従来、階調表現に優れた熱転写印刷装置が実現されている。この種の熱転写印刷装置では、専用印刷用紙と専用インクリボンを組み合わせて印刷が行われる。また、金属等の各種の印刷媒体に印刷が可能な昇華型熱転写印刷装置も実現されている。
この昇華型熱転写印刷装置で使用されるインクリボンと専用印刷用紙の構成と印刷色表現の概略を図12、図13に基づいて説明する。
図12のインクリボン1220は、ロール印刷用紙1200に印刷するためのインクリボンである。インクリボン1220は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の揮発性の染料材とオーバーコート材(OC)の組が、一定ピッチで繰り返し形成されている。オーバーコート材(OC)は、印刷画像を保護するために印刷画像の上に積層して印刷されるものであり、印刷画像が見えるようにその材質は透明となっている。
ロール印刷用紙1200の1枚の画像に対応する1つの印刷区画Eは、インクリボン1220の3色の染料材、1つのオーバーコート材からなる4つの材料の組に対応している。すなわち、印刷時には、インクリボン1220とロール印刷用紙1200との相対的な位置を変化させて、1つの印刷区画Eに対して3色の染料材を順次、正対させていく。この正対状態で正対に係る各色の染料材を1つの印刷区画Eに順次昇華熱転写していくことで、1つの印刷区画Eに各色の染料材を順次積層し、フルカラーの画像を形成する。
なお、各色の染料材、及びオーバーコート材の横幅Liは、1つの印刷区画Eの横幅Leよりも大きく規定されている。また、各色の染料材、及びオーバーコート材の縦幅Wiは、1つの印刷区画Eの縦幅Weよりも大きく規定されている。
次に、図13に基づいて印刷色の表現方法を概説する。印刷用紙1200は、グリップローラ対1253でグリップされた状態でグリップローラ対1253が回転することにより搬送される。インクリボン1220は、供給ボビン1250の回転動作で供給され、巻取りボビン1251により巻き取られる。
図13(B)に示すように、インクリボン1220は、リボンベースフィルム1225に染料材1221が塗布され、印刷用紙1200は、用紙ベースフィルム1202上に染料材1221を受容する受容層1201が積層された構造となっている。
印刷時には、インクリボン1220と印刷用紙1200を重ね合わせた状態で、これらをサーマルヘッド1255とプラテンローラ1252で挟み込んで圧接し、サーマルヘッド1255のヘッド抵抗体を発熱させる。このヘッド抵抗体の発熱により、染料材1221が昇華して印刷用紙1200の受容層1201に受容される形で、昇華熱転写が行われる(符号1203参照)。この際、染料材1221においては、昇華により空洞が形成される(符号1202参照)。
昇華型熱転写印刷装置では、昇華熱転写に係る染料材1221を保護すべく、染料材1221が受容された受容層1201の上にオーバーコート材1223を昇華熱転写により印刷する。このオーバーコート材1223の昇華熱転写は、染料材1221の場合と全く同様の動作で行われる。インクリボン1220のオーバーコート材1223は、染料材1221と同様に、リボンベースフィルム1225に塗布されている[図13(C)参照]。
オーバーコート印刷後のオーバーコート材1224は、インクリボン1220に塗布されたオーバーコート材1223から剥離して、受容層1201に密着する。
次に、オーバーコート材1223が昇華熱転写された印刷用紙1200表面の状態を、図14に基づいて説明する。インクリボン1220のベースフィルム1225に塗布されていたオーバーコート材1223は、印刷用紙1200の受容層1201に受容されることなく、受容層1201の表面に厚みdで密着し、オーバーコート層1451を形成する(図14(a)参照)。
オーバーコート層1451は、入射光1400に対し、オーバーコート層1451の表面からの反射光としての表面反射光1401と、オーバーコート層1451と受容層1201との界面からの反射光としての界面反射光1402を発生させる。
これら表面反射光1401と界面反射光1402は、入射光1400の波長λ、オーバーコート層1451の厚みd、界面反射光1402の界面反射角θに依存する光干渉色を発生させる。
オーバーコート層1451の屈折率をnとしたとき、光干渉色の発生条件は、下記の数式で示すことができる。
明条件:2dcosθ=mλ/n
暗条件:2dcosθ=mλ/n+λ/2n
m:整数(m=0、1、2、3、・・・)
インクリボン1220の製造段階においてオーバーコート材1223の塗布にむらがあり、オーバーコート材1223の厚みが均一でない場合の光干渉色は、図14(B)のようになる。
図14(B)のように、インクリボン1220に塗布されたオーバーコート材1223に厚みむらがあると、印刷用紙1220に密着したオーバーコート層1451において厚みdと厚みd1という厚みむらが生じる。
オーバーコート層1451の厚みdの部分では、入射光1400に対し表面反射光1401と界面反射光1402が生じ、これら表面反射光1401と界面反射光1402により、入射光1400の波長λ、厚みd、界面反射角θに依存する光干渉色が生じる。オーバーコート層1461の厚みd1の部分では、入射光1400に対し表面反射光1401と界面反射光1403が生じ、これら表面反射光1401と界面反射光1403により、入射光1400の波長λ、厚みd1、界面反射角θに依存する光干渉色が生じる。
厚みdとd1の部分では、光干渉色の明条件、暗条件が厚みの相違により変化し、異なる光干渉色が生じて光干渉色のむらとなる。この光干渉色のむらは、観察者には虹色のむらとなって見えてしまう。本来ある筈のない色である光干渉色のむらは、印刷画像の品質を損ねる程度に目立つ場合もある。
このように、昇華型熱転写印刷において形成されるオーバーコート層は、その形成方法によっては光干渉色のむらにより印刷画像の品質を低減させる場合があった。また、染料材による印刷画像層の形成とオーバーコート層の形成を同一の印刷プロセスで行った場合、光干渉色のむらを低減することは難しかった。
光干渉色のむらを低減する方法としては、オーバーコート層(印刷表面)の表面状態を変化させて光干渉色それ自体を低減する方法が考えられる。印刷表面の表面状態を変化させる方法として、特開2004−216675号公報(特許文献1)の方法が提案されている。この特許文献1では、オーバーコート材(接着剤層)を印刷用紙に転写する際に、サーマルヘッドの一部の発熱素子のみに選択的に通電し、オーバーコート層の表面に意図的に凹凸を形成することで印刷表面につや消しを施している。
特開2004−216675号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、本形態において例示される構成部品の寸法、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明がそれらの例示に限定されるものではない。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態では、印刷画像の上にオーバーコート層を印刷する場合、印刷画像の濃度に応じて印刷パルス数のダイナミックレンジ、すなわち、画素形成部材(ヘッド抵抗体300:図3参照)に印加する印加エネルギーのエネルギー帯を変化させている。また、第1の実施の形態では、オーバーコート層を印刷する場合、印刷パルス数をダイナミックレンジ内でランダムに変化させている(第2〜4の実施の形態も同様)。
図2は、本発明の第1〜4の実施の形態に係る昇華型熱転写印刷装置の概略構成を示すブロック図である。この昇華型熱転写印刷装置は、CPU201の制御の下に一連の印刷処理を行うものである。なお、本昇華型熱転写印刷装置では、印刷記録媒体、インクリボン(オーバーコート材の担持部材)としては、それぞれ図12に示したロール印刷用紙1200、インクリボン1220を使用することを想定している。
CPU201は、バス219を介して、RAM201、ROM203、画像処理部204、表示制御部205、外部記憶装置制御部208、内部記憶装置制御部210、操作制御部212、印刷エンジン制御部215、及びUSB制御部217と接続されている。また、表示制御部205にはLCD206、LED207が接続され、外部記憶装置制御部208にはメモリカードソケット209が接続され、内部記憶装置制御部210にはフラッシュメモリ211が接続されている。さらに、操作制御部212には操作キー213、操作ボタン214が接続され、印刷エンジン制御部215には印刷エンジン216が接続され、USB制御部217にはUSBコネクタ218が接続されている。
ROM203には、一連の印刷処理を行うための各種のプログラムが格納されている。このプログラムには、図5のフローチャートに係るプログラムも含まれる。なお、本実施の形態では、ROM203としては、例えばフラッシュメモリ等の書き換えが可能な不揮発性メモリを用いている。CPU201は、ROM203に格納されたプログラムを実行する際に、RAM202をワークエリア等として利用する。
画像処理部204は、デジタル画像データ等を表示可能な表示用データ、印刷可能な印刷用データに変換する。この画像処理部204は、後述する図1の印刷パルス生成回路を内蔵している。表示制御部205は、表示用データに基づいてLCD206、LED207に対する表示制御を行う。LCD206には、処理メニュー、操作用アイコン、各種のメッセージ等が表示される。LED207は、当該印刷装置の処理状態を示すインジケータとして使用される。
外部記憶装置制御部208は、メモリソケット209に装着されたコンパクトフラッシュ(登録商標)やメモリースティック(登録商標)等の外部記憶媒体に対するアクセス制御を行う。内部記憶装置制御部210は、フラッシュメモリ211等の外部記憶媒体に対するアクセス制御を行う。
操作制御部212は、操作キー213、操作ボタン214の操作信号を検知してCPU201に通知する。印刷エンジン制御部215は、CPU201からの指令に従って印刷エンジン216による印刷動作を制御する。USB制御部217は、USBコネクタ218に装着されたUSBケーブル等を介して接続されたUSB機器との接続制御等を行う。
なお、印刷エンジン216は、昇華型熱転写方式の印刷エンジンとして構成され、CPU201、及び印刷エンジン制御部215の制御により、後述する本実施の形態に特有なオーバーコート層の印刷動作を行う。この際、図1に示した印刷パルス生成回路により生成された印刷パルス列に基づいてオーバーコート層の印刷動作が制御される。
次に、図2の画像処理部204に内蔵された印刷パルス生成回路204aを、図1に基づいて説明する。ただし、ここでは印刷パルス生成回路204aの概要を簡単に説明し、その処理内容の詳細は、後で説明する。なお、印刷パルス生成回路204aの処理内容は、ハードウェアではなく、ソフトウェアにより実現することも可能である。
印刷パルス生成回路204aは、大別すると、本来の印刷画像を形成するための画像系統と、オーバーコート層を形成するために本実施の形態において追加されたノイズ系統と、画像系統印刷とノイズ系統で共用される共用系統に分類される。
本実施の形態では、オーバーコート層による光干渉色を抑制すべく、ノイズ系統を用いて意図的にオーバーコート層の表面形状(表面粗さ:三角溝等)がランダムになるようにしている。
画像系統は、画像データ処理部102、画像面データ処理部103、画像ラインデータ処理部104を有している。ノイズ系統は、ノイズデータ処理部106、ノイズ面データ処理部107、ノイズラインデータ処理部108、及びノイズデータ記憶部105を有している。
共用系統は、画像データ記憶部101、加算回路109、ラインデータ整列部110、及び印刷パルス列生成部111を有している。なお、ノイズ系統と加算回路109は、印刷画像の形成時には使用されず、オーバーコート層の形成時にのみ使用される。
画像データ処理部102は、画像データ記憶部101に記憶された画像データ、印刷サイズ補正処理、Y,M,Cの各色の色データへの分解処理等を行う。ノイズデータ処理部106は、画像データ記憶部101に記憶された画像データについて、濃度解析処理、空間周波数解析処理等を行い、その解析結果に基づいてノイズ加算量を決定する。なお、ノイズデータ処理部106は、第4の実施の形態では、ノイズデータ記憶部105に記憶されたノイズデータに基づいてノイズ加算量を決定する。このノイズ加算量については、後述する。
また、画像データ記憶部101に記憶された画像データには、印刷画像に係る画像データだけでなく、オーバーコート層を形成するための画像データも含まれている。このオーバーコート層を形成するための画像データは、後述するオーバーコート材の溶融閾値以上の規定値(後述の定階調規定値Pdef)に相当する定値データである。このオーバーコート層を形成するための画像データについては、色データへの分解処理を行う必要はない。
画像面データ処理部103、ノイズ面データ処理部107は、それぞれ、印刷サイズ補正処理、色データへの分解処理等の処理が施された画像データ、ノイズデータについて、面処理、すなわち形成画像の一面に対する処理を行う。この面処理としては、熱補正処理等がある。
画像ラインデータ処理部104、ノイズラインデータ処理部108は、それぞれ、面処理が施された画像データ、ノイズデータにつて、主走査方向の1ライン分のデータを切り出す。加算回路109は、オーバーコート層を印刷する際に、画像ラインデータ処理部104、ノイズラインデータ処理部108からそれぞれ出力された1ライン分の画像データとノイズデータを加算する。
ラインデータ整列部110は、1ライン分のパラレルの加算データ、又はY,M,Cの各色の1ライン分の色データについて整列処理、すなわちパラレル−シリアル変換処理を行う。印刷パルス列生成部111は、シリアルデータに変換された加算データ、又はY,M,Cの各色の1ライン分の色データに対応するパルス列を生成し、印刷パルス列として印刷エンジン制御部215に出力する。
この場合、印刷パルス列生成部111は、整列処理された1ラインの或る画素のデータが、濃度階調値「100」を示していれば、当該画素について、例えばパルス数が「100」のパルス列を生成する。同様に、或る画素のデータが、濃度階調値「255」を示していれば、当該画素について、例えばパルス数が「255」のパルス列を生成する。印刷パルス列生成部111は、上記のような1ライン分の各画素に係る印刷パルス列の出力を、紙送り期間(副走査期間)に相当する規定の1ライン印刷時間において行う。
図3は、印刷エンジン216のサーマルヘッド1255(図13参照)の駆動系を示すブロック図である。サーマルヘッド1255は、画素形成部材としての複数のヘッド抵抗体300を有している。ヘッド駆動用IC301は、各ヘッド抵抗体300に印刷パルスを印加することにより、インクリボン1220(図13参照)に当接する各ヘッド部(図示省略)を発熱させる。
ヘッド駆動用IC301には電源VDDが印加されている。ヘッド抵抗体300は、直線状に配列された多数のヘッド部に対して1対1に接続されている。ヘッド抵抗体300及び多数のヘッド部は、主走査方向の1ラインの画素を構成する。ヘッド駆動用IC301は、CLK信号、LATCH信号、STROBE信号及び印刷パルス列の組み合わせで、印刷パルスを印加するヘッド抵抗体300の選択制御を行う。印刷パルス列は、前述のように画像処理部204の印刷パルス生成回路204aにより生成されて、ヘッド駆動用IC301に入力される。
画素の濃度階調性は、上記の1ライン印刷時間に画素(画素を形成するヘッド素子)に印加する印刷パルスに応じた印加エネルギーにより表現することができる。例えば、或る画素の1ライン印刷時間における印刷パルス数が「0」であれば「0」エネルギーに対応する画素濃度となり、パルス数が「500」であれば「500」の印加エネルギーに対応する画素濃度となる。
図4は、1ライン印刷時間に各画素に印加する印刷パルス数(横軸)と、印加エネルギー(縦軸)との関係を例示した図であり、縦軸の印加エネルギーは、1つのヘッド抵抗体300(画素)に印加されるエネルギーを示している。
図4に示したように、印刷パルス数−印加エネルギー特性曲線400は、ガンマ係数を持つ曲線となり、印刷パルス数が大きいほど画素に印加されるエネルギーは大きくなる。
Pminは、オーバーコート材を熱溶融して印刷用紙に転写するのに必要な印刷パルス数の下限閾値(印刷エネルギーEminに相当)であり、具体的には、溶融閾値に対応する印刷パルス数を示している。Pdefは、オーバーコート層を一定の濃度階調で印刷する場合の印刷パルス数の設定値(規定値:以下、定階調規定値という、印刷エネルギーEdefに相当)を示している。Plimitは、インクリボンの破損を招かない範囲の印刷パルス数の上限閾値(以下、破損閾値という、印刷エネルギーElimitに相当)を示している。
オーバーコート層を印刷する場合の定階調規定値Pdefは、溶融閾値Pminと破損閾値Plimitとの間の印刷パルス数の範囲内の任意の値に規定されている。本実施の形態では、オーバーコート層の表面での光散乱を増大させるべく、定階調規定値Pdefにランダムな印刷パルス数を加算してオーバーコート層を印刷している(図6(C))参照)。ただし、溶融閾値Pminにランダムな印刷パルス数を加算してオーバーコート層を印刷することも可能である。この場合、転写されるオーバーコート層の量が急激に変化してむらが出たりすることがないように、加算するパルスの上限値を設け、むらが感じられない範囲内でランダムにパルスが印加されるようにするとよい。
図5は、画像データの印刷処理の概要を示すフローチャートである。なお、印刷対象の画像データは、印刷装置に挿入されたメモリカードソケット209、又はフラッシュメモリ211に記憶され、印刷時には、RAM202に展開されるものとする。従って、図1の画像データ記憶部101は、RAM202の一部の領域に相当する。
まず、CPU201は、印刷パルス生成回路204aの画像データ処理部102により、印刷対象の画像データについて、色分解処理等の画像データ処理を行わせる(ステップS501)。そして、CPU201は、印刷パルス生成回路204aの画像系統の画像面データ処理部103等により、イエローの画像データに基づいてイエローに係る印刷パルス列を生成させる(ステップS502)。次に、CPU201は、印刷エンジン制御部215、及び印刷エンジン216により、イエローに係る1枚の画像を印刷させる(ステップS503)。
同様に、CPU201は、マゼンタに係る印刷パルス列の生成処理、マゼンタに係る1枚の画像の印刷処理、シアンに係る印刷パルス列の生成処理、シアンに係る1枚の画像の印刷処理(ステップS504〜S507)を順次実行させる。これら各色の画像の印刷においては、各色の染料材(色画像)は、順次積層されていく。
CPU201は、各色の画像の印刷処理が終了すると、印刷パルス生成回路204aの画像系統、ノイズ系統、及び共用系統の処理部を総動員して、ノイズ成分を含むオーバーコート層の印刷データを生成する。
すなわち、CPU201は、ノイズデータ処理部106により、印刷対象の画像データについて、濃度解析処理、空間周波数解析処理等を実行させてノイズ加算量を決定させると共に、後段のノイズ系統の各処理部での処理を実行させる(S508)。また、CPU201は、このノイズ系統の処理と並行して画像系統の各処理部での処理を実行させる。
この画像系統の各処理部での処理は、オーバーコート層を一定の濃度階調で印刷する場合の前述の定階調規定値Pdefに係るデータに対して行われる。
次に、CPU201は、加算回路109により、ノイズ系統からのデータと画像系統からのデータを加算させて、オーバーコート印刷データを生成させ、印刷パルス列生成部111により、オーバーコート層に係る印刷パルス列を生成させる(ステップS509)。次に、CPU201は、印刷エンジン制御部215、及び印刷エンジン216により、積層に係るY,M,Cの印刷画像の上にオーバーコート層を積層して印刷させる(ステップS510)。
次に、オーバーコート印刷データ、印刷パルス列の生成方法を、図6に基づいて説明する。図6(A)はオーバーコート層の下層の印刷画像の画像データを示し、図6(B)はオーバーコート印刷データを示している。図6(C)は、オーバーコート印刷時に1ライン印刷時間に各画素に印加する印刷パルス数(横軸)と、印加エネルギー(縦軸)との関係を示している。
ノイズデータ処理部106は、図6(A)の画像データについて、主走査方向の1ラインの各画素の濃度(各色混合状態での濃度)を解析し、各画素において定階調規定値Pdefに係るオーバーコート層のデータに加算すべきランダムノイズ量を算出する。
そして、加算回路110により、定階調規定値Pdefに係るオーバーコート層のデータ(主走査方向1ラインの各画素の印刷データ)に対して、算出に係る各画素のランダムノイズ量を加算する。この加算処理により、図6(B)のオーバーコート印刷データが生成される。
ここで、図6(A)の画像データについて、主走査方向1ライン605等の各画素の濃度を下記のように解析したものとする。なお、図6(A)に示した楕円、三角、矩形の領域E2〜E4は、説明の便宜上示したものであり、実際には、主走査方向(図の)の各ラインの全画素毎、又は各ラインの画素群毎に濃度解析が行われる。
領域E1:濃度D1
領域E2:濃度D2(D1<D2)
領域E3:濃度D3(D2<D3)
領域E4:濃度D4(D3<D4)
この場合、ノイズデータ処理部106は、図6(C)に示したように、印刷パルス数−印加エネルギー特性曲線400に基づいて、各領域E1〜E4に対して、その濃度D1〜D4に応じたオーバーコート印刷パルス数の最大値P1max〜P4maxを設定する。
この印刷パルス数の最大値P1max〜P4maxは、上記の濃度の大小関係(D1<D2<D3<D4)との比較から明らかなように、濃度が濃くなるのに応じて大きくなる。すなわち、P1max<P2max<P3max<P4maxとなる。また、P1max〜P4maxは、全て、破損閾値以下となっている。一方、印刷パルス数の最小値は、各領域E1〜E4において定階調規定値Pdefに統一される。換言すれば、オーバーコート層を印刷する場合は、常に、定階調規定値Pdef以上(規定値以上)の印刷パルス数で印刷され、オーバーコート層は、印刷画像の全面に亘って形成され、オーバーコート層による印刷画像の保護機能が損なわれることはない。
ノイズデータ処理部106は、階調規定値Pdef〜(印刷パルス数の最大値P1max〜P4maxの何れか)の範囲内で、オーバーコート印刷時の印刷パルス数のダイナミックレンジ、すなわち印加エネルギーのエネルギー帯を変える。本実施の形態では、オーバーコート印刷時の印刷パルス数が、ダイナミックレンジ内でランダムな印刷パルス数となるように、ランダムノイズを加算している。
領域E1:印刷パルス数のダイナミックレンジR1(Pdef〜P1max)
領域E2:印刷パルス数のダイナミックレンジR2(Pdef〜P2max)
領域E3:印刷パルス数のダイナミックレンジR3(Pdef〜P3max)
領域E4:印刷パルス数のダイナミックレンジR4(Pdef〜P4max)
すなわち、オーバーコート印刷時の印刷パルス数のダイナミックレンジは、濃度が濃くなるのに応じて広げていく。
このように、本実施の形態では、破損閾値Plimitを超えない範囲で、オーバーコート印刷時の印刷パルス数のダイナミックレンジを印刷画像の濃度に応じて設定している。そして、そのダイナミックレンジの範囲内で各画素の印刷パルス数がランダムに変化するようにランダムノイズを加算して、オーバーコート印刷時の印刷パルス列を生成している。
図7は、図6(B)に示した領域E1〜E4について、画素単位のオーバーコート時の印刷パルス数を例示している。図7において、ED1〜ED4は、領域E1〜E4の一部の画素を拡大して○で示したものであり、○の中に示した数値は、当該画素において1ライン印刷時間で印加される印刷パルス数を示している。
図7において、各領域E1〜E4でのオーバーコート印刷時の印刷パルス数のダイナミックレンジR1〜R4は、下記の値に設定されている。ここでは、定階調規定値Pdef=300、破損閾値Plimit=501としている。
領域E1:印刷パルス数(300〜349:R1)
領域E2:印刷パルス数(300〜399:R2)
領域E3:印刷パルス数(300〜449:R3)
領域E4:印刷パルス数(300〜500:R4)
このように、第1の実施の形態では、オーバーコート印刷時に各画素に印加する印刷パルス数が、印刷画像の濃度に応じて設定したダイナミックレンジR1〜R4の範囲内でランダムに変化するようにランダムノイズを加算して、オーバーコート印刷を行っている。
図7の例では、領域E1では、印刷パルス数300〜349の範囲内のランダムな印刷パルス数によりオーバーコート印刷を行う。領域E2では、印刷パルス数300〜349の範囲内のランダムな印刷パルス数によりオーバーコート印刷を行う。領域E3では、印刷パルス数300〜449の範囲内のランダムな印刷パルス数によりオーバーコート印刷を行う。領域E4では、印刷パルス数300〜500の範囲内のランダムな印刷パルス数によりオーバーコート印刷を行う。
このように、各画素に印加する印刷パルス数をランダムに変化させてオーバーコート印刷を行った場合、図8に示したように、形成されたオーバーコート層の表面粗さはランダムに変化する。図8(A),(B)は、それぞれ前述の領域E1,E4に形成されたオーバーコート層を示している。図8(A),(B)に示したd、d1、d2は、オーバーコート層801,802の厚み(最低厚み)を示し、これら最低厚みd、d1、d2はd<d1<d2の関係にある。また、最低厚みd、d1、d2に対応する印刷パルス数、及びオーバーコート層の表面の凹凸(三角溝の深さ)も、最低厚みd、d1、d2と同様の大小関係にある。
図8(A),(B)に示したように、オーバーコート層801の表面形状(表面粗さ:溝深さ)がランダムとなっている場合には、入射光1400に対し、オーバーコート層801の表面からの反射光として表面正反射光802と表面散乱光803が発生する。また、オーバーコート層801と印刷用紙1202の受容層1201との界面からの反射光として界面正反射光804と界面散乱光805も発生する。
すなわち、オーバーコート層801の表面形状がランダムとなっている場合には、表面正反射光802、界面正反射光804の他に表面散乱光803、界面散乱光805が発生し、その分、表面正反射光802、界面正反射光804が減少する。この表面正反射光802、界面正反射光804の減少により、光干渉色の発生が抑制されることとなる。
また、図8(A),(B)に示したように、表面散乱光803、界面散乱光805は、オーバーコート層801の最低厚みが厚くなるのに応じて増加していき、その表面散乱光803、界面散乱光805の増加によって光干渉色の抑制効果が大きくなる。従って、図8(B)のように、下層の印刷画像の濃度が大きく光干渉色の多発が予想される領域では、オーバーコート層801の最低厚みを大きくして光干渉色の抑制効果を大きくすることで、オーバーコート層の全面で同等の光干渉色の抑制効果が得られる。
以上説明したように、第1の実施の形態では、オーバーコート層の印刷時に、オーバーコート層の表面での光散乱を増大させるべく、印刷ヘッド上の複数の画素形成部材(ヘッド抵抗体300)に印加する印加エネルギー(印刷パルス数)を変化させている。この点は、後述する第2〜4の実施の形態も同様である。
この場合、第1の実施の形態では、変化させる印刷パルス数のダイナミックレンジ、換言すれば、各画素に印加する印加エネルギーのエネルギー帯を、当該オーバーコート層の下層の印刷画像の濃度に応じて変更可能に設定している。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、オーバーコート層を印刷する際に各画素に印加する印加エネルギー、すなわちオーバーコート印刷データのダイナミックレンジを、当該オーバーコート層の下層の印刷画像の空間周波数に応じて変化させている。
この場合、図5のステップS508では、図1の印刷パルス生成回路204aのノイズデータ処理部106において、印刷対象の画像データについて空間周波数を解析し、その空間周波数に基づいてノイズ加算量を決定する。
ここで、空間周波数の解析対象となる上記の画像データは、オーバーコート層の下層となる印刷画像に係る画像データであって、ランダムノイズの加算対象としてのオーバーコート層の定階調規定値Pdefに係る画像データではない。このオーバーコート層の定階調規定値Pdefに係る画像データは、前述の画像系統の各処理部で各色のデータの場合と全く同様に処理される。
その後の印刷パルス生成回路204aのノイズ系統での処理(図5のステップS509の処理)は、第1の実施の形態と同様であり、ノイズ加算量が決定されたノイズデータについて、ノイズ面データ処理部107により熱補正などのノイズ面データ処理を行う。そして、ノイズラインデータ処理部108により、主走査方向の1ラインのノイズデータを順次切り出して、加算回路109に出力する。
次に、第2の実施の形態におけるオーバーコート印刷データ、印刷パルス列の生成方法を、図9に基づいて説明する。図9(A)は下層の印刷画像の画像データを示し、図9(B)はオーバーコート印刷データを示している。図9(C)はオーバーコート印刷時に1ライン印刷時間に各画素に印加する印刷パルス数(横軸)と、印加エネルギー(縦軸)との関係を示す印刷パルス数―印加エネルギー特性曲線400を示している。
ここで、図9(A)の画像データについて、空間周波数を下記のように解析したものとする。なお、図9(A)に示した矩形、楕円、三角の領域E6〜E8は、説明の便宜上示したものであり、実際には、(主走査方向1ライン×副走査方向nライン)905の全画素毎に空間周波数解析が行われる。
領域E5:空間周波数f5
領域E6:空間周波数f6(f5<f6)
領域E7:空間周波数f7(f6<f7)
領域E8:空間周波数f8(f7<f8)
この場合、ノイズデータ処理部106は、印刷パルス数―印加エネルギー特性曲線400に基づいて、各領域E5〜E8に対して、その空間周波数f5〜f8に応じたオーバーコート印刷パルス数の最大値P5max〜P8maxを設定する(図9(C)参照)。
この印刷パルス数の最大値P5max〜P8maxは、上記の空間周波数の解析結果(f5<f6<f7<f8)との比較から明らかなように、空間周波数が大きくなるのに応じて小さくなる。すなわち、P5max>P6max>P7max>P8maxとなる。
また、P5max〜P8maxは、全て、破損閾値Plimit以下となっている。一方、印刷パルス数の最小値は、各領域E5〜E8において定階調規定値Pdefに統一される。すなわち、領域E5〜E8における印刷パルス数(印加エネルギー、オーバーコート印刷データに相当)のダイナミックレンジR5〜R8は、下記の通りとなる。
領域E5:印刷パルス数のダイナミックレンジR5(Pdef〜P5max)
領域E6:印刷パルス数のダイナミックレンジR6(Pdef〜P6max)
領域E7:印刷パルス数のダイナミックレンジR7(Pdef〜P7max)
領域E8:印刷パルス数のダイナミックレンジR8(Pdef〜P8max)
このように、第2の実施の形態では、定階調規定値Pdef〜(印刷パルス数の最大値P5max〜P8maxの何れか)の範囲内で、オーバーコート印刷時の印刷パルス数のダイナミックレンジを印刷画像の空間周波数に略反比例する形で変化させる。この場合、ノイズデータ処理部106は、オーバーコート印刷時の印刷パルス数がダイナミックレンジ内でランダムに変化するような形態で、ノイズ加算量を決定する。
以上説明したように、第2の実施の形態では、下層の印刷画像の空間周波数が低く光干渉色の多発が予想される領域では、印刷パルス数のダイナミックレンジを大きくする(印加エネルギーのエネルギー帯を広くする)ことで、光干渉色の抑制効果を大きくしている。
また、下層の印刷画像の空間周波数が高く発生する光干渉色が少ないと予想される領域では、印加エネルギーのエネルギー帯を狭くすることで、光干渉色の抑制効果を小さくしている。
これにより、オーバーコート層の全面で同等の光干渉色の抑制効果を得ることが可能となる。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、画像データ(印刷画像)における濃度と空間周波数に基づいて、オーバーコート印刷データ(印刷パルス数)のダイナミックレンジを可変している。すなわち、第3の実施の形態は、第1の実施の形態と、第2の実施の形態を合体させた形態となっている。
この場合、図5のステップS508では、図1の印刷パルス生成回路204aのノイズデータ処理部106において、オーバーコート層の下層の印刷画像の画像データについて、主走査方向の各ラインの各画素の濃度を解析する。さらに、ノイズデータ処理部106は、当該画像データについて、主走査方向1ライン×副走査方向nラインの各領域での空間周波数を解析する。そして、ノイズデータ処理部106は、濃度及び空間周波数の解析結果に基づいてノイズ加算量を決定する。
なお、オーバーコート層の定階調規定値Pdefに係る画像データは、前述の画像系統の各処理部で各色の色データの場合と全く同様に処理される。
その後の印刷パルス生成回路204aのノイズ系統での処理(図5のステップS509の処理)は、第1の実施の形態と同様であり、ノイズ加算量が決定されたノイズデータについて、ノイズ面データ処理部107により熱補正などのノイズ面データ処理を行う。そして、ノイズラインデータ処理部108により、主走査方向1ラインのノイズデータを順次切り出して、加算回路109に出力する。
次に、第3の実施の形態におけるオーバーコートデータ、印刷パルス列の生成方法を、図10に基づいて説明する。図10(A)は、オーバーコート層の下層の印刷画像の画像データを示している。図10(B)は、印刷パルス数―印加エネルギー特性曲線400に対して、印刷パルス数のダイナミックレンジと濃度との関係を追記している。図10(c)は、印刷パルス数―印加エネルギー特性曲線400に対して、印刷パルス数のダイナミックレンジと空間周波数との関係を追記している。
ノイズデータ処理部106は、図10(A)の画像データについて、主走査方向の各ライン605の各画素の濃度を解析すると、定階調規定値Pdef〜破損閾値Plimitの範囲内で、濃度のより高い画素群の領域ではオーバーコート層の印刷パルス数の最大値をより高く設定する。
図10(B)では、或る濃度Dでのオーバーコート層の印刷パルス数の最大値を濃度の関数として計算し、その最大値をP(D)maxとして例示している。この場合、オーバーコート層を印刷する際の印刷パルス数のダイナミックレンジは、定階調規定値Pdef〜P(D)maxの範囲となる。
また、ノイズデータ処理部106は、図10(A)の画像データについて、(主走査方向1ライン×副走査方向nライン)905の各領域の空間周波数を解析する。そして、ノイズデータ処理部106は、定階調規定値Pdef〜破損閾値Plimitの範囲内で、空間周波数のより高い領域ではオーバーコート層の印刷パルス数の最大値をより低く設定する。
図10(C)では、或る空間周波数fでのオーバーコート層の印刷パルス数の最大値を空間周波数の関数として計算し、その最大値をP(f)maxとして例示している。この場合、オーバーコート層を印刷する際の印刷パルス数のダイナミックレンジは、定階調規定値Pdef〜P(f)maxの範囲となる。
そして、ノイズデータ処理部106は、P(D)maxとP(f)maxを所定の重み値で重み付けし、その重み付けに係るP(D)maxとP(f)maxの平均値を印刷パルス数の最大値として最終的に決定する。上記の所定の重み値は、例えば、光干渉色の発現に対して、濃度の方が空間周波数よりも大きく寄与する場合は、P(D)maxに係る重み値の方がP(f)maxに係る重み値よりも大きな値となっている。
ノイズデータ処理部106は、定階調規定値Pdef〜上記の平均値としての印刷パルス数の最大値の範囲内で、オーバーコート層を印刷する際のランダム加算量を決定する。この場合、ランダム加算量は、濃度が高く空間周波数が低い領域では印刷パルス数が多くなり、濃度が低く空間周波数が高い領域では印刷パルス数が少なくなるような形態で決定される。
このように第3の実施の形態では、オーバーコート層の下層の印刷画像の濃度だけでなく、空間周波数も考慮してランダム加算量を決定しているので、第1,2の実施の形態よりも、オーバーコート層の全面での光干渉色の抑制効果の同等性がより高くなる。
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、第1〜3の実施の形態と異なり、オーバーコート印刷データ(印刷パルス数)のダイナミックレンジを固定して、オーバーコート印刷データを生成している。
第4の実施の形態では、ノイズデータ処理部106は、オーバーコート層の下層の印刷画像とは無関係に、ノイズデータ記憶部105から読み出したランダムノイズデータに基づいてノイズ加算量を決定する。
この第4の実施の形態におけるオーバーコート印刷データ、印刷パルス列の生成方法を、図11に基づいて詳細に説明する。図11(A)は、オーバーコート層の下層の印刷画像の画像データを示している。図11(B)はオーバーコート印刷データを示している。図11(C)は、印刷パルス数―印加エネルギー特性曲線400に対して、印刷パルス数のダイナミックレンジを追記している。
ノイズデータ記憶部105に記憶されているランダムノイズデータのダイナミックレンジは、図11(C)に示したように、オーバーコート印刷パルス数の最大値が一定のP(Const)maxとなるように予め設定されている。この記憶に係るランダムノイズデータのダイナミックレンジは、当然ながら、定階調規定値Pdef〜破損閾値Plimitの範囲内となっている。また、記憶に係るランダムノイズデータは、オーバーコート層の全面に亘るデータであり、印刷パルス数がオーバーコート層の全面に亘ってランダムとなるようなオーバーコート印刷データ(図11(b)参照)が生成される形態となっている。
このように、印刷画像とは無関係に、記憶に係るランダムノイズデータに基づいてノイズ加算量を決定した場合は、濃度解析や空間周波数の解析を行う必要がなく、オーバーコート層の印刷を従来と同程度の速度で迅速に印刷することが可能となる。
なお、第4の実施の形態の変形例として、濃度や空間周波数の分布状態に応じた複数のランダムノイズデータを記憶しておき、実際に印刷する印刷画像の濃度や空間周波数の分布状態に似たランダムノイズデータを選択して使用することも可能である。この場合は、予め記憶された定型的なランダムノイズデータを用いても、オーバーコート層の全面でほぼ同等の光干渉色の抑制効果を得ることができる。
また、単独のランダムノイズデータではなく、ランダムノイズデータと階調規定値Pdefに係るデータとを予め加算したランダムデータを記憶しておき、この加算に係るランダムデータを用いてオーバーコート層を印刷することも可能である。
この場合は、オーバーコート層を印刷する場合も印刷パルス生成回路204aの画像系統の処理部だけを使用すればよく、ノイズ系統の処理部及び加算回路を削除できるので、印刷パルス生成回路204aの構成を簡略化することが可能となる。
以上説明したように、第1〜4の実施の形態では、オーバーコート層を印刷する場合に、当該オーバーコート層の表面での光散乱を増大させるべく、印刷ヘッド上の複数のヘッド抵抗体に印加する印加エネルギーを所定以上の範囲でランダムに変化させている。
従って、光干渉色のむらを抑制する形態でオーバーコート層を印刷する場合に、オーバーコート材が形成された一般的なインクリボンを使用することができ、ランニングコストの増大化を招くことはない。また、複数のヘッド抵抗体に印加エネルギーを所定値とすることで、オーバーコート層を印刷画像の全面に亘って形成することができ、下層の印刷画像を保護する機能が損なわれることはない。さらに、オーバーコート材の他にコーティング材を追加して印刷する必要はなく、印刷時間の増大化を招くこともない。
なお、本発明は、第1〜4の実施の形態に限定されることなく、例えば、光散乱を増大させて正反射光を減少できるのであれば、ランダムノイズデータの代わりに、例えば、パターンノイズデータやパターンデータを用いることも可能である。
また、第1〜4の実施の形態では、インクリボンとしては、Y、M、Cの染料材とオーバーコート材の4種類を1組とする組が一定ピッチで繰り返し形成されているものを使用していた。しかし、オーバーコート材が形成されたインクリボンであれば、他の構成態様のインクリボンも使用することができる。
また、昇華型熱転写印刷装置以外の熱転写印刷装置や熱転写印刷装置以外のインクジェットプリンタ等でオーバーコート層を形成する場合にも、本発明を適用することが可能である。さらに、カッター1254(図13参照)で切断されることを前提としたロール状の印刷用紙ではなく、切断されることを前提としないシート状の印刷用紙に印刷する場合にも、本発明を適用することが可能である。
さらに、本発明の目的は、以下の様にして達成することも可能である。まず、前述の各実施の形態の機能を実現するようにプログラミングされたプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述の各実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。ただし、読み出したプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述の各実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
ここで、プログラムコードを記憶する記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、CD−ROM、CD−R、DVD、光ディスク、光磁気ディスク、MOなどが考えられる。また、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)やWAN(ワイド・エリア・ネットワーク)などのコンピュータネットワークを、プログラムコードを供給するために用いることができる。
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、図1に示す回路ブロックでの処理に対応するプログラムコードが格納されることになる。