JP5325702B2 - 照明カバー - Google Patents
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Description
従来、この耐擦傷性の改良のためには、ポリカーボネート樹脂成形品の表面に各種コーティングを施すことが行なわれているが、コーティング等の処理では、加工のためのコストと手間を要することから、ポリカーボネート樹脂組成物の配合組成を改良することにより、ポリカーボネート樹脂成形品自体に耐擦傷性を付与することが望まれる。
したがって、LEDの照明カバーとして必要な、長期間に亘る耐傷付き性の優れたポリカーボネート樹脂製照明カバーの開発が望まれていた。
本発明の照明カバーは、アルキルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなることを特徴とする。
本発明に使用する樹脂材料のポリカーボネート樹脂(A)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
本発明においてポリカーボネート樹脂に配合される有機スルホン酸ホスホニウム塩(B)は、下記一般式(1)で表される有機スルホニウム基と、下記一般式(2)で表されるホスホニウムカチオンからなる化合物である。
なお、ここでアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても、(一部)環状であっても良い。
ポリカーボネート樹脂には、さらに、光拡散剤を配合することが好ましい。
光拡散剤は、微粒子状の無機又は有機粒子であり、例えばガラス微粒子、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の有機微粒子があげられ、有機微粒子が好ましく、光拡散効果の点から微粒子は球状であるものが好ましい。
微粒子状の光拡散剤の好ましい平均粒径は0.1〜50μmであり、より好ましくは0.5〜30μmであり、特には1〜20μmのものである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属塩系難燃剤、無機フィラー系難燃剤が挙げられる。これらの中では、金属塩系難燃剤が好ましく、有機金属塩化合物がより好ましく、有機スルホン酸金属塩化合物が特に好ましい。有機スルホン酸金属塩化合物を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性、熱物性が良好なものになる。このような、有機スルホン酸金属塩化合物の中では、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の含フッ素脂肪族スルホン酸アルカリ金属塩や、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、((分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸アルカリ金属塩を好適に用いることができる。
さらに、難燃剤に金属塩化合物を選択する場合には、通常0.05質量部以上、1質量部以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性、湿熱安定性が良好なものとなる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂及び有機スルホン酸ホスホニウム、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
上記のポリカーボネート樹脂組成物は、以下に詳記する各照明カバーに応じた任意の形状に成形される。照明カバーの成形体を製造する方法は、特に限定されず、各照明カバーの形状に対応した成形法で、ポリカーボネート樹脂組成物に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
照明カバーとしては、特にその形状や用途に制限はなく、各種の照明灯・照明器具のカバーとして使用できる、例えば、蛍光ランプや白熱電球のカバーやランプシェード、浴室灯、シャンデリア、スタンド、ブラケット、行燈、シーリングライト、ペンダント型ライト、ガレージライト、軒下灯、門柱灯、ポーチライト、ガーデンライト、エントランスライト、足元灯、階段灯、誘導灯、防犯灯、ダウンライト、ベースライト、電飾看板、サイン灯等のカバー、及び自動車、自動二輪車等をはじめとする車両用灯具向けのカバー等に好適に用いることができる。
特に、LEDや有機EL等の放熱量の少ない光源を用いる照明器具に好適に用いることができる。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価法は、以下のとおりである。
JIS K−7136に準拠し、上述の平板状試験片を試験片とし、ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH−2000型」)で、3mm厚における全光線透過率(単位:%)を測定した。数値が高いほど、輝度が高いことを意味し、照明カバーとして用いる場合に好ましい。
(1)耐衝撃性
ASTM D256に準拠して、下記するアイゾット衝撃試験片(ノッチ付き)を試験片とし、23℃の温度でアイゾット衝撃強度(単位:J/m)を測定した。数値が大きいほど、耐衝撃性が優れていることを意味し、照明カバーとして用いる場合に好ましい。
ASTM D790に準拠して、下記する曲げ試験片を試験片とし、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)及び、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。曲げ強度、曲げ弾性率は共に、数値が大きいほど、剛性が優れていることを意味し、長尺状照明カバーとして用いる場合に好ましい。
(1)ビッカース表面硬度
下記する平板状試験片を試験片とし、Akashi微小硬さ試験機HM−124を用いて、試験力:9.807N、時間:10secの条件にてビッカース硬度を測定した。数値が大きいほど、傷付き防止性に優れていることを意味し、照明カバーとして用いる場合に好ましい。
ビッカース硬度は、対面角θが136°の正四角錐のダイヤモンド圧子で試料に試験力Fを加え、生じたくぼみの対角線長さの平均値dから求まるくぼみの表面積Sで試験力を割った値、F/Sで求められ、下記式(1)に記載の算出式にて与えられる。
HV:ビッカース硬度
k:定数(k=1/gn=1/9.806650≒0.102)
F:試験力(N)
S:くぼみの表面積(mm2)
d:くぼみの2方向の対角線長さの平均(mm)
θ:ダイヤモンド圧子の対面角(136°)
gn:標準重力加速度
をそれぞれ意味する。
耐擦傷性の評価として、以下のようにして、傷断面積を測定した。
図1(a)および図1(b)は、その測定方法に使用した治具を説明するため図であり、図1(a)は縦断面図、図1(b)は平面図である。図1(a)に示す如く、10mmφの平滑底面を有する円柱状治具1に、グラス拭き用ポリエステル布2を張り付け、1.5kgの荷重をかけて、ストローク巾100mm、速度50回/分、200往復の条件で、ASTMダンベル試験片に対して往復摺動試験を行い、試験後の試験片3の摺動面の中央部分について、表面粗さ計を用いて厚さ方向の断面におけるキズの断面積を算出した。
試験は5本の試験片に対して同一条件で行い、5本の試験片で求められたキズ断面積のうち、最大のものと最小のものを除き、残る3つの値の平均値を求め、この平均値をキズ断面積とした。数値が小さいほど、傷付き防止性に優れていることを意味し、照明カバーとして用いる場合に好ましい。
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:「ユーピロンS−3000、粘度平均分子量:21,000」100質量部と、アルキル基としてドデシル基を主成分とするアルキルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.5質量部とを、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、前記アルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩は、前記ポリカーボネート樹脂と予備混合した10質量%マスターバッチを使用し、上述の配合量となるよう配合した。
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、名機製作所製のM150AII−SJ型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、長さ100mm、幅50mm、厚さ1−2−3mmの3段平板状試験片、3.2mm厚のアイゾット衝撃試験片、6.4mm厚の曲げ試験片、及びASTMダンベル試験片を成形した。このような方法で作製した成形品を、上記した評価用の試験片として用いて評価を行った。
アルキルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の配合量を1.6質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
アルキルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の配合量を3質量部とした他は、実施例1と同様にして、評価を行った。
アルキルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を配合することなく、ポリカーボネート樹脂100質量部のみを使用した以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。
これらの結果を表1に示す。
2:ポリエステル布
3:試験片
Claims (1)
- アルキルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなることを特徴とする照明カバー。
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