示す。このとき、舵角センサ24が操舵制御ECU130に入力するラック軸8の動作量が直進状態を示す値でなければ、操舵制御ECU130は舵角センサ24に異常が発生していると判定できる。
このときの操舵角の閾値(第2閾値)は、例えば、車両V(図1参照)が直進していると判定できる操舵角の範囲を示す閾値とすればよく、走行テスト等によって決定することができる。このような第2閾値(操舵角)を、以降、異常判定操舵角と称する。
そして、図2の(a)において異常判定操舵角をθBに設定すると、異常判定操舵角θBに対応する操舵トルクT1が操舵トルク閾値になる。
例えば、トルクセンサST(図1参照)が検出する操舵トルクの検出値がT2(T2<T1)であり、舵角センサ24(図1参照)が検出する操舵角の検出値がθ1(θB<θ1)の場合、トルクセンサSTが検出する操舵トルクの検出値T2が操舵トルク閾値T1以下で、舵角センサ24が検出する操舵角の検出値θ1が異常判定操舵角θB以上であるため、操舵制御ECU130(図1参照)は舵角センサ24に異常が発生したと判定する。しかしながら、図2の(a)に破線で示すように、車両Vが低μ路を走行している場合は操舵角がθ1のとき操舵トルクがT2になるため舵角センサ24に異常は発生していない。このように、車両Vが低μ路を走行する場合、操舵制御ECU130が舵角センサ24の異常を誤判定する場合がある。
例えば、操舵角平均算出部132は、平均操舵角を単位時間間隔で算出して、常に最新の平均操舵角を算出するように構成される。
なお、平均操舵角が特許請求の範囲に記載される、操舵角の絶対値の単位時間当たりの平均値に相当する。
例えば、操舵トルク平均算出部133は、平均操舵トルクを単位時間間隔で算出して、常に最新の平均操舵トルクを算出するように構成される。
なお、平均操舵トルクが特許請求の範囲に記載される、操舵トルクの絶対値の単位時間当たりの平均値に相当する。
例えば、操舵角変化量算出部134は、操舵角変化量を単位時間間隔で算出して、常に最新の操舵角変化量を算出するように構成される。
操舵方向の成分を含んだ移動平均値とは、左方向の操舵角と右方向の操舵角を互いに反する成分として算出する移動平均値を示し、例えば左方向を正とした場合に右方向を負として算出する移動平均値を示す。
また、例えば、舵角センサ24はステアリングホイール3の操舵方向を、操舵角平均算出部132に入力する信号の正負で示す構成とすれば、操舵角平均算出部132は、舵角センサ24から入力する信号の正負を判定することによって、ステアリングホイール3の操舵方向を取得できる。
左右方向の成分を含んだ移動平均値とは、左方向の操舵トルクと右方向の操舵トルクを互いに反する成分として算出する移動平均値を示し、例えば左方向を正とした場合に右方向を負として算出する移動平均値を示す。
また、例えば、トルクセンサSTは操舵トルクの左右方向を、操舵トルク平均算出部133に入力する信号の正負で示す構成とすれば、操舵トルク平均算出部133は、トルクセンサSTから入力する信号の正負を判定することによって、操舵トルクの左右方向を取得できる。
なお、ここでいう摩擦力の所定値は、例えば、舵角センサ24の異常を誤判定しないタイヤグリップが確保できる摩擦力の最小値とし、車両Vの特性値として予め実験等で設定されることが好ましい。
単位時間における操舵トルクの最大値から最小値を減算した操舵トルク変化量が所定の閾値を超えることを条件1とする。
これは、路面摩擦係数μが変化する路面を車両V(図1参照)が走行すると操舵トルクが大きく変化することから、操舵トルク変化量が所定の閾値を超えた場合、グリップ判定部135は、路面摩擦係数μが変化する路面を車両Vが走行してタイヤグリップが低下していると判定する。
条件1における操舵トルク変化量の閾値は、例えば、路面摩擦係数μが変化する路面での走行テストで計測される操舵トルク変化量から、前輪1(図1参照)および後輪2(図1参照)と路面の間の摩擦力が前記した所定値以下のときの操舵トルク変化量を決定し、その値を閾値とすればよい。また、条件1における単位時間は、バネ上共振周期の2倍であることが好ましい。
駆動輪と転舵輪が同一の場合(例えば、駆動輪と転舵輪がともに前輪1(図1参照)の場合)、駆動輪の加速度の絶対値が所定の閾値を超えることを条件2とする。
車両V(図1参照)が低μ路を走行する場合は、前輪1および後輪2(図1参照)と路面の間の摩擦力が低下してタイヤグリップが低下するため、通常の路面に比べて駆動輪の加速度が急変化する。
そこでグリップ判定部135は、駆動輪の加速度の絶対値が所定の閾値を超えて急変化したときに、前輪1および後輪2と路面の間の摩擦力が前記した所定値以下であると判定する。
条件2における駆動輪の加速度の閾値は、例えば、低μ路における走行テストで駆動輪の加速度を計測し、好適なタイヤグリップが得られているときの駆動輪の加速度の最大値を閾値とすればよい。
前輪1(図1参照)および後輪2(図1参照)の全輪の加速度の絶対値が所定の閾値を超えることを条件3とする。
車両V(図1参照)が低μ路を走行する場合にブレーキ操作されると、前輪1および後輪2はスリップし、前輪1および後輪2の回転速度は通常の路面に比べて急激に減速する。そこでグリップ判定部135は、前輪1および後輪2の加速度の絶対値が所定の閾値を超えて急変化したときに、前輪1および後輪2と路面の間の摩擦力が前記した所定値以下であると判定する。
条件3における、前輪1および後輪2の加速度の閾値は、例えば、低μ路における走行テストでブレーキ操作された前輪1および後輪2の加速度を計測し、好適なタイヤグリップが得られているときの、前輪1および後輪2の加速度の最大値を閾値とすればよい。
駆動輪と非駆動輪の車輪速の差に基づいて算出されるスリップ率が所定の閾値を超えることを条件4とする。
車両V(図1参照)が低μ路を走行する場合、駆動輪(前輪駆動の場合は前輪1(図1参照))の回転速度と非駆動輪(前輪駆動の場合は後輪2(図1参照))の回転速度に差が生じることから、グリップ判定部135は駆動輪の回転速度と非駆動輪の回転速度の差に基づいて算出されるスリップ率が所定の閾値を超える場合に、前輪1および後輪2と路面の間の摩擦力が前記した所定値以下であると判定する。
条件4におけるスリップ率の閾値は、例えば、低μ路における走行テストで、好適なタイヤグリップが得られているときのスリップ率の最大値を閾値とすればよい。
ABS装置(アンチロックブレーキシステム)が備わる場合はABS装置が作動すること、TCS装置(トラクションコントロールシステム)が備わる場合はTCS装置が作動すること、横滑り防止装置が備わる場合は横滑り防止装置が作動すること、を条件5とする。
ABS装置は車両Vが低μ路を走行中にブレーキ操作された時に作動することが多く、TCS装置は車両Vが低μ路を走行中に左右の駆動輪のタイヤグリップを維持するために作動することが多い。また、横滑り防止装置は車両Vが低μ路を走行中に発生する横滑りを防止するために作動することが多い。したがってグリップ判定部135は、ABS装置、TCS装置、横滑り防止装置の少なくとも1つが作動するとき、車両Vが低μ路を走行していると判定し、前輪1(図1参照)および後輪2(図1参照)と路面の間の摩擦力が前記した所定値以下であると判定する。
また、図示しないABS装置、TCS装置、横滑り防止装置が備わる場合、それぞれの装置の状態(起動または停止)を示す状態信号がグリップ判定部135に入力される構成が好ましい。
つまり、グリップ判定部135は、車両Vの車輪(前輪1および後輪2)と路面との間の摩擦力が前記した所定値以下か否かを判定するグリップ判定手段である。
すなわち、車両Vが低μ路を走行する場合、異常判定操舵角を大きくするように変更すればよい。
例えば図2の(b)に示すように、車体速が高速の場合(実線)は、破線で示す低速時に比べて同じ操舵トルクに対する操舵角が小さくなる。したがって、高速時の異常判定操舵角を、低速時の異常判定操舵角であるθB2より小さなθB3に設定する。
このような通常路走行時参照マップMP1および低μ路走行時参照マップMP2は、走行テスト等によって予め設定しておくことが好ましい。
そして、グリップ判定部135(図3参照)が、車両V(図1参照)が低μ路を走行していると判定したとき、舵角センサ異常判定部138は、通常路走行時参照マップMP1に替えて低μ路走行時参照マップMP2を参照する。このことによって、舵角センサ24の異常を判定する第2閾値(異常判定操舵角)が大きくなり、判定条件が厳しくなる。したがって、舵角センサ異常判定部138は、舵角センサ24の異常を判定しにくくなる。
オフセット異常は、ラック軸8(図1参照)の位置に対する検出値がオフセットする異常であり、オフセット異常が発生した舵角センサ24であってもラック軸8の相対的な動作量は検出可能である。そして、操舵角変化量はラック軸8の相対的な動作量に基づいて算出可能であることから、舵角センサ24にオフセット異常が発生した場合であっても、操舵角変化量算出部134は操舵角変化量を算出できる。したがって、舵角センサ異常判定部138が検出対象とする舵角センサ24の異常がオフセット異常に限定される場合は、操舵角が安定していることを判定条件に加えることができる。
この構成によると、舵角センサ異常判定部138(図3参照)は、トルクセンサSTが検出する操舵トルクの絶対値が操舵トルク閾値以下になった場合、車両V(図1参照)が低μ路を走行しているとグリップ判定部135(図3参照)が判定したときは、舵角センサ24が検出する操舵角の絶対値が、低μ路走行時参照マップMP2を参照して得られる異常判定操舵角以上になったときに舵角センサ24の異常を判定する。
換言すると、舵角センサ異常判定部138は、低μ路走行時参照マップMP2を参照することで、舵角センサ24の異常を判定する第2閾値(異常判定操舵角)を大きくして舵角センサ24の異常の判定するための判定条件を厳しくする。その結果、舵角センサ異常判定部138は舵角センサ24の異常を判定しにくくなる。
車両Vが低μ路を走行している場合、前記したように、通常の路面の場合に比べて、ステアリングホイール3(図1参照)の操舵にともなって発生する操舵トルクが低下することから、車両Vが低μ路を走行しているときは、舵角センサ24の異常を判定するのに好ましい状態ではないともいえる。そこで、車両Vが低μ路を走行しているときは、舵角センサ異常判定部138が、舵角センサ24の異常を判定しない構成によって、舵角センサ24の異常の誤判定を防止できる。
そして、車体速が高くなるにしたがって異常判定操舵角が小さくなる通常路走行時参照マップMP1であっても、異常判定操舵角は低μ路走行時参照マップMP2より小さな値になる。
2 後輪(車輪)
3 ステアリングホイール(操舵手段)
24 舵角センサ(舵角検出手段)
100 電動パワーステアリング装置(ステアリング装置)
110 操舵力補助装置
130 操舵制御ECU
134 操舵角変化量算出部
135 グリップ判定部(グリップ判定手段)
138 舵角センサ異常判定部(異常判定手段)
ST トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
SV 車速センサ(速度検出手段)
V 車両
Claims (7)
- 操舵手段の操作に応じて車両の転舵輪を操舵するステアリング装置において、
前記操舵手段に加えられる操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記操舵手段の操舵角を検出する舵角検出手段と、
前記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクの絶対値が第1閾値以下でかつ前記舵角検出手段が検出する操舵角の絶対値が第2閾値以上であることを判定条件として前記舵角検出手段の異常を判定する異常判定手段と、
前記転舵輪を含んだ車輪と路面との摩擦力が所定値以下か否かを判定するグリップ判定手段と、を備え、
前記摩擦力が前記所定値以下と前記グリップ判定手段が判定した場合に、前記異常判定手段は、前記摩擦力が前記所定値より大きい場合より前記第2閾値を大きくして、前記判定条件を厳しくし、前記舵角検出手段の異常を判定しにくくすることを特徴とするステアリング装置。 - 前記異常判定手段は、前記摩擦力が前記所定値以下と前記グリップ判定手段が判定した場合に、前記舵角検出手段の異常を判定しないことを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
- 前記車両の車体速を検出する速度検出手段を備え、
前記異常判定手段は、前記速度検出手段が検出する前記車体速が高くなるほど、前記第2閾値を小さく設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。 - 前記判定条件における前記操舵トルクの絶対値が、当該操舵トルクの絶対値の所定の単位時間当たりの平均値であり、
前記判定条件における前記操舵角の絶対値が、当該操舵角の絶対値の前記単位時間当たりの平均値であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のステアリング装置。 - 前記判定条件における前記操舵トルクの絶対値が、当該操舵トルクの所定の単位時間当たりの平均値の絶対値であり、
前記判定条件における前記操舵角の絶対値が、当該操舵角の前記単位時間当たりの平均値の絶対値であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のステアリング装置。 - 前記異常判定手段は、前記操舵角が前記単位時間で安定していることを前記判定条件に加えて前記舵角検出手段の異常を判定することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のステアリング装置。
- 前記単位時間における前記操舵角の最大値と最小値の差である操舵角変化量を算出する操舵角変化量算出部を備え、
前記異常判定手段は、前記操舵角変化量算出部が算出する前記操舵角変化量が第3閾値以下の場合に、前記操舵角が安定していると判定することを特徴とする請求項6に記載のステアリング装置。
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