JP5322469B2 - 耐落下衝撃性に優れたはんだ合金、およびそれを用いたはんだボール、ならびにはんだ接合部 - Google Patents
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また、特許文献2および特許文献3では、Sn−Ag合金にZnを添加したSn−Ag−Zn系合金が提案されている。Sn−Ag−Cu系合金と同様、機械的強度を向上する目的でZnが使用されている。Sn−Ag−Zn系合金の場合も、特許文献2および3に具体的に開示されるように、Ag含有量は質量%で3%か3.5%のいずれかである。これはSn−Ag二元共晶が3.5%であり、はんだの融点を低くすることができるためである。
そこで本発明者は、Sn−Ag−Zn系はんだ合金の耐落下衝撃性について調査した結果、Ag添加量の増加とともに耐落下衝撃性が著しく損なわれ、最も検討されてきた3%程度のAgを含有するはんだでは、モバイル機器へ適用するのに十分な耐落下衝撃性を有していないことがわかった。また、Zn添加量についても同様に調査した結果、Zn添加量の増加とともに耐落下衝撃性が著しく損なわれることを確認した。
また、本発明の耐落下衝撃性に優れたはんだ合金は、質量%で、0.1%以下のNiまたは2.0%以下のBiの何れか一つ以上を含有してもよい。
また、本発明は、前記はんだ合金およびはんだボールがNi電極に接合されてなるはんだ接合部である。
また、本発明のもう一つの重要な特徴は、前記はんだ合金にわずかな量のNiやBiを添加することで、耐落下衝撃性を確保しつつ、機械的特性を大幅に改善することができることを見出したことにある。以下に、詳細について説明する。
AgをZnとともにSnに添加した場合、金属間化合物であるAg−Sn化合物あるいはAg−Zn化合物を合金中に形成するため、化合物の分散強化により機械的強度を向上することができる。
しかし、その反面、Ag−Sn化合物やAg−Zn化合物の形成は、耐落下衝撃性において重要な特性であるはんだの延性を低下させる。2.0%を超えて添加すると、形成される金属間化合物の量が過多となり、はんだの延性が著しく損なわれる。このため、衝撃応力が負荷されてもはんだが十分に変形することができず、電子部品やマザーボードへ物理的損傷を与えたり、はんだ接合部自体が破壊したりすることになる。
Ag添加量を2.0%以下とすることで、耐落下衝撃性は確保され、特に、1.2%以下の添加量とすることで、金属間化合物の形成量を十分低減することが可能であり、耐落下衝撃性が大幅に改善される。一方、Ag添加量が0.1%未満の場合、延性は良好であるものの、機械的強度が不足し、はんだ合金として適さない。このためAg添加量を0.1%以上とする。
前述のように、ZnをAgとともにSnに添加した場合、金属間化合物であるAg−Zn化合物を合金中に形成する。これらの化合物によって分散強化されることで合金の機械的強度を向上することができる。また、Zn量がAg量に対して4倍以上多く含む場合、Sn中にはAg−Zn化合物に加えZn単体も形成され、機械的強度が向上する。
しかし、その反面、はんだの延性が著しく損なわれ、耐落下衝撃性が大幅に低下する。Zn単体の形成を抑えるためにはZn添加量を2.0%以下とする。
また、Zn添加量が0.05%未満になると、Zn単体が形成されないばかりか、Ag−Zn化合物もほとんど形成されず、はんだ接合部としての機械的強度が不足する。このため、Zn添加量を0.05%以上とする。
本発明において、Ni添加量は、質量%で0.1%以下が好ましい。Ni添加量が0.1%を越えると、機械的強度は向上するものの、Ni−Sn化合物の形成によって融点が上昇するため、Ni添加量は0.1以下が好ましい。一方、Ni添加量が0.01%未満の場合、Ni−Sn化合物の形成量が少なく、その効果がほとんど得られないため、Ni添加量は、0.01%以上が好ましい。
また、Biは、Sn中に固溶することから、固溶強化によって機械的強度を向上させる。本発明において、Bi添加量は、質量%で2.0%以下が好ましい。Bi添加量が2.0%を超えると機械的強度が向上する反面、延性が著しく損なわれ、衝撃応力を十分に吸収することができなくなるため、Bi添加量は、2.0%以下が好ましい。一方、Bi添加量が0.1%未満の場合、固溶強化による機械的強度の向上がほとんど見込めないため、Bi添加量は、0.1%以上が好ましい。
一方、本発明におけるはんだ合金およびはんだボールを用いた場合、Niと相性の良いZnが優先的に反応するため、接合界面にNi−Sn−Zn化合物が形成される。これにより、接合界面の強度が増し、より大きな衝撃応力を吸収することが可能である。この効果は、Ni電極に限定されるものではなく、Niの酸化を抑制し、はんだの濡れ性を改善する目的でAuやPdなどの金属層が形成されている場合にも同様の効果が得られる。
また、はんだボールを接合した電極は、430μmのはんだボールに対しては直径320μm、300μmのはんだボールに対しては直径250μmのものを使用した。
接合したはんだ合金の耐落下衝撃性を評価するため、小型シャルピー衝撃試験機を用いた衝撃試験を実施した。具体的には、はんだバンプに重さ20gの振り子を1m/sの速度で衝突させ、はんだバンプが吸収した衝撃エネルギーの大きさを求めた。
衝撃吸収エネルギーは、はんだバンプを打撃したときの振り子の速度をレーザー速度計により測定し、打撃によって失われる振り子の運動エネルギーとして求めた。また、衝撃吸収エネルギーの測定に加え、試験後の破面観察を実体顕微鏡により行い、接合界面で破壊した割合を界面破壊確率として求めた。なお、実体顕微鏡により観察した結果、いずれのはんだ合金も240℃で接合されていたことから、はんだ合金としての使用に際し、融点に関しては問題がないことを確認できた。
ボール径が430μmの場合、比較例3の衝撃吸収エネルギーは0.2mJであり、90%のはんだバンプが界面破壊を示した。また、比較例1および比較例2に示すAg量やZn量が高いはんだも同レベルの衝撃吸収エネルギーと界面破壊確率を示した。
一方、本発明例1〜3や本発明例6の衝撃吸収エネルギーは、表2の相対比に示すように、比較例3の約2倍以上の高い値を示し、界面破壊も抑制することができた。また、本発明2、3および6と比較例2との比較から、Ag量を低減することで耐落下衝撃性が向上していることを確認できた。同様に、本発明例3と比較例1とを比較すると、Zn量を低いレベルに制御することによっても耐落下衝撃性が改善されている。
以上のように、Ag量とZn量の厳密な制御が、耐落下衝撃性の改善に非常に有効であることが確認できた。
これに対し、表3の相対比に示すように、本発明例3では、Zn量を制御することで衝撃吸収エネルギーがおよそ7倍まで向上し、界面破壊確率は10%未満にまで低減することができた。また、本発明例4および5が示すように、NiやBiが添加されたはんだについても比較例1および3と比較して耐落下衝撃性が大幅に改善されていることが確認できた。
このように、Sn−Ag−Zn系はんだ合金において、厳密なAg量とZn量の制御により耐落下衝撃性を飛躍的に向上することができた。
直径300μmのはんだボールを用いて、345個のNi/Au電極を有するBGAにはんだバンプを形成した後、ガラス・エポキシ(FR−4)基板のCu電極に接合することで、落下試験用試験基板を作製した。電極径の大きさは、BGAのNi/Au電極が250μm、マザーボードのCu電極が280μmである。また、評価に用いたマザーボードの大きさは132×77×1mmである。なお、マザーボード1枚当り4個のBGAが搭載されており、各はんだ組成に対して2つの試験基板、つまり合計8個のBGAを接合した。
また、はんだの機械的強度としてはんだのビッカース硬さを測定し、耐落下衝撃性への影響を調査した。ビッカース硬さ試験における負荷荷重は50gとした。
また、本発明例2および本発明例3は、それぞれNiまたはBiを添加することにより、耐落下衝撃性を確保しつつ、ビッカース硬さが向上していることから、機械的強度が向上していると推定される。
このように、本発明におけるはんだ合金、はんだボールおよびはんだ接合部は、融点や機械的強度への要求を満足するだけでなく、耐落下衝撃性に関しても優れており、モバイル機器における耐落下衝撃性の問題を飛躍的に改善することが可能であることを確認した。
Claims (4)
- 質量%で、0.1〜2.0%のAgと、0.05〜2.0%のZnを含有し、残部Sn及び不可避的不純物からなり、
質量%で、0.1%以下のNiまたは2.0%以下のBiの何れか一つ以上を含有することを特徴とする耐落下衝撃性に優れたはんだ合金。 - 質量%で、0.1〜1.2%のAgを含有することを特徴とする請求項1に記載の耐落下衝撃性に優れたはんだ合金。
- 請求項1または2に記載のはんだ合金が、球状化されてなることを特徴とするはんだボール。
- 請求項1または2に記載のはんだ合金が、Ni電極に接合されてなることを特徴とするはんだ接合部。
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