JP5323277B1 - コーヒー飲料及びその製造方法、並びにコーヒー飲料の雑味低減方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
クロロゲン酸類が高含有であるにも関わらず、クロロゲン酸類、及び浅煎り豆等の生臭みに起因する雑味を低減し、良好な香味と呈味を兼ね備えたコーヒー飲料を提供する。
【解決手段】
クロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料であって、
飲料液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)[CQ]と焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量(ppm)[R]が以下の(a)、(b)の条件を共に満たすことを特徴とするコーヒー飲料。
(a)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]が80〜250である。
(b)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]と、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R]との比、[R]/[CQ]が1.0〜7.0である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、コーヒー飲料であって、特に生理活性機能を有するクロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料及びその製造方法、並びにコーヒー飲料の雑味低減方法に関する。
コーヒーは古来より飲料としてのみならず、その独特の香りを利用したフレーバー添加剤等としても広く利用されてきた代表的な嗜好性食品である。
特にコーヒー飲料は、茶と並び多くの人々に愛飲されている飲料であり、上市されている製品の提供形態も多岐に亘っている。
コーヒー関連製品の販売形態としては、例えば、焙煎前の生豆、焙煎コーヒー豆、若しくは焙煎コーヒー豆の粉砕物、前記コーヒー豆粉砕物を布、不織布、若しくは紙等の抽出用バッグに封入した抽出バッグの形態、焙煎コーヒー豆抽出液の濃縮液の形態、または前記抽出液を湯水に簡単に溶解しうるよう、凍結乾燥等の手段によって固化した所謂インスタントコーヒーの形態等がある。
また、抽出したコーヒーを缶、PETボトル等の容器に封入したRTD(Ready To Drink)タイプの容器詰コーヒー飲料は、いつでも手軽にコーヒー飲料を楽しむことができるというその利便性により、清涼飲料市場においても、最大の市場規模を有しており、製品に求められる消費者ニーズも多様化している。この多様化した消費者ニーズに応えて、ブラックコーヒー(無糖、有糖)、ミルク入りコーヒーをはじめとして、多種多様なバリエーション製品が多数上市されており、販売形態についてもコールド販売から加温販売まで様々である。
また、コーヒーの含有成分であるカフェインは、覚醒作用等の生理活性機能を有する成分として古くから知られている。カフェインは適量の摂取であれば、前記覚醒作用の他、血管拡張作用、胃腸における消化液の分泌促進作用等、様々な作用が期待できるが、一度に過剰に摂取した場合には、身体に悪影響を及ぼす可能性もあることから、近年ではカフェイン含有量を選択的にコントロールした製品も多く存在している。
昨今、食品の生理活性機能への関心の高まりに伴い、カフェイン以外の生理活性機能成分の分析研究も進み、コーヒーには複数の生理活性機能成分が含まれることが明らかとなり、コーヒー飲料は、単なる嗜好性飲料から機能性飲料としての役割も注目されるようになってきた。
近年注目されているコーヒーの生理活性機能成分の一つに、クロロゲン酸がある。
クロロゲン酸は所謂ポリフェノールの一種であり、5−カフェオイルキナ酸とも別称される。
コーヒー酸のカルボキシル基とキナ酸の水酸基とが脱水結合した構造を有し、抗酸化力を備える植物成分の一つである。
また、前記クロロゲン酸に加え、コーヒー酸が結合するキナ酸の水酸基位置が異なる、2つの異性体(3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸)、コーヒー酸が2つ結合したジカフェオイルキナ酸類、及びコーヒー酸の代わりにフェルラ酸が結合したフェルラキナ酸を含めて、クロロゲン酸類と総称され、いずれもクロロゲン酸と同じく抗酸化力を有している。
クロロゲン酸類の生理活性機能としては、血圧降下作用、及び脂肪燃焼作用等が既に公知であり、これらの生理活性機能を発揮させるために、所定量以上のクロロゲン酸及び/又はクロロゲン酸類を含有するコーヒー飲料、脂肪燃焼促進剤等が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
また、クロロゲン酸類を多く含有することによって強まる苦味を、アミノ酸の添加によってマスクしたコーヒー飲料が提案されている(特許文献3)。
コーヒー豆中のクロロゲン酸類の含有量は生豆に多く、焙煎することによって次第に減少する。
従って、コーヒー飲料中のクロロゲン酸類の含有量を高めるためには、焙煎度が低い、所謂浅煎り豆の使用率を高めるか、若しくは別途生豆や浅煎り豆由来の抽出物(エキス)を、コーヒー抽出液に別途添加する等の方法が考えられる。
しかしながら、前記の方法によってクロロゲン酸類の含有量を高めることが可能であるものの、生豆や浅煎り豆由来の特有の生臭さと、高含有のクロロゲン酸類によって、コーヒー特有の良好な苦味と酸味のバランスが崩され、代わりに雑味が強調されてしまうという問題を有していた。
クロロゲン酸類は、それ自体苦味を有しているが、コーヒーの苦味はクロロゲン酸類以外にも、カフェイン、タンニン等といった複数の成分が関与していることから、特許文献3の発明に係るコーヒー飲料のように、クロロゲン酸類に起因する苦味のみを単純にマスクしても、前記雑味を低減し、コーヒー飲料としての良好な香味を確保する点においては不十分であり、また、別途添加するアミノ酸により、飲料液の呈味にも悪影響を及ぼすことが考えられる。
前記の各先行技術文献に記載された発明は、コーヒー飲料の香味や呈味の全体的な改善について一定の成果があると考えられる。
しかしながら、上述の通り、単に別途の添加物によって特定の味をマスクする手法では、結局コーヒー飲料としての香味バランスを崩す要因ともなる。
従って、クロロゲン酸類を所定量以上に含有しながらも、クロロゲン酸類、及び浅煎り豆等の生臭みに起因する雑味を低減し、良好な香味と呈味を兼ね備えたコーヒー飲料を提供するためには、別途、コーヒー由来以外の成分を添加するのではなく、コーヒー抽出液中の含有成分を用いて、香味や呈味の調整、及びその評価を行うことが望ましい。
しかしながら、現在までにおいて、前記の調整を行うために最適な評価指標は提供されておらず、調整作業は、過大な試行錯誤を要求される非常に困難なものであった。
WO2005/072533 特開2010−148453号 特開2012−062275号
本発明の目的は、クロロゲン酸類を多く含有するにも関わらず、クロロゲン酸類、及び浅煎り豆等の生臭みに起因する雑味を低減し、良好な香味と呈味を兼ね備えたコーヒー飲料を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、後述の通り定義付けられるコーヒー抽出液中の「焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)」の含有量[R]と、クロロゲン酸類の合計含有量[CQ]との関係に着目した。
所定量以上のクロロゲン酸類を含有するコーヒー飲料液中において、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)の含有量[R]と、同じく抽出液中のクロロゲン酸類含有量[CQ]との相関を、所定の数値範囲となるように調整することによって、クロロゲン酸類による苦味と、浅煎り豆等の生臭みに起因する雑味が低減され、コーヒーらしいロースト感や重厚な香りと深いコクが得られ、且つ良好な香味及び呈味、並びに飲み応えを具備したコーヒー飲料が得られることを見出した。
即ち、本発明を、詳述すれば以下のとおりである。
(1)
クロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料であって、飲料液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)[CQ]と焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量(ppm)[R]が、以下の(a)、(b)の条件を共に満たすことを特徴とするコーヒー飲料(発明1)。
(a)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]が80〜250である。
(b)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]と、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R]との比、[R]/[CQ]が1.0〜7.0ある。
(2)
飲料液中の焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R](ppm)が、200〜1400であることを特徴とする1のコーヒー飲料(発明2)。
(3)
飲料液中のクロロゲン酸類含有量[CQ](mg/100g)が、100〜250であることを特徴とする1又は2のコーヒー飲料(発明3)。
(4)
飲料液中のジカフェオイルキナ酸類含有量(mg/100g)[diC]と、前記クロロゲン酸類含有量[C]の比[diC]/[C]が、0.07〜0.15であることを特徴とする1〜3いずれか1のコーヒー飲料(発明4)。
(5)
前記ジカフェオイルキナ酸類の含有量[diC]が9.0〜30.0であることを特徴とする4のコーヒー飲料(発明5)。
(6)
ブラックコーヒーであることを特徴とする1〜5いずれか1のコーヒー飲料(発明6)。
(7)
容器詰飲料であることを特徴とする1〜6いずれか1のコーヒー飲料(発明7)。
(8)
クロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料の製造方法であって、飲料液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)[CQ]と焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量(ppm)[R]が、以下の(a)、(b)の条件を共に満たすように調整されることを特徴とするコーヒー飲料の製造方法(発明8)。
(a)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]が80〜250である。
(b)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]と、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R]との比、[R]/[CQ]が1.0〜7.0ある。
(9)
飲料液中のジカフェオイルキナ酸類含有量(mg/100g)[diC]と、前記クロロゲン酸類含有量[C]の比[diC]/[C]が、0.07〜0.15であることを特徴とする8のコーヒー飲料の製造方法(発明9)
(10)
クロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料の雑味低減方法であって、飲料液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)[CQ]と焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量(ppm)[R]が、以下の(a)、(b)の条件を共に満たすように調整されることを特徴とするコーヒー飲料の雑味低減方法(発明10)。
(a)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]が80〜250である。
(b)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]と、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R]との比、[R]/[CQ]が1.0〜7.0ある。
(11)
飲料液中のジカフェオイルキナ酸類含有量(mg/100g)[diC]と、前記クロロゲン酸類含有量[C]の比[diC]/[C]が、0.07〜0.15であることを特徴とする10のコーヒー飲料の雑味低減方法(発明11)。
本発明によれば、クロロゲン酸類が高含有であるにも関わらず、クロロゲン酸類、及び浅煎り豆等の生臭みに起因する雑味を低減し、良好な香味と呈味を兼ね備えたコーヒー飲料を提供することができる。
本願発明の実施形態について、以下詳述するが、本願発明の技術的範囲から逸脱しない限りにおいて、以下に示す実施形態以外の公知手法を適宜選択することも可能である。
1.コーヒー飲料
本実施形態においてクロロゲン酸類が高含有であるコーヒー飲料は、通常のコーヒー飲料と同様、原料となるコーヒー豆を所定時間焙煎した後に粉砕したものを、熱湯により抽出する抽出工程を経て得られるコーヒー抽出液を、単体若しくは複数種混合して得られる。
クロロゲン酸類の含有量は、豆種や焙煎度によっても異なる為、使用するコーヒー豆の品種は、単独及び/又は2以上の豆種を混合して用いることができ、その混合比率も所望の値に適宜変更することが可能である。
また、前記抽出工程においては、任意の公知方法を選択することができるが、紙製若しくは布製のフィルターによるろ過抽出を用いる方法が望ましい。
なお、抽出液においてクロロゲン酸類の含有量を高める方法としては、浅煎り豆の使用比率を上げる他、必要に応じ、浅煎り豆若しくは生豆の抽出エキスを添加する等の方法を適宜選択することができる。
コーヒー飲料を製造する場合は、前記の抽出工程に加え、濃縮等の工程を経た抽出液を用いることもできる。
更に、前記抽出工程に加え、濾過工程や遠心分離工程などの清澄化工程、殺菌工程、容器充填工程等を経ることができる。
また、本実施形態にかかるコーヒー飲料には、本願発明の技術的範囲を逸脱しない限りにおいて、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液、糖アルコール等の糖分の他、抗酸化剤、pH調整剤、乳化剤、香料、並びに生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、及びれん乳等の乳成分といった添加物を添加することができるが、本発明の効果をより顕著にするためには、少なくとも乳成分を添加しないブラックコーヒーであることが望ましい。
また、前記抗酸化剤としては、アスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸又はその塩等が挙げられるが、このうちアスコルビン酸又はその塩等が特に望ましい。
また、前記乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等を選択することができる。
2.原料豆
また、抽出に用いるコーヒー豆の産地としては、ブラジル、コロンビア、タンザニア、エチオピア等が挙げられるが、特に限定されない。また、コーヒー豆の品種としては、アラビカ種、ロブスタ種等が挙げられる。コーヒー豆は、1種類で用いても、2種以上をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆の焙煎は公知の方法を用いて行い、各成分の調整に必要な抽出物を得るために焙煎度(L値)についても適宜調整することができ、L値が大きい、即ち浅煎り豆の使用比率を上げることによって、抽出液のクロロゲン酸類の含有量を増加させることができる。
3.容器
本実施形態に係るコーヒー飲料の容器としては、PETボトル、缶(アルミニウム、スチール)、紙、プラスチック、レトルトパウチ、瓶(ガラス)等が挙げられるが、レトルト殺菌処理への耐熱性や、加温販売などを考慮する必要がある場合には、缶(アルミニウム、スチール)、若しくは強化層や酸素吸収層などを有する強化型プラスチック容器を用いることが望ましい。
本実施形態に係るコーヒー飲料の殺菌処理は、例えば金属缶のように容器に充填後加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。殺菌方法としては、レトルト殺菌処理等が挙げられる。
以下本実施形態における、コーヒー抽出液の含有成分について詳述する。
4.クロロゲン酸類
本実施形態においてクロロゲン酸類とは、前述の通りモノカフェオイルキナ酸、ジカフェオイルキナ酸、及びフェルラキナ酸の総称とし、クロロゲン酸類の含有量(mg/100g)は、以下表1に示す各成分の含有量の合計とする。
以下は、モノカフェオイルキナ酸の5−カフェオイルキナ酸の構造を示したものである。
Figure 0005323277
Figure 0005323277
本実施形態のコーヒー飲料にあっては、表1に示す各成分の含有量合計、即ちクロロゲン酸類の含有量(mg/100g)は、80〜250であり、100〜250がより望ましく、100〜230が更に望ましく、110〜220が最も望ましい。
クロロゲン酸類含有量が80未満の場合、クロロゲン酸類の生理活性機能を期待しにくくなり、また、250を超過すると、雑味低減効果を十分に期待できなくなる。
また、モノカフェオイルキナ酸と比較して、苦味、渋味が強いジカフェオイルキナ酸の含有量は、クロロゲン酸類の含有量に対し0.07〜0.15の比率であることが望ましく、0.07〜0.10がより望ましく、0.07〜0.09が最も望ましい。
5.焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー
(RCPO:Roasted Coffee Polyphenol Oligomer)
本願において、焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマーは以下のように定義される成分の集合体である。
即ち、焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)は特定の単一成分を指し示すものではなく、その定量値は、以下の条件における高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析で得られたクロマトグラフにおいて、前駆体である5−カフェオイルキナ酸(5−CQA)を指標物質として、得られた検量線を用いて定量される(単位:ppm)。
=HPLC条件=
・カラム:Cadenza CD−C18
(4.6mmΦx150mm、インタクト株式会社)
・移動相:
A:0.05M酢酸水溶液
B:アセトニトリル
・流速:0.8ml/min
・カラム温度:40℃
・グラジェント条件:
分析開始から5分後まではB液7%、
5分から11分まででB液20%、
1分から17分まででB液20%保持、
17分から18分まででB液90%、
18分から23分まで90%保持、
23分から24分まででB液7%に戻す
24分から30分までで0%、
・検出:A280nm (データ採取時間は30分)、ピーク面積で定量
・注入量:10μL
・標準物質:5−カフェオイルキナ酸(略称:5−CQA)
前記測定条件において、焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)は18分から23分までの保持時間で得られるピークである。
前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)の含有量は5−カフェオイルキナ酸(5−CQA)の検量線をもとに算出される(単位:ppm)。
なお、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)には、5−カフェオイルキナ酸の加熱生成物の他、コーヒー豆の焙煎過程において生じるその他複数の生成物を含有することから、個々の成分について個別に定量することは困難であるが、焙煎度の指標であるL値が低くなる、即ち深煎りとなるにつれて増大する傾向がある事が確認されており、それ単一では、コーヒー飲料中において苦味や雑味の要因物質であると考えられる。
抽出液を適宜ブレンドすることによって本願の要件を満たすコーヒー飲料を調整することが可能である。
本願発明は、本来的には、むしろ雑味の要因の一つと考えていた焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)が、クロロゲン酸類が高含有であるという条件下においては、クロロゲン酸類と一定の含有比に調整されることによって、クロロロゲン酸や、浅煎り豆等の生臭みに起因する雑味を低減し、香味や呈味を向上させるという、全く新しい知見に基づくものである。
本実施形態にあっては、焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)の含有量(ppm)は、200〜1400であることが望ましく。200〜1000がなお望ましく、200〜800が更に望ましい。
また、焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)の含有量[R]と前記クロロゲン酸類の含有量[CQ]との比[R]/「C」は、1.0〜7.0の範囲であり、1.0〜6.0がより望ましく、1.0〜5.0が更に望ましい。
前記範囲を逸脱した場合、雑味低減効果が不十分となる。
6.キナ酸
キナ酸は、キナ酸ラクトンのエステル結合が加水分解した構造を有する環式ヒドロキシ酸である。キナ酸とコーヒー酸がエステル結合した場合に上述のクロロゲン酸が生成される。
具体的には以下の化学式2に示す構造を有する。
本実施形態にあっては、キナ酸含有量(ppm)は450〜1200が望ましく、450〜1000がより望ましく、450〜800が更に望ましい。
キナ酸の含有量が前記範囲内にあることにより、苦味と酸味のバランスを好適な状態に保持することができる。
Figure 0005323277
7.キナ酸ラクトン
キナ酸ラクトンは、キノラクトン、若しくはキニドとも称され、キナ酸のカルボキシル基と水酸基が脱水結合した構造を有し、コーヒー豆の焙煎工程において生成されることが知られ、以下化学式3の構造を有する(1、5−キノラクトンの例)。
本実施形態にあっては、キナ酸ラクトン含有量(ppm)は3.0〜15.0が望ましく、4.0〜14.0がより望ましく、7.0〜14.0が更に望ましい。
前記範囲内にあることにより、保管時において酸味が過度に増大することを抑制しうる。
Figure 0005323277
キナ酸ラクトンは、抽出液中において、次第に加水分解され再びキナ酸となり、本反応は、液温が高いほど顕著に進行することから、抽出液に加えられる熱履歴の指標ともなり得る。
なお、キナ酸ラクトンの定量は、例えば以下のような条件で行うことができる。
(キナ酸ラクトンの定量方法例)超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)およびトリプル四重極質量分析装置(TQD)を用い、キナ酸ラクトン標準品による絶対検量線法で行う。以下に詳細条件を示す。
=UPLC条件=
・カラム:ACQUITY UPLC BEH C18(2.1mmΦx100mm、ウォーターズ株式会社)
・移動相:
A:MilliQ水
B:アセトニトリル
・流速:0.2ml/min
・カラム温度:40℃
・グラディエント条件:
分析開始から2分まではB液5%、
2.1分からB液60%に切り替え、4.5分まで保持、
4.6分からB液5%に切り替え、8分まで5%保持
・注入量:2μL
=TQD条件=
・分析モード:ESIネガティブ Vモード
・ソース温度:120℃
・デソルベーション温度:400℃
・キャピラリー電圧:2.5kV
・サンプリングコーン電圧:35V
・デソルベーションガス:600L/Hr
・スキャンタイム:0.2セカンド
・コリジョン電圧:10V
・チャンネル:m/z173 > m/z93
・標準物質:キナ酸ラクトン(略記:QAL)
なお、本方法の他、任意の公知の手法を選択することもできる。
8.クエン酸
3つのカルボキシル基を有する有機酸であり、柑橘類、梅類に多く含まれ、コーヒーにも含まれることが知られている。
レモン様の酸味を有し、従来から食品添加物としても用いられている。
コーヒー抽出液には、キナ酸、クエン酸の他にも複数種の有機酸が含まれているが、クエン酸とキナ酸の含有量は他の有機酸と比較して多く、有機酸全体の6〜7割程度を占めている。クエン酸の含有量と前記キナ酸の含有量との合計量(ppm)は、500〜2000が望ましく、550〜1800がより望ましく、600〜1000が更に望ましい。
なお、前記キナ酸及びクエン酸の定量は、例えば以下の方法により行うことができ、その他公知方法を選択することもできる。
キナ酸及びクエン酸等の有機酸は以下の方法によって定量することができる。
(有機酸の定量方法)
測定対象試料を純水にて任意の割合で希釈し、メンブレンフィルターにて濾過後、分析に供する。
=装置構成=
・UV−VIS検出器:L−7420 (日立ハイテク(株))
・ポンプ:1525Binary HPLC Pump (日本ウォーターズ(株))
・オートサンプラー:717Plus (日本ウォーターズ(株))
・カラム:RSpak KC-LG (8.0mmID×50mm) + DE-613 (6.0mmID×150mm) + KC-811 (8.0mmID×300mm) x 2(昭和電工(株))
=分析条件=
・サンプル注入量:30μL、
・流量:1.0mL/min、
・検出波長:430nm、
・カラムオーブン設定温度:50℃、
・移動相:2.5mM過塩素酸
・反応試薬:ST3−R(昭和電工(株))
・反応試薬流速:1.0mL/min
なお、前記の方法の他、任意の公知方法を選択することもできる。
9.カフェイン
プリン環を有する有機化合物であり、強心・興奮作用、覚醒作用を備えることが従来から知られている。
また、コーヒーの他、茶、チョコレート等にも含有され、苦味を呈し、コーヒーにおいても苦味成分の一つであるが、カフェインを除いた、所謂デカフェコーヒーにおいても変わらず苦味を有することから、コーヒーの苦味自体は、カフェインの他にも複数の成分が複雑に関与して形成されていると考えられる。
なお、本実施形態にあっては、カフェインの含有量(mg/100ml)は20〜150であることが好ましく、30〜130であることがなお好ましく、50〜120であることが更に好ましく、70〜115であることが最も望ましい。
これによって本発明の効果を享受でき、更に呈味や香味に優れた、コーヒー飲料を得ることができる。
10.その他成分
本実施形態において、コーヒー飲料に含有する成分としては、前記の他、香気に関与するピラジン類などの各種化合物、及びニコチン酸などが含有されていてもよい。
上述の各成分の含有量は、コーヒー飲料を混合することによって変動しても、本願発明の要件を満たす限りにおいては、本願発明の効果を享受することができる。
本実施形態においては、上述した成分以外の含有量等は下記の通りとした。
(タンニン)
本実施形態においては、タンニンの含有量(mg/100g)は、90〜250であることが望ましく、100〜240であることがなお好ましく、110〜230であることが更に好ましい。
(pH)
本実施形態におけるコーヒー飲料及び/又はコーヒー飲料のpHは中性〜弱酸領域である5.0〜6.9であることが望ましく、5.4〜6.5であることがより望ましく、6.0〜6.4であることが更に望ましい。
(その他添加物)
また、本実施形態においては、呈味性に悪影響を与えない範囲において、pH調製剤、例えば炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)等を添加することができる。
炭酸水素ナトリウムの場合、公知の方法で得られるものを用いることができる他、市販品を用いることもできる。
以下に容器詰コーヒー飲料を例として、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
1.コーヒー飲料の製造
本実施例においては、以下の表2に示す条件で抽出したコーヒー抽出液を準備した。抽出液1〜抽出液5)を準備し、これらを適宜混合することによって、実施例及び比較例試料を調製した。
前述の通り、コーヒー抽出液におけるクロロゲン酸類、焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー(RCPO)の含有量は、豆種や焙煎条件等によって夫々異なることから、表2に示すように、予め複数種のコーヒー抽出液を準備して、各抽出液の成分を測定しておき、公知の手段を用いて混合、調製することによって、所望の成分構成のコーヒー飲料を調製することができる。
なお、各成分の測定方法については特に制約はないが、本実施例においては、以下の方法によってクロロゲン酸類の含有量を測定した。
(クロロゲン酸類の定量方法)
本実施例にあっては、下記方法によってクロロゲン酸類の含有量の定量分析を行った。
測定対象試料を、移動相Aにて適量希釈し、メンブレンフィルターにて濾過後、分析に供した。
=装置構成=
・UV検出器:2487 デュアル λ UV/VIS 検出器(日本ウォーターズ(株))
・HPLC:アライアンス2695 セパレーションモジュール(日本ウォーターズ(株))
・カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))
=分析条件=
・サンプル注入量:10μL、
・流量:1.0mL/min
・検出波長:325nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:0.05M酢酸、10mM酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
・溶離液B:アセトニトリル
=濃度勾配条件=
・100%Aから90%Bへのグラディエント法
=定量方法=
・モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、ジカフェオイルキナ酸の合計9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質として濃度を算出した。
本実施例においては、以下の条件によって抽出したコーヒー抽出液を準備した。
Figure 0005323277
(実施例試料、比較例試料の調製)
前記コーヒー抽出液を公知の手法によって所定割合混合することによって、以下の表3における実施例試料1乃至8及び、比較例試料1乃至4を調製し、無菌状態で直ちに密封し、実施例試料、比較例試料を作成した。
また、調製にあっては、必要に応じて前記コーヒー抽出液を水で希釈したものを用いてもよく、また所定濃度に濃縮して用いても良い。
Figure 0005323277
2.官能評価
前記表2の通りに調整された実施例1乃至8、及び比較例1乃至4について、以下の評価項目により官能評価試験を実施した。
官能評価試験は、7人のパネラーに委託して行い、各項目を以下に示す基準で評価したものである。ここで、表中の数値は、7人のパネラーの評価の平均値を算出(小数点以下は四捨五入)したものである。
<生臭みに起因する雑味>
1点:雑味を強く感じる
2点:やや雑味を感じる
3点:普通
4点:あまり雑味を感じない
5点:全く雑味を感じない
<ロースト感>
5点:非常に強く感じる
4点:強く感じる
3点:十分感じる
2点:やや感じる
1点:あまり感じない
<香味バランス>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:ややバランス悪い
1点:バランスが悪い
<総合評価>
各評価項目を総合的に勘案して、商品としての適性を評価した。
◎:商品としての適性に非常に優れている(10点以上)
○:商品としての適性に優れている(7点〜9点)
△:商品としての適性は標準的である(6点)
×:商品としての適性に劣っている(6点未満又は、1点評価項目有り)
前記の各評価項目について実施例及び比較例の評価を行った結果を表4に示す。
Figure 0005323277
(考察)
官能評価を行った結果、クロロゲン酸類の合計含有量と、焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマーの含有比率を夫々本願に示す所定範囲に調製することによって、クロロゲン酸類を多く含み、クロロゲン酸類による生理活性機能が期待することができ、且つ雑味を感じにくく、またコーヒーとしての美味しさであるロースト感を味わうことが可能な優れた香味、呈味を備えた容器詰コーヒー飲料が得られることが確認できた。
本発明は、コーヒー飲料であって、特に生理活性機能成分の一つであるクロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料及びその製造方法、並びにコーヒー飲料の雑味低減方法に利用可能である。

Claims (11)

  1. クロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料であって、
    飲料液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)[CQ]と焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量(ppm)[R]が以下の(a)、(b)の条件を共に満たすことを特徴とするコーヒー飲料。
    (a)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]が80〜250である。
    (b)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]と、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R]との比、[R]/[CQ]が1.0〜7.0である。
  2. 飲料液中の焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R](ppm)が、200〜1400であることを特徴とする請求項1に記載のコーヒー飲料。
  3. 飲料液中のクロロゲン酸類含有量[CQ](mg/100g)が、100〜250であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーヒー飲料。
  4. 飲料液中のジカフェオイルキナ酸類含有量(mg/100g)[diC]と、前記クロロゲン酸類含有量[C]の比[diC]/[C]が、0.07〜0.15であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のコーヒー飲料。
  5. 前記ジカフェオイルキナ酸類の含有量[diC]が9.0〜30.0であることを特徴とする請求項4に記載のコーヒー飲料。
  6. ブラックコーヒーであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のコーヒー飲料。
  7. 容器詰飲料であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のコーヒー飲料。
  8. クロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料の製造方法であって、飲料液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)[CQ]と焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量(ppm)[R]が以下の(a)、(b)の条件を共に満たすように調整することを特徴とするコーヒー飲料の製造方法。
    (a)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]が80〜250である。
    (b)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]と、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R]との比、[R]/[CQ]が1.0〜7.0である。
  9. 飲料液中のジカフェオイルキナ酸類含有量(mg/100g)[diC]と、前記クロロゲン酸類含有量[C]の比[diC]/[C]が、0.07〜0.15となるように調整することを特徴とする請求項8記載のコーヒー飲料の製造方法。
  10. クロロゲン酸類を所定量以上に含有するコーヒー飲料の製造方法であって、飲料液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)[CQ]と焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量(ppm)[R]が以下の(a)、(b)の条件を共に満たすように調整することを特徴とするコーヒー飲料の雑味低減方法。
    (a)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]が80〜250である。
    (b)前記クロロゲン酸類含有量[CQ]と、前記焙煎コーヒーポリフェノールオリゴマー含有量[R]との比、[R]/[CQ]が1.0〜7.0である。
  11. 飲料液中のジカフェオイルキナ酸類含有量(mg/100g)[diC]と、前記クロロゲン酸類含有量[C]の比[diC]/[C]が、0.07〜0.15となるように調整することを特徴とする請求項10記載のコーヒー飲料の雑味低減方法。
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