実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に関連した参考例1を示すブロック構成図である。
図1において、第1の検出手段を構成する横滑り角測定器1は、第1のパラメータの実測値として、車両の車体またはタイヤの実横滑り角βを検出する。
規範値演算手段を構成する規範アライニングトルク演算器2は、トルク/滑り角比率(=ゲインKa)を設定するためのトルク/滑り角比率設定手段(図示せず)を含み、実横滑り角βおよびトルク/滑り角比率(ゲインKa)を用いて規範アライニングトルクToを演算する。
規範アライニングトルク演算器2内のトルク/滑り角比率設定手段は、車両の横滑り角に対するアライニングトルクの比率をトルク/滑り角比率(ゲインKa)として、車両に応じてあらかじめ設定する。
これにより、規範アライニングトルク演算器2は、実横滑り角βにゲインKaを乗算して、実横滑り角βに対する規範アライニングトルクTo(=Ka・β)を演算することができる。
第2の検出手段を構成するアライニングトルク測定器3は、第2のパラメータの実測値として、車両が走行中の路面から受ける実アライニングトルクTaを検出する。以下、実横滑り角βおよび実アライニングトルクTaを、単に、横滑り角βおよびアライニングトルクTaともいう。
アライニングトルク偏差演算器4は、実アライニングトルクTaと規範アライニングトルクToとの偏差の絶対値(第3のパラメータ)を、アライニングトルク偏差ΔT(=|To−Ta|)として演算する。
車両挙動安定性判定器5は、基準値設定手段および比較手段(図示せず)を有する。
基準値設定手段は、アライニングトルク偏差ΔTに対する比較基準値となる所定偏差量α1を車両に応じてあらかじめ設定する。
また、車両挙動安定性判定器5内の比較手段は、アライニングトルク偏差ΔTを所定偏差量α1と比較し、アライニングトルク偏差ΔTが所定偏差量α1以上を示す場合に、車両の挙動が不安定であることを判定し、判定結果を不安定状態検出信号として出力する。
一般に、実アライニングトルクTaは、車両が安定走行状態にある場合には、実横滑り角βに対してほぼ比例関係にある。しかし、車両が安定限界(不安定領域)に近づいた場合には、実アライニングトルクTaは低下して、実横滑り角βに対する比例関係を保持することができなくなる。したがって、この特性を利用して車両状態を検出することができる。
実横滑り角βを測定するための横滑り角測定器1は、縦方向および横方向の2方向の対地速度を測定可能な光学センサをホイールに取り付けることにより構成され得る。
実アライニングトルクTaを測定するためのアライニングトルク測定器3は、ステアリング軸コラムにロードセルなどを取り付けることにより構成され得る。
上述した通り、規範アライニングトルク演算器2は、規範アライニングトルクTo(=Ka・β)を演算し、アライニングトルク偏差演算器4は、アライニングトルク偏差ΔT(=|To−Ta|)を演算する。
車両挙動安定性判定器5は、アライニングトルク偏差ΔTと所定偏差量α1とを比較し、ΔT≧α1を示す場合、すなわち、以下の式(1)を満たす場合に、車両挙動が不安定であると判定する。
以下、図1とともに、図2のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例1による車両状態判定動作について説明する。
図2において、まず、アライニングトルク測定器3は、走行中の車両が路面から受ける実アライニングトルクTaを測定し、これをアライニングトルク偏差演算器4内のメモリに記憶させる(ステップS11)。
また、横滑り角測定器1は、車両の車体またはタイヤの実横滑り角βを測定し、これを規範アライニングトルク演算器2内のメモリに記憶させる(ステップS12)。
続いて、規範アライニングトルク演算器2は、横滑り角に対するアライニングトルクのゲインKaと実横滑り角βとを乗算して、規範アライニングトルクToを演算する(ステップS13)。
次に、アライニングトルク偏差演算器4は、規範アライニングトルクToから実アライニングトルクTaを減算してその絶対値をとり、アライニングトルク偏差ΔTを演算する(ステップS14)。
最後に、車両挙動安定性判定器5Aは、アライニングトルク偏差ΔTと、車両に応じて設定される所定偏差量α1とを比較し、上記式(1)(ΔT≧α1)を満たすか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15において、ΔT≧α1(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動が不安定またはその予兆であると判定し(ステップS16)、ΔT<α1(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動は安定であると判定して(ステップS17)、図2の処理ルーチンを終了する。
このように、実横滑り角βおよび実アライニングトルクTaに応じて車両挙動の不安定状態を検出することにより、タイヤのグリップ力が低下した状況下においても、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
図3は路面状態に応じた実アライニングトルクTa1、Ta2の横滑り角βに対する特性を示す説明図である。
図3において、横軸は横滑り角β、縦軸はアライニングトルクTaに対応しており、一点鎖線は規範アライニングトルクTo、実線はドライアスファルト路面に対する実アライニングトルクTa1、破線は滑り易い路面に対する実アライニングトルクTa2を示している。
図3に示すように、滑り易い路面に対する実アライニングトルクTa2の特性曲線(破線参照)は、滑りにくいドライアスファルト路面に対する実アライニングトルクTa1の特性曲線(実線参照)よりも小さい横滑り角βで低下し始めるが、さらに横滑り角βの小さい領域では、特性曲線Ta1と同様に、規範アライニングトルクToにしたがう線形性が保持されている。
したがって、横滑り角βの小さい領域においては、路面状態によらず、車両に応じて設定される規範アライニングトルクToの横滑り角βに対するゲイン(図3内の傾き)を使用することができる。
一般に、トルク/滑り角の特性として、横滑り角βが小さい場合には、アライニングトルクTaと横滑り角βとが比例関係にあるが、横滑り角βが大きくなるとアライニングトルクTaが減少するので、この特性を用いて、横滑り角βが小さい領域での直線勾配と横滑り角βとから規範値を求めて、実測値との偏差が大きくなる場合(または、横滑り角βに対するアライニングトルクTaの勾配が近似直線の勾配と大きく異なる場合)に、車両挙動不安定状態を判定することができる。
このように、実際に車両に発生している実アライニングトルクTaおよび横滑り角βを検出して、横滑り角βに対する規範アライニングトルクToを演算し、実アライニングトルクTaと規範アライニングトルクToとを比較することにより、従来装置では検出できないタイヤのスリップやロック状態における車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出することができる。
すなわち、実アライニングトルクTaおよび横滑り角βを用いて車両の挙動変化を検出し、また、トルク/滑り角比率(ゲインKa)の特性(横滑り角βの小さい領域では線形関係(アライニングトルクTaが横滑り角βに比例関係)にあり、横滑り角βの大きい領域ではアライニングトルクTaが減少する特性)を用いて、車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出することができる。
具体的には、横滑り角βが小さい領域での直線勾配(ゲインKa)と横滑り角βとから規範アライニングトルクToの値を求め、実アライニングトルクTaの値と比較して、トルク偏差ΔT(=|To−Ta|)が所定値α1以上になると車両挙動が不安定であると判定する。
なお、上記参考例1では、トルク/滑り角比率(ゲインKa)を用いて規範アライニングトルクToを算出し、規範アライニングトルクToと実アライニングトルクTaとの偏差ΔTが所定値α1以上の場合に車両不安定状態を判定したが、横滑り角βに対する実アライニングトルクTaの変化率を算出(または、測定)し、トルク/滑り角変化率が所定範囲を逸脱した場合に車両不安定状態を判定してもよい。
図4はトルク/滑り角変化率と所定範囲との比較に基づいて車両挙動安定性を判定したこの発明の参考例2を示すブロック構成図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して、詳述を省略する。
図4において、トルク/滑り角変化率測定器6は、横滑り角測定器1およびアライニングトルク測定器3と、演算器7とを備えている。
演算器7は、実横滑り角βに対する実アライニングトルクTaの変化率を、トルク/滑り角変化率dTa/dβとして演算(または、測定)する。
トルク/滑り角変化率測定器6内の演算器7により求められたトルク/滑り角変化率dTa/dβは、車両挙動安定性判定器5Aに入力され、車両挙動の安定性判定に用いられる。
車両挙動安定性判定器5Aは基準値設定手段を有し、車両挙動安定性判定器5A内の基準値設定手段は、トルク/滑り角変化率dTa/dβに対する比較基準となる所定範囲を車両に応じて設定する。
車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲から逸脱した場合に、車両の挙動が不安定であることを判定する。
一般に、実アライニングトルクTaは、車両が安定走行状態である場合には、実横滑り角βに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合には、前述(図3参照)のように低下して、実横滑り角βに対する比例関係を保持することができなくなるので、この特性を利用して不安定状態を判定することができる。
トルク/滑り角変化率測定器6内の演算器7は、たとえば、実測された横滑り角βに応じて実アライニングトルクTaを測定することにより、トルク/滑り角変化率dTa/dβを求めることができる。
車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβと、車両に応じて設定される所定範囲とを比較し、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外を示す場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
所定範囲外の判定式は、以下の式(2)で表される。
次に、図5のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例2による車両状態判定動作について説明する。
図5において、各ステップS12、S16およびS17は、前述(図2参照)と同様の処理を示している。
まず、トルク/滑り角変化率測定器6内の演算器7は、実横滑り角βを測定してメモリに記憶し(ステップS12)、実横滑り角βに応じた実アライニングトルクTaをトルク/滑り角変化率dTa/dβとして測定し、これをメモリに記憶する(ステップS24)。
車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率測定器6により測定されたトルク/滑り角変化率dTa/dβを読み込み、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲(上限値α2U〜下限値α2L)から逸脱しているか否かを判定する(ステップS25)。
ステップS25において、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動が不安定状態(または、不安定の予兆状態)であると判定し(ステップS16)、所定範囲内(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動が安定状態であると判定し(ステップS17)、図5の処理ルーチンを終了する。
このように、実際に車両に発生している実アライニングトルクTaに応じて、車両挙動の不安定状態を検出することにより、タイヤのグリップ力が低下した場合であっても、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
また、前述(図3参照)のように、滑り易い路面での実アライニングトルクTaは、比較的小さい実横滑り角βで低下するが、さらに小さい実横滑り角βにおいては規範アライニングトルクToの勾配にしたがう線形性が保持されるので、ドライアスファルト(滑りにくい)路面の場合と同様に、トルク/滑り角変化率(ゲイン)の範囲を安定性判定に使用することができる。
なお、上記参考例2では、トルク/滑り角変化率dTa/dβを求めるためにトルク/滑り角変化率測定器6を用いたが、実横滑り角βおよび実アライニングトルクTaの時間変化率を測定し、各時間変化率を除算処理してトルク/滑り角変化率dTa/dβを算出してもよい。
図6は実横滑り角βおよび実アライニングトルクTaの各時間変化率を用いてトルク/滑り角変化率dTa/dβを求めたこの発明の参考例3を示すブロック構成図である。
図6において、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、実横滑り角βの時間変化率を滑り角/時間変化率dβ/dtとして求める滑り角/時間変化率測定器8と、実アライニングトルクTaの時間変化率をトルク/時間変化率dTa/dtとして求めるトルク/時間変化率測定器9と、トルク/時間変化率dTa/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算してトルク/滑り角変化率dTa/dβを演算するトルク/滑り角変化率演算器10とにより構成されている。
以下、図6に示したこの発明の参考例3による動作について説明する。
前述のように、車両挙動安定性判定器5Aは、実アライニングトルクTaが車両安定限界に近づいた場合には実横滑り角βに対する比例関係を保持できなくなるという特性を利用して、車両状態を判定する。
滑り角/時間変化率測定器8は、たとえば縦横2方向の対地速度を所定時間間隔で測定することにより、実横滑り角βの時間変化率dβ/dtを測定する。
また、トルク/時間変化率測定器9は、実アライニングトルクTaを所定時間間隔で測定することにより、トルク/時間変化率Ta/dtを測定する。
トルク/時間変化率測定器9は、ステアリング軸コラムにロードセルなどを取り付けて、アライニングトルクを所定時間間隔で測定することにより実現され得る。
トルク/滑り角変化率演算器10は、トルク/時間変化率dTa/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、実アライニングトルクTaの実横滑り角βに対する比率、すなわちトルク/滑り角変化率dTa/dβを演算する。このときの演算式は、以下の式(3)のように表される。
車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外(前述の式(2)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態またはその予兆状態であると判定し、不安定状態検出信号を出力する。
次に、図7のフローチャートを参照しながら、図6に示したこの発明の参考例3による所領状態判定動作について説明する。
図7において、ステップS16およびS17は、前述(図2、図5参照)と同様の処理を示している。
まず、実横滑り角βの時間変化率(滑り角/時間変化率)dβ/dtを測定してメモリに記憶し(ステップS31)、実アライニングトルクTaの時間変化率(トルク/時間変化率)dTa/dtを測定してメモリに記憶する(ステップS32)。
続いて、トルク/時間変化率dTa/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、実横滑り角βに対するアライニングトルクTaの変化率(トルク/滑り角変化率dTa/dβ)を演算する(ステップS33)。
以下、車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲(上限値α2U〜下限値α2L)と比較し、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外を示す場合には車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、所定範囲内を示す場合には車両挙動安定状態であると判定する(ステップS17)。
このように、実アライニングトルクTaおよび実横滑り角βの各時間変化率からトルク/滑り角変化率dTa/dβを算出することにより、前述と同様の作用効果を奏することができる。
この場合、トルク/滑り角変化率dTa/dβを直接測定(または、演算)することが不可能な場合であっても、実アライニングトルクTaおよび実横滑り角βの各時間変化率からトルク/滑り角変化率dTa/dβを演算することができる。
なお、上記参考例3では、トルク/滑り角変化率dTa/dβを算出するために、実横滑り角βおよび実アライニングトルクTaの時間変化率を用いたが、車両の移動距離に対する実横滑り角βおよび実アライニングトルクTaの変化率を用いてもよい。
図8は車両の移動距離に対する実横滑り角βおよび実アライニングトルクTaの変化率を用いたこの発明の参考例4を示すブロック構成図である。
図8において、車両挙動安定性判定器5Aは前述(図6参照)と同様のものであり、トルク/滑り角変化率演算器10Aは、前述のトルク/滑り角変化率演算器10に対応している。
この場合、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、車両の移動距離Lに対する実横滑り角βの変化率(滑り角/距離変化率)dβ/dLを求める滑り角/距離変化率測定器11と、移動距離Lに対する実アライニングトルクTaの変化率(トルク/距離変化率)dTa/dLを求めるトルク/距離変化率測定器12と、トルク/距離変化率dTa/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算してトルク/滑り角変化率dTa/dβを演算するトルク/滑り角変化率演算器10Aとにより構成されている。
滑り角/距離変化率測定器11は、車両の移動距離Lを求める移動距離測定器(または、演算器)を有する。
トルク/距離変化率測定器12は、ステアリング軸コラムにロードセルなどを取り付けてアライニングトルクを所定移動距離毎に測定することにより実現され得る。
以下、図8に示したこの発明の参考例4による動作について説明する。
滑り角/距離変化率測定器11は、たとえば縦横2方向の対地速度を所定移動距離毎に測定して横滑り角/距離変化率dβ/dLを求め、トルク/距離変化率測定器12は、実アライニングトルクTaを所定移動距離毎に測定してトルク/距離変化率dTa/dLを求める。
トルク/滑り角変化率演算器10Aは、トルク/距離変化率dTa/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算する。このときの演算式は、以下の式(4)のように表される。
以下、車両挙動安定性判定器5Aは、前述と同様に、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲と比較し、所定範囲外を示す場合に、車両挙動不安定状態であることを判定する。
次に、図9のフローチャートを参照しながら、図8に示したこの発明の参考例4による車両状態判定動作について説明する。
図9において、ステップS34、S16およびS17は、前述(図7参照)と同様の処理を示している。
まず、滑り角/距離変化率dβ/dLを測定してメモリに記憶し(ステップS41)、トルク/距離変化率dTa/dLを測定してメモリに記憶する(ステップS42)。
続いて、トルク/距離変化率dTa/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算する(ステップS43)。
以下、車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲と比較して(ステップS34)、車両挙動不安定状態(ステップS16)または車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
この場合も、前述と同等の作用効果を奏するとともに、トルク/滑り角変化率dTa/dβが直接測定(または、演算)することができない場合でも、トルク/滑り角変化率dTa/dβを求めることができる。
なお、上記参考例3では、滑り角/時間変化率dβ/dtを求めるために、滑り角/時間変化率測定器8(図6参照)を用いたが、各種センサ出力に基づいて滑り角/時間変化率dβ/dtを演算してもよい。
図10は滑り角/時間変化率演算器8Aを用いたこの発明の参考例5を示すブロック構成図である。
図10において、前述(図6参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、各種センサとして、車両の実横方向加速度Gyを検出する横方向加速度測定器13と、車両のヨー方向加速度(実ヨーレート)γを検出するヨーレート測定器14と、車両の進行方向の走行速度を実車速vとして検出する車速測定器15とを備えている。
滑り角/時間変化率演算器8Aは、実横方向加速度Gy、実ヨーレートγ(ヨー方向速度の時間微分値)および実車速vを用いて、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算する。以下、実車速vを、単に車速ともいう。
以下、図10に示したこの発明の参考例5による動作について説明する。
横方向加速度測定器13は、たとえば、車両の横方向に対して取り付けられた加速度計からなり、実横方向加速度Gyを検出してメモリに記憶する。
ヨーレート測定器14は、実ヨーレートγを検出してメモリに記憶し、車速測定器15は、実車速vを検出してメモリに記憶する。
滑り角/時間変化率演算器8Aは、実横方向加速度Gy、実ヨーレートγおよび実車速vを用い、以下の式(5)のように、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算する。
また、トルク/時間変化率測定器9は、トルク/時間変化率dTa/dtを測定する。
続いて、トルク/滑り角変化率演算器10は、前述の式(3)のように、トルク/時間変化率dTa/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算する。
以下、車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲と比較して、車両挙動不安定状態または車両挙動安定状態を判定する。
次に、図11のフローチャートを参照しながら、図10に示したこの発明の参考例5による車両状態判定動作について説明する。
図11において、ステップS32〜S34、S16およびS17は、前述(図7参照)と同様の処理を示している。
まず、車両の実横方向加速度Gyを測定してメモリに記憶し(ステップS51)、実ヨーレートγを測定してメモリに記憶し(ステップS52)、実車速vを測定してメモリに記憶する(ステップS53)。
続いて、実横方向加速度Gy、実ヨーレートγおよび実車速vに基づく上記式(5)を用いて、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算し、これをメモリに記憶する(ステップS54)。また、トルク/時間変化率dTa/dtを測定してメモリに記憶する(ステップS32)。
次に、トルク/時間変化率dTa/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算する(ステップS33)。
以下、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲と比較して(ステップS34)、車両挙動不安定状態(ステップS16)または車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを測定することにより、滑り角/時間変化率dβ/dtを直接測定できない場合でも、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算することができる。
したがって、トルク/滑り角変化率dTa/dβの演算が可能となり、前述と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記参考例3では、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、トルク/滑り角変化率演算器10(図6参照)による除算処理を禁止してもよい。
図12は滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合にトルク/滑り角変化率演算器10による除算処理を禁止したこの発明の参考例6を示すブロック構成図である。
図12において、前述(図6参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、滑り角/時間変化率測定器8とトルク/滑り角変化率演算器10との間には、滑り角/時間変化率比較器17が挿入され、滑り角/時間変化率比較器17の出力側には、トルク/時間変化率比較判定器18が設けられている。
滑り角/時間変化率比較器17は、通常は滑り角/時間変化率dβ/dtをトルク/滑り角変化率演算器10に入力し、トルク/滑り角変化率演算器10の演算(除算)処理を有効にする。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、滑り角/時間変化率比較器17は、トルク/滑り角変化率演算器10による除算処理を禁止して、トルク/滑り角変化率演算器10を無効化するとともに、上記比較結果(dβ/dt<下限許容値)をトルク/時間変化率比較判定器18に入力して、トルク/時間変化率比較判定器18を有効化する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtに対する下限許容値を車両に応じて設定する下限値設定手段と、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合にトルク/滑り角変化率演算器10による除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、トルク/時間変化率dTa/dtと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。トルク/時間変化率比較判定器18は、車両挙動安定性判定器5Aの機能の一部に含まれてもよい。
滑り角/時間変化率比較器17により、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、トルク/滑り角変化率演算器10および車両挙動安定性判定器5Aに代えて、トルク/時間変化率比較判定器18が有効化される。このとき、トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両の滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満であっても、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値以上であっても、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
次に、図12に示したこの発明の参考例6による動作について説明する。
まず、滑り角/時間変化率測定器8は、滑り角/時間変化率dβ/dtを測定し、トルク/時間変化率測定器9は、トルク/時間変化率dTa/dtを測定する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtを下限許容値と比較し、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値以上を示す場合には、滑り角/時間変化率dβ/dtをトルク/滑り角変化率演算器10に入力して、通常の除算処理(前述の式(3)参照)を実行させる。
以下、車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲と比較し、所定範囲外(式(2)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態であると判定する。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値未満を示す場合には、滑り角/時間変化率比較器17は、トルク/滑り角変化率演算器10に対する滑り角/時間変化率dβ/dtの入力(式(3)の除算処理)を禁止するとともに、その比較結果をトルク/時間変化率比較判定器18に出力する。
これにより、車両挙動安定性判定器5Aに代わって、トルク/時間変化率比較判定器18が有効化され、トルク/時間変化率比較判定器18による比較判定処結果に基づいて、車両状態が検出される。
トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtを所定変化率と比較し、トルク/時間変化率dTa/dtが所定変化率以上の場合には車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図13のフローチャートを参照しながら、図12に示したこの発明の参考例6による車両状態判定動作について説明する。
図13において、ステップS34、S16およびS17は、前述と同様の処理である。
まず、滑り角/時間変化率dβ/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS61)、トルク/時間変化率dTa/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS62)。
次に、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS63)、|dβ/dt|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、トルク/時間変化率比較判定器18を有効化して、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS64)。
ステップS64において、|dTa/dt|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dTa/dt|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図13の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS63において、|dβ/dt|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、トルク/滑り角変化率演算器10を有効化して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算し(ステップS65)、車両挙動安定性判定器5Aにより、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外である否かを判定する(ステップS34)。
以下、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値未満の場合には、トルク/滑り角変化率演算器10による除算処理を禁止して、トルク/時間変化率dTa/dtのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合であっても、トルク/滑り角変化率演算器10内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態またはその予兆状態を検出することができる。
なお、上記参考例4では、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、トルク/滑り角変化率演算器10A(図8参照)による除算処理を禁止してもよい。
図14は滑り角/距離変化率dβ/dLが小さい場合にトルク/滑り角変化率演算器10Aによる除算処理を禁止したこの発明の参考例7を示すブロック構成図である。
図14において、前述(図8参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、滑り角/距離変化率測定器11とトルク/滑り角変化率演算器10Aとの間には、滑り角/距離変化率比較器19が挿入され、滑り角/距離変化率比較器19の出力側には、トルク/距離変化率比較判定器21が設けられている。
滑り角/距離変化率比較器19は、通常は滑り角/距離変化率dβ/dLをトルク/滑り角変化率演算器10Aに入力し、トルク/滑り角変化率演算器10Aの演算(除算)処理を有効にする。
一方、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、滑り角/距離変化率比較器19は、トルク/滑り角変化率演算器10Aによる除算処理を禁止して、トルク/滑り角変化率演算器10Aを無効化するとともに、上記比較結果(dβ/dL<下限許容値)をトルク/距離変化率比較判定器21に入力して、トルク/距離変化率比較判定器21を有効化する。
滑り角/距離変化率比較器19は、滑り角/距離変化率dβ/dLに対する下限許容値を車両に応じて設定する下限値設定手段と、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合にトルク/滑り角変化率演算器10Aによる除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
トルク/距離変化率比較判定器21は、トルク/距離変化率dTa/dLに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、トルク/距離変化率dTa/dLと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。トルク/距離変化率比較判定器21は、車両挙動安定性判定器5Aの機能の一部に含まれてもよい。
滑り角/距離変化率比較器19により、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、トルク/滑り角変化率演算器10Aおよび車両挙動安定性判定器5Aに代えて、トルク/距離変化率比較判定器21が有効化される。このとき、トルク/距離変化率比較判定器21は、トルク/距離変化率dTa/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両の滑り角/距離変化率dβ/dLの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、トルク/距離変化率dTa/dLの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、滑り角/距離変化率dβ/dLの絶対値が下限許容値未満であっても、トルク/距離変化率dTa/dLの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値以上であっても、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
図14において、滑り角/距離変化率測定器11は、滑り角/距離変化率dβ/dLを測定し、トルク/距離変化率測定器12は、トルク/距離変化率dTa/dLを測定する。
滑り角/距離変化率比較器19は、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値以上の場合には、その比較結果をトルク/滑り角変化率演算器10Aに出力し、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値未満の場合には、その比較結果をトルク/距離変化率比較判定器21に出力する。
トルク/滑り角変化率演算器10Aは、前述の式(4)のように、トルク/距離変化率dTa/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算する。
一方、トルク/距離変化率比較判定器21は、トルク/距離変化率dTa/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図15のフローチャートを参照しながら、図14に示したこの発明の参考例7による車両状態判定動作について説明する。
図15において、ステップS34、S16およびS17は、前述と同様の処理である。
まず、滑り角/距離変化率dβ/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS71)、トルク/距離変化率dTa/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS72)。
次に、滑り角/距離変化率dβ/dLの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS73)、|dβ/dL|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、トルク/距離変化率比較判定器21を有効化して、トルク/距離変化率dTa/dLの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS74)。
ステップS74において、|dTa/dL|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dTa/dL|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図15の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS73において、|dβ/dL|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、トルク/滑り角変化率演算器10Aを有効化して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算し(ステップS75)、車両挙動安定性判定器5Aにより、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外である否かを判定する(ステップS34)。
以下、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値未満の場合には、トルク/滑り角変化率演算器10Aによる除算処理を禁止して、トルク/距離変化率dTa/dLのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、滑り角/距離変化率dβ/dLが小さい場合であっても、トルク/滑り角変化率演算器10A内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態またはその予兆状態を検出することができる。
なお、上記参考例5では、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、上記参考例6と同様に、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、トルク/滑り角変化率演算器10(図10参照)による除算処理を禁止してもよい。
図16は滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合にトルク/滑り角変化率演算器10による除算処理を禁止したこの発明の参考例8を示すブロック構成図である。
図16において、前述(図10、図12参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、滑り角/時間変化率演算器8Aとトルク/滑り角変化率演算器10との間には、滑り角/時間変化率比較器17が挿入され、滑り角/時間変化率比較器17の出力側には、トルク/時間変化率比較判定器18が設けられている。
滑り角/時間変化率比較器17は、通常は滑り角/時間変化率dβ/dtをトルク/滑り角変化率演算器10に入力し、トルク/滑り角変化率演算器10の演算(除算)処理を有効にする。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、滑り角/時間変化率比較器17は、トルク/滑り角変化率演算器10による除算処理を禁止して、トルク/滑り角変化率演算器10を無効化するとともに、上記比較結果(dβ/dt<下限許容値)をトルク/時間変化率比較判定器18に入力して、トルク/時間変化率比較判定器18を有効化する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtに対する下限許容値を車両に応じて設定する下限値設定手段と、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合にトルク/滑り角変化率演算器10による除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、トルク/時間変化率dTa/dtと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。トルク/時間変化率比較判定器18は、前述と同様に、車両挙動安定性判定器5Aの機能の一部に含まれてもよい。
滑り角/時間変化率比較器17により、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、トルク/滑り角変化率演算器10および車両挙動安定性判定器5Aに代えて、トルク/時間変化率比較判定器18が有効化される。このとき、トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両の横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vから演算された滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満の場合に、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値も所定変化率未満であれば、車両挙動は安定状態であると見なすことができる。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満であっても、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値が所定変化率以上の場合には、車両挙動が不安定状態であることを検出することができる。
また、滑り角/時間変化率dTa/dtが所定変化率以上であっても、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲内であれば、車両挙動は安定状態であると見なすことができる。しかし、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定範囲外である場合には、車両挙動は不安定状態であると検出される。
すなわち、トルク(または加速度)/角度(実横滑り角β)の特性は、角度が比較的小さい場合には、トルクと角度とが比例関係にあるが、角度が大きくなるとトルクは減少するので、この特性(トルク/滑り角)を用いて、角度が小さい領域での直線勾配と角度とから規範値を求め、実測値との偏差が大きくなる場合(または、角度に対するトルクの勾配が近似直線の勾配と大きく異なる場合)に車両挙動不安定状態を判定することができる。
図16において、横方向加速度測定器13は、車両の横方向加速度Gyを検出してメモリに記憶し、ヨーレート測定器14は、ヨー方向の加速度γを検出してメモリに記憶し、車速測定器15は、車速vを検出してメモリに記憶する。
滑り角/時間変化率演算器8Aは、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを用いて、前述の式(5)により、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算する。
また、トルク/時間変化率測定器9は、トルク/時間変化率dTa/dtを測定する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtを下限許容値と比較して、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値未満の場合には、比較結果の出力先をトルク/時間変化率比較判定器18とし、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値以上の場合には、比較結果の出力先をトルク/滑り角変化率演算器10とする。
トルク/滑り角変化率演算器10は、前述の式(3)のように、トルク/時間変化率dTa/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、トルク/滑り角変化率dTa/dβを演算する。
一方、トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtを所定変化率と比較して、トルク/滑り角変化率dTa/dβが所定変化率以上の場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲と比較し、所定範囲外(式(2)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図17のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例8による車両状態判定動作について説明する。
図17において、ステップS62〜S65、S34、S16およびS17は、前述(図13参照)と同様の処理である。
まず、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを測定して、それぞれメモリに記憶し(ステップS80)、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを用いて滑り角/時間変化率dβ/dtを演算し、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS81)。
また、トルク/時間変化率dTa/dtを測定してメモリに記憶する(ステップS62)。
以下、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値を下限許容値と比較し、|dβ/dt|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されればステップS64に進み、|dβ/dt|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されればステップS65に進む。
トルク/時間変化率比較判定器18は、ステップS64の判定処理において、|dTa/dt|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば車両挙動不安定状態と判定し(ステップS16)、|dTa/dt|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば車両挙動安定状態と判定する(ステップS17)。
一方、トルク/滑り角変化率演算器10は、ステップS65において、トルク/滑り角変化率dTa/dβ(=(dTa/dt)/(dβ/dt))を演算し、車両挙動安定性判定器5Aは、トルク/滑り角変化率dTa/dβを所定範囲と比較して(ステップS34)、所定範囲外(すなわち、YES)と判定されれば車両挙動不安定状態と判定し(ステップS16)、所定範囲内(すなわち、NO)と判定されれば車両挙動安定状態と判定する(ステップS17)。
このように、滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合には、実アライニングトルクTaに応じたトルク/時間変化率dTa/dtのみを用いて車両挙動不安定状態を検出することにより、タイヤのグリップ力が低下した場合でも、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
また、前述(図3参照)のように、滑り易い路面でのアライニングトルクは、比較的小さい横滑り角で低下するが、さらに小さい横滑り角の領域では規範アライニングトルクToの勾配にしたがう線形性が保持されるので、滑りにくいドライアスファルト路面の場合と同様の所定範囲(比較基準)を用いて、トルク/滑り角変化率dTa/dβから車両挙動安定性を判定することができる。
さらに、滑り角/時間変化率dβ/dtが測定不可能な場合でも、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを測定することにより、滑り角/時間変化率dβ/dtの演算が可能となり、前述と同等の作用効果を奏する。
また、トルク/滑り角変化率演算器10内の除算処理によるオーバーフローを防止することができ、滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合でも、車両の不安定状態を検出することができる。
なお、上記参考例1〜8では、第1のパラメータの実測値として実横滑り角βを用いたが、車両運転者による実ハンドル操作角θを用いてもよい。
図18は実横滑り角βの代わりに実ハンドル操作角θを用いたこの発明の参考例9を示すブロック構成図である。
図18において、前述(図1参照)と同様のものについては、同一符号が付されており、前述と対応するものについては、符号の後に「B」または「’」が付されている。
この場合、前述の横滑り角測定器1に代えて、ハンドル操作角θを検出するハンドル操作角測定器20が設けられている。また、規範アライニングトルク演算器2Bおよび車両挙動安定性判定器5Bに関連して、車速測定器15が設けられている。
一般に、車両が受けるアライニングトルクは、車両が安定走行状態にある場合は、ハンドル操作角θに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合には、前述と同様に低下し、ハンドル操作角θに対する比例関係を保持できなくなる。したがって、この特性を利用して、ハンドル操作角θから車両状態を検出することができる。
図18において、ハンドル操作角測定器20は、車両のハンドルの中立点からの操作量をハンドル操作角θとして測定する。
ハンドル操作角測定器20は、ステアリング軸コラムに光学センサなどを取り付けることにより実現され得る。
アライニングトルク測定器3は実アライニングトルクTaを測定し、車速測定器15は車速vを検出し、それぞれの検出値をメモリに記憶する。
規範アライニングトルク演算器2Bは、ハンドル操作角θに対するゲインKa’を用いて、ハンドル操作角θおよび車速vに応じて設定される規範アライニングトルクTo’(=Ka’・θ)を演算する。
アライニングトルク偏差演算器4Bは、規範アライニングトルクTo’(=Ka’・θ)と実アライニングトルクTaとの偏差の絶対値をアライニングトルク偏差ΔT’として演算する。
車両挙動安定性判定器5Bは、比較基準となる所定偏差量α2を車両および車速vに応じて設定する所定偏差量設定手段を有し、アライニングトルク偏差ΔT’を所定偏差量α2と比較して、アライニングトルク偏差ΔT’が所定偏差量α2以上を示す場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
このときの、判定式は、以下の式(6)で表される。
以下、図18とともに、図19のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例9による車両状態判定動作について説明する。
図19において、前述(図2参照)と対応する処理については、同一符号の後に「B」が付されている。
図19において、まず、アライニングトルク測定器3は、実アライニングトルクTaを測定してアライニングトルク偏差演算器4B内のメモリに記憶させる(ステップS11)。
また、ハンドル操作角測定器20はハンドル操作角θを測定し、車速測定器15は車速vを測定して、それぞれの検出値を規範アライニングトルク演算器2B内のメモリに記憶させる(ステップS12B)。このとき、車速vは車両挙動安定性判定器5B内のメモリにも記憶される。
続いて、規範アライニングトルク演算器2Bは、ハンドル操作角に対するアライニングトルクのゲインKa’と実ハンドル操作角θとを乗算して、規範アライニングトルクTo’を演算する(ステップS13B)。
次に、アライニングトルク偏差演算器4Bは、規範アライニングトルクTo’から実アライニングトルクTaを減算してその絶対値をとり、アライニングトルク偏差ΔT’を演算する(ステップS14B)。
最後に、車両挙動安定性判定器5Bは、アライニングトルク偏差ΔT’と、車両および車速vに応じて設定される所定偏差量α2とを比較し、上記式(6)(ΔT’≧α2)を満たすか否かを判定する(ステップS15B)。
ステップS15Bにおいて、ΔT’≧α2(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動が不安定またはその予兆であると判定し(ステップS16)、ΔT’<α2(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動は安定であると判定して(ステップS17)、図19の処理ルーチンを終了する。
このように、ハンドル操作角θ、車速vおよび実アライニングトルクTaに応じて車両挙動の不安定状態を検出することにより、前述と同様に、タイヤのグリップ力が低下した状況下においても、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
図20は路面状態に応じた実アライニングトルクTa1、Ta2のハンドル操作角θに対する特性を示す説明図であり、前述の図3に対応している。
図20において、横軸はハンドル操作角θ、縦軸はアライニングトルクTaに対応しており、一点鎖線は規範アライニングトルクTo’、実線はドライアスファルト路面に対する実アライニングトルクTa1、破線は滑り易い路面に対する実アライニングトルクTa2を示している。
図20に示すように、滑り易い路面に対する実アライニングトルクTa2の特性曲線(破線参照)は、滑りにくいドライアスファルト路面に対する実アライニングトルクTa1の特性曲線(実線参照)よりも小さいハンドル操作角θで低下し始めるが、さらにハンドル操作角θの小さい領域では、特性曲線Ta1と同様に、規範アライニングトルクTo’にしたがう線形性が保持されている。
したがって、ハンドル操作角θの小さい領域においては、路面状態によらず、車両に応じて設定される規範アライニングトルクTo’のハンドル操作角θに対するゲイン(図20内の傾き)を使用することができる。
このように、実際に車両に発生している実アライニングトルクTaと、車速vおよびハンドル操作角θとを検出して、ハンドル操作角θに対する規範アライニングトルクTo’を演算し、実アライニングトルクTaと規範アライニングトルクTo’とを比較することにより、従来装置では検出できないタイヤのスリップやロック状態における車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出することができる。
また、車両の横滑り角βが測定不可能な場合であっても、車速vおよびハンドル操作角θを用いて、車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出することができる。
なお、上記参考例9では、規範アライニングトルクTo’と実アライニングトルクTaとの偏差ΔT’に基づいて車両不安定状態を判定したが、ハンドル操作角θに対する実アライニングトルクTaの変化率を算出(または、測定)し、トルク/ハンドル角変化率が所定範囲を逸脱した場合に車両不安定状態を判定してもよい。
図21はトルク/ハンドル角変化率と所定範囲との比較に基づいて車両挙動安定性を判定したこの発明の参考例10を示すブロック構成図であり、前述(図4、図18参照)と同様のものについては、同一符号を付して、または符号の後に「C」を付して、詳述を省略する。
図21において、トルク/ハンドル角変化率測定器22は、ハンドル操作角測定器20およびアライニングトルク測定器3と、演算器23とを備えている。
演算器23は、実ハンドル操作角θに対する実アライニングトルクTaの変化率を、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθとして演算(または、測定)する。
トルク/ハンドル角変化率測定器22内の演算器23により求められたトルク/ハンドル角変化率dTa/dθは、車両挙動安定性判定器5Cに入力され、車両挙動の安定性判定に用いられる。
また、車速測定器15から出力される車速vも車両挙動安定性判定器5Cに入力され、車両挙動判定用の基準値(所定範囲)の設定に用いられる。
車両挙動安定性判定器5C内の所定範囲設定手段は、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθに対する比較基準となる所定範囲を、車両および車速vに応じて設定する。
車両挙動安定性判定器5Cは、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲から逸脱した場合に、車両の挙動が不安定であることを判定する。
一般に、実アライニングトルクTaは、車両が安定走行状態である場合には、実ハンドル操作角θに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合には、前述(図20参照)のように低下して、ハンドル操作角θに対する比例関係を保持することができなくなるので、この特性を利用して不安定状態を判定することができる。
トルク/ハンドル角変化率測定器22内の演算器23は、たとえば、実測されたハンドル操作角θに応じて実アライニングトルクTaを測定することにより、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを求めることができる。
車両挙動安定性判定器5Cは、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを所定範囲と比較し、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外を示す場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
このときの所定範囲外の判定式は、以下の式(7)で表される。
次に、図22のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例10による車両状態判定動作について説明する。
図22において、前述(図5参照)と対応する処理については、同一符号の後に「C」が付されている。
まず、トルク/ハンドル角変化率測定器22内の演算器23は、実ハンドル操作角θの測定値をメモリに記憶し(ステップS12C)、実ハンドル操作角θに応じた実アライニングトルクTaをトルク/ハンドル角変化率dTa/dθとして測定し、これをメモリに記憶する(ステップS24C)。
車両挙動安定性判定器5Cは、トルク/ハンドル角変化率測定器22により測定されたトルク/ハンドル角変化率dTa/dθを読み込み、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲(上限値α2U’〜下限値α2L’)から逸脱しているか否かを判定する(ステップS25C)。
ステップS25Cにおいて、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動が不安定状態(または、不安定の予兆状態)であると判定し(ステップS16)、所定範囲内(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動が安定状態であると判定し(ステップS17)、図22の処理ルーチンを終了する。
このように、実際に車両に発生している実ハンドル操作角θおよび実アライニングトルクTaに応じて、車両挙動の不安定状態を検出することにより、タイヤのグリップ力が低下した場合でも、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
また、前述(図20参照)のように、滑り易い路面での実アライニングトルクTaは、比較的小さいハンドル操作角θで低下するが、さらに小さいハンドル操作角θにおいては規範アライニングトルクToの勾配にしたがう線形性が保持されるので、ドライアスファルト(滑りにくい)路面の場合と同様に、トルク/ハンドル角変化率(ゲイン)の範囲を安定性判定に使用することができる。
なお、上記参考例10では、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを求めるためにトルク/ハンドル角変化率測定器22を用いたが、実ハンドル操作角θおよび実アライニングトルクTaの時間変化率を測定し、各時間変化率を除算処理してトルク/ハンドル角変化率dTa/dθを算出してもよい。
図23は実ハンドル操作角θおよび実アライニングトルクTaの各時間変化率を用いてトルク/ハンドル角変化率dTa/dθを求めたこの発明の参考例11を示すブロック構成図である。
図23において、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、実ハンドル操作角θの時間変化率をハンドル角/時間変化率dθ/dtとして求めるハンドル角/時間変化率測定器24と、実アライニングトルクTaの時間変化率をトルク/時間変化率dTa/dtとして求めるトルク/時間変化率測定器9と、トルク/時間変化率dTa/dtをハンドル角/時間変化率dθ/dtで除算してトルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算するトルク/ハンドル角変化率演算器25とにより構成されている。
また、車両挙動安定性判定器5Cには、前述と同様に、実測された車速vが入力されている。
以下、図23に示したこの発明の参考例11による動作について説明する。
前述のように、車両挙動安定性判定器5Cは、実アライニングトルクTaが車両安定限界に近づいた場合には実ハンドル操作角θに対する比例関係を保持できなくなるという特性を利用して、車両状態を判定する。
ハンドル角/時間変化率測定器24は、車両のハンドル操作角θの時間変化率dθ/dt(ハンドル操作角速度)を測定する。
ハンドル角/時間変化率測定器24は、ステアリング軸コラムに光学センサなどを取り付けることにより実現され得る。
また、トルク/時間変化率測定器9は、実アライニングトルクTaを所定時間間隔で測定してトルク/時間変化率Ta/dtを測定する。
トルク/ハンドル角変化率演算器25は、トルク/時間変化率dTa/dtをハンドル角/時間変化率dθ/dtで除算して、実アライニングトルクTaの実ハンドル操作角θに対する比率をトルク/ハンドル角変化率dTa/dθとして演算する。このときの演算式は、以下の式(8)のように表される。
車両挙動安定性判定器5Cは、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外(前述の式(7)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態またはその予兆状態であると判定し、不安定状態検出信号を出力する。
次に、図24のフローチャートを参照しながら、図23に示したこの発明の参考例11による車両状態判定動作について説明する。
図24において、前述(図7参照)と対応する処理については、同一符号の後に「D」が付されている。
まず、車速測定器15により車速vを測定してメモリに記憶する(ステップS90)。また、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを測定してメモリに記憶し(ステップS31D)、トルク/時間変化率dTa/dtを測定してメモリに記憶する(ステップS32D)。
続いて、トルク/時間変化率dTa/dtをハンドル角/時間変化率dθ/dtで除算して、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算する(ステップS33D)。
以下、車両挙動安定性判定器5Cは、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲(上限値α2U’〜下限値α2L’)外を示す場合に、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、所定範囲内を示す場合には車両挙動安定状態であると判定する(ステップS17)。
このように、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを用いて、前述と同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを直接測定(または、演算)することが不可能な場合であっても、実アライニングトルクTaおよび実ハンドル操作角θの各時間変化率からトルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算することができ、前述と同等の作用効果を奏することができる。
なお、上記参考例11では、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを算出するために、実ハンドル操作角θおよび実アライニングトルクTaの時間変化率を用いたが、車両の移動距離に対する実ハンドル操作角θおよび実アライニングトルクTaの変化率を用いてもよい。
図25は車両の移動距離に対する実ハンドル操作角θおよび実アライニングトルクTaの変化率を用いたこの発明の参考例12を示すブロック構成図である。
図25において、トルク/距離変化率演算器12および車両挙動安定性判定器5Cは前述(図8、図23参照)と同様のものであり、トルク/ハンドル角変化率演算器25Aは、前述のトルク/ハンドル角変化率演算器25に対応している。
この場合、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、車両の移動距離Lに対する実ハンドル操作角θの変化率(ハンドル角/距離変化率)dθ/dLを求めるハンドル角/距離変化率測定器26と、移動距離Lに対する実アライニングトルクTaの変化率(トルク/距離変化率)dTa/dLを求めるトルク/距離変化率測定器12と、トルク/距離変化率dTa/dLをハンドル角/距離変化率dθ/dLで除算してトルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算するトルク/ハンドル角変化率演算器25Aとにより構成されている。
ハンドル角/距離変化率測定器26は、車両の移動距離Lを求める移動距離測定器(または、演算器)を有する。
ハンドル角/距離変化率測定器26は、ステアリング軸コラムに光学センサなどを取り付けて測定することにより実現され得る。
以下、図25に示したこの発明の参考例12による動作について説明する。
ハンドル角/距離変化率測定器26は、たとえば、縦横2方向の対地速度を所定移動距離毎に測定して横ハンドル角/距離変化率dθ/dLを求め、トルク/距離変化率測定器12は、実アライニングトルクTaを所定移動距離毎に測定してトルク/距離変化率dTa/dLを求める。
トルク/ハンドル角変化率演算器25Aは、トルク/距離変化率dTa/dLをハンドル角/距離変化率dθ/dLで除算して、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算する。このときの演算式は、以下の式(9)のように表される。
以下、車両挙動安定性判定器5Cは、前述と同様に、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを所定範囲と比較し、所定範囲外を示す場合に、車両挙動不安定状態であることを判定する。
次に、図26のフローチャートを参照しながら、図25に示したこの発明の参考例12による車両状態判定動作について説明する。
図26において、ステップS90およびS34Dは前述(図24参照)と同様の処理であり、ステップS41E、S42およびS43Eは、図9内のステップS41〜S43に対応している。
まず、車速v、ハンドル角/距離変化率dθ/dLおよびトルク/距離変化率dTa/dLを測定して、それぞれメモリに記憶する(ステップS90、S41E、S42)。
続いて、トルク/距離変化率dTa/dLをハンドル角/距離変化率dθ/dLで除算して、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算する(ステップS43E)。
以下、車両挙動安定性判定器5Cは、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを所定範囲(上限値α2U’〜下限値α2L’)と比較して(ステップS34D)、車両挙動不安定状態(ステップS16)または車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
この場合も、前述と同等の作用効果を奏するとともに、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが直接測定(または、演算)することができない場合でも、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを除算により求めて、車速vに応じた所定範囲との比較により安定性を判定することができる。
なお、上記参考例11では、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、トルク/ハンドル角変化率演算器25(図23参照)による除算処理を禁止してもよい。
図27はハンドル角/時間変化率dθ/dtが小さい場合にトルク/ハンドル角変化率演算器25による除算処理を禁止したこの発明の参考例13を示すブロック構成図である。
図27において、前述(図12、図23参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、ハンドル角/時間変化率測定器24とトルク/ハンドル角変化率演算器25との間には、ハンドル角/時間変化率比較器27が挿入され、ハンドル角/時間変化率比較器27の出力側には、トルク/時間変化率比較判定器18が設けられている。
ハンドル角/時間変化率比較器27は、通常はハンドル角/時間変化率dθ/dtをトルク/ハンドル角変化率演算器25に入力し、トルク/ハンドル角変化率演算器25の演算(除算)処理を有効にする。
一方、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、ハンドル角/時間変化率比較器27は、トルク/ハンドル角変化率演算器25による除算処理を禁止して、トルク/ハンドル角変化率演算器25を無効化するとともに、上記比較結果(dθ/dt<下限許容値)をトルク/時間変化率比較判定器18に入力して、トルク/時間変化率比較判定器18を有効化する。
ハンドル角/時間変化率比較器27は、下限値設定手段と、除算禁止手段とを備えている。
ハンドル角/時間変化率比較器27内の下限値設定手段は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtに対する下限許容値を、車両および車速vに応じて設定する。
また、ハンドル角/時間変化率比較器27内の除算禁止手段は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合に、トルク/ハンドル角変化率演算器25による除算処理を禁止する。
トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、トルク/時間変化率dTa/dtと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。トルク/時間変化率比較判定器18は、車両挙動安定性判定器5Cの機能の一部に含まれてもよい。
ハンドル角/時間変化率比較器27により、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、トルク/ハンドル角変化率演算器25および車両挙動安定性判定器5Cに代えて、トルク/時間変化率比較判定器18が有効化される。このとき、トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両のハンドル角/時間変化率dθ/dtの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、ハンドル角/時間変化率dθ/dtの絶対値が下限許容値未満であっても、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値以上であっても、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
次に、図27に示したこの発明の参考例13による動作について説明する。
まず、ハンドル角/時間変化率測定器24は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを測定し、トルク/時間変化率測定器9は、トルク/時間変化率dTa/dtを測定する。
ハンドル角/時間変化率比較器27は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを下限許容値と比較し、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値以上を示す場合には、ハンドル角/時間変化率dθ/dtをトルク/ハンドル角変化率演算器25に入力して、通常の除算処理(前述の式(8)参照)を実行させる。
以下、車両挙動安定性判定器5Cは、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを所定範囲と比較し、所定範囲外(式(7)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態であると判定する。
一方、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値未満を示す場合には、ハンドル角/時間変化率比較器27は、トルク/ハンドル角変化率演算器25に対するハンドル角/時間変化率dθ/dtの入力(式(8)の除算処理)を禁止するとともに、その比較結果(dθ/dt<下限許容値)をトルク/時間変化率比較判定器18に出力する。
これにより、車両挙動安定性判定器5Cに代わって、トルク/時間変化率比較判定器18が有効化され、トルク/時間変化率比較判定器18による比較判定処結果に基づいて、車両状態が検出される。
トルク/時間変化率比較判定器18は、トルク/時間変化率dTa/dtを所定変化率と比較し、トルク/時間変化率dTa/dtが所定変化率以上の場合には車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図28のフローチャートを参照しながら、図27に示したこの発明の参考例13による車両状態判定動作について説明する。
図28において、ステップS90は前述(図24参照)と同様の処理であり、ステップS61F〜S65FおよびS34Fは、図13内のステップS61〜S65およびS34に対応している。
まず、車速vを測定してメモリに記憶し(ステップS90)、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS61F)、トルク/時間変化率dTa/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS62)。
次に、ハンドル角/時間変化率dθ/dtの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS63F)、|dθ/dt|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、トルク/時間変化率比較判定器18を有効化して、トルク/時間変化率dTa/dtの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS64F)。
ステップS64Fにおいて、|dTa/dt|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dTa/dt|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図28の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS63Fにおいて、|dθ/dt|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、トルク/ハンドル角変化率演算器25を有効化して、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算し(ステップS65F)、車両挙動安定性判定器5Cにより、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外である否かを判定する(ステップS34F)。
以下、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外(上限値α2U’以上、または、下限値α2L’以下)であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値未満の場合には、トルク/ハンドル角変化率演算器25による除算処理を禁止して、トルク/時間変化率dTa/dtのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが小さい場合であっても、トルク/ハンドル角変化率演算器25内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態を検出することができる。
なお、上記参考例12では、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、トルク/ハンドル角変化率演算器25A(図25参照)による除算処理を禁止してもよい。
図29はハンドル角/距離変化率dθ/dLが小さい場合にトルク/ハンドル角変化率演算器25Aによる除算処理を禁止したこの発明の参考例14を示すブロック構成図である。
図29において、前述(図14、図25参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、ハンドル角/距離変化率測定器26とトルク/ハンドル角変化率演算器25Aとの間には、ハンドル角/距離変化率比較器29が挿入され、ハンドル角/距離変化率比較器29の出力側には、トルク/距離変化率比較判定器21が設けられている。
ハンドル角/距離変化率比較器29は、通常はハンドル角/距離変化率dθ/dLをトルク/ハンドル角変化率演算器25Aに入力し、トルク/ハンドル角変化率演算器25Aの演算(除算)処理を有効にする。
一方、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、ハンドル角/距離変化率比較器29は、トルク/ハンドル角変化率演算器25Aによる除算処理を禁止して、トルク/ハンドル角変化率演算器25Aを無効化するとともに、上記比較結果(dθ/dL<下限許容値)をトルク/距離変化率比較判定器21に入力して、トルク/距離変化率比較判定器21を有効化する。
ハンドル角/距離変化率比較器29は、ハンドル角/距離変化率dθ/dLに対する下限許容値を車両および車速vに応じて設定する下限値設定手段と、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合にトルク/ハンドル角変化率演算器25Aによる除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
トルク/距離変化率比較判定器21は、トルク/距離変化率dTa/dLに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、トルク/距離変化率dTa/dLと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。トルク/距離変化率比較判定器21は、車両挙動安定性判定器5Cの機能の一部に含まれてもよい。
ハンドル角/距離変化率比較器29により、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、トルク/ハンドル角変化率演算器25Aおよび車両挙動安定性判定器5Cに代えて、トルク/距離変化率比較判定器21が有効化される。このとき、トルク/距離変化率比較判定器21は、トルク/距離変化率dTa/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両のハンドル角/距離変化率dθ/dLの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、トルク/距離変化率dTa/dLの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、ハンドル角/距離変化率dθ/dLの絶対値が下限許容値未満であっても、トルク/距離変化率dTa/dLの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値以上であっても、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
図29において、ハンドル角/距離変化率測定器26は、ハンドル角/距離変化率dθ/dLを測定し、トルク/距離変化率測定器12は、トルク/距離変化率dTa/dLを測定する。
ハンドル角/距離変化率比較器29は、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値以上の場合には、その比較結果をトルク/ハンドル角変化率演算器25Aに出力し、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値未満の場合には、その比較結果をトルク/距離変化率比較判定器21に出力する。
トルク/ハンドル角変化率演算器25Aは、前述の式(9)のように、トルク/距離変化率dTa/dLをハンドル角/距離変化率dθ/dLで除算して、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算する。
一方、トルク/距離変化率比較判定器21は、トルク/距離変化率dTa/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図30のフローチャートを参照しながら、図29に示したこの発明の参考例14による車両状態判定動作について説明する。
図30において、ステップS90は前述と同様の処理であり、ステップS71G〜S75GおよびS34Gは、図15内のステップS71〜S75およびS34に対応している。
まず、車速vを測定してメモリに記憶し(ステップS90)、ハンドル角/距離変化率dθ/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS71G)、トルク/距離変化率dTa/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS72G)。
次に、ハンドル角/距離変化率dθ/dLの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS73G)、|dθ/dL|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、トルク/距離変化率比較判定器21を有効化して、トルク/距離変化率dTa/dLの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS74G)。
ステップS74Gにおいて、|dTa/dL|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dTa/dL|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図30の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS73Gにおいて、|dθ/dL|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、トルク/ハンドル角変化率演算器25Aを有効化して、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθを演算し(ステップS75G)、車両挙動安定性判定器5Cにより、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外(前述の式(7)参照)である否かを判定する(ステップS34G)。
以下、トルク/ハンドル角変化率dTa/dθが所定範囲外であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値未満の場合には、トルク/ハンドル角変化率演算器25Aによる除算処理を禁止して、トルク/距離変化率dTa/dLのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが小さい場合であっても、トルク/ハンドル角変化率演算器25A内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態を検出することができる。
なお、上記参考例1では、第2のパラメータの実測値として実アライニングトルクTaを用いたが、車両が受ける実横方向加速度Gyを用いてもよい。
図31は実アライニングトルクTaの代わりに実横方向加速度Gyを用いたこの発明の参考例15を示すブロック構成図である。
図31において、前述(図1、図10参照)と同様のものについては、同一符号が付されており、前述と対応するものについては、符号の後に「D」が付されている。
この場合、前述のアライニングトルク測定器3に代えて、横方向加速度Gyを検出する横方向加速度測定器13が設けられている。
第2の検出手段を構成する横方向加速度測定器13は、第2のパラメータの実測値として、車両が走行中の路面から受ける実横方向加速度Gyを検出する。
規範値演算手段を構成する規範横方向加速度演算器30は、加速度/滑り角比率(=ゲインKg)を設定するための加速度/滑り角比率設定手段(図示せず)を含み、実横滑り角βおよびゲインKgを用いて規範横方向加速度Goを演算する。
規範横方向加速度演算器30内の加速度/滑り角比率設定手段は、車両の横滑り角βに対する横方向加速度Gyの比率を加速度/滑り角比率(ゲインKg)として、車両に応じてあらかじめ設定する。
これにより、規範横方向加速度演算器30は、実横滑り角βにゲインKgを乗算して、実横滑り角βに対する規範横方向加速度Go(=Kg・β)を演算することができる。
横方向加速度偏差演算器31は、実横方向加速度Gyと規範横方向加速度Goとの偏差の絶対値(第3のパラメータ)を、加速度偏差ΔG(=|Go−Gy|)として演算する。
車両挙動安定性判定器5Dは、基準値設定手段および比較手段を有し、車両挙動安定性判定器5D内の基準値設定手段は、加速度偏差ΔGに対する比較基準値となる所定偏差量α3を車両に応じてあらかじめ設定する。
また、車両挙動安定性判定器5D内の比較手段は、加速度偏差ΔGを所定偏差量α3と比較し、加速度偏差ΔGが所定偏差量α3以上を示す場合に、車両の挙動が不安定であることを判定し、判定結果を不安定状態検出信号として出力する。
一般に、車両が受ける横方向加速度Gyは、図33に示すように、車両が安定走行状態にある場合は、横滑り角βに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合には、前述と同様に低下し、横滑り角βに対する比例関係を保持できなくなる。したがって、この特性を利用して、横方向加速度Gyおよび横滑り角βから車両状態を検出することができる。
図31において、横滑り角測定器1は実横滑り角βを測定し、横方向加速度測定器13は横方向加速度Gyを測定し、それぞれの検出値をメモリに記憶する。
規範横方向加速度演算器30は、横滑り角βに対するゲインKgを用いて、横滑り角βに応じて設定される規範横方向加速度Go(=Kg・β)を演算する。
横方向加速度偏差演算器31は、規範横方向加速度Go(=Kg・β)と実横方向加速度Gyとの偏差の絶対値を横方向加速度偏差ΔGとして演算する。
車両挙動安定性判定器5Dは、比較基準となる所定偏差量α3を設定し、横方向加速度偏差ΔGが所定偏差量α3以上を示す場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
このときの、判定式は、以下の式(10)で表される。
以下、図31とともに、図32のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例15による車両状態判定動作について説明する。
図32において、前述(図2、図11参照)と同様の処理については、同一符号が付されており、前述と対応する処理については、同一符号の後に「H」が付されている。
図32において、まず、横方向加速度測定器13は、実横方向加速度Gyを測定して横方向加速度偏差演算器31内のメモリに記憶させ(ステップS51)、横滑り角測定器1は、横滑り角βを測定して規範横方向加速度演算器30内のメモリに記憶させる(ステップS12)。
続いて、規範横方向加速度演算器30は、横滑り角βに対する横方向加速度GyのゲインKgと実横滑り角βとを乗算して、規範横方向加速度Goを演算する(ステップS13H)。
次に、横方向加速度偏差演算器31は、規範横方向加速度Goから実横方向加速度Gyを減算してその絶対値をとり、横方向加速度偏差ΔGを演算する(ステップS14H)。
最後に、車両挙動安定性判定器5Dは、横方向加速度偏差ΔGと、車両に応じて設定される所定偏差量α3とを比較し、上記式(10)(ΔG≧α3)を満たすか否かを判定する(ステップS15H)。
ステップS15Hにおいて、ΔG≧α3(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、ΔG<α2(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動安定状態であると判定して(ステップS17)、図31の処理ルーチンを終了する。
このように、横滑り角βおよび実横方向加速度Gyに応じて車両挙動の不安定状態を検出することにより、前述と同様に、タイヤのグリップ力が低下した状況下においても、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
図33は路面状態に応じた実横方向加速度Gy1、Gy2の横滑り角βに対する特性を示す説明図であり、前述の図3および図20に対応している。
図33において、横軸は横滑り角β、縦軸は横方向加速度Gyに対応しており、一点鎖線は規範横方向加速度Go、実線はドライアスファルト路面に対する実横方向加速度Gy1、破線は滑り易い路面に対する実横方向加速度Gy2を示している。
図33に示すように、滑り易い路面に対する実横方向加速度Gy2の特性曲線(破線参照)は、滑りにくいドライアスファルト路面に対する実横方向加速度Gy1の特性曲線(実線参照)よりも小さい横滑り角βで低下し始めるが、さらに横滑り角βの小さい領域では、特性曲線Gy1と同様に、規範横方向加速度Goにしたがう線形性が保持されている。
したがって、横滑り角βの小さい領域においては、路面状態によらず、車両に応じて設定される規範横方向加速度Goの横滑り角βに対するゲイン(図33内の傾き)を使用することができる。
すなわち、加速度/滑り角の特性として、横滑り角βが小さい場合には、横方向加速度Gyと横滑り角βとが比例関係にあるが、横滑り角βが大きくなると横方向加速度Gyが減少するので、この特性を用いて、横滑り角βが小さい領域での直線勾配と横滑り角βとから規範値を求め、実測値との偏差が大きくなる場合(または、横滑り角βに対する横方向加速度Gyの勾配が近似直線の勾配と大きく異なる場合)に車両挙動不安定状態を判定することができる。
このように、実際に車両に発生している実横方向加速度Gyおよび横滑り角βを検出して、横滑り角βに対する規範横方向加速度Goを演算し、実横方向加速度Gyと規範横方向加速度Goとを比較することにより、従来装置では検出できないタイヤのスリップやロック状態における車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出することができる。
また、実アライニングトルクTaが測定不可能な場合であっても、横方向加速度Gyおよび横滑り角βを用いて、車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出することができる。
なお、上記参考例15では、加速度/滑り角比率(ゲインKg)を用いて規範横方向加速度Goを算出し、規範横方向加速度Goと実横方向加速度Gyとの偏差ΔGが所定値α3以上の場合に車両不安定状態を判定したが、横滑り角βに対する実横方向加速度Gyの変化率dGy/dβを算出(または、測定)し、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲を逸脱した場合に車両不安定状態を判定してもよい。
図34は加速度/滑り角変化率dGy/dβと所定範囲との比較に基づいて車両挙動安定性を判定したこの発明の参考例16を示すブロック構成図であり、前述と同様のものについては、同一符号を付して、または符号の後に「E」を付して、詳述を省略する。
図34において、加速度/滑り角変化率測定器32は、横滑り角測定器1および横方向加速度測定器13と、演算器33とを備えている。
演算器33は、実横滑り角βに対する実横方向加速度Gyの変化率を、加速度/滑り角変化率dGy/dβとして演算(または、測定)する。
加速度/滑り角変化率測定器32内の演算器33により求められた加速度/滑り角変化率dGy/dβは、車両挙動安定性判定器5Eに入力され、車両挙動の安定性判定に用いられる。
車両挙動安定性判定器5Eは基準値設定手段を有し、車両挙動安定性判定器5E内の基準値設定手段は、加速度/滑り角変化率dGy/dβに対する比較基準となる所定範囲を車両に応じて設定する。
車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲から逸脱した場合に、車両の挙動が不安定であることを判定する。
一般に、実横方向加速度Gyは、図33のように、車両が安定走行状態である場合には、実横滑り角βに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合には、実横滑り角βに対する比例関係を保持することができなくなるので、この特性を利用して不安定状態を判定することができる。
加速度/滑り角変化率測定器32内の演算器33は、たとえば、実測された横滑り角βに応じて実横方向加速度Gyを測定することにより、加速度/滑り角変化率dGy/dβを求めることができる。
車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβと、車両に応じて設定される所定範囲とを比較し、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外を示す場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
所定範囲外の判定式は、以下の式(11)で表される。
次に、図35のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例16による車両状態判定動作について説明する。
図35において、ステップS12、S16およびS17は、前述(図5参照)と同様の処理であり、ステップS24IおよびS25Iは、前述のステップS24およびS25に対応している。
まず、実横滑り角βを測定してメモリに記憶し(ステップS12)、実横滑り角βに応じた加速度/滑り角変化率dGy/dβを測定してメモリに記憶する(ステップS24I)。
続いて、車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβを読み込み、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲(上限値α4U〜下限値α4L)から逸脱しているか否かを判定する(ステップS25I)。
ステップS25Iにおいて、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動が不安定状態(または、不安定の予兆状態)であると判定し(ステップS16)、所定範囲内(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動が安定状態であると判定し(ステップS17)、図35の処理ルーチンを終了する。
このように、実際に車両に発生している実横滑り角βおよび実横方向加速度Gyに応じて車両挙動不安定状態を検出することにより、タイヤのグリップ力が低下した場合であっても、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
また、前述(図33参照)のように、滑り易い路面での実横方向加速度Gyは、比較的小さい実横滑り角βで低下するが、さらに小さい実横滑り角βにおいては規範横方向加速度Goの勾配にしたがう線形性が保持されるので、ドライアスファルト(滑りにくい)路面の場合と同様に、規範横方向加速度Goの加速度/滑り角変化率(ゲイン)の範囲を安定性判定に使用することができる。
なお、上記参考例16では、加速度/滑り角変化率dGy/dβを求めるために加速度/滑り角変化率測定器32を用いたが、実横滑り角βおよび実横方向加速度Gyの時間変化率を測定し、各時間変化率を除算処理して加速度/滑り角変化率dGy/dβを算出してもよい。
図36は実横滑り角βおよび実横方向加速度Gyの各時間変化率を用いて加速度/滑り角変化率dGy/dβを求めたこの発明の参考例17を示すブロック構成図である。
図36において、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、滑り角/時間変化率dβ/dtを求める滑り角/時間変化率測定器8と、実横方向加速度Gyの時間変化率を加速度/時間変化率dGy/dtとして求める加速度/時間変化率測定器34と、加速度/時間変化率dGy/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する加速度/滑り角変化率演算器35とにより構成されている。
以下、図36に示したこの発明の参考例17による動作について説明する。
前述のように、車両挙動安定性判定器5Eは、実横方向加速度Gyが車両安定限界に近づいた場合には実横滑り角βに対する比例関係を保持できなくなるという特性を利用して、車両状態を判定する。
滑り角/時間変化率測定器8は滑り角/時間変化率dβ/dtを測定し、加速度/時間変化率測定器34は、実横方向加速度Gyを所定時間間隔で測定して加速度/時間変化率G/dtを測定する。
加速度/時間変化率測定器34は、ステアリング軸コラムにロードセルなどを取り付けて、横方向加速度を所定時間間隔で測定することにより実現され得る。
加速度/滑り角変化率演算器35は、加速度/時間変化率dGy/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する。このときの演算式は、以下の式(12)のように表される。
車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外(前述の式(11)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態またはその予兆状態であると判定し、不安定状態検出信号を出力する。
次に、図37のフローチャートを参照しながら、図36に示したこの発明の参考例17による車両状態判定動作について説明する。
図37において、ステップS31、S16およびS17は、前述(図7参照)と同様の処理であり、ステップS32J〜S34Jは、前述のステップS32〜S34に対応した処理を示している。
まず、滑り角/時間変化率dβ/dtを測定してメモリに記憶し(ステップS31)、加速度/時間変化率dGy/dtを測定してメモリに記憶する(ステップS32J)。
続いて、加速度/時間変化率dGy/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算し(ステップS33J)、加速度/滑り角変化率dGy/dβと所定範囲(α4U〜α4L)とを比較する(ステップS34J)。
そして、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲(α4U〜α4L)外を示す場合には車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、所定範囲内を示す場合には車両挙動安定状態であると判定する(ステップS17)。
このように、実横方向加速度Gyおよび実横滑り角βの各時間変化率から加速度/滑り角変化率dGy/dβを算出することにより、前述と同様の作用効果を奏することができる。
この場合、加速度/滑り角変化率dGy/dβを直接測定(または、演算)することが不可能な場合であっても、実横方向加速度Gyおよび実横滑り角βの各時間変化率から加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算することができる。
なお、上記参考例17では、加速度/滑り角変化率dGy/dβを算出するために、実横滑り角βおよび実横方向加速度Gyの時間変化率を用いたが、車両の移動距離に対する実横滑り角βおよび実横方向加速度Gyの変化率を用いてもよい。
図38は車両の移動距離に対する実横滑り角βおよび実横方向加速度Gyの変化率を用いたこの発明の参考例18を示すブロック構成図である。
図38において、滑り角/距離変化率測定器11および車両挙動安定性判定器5Eは、前述(図8、図36参照)と同様のものであり、加速度/滑り角変化率演算器35Aは、図36内の加速度/滑り角変化率演算器35に対応している。
この場合、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、滑り角/距離変化率dβ/dLを求める滑り角/距離変化率測定器11と、移動距離Lに対する実横方向加速度Gyの変化率(加速度/距離変化率)dGy/dLを求める加速度/距離変化率測定器36と、加速度/距離変化率dGy/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算して加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する加速度/滑り角変化率演算器35Aとにより構成されている。
加速度/距離変化率測定器36は、たとえば車両の横方向に対して加速度計を取り付け、所定移動距離毎に横方向加速度Gyを測定することにより実現され得る。
以下、図38に示したこの発明の参考例18による動作について説明する。
滑り角/距離変化率測定器11は、横滑り角/距離変化率dβ/dLを求め、加速度/距離変化率測定器36は、実横方向加速度Gyを所定移動距離毎に測定して加速度/距離変化率dGy/dLを求める。
加速度/滑り角変化率演算器35Aは、加速度/距離変化率dGy/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する。このときの演算式は、以下の式(13)のように表される。
以下、車両挙動安定性判定器5Eは、前述と同様に、加速度/滑り角変化率dGy/dβを所定範囲と比較し、所定範囲外(前述の式(11)参照)を示す場合に、車両挙動不安定状態であることを判定する。
次に、図39のフローチャートを参照しながら、図38に示したこの発明の参考例18による車両状態判定動作について説明する。
図39において、ステップS41、S16、S17およびS34Jは、前述(図9、図37参照)と同様の処理であり、ステップS42KおよびS43Kは、図9内のステップS42およびS43に対応している。
まず、滑り角/距離変化率dβ/dLを測定してメモリに記憶し(ステップS41)、加速度/距離変化率dGy/dLを測定してメモリに記憶する(ステップS42K)。
続いて、加速度/距離変化率dGy/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する(ステップS43K)。
以下、車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβを所定範囲と比較して(ステップS34J)、車両挙動不安定状態(ステップS16)または車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
この場合も、前述と同等の作用効果を奏するとともに、加速度/滑り角変化率dGy/dβが直接測定(または、演算)することができない場合でも、加速度/距離変化率dGy/dLおよび滑り角/距離変化率dβ/dLから加速度/滑り角変化率dGy/dβを求め、前述と同等の作用効果を奏することができる。
なお、上記参考例17では、滑り角/時間変化率dβ/dtを求めるために、滑り角/時間変化率測定器8(図36参照)を用いたが、各種センサ出力に基づいて滑り角/時間変化率dβ/dtを演算してもよい。
図40は滑り角/時間変化率演算器8Aを用いたこの発明の参考例19を示すブロック構成図である。
図40において、前述(図10、図36参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、各種センサとして、実横方向加速度Gyを検出する横方向加速度測定器13と、ヨー方向加速度(実ヨーレート)γを検出するヨーレート測定器14と、実車速vを検出する車速測定器15とを備えている。
滑り角/時間変化率演算器8Aは、実横方向加速度Gy、実ヨーレートγ(ヨー方向速度の時間微分値)および実車速vを用いて、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算する。
以下、図40に示したこの発明の参考例19による動作について説明する。
横方向加速度測定器13は実横方向加速度Gyを検出し、ヨーレート測定器14は実ヨーレートγを検出し、車速測定器15は実車速vを検出して、それぞれ滑り角/時間変化率演算器8A内のメモリに記憶させる。
また、加速度/時間変化率測定器34は、加速度/時間変化率dGy/dtを測定して、加速度/滑り角変化率演算器35内のメモリに記憶させる。
滑り角/時間変化率演算器8Aは、実横方向加速度Gy、実ヨーレートγおよび実車速vを用いて、前述の式(5)のように、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算する。
続いて、加速度/滑り角変化率演算器35は、前述の式(12)のように、加速度/時間変化率dGy/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する。
以下、車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβを所定範囲と比較して、車両挙動不安定状態または車両挙動安定状態を判定する。
次に、図41のフローチャートを参照しながら、図40に示したこの発明の参考例19による車両状態判定動作について説明する。
図41において、ステップS51〜S54、S34J、S16およびS17は、前述(図11、図37参照)と同様の処理であり、ステップS32LおよびS33Lは、図11内のステップS32およびS33の処理に対応している。
まず、車両の実横方向加速度Gy、実ヨーレートγおよび実車速vを測定してメモリに記憶し(ステップS51〜S53)、実横方向加速度Gy、実ヨーレートγおよび実車速vに基づいて滑り角/時間変化率dβ/dtを演算し、これをメモリに記憶する(ステップS54)。
また、加速度/時間変化率dGy/dtを測定してメモリに記憶する(ステップS32L)。
次に、加速度/時間変化率dGy/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する(ステップS33L)。
以下、加速度/滑り角変化率dGy/dβを所定範囲と比較して(ステップS34J)、車両挙動不安定状態(ステップS16)または車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを測定することにより、滑り角/時間変化率dβ/dtを直接測定できない場合でも、角センサ出力から滑り角/時間変化率dβ/dtを演算することができ、前述と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記参考例17では、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、加速度/滑り角変化率演算器35(図36参照)による除算処理を禁止してもよい。
図42は滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合に加速度/滑り角変化率演算器35による除算処理を禁止したこの発明の参考例20を示すブロック構成図である。
図42において、前述(図12、図36参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、滑り角/時間変化率測定器8と加速度/滑り角変化率演算器35との間には、滑り角/時間変化率比較器17が挿入され、滑り角/時間変化率比較器17の出力側には、加速度/時間変化率比較判定器37が設けられている。
滑り角/時間変化率比較器17は、通常は滑り角/時間変化率dβ/dtを加速度/滑り角変化率演算器35に入力し、加速度/滑り角変化率演算器35の演算(除算)処理を有効にする。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、滑り角/時間変化率比較器17は、加速度/滑り角変化率演算器35による除算処理を禁止して、加速度/滑り角変化率演算器35を無効化するとともに、上記比較結果(dβ/dt<下限許容値)を加速度/時間変化率比較判定器37に入力して、加速度/時間変化率比較判定器37を有効化する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtに対する下限許容値を車両に応じて設定する下限値設定手段と、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合に加速度/滑り角変化率演算器35による除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、加速度/時間変化率dGy/dtと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。加速度/時間変化率比較判定器37は、車両挙動安定性判定器5Eの機能の一部に含まれてもよい。
滑り角/時間変化率比較器17により、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、加速度/滑り角変化率演算器35および車両挙動安定性判定器5Eに代えて、加速度/時間変化率比較判定器37が有効化される。このとき、加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両の滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満であっても、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値以上であっても、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
次に、図42に示したこの発明の参考例20による動作について説明する。
まず、滑り角/時間変化率測定器8は、滑り角/時間変化率dβ/dtを測定し、加速度/時間変化率測定器34は、加速度/時間変化率dGy/dtを測定する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtを下限許容値と比較し、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値以上を示す場合には、滑り角/時間変化率dβ/dtを加速度/滑り角変化率演算器35に入力して、通常の除算処理(前述の式(12)参照)を実行させる。
以下、車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβを所定範囲と比較し、所定範囲外(式(11)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態であると判定する。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値未満を示す場合には、滑り角/時間変化率比較器17は、加速度/滑り角変化率演算器35に対する滑り角/時間変化率dβ/dtの入力(式(12)の除算処理)を禁止するとともに、その比較結果を加速度/時間変化率比較判定器37に出力する。
これにより、車両挙動安定性判定器5Eに代わって、加速度/時間変化率比較判定器37が有効化され、加速度/時間変化率比較判定器37による比較判定処結果に基づいて、車両状態が検出される。
加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtを所定変化率と比較し、加速度/時間変化率dGy/dtが所定変化率以上の場合には車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図43のフローチャートを参照しながら、図42に示したこの発明の参考例20による車両状態判定動作について説明する。
図43において、ステップS61、S63、S34J、S16およびS17は、前述(図13、図37参照)と同様の処理であり、ステップS62M、S64MおよびS65Mは、図13内のステップS62、S64およびS65に対応している。
まず、滑り角/時間変化率dβ/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS61)、加速度/時間変化率dGy/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS62M)。
次に、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS63)、|dβ/dt|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、加速度/時間変化率比較判定器37を有効化して、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS64M)。
ステップS64Mにおいて、|dGy/dt|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dGy/dt|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図43の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS63において、|dβ/dt|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、加速度/滑り角変化率演算器35を有効化して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算し(ステップS65M)、車両挙動安定性判定器5Eにより、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外である否かを判定する(ステップS34J)。
以下、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値未満の場合には、加速度/滑り角変化率演算器35による除算処理を禁止して、加速度/時間変化率dGy/dtのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合であっても、加速度/滑り角変化率演算器35内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態またはその予兆状態を検出することができる。
なお、上記参考例18では、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、加速度/滑り角変化率演算器35A(図38参照)による除算処理を禁止してもよい。
図44は滑り角/距離変化率dβ/dLが小さい場合に加速度/滑り角変化率演算器35Aによる除算処理を禁止したこの発明の参考例21を示すブロック構成図である。
図44において、前述(図14、図38参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、滑り角/距離変化率測定器11と加速度/滑り角変化率演算器35Aとの間には、滑り角/距離変化率比較器19が挿入され、滑り角/距離変化率比較器19の出力側には、加速度/距離変化率比較判定器38が設けられている。
滑り角/距離変化率比較器19は、通常は滑り角/距離変化率dβ/dLを加速度/滑り角変化率演算器35Aに入力し、加速度/滑り角変化率演算器35Aの演算(除算)処理を有効にする。
一方、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、滑り角/距離変化率比較器19は、加速度/滑り角変化率演算器35Aによる除算処理を禁止して、加速度/滑り角変化率演算器35Aを無効化するとともに、上記比較結果(dβ/dL<下限許容値)を加速度/距離変化率比較判定器38に入力して、加速度/距離変化率比較判定器38を有効化する。
滑り角/距離変化率比較器19は、滑り角/距離変化率dβ/dLに対する下限許容値を車両に応じて設定する下限値設定手段と、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さい場合に加速度/滑り角変化率演算器35Aによる除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
加速度/距離変化率比較判定器38は、加速度/距離変化率dGy/dLに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、加速度/距離変化率dGy/dLと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。加速度/距離変化率比較判定器38は、車両挙動安定性判定器5Eの機能の一部に含まれてもよい。
滑り角/距離変化率比較器19により、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、加速度/滑り角変化率演算器35Aおよび車両挙動安定性判定器5Eに代えて、加速度/距離変化率比較判定器38が有効化される。このとき、加速度/距離変化率比較判定器38は、加速度/距離変化率dGy/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両の滑り角/距離変化率dβ/dLの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、加速度/距離変化率dGy/dLの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、滑り角/距離変化率dβ/dLの絶対値が下限許容値未満であっても、加速度/距離変化率dGy/dLの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値以上であっても、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
図44において、滑り角/距離変化率測定器11は、滑り角/距離変化率dβ/dLを測定し、加速度/距離変化率測定器36は、加速度/距離変化率dGy/dLを測定する。
滑り角/距離変化率比較器19は、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値以上の場合には、その比較結果を加速度/滑り角変化率演算器35Aに出力し、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値未満の場合には、その比較結果を加速度/距離変化率比較判定器38に出力する。
加速度/滑り角変化率演算器35Aは、前述の式(13)のように、加速度/距離変化率dGy/dLを滑り角/距離変化率dβ/dLで除算して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する。
一方、加速度/距離変化率比較判定器38は、加速度/距離変化率dGy/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図45のフローチャートを参照しながら、図44に示したこの発明の参考例21による車両状態判定動作について説明する。
図45において、ステップS71、S73、S34J、S16およびS17は、前述(図15、図39参照)と同様の処理であり、ステップS72N、S74NおよびS75Nは、図15内のステップS72、S74およびS75に対応している。
まず、滑り角/距離変化率dβ/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS71)、加速度/距離変化率dGy/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS72N)。
次に、滑り角/距離変化率dβ/dLの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS73)、|dβ/dL|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、加速度/距離変化率比較判定器38を有効化して、加速度/距離変化率dGy/dLの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS74N)。
ステップS74Nにおいて、|dGy/dL|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dGy/dL|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図45の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS73において、|dβ/dL|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、加速度/滑り角変化率演算器35Aを有効化して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算し(ステップS75)、車両挙動安定性判定器5Eにより、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外である否かを判定する(ステップS34J)。
以下、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、滑り角/距離変化率dβ/dLが下限許容値未満の場合には、加速度/滑り角変化率演算器35Aによる除算処理を禁止して、加速度/距離変化率dGy/dLのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、滑り角/距離変化率dβ/dLが小さい場合であっても、加速度/滑り角変化率演算器35A内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態またはその予兆状態を検出することができる。
なお、上記参考例19では、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、上記参考例20と同様に、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、加速度/滑り角変化率演算器35(図40参照)による除算処理を禁止してもよい。
図46は滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合に加速度/滑り角変化率演算器35による除算処理を禁止したこの発明の参考例22を示すブロック構成図である。
図46において、前述(図16、図40参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、滑り角/時間変化率演算器8Aと加速度/滑り角変化率演算器35との間には、滑り角/時間変化率比較器17が挿入され、滑り角/時間変化率比較器17の出力側には、加速度/時間変化率比較判定器37が設けられている。
滑り角/時間変化率比較器17は、通常は滑り角/時間変化率dβ/dtを加速度/滑り角変化率演算器35に入力し、加速度/滑り角変化率演算器35の演算(除算)処理を有効にする。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、滑り角/時間変化率比較器17は、加速度/滑り角変化率演算器35による除算処理を禁止して、加速度/滑り角変化率演算器35を無効化するとともに、上記比較結果(dβ/dt<下限許容値)を加速度/時間変化率比較判定器37に入力して、加速度/時間変化率比較判定器37を有効化する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtに対する下限許容値を車両に応じて設定する下限値設定手段と、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さい場合に加速度/滑り角変化率演算器35による除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、加速度/時間変化率dGy/dtと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。加速度/時間変化率比較判定器37は、前述と同様に、車両挙動安定性判定器5Eの機能の一部に含まれてもよい。
滑り角/時間変化率比較器17により、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、加速度/滑り角変化率演算器35および車両挙動安定性判定器5Eに代えて、加速度/時間変化率比較判定器37が有効化される。このとき、加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両の横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vから演算された滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満の場合に、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値も所定変化率未満であれば、車両挙動は安定状態であると見なすことができる。
一方、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値が下限許容値未満であっても、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値が所定変化率以上の場合には、車両挙動が不安定状態であることを検出することができる。
また、滑り角/時間変化率dGy/dtが所定変化率以上であっても、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲内であれば、車両挙動は安定状態であると見なすことができる。しかし、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定範囲外である場合には、車両挙動は不安定状態であると検出される。
図46において、横方向加速度測定器13は、車両の横方向加速度Gyを検出してメモリに記憶し、ヨーレート測定器14は、ヨー方向の加速度γを検出してメモリに記憶し、車速測定器15は、車速vを検出してメモリに記憶する。
滑り角/時間変化率演算器8Aは、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを用いて、前述の式(5)により、滑り角/時間変化率dβ/dtを演算する。
また、加速度/時間変化率測定器34は、加速度/時間変化率dGy/dtを測定する。
滑り角/時間変化率比較器17は、滑り角/時間変化率dβ/dtを下限許容値と比較して、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値未満の場合には、比較結果の出力先を加速度/時間変化率比較判定器37とし、滑り角/時間変化率dβ/dtが下限許容値以上の場合には、比較結果の出力先を加速度/滑り角変化率演算器35とする。
加速度/滑り角変化率演算器35は、前述の式(12)のように、加速度/時間変化率dGy/dtを滑り角/時間変化率dβ/dtで除算して、加速度/滑り角変化率dGy/dβを演算する。
一方、加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtを所定変化率と比較して、加速度/滑り角変化率dGy/dβが所定変化率以上の場合に、車両挙動が不安定であると判定する。
車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβを所定範囲と比較し、所定範囲外(前述の式(11)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図47のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例22による車両状態判定動作について説明する。
図47において、ステップS80、S81、S62M〜S65M、S34J、S16およびS17は、前述(図17、図41、図43参照)と同様の処理である。
まず、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを測定して、それぞれメモリに記憶し(ステップS80)、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを用いて滑り角/時間変化率dβ/dtを演算し、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS81)。
また、加速度/時間変化率dGy/dtを測定してメモリに記憶する(ステップS62M)。
以下、滑り角/時間変化率dβ/dtの絶対値を下限許容値と比較し、|dβ/dt|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されればステップS64Mに進み、|dβ/dt|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されればステップS65Mに進む。
加速度/時間変化率比較判定器37は、ステップS64Mの判定処理において、|dGy/dt|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば車両挙動不安定状態と判定し(ステップS16)、|dGy/dt|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば車両挙動安定状態と判定する(ステップS17)。
一方、加速度/滑り角変化率演算器35は、ステップS65において、加速度/滑り角変化率dGy/dβ(=(dGy/dt)/(dβ/dt))を演算し、車両挙動安定性判定器5Eは、加速度/滑り角変化率dGy/dβを所定範囲と比較して(ステップS34J)、所定範囲外(すなわち、YES)と判定されれば車両挙動不安定状態と判定し(ステップS16)、所定範囲内(すなわち、NO)と判定されれば車両挙動安定状態と判定する(ステップS17)。
このように、滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合には、実横方向加速度Gyに応じた加速度/時間変化率dGy/dtのみを用いて車両挙動不安定状態を検出することにより、タイヤのグリップ力が低下した場合でも、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
また、前述(図33参照)のように、滑り易い路面での横方向加速度は、小さい横滑り角で低下するが、小さい横滑り角の領域では規範横方向加速度Goの勾配にしたがう線形性が保持されるので、滑りにくいドライアスファルト路面の場合と同様の所定範囲(比較基準)を用いて、加速度/滑り角変化率dGy/dβから車両挙動安定性を判定することができる。
さらに、滑り角/時間変化率dβ/dtが測定不可能な場合でも、横方向加速度Gy、ヨーレートγおよび車速vを測定することにより、滑り角/時間変化率dβ/dtの演算が可能となり、前述と同等の作用効果を奏する。
また、加速度/滑り角変化率演算器35内の除算処理によるオーバーフローを防止することができ、滑り角/時間変化率dβ/dtが小さい場合でも、車両の不安定状態を検出することができる。
また、図33に示すように、滑り易い路面での横方向加速度Gyは、比較的小さい横滑り角で低下するが、さらに小さい横滑り角では規範横方向加速度Goの勾配による線形性が保持されるので、ドライアスファルト路面の場合と同様に、加速度/滑り角変化率の所定変化率(ゲイン)の範囲を車両挙動安定性の判定に使用することができる。
なお、上記参考例15〜22では、第1のパラメータの実測値として、実横滑り角βを用いた場合について説明したが、車両運転者による実ハンドル操作角θを用いることが望ましい。
図48は実横滑り角βの代わりに実ハンドル操作角θを用いたこの発明の実施の形態1を示すブロック構成図である。
図48において、前述(図18、図31参照)と同様のものについては、同一符号が付されており、前述と対応するものについては、符号の後に「F」または「’」が付されている。
この場合、前述の横滑り角測定器1に代えて、ハンドル操作角θを検出するハンドル操作角測定器20が設けられている。また、規範横方向加速度演算器30Fおよび車両挙動安定性判定器5Fに関連して、車速測定器15が設けられている。
一般に、車両が受ける横方向加速度は、車両が安定走行状態にある場合は、ハンドル操作角θに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合には、前述と同様に低下し、ハンドル操作角θに対する比例関係を保持できなくなる。したがって、この特性を利用して、ハンドル操作角θから車両状態を検出することができる。
図48において、ハンドル操作角測定器20は、ハンドル操作角θを測定し、横方向加速度測定器13は実横方向加速度Gyを測定し、車速測定器15は車速vを検出し、それぞれの検出値をメモリに記憶する。
規範横方向加速度演算器30Fは、規範横方向加速度Go’(=Kg’・θ)を演算し、横方向加速度偏差演算器31Fは、規範横方向加速度Go’(=Kg’・θ)と実横方向加速度Gyとの偏差の絶対値を横方向加速度偏差ΔG’として演算する。
車両挙動安定性判定器5Fは、比較基準となる所定偏差量α4を車両および車速vに応じて設定する所定偏差量設定手段を有し、横方向加速度偏差ΔG’を所定偏差量α4と比較して、横方向加速度偏差ΔG’が所定偏差量α4以上を示す場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
このときの、判定式は、以下の式(14)で表される。
以下、図48とともに、図49のフローチャートを参照しながら、この発明の参考例23による車両状態判定動作について説明する。
図49において、ステップS51、S12B、S16およびS17は、前述(図19、図32参照)と同様の処理であり、前述と対応する処理については、同一符号の後に「P」が付されている。
まず、横方向加速度測定器13は、実横方向加速度Gyを測定して横方向加速度偏差演算器31F内のメモリに記憶させる(ステップS51)。
また、ハンドル操作角測定器20はハンドル操作角θを測定し、車速測定器15は車速vを測定して、それぞれの検出値を規範横方向加速度演算器30F内のメモリに記憶させる(ステップS12B)。このとき、車速vは車両挙動安定性判定器5F内のメモリにも記憶される。
続いて、規範横方向加速度演算器30Fは、ハンドル操作角に対する横方向加速度のゲインKg’と実ハンドル操作角θとを乗算して、規範横方向加速度Go’を演算する(ステップS13P)。
次に、横方向加速度偏差演算器31Fは、規範横方向加速度Go’から実横方向加速度Gyを減算してその絶対値をとり、横方向加速度偏差ΔG’を演算する(ステップS14P)。
最後に、車両挙動安定性判定器5Fは、横方向加速度偏差ΔG’と、車両および車速vに応じて設定される所定偏差量α4とを比較し、上記式(14)(ΔG’≧α4)を満たすか否かを判定する(ステップS15P)。
ステップS15Pにおいて、ΔG’≧α4(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動が不安定またはその予兆であると判定し(ステップS16)、ΔG’<α4(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動は安定であると判定して(ステップS17)、図49の処理ルーチンを終了する。
このように、実際に車両に発生しているハンドル操作角θ、車速vおよび実横方向加速度Gyを検出し、ハンドル操作角θに対する規範横方向加速度Go’を演算し、実横方向加速度Gyと規範横方向加速度Go’とを比較して車両挙動の不安定状態を検出することにより、前述と同様に、タイヤのグリップ力が低下したロック状態においても、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
また、車両の横滑り角βが測定不可能な場合であっても、車速vおよびハンドル操作角θを用いて、車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出することができる。
また、前述(図33参照)のように、滑り易い路面での横方向加速度Gyは、比較的小さい横滑り角で低下するが、さらに小さい横滑り角では線形性が保持されるので、ドライアスファルト路面の場合と同様に、規範横方向加速度Gyの横滑り角に対するゲインの範囲を使用することができる。
なお、上記参考例23では、規範横方向加速度Go’と実横方向加速度Gyとの偏差ΔG’に基づいて車両不安定状態を判定したが、ハンドル操作角θに対する実横方向加速度Gyの変化率を算出(または、測定)し、加速度/ハンドル角変化率が所定範囲を逸脱した場合に車両不安定状態を判定することが望ましい。
図50は加速度/ハンドル角変化率と所定範囲との比較に基づいて車両挙動安定性を判定したこの発明の実施の形態1を示すブロック構成図であり、前述(図21、図34参照)と同様のものについては、同一符号を付して、または符号の後に「G」を付して、詳述を省略する。
図50において、加速度/ハンドル角変化率測定器40は、ハンドル操作角測定器20および横方向加速度測定器13と、演算器41とを備えている。
演算器41は、実ハンドル操作角θに対する実横方向加速度Gyの変化率を、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθとして演算(または、測定)する。
加速度/ハンドル角変化率測定器40内の演算器41により求められた加速度/ハンドル角変化率dGy/dθは、車両挙動安定性判定器5Gに入力され、車両挙動の安定性判定に用いられる。
また、車速測定器15から出力される車速vも車両挙動安定性判定器5Gに入力され、車両挙動判定用の基準値(所定範囲)の設定に用いられる。
車両挙動安定性判定器5G内の所定範囲設定手段は、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθに対する比較基準となる所定範囲を、車両および車速vに応じて設定する。
車両挙動安定性判定器5Gは、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲から逸脱した場合に、車両の挙動が不安定であることを判定する。
一般に、実横方向加速度Gyは、車両が安定走行状態である場合には、実ハンドル操作角θに対してほぼ比例関係にあるが、車両が安定限界に近づいた場合には、前述(図20参照)のように低下して、ハンドル操作角θに対する比例関係を保持することができなくなるので、この特性を利用して不安定状態を判定することができる。
加速度/ハンドル角変化率測定器40内の演算器41は、たとえば、実測されたハンドル操作角θに応じて実横方向加速度Gyを測定することにより、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを求めることができる。
車両挙動安定性判定器5Gは、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを所定範囲と比較し、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外を示す場合には、車両挙動が不安定であると判定する。
このときの所定範囲外の判定式は、以下の式(15)で表される。
次に、図51のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態1による車両状態判定動作について説明する。
図51において、ステップS12C、S16およびS17は前述(図22、図35参照)と同様の処理であり、前述と対応する処理については、同一符号の後に「Q」が付されている。
まず、加速度/ハンドル角変化率測定器40内の演算器41は、実ハンドル操作角θの測定値をメモリに記憶し(ステップS12C)、実ハンドル操作角θに応じた実横方向加速度Gyを加速度/ハンドル角変化率dGy/dθとして測定し、これをメモリに記憶する(ステップS24Q)。
車両挙動安定性判定器5Gは、加速度/ハンドル角変化率測定器40により測定された加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを読み込み、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲(上限値α4U’〜下限値α4L’)から逸脱しているか否かを判定する(ステップS25Q)。
ステップS25Qにおいて、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動が不安定状態(または、不安定の予兆状態)であると判定し(ステップS16)、所定範囲内(すなわち、NO)と判定されれば、車両挙動が安定状態であると判定し(ステップS17)、図51の処理ルーチンを終了する。
このように、実際に車両に発生している実ハンドル操作角θおよび実横方向加速度Gyに応じて、車両挙動の不安定状態を検出することにより、タイヤのグリップ力が低下した場合でも、車両挙動不安定状態を有効に検出することができる。
また、図52に示すように、滑り易い路面での実横方向加速度Gyは、比較的小さいハンドル操作角θで低下するが、さらに小さいハンドル操作角θにおいては規範横方向加速度Goの勾配にしたがう線形性が保持されるので、ドライアスファルト(滑りにくい)路面の場合と同様に、加速度/ハンドル角変化率(ゲイン)の範囲を安定性判定に使用することができる。
図52は路面状態に応じた実横方向加速度Gy1、Gy2のハンドル操作角θに対する特性を示す説明図であり、前述の図33に対応している。
図52において、横軸はハンドル操作角θ、縦軸は横方向加速度Gyに対応しており、一点鎖線は規範横方向加速度Go’、実線はドライアスファルト路面に対する実横方向加速度Gy1、破線は滑り易い路面に対する実横方向加速度Gy2を示している。
図52に示すように、滑り易い路面に対する実横方向加速度Gy2の特性曲線(破線参照)は、滑りにくいドライアスファルト路面に対する実横方向加速度Gy1の特性曲線(実線参照)よりも小さいハンドル操作角θで低下し始めるが、ハンドル操作角θのさらに小さい領域では、特性曲線Gy1と同様に、規範横方向加速度Go’にしたがう線形性が保持されている。
したがって、ハンドル操作角θの小さい領域においては、路面状態によらず、車両に応じて設定される規範横方向加速度Go’のハンドル操作角θに対するゲイン(図52内の傾き)の範囲が使用可能となる。
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1では、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを求めるために加速度/ハンドル角変化率測定器40を用いたが、実ハンドル操作角θおよび実横方向加速度Gyの時間変化率を測定し、各時間変化率を除算処理して加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを算出してもよい。
図53は実ハンドル操作角θおよび実横方向加速度Gyの各時間変化率を用いて加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを求めたこの発明の実施の形態2を示すブロック構成図であり、前述(図23、図36、図50参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
図53において、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを求めるハンドル角/時間変化率測定器24と、加速度/時間変化率dGy/dtを求める加速度/時間変化率測定器34と、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを求める加速度/ハンドル角変化率演算器42とにより構成されている。
車両挙動安定性判定器5Gには、前述と同様に実車速vが入力されている。
以下、図53に示したこの発明の実施の形態2による動作について説明する。
この場合も、車両挙動安定性判定器5Gは、実横方向加速度Gyが車両安定限界に近づいた場合には実ハンドル操作角θに対する比例関係を保持できなくなるという特性を利用して、車両状態を判定する。
ハンドル角/時間変化率測定器24は、ハンドル角/時間変化率dθ/dt(ハンドル操作角速度)を測定し、加速度/時間変化率測定器34は、実横方向加速度Gyを所定時間間隔で測定して加速度/時間変化率Gy/dtを測定する。
加速度/ハンドル角変化率演算器42は、加速度/時間変化率dGy/dtをハンドル角/時間変化率dθ/dtで除算して、実横方向加速度Gyの実ハンドル操作角θに対する比率を加速度/ハンドル角変化率dGy/dθとして演算する。このときの演算式は、以下の式(16)のように表される。
車両挙動安定性判定器5Gは、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外(前述の式(15)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態またはその予兆状態であると判定し、不安定状態検出信号を出力する。
次に、図54のフローチャートを参照しながら、図53に示したこの発明の実施の形態2による車両状態判定動作について説明する。
図54において、ステップS90、S31D、S32J、S16およびS17は、前述(図24、図37参照)と同様の処理であり、前述と対応する処理については、同一符号の後に「R」が付されている。
まず、車速v、ハンドル角/時間変化率dθ/dt、加速度/時間変化率dGy/dtを測定し、それぞれメモリに記憶する(ステップS90、S31D、S32J)。
続いて、加速度/時間変化率dGy/dtをハンドル角/時間変化率dθ/dtで除算して、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを演算する(ステップS33D)。
以下、車両挙動安定性判定器5Gは、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲(上限値α4U’〜下限値α4L’)外を示す場合に、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、所定範囲内を示す場合には車両挙動安定状態であると判定する(ステップS17)。
このように、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを用いて、前述と同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを直接測定(または、演算)することが不可能な場合であっても、実横方向加速度Gyおよび実ハンドル操作角θの各時間変化率から加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを演算することができ、前述と同等の作用効果を奏することができる。
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2では、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを算出するために、実ハンドル操作角θおよび実横方向加速度Gyの時間変化率を用いたが、車両の移動距離に対する実ハンドル操作角θおよび実横方向加速度Gyの変化率を用いてもよい。
図55は車両の移動距離に対する実ハンドル操作角θおよび実横方向加速度Gyの変化率を用いたこの発明の実施の形態3を示すブロック構成図である。
図55において、ハンドル角/距離変化率測定器26、加速度/距離変化率演算器36および車両挙動安定性判定器5Gは、前述(図25、図38、図53参照)と同様のものであり、加速度/ハンドル角変化率演算器42Aは、図53内の加速度/ハンドル角変化率演算器42に対応している。
この場合、安定性判定用パラメータを求めるための演算手段は、ハンドル角/距離変化率dθ/dLを求めるハンドル角/距離変化率測定器26と、加速度/距離変化率dGy/dLを求める加速度/距離変化率測定器36と、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを求める加速度/ハンドル角変化率演算器42Aとにより構成されている。
ハンドル角/距離変化率測定器26は、車両の移動距離Lを求める移動距離測定器(または、演算器)を有する。
以下、図55に示したこの発明の実施の形態3による動作について説明する。
ハンドル角/距離変化率測定器26は、たとえば、縦横2方向の対地速度を所定移動距離毎に測定して横ハンドル角/距離変化率dθ/dLを求め、加速度/距離変化率測定器36は、実横方向加速度Gyを所定移動距離毎に測定して加速度/距離変化率dGy/dLを求める。
加速度/ハンドル角変化率演算器42Aは、加速度/距離変化率dGy/dLをハンドル角/距離変化率dθ/dLで除算して、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを演算する。このときの演算式は、以下の式(17)のように表される。
以下、車両挙動安定性判定器5Gは、前述と同様に、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを所定範囲と比較し、所定範囲外を示す場合に、車両挙動不安定状態であることを判定する。
次に、図56のフローチャートを参照しながら、図55に示したこの発明の実施の形態3による車両状態判定動作について説明する。
図56において、ステップS90およびS34Rは前述(図54参照)と同様の処理であり、ステップS41S〜S43Sは、図26内のステップS41E〜S43Eに対応している。
まず、車速v、ハンドル角/距離変化率dθ/dLおよび加速度/距離変化率dGy/dLを測定して、それぞれメモリに記憶する(ステップS90、S41S、S42S)。
続いて、加速度/距離変化率dGy/dLをハンドル角/距離変化率dθ/dLで除算して、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを演算する(ステップS43S)。
以下、車両挙動安定性判定器5Gは、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを所定範囲(上限値α4U’〜下限値α4L’)と比較して(ステップS34R)、車両挙動不安定状態(ステップS16)または車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
この場合も、前述と同等の作用効果を奏するとともに、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが直接測定(または、演算)することができない場合でも、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを除算により求めて、車速vに応じた所定範囲との比較により安定性を判定することができる。
実施の形態4.
なお、上記実施の形態2では、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、加速度/ハンドル角変化率演算器42(図53参照)による除算処理を禁止してもよい。
図57はハンドル角/時間変化率dθ/dtが小さい場合に加速度/ハンドル角変化率演算器42による除算処理を禁止したこの発明の実施の形態4を示すブロック構成図である。
図57において、前述(図27、図53参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、ハンドル角/時間変化率測定器24と加速度/ハンドル角変化率演算器42との間には、ハンドル角/時間変化率比較器27が挿入され、ハンドル角/時間変化率比較器27の出力側には、加速度/時間変化率比較判定器37が設けられている。
ハンドル角/時間変化率比較器27は、通常はハンドル角/時間変化率dθ/dtを加速度/ハンドル角変化率演算器42に入力し、加速度/ハンドル角変化率演算器42の演算(除算)処理を有効にする。
一方、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合には、ハンドル角/時間変化率比較器27は、加速度/ハンドル角変化率演算器42による除算処理を禁止して、加速度/ハンドル角変化率演算器42を無効化するとともに、上記比較結果(dθ/dt<下限許容値)を加速度/時間変化率比較判定器37に入力して、加速度/時間変化率比較判定器37を有効化する。
ハンドル角/時間変化率比較器27は、下限値設定手段と、除算禁止手段とを備えている。
ハンドル角/時間変化率比較器27内の下限値設定手段は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtに対する下限許容値を、車両および車速vに応じて設定する。
また、ハンドル角/時間変化率比較器27内の除算禁止手段は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さい場合に、加速度/ハンドル角変化率演算器42による除算処理を禁止する。
加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、加速度/時間変化率dGy/dtと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。加速度/時間変化率比較判定器37は、車両挙動安定性判定器5Gの機能の一部に含まれてもよい。
ハンドル角/時間変化率比較器27により、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、加速度/ハンドル角変化率演算器42および車両挙動安定性判定器5Gに代えて、加速度/時間変化率比較判定器37が有効化される。このとき、加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両のハンドル角/時間変化率dθ/dtの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、ハンドル角/時間変化率dθ/dtの絶対値が下限許容値未満であっても、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値以上であっても、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
次に、図57に示したこの発明の実施の形態4による動作について説明する。
まず、ハンドル角/時間変化率測定器24は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを測定し、加速度/時間変化率測定器34は、加速度/時間変化率dGy/dtを測定する。
ハンドル角/時間変化率比較器27は、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを下限許容値と比較し、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値以上を示す場合には、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを加速度/ハンドル角変化率演算器42に入力して、通常の除算処理(前述の式(16)参照)を実行させる。
以下、車両挙動安定性判定器5Gは、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを所定範囲と比較し、所定範囲外(式(15)参照)を示す場合には、車両挙動が不安定状態であると判定する。
一方、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値未満を示す場合には、ハンドル角/時間変化率比較器27は、加速度/ハンドル角変化率演算器42に対するハンドル角/時間変化率dθ/dtの入力(式(16)の除算処理)を禁止するとともに、その比較結果(dθ/dt<下限許容値)を加速度/時間変化率比較判定器37に出力する。
これにより、車両挙動安定性判定器5Gに代わって、加速度/時間変化率比較判定器37が有効化され、加速度/時間変化率比較判定器37による比較判定処結果に基づいて、車両状態が検出される。
加速度/時間変化率比較判定器37は、加速度/時間変化率dGy/dtを所定変化率と比較し、加速度/時間変化率dGy/dtが所定変化率以上の場合に、車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図58のフローチャートを参照しながら、図57に示したこの発明の実施の形態4による車両状態判定動作について説明する。
図58において、ステップS90、S34R、S16およびS17は、前述(図54参照)と同様の処理であり、ステップS61T〜S65Tは、図28内のステップS61〜S65に対応している。
まず、車速vを測定してメモリに記憶し(ステップS90)、ハンドル角/時間変化率dθ/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS61T)、加速度/時間変化率dGy/dtを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS62T)。
次に、ハンドル角/時間変化率dθ/dtの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS63T)、|dθ/dt|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、加速度/時間変化率比較判定器37を有効化して、加速度/時間変化率dGy/dtの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS64T)。
ステップS64Tにおいて、|dGy/dt|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dGy/dt|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図58の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS63Tにおいて、|dθ/dt|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、加速度/ハンドル角変化率演算器42を有効化して、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを演算し(ステップS65T)、車両挙動安定性判定器5Gにより、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外である否かを判定する(ステップS34R)。
以下、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外(上限値α4U’以上、または、下限値α4L’以下)であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが下限許容値未満の場合には、加速度/ハンドル角変化率演算器42による除算処理を禁止して、加速度/時間変化率dGy/dtのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、ハンドル角/時間変化率dθ/dtが小さい場合であっても、加速度/ハンドル角変化率演算器42内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態を検出することができる。
実施の形態5.
なお、上記実施の形態3では、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合の処理について考慮しなかったが、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、オーバーフローを防止するために、加速度/ハンドル角変化率演算器42A(図55参照)による除算処理を禁止してもよい。
図59はハンドル角/距離変化率dθ/dLが小さい場合に加速度/ハンドル角変化率演算器55Aによる除算処理を禁止したこの発明の実施の形態5を示すブロック構成図である。
図59において、前述(図29、図55参照)と同様のものについては、同一符号が付されている。
この場合、ハンドル角/距離変化率測定器26と加速度/ハンドル角変化率演算器42Aとの間には、ハンドル角/距離変化率比較器29が挿入され、ハンドル角/距離変化率比較器29の出力側には、加速度/距離変化率比較判定器38が設けられている。
ハンドル角/距離変化率比較器29は、通常はハンドル角/距離変化率dθ/dLを加速度/ハンドル角変化率演算器42Aに入力し、加速度/ハンドル角変化率演算器42Aの演算(除算)処理を有効にする。
一方、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合には、ハンドル角/距離変化率比較器29は、加速度/ハンドル角変化率演算器42Aによる除算処理を禁止して、加速度/ハンドル角変化率演算器42Aを無効化するとともに、上記比較結果(dθ/dL<下限許容値)を加速度/距離変化率比較判定器38に入力して、加速度/距離変化率比較判定器38を有効化する。
ハンドル角/距離変化率比較器29は、ハンドル角/距離変化率dθ/dLに対する下限許容値を車両および車速vに応じて設定する下限値設定手段と、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さい場合に加速度/ハンドル角変化率演算器42Aによる除算処理を禁止する除算禁止手段とを備えている。
加速度/距離変化率比較判定器38は、加速度/距離変化率dGy/dLに対する所定変化率を車両に応じて設定する所定変化率設定手段と、加速度/距離変化率dGy/dLと所定変化率とを比較する比較手段とを備えている。加速度/距離変化率比較判定器38は、車両挙動安定性判定器5Gの機能の一部に含まれてもよい。
ハンドル角/距離変化率比較器29により、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値よりも小さいと判定された場合には、加速度/ハンドル角変化率演算器42Aおよび車両挙動安定性判定器5Gに代えて、加速度/距離変化率比較判定器38が有効化される。このとき、加速度/距離変化率比較判定器38は、加速度/距離変化率dGy/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定であることを判定する。
一般に、車両のハンドル角/距離変化率dθ/dLの絶対値が下限許容値未満であって、且つ、加速度/距離変化率dGy/dLの絶対値が所定変化率未満であれば、車両は横方向にほとんど運動しておらず、安定状態と見なすことができる。
一方、ハンドル角/距離変化率dθ/dLの絶対値が下限許容値未満であっても、加速度/距離変化率dGy/dLの絶対値が所定変化率以上を示す場合には、車両挙動の不安定状態を検出することができる。
また、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値以上であっても、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲内を示す場合には、安定状態と見なすことができる。しかし、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外であれば、不安定状態であると判定される。
図59において、ハンドル角/距離変化率測定器26は、ハンドル角/距離変化率dθ/dLを測定し、加速度/距離変化率測定器36は、加速度/距離変化率dGy/dLを測定する。
ハンドル角/距離変化率比較器29は、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値以上の場合には、その比較結果を加速度/ハンドル角変化率演算器42Aに出力し、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値未満の場合には、その比較結果を加速度/距離変化率比較判定器38に出力する。
加速度/ハンドル角変化率演算器42Aは、前述の式(17)のように、加速度/距離変化率dGy/dLをハンドル角/距離変化率dθ/dLで除算して、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを演算する。
一方、加速度/距離変化率比較判定器38は、加速度/距離変化率dGy/dLが所定変化率以上を示す場合に、車両挙動が不安定状態であると判定する。
次に、図60のフローチャートを参照しながら、図59に示したこの発明の実施の形態5による車両状態判定動作について説明する。
図60において、ステップS90、S34R、S16およびS17は、前述(図30、図56参照)と同様の処理であり、ステップS71U〜S75Uは、図30内のステップS71G〜S75Gに対応している。
まず、車速vを測定してメモリに記憶し(ステップS90)、ハンドル角/距離変化率dθ/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶し(ステップS71U)、加速度/距離変化率dGy/dLを測定して、その絶対値をメモリに記憶する(ステップS72U)。
次に、ハンドル角/距離変化率dθ/dLの絶対値が下限許容値未満か否かを判定し(ステップS73U)、|dθ/dL|<下限許容値(すなわち、YES)と判定されれば、加速度/距離変化率比較判定器38を有効化して、加速度/距離変化率dGy/dLの絶対値が所定変化率以上か否かを判定する(ステップS74U)。
ステップS74Uにおいて、|dGy/dL|≧所定変化率(すなわち、YES)と判定されれば、車両挙動不安定状態であると判定し(ステップS16)、|dGy/dL|<所定変化率(すなわち、NO)と判定されれば、安定状態であると判定して(ステップS17)、図60の処理ルーチンを終了する。
一方、ステップS73Uにおいて、|dθ/dL|≧下限許容値(すなわち、NO)と判定されれば、加速度/ハンドル角変化率演算器42Aを有効化して、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθを演算し(ステップS75U)、車両挙動安定性判定器5Gにより、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外(前述の式(15)参照)である否かを判定する(ステップS34R)。
以下、加速度/ハンドル角変化率dGy/dθが所定範囲外であるか否かに応じて、車両挙動不安定状態(ステップS16)、または、車両挙動安定状態(ステップS17)を判定する。
このように、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが下限許容値未満の場合には、加速度/ハンドル角変化率演算器42Aによる除算処理を禁止して、加速度/距離変化率dGy/dLのみを用いて車両状態を判定する。
これにより、ハンドル角/距離変化率dθ/dLが小さい場合であっても、加速度/ハンドル角変化率演算器42A内の除算処理によるオーバーフローの発生を防止するとともに、車両の不安定状態を検出することができる。
なお、上記実施の形態1〜5では、電動パワーステアリング装置について考慮しなかったが、電動パワーステアリング装置が装着されている車両に適用してもよい。
図61は上記実施の形態1〜5のアライニングトルク測定手段を電動パワーステアリング装置に適用したこの発明の参考例24を示すブロック構成図である。
図61において、マイコンを含むECU100は、前述の車両状態検出装置を構成するとともに、電動パワーステアリング装置の制御装置を構成している。
電動パワーステアリング装置のモータ101は、車輪102を操舵するためのステアリング軸103に接続されており、ECU100からの印加電圧Vsにより駆動されてアシストトルクTasを発生する。
モータ101に供給される電圧Vseおよび電流Iseは、それぞれ検出信号としてECU100にフィードバックされる。
ステアリング軸103には、操舵トルクThdを検出するトルクセンサ104が設けられており、トルクセンサ104の検出信号Tseは、ECU100にフィードバックされる。
運転者により操作されるハンドル105は、ステアリング軸103に接続されている。
ハンドル105には、ハンドル操作角θhdを検出するハンドル操作角センサ106が設けられており、ハンドル操作角センサ106の検出信号θseは、ECU100に入力されている。
車輪102には、路面からの反力としてアライニングトルクTaが印加され、ステアリング軸103には、摩擦トルクTfrを含む反力トルクTtrが印加される。
周知のように、電動パワーステアリング装置の主な機能は、運転者がハンドル105を操作したときのトルクThdをトルクセンサ104で測定し、トルク検出信号Tseに応じてアシストトルクTasを発生させることにある。
また、より良い操舵フィーリングや操縦安定性を実現するために、ハンドル操作角θhdを検出するセンサ106を設けるとともに、モータ101の回転角度または角速度(さらに時間微分して角加速度を得る場合もあり)を測定するセンサ(図示せず)を設ける場合もある。
また、ECU100は、モータ101に流れる電流Iseと、モータ101の端子間に印加される電圧Vseとを検出信号として取り込む。
力学的には、操舵トルクThdとアシストトルクTasとの和が、ステアリング軸103の反力トルクTtrに抗して、ステアリング軸103を回転させることになる。
また、ハンドル105を回転させるときには、モータ101の慣性項(角速度ωの微分項)も作用するので、結局、各トルクの関係は、以下の式(18)で表われる。
Ttr=Thd+Tas−J・dω/dt ・・・(18)
また、モータ101によるアシストトルクTasに関しては、以下の式(19)の関係が成立する。
Tas=Gg・Kt・Imtr ・・・(19)
なお、式(19)において、Ggはモータ101のギヤ比に対応する定数、Ktは比例定数、Imtrはモータ電流により発生するトルクである。
また、ステアリング軸103の反力トルクTtrは、アライニングトルクTaと、ステアリング機構内の摩擦トルクTfrとの和で表わされ、以下の式(20)が成立する。
Ttran=Ta+Tfric ・・・(20)
さらに、ローパスフィルタを用いることにより、摩擦トルクTfrの影響を除去してアライニングトルクTaを推定する手法も、たとえば特開2001−122146号公報に示されている。
このように、電動パワーステアリング装置を適用した場合においても、車両が路面から受けるアライニングトルクTaの測定が可能になり、アライニングトルクTaを用いた車両挙動安定性判定が可能になる。
以上のように、この発明によれば、車両の不安定状態または不安定状態の予兆を検出する車両状態検出装置において、車両の横滑り角またはハンドル操作角に対応した第1のパラメータの実測値を検出する第1の検出手段と、車両が受けるアライニングトルクまたは横方向加速度に対応した第2のパラメータの実測値を検出する第2の検出手段と、第1のパラメータに対する第2のパラメータの相対関係に関連した第3のパラメータを演算する演算手段と、第3のパラメータに対する比較基準値をあらかじめ設定する基準値設定手段と、第3のパラメータが比較基準値から逸脱した場合に、車両の挙動が不安定であることを判定する車両挙動安定性判定手段と、車両の走行速度を車速として検出する車速検出手段とを備え、第1の検出手段は、第1のパラメータの実測値として車両の実ハンドル操作角を検出し、第2の検出手段は、第2のパラメータの実測値として、車両が受ける実横方向加速度を検出し、演算手段は、実ハンドル操作角に対する実横方向加速度の変化率を、第3のパラメータとなる加速度/ハンドル角変化率として演算し、基準値設定手段は、比較基準値として、加速度/ハンドル角変化率に対する所定範囲を車両に応じて設定し、車両挙動安定性判定手段は、加速度/ハンドル角変化率が所定範囲から逸脱した場合に、車両の挙動が不安定であることを判定するようにしたので、タイヤのクリップ力が低下した場合でも、車両挙動の不安定状態またはその予兆を正確に検出することのできる車両状態検出装置が得られる効果がある。
1 横滑り角測定器、2、2B 規範アライニングトルク演算器、3 アライニングトルク測定器、4、4B アライニングトルク偏差演算器、5、5A〜5G 車両挙動安定性判定器、6 トルク/滑り角変化率測定器、7、23、33、41 演算器、8 滑り角/時間変化率測定器、8A 滑り角/時間変化率演算器、9 トルク/時間変化率測定器、10、10A トルク/滑り角変化率演算器、11 滑り角/距離変化率測定器、12 トルク/距離変化率測定器、13 横方向加速度測定器、14 ヨーレート測定器、15 車速測定器、17 滑り角/時間変化率比較器、18 トルク/時間変化率比較判定器、19 滑り角/距離変化率比較器、20 ハンドル操作角測定器、21 トルク/距離変化率比較判定器、22 トルク/ハンドル角変化率測定器、24 ハンドル角/時間変化率測定器、25、25A トルク/ハンドル角変化率演算器、26 ハンドル角/距離変化率測定器、27 ハンドル角/時間変化率比較器、29 ハンドル角/距離変化率比較器、30、30F 規範横方向加速度演算器、31、31F 横方向加速度偏差演算器、32 加速度/滑り角変化率測定器、34 加速度/時間変化率測定器、35、35A 加速度/滑り角変化率演算器、36 加速度/距離変化率測定器、37 加速度/時間変化率比較判定器、38 加速度/距離変化率比較判定器、40 加速度/ハンドル角変化率測定器、42、42A 加速度/ハンドル角変化率演算器、100 ECU、101 モータ、102 車輪、103 ステアリング軸、104 トルクセンサ、105 ハンドル、106 ハンドル操作角センサ、β 横滑り角(実横滑り角)、θ ハンドル操作角(実ハンドル操作角)、Ta アライニングトルク(実アライニングトルク)、To、To’ 規範アライニングトルク、ΔT、ΔT’ アライニングトルク偏差(トルク偏差)、Gy 横方向加速度、Go、Go’ 規範横方向加速度、ΔG、ΔG’ 加速度偏差、γ ヨーレート、v 車速(実車速)、α1、α1’、α3、α3’ 所定偏差量、α2U〜α2L、α2U’〜α2L’、α4U〜α4L、α4U’〜α4L’ 所定範囲、dTa/dβ トルク/滑り角変化率、dTa/dt トルク/時間変化率、dTa/dL トルク/距離変化率、dTa/dθ トルク/ハンドル角変化率、dβ/dt 滑り角/時間変化率、dβ/dL 滑り角/距離変化率、dGy/dβ 加速度/滑り角変化率、dGy/dt 加速度/時間変化率、dGy/dL 加速度/距離変化率、dGy/dθ 加速度/ハンドル角変化率、dθ/dt ハンドル角/時間変化率、dθ/dL ハンドル角/距離変化率。