JP5328306B2 - 取鍋精錬方法 - Google Patents
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Description
特許文献1の溶鋼温度予測方法においては、溶鋼処理のアーク加熱処理前に、取鍋内の溶鋼の温度測定を行い、少なくとも前記取鍋内の溶鋼の温度測定時からの経過時間と、アーク電力量とを含む基準量に、少なくとも前記取鍋の使用回数を含む補正量を乗じた式を含むモデル式を用いて、該取鍋内の時間経過に伴う溶鋼の温度変化を予測し、溶鋼の温度調整を行っている。
特許文献2の転炉吹止温度設定方法では、取鍋から二次精錬間の鍋履歴による温度補正を各工程の処理及び滞留時間を考慮した予め設定された連続的温度補正量曲線を用いて、直近の時間処理による補正要因を加えた温度補正を行っている。
特許文献3の純酸素上吹転炉の吹錬制御方法では、吹錬中の炭素濃度の補正を行うにあたって溶鋼温度を補正式により補正を行っている。
そこで、本発明は、溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬において、特に、溶鋼に対して加熱や冷却を行った際に、正確且つ確実に溶鋼温度の調整を行うことができる取鍋精錬方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、精錬処理中の溶鋼温度を計測し、この計測値を用いて溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬方法において、前記精錬処理中に加熱及び/又は冷却を行った際での溶鋼温度分布を求めて、この溶鋼温度分布を基に溶鋼温度の代表温度の時間変化曲線を求め、前記計測値と時間変化曲線とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1に基づき温度調整量ΔTadjを求めて前記溶鋼の温度調整を行う点にある。
前記計測値と前記温度調整量ΔTadjとを用いて前記溶鋼温度の時間変化曲線を再計算することが好ましい。
図1は、本発明の取鍋精錬方法を行う取鍋精錬装置を示している。
取鍋精錬装置1は、例えば、転炉から出鋼した溶鋼2に対して二次精錬を行う真空脱ガス式のRH装置であって、溶鋼2が装入された取鍋3と、真空状態となって溶鋼2内の脱ガスを行う脱ガス槽4とを有している。取鍋3は、転炉2の出鋼時に用いられた取鍋3と同一のものであって、脱ガス槽4の直下に配置されるようになっている。
脱ガス槽4の下部には取鍋3内の溶鋼2に浸漬させる2本の浸漬管5,5が設けられており、この浸漬管5,5の一方にはArガス等の不活性ガスを吹き込む吹き込み口6が設けられている。脱ガス槽4の上部には、当該脱ガス槽4のガスを排気する排気口7が設けられている。
以下、本発明の取鍋精錬方法について詳しく説明する。
取鍋精錬を行うにあたっては、溶鋼2の成分調整を行うことは重要であるが、取鍋精錬後(取鍋精錬終了後)の溶鋼温度が目標値にすることも重要である。
詳しくは、図2に示すように、取鍋精錬における溶鋼温度を見てみると、この溶鋼温度は、取鍋3内の耐火物への放熱や大気への放熱により徐々に低下する。また、溶鋼温度は、溶鋼2の成分調整等を行うために行われる合金等の投入、さらには、攪拌をするために行われるガスの吹き込みによっても変化する。
このように、精錬中の溶鋼温度は、様々な要因によって変化するため、取鍋精錬では、精錬中における溶鋼2の温度変化を溶鋼温度の測定により予測しながら取鍋精錬後の溶鋼温度が可及的に目標値になるように溶鋼温度の調整を行うことが好ましい。
図2(a)に示す溶鋼温度の変化は、従来の方法で溶鋼温度の調整を行った従来例であり、図2(b)に示す溶鋼温度の変化は、本発明の溶鋼温度の調整を行った実施例である。なお、図2(a)及び図2(b)において、点線は溶鋼温度を測定した測定点における溶鋼温度(例えば、取鍋3内の上側に設けた計測装置10で測定した温度)であり、実線は溶鋼2全体の溶鋼温度(例えば、溶鋼2全体の温度を示す代表温度)である。
図2(a)に示すように、加熱開始の直後に溶鋼2の溶鋼温度を測定した場合、従来の方法では、加熱開始直後の測定点P1における計測値A(第1計測温度Aということがある)を基準として、その測定点P1における第1計測温度Aと、加熱及び攪拌終了後であって搬出時の搬出時測定点P2における計測値B(第2計測温度B)との差(A−B)を、溶鋼処理中の温度降下量(温度調整量ΔTadj)として、溶鋼温度を調整していた。
ところが、加熱開始直後や加熱終了後に、溶鋼温度の調整を行うにあたって用いた第1計測温度A及び第3計測温度Cを見てみると、その計測温度は、実体的な溶鋼2全体の温度である代表温度と比較すると差がある。
また、従来例では、加熱終了直後の第3計測温度Cを基準にしてしまうと、この第3計測温度Cが実際の溶鋼2の代表温度よりも高いことから、温度調整時の昇温量を低く見積もり(温度降下量を高く見積もり)、結果として、温度調整後の溶鋼温度(溶鋼2の全体の温度)が搬出時の目標温度よりも大幅に低くなる場合がある。
そこで、第1計測温度A及び第3計測温度Cと、溶鋼2の代表温度との差を検証するべく、発明者は、加熱中におけるRH装置1における各箇所での溶鋼温度の変化を実験等により調べた。
図3は、溶鋼を局所的に加熱したときのRH装置1における各箇所での溶鋼温度変化を示したものである。
このように、溶鋼2を局所的に加熱する場合において、RH装置1の各箇所における溶鋼温度は異なることから、これらの溶鋼温度のバラツキが、第1計測温度A及び第3計測温度Cと溶鋼2の代表温度との差として現れているものと考えられる。
本発明における溶鋼2の温度調整の手順を、図2(b)を用いて説明する。
図2(b)に示すように、溶鋼2の温度調整を行うに際し、まず、予め加熱を行った場合での溶鋼2内の溶鋼温度分布を演算しておき、この溶鋼温度分布から溶鋼温度の変化曲線Tm(t)を求めておく。図2に示す変化曲線Tm(t)は、溶鋼温度の代表温度である。この代表温度は、溶鋼全体の平均温度とも言える。
ii)加熱開始直後の測定点P3にて溶鋼温度を測定して温度調整を行う場合、この計測値Tms2と、溶鋼温度の変化曲線Tm(t)から求められる計測時点P3での代表温度Ta2との差(ズレ量ΔT1:ΔT2)とを求める。ここで、攪拌終了時点P2での溶鋼2の目標温度をTmeとすると、測定点P1での温度調整量ΔTadjは、Tms2−ΔT2−Tmeとなる。
図3に示したように、溶鋼2を加熱している状況下では、様々な箇所での温度のバラツキがあるため、図4に示すように、RH装置1内で還流する溶鋼の要素を複数に分割(ブロックに分割)して、各要素での熱収支バランスを伝熱計算モデル等により求める(溶鋼温度分布を求める)ことにより時間変化曲線Tm(t)を求める。
図4(a)に示すように、具体的には、溶鋼2の熱収支を考えるとき、溶鋼2を、加熱される入熱部15と、入熱部15の溶鋼2と加熱前の溶鋼2が混合する混合部16と、混合した溶鋼2が拡散する拡散部17と、溶鋼2が滞留する死水部18と、溶鋼2がガスによって加速しながら移動する加速部19との5つの要素に分けて、各要素における非定常の伝熱計算を行う。
混合部16は、入熱部15された溶鋼2が加熱されていない溶鋼2と混合する部分であって、Arガスを吹き込まない他方の浸漬管5b内の溶鋼2であると共に、当該浸漬管5bの直上及び直下の溶鋼2である。
拡散部17は、他方の浸漬管5bから取鍋3内へ吐出(流入)して取鍋3内で還流する大部分の溶鋼2であって、取鍋3の全体に拡散していく部分である。死水部18は、取鍋3内で殆ど移動することなく滞留している部分の溶鋼2であって、取鍋3の底部11の隅部分の溶鋼2である。
このように、RH装置1において、還流する溶鋼2を、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19の5つの要素に分けた上で、図4(b)に示すように、各要素同士での熱対流による熱量変化や外部への放熱による熱量変化(溶鋼温度分布)をシミュレーションにより計算して時間変化曲線Tm(t)を求める。
拡散部17においては、加速部19への対流による熱移動、死水部18への熱伝導、取鍋3の底部11への吸放熱、側壁20への吸放熱、スラグSへの吸放熱を考慮する。死水部18においては、取鍋3の底部11への吸放熱、側壁20への吸放熱を考慮する。加速部19においては、拡散部17からの対流による熱移動、混合部16への対流による熱移動、入熱部15への熱移動を考慮する。
ここで、伝熱計算モデルにおけるシミュレーションにおいて、各要素(入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19)に対する加重平均[SUN(I=1,N,TN(I)×VN(I)]を求め、加重平均から溶鋼温度(代表温度)を求めてもよい。なお、伝熱計算モデルは、上述したブロック化したブロックモデルに限らず、他のモデルであってもよい。例えば、各要素(入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19)を、さらに細かく分割して(メッシュ化する)、各メッシュについての伝熱計算を行うことで、時間変化曲線Tm(t)を求めるてもよい。
溶鋼量の計算については、表1に示すように、流入出量、流入量、流出量に分けて計算してもよい。表1でのQは、Arガスの吹き込みによる溶鋼の還流量(m3/s)、αは分配係数(溶鋼が分流するる割合)である。詳しくは、分配係数αは、加速部19の溶鋼が入熱部15と混合部16に分けられる割合である。よって、入熱部15の溶鋼は、α×Q(還流量)で表され、混合部16の溶鋼は、(1−α)×Qで表される(0≦α≦1)。加速部19からのすべての溶鋼が入熱部15に流入する場合は、α=1となり、加熱効率が最も良い。加速部19からのすべての溶鋼が混合部16に流入する場合は、α=0となる。
図5は、各要素に分けて伝熱計算を行った結果である。
図5(a)は、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18の攪拌開始からの温度変化を示していると共に、攪拌開始後の代表温度の時間変化曲線Tm(t)を求めた結果である。また、図5(b)は、測定位置(取鍋3の上側、図1参照)にて所定時間毎に溶鋼温度の測定を行い、この測定値と代表温度との差(ズレ量ΔT1)をまとめたものである。
本発明のように、精錬処理中に加熱を行ったときに溶鋼温度を計測するに際し、加熱を行ったときの溶鋼温度分布を演算して溶鋼温度の時間変化曲線Tm(t)を求めた上で、計測時における計測値と時間変化曲線Tm(t)から求めた計測時での代表温度とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1を加味して温度調整量ΔTadjを求めている。
これにより、ズレ量ΔT1を加味して溶鋼2の温度調整を行うため、正確な温度調整を実現することができる。本発明によれば、溶鋼2を加熱するといった溶鋼が不均一になりやすい状態であっても、温度調整量ΔTadjを補正することによって、正確に温度調整を行うことができるようになった。
また、溶鋼温度や成分の再調整のために操業の変化があった場合においても、最新の操業データ(計測値)で温度変化曲線を再計算することで、目標温度から外れているか判断することができる。
上記実施形態では、RH装置において加熱を行う際での取鍋精錬方法を示したが、他のLF精錬装置やCAS精錬装置等の取鍋精錬装置1にて取鍋精錬を行うものであってもよい。図6(a)に示すように、LF装置1においても、溶鋼を同様に、入熱部15、混合部16、拡散部17、死水部18、加速部19の要素に分けた上で伝熱計算により時間変化曲線Tm(t)を求める。
LF装置における取鍋精錬においても、図6(b)に示すように、各要素同士での熱対流による熱量変化や外部への放熱による熱量変化(溶鋼温度分布)をシミュレーションにより計算して時間変化曲線Tm(t)を求める。
拡散部17においては、加速部19への対流による熱移動、死水部18への熱伝導、側壁への吸放熱を考慮する。死水部18においては、取鍋3の底部11への吸放熱、側壁20への吸放熱を考慮する。加速部19においては、拡散部17からの対流による熱移動、混合部16への対流による熱移動、入熱部15への熱移動を考慮する。
CAS装置の場合、入熱部15は吹き込み用のランス23の直下の溶鋼2である。混合部16は、入熱部15の両側の溶鋼である。加速部19は、取鍋3の底部11に設けた吹き込み口24から上側の溶鋼2である。拡散部17は、加速部19の両側の溶鋼2である。死水部18は、取鍋3の底部11の隅の溶鋼2である。
2 溶鋼
3 取鍋
4 脱ガス槽
5 浸漬管
6 吹き込み口
7 排気口
8 昇温材
9 ランス
15 入熱部
16 混合部
17 拡散部
18 死水部
19 加速部
Claims (3)
- 精錬処理中の溶鋼温度を計測し、この計測値を用いて溶鋼の温度調整すると共に、溶鋼を攪拌しながら精錬を行う取鍋精錬方法において、
前記精錬処理中に加熱及び/又は冷却を行った際での溶鋼温度分布を求めて、この溶鋼温度分布を基に溶鋼温度の代表温度の時間変化曲線を求め、前記計測値と時間変化曲線とのズレ量ΔT1を求め、このズレ量ΔT1に基づき温度調整量ΔTadjを求めて前記溶鋼の温度調整を行うことを特徴とする取鍋精錬方法。 - 前記代表温度の時間変化曲線を求めるに際しては、少なくとも、溶鋼が加熱及び/又は冷却された入熱部と、入熱部の溶鋼と加熱前の溶鋼が混合する混合部と、混合した溶鋼が拡散する拡散部との3個の要素に分けて、各要素における非定常の伝熱計算を行うことで求めることを特徴とする請求項1に記載の取鍋精錬方法。
- 前記計測値と前記温度調整量ΔTadjとを用いて前記溶鋼温度の時間変化曲線を再計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の取鍋精錬方法。
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