JP5328112B2 - 蓄熱材の製造方法及び水硬性組成物 - Google Patents
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(1)水難溶性無機微粒子が付着した蓄熱材を用いることで、水硬性組成物であるセメントペースト、モルタル、コンクリート等の水和発熱が抑制できると共に、有機系のものと比べ凝結遅延への影響が少ない。例えば、蓄熱材をセメントに対して6%程度添加すると、硬化時の温度上昇を7〜9%程度低減できる。また、原材料に有害物質を用いる必要がないので、蓄熱材から有害物質の放出がない成形体が得られる。
(2)水難溶性無機微粒子を用いることで、粒径が10μm程度でほぼ均一な水より重い蓄熱材粒子が製造できる。この蓄熱材は成形体中の安定性の向上に寄与すると考えられ、このことにより、水硬性組成物中により均一に蓄熱材を分散できるため、硬化体の表面もプレーンと比べ損傷のないものができる。
(3)蓄熱材の蓄熱物質に、融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有する潜熱蓄熱物質を用いることで、極性の低い炭化水素化合物の分散安定化が容易にできる。これにより、安価に水硬性組成物への適用性の高い潜熱蓄熱材を提供できることが可能になる。
ビーカーにミリスチン酸ミリスチル(花王(株)製、エキセパールMY−M、融点45.0℃)104.3gを計りとり加熱融解し、その中にリン酸三カルシウム(太平化学産業製)31.3gを水664.3gに分散させた65℃の分散液を加え、得られた混合液を素早く強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いた10000rpm、3分間の分散処理を施し、懸濁分散液を得た。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した後、目開き300μmの金網でろ過し暫く静置した。その後、底に沈降した懸濁分散粒子から上澄み液434gを取り除き、固形分39%(重量基準、以下、特記しない限り同様である)に濃縮された懸濁分散液334gを得た。
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチルの代わりにステアリン酸ステアリル(花王(株)製、エキセパールSS、融点62.6℃)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液337gを得た。
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチル104.3gの代わりにミリスチン酸ミリスチル52.2g、パラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)52.2gに変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液330gを得た。なお、実施例3で得られた無機物付着型蓄熱材の電子顕微鏡写真(条件は実施例1と同じ)を図2、粒径分布パターンを図3に示す。これにより、当該粒子は無機物質に被覆化されていること確認した。
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチル104.3gの代わりにミリスチン酸ミリスチル10.4g、パラフィンワックス115 93.9gに変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液313gを得た。
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチル104.3gの代わりにステアリン酸ステアリル10.4g、パラフィンワックス115 93.9gに変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液320gを得た。
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチルの代わりにパラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)に変更した。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却中に1〜15mm程度のパラフィンワックスの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
実施例1と同操作で、セチルアルコール(花王(株)製、カルコール6098、融点51.2℃)に変更した。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却中に1〜5mm程度のセシルアルコールの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
実施例1と同操作で、ミルスチン酸(花王(株)製、ルナックMY−98、融点56.6℃)に変更した。分散液を強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いて10000rpm、3分間の分散処理を行うとしたが、剪断分散中に脂肪酸のカルシウム塩ができ、全体が白色のゲル状になり分散状態を呈しなくなった。
実施例1と同操作で、ステアリン酸ブチル(花王(株)製、エキセパールBS、融点38℃)に変更した。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却中に1〜5mm程度のステアリン酸ブチルの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
ビーカーにステアリン酸メチル(花王(株)製、エキセパールMS、融点28℃)104.3gを計りとり加熱融解し、その中にリン酸三カルシウム(太平化学産業製)31.3g、水664.3gが混ざった65℃の分散液を加え、素早く得られた分散液を強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いて10000rpm、3分間の分散処理を施した。その後、懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した。冷却中に1〜5mm程度のステアリン酸メチルの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
実施例1〜5と比較例1〜5で得られた、無機物付着型蓄熱材を含む懸濁分散液について、分散特性(分散安定性、粒子性状)を以下の方法で評価した。また、各物質の特性値、並びに懸濁分散液の特性に関しても下記の方法により測定した。結果を表1に示す。
潜熱蓄熱物質の融点、固相転移温度及び融解熱量は、Perkin Elmer製“Pyris6 DSC”型の示差走査熱量測定にて求めた。固相転移温度は、融解温度のトップピークの値とする。尚、測定条件は、Heat 1stは3℃/分で−10℃から100℃に昇温、Coolは3℃/分で100℃から−30℃に冷却、Heat 2ndは3℃/分で−30℃から100までの昇温の繰り返し操作を行い、Heat 2ndの値を採用した。
平均粒径は、(株)堀場製作所製“レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置 LA−300”を用いて、懸濁分散液中に含まれる粒子の粒径(体積基準、メジアン径)を測定した。その際、水難溶性無機微粒子の粒径は超音波2分間処理により水に分散させて測定し、懸濁分散液中の懸濁粒子(無機物付着型蓄熱材)の粒径は、目開き300μmの金網通過品を対象として測定した。
凝集物量は、冷却後の懸濁分散液を目開き300μmの金網にてろ過し、その金網残留物の乾燥重量を計り下式にて求めた。
凝集物量(重量%)=目開き300μmの金網残留物の乾燥重量(g)÷{潜熱蓄熱物質(g)+水難溶性無機微粒子(g)}×100
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりにヒドロキシアパタイト(太平化学産業製、医薬部外品原料規格、平均粒径4.7μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液337gを得た。
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりに塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製、1級試薬、平均粒径12.1μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液338gを得た。
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりに酸化マグネシウム(関東化学(株)、1級試薬、平均粒径3.3μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液288gを得た。
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりに酸化チタン(和光純薬工業(株)製、特級試薬、ルチル型、平均粒径0.2μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液263gを得た。
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりにカオリン(キシダ化学(株)製、試薬、300mesh、平均粒径6μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液211gを得た。
実施例6〜10で得られた、無機物付着型蓄熱材を含む懸濁分散液について、分散特性や各物質の特性値等を実施例1等と同様に評価した。結果を表2に示す。なお、参考のため、実施例1の結果も表2に併せて示した。
〔1〕比較用の蓄熱材の製造
〔比較製造例1〕
ビーカーにパラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)75.0g、ソルビタンモノステアレート(花王(株)レオドールSP−S10V)12.0gを計りとり加熱融解し、その中にポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(花王(株)製、レオドールTW−S120)8.0g及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、エマルゲン120)5.0gを水400gに分散させた75℃の分散液を加え、得られた混合液を素早く強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いた6000rpm、3分間の分散処理を施し、懸濁分散液を得た。そして、懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した後、目開き300μmの金網でろ過し、固形分20.8%、平均粒径4.9μmの乳化物を得た。
ビーカーにパラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)138.9gを計りとり加熱融解し、その中にスチレン−無水マレイン酸コポリマー(BASF製、固形分30%)18.5g及び10%ポバール水溶液(日本合成化学製、ゴーセノールGL−05)55.6gを水287gに分散させた70℃の分散液を加え、得られた混合液を素早く強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いた6000rpm、3分間の分散処理を施し、懸濁分散液を得た。そして、懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した後、目開き300μmの金網でろ過し、固形分28.5%、平均粒径11.9μmの乳化物を得た。
他の潜熱蓄熱材として、市販のパラフィンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−1015、融点47℃、アニオン性、平均粒径0.32μm〕から、固形分40%の乳化物を準備した。
他の潜熱蓄熱材として、市販のポリエチレンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−5555、融点55℃、アニオン性、平均粒径0.56μm〕から、固形分42%の乳化物を準備した。
実施例1で得られた無機物付着型蓄熱材の39%懸濁分散液208gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水278gを加え調製練り水を準備した。その調製練り水486g〔蓄熱材(固形分)81.1g、水404.9g(混和剤7gを含む)〕をセメント(太平洋セメント(株)製、普通ポルトランドセメント)1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製した。素早くセメントペーストをコーンに詰め、調整直後及び調整から20分後のフローを測定した〔これを分散性試験(詳細は後述する)とした。〕。また、前記と同じ操作で調製練り水を381.1g〔蓄熱材(固形分)81.1g、水300g(混和剤7gを含む)〕に変更した以外は、分散性試験の場合と同様にしてセメントペーストを調整し、このものの硬化時における簡易断熱温度上昇試験(詳細は後述する)を行い、最高発熱温度を求めた。これらの結果を表3に示した。
実施例1で得られた無機物付着型蓄熱材の代わりに実施例2、3、5の蓄熱材を使用した。他の試験操作は試験例1と同じことを行い、結果を表3に示した。
セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水375gをセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。また、前記と同じ操作で混和剤を含む水300gに変更した以外は、分散性試験の場合と同様にして、セメントペーストを調製し、試験例1と同様に簡易断熱温度上昇試験を行い、最高発熱温度を求めた。これらの結果を表3に示した。尚、この比較試験例1で示した最高発熱温度を、簡易断熱温度上昇試験におけるプレーン(基準)とする。
比較製造例1で得られたパラフィンワックスエマルジョン(固形分20.8%の乳化物)400gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水89.4gを加え調製練り水489.4g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)83.2g、水406.2g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。この結果を表3に示した。
比較製造例2で得られたパラフィンワックスエマルジョン(固形分28.5%の乳化物)236.7gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水231.1gを調製加え練り水467.8g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)67.5g、水400.3g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。この結果を表3に示した。
比較製造例3で得られたパラフィンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−1015から調製した固形分40%の乳化物〕156gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水305gを加え調製練り水461g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)62.5g、水398.5g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。また、調製練り水を362.5g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)62.5g、水300g(混和剤7gを含む)〕に変更した以外は、分散性試験の場合と同様にしてセメントペーストを調整し、試験例1と同様に簡易断熱温度上昇試験を行った。これらの結果を表3に示した。
比較製造例4で得られたポリエチレンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−5555から調製した固形分42%の乳化物〕149gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水312gを加え、調製練り水461g〔ポリエチレンワックスエマルジョン(固形分)62.5g、水398.5g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。この結果を表3に示した
試験例1〜4と比較試験例1〜5で得られたセメントペーストについて、分散性試験と簡易断熱温度上昇試験を以下の方法により行った。結果を表3に示す。
分散性試験は、混練機に(株)ダルトン製“DALTON万能混合攪拌機 5dm−03−γ”を用い、各材料を添加後低速60秒で練まぜ一旦かきとり、更に低速60秒で攪拌した後、ペーストコーン(底内径φ85mm×上内径φ76mm×高さ40mm)にペーストを流し素早くコーンを持ち上げ、初期フローの広がりを測定した。また、20分後のフローは、前記製法のセメントペーストを20分間静置後、測定前に低速10秒で攪拌してから同操作で測定した。
簡易断熱温度上昇試験は、発泡ウレタンで断熱処理を施した断熱箱に、前記と同じ操作でこの試験用に調製したセメントペーストを500mlの容器に1150gを計りとり断熱箱に埋め込み、セメントペーストの硬化時の発熱温度を追跡記録した。尚、温度の追跡情報は、ペースト中に差し込んだ熱電対から、(株)テクノ・セブン製“パソコン用データ集録システム ソフトサーモE830”で処理し水和発熱による最高温度を求めた。試験環境は、20℃、60%RHの恒温室で行った。
Claims (3)
- 融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有する潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子とを、前記潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度以上の温度で、水の共存下で混合して、前記潜熱蓄熱物質の表面に前記水難溶性無機微粒子を付着させる工程を有する、平均粒径5〜100μmの粒子からなる蓄熱材の製造方法であって、
前記水難溶性無機微粒子が、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン及びカオリンから選ばれる一種以上の化合物を含む粒子である、
蓄熱材の製造方法。 - 前記潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度が30〜90℃である、請求項1記載の蓄熱材の製造方法。
- 請求項1又は2記載の製造方法により製造された蓄熱材と水硬性粉体とを含有する水硬性組成物。
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