JP5322397B2 - 車両用ホイールの製造方法および車両用ホイール - Google Patents

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Description

本発明は、所定ハブ孔径のハブ孔と所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを備える車両用ホイールを製造する車両用ホイールの製造方法、およびその車両用ホイールに関する。
車両用ホイールは、タイヤを組み付けた後に、ハブ孔を車両の車軸に嵌め込むと共に、該ハブ孔の周囲に形成されたハブ取り付け面に設けられたボルト孔を、車軸に連結されたハブに配設されているボルトに嵌め込み、ホイール表方から該ボルトにナットを螺合して締め付けることによって、車軸およびハブに固定される。車両用ホイールにあっては、そのハブ孔の開口縁に沿ってホイール表方に起立した円筒形状のハブ孔フランジ部が形成されているものが良く知られている。さらに、このハブ孔フランジ部に、ハブ孔を覆い隠すためのセンターキャップを装着するものもあり、該ハブ孔フランジ部の外周面にセンターキャップを係合するためのキャップ係合溝が周成されている。
ところで、車両用ホイールにあって、スチール製のものは、通常、所定の板状基材をプレス加工することによって成形される。このプレス加工による加工工程にあっては、板状基材に所定のハブ素円孔を穿設し、該ハブ素円孔の孔周縁部を所定形状の金型(パンチ)によりホイール裏方から押圧することにより、該孔周縁部をホイール表方へ立ち上げるように折曲加工してハブ孔とハブ孔フランジ部とを成形している。
ここで、ハブ孔フランジ部は上記のように折曲加工により成形されることから、板状基材の板厚に従ってハブ孔フランジ部の肉厚が決まってしまう。板状基材の板厚は、車両用ホイールに要求される強度と耐久性とに基づいて設定されており、車重の重い車両に装着される車両用ホイールは、該車重を支えることができるように、板厚の厚い板状基材から成形されている。特に、車両用ホイールでは、ボルト孔のハブ孔フランジ部とは反対側となるハブ面アール部(図1の7a参照)が最も強度が要求されている。そのため、このハブ面アール部が充分な強度を発揮できるように、板厚を選定した板状基材が用いられている。そのため、ハブ孔フランジ部は、前記板状基材から形成されてなる厚みでは必要以上の強度を有することとなっている。また、板厚の厚い板状基材からハブ孔フランジ部を成形する場合に、例えば、上記した折曲加工で同じ寸法形状の金型(パンチ)を用いれば、該ハブ孔フランジ部の内径は同径となるものの、外周径が大きくなってしまう。
一方、ハブ孔は、上記したように車軸を嵌入するものであるため、そのハブ孔径は予め決まっている。また、ハブ孔フランジ部は、上記したようにセンターキャップを係合する場合、少なくとも該ハブ孔フランジ部の開口端部を、該センターキャップを外嵌できる外周径として設定しておく必要がある。ここで、上記のように異なる板厚の板状基材から成形した場合に、ハブ孔フランジ部の外周径が異なってしまうと、それに応じてセンターキャップのサイズを変更しなければならなくなる。しかし、板状基材の板厚に応じてセンターキャップのサイズを変更していては、該センターキャップの製造に要する費用が高騰してしまう。そのため、センターキャップをある程度汎用部品として扱うことができるように、前記したハブ孔フランジ部の開口端部の外周径についても、予め決められている。
すなわち、ハブ孔フランジ部は、その内径(ハブ孔径)と開口端部の外周径とは予め規定されており、且つそれぞれの寸法精度も要求されている。そのため、板厚の厚い板状基材を用いる場合であって、ハブ孔フランジ部を成形する工程では、該ハブ孔フランジ部の内径(ハブ孔径)が規定の内径(ハブ孔径)となるように、ハブ素円孔の孔周縁部を折曲加工した後に、該ハブ孔フランジ部の開口端部を規定の外周径とするように切削加工する方法、又は、開口端部の外周径が規定の外周径となるように折曲加工した後に、ハブ孔フランジ部の内周面を規定のハブ孔径に切削加工する方法のいずれかが実施されている。
尚、その他の加工方法として、ハブ孔フランジ部の開口端部の外周径を規定の外周径とするように折曲加工した後に、該ハブ孔フランジ部の内周面を所定金型(パンチ)により削り剥がす加工を行うことにより規定の内径(ハブ孔径)とする方法も提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2004−223682号公報
上述したようにハブ孔およびハブ孔フランジ部を成形する工程にあって、ハブ素円孔の孔周縁部を折曲加工した後に、ハブ孔フランジ部の内周面又は開口端部の外周面を切削加工する方法にあっては、ハブ孔径や開口端部の外周径を比較的容易に精度良く成形できるという利点を有している。ところが、このように切削加工する方法では、折曲加工するプレス加工の加工装置から切削加工の加工装置に移送する必要があるため、加工工程に要する時間が増加して、加工工程が繁雑化すると共に、製造工程にかかるランニングコストが増加するという問題が生じていた。特に、切削加工は、切削チップなどの消耗品を多用し、かつ加工時間もかかることから、製造コストが高くなっていた。
また、上述した従来の、孔フランジ部の内周面を所定金型(パンチ)により削り剥がす加工方法にあっては、削り剥がす工程で割れ等の不具合を生じ易く、当該加工が難しいという問題があった。さらに、このような問題によって、不良品が増加することから、該不良品の廃棄コストが増加するという問題も生じていた。
本発明は、上記した問題を解決するために、切削加工を用いずに、所定ハブ孔径のハブ孔と所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを成形できる車両用ホイールの製造方法、およびその車両用ホイールを提供する。
本発明は、所定ハブ孔径のハブ孔と、所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを備えてなる車両用ホイールの製造方法において、板状基材に据込み用の予備孔を穿設する予備孔加工工程と、前記予備孔の孔周縁部を、その孔端面を拘束せずに板厚方向に押圧加工することにより、該孔周縁部を薄肉化して環状予備成形部を周成すると共に、この薄肉化に伴う余剰材料を予備孔内へ据え込むようにした据込み加工工程と、前記環状予備成形部よりも内側の部位を除去して、板状基材にハブ素円孔を穿設する素円孔加工工程と、前記所定ハブ孔径と等しい外周径の折曲パンチを、板状基材の板厚方向に沿ってホイール裏方から押し付けて前記ハブ素円孔の孔周縁部をホイール表方へ起立するように折曲加工することにより、所定ハブ孔径のハブ孔を成形すると共に、ホイール表方へ立ち上げた前記環状予備成形部によって形成された所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部を成形する折曲加工工程とを備えていることを特徴とする車両用ホイールの製造方法である。
かかる方法にあっては、ハブ素円孔の孔周縁部を薄肉化して環状予備成形部を形成した後に、該環状予備成形部を立ち上げる折曲加工を行うことにより、所定ハブ孔径のハブ孔と所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを成形するようにした方法である。
ここで、据込み加工工程で形成する環状予備成形部の板厚としては、折曲加工工程でハブ孔フランジ部の内径(ハブ孔径)と該ハブ孔フランジ部の開口端部の外周径とが夫々に所望の設定値となるように設定している。すなわち、この環状予備成形部の板厚は、折曲加工によって該環状予備成形部がホイール表方へ立ち上がることでその周方向へ伸長して薄肉化することも考慮して設定している。このように、据込み加工工程では、環状予備成形部を予め設定した板厚とするように、予備孔の孔周縁部を押圧加工して薄肉化している。
本発明の製造方法によれば、切削加工を行うことなく、所定ハブ孔径のハブ孔と所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを成形することができる。そのため、上述した従来のハブ孔フランジ部の内周面または外周面を切削加工する方法に比して、切削加工の加工装置に移送する必要がなく、加工工程を簡素化し且つ短時間化することができる。そして、切削加工しないため、該切削加工に要するコストを低減することもできる。
据込み加工工程では、予備孔の孔端面を拘束せずに押圧加工していることから、該予備孔内への変形が自由であり、押圧加工により生ずる余剰材料が予備孔内に延出する。これにより、据込み加工工程の押圧加工による環状予備成形部の加工硬化を抑制することができるため、折曲加工工程の折曲加工の際に、該環状予備成形部を比較的拡径し易く、成形割れ等の不具合が発生することを抑制できる効果が高い。そのため、総じて車両用ホイールの生産効率が向上する。さらに、前記した環状予備成形部の加工硬化を抑制できることから、折曲加工に要する加工荷重の増加を抑えることができる。そのため、上述した従来の切削加工を行う方法と同じ荷重容量のプレス加工装置を用いて、折曲加工することも可能である。
また、据込み加工工程で形成する環状予備成形部は、予備孔の孔周端部を押圧加工して成形していることから、その強度と疲労寿命が向上する。そのため、この環状予備成形部から形成されるハブ孔フランジ部の開口端部にあっても、高い強度と疲労寿命とを発揮するものとなる。尚ここで、例えば、板面方向に延伸してなる板状基材を用いて車両用ホイールを製造する場合、該板状基材はその面方向に沿った縞状組織からなる。この板状基材から本製造方法によりハブ孔フランジ部を成形した場合、据込み加工工程により環状予備成形部はその板厚方向に縞状組織が圧密して形成される。そのため、前記したように強度と疲労寿命を向上でき得る。これに対して、同様の板状基材を用いて、上述した従来の切削加工を行う方法にあっては、該板状基材の縞状組織が切削加工により分断してしまうため、強度や疲労寿命向上に寄与できない。
据込み加工工程で形成する環状予備成形部は、少なくともハブ孔フランジ部の開口端部を成形するものとしている。そして、環状予備成形部は、その環幅を適宜設定することにより、開口端部を含むハブ孔フランジ部の上部を形成するようにしたり、該ハブ孔フランジ部の全部を成形するように設定することができる。すなわち、環状予備成形部の環幅によって、ハブ孔フランジ部が部分的または全体的に薄肉化されることとなる。ハブ孔フランジ部が薄肉化されることにより、車両用ホイールを軽量化することができ、環状予備成形部の環幅が広くなるに従って軽量化効果も増加する。このように、本発明の製造方法では、切削加工を行うことなく、ハブ孔フランジ部を薄肉化して軽量化することができ得る。
上述した車両用ホイールの製造方法にあって、据込み加工工程は、予備孔の孔周縁部をホイール表方から押圧加工することにより環状予備成形部を周成するようにしている方法が提案される。
かかる方法にあっては、ホイール表方から押圧加工するため、裏面は平面状態として維持しておくことができる。すなわち、環状予備成形部の裏面がその外側の面と面一な状態となっており、ハブ素円孔の孔周縁部の裏面が平面状態のままである。これにより、折曲加工工程で折曲パンチをホイール裏方から押し上げることによってハブ素円孔の孔周縁部を折曲加工する際に、該孔周縁部を、その裏面を加工基準としてホイール表方へ均整に立ち上げることができる。その折曲加工の際に、ハブ素円孔の孔周縁部は、その孔端まで裏面が折曲パンチに当たって拡径するため、所定外周径のハブ孔フランジ部の開口端部を形成できる。
このようにホイール表方から押圧加工して環状予備成形部を周成する方法にあっては、上記のように裏面の平面状態が維持されるため、環状予備成形部を成形する領域(環幅)を適宜設定することができる。例えば、環状予備成形部を、ハブ孔フランジ部の開口端部のみを形成するように設定しても良いし、または、ハブ孔フランジ部全体を成形できるように設定することもでき得る。
上述した車両用ホイールの製造方法にあって、予備孔加工工程は、円形の予備孔を穿設するようにしている方法が提案される。
かかる方法は、予備孔を円形に形成することによって、例えば四角形の予備孔を形成する場合に比して、据込み加工工程で環状予備成形部を形成するために生じる余剰材料を、該環状予備成形部の周方向でほぼ均等に該予備孔内へ延出し易くなる。これにより、環状予備成形部を、その周方向に亘ってほぼ均一な板厚に成形し易くなるため、折曲加工工程によってハブ孔フランジ部の開口端部を所望の外周径に一層精度良く且つ安定して成形することができ得る。
上述した車両用ホイールの製造方法にあって、環状予備成形部をホイール表方から押圧加工することにより、該環状予備成形部に環状溝を周成する環状溝加工工程を備えると共に、折曲加工工程で前記環状予備成形部をホイール表方へ立ち上げることにより、ハブ孔フランジ部に装着されるセンターキャップを係合するためのキャップ係合溝を前記環状溝によって形成するようにしている方法が提案される。
かかる方法にあっては、センターキャップを係合するためのキャップ係合溝を要する構成の車両用ホイールを成形する場合に、環状溝加工工程で、キャップ係合溝を成形するための環状溝を環状予備成形部のホイール表方に形成し、該環状溝を折曲加工工程によりキャップ係合溝に形成するようにした方法である。この方法では、キャップ係合溝を形成するための加工工程を別途設ける必要がなく、総じて製造工程を短時間化することができる。尚当然ながら、キャップ係合溝の形成に切削加工を必要としないため、上述したように切削加工によって生じるコストの上昇や工程の繁雑化などを生じないという利点も有する。
尚ここで、例えば、上述したように、板面方向に延伸してなる板状基材(その面方向に沿った縞状組織からなるもの)から本製造方法によりハブ孔フランジ部を成形する場合にあって、環状予備成形部に押圧加工により環状溝を形成した後に、折曲加工工程により該環状溝からキャップ係合溝を形成すると、縞状組織が分断されることなく該キャップ係合溝を形成できる。これに対して、同じ板状基材を用いて、ハブ孔フランジ部を形成した後に、切削加工によりキャップ係合溝を形成すると、該キャップ係合溝の周囲部分では、縞状組織が切削加工により分断されてしまう。すなわち、本製造方法によれば、切削加工によりキャップ係合溝を形成する方法に比して、ハブ孔フランジ部の強度と疲労寿命とを向上することができ得る。
環状溝加工工程は、据込み加工工程と同様に板状基材の板厚方向に押圧加工することから、該据込み加工工程と同時に実施することも可能である。このように据込み加工工程と環状溝加工工程とを同時に実施することにより、製造工程を短縮することができるため、製造コストを一層低減することができると共に、製造に要する時間を一層短縮することができ得る。
一方、本発明は、板面方向に沿った縞状組織からなる板状基材に据込み用の予備孔を穿設し、該予備孔の孔周縁部をその孔端面を拘束せずに板厚方向に押圧加工して、前記縞状組織を板厚方向に圧密した環状予備成形部を周成すると共に当該押圧加工に伴う余剰材料を予備孔内へ据え込み、前記環状予備成形部よりも内側の部位を除去して、環状予備成形部をホイール表方に起立するように折曲加工することによって形成された、所定ハブ孔径のハブ孔と、板厚方向に圧密された縞状組織からなる所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを備えてなることを特徴とする車両用ホイールである。
かかる構成は、板面方向に沿った縞状組織からなる板状基材から製造される車両ホイールであって、該縞状組織を板厚方向に圧密した環状予備成形部をホイール表方へ立ち上げる折曲加工によって成形したハブ孔フランジ部の開口端部を備えるものである。そして、この折曲加工によって成形される所定ハブ孔径のハブ孔と、前記開口端部を所定外周径としたハブ孔フランジ部とを備えた構成である。ここで、圧密な縞状組織は、環状予備成形部を形成する際に板厚方向へ押圧加工されることによってなり、該押圧加工による板厚方向へ圧縮することによって強度と耐久性が向上する。すなわち、少なくとも環状予備成形によって成形されるハブ孔フランジ部の開口端部は、強度と耐久性が向上する。
ここで、環状予備成形部は、その環幅の設定によって、ハブ孔フランジ部の開口端部だけでなく、ハブ孔フランジ部の上部や全体を形成するようにすることもできる。そのため、環状予備成形部によって成形されるハブ孔フランジ部の部位が、圧密な縞状組織からなり、上述した強度と耐久性とが向上する。
また、環状予備成形部を押圧加工する際には、予備孔の孔端面を拘束せずに押圧加工していることから、余剰材料を予備孔内方へ延出する。これにより、据込み加工工程の押圧加工による環状予備成形部の加工硬化を抑制することができるため、折曲加工工程の折曲加工の際に成形割れ等の不具合が発生することを抑制できる効果が高い。そのため、ハブ孔フランジ部は、その強度と耐久性とを安定して発揮し得るものとなり得る。さらに、総じて車両用ホイールの生産効率を向上することができ得る。
また、本構成の車両用ホイールは、そのハブ孔とハブ孔フランジ部とを、切削加工を用いずに成形されたものである。一方、上述した従来の切削加工により寸法精度を整えていた場合では、板状基材の縞状組織が切削加工により分断している。このような従来の構成に比して、本構成は、切削加工しないことから縞状組織が分断しておらず、優れた強度と耐久性を発揮し得る。
このように、本構成の車両用ホイールは、縞状組織からなる板状基材を、上述した本発明にかかる車両用ホイールの製造方法により製造できるものであるため、上述した製造方法の作用効果を有するものである。
上述した車両用ホイールにあって、環状予備成形部のホイール表方から押圧加工することにより該環状予備成形部に環状溝を周成して、該環状予備成形部をホイール表方へ立ち上げることにより形成された、ハブ孔フランジ部に装着されるセンターキャップを係合するためのキャップ係合溝を、該ハブ孔フランジ部に備えてなり、前記ハブ孔フランジ部におけるキャップ係合溝が形成された係合溝周成部が、該係合溝周成部を除くハブ孔フランジ部に比して相対的に圧密な縞状組織からなる構成が提案される。
かかる構成の車両用ホイールは、ハブ孔フランジ部にキャップ係合溝が切削加工を用いずに形成されたものである。そして、上記したように、ハブ孔とハブ孔フランジ部にあっても、切削加工を用いずに成形されている。そのため、ハブ孔フランジ部は、縞状組織が分断していない。これに対して、例えば、ハブ孔フランジ部を成形した後に、該ハブ孔フランジ部に切削加工によりキャップ係合溝を形成した構成にあっては、該切削加工により縞状組織が分断されてしまう。すなわち、本構成は、キャップ係合溝を切削加工により形成した構成に比して、ハブ孔フランジ部の強度と疲労寿命とを向上することができ得る。
尚、本構成にあって、係合溝周成部としては、キャップ係合溝の板厚方向内側にある部位であり、環状溝を形成した際に押圧された部位が折曲加工工程により成形されている部位である。この係合溝周成部は、ハブ孔フランジ部の他の部位に比して、板厚方向に圧縮されており、相対的に圧密な縞状組織からなる。そのため、係合溝周成部は、ハブ孔フランジ部の強度と疲労寿命を一層向上する効果を奏する。
このように、本構成の車両用ホイールにおいても、縞状組織からなる板状基材を、上述した本発明にかかる車両用ホイールの製造方法により製造できるものであるため、上述した製造方法の作用効果を有するものである。
本発明の車両用ホイールの製造方法は、予備孔加工工程で穿設した予備孔の孔周縁部を、据込み加工工程で該予備孔の孔端面を拘束せずに板厚方向に押圧加工することにより、薄肉化して環状予備成形部を周成すると共に薄肉化に伴う余剰材料を予備孔内へ据込み、素円孔加工工程で環状予備成形部より内側部位を除去してハブ素円孔の孔周縁部を穿設し、折曲加工工程でハブ素円孔の孔周縁部をホイール表方へ立ち上げる折曲加工を行うことにより、所定ハブ孔径のハブ孔と、前記環状予備成形部によって形成された所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを成形するようにした方法である。かかる方法によれば、切削加工を実施することなく、ハブ孔を所定ハブ孔径とし且つハブ孔フランジ部の開口端部を所定外周径とすることができるため、上述した従来の切削加工を行う方法に比して、該切削加工に要する時間を短縮できると共にコスト低減することもでき得る。また、環状予備成形部を薄肉化し、該薄肉化に伴う余剰材料を除去していることから、これに従って軽量化することができる。そして、この軽量化は、前記のように切削加工を実施することなく得られることから、従来方法に比して低コストで車両用ホイールを軽量化することが可能である。また、据込み孔工程で環状予備成形部を形成していることから、当該加工による加工硬化を抑制することができるため、折曲加工の際に成形割れ等の不具合が発生することを抑制できる効果が高く、生産効率が向上する。
据込み加工工程が、予備孔の孔周縁部をホイール表方から押圧加工することにより環状予備成形部を周成するようにしている方法にあっては、ホイール表方から押圧加工し、裏面の平面状態を保つため、折曲加工工程で折曲パンチをホイール裏方から押し上げることによって、該裏面を基準面としてハブ素円孔の孔周縁部を均整に立ち上げることができ、ハブ孔フランジ部の開口端部を所定外周径に一層精度良く成形することができ得る。
予備孔加工工程が、円形の予備孔を穿設するようにしている方法にあっては、例えば四角形の予備孔を穿設する場合に比して、据込み加工工程で生じた余剰材料を、周方向でほぼ均等に該予備孔内へ延出することができることから、環状予備成形部をその周方向に亘ってほぼ均一な板厚に成形できるため、折曲加工工程によってハブ孔フランジ部の開口端部を所望の外周径に一層精度良く且つ安定して成形することができ得る。
環状溝加工工程で、環状予備成形部のホイール表方から押圧加工することにより該環状予備成形部に環状溝を周成し、折曲加工工程で前記環状予備成形部をホイール表方へ立ち上げることにより、ハブ孔フランジ部に装着されるセンターキャップを係合するためのキャップ係合溝を前記環状溝によって形成するようにしている方法にあっては、切削加工を行うことなくキャップ係合溝を形成できるため、製造コストの低減と製造時間の短縮化を行い得る。
一方、本発明の車両用ホイールは、板面方向に沿った縞状組織からなる板状基材に穿設した予備孔の孔周縁部を、その孔端面を拘束せずに板厚方向に押圧加工して、縞状組織を板厚方向に圧密した環状予備成形部を周成すると共に当該押圧加工に伴う余剰材料を予備孔内へ据込み、前記環状予備成形部よりも内側の部位を除去して、環状予備成形部をホイール表方に起立するように折曲加工することによって形成された、所定ハブ孔径のハブ孔と、板厚方向に圧密された縞状組織からなる所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを備えてなる構成である。ハブ孔フランジ部の開口端部は、縞状組織を圧密とすることおよび該縞状組織が分断されていないことによって、優れた強度と耐久性とを安定して発揮し得る。また、環状予備成形部は板状基材を薄肉化して、且つその余剰材料を除去して得ているため、該除去量に従って車両用ホイールを軽量化することができる。そして、強度と耐久性との向上分を、環状予備成形部のさらなる薄肉化に用いることによって、一層の軽量化を進めることもでき得る。
環状予備成形部をホイール表方へ立ち上げることにより、該環状予備成形部に押圧加工により周成した環状溝から形成されたキャップ係合溝を、ハブ孔フランジ部に備えてなり、前記キャップ係合溝が形成された係合溝周成部が、該係合溝周成部を除くハブ孔フランジ部に比して相対的に圧密な縞状組織からなる構成にあっては、切削加工を行うことなくキャップ係合溝が形成されていることから、縞状組織が分断されていないため、ハブ孔フランジ部が優れた強度と疲労寿命とを発揮し得る。また、係合溝周成部は縞状組織がさらに圧密されていることから、ハブ孔フランジ部の強度と疲労寿命とを一層向上し得る効果を奏する。
本発明の実施例を添付図面を用いて詳述する。
図1は、本発明にかかる車両用ホイールの製造方法で製造したスチール製の車両用ホイール1を示し、板状基材21(図4参照)からプレス加工により成形した円盤状のホイールディスク2とロール加工により成形した円筒状のホイールリム3とを嵌合してなるものである。
上記したホイールディスク2は、図1,2のように、中央にハブ孔5が開口されたハブ取付部7が形成されており、該ハブ取付部7の外周部分(ハブ面アール部)7aからホイール表方に隆起するハット部8が形成されている。そして、ハット部8には複数の飾り孔10が設けられており、該ハット部8の外側には、ホイール軸方向に沿ってディスクフランジ部9が周成されている。また、前記ハブ取付部7は、ハブ孔5の開口縁からホイール表方へ起立するハブ孔フランジ部6が形成されており、該ハブ孔フランジ部6の周囲にナット座を備えた複数のボルト孔4が同一円周上に等間隔で穿設されている。このハブ孔フランジ部6の外周面には、ハブ孔5の内径側に凹むキャップ係合溝14が周成されている。
一方、ホイールリム3は、図1のように、異形断面の円筒状を呈し、その両側の外端縁に図示しないタイヤのサイドウォール部を支持するフランジ部11a,11bとが形成されており、該フランジ部11a,11bに夫々に連続させて、タイヤのビードを保持するビードシート部12a,12bとが軸方向と略平行に形成されている。さらに、該ビードシート部12a,12b間には、ホイールリム3の内径側に陥没するドロップ部13が設けられており、タイヤ装着時にタイヤのビードを該ドロップ部13に落とし込むことによって、その装着が容易となるようにしている。また、このドロップ部13の内周面に、上述したホイールディスク2のディスクフランジ部9が嵌合されて溶接されることにより、車両用ホイール1が形成される。本実施例1の車両用ホイール1は、所謂ドロップ嵌合ホイールである。
このような車両用ホイール1は、タイヤを組み付けた後に、車両に取り付けられる。ハブ孔5を車両の車軸16に嵌め込み、ボルト孔4に車両のハブ17から突出するボルトを挿通し、該ボルトを所定のナットにより締め付けることによって、ハブ取付部7の裏面をハブ17に圧接して固定する(図3参照)。このように車両に取り付けた後、ハブ孔フランジ部6の表側開口を遮蔽するようにセンターキャップ18が取り付けられる。センターキャップ18は、図3のように、断面コ字形をなし、その開口側に内側に突出する爪部19が設けられている。このセンターキャップ18を、ハブ孔フランジ部6の開口端部6aに外嵌して、爪部19を該ハブ孔フランジ部6のキャップ係合溝14に係合する。
ここで、車両用ホイール1は、そのハブ孔5のハブ孔径が車両の車軸16を内嵌するように予め規定されており、ハブ孔フランジ部6の開口端部6aの外周径がセンターキャップ18を外嵌するように予め規定されている。
上記したホイールディスク2は、延伸材料であるスチール製の板状基材21をプレス加工することにより成形される(図4〜7参照)。この板状基材21は、板面方向に延伸してなるスチール製板から所定形状に切り出したものであり、板面方向に沿った縞状組織からなる。
上記したハブ孔5とハブ孔フランジ部6とは、板状基材21の中央にハブ素円孔28を穿設し、該ハブ素円孔28の孔周縁部23を、ハブ孔5の所定ハブ孔径と等しい外周径の折曲パンチ49でホイール裏方から押し上げることにより、ホイール表方に折曲して形成される。
以下に、本発明の要部にかかる、ハブ孔5とハブ孔フランジ部6とを成形する工程について詳述する。
先ず、図4(A)のように、板状基材21の中央部周辺の裏面を補助押え金型41により支持する。そして、図4(B)のように、円柱形の孔開けパンチ42により板状基材21の中央に円形の予備孔22を穿設する。この円形の予備孔22は、後述する据込み加工工程における据込み用のものである。この予備孔22を穿設する工程が、本発明にかかる予備孔穿設工程である。尚、通常ホイールディスク2をプレス加工する場合には、板状基材21の中央に多角形(例えば四角形)の孔を穿設し、この孔を基準(中心)としてプレス加工を行っていく。ホイールディスク2は円盤状であるため、多角形の孔を基準とすることによって、周方向位置の基準としても用いることができるからである。これに対して、本実施例1にあっては、円形の予備孔22を穿設する。この予備孔22は、円形であるために板状基材21の中心基準位置として用いることができるものの、周方向位置の基準として用いることができない。そのため、本実施例1では、上述した飾り孔10を形成する部位に、プレス加工の基準とする基準孔を穿設している(図示省略)。この基準孔を穿設する加工は、前記した予備孔穿設工程で予備孔22を穿設することと共に行うことができる。
予備孔穿設工程の次に、予備孔22の孔周縁部23を押圧加工する据込み加工工程を行う。据込み加工工程は、図5のように、板状基材21の中央部をその裏面から支持する裏面支持金型43と、予備孔22の孔周縁部23を上方から押圧する押圧パンチ44とによりプレス加工することで行う。ここで、裏面支持金型43は、その上面が平面に形成されており、板状基材21の中央部の裏面を、平面状態で維持することができるように支持するようにしたものである。また、この押圧パンチ44は、略円柱形をなし、その下面に下方突出する溝形成突周部45が周成されている。また、押圧パンチ44と裏面支持金型43とにより予備孔22の孔周縁部23を押圧した状態で、予備孔22の孔端面22aを拘束しないようにしている。
ここで、図5(A)のように、予備孔22の孔周縁部23の裏面を裏面支持金型43で支持し、図5(B)のように、該孔周縁部23をその上方から押圧パンチ44により板厚方向に沿って押圧して薄肉化する。この押圧加工の際には、予備孔22の孔周縁部23の裏面を裏面支持金型43で支持しているため、該裏面の面形状は平面状態で保たれる。そして、押圧パンチ44が孔周縁部23を上方から押圧して薄肉化することによって余剰材料24を生じ、該余剰材料24が、拘束していない予備孔22の内側へ延出する。このように、押圧パンチ44による押圧加工は所謂据込み加工として行っている。これにより、予備孔22の孔周縁部23を押圧加工しても加工硬化を抑制することができる。そして、予備孔22の孔周縁部23を所定板厚まで薄肉化して、環状予備成形部25を形成する。この環状予備成形部25には、押圧パンチ44の溝形成周突部45によって環状溝26が周成されている。
なお、本実施例1では、押圧パンチ44の溝形成周突部45によって環状溝26を周成する工程が、本発明にかかる環状溝加工工程である。つまり、本実施例1では、据込み加工工程と環状溝加工工程とを同時に行っている。
この押圧加工により形成する環状予備成形部25の板厚は、ハブ孔フランジ部6の開口端部6aの板厚を成形することができるように、後述する折曲加工工程で拡径することによって薄肉化されることを予め考慮して設定している。また、環状予備成形部25の環幅は、本実施例1にあって、後述する折曲加工工程で形成されたハブ孔フランジ部6がその折曲する下部を除く部分(後述する薄肉化部位32)を薄肉化して形成されるように、設定している。
このように据込み加工工程を行った後に、ハブ素円孔28を形成する素円孔加工工程を行う。素円孔加工工程は、図6のように、上記した据込み加工工程で形成した環状予備成形部25をその裏面から支持する補助押え金型46と、ハブ素円孔28を穿設するための孔開けパンチ47とにより実施する。図6(A)のように、補助押え金型46により環状予備成形部25をその裏面から支持する。そして、図6(B)のように、孔開けパンチ47により、環状予備成形部25よりも内側の部位を除去し、板状基材21の中央にハブ素円孔28を形成する。これにより、上述した据込み加工工程で生じた余剰材料24は全て除去される。そして、ハブ素円孔28の孔周りに環状予備成形部25が在る状態となる。
尚、この孔開けパンチ47の外周径(ハブ素円孔28のハブ孔径)は、予め定められたハブ孔径との半径差が、ハブ孔フランジ部6の所定高さとほぼ等しくなるように設定している。すなわち、後述する折曲加工工程でハブ素円孔28の孔周縁部29を起立することにより、所定高さのハブ孔フランジ部6が形成されるようにしている。
素円孔加工工程の次に、折曲加工工程を実施してハブ孔5とハブ孔フランジ部6とを成形する。折曲加工工程は、図7のように、ハブ孔フランジ部6の開口端部6aの外周径と等しい内周径の外側押えリング48と、ハブ孔径と等しい外周径とした略円柱状の折曲パンチ49とにより実施する。尚、外側押えリング48の下端内周部分は、板状基材21の薄肉化していない部位が折曲加工により当たるため、該薄肉化していない部位を逃がすように段部が形成されている。また、折曲パンチ49の上部は、略円錐形をなし、ハブ素円孔28の孔周縁部29を徐々に立ち上げていくことができるようにしている。
図7(A)のように、板状基材21の表面(上面)に、そのハブ素円孔28と同心状とするように外側押えリング48を当接する。そして、折曲パンチ49を板状基材21の裏面側から、該板状基材21の板厚方向に沿って押し上げる。これにより、ハブ素円孔28の、環状予備成形部25を含む孔周縁部29を上方(表方)へ折り曲げて立ち上げる。このようにして、図7(B)のように、ハブ孔5と、ホイール表方へ起立するハブ孔フランジ部6とを形成する。
ここで、折曲パンチ49を押し上げていくに従って、ハブ素円孔28の孔周縁部29を、折曲パンチ49の外周面に倣ってホイール表方へ立ち上げていく。その際に、孔周縁部29がその周方向へ伸長されて薄肉化する。そして、ハブ素円孔28の孔周縁部29からハブ孔フランジ部6が成形される。このハブ孔フランジ部6の内周面は、折曲パンチ49の外周面に倣って形成され、ハブ孔フランジ部6の外周面は、外側押えリング48に倣うようにして形成される。そのため、ハブ孔フランジ部6の内周径は、折曲パンチ49の外周径により定まることから、ハブ孔5を所望のハブ孔径として成形できる。また、ハブ孔フランジ部6の外周径は、外側押えリング48の内周径により定まることから、該ハブ孔フランジ部6の開口端部6aを所望の外周径として成形できる。尚、本実施例1にあって、ハブ孔フランジ部6は、その折曲する基部分が薄肉化されておらず、該基部分(折曲部分)より上側の領域が、上記した環状予備成形部25により形成されて薄肉化されている薄肉化部位32である。
また、この折曲加工工程により環状予備成形部25がホイール表方に起立することで、該環状予備成形部25の上面に形成されていた環状溝26によってハブ孔フランジ部6の外周面にキャップ係合溝14が形成される。
このように所定寸法にハブ孔5およびハブ孔フランジ部6の開口端部6aを精度良く成形することによって、図3のように、ハブ孔5に車軸16を内嵌できると共に、ハブ孔フランジ部6の開口端部6aにセンターキャップ18を外嵌することができ、該センターキャップ18の爪部19をキャップ係合溝14に係合することができる。
上述したように、据込み加工により薄肉化した環状予備成形部25を形成した後に、ハブ素円孔28の孔周縁部29を折曲加工することにより、ハブ孔5とハブ孔フランジ部6とを所定寸法形状に成形するようにしている。このように折曲加工を行う前に環状予備成形部25を形成しておくことにより、折曲加工工程では、所望のハブ孔径に等しい外周径の折曲パンチ49とハブ孔フランジ部6の開口端部6aの所望外周径に等しい内周径の外側押えリング48とによってハブ孔フランジ部6の内外径両方を所望寸法となるように成形することができ得る。本実施例1の製造方法では、ハブ孔5とハブ孔フランジ部6とを成形する工程で、切削加工を行わず、プレス加工のみで所定ハブ孔径のハブ孔5と所定外周径の開口端部6aを具備するハブ孔フランジ部6とを成形することができる。
本実施例1の製造方法と、上述した従来の、ハブ孔フランジ部の内外径のいずれか一方を基準として折曲加工した後に他方を切削加工して寸法出しを行っていた製造方法とを比較すると、本実施例1の加工工程では、切削加工を要しないために該切削加工する装置への移送を必要とせず、切削加工する装置を必要ともしない。そのため、前記従来工程よりも加工工程を簡素化することができるため、加工工程に要する時間を短時間化でき、加工費用も低減可能である。また、切削加工は、切削チップなどの消耗品を多用し、かつ加工時間もかかることから、製造コストが高くなる一因であるが、本実施例1の加工工程では、切削加工を要しないために製造コストを低減することができる。
また、環状予備成形部25を押圧加工する据込み加工工程では、押圧パンチ44と裏面支持金型43とにより孔周縁部23を押圧加工する際に、予備孔22の孔端面22aを拘束しないようにして、当該押圧加工によって生じる余剰材料24が予備孔22の内側に逃げることができるようにしている。このように余剰材料24を予備孔22内へ据え込むことによって、当該押圧加工によって環状予備成形部25の加工硬化を抑制することができる。そのため、折曲加工工程で、環状予備成形部25を比較的拡径し易い。そして、折曲パンチ49を押し付ける際に要する加工荷重が、据込み加工工程を実施しない場合(例えば、従来構成)に比して増大することを抑制できる。これにより、折曲加工時に大きな加工荷重が作用して成形割れ等の不具合が生じることを防止できるという優れた効果を有する。また、折曲加工時の加工荷重が抑えられることにより、荷重容量の大きなプレス装置を用いる必要がなく、据込み加工工程を実施しない場合(例えば、上述した従来方法)に用いる装置と同レベルの荷重容量のものを用いて実施することができ得る。すなわち、新たにプレス装置を購入する必要がないという優れた利点も有する。
さらに、上記した据込み加工工程で余剰材料24を逃がす予備孔22を円形に形成していることから、該据込み加工工程で押圧加工する際に、余剰材料24を予備孔22内へその周方向に亘ってほぼ均一に延出することができる。そのため、環状予備成形部25を、その周方向でほぼ均一な板厚に成形することが可能である。尚、これは、環状予備成形部25を薄肉化する圧縮率が大きくなるに従って(すなわち、厚肉の板状基材を用いて、比較的薄肉な環状予備成形部を形成する場合)、予備孔22を円形とすることによる、環状予備成形部25の板厚を均一に形成する効果が大きい。
一方、上述した加工工程によりハブ孔5とハブ孔フランジ部6とを成形してなるホイールディスク2を、上記したホールリム3に嵌合して溶接することにより、車両用ホイール1を得る。この車両用ホイール1にあっては、図8(A)のように、ハブ孔フランジ部6が、板厚方向に薄肉化された薄肉化部位32を有しており、該薄肉化部位32が、ハブ孔フランジ部6における薄肉化部位32を除く部位(及びホイールディスク2の他部位)に比して、板厚方向に圧密な縞状組織30となっている。さらに、このハブ孔フランジ部6の薄肉化部位32の、キャップ係合溝14の板厚方向内側にある係合溝周成部33が、該薄肉化部位32の該係合溝周成部33を除く部位に比して、板厚方向に圧密な縞状組織30aとなっている。このような薄肉化部位32の縞状組織30および係合溝周成部33の縞状組織30aは、板状基材21の縞状組織が、据込み加工工程(環状溝加工工程を含む)で板厚方向に圧縮されることにより生じたものである。ここで、ハブ孔フランジ部6の縞状組織30,30aは、該ハブ孔フランジ部6の外周面形状に倣った縞状となっており、押圧加工によって生じる余剰材料24を予備孔22内側へ据え込むようにしたことによって、無理なく板厚方向に圧縮されていることがわかる。
これに対して、上述した従来の、切削加工によりハブ孔フランジ部の内周面を切削する方法にあっては、同じ板状基材21から成形した場合、図8(B)のように、ハブ孔フランジ部fの縞状組織gは圧密した部位がなく、且つ内周面側で分断された部位を有している。この従来構成のハブ孔フランジ部fに比して、上記した本実施例1のハブ孔フランジ部6は、縞状組織30,30aが圧密されており分断されていないことから、強度と耐久性が向上している。
また、この車両用ホイール1は、ハブ孔フランジ部6の薄肉化部位32が板状基材21よりも薄肉化されていることから、上述した素形孔加工工程で除去した余剰材料24の重量分だけ軽量化されていることとなっている。尚、上述した切削加工によりハブ孔フランジ部の内周面を切削する方法で成形した車両用ホイールにあっても、同様に軽量化効果を有しているが、本実施例1の車両用ホイール1は、上述したように切削加工を行わずにハブ孔フランジ部6を軽量化できるため、該軽量化のために要するコストと加工時間とを低減しつつ実施できるという利点がある。したがって、本発明の車両用ホイールは製造コストを低減でき、総合的に市場競争力が高い。
さらに、本実施例1のハブ孔フランジ部6は、上述した従来の、切削加工によりハブ孔フランジ部f(図8(B)参照)に比して、強度と耐久性を向上できることから、例え、従来のハブ孔フランジ部fよりも薄く形成したとしても、該ハブ孔フランジ部fと同等の強度と耐久性を持たせることも可能である。このように、本実施例1のハブ孔フランジ部6は、従来のハブ孔フランジ部f(図8(B)参照)よりも、薄肉化、軽量化することができる。
実施例2にあっては、図9のように、据込み加工工程で、板状基材21の裏面側から押圧加工して環状予備成形部55を形成するようにしている。
上述した実施例1と同様に、板状基材21の中央に円形状の予備孔22を穿設した後に、据込み加工工程を行う。この据込み加工工程は、図9(A)から(B)のように、板状基材21の中央部をその表面から支持する表面支持金型61と、予備孔22の孔周縁部23を下方から押圧する円柱形の押圧パンチ62とによりプレス加工することで行う。ここで、表面支持金型61には、その下面に下方突出する溝形成突周部63が周成されている。また、実施例1と同様に、表面支持金型61と押圧パンチ62とにより予備孔22の孔周縁部23を押圧した状態で、該予備孔22の孔端面22aを拘束しないようにしている。
図9(B)のように、予備孔22の孔周縁部23を表面支持金型61と押圧パンチ62とにより挟圧する押圧加工を行い、該孔周縁部23を板厚方向に薄肉化する。これにより、裏面側が上方へ窪んで薄肉化された環状予備成形部55を形成すると共に、この押圧加工によって予備孔22内へ余剰材料54が延出する。そして、表面支持金型61の溝形成周突部63によって環状溝56を周成する。
据込み加工工程の押圧加工の際には、予備孔22の孔周縁部23の表面を表面支持金型61で支持しているため、該表面の面形状は、環状溝56を形成する以外、平面状態で保たれる。そして、押圧パンチ62が板厚方向に押し付けた分だけ孔周縁部23を薄肉化し、所定板厚の環状予備成形部55を形成する。ここで、環状予備成形部55の板厚は、上述した実施例1と同様に、後の折曲加工工程でホイール表方へ折り曲げて拡径することによって、ハブ孔径とハブ孔フランジ部52の開口端部52aの外周径との半径差(すなわち、該ハブ孔フランジ部52の肉厚)となるように設定している。また、環状予備成形部55の環幅は、本実施例2にあって、後の折曲加工工程で形成するハブ孔フランジ部52の高さ寸法以上となるように設定している。すなわち、環状予備成形部55の外周径は、ハブ孔径以上としている。
尚、本実施例2にあって、表面支持金型61の溝形成周突部63によって環状溝56を周成する工程が、本発明にかかる環状溝加工工程である。つまり、本実施例2では、据込み加工工程と環状溝加工工程とを同時に行っている。
上述した据込み加工工程の後に、上述した実施例1と同様に素孔加工工程によりハブ素円孔58を穿設して、環状予備成形部55より内側部位を除去する。その後、折曲加工工程を行う。この折曲加工工程は、上述した実施例1と同様、ハブ孔フランジ部52の開口端部52aの外周径と等しい内周径の外側押えリング64と、ハブ孔径と等しい外周径とした略円柱状の折曲パンチ65とにより実施する。すなわち、図10(A)のように、板状基材21の上面に、そのハブ素円孔58と同心状とするように外側押えリング64を当接する。そして、図10(B)のように、折曲パンチ65を板状基材21の裏面側から、板状基材21の板厚方向に沿って押し上げる。これにより、折曲パンチ65は、ハブ素円孔58の孔周縁部59(環状予備成形部55)を上方(表方)へ折り曲げて立ち上げる。この折曲加工工程によって、ハブ孔5を所望ハブ孔径とし、且つハブ孔フランジ部52の開口端部52aを所望外周径として成形する。そして、環状溝56によって、ハブ孔フランジ部52の外周面にキャップ係合溝14を形成する。
ここで、本実施例2にあっては、図10(B)のように、ハブ孔フランジ部52の全域が、薄肉化した環状予備成形部55から形成されている。これは、折曲加工工程で折曲パンチ65がハブ孔フランジ部52の内周面を基準として立ち上げる折曲加工の際に、該ハブ孔フランジ部52を立ち上げつつ周方向に伸長しているためである。すなわち、ハブ孔フランジ部52の開口端部52aは、ハブ素円孔58の孔径からハブ孔径まで拡径して形成している。このように、据込み加工工程で、板状基材21の裏面側から孔周縁部23を押圧加工することで薄肉化した環状予備成形部55を成形する方法にあっては、該環状予備成形部55の環幅をハブ孔フランジ部52の幅寸法以上とするように設定することが必要である。
このように成形されたハブ孔5とハブ孔フランジ部52とを備える車両用ホイール51は、図11のように、車軸16に固定されて、上述した実施例1と同じ寸法形状のセンターキャップ18を取り付けることができる。
上述したように、本実施例2にあっては、据込み加工工程で、板状基材の裏面側から押圧加工して環状予備成形部を成形するようにした以外は、上述した実施例1と同様であり、同じ構成および同じ方法についてはその説明を省略している。そして、上述した実施例1の製造方法と同様の作用効果を発揮し得る。
本実施例2の製造方法により製造した車両用ホイール51にあっても、上述した実施例1と同様に、ハブ孔フランジ部52の縞状組織は、ホイールディスクの該ハブ孔フランジ部52を除く部位に比して、その板厚方向に圧密な縞状組織に形成されている。したがって、この車両用ホイール51は、上述した実施例1の構成と同様の作用効果を発揮し得る。
実施例3にあっては、据込み加工工程で環状溝を形成せず、ハブ孔フランジ部72にキャップ係合溝を有しない構成の車両用ホイール71を製造するようにしている。このようにキャップ係合溝を有しない構成にあっても、図13のようにハブ孔フランジ部72にセンターキャップ73を嵌めるようにしたものが在る。このセンターキャップ73は、円盤状のキャップ主板部73aと該キャップ主板部73aから下方突成する係合爪片73bとを備えてなり、該係合爪片73bをハブ孔フランジ部72の内周面に嵌め込むことによって取り付けられているようにしている。そのため、ハブ孔フランジ部72の内周径(ハブ孔径)が規定されている。また、ハブ孔フランジ部72の開口端部72aの外周径が、センターキャップ73の外径に比して大きかったり小さかったりすると、見栄えが悪いため、センターキャップ73の外径と等しくするように設定されている。すなわち、このようなセンターキャップ73を取り付ける車両用ホイール71にあっても、ハブ孔径とハブ孔フランジ部72の開口端部72aの外周径とが夫々規定されている。尚、本実施例3にあっては、センターキャップ73の外径により規定されているハブ孔フランジ部72の開口端部72aの外周径は、上述した実施例1と同じとしている。
本実施例3は、上述した実施例1と同様に、板状基材21の中央に円形状の予備孔22を穿設した後に、据込み加工工程を行う。この据込み加工工程では、図12のように、板状基材21の中央部をその裏面から支持する裏面支持金型77と、予備孔22の孔周縁部23を上方から押圧する押圧パンチ78とによりプレス加工することで行う。ここで、押圧パンチ78の押圧下面は、平面形状となっており、上述した実施例1の押圧パンチ44と異なり溝形成突周部45を備えていない。
据込み加工工程は、図12(A)のように、裏面支持金型77を予備孔22の孔周縁部23の裏面に当接して支持する。そして、図12(B)のように、予備孔22の孔周縁部23をその上方から押圧パンチ78により板厚方向に押圧して薄肉化する。この押圧加工の際に、予備孔22の孔端面22aを拘束しないようにしていることから、押圧パンチ78が孔周縁部23を押圧して薄肉化することによって生じた余剰材料74は、拘束していない予備孔22内へ延出する。このようにして、予備孔22の孔周縁部23を所定板厚まで薄肉化して、環状予備成形部75を形成する。尚、この環状予備成形部75には、環状溝がない。
上述した据込み加工工程の後に、上述した実施例1と同様に、素孔加工工程を行い、その後に折曲加工工程を行う(図7参照)。これにより、所定ハブ孔径のハブ孔5と、所定外周径の開口端部72aを備えたハブ孔フランジ部72とを成形する。ここで、ハブ孔フランジ部72の内周径は、折曲パンチ49の外周径により定まり、所定内周径に成形される。このように成形されたハブ孔5およびハブ孔フランジ部72を有する車両用ホイール71は、図13のように、車両の車軸16にハブ孔5を適正に嵌合できると共に、上記したセンターキャップ73を、その係合爪片73bをハブ孔フランジ部72の内周面に係合して、ハブ孔フランジ部72に取り付けることができる。そして、センターキャップ73の外径とハブ孔フランジ部72の開口端部72aの外周径とがほぼ等しいことから見栄えも良い。
本実施例3の製造方法にあっては、据込み加工工程で環状溝を形成しないようにした以外は上述した実施例1と同じであり、同じ構成および同じ方法についてはその説明を省略している。そして、上述した実施例1の製造方法と同様の作用効果を発揮し得る。
また、本実施例3の製造方法により製造した車両用ホイール71にあっても、上述した実施例1と同様に、ハブ孔フランジ部72は、板厚方向に圧密な縞状組織からなる部位(薄肉化部位79)を有している。したがって、この車両用ホイール71は、上述した実施例1の構成と同様の作用効果を発揮し得る。
上述した実施例1,3にあっては、据込み加工工程で押圧形成する環状予備成形部を、その環幅がハブ孔フランジ部の高さより短くなるように設定しているが、図14のように、ハブ孔フランジ部82の全体を薄肉化してなる構成とすることもできる。これは、据込み加工工程で形成する環状予備成形部(図示省略)の環幅を、ハブ孔フランジ部82の高さ以上に設定することにより実施可能である。このように環状予備成形部の環幅を比較的広幅に設定することにより、それに応じて除去する余剰材料量も増加することから、総じて車両用ホイール81の軽量化を進行することができ得る。また、環状予備成形部の環幅を広くしても、図示しない折曲加工工程では、ハブ孔径と等しい折曲パンチと、ハブ孔フランジ部82の開口端部82aの外周径と等しい外側押えリングとにより折曲加工を行なうことができるため、ハブ孔5は所定ハブ孔径に成形され、ハブ孔フランジ部82はその開口端部82aが所定外周径に成形される。そのため、上述した実施例1と同様の作用効果を発揮することができ得る。
また、上述した実施例2にあって、実施例3と同様のセンターキャップ73を装着する車両用ホイールを成形するために、据込み加工工程で環状溝を成形せずにキャップ係合溝を有しないハブ孔フランジ部を成形するようにすることもできる(図示省略)。この場合にあっては、据込み加工工程で、予備孔の孔周縁部をその表面から支持する表面支持金型が、上述した実施例2と異なり溝形成突周部を備えていない(図示省略)。この表面支持金型と押圧パンチとによって押圧加工することにより、環状溝を有しない環状予備成形部を形成する(図示省略)。そして、折曲加工工程によりハブ孔とハブ孔フランジ部とを成形する。このように製造された車両用ホイールは、センターキャップ73がその係合爪片73bを、ハブ孔フランジ部の内周面に係合して取り付けられるものである(図13参照)。
一方、上述した実施例1〜3(及び別例)にあっては、ハブ孔フランジ部の開口を遮蔽するセンターキャップを装着する車両用ホイールについて説明しているが、本発明の製造方法および該製造方法により製造された車両用ホイールは、センターキャップを取り付けないものとしても用いることができる。この場合には、上述した実施例3や上記した別例のようにキャップ係合溝を有しない構成として成形する。ここで、センターキャップを取り付けないため、ハブ孔フランジ部の開口端部の外周径には、厳密な寸法精度が要求されない。そのため、この場合には、据込み加工工程により環状予備成形部を形成して、折曲加工工程で折曲加工することによって、ハブ孔フランジ部を薄肉化する。これにより、車両用ホイールを軽量化することができる。そして、このように据込み加工工程により薄肉化して余剰材料を除去することによって、軽量化していることから、切削加工により薄肉化する場合に比して製造費用を低減できるという利点が有る。また、上記したように、縞状組織の板状基材からホイールディスクを成形する場合には、切削加工する場合に比して、該縞状組織を分断することがないため、強度と耐久性とが向上する。
また、上述した実施例1〜3(及び別例)にあっては、予備孔加工工程により円形状の予備孔を板状基材に穿設するようにした構成であるが、多角形状の予備孔を板状基材に穿設することも可能である。特に、据込み加工工程での押圧加工による圧縮率が小さい場合(比較的薄肉な板状基材を用いて成形する場合)には、余剰材料も少量となるから、多角形状の予備孔を板状基材に穿設しても、環状予備成形部をほぼ均一な板厚に形成可能である。そして、多角形状の予備孔を板状基材に設けることによって、該予備孔を、ホイールディスクを所定形状に成形する加工における周方向基準位置として用いることができ得る。尚、この多角形状の予備孔を、ホイールディスクを所定形状に成形する加工の周方向基準位置として用いる場合にあっても、据込み加工工程時には、該予備孔の孔端面を拘束しないようにする。
また、上述した実施例1,2(及びキャップ係合溝を有する別例)にあっては、据込み加工工程と環状溝成形工程とを同時に行っていたが、それぞれの工程を別々に実施するようにしても良い。
本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、本発明の範囲内で適宜変更することは勿論可能である。例えば、上述した実施例1〜3(及び別例)の車両用ホイール1,51,71,81等は、ドロップ部13の内周面にホイールディスク2のディスクフランジ部9を嵌合してなる所謂ビード嵌合ホイールであるが、これに限らず、所謂ビード嵌合ホイールやフルフェイスホイールに本発明を適用することもできる。そして、このようなビード嵌合ホイールやフルフェイスホイールに本発明を適用した場合にあっても、ビード嵌合ホイールの場合と同様の作用効果を発揮することができ得る。
車両用ホイール1の断面図である。 車両用ホイール1を構成するホイールディスク2の斜視図である。 実施例1のハブ孔フランジ部6にセンターキャップ18を取り付けた状態を示す拡大断面図である。 予備孔加工工程の加工説明図である。 据込み加工工程の加工説明図である。 素円孔加工工程の加工説明図である。 折曲加工工程の加工説明図である。 (A)実施例1のハブ孔フランジ部6の断面組織状態と、(B)従来の切削加工により形成したハブ孔フランジ部fの断面組織状態とを示す概略図である。 実施例2にかかる据込み加工工程の加工説明図である。 実施例2にかかる折曲加工工程の加工説明図である。 実施例2のハブ孔フランジ部52にセンターキャップ18を取り付けた状態を示す拡大断面図である。 実施例3にかかる据込み加工工程の加工説明図である。 実施例3のハブ孔フランジ部72にセンターキャップ73を取り付けた状態を示す拡大断面図である。 実施例1の別例のハブ孔フランジ部82を示す拡大断面図である。
符号の説明
1,51,71,81 車両用ホイール
5 ハブ孔
6,52,72,82 ハブ孔フランジ部
6a,52a,72a,82a 開口端部
14 キャップ係合溝
18,73 センターキャップ
21 板状基材
22 予備孔
22a 孔端面
23 (予備孔の)孔周縁部
24,54,74 余剰材料
25,55,75 環状予備成形部
26,56 環状溝
28,58 ハブ素円孔
29,59 (ハブ素円孔の)孔周縁部
30,30a 縞状組織
33 係合溝周成部
49,65 折曲パンチ

Claims (7)

  1. 所定ハブ孔径のハブ孔と、所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを備えてなる車両用ホイールの製造方法において、
    板状基材に据込み用の予備孔を穿設する予備孔加工工程と、
    前記予備孔の孔周縁部を、その孔端面を拘束せずに板厚方向に押圧加工することにより、該孔周縁部を薄肉化して環状予備成形部を周成すると共に、この薄肉化に伴う余剰材料を予備孔内へ据え込むようにした据込み加工工程と、
    前記環状予備成形部よりも内側の部位を除去して、板状基材にハブ素円孔を穿設する素円孔加工工程と、
    前記所定ハブ孔径と等しい外周径の折曲パンチを、板状基材の板厚方向に沿ってホイール裏方から押し付けて前記ハブ素円孔の孔周縁部をホイール表方へ起立するように折曲加工することにより、所定ハブ孔径のハブ孔を成形すると共に、ホイール表方へ立ち上げた前記環状予備成形部によって形成された所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部を成形する折曲加工工程と
    を備えていることを特徴とする車両用ホイールの製造方法。
  2. 据込み加工工程は、薄肉化した環状予備成形部を周成した後にも、前記予備孔が存在するようにしたものであることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイールの製造方法
  3. 据込み加工工程は、予備孔の孔周縁部をホイール表方から押圧加工することにより環状予備成形部を周成するようにしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ホイールの製造方法。
  4. 予備孔加工工程は、円形の予備孔を穿設するようにしていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ホイールの製造方法。
  5. 環状予備成形部のホイール表方から押圧加工することにより、該環状予備成形部に環状溝を周成する環状溝加工工程を備えると共に、
    折曲加工工程で前記環状予備成形部をホイール表方へ立ち上げることにより、ハブ孔フランジ部に装着されるセンターキャップを係合するためのキャップ係合溝を前記環状溝によって形成するようにしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用ホイールの製造方法。
  6. 板面方向に沿った縞状組織からなる板状基材に据込み用の予備孔を穿設し、該予備孔の孔周縁部をその孔端面を拘束せずに板厚方向に押圧加工して、前記縞状組織を板厚方向に圧密した環状予備成形部を周成すると共に当該押圧加工に伴う余剰材料を予備孔内へ据え込み、前記環状予備成形部よりも内側の部位を除去して、環状予備成形部をホイール表方に起立するように折曲加工することによって形成された、所定ハブ孔径のハブ孔と、板厚方向に圧密された縞状組織からなる所定外周径の開口端部を具備するハブ孔フランジ部とを備えてなるものであることを特徴とする車両用ホイール。
  7. 環状予備成形部のホイール表方から押圧加工することにより該環状予備成形部に環状溝を周成して、該環状予備成形部をホイール表方へ立ち上げることにより形成された、ハブ孔フランジ部に装着されるセンターキャップを係合するためのキャップ係合溝を、該ハブ孔フランジ部に備えてなり、
    前記ハブ孔フランジ部におけるキャップ係合溝が形成された係合溝周成部が、該係合溝周成部を除くハブ孔フランジ部に比して相対的に圧密な縞状組織からなっていることを特徴とする請求項6に記載の車両用ホイール。
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