JP5326043B2 - 病原性微生物を含む害虫の防除剤、及びそれを用いる害虫の防除法 - Google Patents

病原性微生物を含む害虫の防除剤、及びそれを用いる害虫の防除法 Download PDF

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Description

本発明は、植物に加害する昆虫に対する病原性微生物を含む害虫防除剤、及びそれを使用する害虫の防除方法に関する。
植物の病害虫の防除には、化学物質を用いた防除法が浸透し、現在、化学物質を有効成分とする殺虫剤及び当該殺菌剤による防除がその主流を占めている。しかしながら、化学物質を用いた殺虫剤等は、その効果が優れている反面、人畜に対して毒性を有しているものや、自然環境に残留して、他の生態系に影響を及ぼすものがある。また、長期間の使用によって抵抗性を持った病害虫が出現するものや、天敵まで殺して逆に病害虫を発生する環境を創出してしまうものがあり、いくつかの問題点を抱えている。
このような化学物質を用いた殺虫剤等に対して、他の生態系への影響を極力抑え、防除の目的とする病害虫のみを特異的に駆除する手段として、病原性微生物を用いて病害虫を防除する方法が種々研究されている。例えば、ボーベリア属(Beauveria)、メタリジウム属(Metharhizium)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ヒルステラ属(Hirsutella)、ノムラエ属(Nomurae)、又はバーティシリウム属(Verticillium)等の菌を用いて、害虫を防除する方法が知られている。ボーベリア属の菌やメタリジウム属の菌は、鱗翅目、鞘翅目の害虫の防除に有効であり、ヒルステラ属の菌は、サビダニ類の害虫の防除に有効であり、ノムラエ属の菌は、鱗翅目の害虫の防除に有効であり、バーティシリウム属の菌は、半翅目、総翅目及びハダニ類の害虫の防除に有効であることが報告されている(非特許文献1)。
また、本出願人は、アブラムシ類、コナジラミ類及びアザミウマ類に対して同時に高い病原性を有し、葉面上に安定的に持続する昆虫病原性微生物の菌株を開発している(特許文献1)。
ところで、従来国内外で市販されているボーベリア剤、バーティシリウム剤及びメタリジウム剤などの防除剤は、希釈液で昆虫病原性微生物を希釈して調整し、作物の害虫加害部位に直接散布して用いるものである。しかし、このような希釈液で調整される防除剤は、病原性微生物が発芽、感染するための環境条件が整わない場合には即効性に欠き、感染致死による駆除に至る日数は3日〜1週間程度を要していた。このため、害虫は感染致死による駆除に至る前に作物を加害し、産卵、増殖を続け、防除を効果的に行なうことは困難な状況にあった。また、糸状菌の発芽、感染を早めるには、温度及び湿度などの発芽、感染に必要な環境条件を最適化する必要があった。
これに対して、昆虫病原性微生物自体を凝集した防除剤(特許文献2)、フスマ等の穀物かす及びでんぷんを含む培養媒体物(特許文献3及び4)が報告されている。
また、メタリジウム・アニソプリエ菌を培養付着させたフスマパウダーを散布するコガネムシ類の防除方法(特許文献5)、メタリジウム・アニソプリエ菌をセモリナに担持した害虫防除剤(特許文献6)、微粒子基材及び微生物を含有するポリマー層よりなる顆粒剤(特許文献7)が報告されている。
特開2008−61530 特開昭63−135308 特開昭63−148980 特開平4−4866 特開平6−166607 特開平10−509964 特開平11−505403
天敵微生物の研究手法(植物防疫特別増刊号No.2日本植物防疫協会発行)
本発明は、栄養、温度及び湿度などについて発芽、感染に必要な環境条件で病原性微生物を保持し、迅速且つ長期間に亘って防除効果を発揮することができる防除剤を提供することを目的の1つとする。
また、本発明は、土壌表面又は土壌中の生活と土壌外での生活とを含む生活史を有する害虫を効果的に防除することができる方法を提供することを他の目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために検討したところ、脱穀した、好ましくは更に精白又は破砕した小麦、オオムギ、ヒエ、アワ又は米を、好ましくは更に蒸し煮して得られる穀物材料に昆虫病原性微生物を接種して培養したところ、高い増殖性が認められることを見出した。また、増殖した培地をそのまま防除剤として用いることで、発芽、感染に必要な栄養、温度及び湿度などの環境条件を昆虫病原性微生物に提供でき、迅速且つ長期間に亘って防除効果を発揮し得ることを見出した。更に、このような防除剤を土壌表面に置くことで、生活史が土壌表面又は土壌中の生活と土壌外での生活とを含む有害昆虫を効果的に防除できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
即ち、本発明は、その一の実施形態において、害虫の防除剤であって、脱穀した、好ましくは更に精白又は破砕した小麦、大麦、ヒエ、アワ及び米からなる群から選択される少なくとも1種の穀物を、好ましくは更に蒸し煮して得られる穀物材料を含む(好ましくは当該穀物からなる)培地で、当該害虫に対して病原性を有する微生物を培養して得られる培養固形物を含む、防除剤を提供するものである。
本発明はまた、他の実施形態において、そのような防除剤を、土壌表面に置くことを特徴とする有害昆虫の防除方法を提供するものである。
ここで、本願明細書において「脱穀」とは、穀物を茎からはずし、次いで籾殻(もみがら)をはずす行為(だっぷという)又はそのような状態を意味する。
また、本願明細書において「精白」とは、小麦、大麦、ヒエ、アワ及び米等の糠(米の場合には米糠、大麦の場合には「麦糠」、小麦場合には「フスマ」ともいい、果皮と種皮で構成される)の少なくとも1部を除去する工程を意味する。また、本願明細書で用いる「精米歩合」とは、通常、白米のその玄米に対する重量の割合をいうが、本願明細書では、小麦、大麦、ヒエ、及びアワ等の他の穀物についても、精白前の穀物の重量に対する精白後の穀物の重量の割合を意味するものとして使用する。
また、本願明細書において「昆虫」という用語は、特に明示しない限り、幼虫、蛹、成虫等の総ての発生段階を含む意味で用いる。
以下、本発明による実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、当業者の有する技術常識により改変が加えられる態様も本発明の本質的特徴を損なわない限り包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
1.防除剤
本発明の害虫防除剤は、脱穀した小麦、大麦、ヒエ、アワ及び米からなる群から選択される少なくとも1種の穀物を含む培地で、当該害虫に対して病原性を有する微生物を培養して得られる、培養固形物等を含むものである。
後述する実施例で実証する通り、脱穀した穀物からなる培地は、昆虫病原性微生物の増殖性に優れ、高密度の昆虫病原性微生物を含む培養固形物を得ることができる。また、培養固形物をそのまま防除剤の有効成分として利用することで、栄養、温度及び湿度などの発芽、増殖及び感染に必要な環境条件を病原性微生物に提供することができる。このため、本発明の防除剤は、使用直後から高い防除効果を発揮することができるとともに、このような高いレベルの防除効果を長期間に亘って維持することができる。
培地を構成する穀物は、市販の又は天然に存在する品種を用いてもよく、また遺伝子工学的に改変を加えたものであっても可能である。
穀物は、用いる病原性微生物に応じて選択することが好ましいが、一般的には各種昆虫病原性微生物の増殖性が高い点で、小麦、大麦及び米からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、これらの少なくとも1種を主成分として(全穀物中50%以上)含むことがより好ましく、これらの少なくとも1種からなることが特に好ましい。また、昆虫病原性微生物がボーベリア(Beauveria)属に属する微生物の場合には、特に増殖性が高い点で、穀物は米を含むことが好ましく、米を主成分として(全穀物中50%以上)含むことがより好ましく、米からなることが特に好ましい。昆虫病原性微生物が、ヒルステラ(Hirsutella)属又はノムラエア属に属する微生物の場合にはやはり特に増殖性が高い点で小麦又は大麦が好ましい。
小麦としては、例えば、キタカミコムギ、アサカゼコムギ、しゅんよう、ナンブコムギ等を挙げることができ、大麦としては、例えば、ホテイムギ、あまぎ二条、ほうしゅん、ミユキオオムギ、ワセドリ、カワホナミ等を挙げることができる。また、米としては、ジャポニカ種やインディカ種等を挙げることができる。
米の場合、日本で食用とされるジャポニカ種等を使用してもよいが、インディカ種の米が昆虫病原性微生物の増殖性が高い点で特に好ましい。
これらの穀物は、玄米等糠を除去しないものでも使用可能ではあるが、やはり昆虫病原性微生物の増殖性がより高い点で、精白して糠の少なくとも1部を除去した穀物が好ましい。また、糠はできるだけ多く除去した方が昆虫病原性微生物の増殖性がより高くなるため好ましく、この点で、糠の50重量%以上を除去した穀物がより好ましく、糠を実質的に総て除去した穀物が更に好ましい。当技術分野で糠部分の除去の程度を示す指標として精米歩合があり、この指標によれば、精米歩合が95%以上の穀物が好ましく、精米歩合が92%以上の穀物がより好ましく、精米歩合が90%以上の穀物が特に好ましい。なお、通常、精米歩合が80%以上の穀物は、糠が実質的に総て除去されており、それ以上の精白処理は昆虫病原性微生物の増殖性を高める点で寄与しないと考えられる。
この精白による増殖効果は、ボーベリア(Beauveria)属、バーティシリウム(Verticillium)属、メタリジウム(Metharhizium)属又はノムラエ(Nomurae)属に属する昆虫病原性微生物で特に顕著である。
これら穀物は、培養初期の増殖速度の点から、精白に代え又は精白に加え、粉砕したものが好ましい。
また、使用する穀物はデンプンのアルファ化で菌による利用が促進される点から、蒸煮したものが特に好ましい。この際、水分の均一化の点から、穀物を水で浸漬した後蒸煮したものが好ましい。また、蒸煮は常圧から高圧の条件で行なうことができるが、穀類の硬化等の懸念から常圧条件で行なうことが好ましく、特に硬い場合は二度蒸しの条件で行なうことがより好ましい。
本発明においては、用いられる昆虫病原性微生物について特に制限はなく、目的とする昆虫に応じて適宜選択すればよい。本発明で用いられる前記昆虫病原性微生物としては、例えば、ボーベリア(Beauveria)属、バーティシリウム(Verticillium)属、メタリジウム(Metharhizium)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、ヒルステラ(Hirsutella)属又はノムラエ(Nomurae)属に属する微生物を挙げることができる。
ボーベリア属に属する糸状菌としては、例えば、ボーベリア バシアーナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア ブロンギアーニ(Beauveria brongniartii)等を挙げることができ、より具体的には、ボーベリア・バッシアナATCC74250株等を挙げることができる。
バーティシリウム(Verticillium)属に属する昆虫病原性微生物としては、例えば、バーティシリウム レカニ(Verticillium lecanii)を挙げることができ、より具体的にはバーティシリウム レカニ(Verticillium lecanii)2aF43(寄託番号FERM AP-20983)等を挙げることができる。
メタリジウム(Metharhizium)属に属する昆虫病原性微生物としては、例えば、メタリジウム アニソプリエ(Metharhizium anisopriae)、メタリジウム フラボビリデ(Metharhizium flavovirude)、メタリジウム シリンドロスポラエ(Metharhizium cylindrosporae)等の殺虫性糸状菌を挙げることができ、より具体的には、メタリジウム アニソプリエ IFO 5940等を挙げることができる。
ペシロマイセス(Paecilomyces)属に属する昆虫病原性微生物としては、例えば、ペシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)、ペシロマイセス・フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)、ペシロマイセス リナシナス(Paecilomyces tenuipes)等を挙げることができ、より具体的には、ペシロマイセス・テヌイペス ATCC44818、ペシロマイセス・フモソロセウスATCC20874等を挙げることができる。
ヒルステラ(Hirsutella)属に属する昆虫病原性微生物としては、例えば、ヒルステラ トンプソニ(Hirsutella thompsonii)等を挙げることができ、ノムラエア属に属する昆虫病原性微生物としては、例えば、ノムラエ リレイ(Nomurae rileyi)等を挙げることができる。
寄託機関に寄託された微生物以外の微生物は、例えば非特許文献1に記載の方法により自然界から分離することができる。例えば、糸状菌に感染している死亡昆虫などを採集し、死亡虫表面に形成された分生子を酵母エキス可用サブロウブドウ糖培地(ペプトン1%、酵母エキス1%、ブドウ糖2−4%、寒天1.5%)やツァペック培地(NaNO3 0.3%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.05%、KCl 0.05%、FeSO4・7H2O 0.001%、ショ糖 3%、寒天1.5%)などに接種して分離することができる。
また、適当な土壌をサンプリングし、アイスクリームカップなどの容器に詰めて、そこにカイコ、コガネムシなどの昆虫を2週間、25℃条件で放置することにより土壌中から昆虫病原性微生物を分離することができる。
採取した微生物を培養する培地は、液体培地及び固体培地の何れでもよい。各種培養方法の詳細は非特許文献1に記載されている。
また昆虫病原性微生物は、市販製品を用いてもよい。例えば、バータレック(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、マイコタール(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、ボタニガードES(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、ゴッツA(登録商標、住友化学(株))、プリファード(登録商標、東海物産(株))、バイオリサ・カミキリ〈登録商標、日東電工(株))等を挙げることができる。
各菌株の培地への接種は滅菌状態で行なうことが好ましい。また、培養条件としては、例えば、pH5.5〜7.0、培養温度25〜30℃、培養時間7〜10日間を典型例として挙げることができる。また、培養方法は、通気、撹拌培養等の好気的条件によるものが好ましい。
培養後の培養固形物は、防除剤としての利用する際の取り扱い易さや処理の効率性という点から乾燥することが好ましい。
乾燥条件は、例えば、35℃〜40℃、乾燥時間48時間〜60時間を典型例として挙げることができる。
培養により得られる培養固形物又はそれを乾燥した乾燥固形物は、菌数が使用した穀類の1g当たり1x103〜1x1011CFU(ColonyForming Unit:コロニー形成単位)の密度の微生物を含有するものが、迅速な効果を奏する防除剤を提供する点から好ましく、穀類の1g当たり1x10〜1x1011CFUの密度の微生物を含有するものがより好ましい。
また、本発明の防除剤は、粒径について特に制限は無いが、製剤化及び施用の際の利便性の点で通常長径0.3mm〜5mmの粒剤とし、長径0.5mm〜4mmの粒剤がより好ましい。また、得られた培養固形物又はそれを乾燥した乾燥固形物を後述する穀物粒子又は鉱物粒子で希釈する場合には、それらの粒径と近似した粒径とすることが好ましい。
また、本発明において、防除剤に含有される昆虫病原性糸状菌の量は、防除対象となる害虫、栽培作物、使用方法、使用時期等に応じて、適宜その量を調整すればよい。
通常は、迅速な効果を奏する防除剤を提供する点から、菌数が防除剤1g当たり1x10〜1x1011CFU(ColonyForming Unit:コロニー形成単位)となる密度で微生物を含有するように調製され、好ましくは、穀類の1g当たり1x10〜1x1011CFUの密度の微生物を含有するように調製され、特に好ましくは、穀類の1g当たり1x10〜1x1011CFUの密度の微生物を含有するように調製される。
従って、通常は、培養により得られる培養固形物又はそれを乾燥した乾燥固形物をそのまま防除剤として使用することができるが、他の物質で希釈する場合には、例えば培養固形物又はそれを乾燥した乾燥固形:希釈物質が、10:90〜90:10となる重量比で、培養固形物又は乾燥固形物を他の物質で希釈して防除剤中の昆虫病原性微生物の量を調整することができる。
防除剤に含有される昆虫病原性微生物の量を調整する場合には、当該微生物を培養する際に使用した培地と同様にして調製した(例えば、小麦、大麦、ヒエ、アワ又は米等の穀物を脱穀し、好ましくは更に破砕、精白、蒸煮、滅菌及び/又は乾燥等を行なった)穀物粒子を加えて希釈することができる。
また、その他の調整方法としては、例えば、バーミキュライト、ロウ石、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、ベントナイト、珪石、石灰石、酸性白土、珪藻土類、石膏、軽石、貝殻類、雲母又はコロイド性含水珪酸ソーダなどの鉱物質粒子を加えて希釈してもよい。
また、本発明の防除剤には、乾燥穀物粒子に対する酸化防止剤として、アスコルビン酸若しくはその誘導体、又はパラオキシ安息香酸誘導体などを加えてもよい。
本発明における防除剤は、昆虫病原性糸状菌以外の有効成分を含有してもよく、例えば、除草剤、他の各種殺虫剤、殺菌剤、植物生長調節剤、生長効果を助長させる共力剤、害虫誘引剤、植物栄養剤、肥料等を混合することも可能である。
後述する実施例で実証されるように、得られた培養固形物又は乾燥固形物は、素寒天培地(寒天2%)に静置すると、病原性微生物が穀物を栄養分として培地上に拡散できる。また、得られた培養固形物又は乾燥固形物をそのまま土壌表面に置くと、昆虫病原性糸状菌が作物栽培環境中で発芽、増殖して害虫に感染することができる。加えて、その防除効果は、使用直後から高く、少なくとも6週以上高レベルで持続する。
2.防除方法
本発明は、他の実施形態において、上述のような防除剤を、土壌表面に置くことを特徴とする有害昆虫の防除方法を提供する。このような防除剤の土壌表面への設置は、土壌中に防除剤を混入させて使用される態様のものと異なり、土壌による希釈がなく高密度の昆虫病原性微生物を害虫に作用させることができるため、防除効果が顕著に高くなる。また、その生活史が、土壌表面又は土壌中の生活と、土壌外での生活とを含む有害昆虫では、必ず、土壌表面又は土壌中から本発明の防除剤が設置されて病原性微生物が繁殖している土壌表面を通って土壌外で生活を営む場所(例えば作物茎葉部等)へ移動するため(或いはその逆)、効果的に害虫を防除することが可能となる。
このような土壌表面又は土壌中の生活と、土壌外での生活とを含む生活史を持つ有害昆虫としては、例えばアザミウマ類などのように、茎葉部分で卵から幼虫に成長し、その後土壌中に移行して土壌中で蛹化、成虫羽化し、羽化後は、再び土壌外で生活するもの、ハモグリバエ類、シンクイガ類、ネキリムシ類など幼虫期から蛹期に土壌中で生息する生活環を有するもの、ヤガ類のように幼虫時期に土壌中に生息し、夜間植物体を加害する生活環を有するもの、コガネムシ類、ゾウムシ類などのように卵から蛹期までを土壌中で生息する生活環を有するもの、さらにはケラ、コオロギ、シロアリなどその生活環の大部分を土壌中や土壌表面で生息するものがある。
アザミウマ類の昆虫としては、例えばヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、ミナミキイロアアミウマ(Thrips palmi)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)等がある。ハモグリバエ類の昆虫としては、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)、トマトモグリバエ(Liriomyza sativae)、アカザモグリハナバエ(Pegomya exilis)、ネギハモグリバエ(Liriomyza chinensis)、ナモグリバエ(Chromatomyia horticola)等がある。シンクイガ類の昆虫としては、モモシンクイガ(Carposina sasakii)、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、マメシンクイガ(Leguminivora glycinivorella)等がある。ネキリムシ類の昆虫としては、カブラヤガ(Agrotis segetum)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)等がある。ヤガ類の昆虫としては、例えばハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、シロイチモンジヨトウ(Spodoptera exigua)、タバコガ(Helicoverpa assulta)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、タマナギンウワバ(Autographa nigrisigna)等がある。
コガネムシ類の昆虫としては、例えばドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、ウスチャコガネ(Anomala diversa)、ヒラタアオコガネ(Anomala octiescostata)、アシナガコガネ(Hoplia communis)、ヒメアシナガコガネ(Ectinohoplia obducta)、セマダラコガネ(Anomala orientalis)、オオサカスジコガネ(Anomala osakana)、スジコガネ(Anomala testaceipes)、チビサクラコガネ(Anomala schonfeldti)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)、アオドウガネ(Anomala albopilosa)、アカビロウドコガネ(Maladera castanea)、コフキコガネ(Melolonthajaponica)、コイチャコガネ(Adoretus tenuimaculatus)、マメコガネ(Popillia japonica)等がある。ゾウムシ類の昆虫としては、例えばイネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、サビヒョウタンゾウムシ(Scepticus griseus)、アリモドキゾウムシ(Cylas formicarius)、シバオサゾウムシ(Sphenophrus venatus vestius)、コクゾウムシ(Sitophilus zeamaise)等がある。ハムシ類の昆虫としては、例えばキスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)等がある。ケラ類の昆虫としては、例えばケラ(Gryllotalpa orientalis)等があり、コオロギ類の昆虫としては例えばエンマコオロギ(Teleogryllus emma)がある。シロアリ類の昆虫としては、例えばヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)等のミゾガシラシロアリ科に属するもの、アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor)、ダイコクシロアリ(Cryptotermes domesticus)等のレイビシロアリ科に属するものがある。
本発明の防除剤及び防除方法が有効なその他の昆虫としては、ウンカ類、ヨコバイ類、アブラムシ類、カメムシ類、コナジラミ類、及び鞘翅目昆虫、鱗翅目昆虫又は双翅目昆虫等の翅目昆虫を挙げることができる。
ウンカ類としては、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等があり、ヨコバイ類としては、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)等があり、アブラムシ類としてはワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis pserudobrassicae)等があり、カメムシ類としては、アオクサカメムシ(Nezara antennata)、イチモンジカメムシ(Piezodorus hybne)、ホソヘリカメムシ(Riptortus clavatu)、マルカメムシ(Menida scotti)等があり、コナジラミ類としては、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolli)等があり、翅目昆虫としては、例えばニジュウヤホシテントウ、ネギコガ、イエバエ、ゴキブリ等がある。
防除剤は、栽培植物、防除対象たる害虫、栽培時期、害虫発生時期、病原性微生物の種類等に応じて、適宜好適な量を、好適な時期に使用すればよい。使用時期は、典型的には、栽培植物の幼苗定植前後1週間内に、好ましくは前後3日以内に、特に好ましくは幼苗定植直後に防除剤を栽培土壌表面に散粒することを挙げることができる。また、使用量は、防除剤に含有される細菌数にもよるが、典型的には、1m当り3g〜70gの量を散粒すればよく、持続的な効果を有する点からは、1m当り15g以上の量を散粒することが好ましく、1m当り20g以上の量を散粒することがより好ましく、1m当り30g以上の量を散粒することが好ましい。一方、1m当り20g以上の量を散粒すれば、ほぼ同程度の効果が得られるので、商業レベルでは、1m当り60g以下の量を散粒すればよく、1m当り50g以下の量を散粒することが好ましい。
なお、細菌量で表した場合、典型的な防除剤使用量は、1m当り1x10〜1x1011CFU/g(胞子数)であり、持続的な効果を有する点から、1m当り1x109〜1x1011CFU/g(胞子数)が好ましく、1m当り1.5x109〜1x1011CFU/g(胞子数)がより好ましく、1m当り2x109〜1x1011CFU/g(胞子数)が更に好ましくは、1m当り5x109〜1x1011CFU/g(胞子数)が特に好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(実施例1)各種穀類を用いた昆虫病原性糸状菌の培養
この実施例は、各種昆虫病原性糸状菌を、各種穀物を含む培地に接種して、昆虫病原性糸状菌の増殖に好適な培地を選択することを目的とする。
具体的には、まず、ボーベリア バシアーナATCC74250株、ボーベリア ブロンギアーニ(バイオリサ・カミキリ分離菌株)、バーティシリウム レカニ2aF43(寄託番号FERM AP-20983)、メタリジウム アニソプリエ IFO 5940、ペシロマイセス フモソロセウス ATCC20874、ペシロマイセス テヌイペス ATCC44818、ヒルステラ トンプソニ、ノムラエ リレイの8種の菌株を、それぞれポテト−デキストロース液体培地(ポテトエキス末. 0.4%, ブドウ糖. 2%, pH5.6)に接種、30℃、3日間、前培養を行なった。
一方、培地に用いる玄米、小麦、及び大麦の各穀物を脱穀し、玄米の一部は精白(精米歩合90%)した後、破砕し、次いで、水に15時間浸漬し、それぞれオートクレーブにて30分間蒸煮した。その後、上記の前培養した菌株を、蒸煮した各穀物に接種した。
接種後一度撹拌した後30℃、10日間培養した。培養後直ちに40℃、48時間の乾燥を行い、各菌株の増殖した粒状の培養固形物(以下「粒剤」と称する)を得た。各粒剤に含まれる菌株の菌数(CFU=Colony Forming Unit:コロニー形成単位)を計数するため、粒剤0.1gを磨砕後滅菌蒸留水で107倍〜109倍に段階的に希釈し、各希釈液の0.1mlをポテト−デキストロース寒天培地(ポテトエキス末. 0.4%, ブドウ糖. 2%, 寒天1.5%, pH5.6)に均一に塗布し、30℃、3日間培養した後、生育してきたコロニーの数を計数することで粒剤1g当りの菌数として算出した(なお、この菌数の測定は天敵微生物の研究手法(非特許文献)による)。結果を以下の表1に示す。
Figure 0005326043
上記の結果の通り、小麦(品種:キタカミコムギ)、大麦(品種:ホテイムギ)及び米(品種:ササニシキ)の何れも各種昆虫病原性微生物を高密度で増殖した。また、ボーベリア属の菌は米を使用した場合に特に菌数の増加が顕著であった。また、いずれの菌種でも精米を用いた培地で玄米を用いた培地に比べ菌数が増加し、穀物を精白することでより好適な環境を昆虫病原性微生物に提供できることも判明した。精白による効果は、特に、ボーベリア属、バーティシリウ属、メタリジウム属、ノムラエ属に属する微生物で顕著であった。また、ボーベリア属、バーティシリウ属、及びメタリジウム属に属する微生物は、精米を用いた培地で最も高い菌密度を達成した。一方、ヒルステラ属、ノムラエ属に属する微生物は、小麦又は大麦を用いた培地で最も高い菌密度を達成した。
(実施例2)各品種の米を用いた昆虫病原性糸状菌の培養
実施例1において増殖培地として米を用いた場合に各種昆虫病原性微生物が高い増殖性を示したことから、この実施例は、米の品種の相違による増殖性に対する影響を検証することを目的とする。
具体的には、日本産ササニシキ、日本産山田錦、及びタイ米(インディカ種)を実施例1に記載した穀物と同様に処理し(精米歩合90%)、ボーベリア バシアーナATCC74250株、バーティシリウム レカニ2aF43(寄託番号FERM AP-20983)、及びメタリジウム アニソプリエ IFO 5940の3種を処理後の各品種の米に接種した。結果を下記の表2に示す。
Figure 0005326043
上記の結果の通り、日本産ササニシキ、日本産山田錦、及びタイ米(インディカ種)のいずれにおいても高い増殖性が認められたが、中でもタイ米(インディカ種)を使用した場合により高い増殖性が認められた。
(実施例3)粒剤の大きさ
この実施例は、防除剤の粒径による防除効果への影響を検証することを目的とする。
具体的には、実施例2においてメタリジウム アニソプリエ IFO 5940を処理後のタイ米(インディカ種)に接種培養して増殖し、その後乾燥して得られた乾燥固形物をステンレス製(篩のサイズNo.5、No.10、No.35)の3種の篩を用いて、長径0.5mm未満、2mm以上4mm未満、及び4mm以上を有する3つの群に分けた。各群から乾燥固形物1gを素寒天培地(寒天2%, pH 6.8)の入った直径9cmシャーレの中央に置き、30℃、5日間培養し、各大きさの粒剤を静置したメタリジウム アニソプリエ IFO 5940の増殖性を測定した。下記の表3に各群に由来する微生物のコロニーの大きさを示す。
Figure 0005326043
上記の結果の通り、いずれの粒径でも高い増殖性が得られ、粒径の相違による影響は認められなかった。
(実施例4)粒剤の1ヶ月間放置による影響
この実施例は、本発明に従って製造された粒剤を長期放置にした場合の病原性微生物の菌数に対する影響を検証することを目的とする。
具体的には、実施例2においてタイ米(インディカ種)を栄養成分とする培地でメタリジウム アニソプリエ IFO 5940を増殖させ、乾燥して得られた乾燥固形物(菌密度は3.1x1010CFU/gであった)に、バーミキュライト又は珪藻土類と、酸化防止剤とを下記表4に示す質量比率で配合して防除剤を調製した(防除剤中の菌密度は3.1x10CFU/gとなる)。
調製後防除剤を1ヶ月間室温に放置して、その時点の菌数を実施例1に記載する方法に従って測定した。以下の表4に配合した成分、各成分の質量比、及び1ヶ月後の菌密度(CFU/g)をまとめて示す。
Figure 0005326043
上記の結果の通り、本発明の防除剤では、使用後1ヶ月経過した時点でも昆虫病原性微生物の菌密度が維持されており、持続的に高い防除効果を奏することが予想された。
(実施例5)土壌表面処理によるミカンキイロアザミウマに対する殺虫活性
この実施例は、本発明による防除剤を土壌表面に散粒した際の病原性微生物に対する殺虫活性を検証することを目的とする。対象とする病原性微生物は、ミカンキイロアザミウマであり、茎葉部分で卵から幼虫に成長し、その後土壌中に移行して土壌中で蛹化、成虫羽化し、羽化後は、再び土壌外で生活する。
この実験では、まず、実施例2においてタイ米(インディカ種)を栄養成分とする培地でメタリジウム アニソプリエ IFO 5940を増殖させ、乾燥して得られた乾燥固形物10質量%に、バーミキュライト又は珪藻土類85質量%と、アスコルビン酸(酸化防止剤)5質量%を配合して防除剤を調製した。
2009年6月12日に宮城県名取市のなす施設栽培圃場にてなす(品種:筑陽)をハウスに幼苗定植直後、土壌表面に調製した防除剤を1mあたり20g(菌密度:1x108CFU/g)散粒した。比較対象として、防除剤を土壌に混和した。土壌混和は、防除剤を1mあたり20g散粒後、耕運機により深さ10cm程度で土地を耕し均一に土壌中に混和して行なった。
処理後6週間までのナス全葉におけるミカンキイロアザミウマ幼虫の数(数/1株)の経時的変化を調査した。調査は、1処理区当たりナス幼苗3株におけるミカンキイロアザミウマ幼虫の数を調べ、これを同じ株について3反復行い、その平均値を調査結果とした。防除剤を適用しない例も含め結果を下記表5に示す。
Figure 0005326043
上記の結果の通り、本発明の防除剤を土壌表面に処理した場合の方が、土壌混和処理に比べて試験期間中ミカンキイロアザミウマ幼虫の密度が低密度に抑制された。ミカンキイロアザミウマ等アザミウマ類は茎葉部分で卵から幼虫に成長し、土壌で蛹化、成虫羽化する(一世代は約1週間である)。一般には農薬の葉面散布など地上部分への処理で防除するが、上記土壌処理、特に表面処理がアザミウマの幼虫の密度を長期間抑制したことは昆虫病原性糸状菌が栽培期間中持続してアザミウマ老令幼虫や羽化してくる成虫に感染した結果、産卵数やそれから孵化する幼虫の数が減少したためと考えられ、アザミウマのようなその生活史が地上部と土壌中の両方も有する害虫では、有効成分の土壌表面処理はとても有効な手段といえる。
(実施例6)異なる処理量によるミカンキイロアザミウマに対する殺虫活性
本実施例は、防除剤の使用量の相違による病原性微生物の防除効果に対する影響を検証することを目的とする。
具体的には、まず、実施例2においてタイ米(インディカ種)を栄養成分とする培地でメタリジウム アニソプリエIFO 5940、ボーベリア バシアーナATCC74250株、及びバーティシリウム レカニ2aF43(寄託番号FERM AP-20983)を増殖させ乾燥して得られた乾燥固形物10質量%に、バーミキュライト又は珪藻土類85質量%と、アスコルビン酸(酸化防止剤)5質量%を配合して防除剤を調製した。
次いで、なす(品種:筑陽)をハウスに幼苗定植直後、土壌表面に調製した防除剤を1m当り3g、10g、20g、及び50g散粒した。用いた防除剤の菌密度は、1x108CFU/gであった。比較対象として化学合成農薬であるジノテフラン粒剤をナス1株当たり1g株元に散粒した。
処理後6週間までのナス全葉におけるミカンキイロアザミウマ幼虫の数(数/1株)について経時的変化を調査した。調査は、1処理区当たりナス幼苗3株におけるミカンキイロアザミウマ幼虫の数を調べ、これを同じ株について3反復しその平均値を調査結果とした。防除剤を適用しない例も含め結果を下記の表6に示す。
Figure 0005326043
上記の結果の通り、化学合成農薬であるジノテフラン粒剤処理区では1ヶ月間の残効性の後、ミカンキイロアザミウマ幼虫が増加し始めた。
メタリジウム アニソプリエIFO 5940、ボーベリア バシアーナATCC74250株、バーティシリウム レカニ2aF43(寄託番号FERM AP-20983)で処理した場合には、無処理区に比べて試験期間中ミカンキイロアザミウマ幼虫の密度は低密度であり、最も少ない処理量である1mあたり3g処理区においても無処理に比べると昆虫増殖抑制効果が認められた。
防除剤を1m当たり異なる量散粒した場合には、使用量が多くなるほどミカンキイロアザミウマ幼虫の密度は低下し、特に処理後4週間以降の防除効果に顕著な差が見られた。より具体的には、何れの病原性微生物を含有する防除剤でも、1m当たり20g以上散粒すると処理後4週間以降であっても、ミカンキイロアザミウマ幼虫の密度は増加することなく、低レベルで維持されていた。

Claims (15)

  1. 害虫の防除剤であって、小麦、大麦、ヒエ、アワ及び米からなる群から選択される少なくとも1種の穀物を、脱穀し、精白及び/又は破砕し、蒸煮して得られる穀物材料を含む培地で、該害虫に対して病原性を有する微生物を培養して得られる、培養固形物、又は該培養固形物を乾燥して得られる乾燥固形物を含む、防除剤。
  2. 前記穀物材料が、前記穀物を精白して得られる、請求項1に記載の防除剤。
  3. 前記穀物は、米である、請求項1に記載の防除剤。
  4. 前記穀物材料が、米を精白して得られる、請求項3に記載の防除剤。
  5. 前記米は、インディカ種である、請求項3又は4に記載の防除剤。
  6. 前記昆虫病原性微生物が、ボーベリア(Beauveria)属に属する請求項3又は4に記載の防除剤。
  7. 前記昆虫病原性微生物が、ボーベリア(Beauveria)属、バーティシリウム(Verticillium)属又はメタリジウム(Metharhizium)属に属する、請求項2又は4に記載の防除剤。
  8. 前記穀物は、小麦又は大麦であり、前記昆虫病原性微生物が、ヒルステラ(Hirsutella)属、又はノムラエア属に属する請求項1又は2に記載の防除剤。
  9. 前記培養固形物又は乾燥固形物が、1g当たり1x10〜1x1011CFU(ColonyForming Unit:コロニー形成単位)の密度の昆虫病原性微生物を含有する、請求項1から8の何れか1項に記載の防除剤。
  10. 更に、バーミキュライト、ロウ石、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、ベントナイト、珪石、石灰石、酸性白土、珪藻土類、石膏、軽石、貝殻類、雲母、及びコロイド性含水珪酸ソーダからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物質粒子を含む、請求項1からの何れか1項に記載の防除剤。
  11. 請求項1から10の何れか1項に記載の防除剤を、土壌表面に置くことを特徴とする有害昆虫の防除方法。
  12. 前記有害昆虫の生活史が、土壌表面又は土壌中の生活と、土壌外での生活とを含む、請求項11に記載の防除方法。
  13. 前記害虫が、アザミウマ類、ハモグリバエ類、キノコバエ類、甲虫類、バッタ類又はチョウ・ガ類の昆虫である、請求項11又は12に記載の防除方法。
  14. 前記防除剤を1m当り20g以上土壌表面に置く、請求項11から13の何れか1項に記載の防除方法。
  15. 小麦、大麦、ヒエ、アワ及び米からなる群から選択される少なくとも1種の穀物を、脱穀し、精白及び/又は破砕し、蒸煮して穀物材料を得、
    該穀物材料を含む培地を調製し、
    該培地で、目的とする害虫に対して病原性を有する微生物を培養して培養固形物を得、
    任意に該培養固形物を乾燥して乾燥固形物を得る、工程を含む、
    害虫防除剤の製造方法。
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