JP2006298156A - 車両挙動状態推定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両のタイヤが路面から受ける実路面反力トルクTaを検出する路面反力トルク検出手段1と、車両の走行状態量から理想的な路面反力トルクである規範路面反力トルクTcを演算する規範路面反力トルク演算手段2と、車両の挙動状態を推定する挙動状態推定手段4とを備え、挙動状態推定手段4は、実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの位相差、偏差Tdおよび偏差時間変化率dTdのうち、少なくとも2つに基づいて車両の挙動状態を推定するものである。
【選択図】図2
Description
図1は、この発明の実施の形態1に係る車両挙動状態推定装置を示すブロック図である。なお、本実施の形態では、車両の不安定状態であるオーバーステアを検出する場合について説明する。
挙動状態推定手段4は、実路面反力トルクTa、規範路面反力トルクTcおよび中立点付近信号に基づいて車両の挙動状態を推定し、車両挙動状態推定信号を出力する。
図2において、この挙動状態推定手段4は、実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの位相差に基づいて位相差判定信号を出力する位相差演算手段5と、実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの偏差Tdに基づいて偏差判定信号を出力する偏差演算手段6と、実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの偏差時間変化率dTdに基づいて偏差時間変化率判定信号を出力する偏差時間変化率演算手段7と、中立点付近信号、位相差判定信号、偏差判定信号および偏差時間変化率判定信号に基づいて挙動状態推定信号を出力する論理積手段8とを含んでいる。
図3は、横滑り角βおよび横滑り角速度dβと車両の挙動状態との一般的な関係を示す説明図である。
図3において、一般的な車両においては、車両の向きと車両の進行方向との角度差である横滑り角βおよび横滑り角βの微分値である横滑り角速度dβが小さい場合は、アンダーステアあるいはニュートラルステア状態となり、横滑り角βおよび横滑り角速度dβが大きい場合は、オーバーステア状態となることが知られている。
図4において、横滑り角βの小さな領域では、実路面反力トルクTaと横滑り角βとの間に線形の関係があることが知られている。また、滑りやすい路面と乾いた路面とでは、横滑り角βに対する実路面反力トルクTaの特性が異なることが知られている。
ここで、力学的に横滑り角βと実路面反力トルクTaとの関係は、次式(1)で表される。
図5において、丸印で囲んだ箇所は、車両がオーバーステア状態にある場合の実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの関係を示しており、両者の間には、大きなずれが生じている。
この実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの偏差Tdは、式(1)および式(2)に基づいて、次式(3)で表される。
また、ヨーレートγに関する項は、ヨーレートγが走行速度Vによって除算されるため、無視しても影響が少ないと考えられる。そのため、上記の条件が成立する領域においては、実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの偏差Tdを次式(4)で表すことができる。
図6において、偏差Tdおよび偏差時間変化率dTdが小さい場合は、アンダーステアあるいはニュートラルステア状態となり、偏差Tdおよび偏差時間変化率dTdが大きい場合は、オーバーステア状態となる。
図7において、実際の車両においては、車両がオーバーステア状態となる場合に実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの偏差Tdおよび偏差時間変化率dTdの差のみでなく位相差も生じることが知られている。
したがって、実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの位相差、偏差Tdおよび偏差時間変化率dTdを用いることにより、車両の挙動状態の推定を高い精度で行うことができる。
まず、路面反力トルク検出手段1では、ラック軸に働く実路面反力トルクTaが検出されて、メモリに記憶される(ステップS11)。
次に、ハンドル角検出器では、ハンドル角が検出されて、メモリに記憶される(ステップS12)。
また、速度検出器では、車両の走行速度が検出されて、メモリに記憶される(ステップS13)。
次に、中立点付近判定手段3では、メモリから取り出されたハンドル角に基づいてステアリングホイールが中立点付近にあるか否かを判定し(ステップS16)、ステアリングホイールが中立点付近にあると判定した場合には、中立点付近信号が出力されてメモリに記憶される(ステップS17)。
まず、位相差演算手段5では、メモリから取り出された実路面反力トルクTaと規範路面反力トルクTcとの位相差が演算される(ステップS21)。
また、位相差演算手段5では、位相差とあらかじめ決定されたしきい値との比較が行われ、位相差がしきい値よりも大きい場合に、位相差が通常より大きいと判定し、位相差判定信号がHレベルで出力されてメモリに記憶される。位相差がしきい値よりも小さい場合には、位相差判定信号がLレベルで出力されてメモリに記憶される(ステップS22)。
また、偏差演算手段6では、偏差Tdとあらかじめ決定されたしきい値との比較が行われ、偏差Tdがしきい値よりも大きい場合に、偏差Tdが通常より大きいと判定し、偏差判定信号がHレベルで出力されてメモリに記憶される。偏差Tdがしきい値よりも小さい場合には、偏差判定信号がLレベルで出力されてメモリに記憶される(ステップS24)。
また、偏差時間変化率演算手段7では、偏差時間変化率dTdとあらかじめ決定されたしきい値との比較が行われ、偏差時間変化率dTdがしきい値よりも大きい場合に、偏差時間変化率dTdが通常より大きいと判定し、偏差時間変化率判定信号がHレベルで出力されてメモリに記憶される。偏差時間変化率dTdがしきい値よりも小さい場合には、偏差時間変化率判定信号がLレベルで出力されてメモリに記憶される(ステップS26)。
一方、ステップS27において、各々の信号の電圧レベルが全てHレベルであるという条件を満たさない(何れかの信号がLレベルである)(すなわち、No)と判定された場合には、車両の挙動状態が安定していると判断し、車両挙動状態推定信号がLレベルで出力される(ステップS29)。
図10は、この発明の実施の形態2に係る車両挙動状態推定装置の挙動状態推定手段4Aを示すブロック図である。
図10において、この挙動状態推定手段4Aは、位相差演算手段5と、偏差演算手段6と、中立点付近信号、位相差判定信号および偏差判定信号に基づいて挙動状態推定信号を出力する論理積手段8Aとを含んでいる。ここでは、実施の形態1と同種のものについては、同一符号の後に「A」を付して、詳述は省略する。
本実施の形態における挙動状態推定手段4Aの動作においては、図9に示したステップS25およびステップS26を省略して、ステップS24に続いてステップS30に移行する。
一方、ステップS30において、各々の信号の電圧レベルが全てHレベルであるという条件を満たさない(何れかの信号がLレベルである)(すなわち、No)と判定された場合には、車両の挙動状態が安定していると判断し、車両挙動状態推定信号がLレベルで出力される(ステップS29)。
図12は、この発明の実施の形態3に係る車両挙動状態推定装置の挙動状態推定手段4Bを示すブロック図である。
図12において、この挙動状態推定手段4Bは、偏差演算手段6と、偏差時間変化率演算手段7と、中立点付近信号、偏差判定信号および偏差時間変化率判定信号に基づいて挙動状態推定信号を出力する論理積手段8Bとを含んでいる。ここでは、実施の形態1と同種のものについては、同一符号の後に「B」を付して、詳述は省略する。
本実施の形態における挙動状態推定手段4Bの動作においては、図9に示したステップS21およびステップS22を省略して、ステップS23に移行する。
一方、ステップS31において、各々の信号の電圧レベルが全てHレベルであるという条件を満たさない(何れかの信号がLレベルである)(すなわち、No)と判定された場合には、車両の挙動状態が安定していると判断し、車両挙動状態推定信号がLレベルで出力される(ステップS29)。
図14は、この発明の実施の形態4に係る車両挙動状態推定装置の挙動状態推定手段4Cを示すブロック図である。
図14において、この挙動状態推定手段4Cは、位相差演算手段5と、偏差時間変化率演算手段7と、中立点付近信号、位相差判定信号および偏差時間変化率判定信号に基づいて挙動状態推定信号を出力する論理積手段8Cとを含んでいる。ここでは、実施の形態1と同種のものについては、同一符号の後に「C」を付して、詳述は省略する。
本実施の形態における挙動状態推定手段4Cの動作においては、図9に示したステップS23およびステップS24を省略して、ステップS22に続いてステップS25に移行する。
一方、ステップS32において、各々の信号の電圧レベルが全てHレベルであるという条件を満たさない(何れかの信号がLレベルである)(すなわち、No)と判定された場合には、車両の挙動状態が安定していると判断し、車両挙動状態推定信号がLレベルで出力される(ステップS29)。
図16は、この発明の実施の形態5に係る車両挙動状態推定装置の挙動状態推定手段4Dを示すブロック図である。
図16において、この挙動状態推定手段4Dは、位相差演算手段5と、中立点付近信号および位相差判定信号に基づいて挙動状態推定信号を出力する論理積手段8Dとを含んでいる。ここでは、実施の形態1と同種のものについては、同一符号の後に「D」を付して、詳述は省略する。
本実施の形態における挙動状態推定手段4Dの動作においては、図9に示したステップS23からステップS26を省略して、ステップS22に続いてステップS33に移行する。
一方、ステップS33において、各々の信号の電圧レベルがともにHレベルであるという条件を満たさない(何れかの信号がLレベルである)(すなわち、No)と判定された場合には、車両の挙動状態が安定していると判断し、車両挙動状態推定信号がLレベルで出力される(ステップS29)。
図18は、この発明の実施の形態6に係る車両挙動状態推定装置の挙動状態推定手段4Eを示すブロック図である。
図18において、この挙動状態推定手段4Eは、偏差時間変化率演算手段7と、中立点付近信号および偏差時間変化率判定信号に基づいて挙動状態推定信号を出力する論理積手段8Eとを含んでいる。ここでは、実施の形態1と同種のものについては、同一符号の後に「E」を付して、詳述は省略する。
本実施の形態における挙動状態推定手段4Eの動作においては、図9に示したステップS21からステップS24を省略して、ステップS25に移行する。
一方、ステップS34において、各々の信号の電圧レベルがともにHレベルであるという条件を満たさない(何れかの信号がLレベルである)(すなわち、No)と判定された場合には、車両の挙動状態が安定していると判断し、車両挙動状態推定信号がLレベルで出力される(ステップS29)。
上記実施の形態1〜6では、ハンドル角および走行速度に基づいて規範路面反力トルクTcを演算したが、横方向加速度に基づいて規範路面反力トルクTcを演算してもよい。
図20は、この発明の実施の形態7に係る車両挙動状態推定装置を示すブロック図である。
本実施の形態における挙動状態推定手段4の動作においては、図8に示したステップS12からステップS14の代わりに、ステップS35およびステップS36の処理を実行する。
続いて、規範路面反力トルク演算手段2Fでは、メモリから取り出された横加速度に基づいて、横加速度−規範路面反力トルクマップから規範路面反力トルクTcが演算される(ステップS36)。
このものの場合、図1に示した規範路面反力トルク演算手段は、ロールレートと規範路面反力トルクTcとの関係が記されたロールレート−規範路面反力トルクマップを有しており、ロールレートを検出するロールレート検出器(ロールレート検出手段)から入力されるロールレートに基づいて、上記のマップから規範路面反力トルクTcを演算する。
このものの場合も、上記実施の形態1〜6と同様の効果を奏することができる。
このものの場合、図1に示した路面反力トルク検出手段は、車両の運転者による操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、操舵トルクを補助するための補助トルクを発生するモータによる補助トルクを検出する補助トルク検出手段とを含み、操舵トルク、走行速度および補助トルクに基づいて路面反力トルクを演算する。
このものの場合も、上記実施の形態1〜7と同様の効果を奏することができる。
このものの場合も、上記実施の形態1〜7と同様の効果を奏することができる。
このものの場合、一般的に車両の横滑り角βが±5度以上の状態にある場合に車両がオーバーステア状態となることから、タイヤ角δが例えばその20%に相当する±1度の範囲内にある場合にステアリングホイールが中立点付近にあると判定する。この場合のハンドル角は、車両によって異なるステアリングギア比によって決定される。例えば、ステアリングギア比が15である場合は、ハンドル角が±15度の範囲内にある場合にステアリングホイールが中立点付近にあると判定し、中立点付近信号を電圧レベルがH(High)レベルで出力する。
上記の横滑り角βとハンドル角との関係は、例えば横滑り角βが±5度よりも充分に小さい場合を、車両が安定した走行状態とみなして設定される。
このものの場合も、上記実施の形態1〜7と同様の効果を奏することができる。
Claims (10)
- 車両のタイヤが路面から受ける実路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出手段と、
前記車両の走行状態量から理想的な路面反力トルクである規範路面反力トルクを演算する規範路面反力トルク演算手段と、
前記車両の挙動状態を推定する挙動状態推定手段と
を備え、
前記挙動状態推定手段は、前記実路面反力トルクと前記規範路面反力トルクとの位相差、偏差および偏差時間変化率のうち、少なくとも2つに基づいて前記車両の挙動状態を推定することを特徴とする車両挙動状態推定装置。 - 車両のタイヤが路面から受ける実路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出手段と、
前記車両の走行状態量から理想的な路面反力トルクである規範路面反力トルクを演算する規範路面反力トルク演算手段と、
前記車両の挙動状態を推定する挙動状態推定手段と
を備え、
前記挙動状態推定手段は、前記実路面反力トルクと前記規範路面反力トルクとの位相差に基づいて前記車両の挙動状態を推定することを特徴とする車両挙動状態推定装置。 - 車両のタイヤが路面から受ける実路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出手段と、
前記車両の走行状態量から理想的な路面反力トルクである規範路面反力トルクを演算する規範路面反力トルク演算手段と、
前記車両の挙動状態を推定する挙動状態推定手段と
を備え、
前記挙動状態推定手段は、前記実路面反力トルクと前記規範路面反力トルクとの偏差時間変化率に基づいて前記車両の挙動状態を推定することを特徴とする車両挙動状態推定装置。 - 前記路面反力トルク検出手段は、
前記車両の運転者による操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記車両の走行速度を検出する車速検出手段と、
前記操舵トルクを補助するための補助トルクを発生するモータによる前記補助トルクを検出する補助トルク検出手段と
を含み、
前記操舵トルク、前記走行速度および前記補助トルクに基づいて前記実路面反力トルクを検出することを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の車両挙動状態推定装置。 - 前記路面反力トルク検出手段は、前記タイヤに発生する前記実路面反力トルクを計測する路面反力トルク計測手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の車両挙動状態推定装置。
- 前記規範路面反力トルク演算手段は、
前記運転者が操作するステアリングホイールの回転角度であるハンドル角を検出するハンドル角検出手段と、
前記車両の走行速度を検出する車速検出手段と
を含み、
前記回転角度と前記走行速度とに基づいて前記規範路面反力トルクを演算することを特徴とする請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の車両挙動状態推定装置。 - 前記規範路面反力トルク演算手段は、
前記車両の横方向への加速度である横加速度を検出する横加速度検出手段を含み、
前記横加速度に基づいて前記規範路面反力トルクを演算することを特徴とする請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の車両挙動状態推定装置。 - 前記規範路面反力トルク演算手段は、
前記車両に発生するロールレートを検出するロールレート検出手段を含み、
前記ロールレートに基づいて前記規範路面反力トルクを演算することを特徴とする請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の車両挙動状態推定装置。 - 前記運転者が操作するステアリングホイールの回転角度であるハンドル角に基づいて、前記ステアリングホイールが中立点付近にある場合に中立点付近信号を出力する中立点付近判断手段をさらに備え、
前記挙動状態推定手段は、前記中立点付近信号が出力された場合に前記車両の挙動状態を推定することを特徴とする請求項1から請求項8までの何れか1項に記載の車両挙動状態推定装置。 - 前記中立点付近判定手段は、前記車両が安定した走行状態における、前記車両の向きと前記車両の進行方向との角度差である横滑り角が所定値以下である場合に、前記ステアリングホイールの回転角度を前記ステアリングホイールが中立点付近にあると判定することを特徴とする請求項9に記載の車両挙動状態推定装置。
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