JP5328306B2 - 取鍋精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬方法に関するものである。
従来より、転炉から出鋼した溶鋼は、取鍋によって二次精錬装置へと搬送されて、二次精錬装置にて二次精錬(取鍋精錬)を行うのが一般的である。この取鍋精錬においては、溶鋼を攪拌すると共に、溶鋼の加熱や冷却を行いながら精錬処理を行うが、溶鋼搬出時(精錬処理後)に溶鋼温度が目標温度となるように温度調整を行っている。
特許文献1の溶鋼温度予測方法においては、溶鋼処理のアーク加熱処理前に、取鍋内の溶鋼の温度測定を行い、少なくとも前記取鍋内の溶鋼の温度測定時からの経過時間と、アーク電力量とを含む基準量に、少なくとも前記取鍋の使用回数を含む補正量を乗じた式を含むモデル式を用いて、該取鍋内の時間経過に伴う溶鋼の温度変化を予測し、溶鋼の温度調整を行っている。
さて、取鍋精錬の他に、溶鋼温度を測定したり溶鋼温度を予測して、溶鋼温度の管理を行うものとしては、特許文献2及び特許文献3に示す技術がある。
特許文献2の転炉吹止温度設定方法では、取鍋から二次精錬間の鍋履歴による温度補正を各工程の処理及び滞留時間を考慮した予め設定された連続的温度補正量曲線を用いて、直近の時間処理による補正要因を加えた温度補正を行っている。
特許文献3の純酸素上吹転炉の吹錬制御方法では、吹錬中の炭素濃度の補正を行うにあたって溶鋼温度を補正式により補正を行っている。
特開2007−186734号公報 特開昭54−135610号公報 特開平8−120316号公報
特許文献1の技術では、溶鋼温度の測定を行った上で溶鋼の温度変化を予測しているものの、測定した溶鋼温度は必ずしも溶鋼全体の温度を代表した値となっているとは限らないため、溶鋼の温度を厳密に管理するといったものではなく、実態的な溶鋼温度と測定した測定温度とには隔たりがある可能性があった。特に、局所的に熱を加えるような場合は、測定した溶鋼温度と溶鋼全体の温度とは大きな差があり、この測定温度(局所的に加熱や冷却した場合に測定した溶鋼温度)を用いて温度調整を行うには非常に難しいのが実情であった。
ここで、特許文献2及び特許文献3は、溶鋼温度の補正を行う技術であるが、特許文献2や特許文献3の技術は、転炉吹錬における溶鋼温度の補正であって、本発明の取鍋精錬とは精錬条件が全く異なり、その技術を適用することができないのが実情である。
そこで、本発明は、溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬において、特に、溶鋼に対して加熱や冷却を行った際に、正確且つ確実に溶鋼温度の調整を行うことができる取鍋精錬方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明は、精錬処理中の溶鋼温度を計測し、この計測値を用いて溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬方法において、前記精錬処理中に加熱及び/又は冷却を行った際での溶鋼温度分布を求めて、この溶鋼温度分布を基に溶鋼温度の代表温度の時間変化曲線を求め、前記計測値と時間変化曲線とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1に基づき温度調整量ΔTadjを求めて前記溶鋼の温度調整を行う点にある。
前記代表温度の時間変化曲線を求めるに際しては、少なくとも、溶鋼が加熱及び/又は冷却された入熱部と、入熱部の溶鋼と加熱前の溶鋼が混合する混合部と、混合した溶鋼が拡散する拡散部との3個の要素に分けて、各要素における非定常の伝熱計算を行うことが好ましい。
前記計測値と前記温度調整量ΔTadjとを用いて前記溶鋼温度の時間変化曲線を再計算することが好ましい。
本発明によれば、溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬において、特に、溶鋼に対して加熱や冷却を行った際に、正確且つ確実に溶鋼温度の調整を行うことができる。
本発明の取鍋精錬方法について説明する。
図1は、本発明の取鍋精錬方法を行う取鍋精錬装置を示している。
取鍋精錬装置1は、例えば、転炉から出鋼した溶鋼2に対して二次精錬を行う真空脱ガス式のRH装置であって、溶鋼2が装入された取鍋3と、真空状態となって溶鋼2内の脱ガスを行う脱ガス槽4とを有している。取鍋3は、転炉2の出鋼時に用いられた取鍋3と同一のものであって、脱ガス槽4の直下に配置されるようになっている。
脱ガス槽4の下部には取鍋3内の溶鋼2に浸漬させる2本の浸漬管5,5が設けられており、この浸漬管5,5の一方にはArガス等の不活性ガスを吹き込む吹き込み口6が設けられている。脱ガス槽4の上部には、当該脱ガス槽4のガスを排気する排気口7が設けられている。
このような取鍋精錬装置1によれば、浸漬管5,5を取鍋3内の溶鋼2に浸漬し、吹き込み口6から不活性ガスを吹き込むと共に、排気口7から脱ガス槽4内のガスを排気して脱ガス槽4内を略真空状態して溶鋼2を脱ガス槽4と取鍋3との間で循環させることで、溶鋼2内に存在する水素等のガス成分を除去することができる。
以下、本発明の取鍋精錬方法について詳しく説明する。
取鍋精錬を行うにあたっては、溶鋼2の成分調整を行うことは重要であるが、取鍋精錬後(取鍋精錬終了後)の溶鋼温度が目標値にすることも重要である。
図2は、溶鋼温度の変化を時間毎に示したものである。
詳しくは、図2に示すように、取鍋精錬における溶鋼温度を見てみると、この溶鋼温度は、取鍋3内の耐火物への放熱や大気への放熱により徐々に低下する。また、溶鋼温度は、溶鋼2の成分調整等を行うために行われる合金等の投入、さらには、攪拌をするために行われるガスの吹き込みによっても変化する。
このように、精錬中の溶鋼温度は、様々な要因によって変化するため、取鍋精錬では、精錬中における溶鋼2の温度変化を溶鋼温度の測定により予測しながら取鍋精錬後の溶鋼温度が可及的に目標値になるように溶鋼温度の調整を行うことが好ましい。
溶鋼温度の調整は、Alなどの昇温材8の投入やランス9によって酸素を吹き込むことにより溶鋼温度を上昇させたり、スクラップ、合金等の冷鉄源の投入やArガスによる強攪拌により温度を降下させることにより行っている。
図2(a)に示す溶鋼温度の変化は、従来の方法で溶鋼温度の調整を行った従来例であり、図2(b)に示す溶鋼温度の変化は、本発明の溶鋼温度の調整を行った実施例である。なお、図2(a)及び図2(b)において、点線は溶鋼温度を測定した測定点における溶鋼温度(例えば、取鍋3内の上側に設けた計測装置10で測定した温度)であり、実線は溶鋼2全体の溶鋼温度(例えば、溶鋼2全体の温度を示す代表温度)である。
ここで、溶鋼2を加熱開始の直後又は加熱終了直後に溶鋼2の溶鋼温度を測定して、その溶鋼温度を基準として、溶鋼2の温度調整を行った場合を考える。
図2(a)に示すように、加熱開始の直後に溶鋼2の溶鋼温度を測定した場合、従来の方法では、加熱開始直後の測定点P1における計測値A(第1計測温度Aということがある)を基準として、その測定点P1における第1計測温度Aと、加熱及び攪拌終了後であって搬出時の搬出時測定点P2における計測値B(第2計測温度B)との差(A−B)を、溶鋼処理中の温度降下量(温度調整量ΔTadj)として、溶鋼温度を調整していた。
また、図2(a)に示すように、加熱終了の直後に溶鋼2の溶鋼温度を測定した場合、従来の方法では、加熱終了直後の測定点P3における計測値C(第3計測温度Cということがある)を基準として、その測定点P3における第1計測温度Cと、第2計測温度Bとの差(C−B)を、溶鋼処理中の温度降下量(温度調整量ΔTadj)として、溶鋼温度を調整していた。
ところが、加熱開始直後や加熱終了後に、溶鋼温度の調整を行うにあたって用いた第1計測温度A及び第3計測温度Cを見てみると、その計測温度は、実体的な溶鋼2全体の温度である代表温度と比較すると差がある。
そのため、従来例では、溶鋼温度の調整にあたって、加熱開始直後の第1計測温度Aを基準にしてしまうと、その第1計測温度Aが実際の溶鋼2の代表温度よりも低いことから、温度調整時の昇温量を高く見積もり(温度降下量を低く見積もり)、結果として、温度調整後の溶鋼温度(溶鋼2の全体の温度)が搬出時の目標温度よりも大幅に高くなる場合がある。
また、従来例では、加熱終了直後の第3計測温度Cを基準にしてしまうと、この第3計測温度Cが実際の溶鋼2の代表温度よりも高いことから、温度調整時の昇温量を低く見積もり(温度降下量を高く見積もり)、結果として、温度調整後の溶鋼温度(溶鋼2の全体の温度)が搬出時の目標温度よりも大幅に低くなる場合がある。
このように、従来では、第1計測温度A及び第3計測温度Cを基準として溶鋼温度の調整を行うと、温度調整後の溶鋼温度が溶鋼2の全体温度に比べて低くなったり、高くなったりすることがあった。
そこで、第1計測温度A及び第3計測温度Cと、溶鋼2の代表温度との差を検証するべく、発明者は、加熱中におけるRH装置1における各箇所での溶鋼温度の変化を実験等により調べた。
図3は、溶鋼を局所的に加熱したときのRH装置1における各箇所での溶鋼温度変化を示したものである。
図3に示すように、加熱を行っている部分「図4の入熱部15(上部層)」の温度は、加熱開始直後に急激に上昇し、加熱終了直後には急激に下降する。一方で、取鍋3の中央部分「図4の拡散部17」及び溶鋼温度計測点Gは、加熱開始直後から徐々に上昇し、加熱終了直後から徐々に下降する。取鍋3の底部11の隅部(死水部17)の温度は、加熱終了後からかなり遅れて徐々に上昇する。
このように、溶鋼2を局所的に加熱する場合において、RH装置1の各箇所における溶鋼温度は異なることから、これらの溶鋼温度のバラツキが、第1計測温度A及び第3計測温度Cと溶鋼2の代表温度との差として現れているものと考えられる。
そこで、本発明においては、精錬処理中に加熱を行った際での溶鋼温度分布を演算して、この溶鋼温度分布から溶鋼温度の代表温度の時間変化曲線Tm(t)を求め、計測値と時間変化曲線Tm(t)とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1に基づき温度調整量ΔTadjを求めて溶鋼の温度調整を行うことで、従来の問題を解決している。
本発明における溶鋼2の温度調整の手順を、図2(b)を用いて説明する。
図2(b)に示すように、溶鋼2の温度調整を行うに際し、まず、予め加熱を行った場合での溶鋼2内の溶鋼温度分布を演算しておき、この溶鋼温度分布から溶鋼温度の変化曲線Tm(t)を求めておく。図2に示す変化曲線Tm(t)は、溶鋼温度の代表温度である。この代表温度は、溶鋼全体の平均温度とも言える。
i)加熱開始直後の測定点P1にて溶鋼温度を測定して温度調整を行う場合、この計測値Tms1と、溶鋼温度(代表温度)の変化曲線Tm(t)から求められる計測時点P1での代表温度Ta1との差(ズレ量ΔT1:ΔT1)とを求める。ここで、攪拌終了時点での溶鋼2の目標温度をTmeとすると、測定点P1での温度調整量ΔTadjは、Tms1+ΔT1−Tmeとなる。
ii)加熱開始直後の測定点P3にて溶鋼温度を測定して温度調整を行う場合、この計測値Tms2と、溶鋼温度の変化曲線Tm(t)から求められる計測時点P3での代表温度Ta2との差(ズレ量ΔT1:ΔT2)とを求める。ここで、攪拌終了時点P2での溶鋼2の目標温度をTmeとすると、測定点P1での温度調整量ΔTadjは、Tms2−ΔT2−Tmeとなる。
代表温度の時間変化曲線Tm(t)は、様々な方法により求めることができる。
図3に示したように、溶鋼2を加熱している状況下では、様々な箇所での温度のバラツキがあるため、図4に示すように、RH装置1内で還流する溶鋼の要素を複数に分割(ブロックに分割)して、各要素での熱収支バランスを伝熱計算モデル等により求める(溶鋼温度分布を求める)ことにより時間変化曲線Tm(t)を求める。
図4(a)に示すように、具体的には、溶鋼2の熱収支を考えるとき、溶鋼2を、加熱される入熱部15と、入熱部15の溶鋼2と加熱前の溶鋼2が混合する混合部16と、混合した溶鋼2が拡散する拡散部17と、溶鋼2が滞留する死水部18と、溶鋼2がガスによって加速しながら移動する加速部19との5つの要素に分けて、各要素における非定常の伝熱計算を行う。
詳しくは、入熱部15は、昇温材8を投入する投入位置の下側(Arガスを吹き込む浸漬管5aの上側)や酸素を吹き込むランス9の直下の溶鋼であり、昇温材8やガスの吹き込みにより局所的に熱を与えられる部分である。
混合部16は、入熱部15された溶鋼2が加熱されていない溶鋼2と混合する部分であって、Arガスを吹き込まない他方の浸漬管5b内の溶鋼2であると共に、当該浸漬管5bの直上及び直下の溶鋼2である。
拡散部17は、他方の浸漬管5bから取鍋3内へ吐出(流入)して取鍋3内で還流する大部分の溶鋼2であって、取鍋3の全体に拡散していく部分である。死水部18は、取鍋3内で殆ど移動することなく滞留している部分の溶鋼2であって、取鍋3の底部11の隅部分の溶鋼2である。
加速部19は、Arガスによって溶鋼2が取鍋3側から脱ガス槽4側へと移動する部分の溶鋼(ガスにより加速する部分の溶鋼)であって、吹き込み口6が形成された浸漬管内5aの溶鋼2である。
このように、RH装置1において、還流する溶鋼2を、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19の5つの要素に分けた上で、図4(b)に示すように、各要素同士での熱対流による熱量変化や外部への放熱による熱量変化(溶鋼温度分布)をシミュレーションにより計算して時間変化曲線Tm(t)を求める。
例えば、図4(b)に示すように、入熱部15においては、ランス9からのガスによる入熱や昇温材8からの入熱を考慮すると共に、浸漬管5への吸放熱や大気への吸放熱も考慮する。また、入熱部15においては、混合部16への対流による熱移動や加速部19から対流による熱移動も考慮する。混合部16においては、入熱部15からの対流による熱移動や拡散部17への対流による熱移動も考慮する。また、混合部16においては、浸漬管への吸放熱も考慮する。
拡散部17においては、加速部19への対流による熱移動、死水部18への熱伝導、取鍋3の底部11への吸放熱、側壁20への吸放熱、スラグSへの吸放熱を考慮する。死水部18においては、取鍋3の底部11への吸放熱、側壁20への吸放熱を考慮する。加速部19においては、拡散部17からの対流による熱移動、混合部16への対流による熱移動、入熱部15への熱移動を考慮する。
そして、各要素(入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19)による溶鋼温度分布の熱収支シミュレーションにより代表温度を求める。
ここで、伝熱計算モデルにおけるシミュレーションにおいて、各要素(入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19)に対する加重平均[SUN(I=1,N,TN(I)×VN(I)]を求め、加重平均から溶鋼温度(代表温度)を求めてもよい。なお、伝熱計算モデルは、上述したブロック化したブロックモデルに限らず、他のモデルであってもよい。例えば、各要素(入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19)を、さらに細かく分割して(メッシュ化する)、各メッシュについての伝熱計算を行うことで、時間変化曲線Tm(t)を求めるてもよい。
また、非定常の伝熱計算は、式(1)〜式(8)で表すことができ、これらを用いて時間変化曲線Tm(t)を求めても良い。また、計測値と一度求めた温度調整量ΔTadjΔTadjとを用いて溶鋼温度の時間変化曲線Tm(t)を再計算することが好ましい。
溶鋼量の計算については、表1に示すように、流入出量、流入量、流出量に分けて計算してもよい。表1でのQは、Arガスの吹き込みによる溶鋼の還流量(m3/s)、αは分配係数(溶鋼が分流するる割合)である。詳しくは、分配係数αは、加速部19の溶鋼が入熱部15と混合部16に分けられる割合である。よって、入熱部15の溶鋼は、α×Q(還流量)で表され、混合部16の溶鋼は、(1−α)×Qで表される(0≦α≦1)。加速部19からのすべての溶鋼が入熱部15に流入する場合は、α=1となり、加熱効率が最も良い。加速部19からのすべての溶鋼が混合部16に流入する場合は、α=0となる。
Figure 0005328306
Figure 0005328306
上記の実施形態では、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19の5つの要素に分けて上で各要素における溶鋼温度分布を伝熱計算により演算していたが、少なくとも熱の移動等が頻繁にある部分(入熱部15、混合部16、拡散部17)の3個の要素に分けて各要素における非定常の伝熱計算を行うことが好ましい。このようにすれば、代表温度の溶鋼温度分布を簡単に求めることができる。
図5は、各要素に分けて伝熱計算を行った結果である。
図5(a)は、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18の攪拌開始からの温度変化を示していると共に、攪拌開始後の代表温度の時間変化曲線Tm(t)を求めた結果である。また、図5(b)は、測定位置(取鍋3の上側、図1参照)にて所定時間毎に溶鋼温度の測定を行い、この測定値と代表温度との差(ズレ量ΔT1)をまとめたものである。
これから分かるように、加熱開始直後と加熱終了直後では、測定値と代表温度との差が大凡2〜5℃となっている。
本発明のように、精錬処理中に加熱を行ったときに溶鋼温度を計測するに際し、加熱を行ったときの溶鋼温度分布を演算して溶鋼温度の時間変化曲線Tm(t)を求めた上で、計測時における計測値と時間変化曲線Tm(t)から求めた計測時での代表温度とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1を加味して温度調整量ΔTadjを求めている。
これにより、ズレ量ΔT1を加味して溶鋼2の温度調整を行うため、正確な温度調整を実現することができる。本発明によれば、溶鋼2を加熱するといった溶鋼が不均一になりやすい状態であっても、温度調整量ΔTadjを補正することによって、正確に温度調整を行うことができるようになった。
また、処理終了時に目標温度となる温度調整パターンでの溶鋼処理中の時間変化の予測値「時間変化曲線Tm(t)」を取鍋3内の溶鋼温度が不均一も考慮して求めて、所定時間での溶鋼温度を温度を表示し、さらに、実際に計測された温度との差異を計算して表示することにより、処理途中で処理終了時の溶鋼温度が目標の管理範囲から大きく外れてしまう予想ができれば、温度調整度合いを変えることによりスケジュールの通りに溶鋼の温度調整を行うことができる。
また、溶鋼温度や成分の再調整のために操業の変化があった場合においても、最新の操業データ(計測値)で温度変化曲線を再計算することで、目標温度から外れているか判断することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
上記実施形態では、RH装置において加熱を行う際での取鍋精錬方法を示したが、他のLF精錬装置やCAS精錬装置等の取鍋精錬装置1にて取鍋精錬を行うものであってもよい。図6(a)に示すように、LF装置1においても、溶鋼を同様に、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19の要素に分けた上で伝熱計算により時間変化曲線Tm(t)を求める。
LF装置の場合、入熱部15はアーク電極21の直下の溶鋼2である。混合部16は、吹き込み用のランス22とは反対側となる領域(取鍋3の中心から左側の領域)であって、入熱部15及びスラグSの下側の溶鋼2である。拡散部17は、混合部16から下側の溶鋼2の大部分である。死水部18は、取鍋3の底部11の隅(吹き込み用のランス22と対向する側の隅)の溶鋼2である。加速部19は、吹き込みランス22を挿入した状態で吹き込み口22aから上下に亘る溶鋼2である。
LF装置における取鍋精錬においても、図6(b)に示すように、各要素同士での熱対流による熱量変化や外部への放熱による熱量変化(溶鋼温度分布)をシミュレーションにより計算して時間変化曲線Tm(t)を求める。
例えば、図6(b)に示すように、入熱部15においては、スラグSからの入熱や混合部16への対流による熱移動も考慮すると共に、加速部19からの熱移動も考慮する。混合部16においては、入熱部15からの対流による熱移動や拡散部17への対流による熱移動も考慮する。また、混合部16においては、耐火物への吸放熱やスラグSへの吸放熱も考慮する。
拡散部17においては、加速部19への対流による熱移動、死水部18への熱伝導、側壁への吸放熱を考慮する。死水部18においては、取鍋3の底部11への吸放熱、側壁20への吸放熱を考慮する。加速部19においては、拡散部17からの対流による熱移動、混合部16への対流による熱移動、入熱部15への熱移動を考慮する。
また、図7に示すように、CAS装置においても、溶鋼を同様に、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19の要素に分けた上で伝熱計算により時間変化曲線Tm(t)を求める。
CAS装置の場合、入熱部15は吹き込み用のランス23の直下の溶鋼2である。混合部16は、入熱部15の両側の溶鋼である。加速部19は、取鍋3の底部11に設けた吹き込み口24から上側の溶鋼2である。拡散部17は、加速部19の両側の溶鋼2である。死水部18は、取鍋3の底部11の隅の溶鋼2である。
上記実施形態によれば、取鍋精錬装置1での取鍋精錬において、加熱を行ったときの溶鋼温度分布を演算して溶鋼温度の時間変化曲線Tm(t)を求めているが、冷却による溶鋼温度の変化も加熱と同様に考えることができるため、冷却を行ったときに溶鋼温度の時間変化曲線Tm(t)を求めて、計測時における計測値と時間変化曲線Tm(t)から求めた計測時での代表温度とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1に基づき温度調整量を求めて溶鋼の温度調整を行ってもよい。また、加熱と冷却とを組み合わせて、加熱及び冷却を行う際に時間変化曲線Tm(t)を求めて、上述したように温度調整を行ってもよい。
本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の取鍋精錬を行う二次精錬装置の全体図である。 (a)従来の温度調整方法における溶鋼温度の変化図であり、(b)本発明の温度調整方法における溶鋼温度の変化図である。 溶鋼を局所的に加熱した際の各部位における溶鋼温度の変化図である。 (a)RH装置内で還流する溶鋼を複数要素に分けたブロック図であり、(b)各要素での熱収支を示す図である。 (a)RH装置の溶鋼における各要素及び代表温度での時間変化曲線Tm(t)を示す図であり、(b)測定値と代表温度との差(ズレ量ΔT1)を示した図である。 (a)LF装置内の溶鋼を複数要素に分けたブロック図であり、(b)各要素での熱収支を示す図である。 CAS装置内の溶鋼を複数要素に分けたブロック図である。
符号の説明
1 取鍋精錬装置
2 溶鋼
3 取鍋
4 脱ガス槽
5 浸漬管
6 吹き込み口
7 排気口
8 昇温材
9 ランス
15 入熱部
16 混合部
17 拡散部
18 死水部
19 加速部

Claims (3)

  1. 精錬処理中の溶鋼温度を計測し、この計測値を用いて溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬方法において、
    前記精錬処理中に加熱及び/又は冷却を行った際での溶鋼温度分布を求めて、この溶鋼温度分布を基に溶鋼温度の代表温度の時間変化曲線を求め、前記計測値と時間変化曲線とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1に基づき温度調整量ΔTadjを求めて前記溶鋼の温度調整を行うことを特徴とする取鍋精錬方法。
  2. 前記代表温度の時間変化曲線を求めるに際しては、少なくとも、溶鋼が加熱及び/又は冷却された入熱部と、入熱部の溶鋼と加熱前の溶鋼が混合する混合部と、混合した溶鋼が拡散する拡散部との3個の要素に分けて、各要素における非定常の伝熱計算を行うことで求めることを特徴とする請求項1に記載の取鍋精錬方法。
  3. 前記計測値と前記温度調整量ΔTadjとを用いて前記溶鋼温度の時間変化曲線を再計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の取鍋精錬方法。
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