本発明にかかる駆動装置について図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる駆動装置を上方から見た概略配置図であり、図2は図1に示す駆動装置を側面側から見た概略配置図であり、図3は図2に示す駆動装置の移動体に形成された凸部の斜視図である。
駆動装置Aは、移動体1と、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:以下、SMAと言う)をワイヤー状に成形したSMAアクチュエータ2と、SMAアクチュエータ2に通電する電極3と、移動体1にバイアス力を作用させるためのバイアスばね4とを備えている。
移動体1は図示を省略したガイドにガイドされて図中Ar1方向に直線往復動する部材である。移動体1は本体より突出された円柱形状の架設部11を備えており、架設部11にはSMAアクチュエータ2が架設されている。
架設部11には、SMAアクチュエータ2を架設するための断面V字状の架設溝12(位置規制部)が形成されている。架設溝12は円柱形状の凸部全周にわたって同一形状を有しているわけではなく、架設溝12のSMAアクチュエータ2が架設溝12から離反する部分の近傍は、架設溝12のV字の溝形状に、前記形状記憶合金アクチュエータが内接する円と同じ曲率半径を有する円柱形状のフリー部13が形成されている(図3参照)。
SMAアクチュエータ2はNi−Ti合金のような、温度によって相変態を起こす形状記憶合金で形成されている。本発明で用いているSMAアクチュエータ2は、温度変化によって結晶の相変態が起き、収縮する。なお、SMAアクチュエータ2は低温状態のとき伸長した状態(マルテンサイト相)、高温状態のとき収縮した状態(オーステナイト相)となる形状記憶合金で形成されている。
SMAアクチュエータ2は架設部11の架設溝12に配置されている曲線部21と、架設部11から電極3に直線状に伸びている直線部22と、曲線部21と直線部22との間に形成された中間部23とを有している。図示しているように、SMAアクチュエータ2は一対の直線部22が曲線部21を中心として互いに等しい長さ、且つ、移動体1の移動方向に対して等角度で広がったV字状で配置されている(なお、広がり角度によってU字状となる場合もある)。また、図2に示しているように、直線部22の延伸方向は、移動体1の移動方向よりも上方向に傾いている。中間部23は架設部11のフリー部13に配置されている。
SMAアクチュエータ2は所定の電気抵抗を有しており、通電することによりジュール熱を発生する。このジュール熱でSMAアクチュエータ2は加熱され収縮する。また、通電を停止する或いは通電量を減らすことで、ジュール熱の発生を停止或いは減少させ、SMAアクチュエータ2を冷却させることができる。SMAアクチュエータ2は、駆動装置Aに緊張した状態で架設されており、収縮するときに収縮力Tが発生する。この収縮力Tが移動体1を移動する引張力になる。なお、SMAアクチュエータ2の詳細な動作については後述する。
電極3はSMAアクチュエータ2の端部を固定することができるとともに、SMAアクチュエータ2に通電するための端子である。電極3は駆動装置Aが配置される図示を省略した固定体(例えば、デジタルカメラユニットのフレーム)に固定されている。電極3は移動体1の移動の軸線を挟んで対称となるように配置されている。
バイアスばね4は一端が移動体1に固定されているとともに、他端が電極3と同様、固定体に固定されている。バイアスばね4は移動体1に引張力と反対方向のバイアス力を付勢するための弾性部材である。駆動装置Aではバイアスばね4としてコイルばねが用いられている。バイアスばね4はコイルばねに限定されるものではなく、移動体1に弾性力を付勢させることができるものを広く採用することができる。
駆動装置AにおけるSMAアクチュエータの力の釣り合い及び動作について図面を参照して説明する。図4は図2に示す駆動装置が駆動されて移動体が移動している状態の側面図である。まず駆動装置Aの初期状態について説明する。図1、図2に示している駆動装置Aは、SMAアクチュエータ2に通電を行っていない状態であり、低温状態である。移動体1にはバイアスばね4からバイアス力F1が作用している。バイアス力F1は移動体1の移動方向に作用する力である。力の大きさ及び方向はバイアスばね4の伸縮(圧縮)度合いによる。
SMAアクチュエータ2は架設部11の架設溝12に掛け回され、両端部が所定の力で引っ張られて伸長された状態で電極3に固定されている。このとき、SMAアクチュエータ2には引張りによって軸方向に張力Tが発生しており、この張力によって架設部11すなわち移動体1に引張力F2が作用している。移動体1に作用しているバイアス力F1と引張力F2とが釣り合っており、移動体1は初期位置P1で停止している。
駆動装置Aは駆動するとき、電極3からSMAアクチュエータ2に通電することで、SMAアクチュエータ2にジュール熱を発生させ、SMAアクチュエータ2の温度を上昇させる。SMAアクチュエータ2は温度上昇とともに収縮する。SMAアクチュエータ2には収縮力T2が発生する。
曲線部22の両端部より伸びる直線部21は、曲線部22を均等又は略均等な力で移動体1の移動の中心軸を挟んで対称となるように引っ張るので、曲線部22は架設溝12の曲面に沿う方向の移動が抑制される。この収縮力T2によって、架設溝12、すなわち、架設部11に引張力F3が作用する(図4参照)。
SMAアクチュエータ2に通電中、移動体1には、凸部に作用する引張力F3とバイアスばね4から作用されるバイアス力F1が作用している。引張力F3は初期位置でのバイアス力F1よりも大きく、移動体1は引張力F3が作用する方向(図中右方)に移動する。バイアスばね4は移動体1の移動によって引っ張られ、伸長する。バイアスばね4は伸長により強いバイアス力F4を移動体1に作用させる。移動体1は駆動位置P2でバイアス力F4が引張力F3と釣り合い、停止する(図4参照)。
そして、SMAアクチュエータ2への通電を停止すると、ジュール熱が発生しなくなる。SMAアクチュエータ2は放熱により冷却され温度が低下する。SMAアクチュエータ2は温度が低くなることでオーステナイト相からマルテンサイト相へと相変態を起こす。SMAアクチュエータ2は伸長し引張力も減少する。バイアスばね4から移動体1に作用するバイアス力F4が引張力F2よりも大きくなり、バイアス力が作用する方向(図中左方)に移動する。SMAアクチュエータ2が通電前の温度まで低下すると、SMAアクチュエータ2から移動体1に作用する力が引張力F2に戻る。そして、移動体1は、バイアスばね4からのバイアス力がF1となる位置、すなわち、初期位置P1に戻る。
なお、SMAアクチュエータ2による引張力F3はSMAアクチュエータ2の温度、つまり、SMAアクチュエータ2への通電量によって調整することができる。そして、引張力F3を調整することで、移動体1の移動量も調整することができる。SMAアクチュエータ2の通電量を調整することで、移動体1の移動量を調整することが可能である。
本発明にかかる駆動装置Aが動作するときのSMAアクチュエータ2の変形状態について図面を参照して説明する。図5は図2に示す駆動装置が駆動されるときのSMAアクチュエータの形状を示す概略図である。なお、説明の便宜上、図5で示すSMAアクチュエータの変形量は実際の駆動装置における移動に伴う変形量よりも大きく示している。
移動体1が初期位置P1にあるとき、SMAアクチュエータ2の中間部23は摩擦力により曲線部21と同形状となっている。上述のとおり、通電されると、SMAアクチュエータ2は発熱し、相変態して収縮する。SMAアクチュエータ2が収縮することで、架設部11に引張力F3が作用し、移動体1は駆動位置P2まで移動する。このとき、SMAアクチュエータ2の曲線部21は均等に作用する収縮力と架設溝12に位置規制されているので、架設溝12に沿う方向及び架設部11の軸方向いずれにも移動が規制される。
また、中間部23はフリー部13に配置されており架設部11の軸方向への移動が規制されないので、中間部23は直線部22にあわせて移動及び変形が可能である。SMAアクチュエータ2が収縮するとき、中間部23はフリー部13に密着しつつ、直線部22から軸方向上側に引っ張られる。中間部23はSMAアクチュエータ2とフリー部13との摩擦力及びSMAアクチュエータ2の力の釣り合いによって緩やかな曲線を描く。
SMAアクチュエータ2の収縮によって、中間部23が屈曲されにくく、緩やかな曲線状となるので、中間部23に作用する応力は一点(例えば屈曲部が存在する場合、その屈曲部)に集中しにくく分散される。これにより、SMAアクチュエータ2の伸縮によって中間部23の特定の場所での応力集中による金属疲労が発生しにくい。駆動装置Aにおいて、SMAアクチュエータ2の伸縮動作を繰り返しても、金属疲労が発生しにくく、安定した駆動力(引張力)を出力することができる。
本発明にかかる駆動装置の他の例について図面を参照して説明する。図6は本発明にかかる駆動装置の他の例の側面側から見た概略配置図であり、図7は図6に示す駆動装置に用いられたSMAアクチュエータの移動を示す図である。駆動装置Bは、移動体1bが異なる以外は、駆動装置Aと同じ構成を有するものであり実質上同じ部分には同じ符号は付してある。なお、実質上同じ部分の説明は省略する。また、平面視(上面から見た)の各部の配置は図1に示すものと同様のものであり、図示及び詳細な説明は省略する。
図6に示すように、駆動装置Bは移動体1bが回転軸10bを備えており、移動体1bがSMAアクチュエータ2の伸縮によって回転軸10b周りに往復回動するものである。移動体1bより突出された架設部11bに形成された架設溝12bにSMAアクチュエータ2が架設されており、SMAアクチュエータ2の両端部は電極3にて固定されている。SMAアクチュエータ2bに通電し、SMAアクチュエータ2の収縮力によって架設部11bに引張力F5が発生し移動体1bは回転軸10bを中心に回動する。また、SMAアクチュエータ2への通電を停止することで、SMAアクチュエータ2が伸長して移動体1bはバイアスばね4に引っ張られ、回転軸10b周りに回動し初期位置に戻る。
図7に示すように、駆動装置Bが駆動されるときには、SMAアクチュエータ2の曲線部21も架設溝12bの移動にあわせて移動する。このとき、直線部22の曲線部21に対する角度が変化する、すなわち、直線部22は曲線部21に対して回動するように動く。このとき、中間部23はフリー部13bに配置されており架設部11bの軸方向への移動が規制されないので、中間部23は直線部22にあわせて移動及び変形できる。SMAアクチュエータ2が収縮するとき、中間部23はフリー部13bに密着しつつ、直線部22から架設部11bから見て上方に引っ張られる。中間部23はSMAアクチュエータ2bとフリー部13bとの摩擦力及びSMAアクチュエータ2の力の釣り合いによって緩やかな曲線を描く。
SMAアクチュエータ2の収縮によって、中間部23が屈曲されにくく、緩やかな曲線状となるので、中間部23において、応力が分散され、一点(例えば屈曲部が存在する場合、屈曲部)に集中しにくい。これにより、SMAアクチュエータ2の伸縮によって中間部23に応力集中による金属疲労が発生しにくい。駆動装置Bにおいて、SMAアクチュエータ2の伸縮動作を繰り返すことによる劣化を抑制することができ、安定した駆動力(引張力)を出力することができる。
以上に示したように、駆動装置A、Bは繰り返し駆動を行った場合でも、駆動の精度の低下を起こしにくく、それだけ、長寿命化が可能である。また、SMAアクチュエータの引張方向にかかわらず、劣化が発生しにくいので、場所(SMAアクチュエータの取り付け位置等)の制約を受けにくく、それだけ小型化に適している。
さらに、SMAアクチュエータの位置を規制し、SMAアクチュエータを架設する架設溝の一部を位置規制を緩める形状に変更する簡単な構成であるので、従来用いられているSMAアクチュエータにも容易に適応が可能である。
上記実施形態では、SMAアクチュエータの架設平面と移動体の移動方向が一致しない構成について説明しているが、一致するものであっても、同様の効果を得られることは言うまでもない。また、設計上、一致する構成であっても、製造誤差や組立誤差によって、厳密に一致させることは非常に困難であり、本発明の構成を用いることで、SMAアクチュエータの劣化を低減できることは明らかである。
本発明にかかる駆動装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図8は本発明にかかる駆動装置の他の例を上方から見た概略配置図であり、図9は図8に示す駆動装置を側方から見た概略配置図である。図8、図9に示すように、駆動装置Cは、移動体1cの架設部11cが異なる以外、駆動装置Aと実質上同じ構成を有しており、実質上同じ部分には、同じ符号が付してある。また、実質上、駆動装置Aと同じ部分については、詳細な説明を省略する。
図8、図9に示すように、駆動装置Cの移動体1cの架設部11cは、異なる曲率半径の曲面をつなぎ合わせた曲面形状を有している。すなわち、架設部11cのSMAアクチュエータ2の折り返し部110cは曲率半径r1の曲面であり、SMAアクチュエータ2が離反する離反部13cは曲率半径r2の曲面である楕円形状を有している。また、架設部11cは先端側にSMAアクチュエータ2の先端側への抜けを抑制するためのフランジ状の抜け止め部16cが形成されている。
折り返し部110cの曲率半径r1はSMAアクチュエータ2を架設したときに、曲線部21に無理な力が発生しにくい大きさである。また、離反部13cの曲率半径r2は中間部23に応力が集中しにくい大きさである。すなわち、中間部23が離反部13cとの摩擦力及びSMAアクチュエータ2の力の釣り合い(曲線部21と直線部22とからの引っ張り力)の釣り合いで緩やかな曲線を描くように、曲率半径r2を設定している。ここでは、離反部13cの曲率半径r2はSMAアクチュエータ2の線径の15倍以上である。架設部11cは折り返し部110cの曲率半径r1は離反部13cの曲率半径r2よりも小さい。そして、架設部11cの長軸は移動体1cの移動方向に沿う方向である。
架設部11cにおいて、曲線部21はSMAアクチュエータ2の収縮力による変形したり、移動したりしにくいので、折り返し部110cの曲率半径r1を小さくすることができる。また、折り返し部110cの両側に配置された曲面部の曲率半径を大きくすることで、SMAアクチュエータ2と架設部11cとの接触部の長さを長くすることができる。これにより、曲線部21と架設部11cとの摩擦力を大きくすることができ、曲線部21が架設部11cの軸方向へ移動を抑制することができる。
また、中間部23が配置される離反部13cにおいて、中間部23が緩い曲線を描いているので、中間部23に応力が集中しにくい。このことにより、SMAアクチュエータ2が伸縮を繰り返しても、中間部23の一点に応力が集中することによる金属疲労を抑制することができ、SMAアクチュエータ2の劣化を抑制することができる。
上記実施形態では、楕円底面(r1、r2二つの曲率半径を備えた)の柱状の架設部11cを備えた駆動装置を例に説明しているが、これに限定されるものではなく、さらに多くの異なる曲率半径を有する曲面を組み合わせた形状であってもよい。また、SMAアクチュエータ2が移動体を挟んで対称に配置されているが、それに限定されるものではなく、非対称であってもよい。この場合、SMAアクチュエータ2が離反する離反部13cがそれぞれ異なる曲率半径を有していてもよい。
本発明にかかる駆動装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図10は本発明にかかる駆動装置の他の例を上方から見た概略配置図である。図10に示すように、駆動装置Dは、移動体1dの架設部11dが異なる以外、駆動装置Aと実質上同じ構成を有しており、実質上同じ部分には、同じ符号が付してある。また、実質上、駆動装置Aと同じ部分については、詳細な説明を省略する。
図10に示すように、架設部11dは半円形の底面を有する柱形状の部材である。架設部11dの折り返し部110dが曲面形状に形成されている。折り返し部110dから離反部13dまでが同一の曲率半径r3を有する曲面で形成されており、曲率半径r3はSMAアクチュエータ2の直径の15倍以上である。この構成の場合も、駆動装置Dの場合と同様に、SMAアクチュエータ2の曲線部21の長さが長くなり、摩擦力を大きくすることができ、それだけ、曲線部21が架設部11dの軸方向へ移動しにくい。
また、中間部23が配置される離反部13dにおいて、中間部23が緩い曲線を描いているので、中間部23に応力集中部が発生しにくい。このことにより、SMAアクチュエータ2が伸縮を繰り返しても、中間部23における金属疲労を抑制することができ、SMAアクチュエータ2の劣化を抑制することができる。さらに、架設部の折り返し部と反対側の部分を取り除いた形状を有しているので、小型、軽量化することが可能である。小型になることで、設置場所の自由度が増え、軽量化によって、小さな引張力で操作することができるとともに、移動体の動作速度を上げることが可能である。
上記実施形態では、架設部として底面が半円形状の柱状部材を例に説明しているが、それに限定されるものではなく、底面が180度よりも大きい又は小さい中心角度の扇形のものや楕円形状のものであってもよい。また、離反部の曲率半径がSMAアクチュエータ2の直径の15倍以上の曲面で形成され、他の部分はこれと異なる曲率半径の曲面で形成されていてもよい。
本発明にかかる駆動装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図11は本発明にかかる駆動装置の他の例を側方から見た概略配置図である。図11に示すように、駆動装置Eは、移動体1eの架設部11eが異なる以外、駆動装置Aと実質上同じ構成を有しており、実質上同じ部分には、同じ符号が付してある。また、実質上、駆動装置Aと同じ部分については、詳細な説明を省略する。
図11に示すように、駆動装置Eの架設部11eは、移動体1eから離れるにしたがって、断面の外径が大きくなる錐体形状を有している。そして、架設部11eのSMAアクチュエータ2が架設されている曲面の曲率半径がSMAアクチュエータ2の外径の15倍以上になっている。このように、先が太くなる錐体形状の架設部11eを用いることで、SMAアクチュエータ2を駆動したときに、SMAアクチュエータ2が架設部11eの先端側に移動するのを抑制することができる。
上記実施形態では、SMAアクチュエータ2の電極3に取り付けられている部分が、架設部11eのSMAアクチュエータ2が配置されている部分よりも上にあり、SMAアクチュエータ2には、伸縮によって、架設部11eの先端側に向かう力が作用する。駆動装置Eは先端が太くなる形状であるので、SMAアクチュエータ2の曲線部21は先端に向かって移動するのを規制される。また、SMAアクチュエータ2の中間部23は、架設部11eの外径の大きな先端側に沿うので、より緩い曲線を形成する。これにより、中間部23には応力が集中しにくく、劣化が発生しにくい。
一方で、SMAアクチュエータ2に架設部の移動体との接続部に向かう力が作用する場合、先端側がほそくなるような形状の架設部を採用可能することができる。また、本実施形態の架設部は、その中心軸が移動体に対して垂直となっているが、これに限定されるものではなく、中心軸が傾いていてもよい。
以上に示した各実施形態において、架設部として移動体より部分的に突出しているものを例に説明しているが、これに限定されるものではなく、移動体と同じ断面を有し、移動体の移動方向に対して直交或いは交差する方向に伸び、SMAアクチュエータを架設できる形状を広く採用することが可能である。
上記各実施形態において、SMAアクチュエータに用いられる形状記憶合金としてNi−Ti合金のような、温度によって相変態を起こす形状記憶合金を挙げているが、これに限定されるものではなく、同様の変形性質を有する形状記憶合金を広く採用することが可能である。また、SMAアクチュエータの加熱方法としてSMAアクチュエータに通電し、ジュール熱によって加熱する方法が挙げられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、電磁誘導による加熱等、加熱、冷却を容易に切り替えることができる方法をひろ区採用することが可能である。さらに、SMAアクチュエータに用いられる形状記憶合金として温度によって制御するものが用いられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、磁性によって制御されるもの等、熱とは異なる方法で制御される形状記憶合金を用いることも可能である。
本発明にかかる駆動装置を用いた装置の例である撮像装置を図面を参照して説明する。なお、本実施形態では駆動装置として図6等に示されている、往復回動型の移動体を備えたものが用いられている。図12は本発明にかかる駆動装置が用いられている撮像装置の平面図であり、図13は図12に示す撮像装置を矢印II方向に見たときの概略配置図であり、図14は図12に示す撮像装置を矢印III方向に見たときの概略配置図である。なお、図12で図示された撮像装置は、説明の便宜上、ケースの上面、天板、板ばね、バイアスばねを省略しており、図13及び図14ではケースの側部を省略している。
撮像装置Cmは、平面視正方形状の箱体であるケースCaと、画像を撮像するための個体撮像素子を具備するイメージセンサImsと、イメージセンサImsの光電変換部に被写体像を撮像させるレンズを駆動するレンズ駆動装置Laとを備えている。
ケースCaは撮像装置Cmの外殻をなし、外部からの撮像光以外の光の入射、異物の混入、及び内部に配置された部材への衝撃及び(又は)振動の作用を抑制するものである。ケースCaは樹脂で形成されており、底面が正方形の直方体形状を有する箱体である。ケースCaの上面部には、撮像光を入射させるための撮像窓Cwが形成されている。撮像窓Cwは、撮像装置Aの光軸Axが中心を通るように形成されている。
イメージセンサImsは照射された撮像光を電気信号に変換する個体撮像素子を備えている。個体撮像素子として、光電変換部にCMOS型のセンサを用いたものが採用されている。イメージセンサImsは平面視長方形の板状であり、図に示す撮像装置Cmでは長辺及び短辺がケースCaの底面の対角線と平行で、中心が撮像装置Cmの光軸Axと重なるように配置されている。
レンズ駆動装置Laについて説明する。レンズ駆動装置LaはケースCaの内部に配置されている。レンズ駆動装置Laは、駆動装置Bと、中央に貫通孔が形成されている板状のベース部50と、天板部51と、イメージセンサImsに被写体像を撮像させるレンズを備えたレンズユニット7と、レンズユニット7をイメージセンサImsに対して接近離反させる駆動装置Bと、ベース部50及び天板部51に固定されレンズユニット7を保持する上板ばね52、下板ばね53と、レンズユニット7を押圧するバイアスばね6とを備えている。
ベース部50は平面視正方形状の平板であり、ケースCaに固定され、レンズ駆動装置Laの底部を構成する不動の部材である。また、天板部51は平板状の部材であり、ベース部50と平行となるように配置されている。ベース部50及び天板部51には貫通孔501及び貫通孔511が形成されている。貫通孔501はレンズユニット7の外径よりも小さく、レンズユニット7に配置された撮像レンズ71(後述)よりも大きな内径の円筒形状の孔である。さらに、貫通孔501の内径はイメージセンサImsへの光の入射を妨げない大きさである。一方、貫通孔511はレンズユニットの外径よりも大きな内径の円筒形状の孔である。貫通孔501及び貫通孔511の中心軸は、いずれも、撮像装置Aの光軸Axと重なっている。また、上板ばね52と下板ばね53とは平行であり、レンズユニット7を上下から挟持している。上板ばね52及び下板ばね53には、撮像光が透過するための孔が形成されている。
支持脚部6はベース部50に固定された四角柱状の部材である。支持脚部6は凸部73と近接する角部とは異なる角部と近接して配置されている。支持脚部6はレンズユニット7と対向する面と反対側の面より突出し、支持凹部15に挿入された円錐形状の移動体支持部61を備えている。移動体支持部61は中心軸(揺動軸Bx)が凸部73の配列方向と直交する又はこれに平行となるように形成されている。移動体支持部61は先端が支持凹部15の円錐形状の頂点部と接触して配置されている。なお、移動体支持部61は支持脚部6と一体で形成されていても良く、支持脚部6と別体で支持脚部6に固定されたものであってもよい。
移動体支持部61はその頂点が支持凹部15の最深部と接触しており、移動体1を点で支持している。これにより、移動体1は揺動軸Bx周りに揺動可能であるとともに、揺動軸Bxと交差(変位の方向によっては直交)する軸(回転軸Cx)周りにも回動可能となっている。
レンズユニット7は撮像レンズ71と、撮像レンズ71が保持されたレンズ保持枠72とを備えている。撮像レンズ71は、対物レンズ、フォーカスレンズ、ズームレンズ等を含むレンズ群であり、撮像窓Cwより入射した撮像光をイメージセンサImsに導き、イメージセンサImsに被写体像を決蔵する結像光学系を構成するものである。なお、撮像レンズ71として複数のレンズで構成されるレンズ群としているが、単一のレンズで構成されるものであってもよい。
レンズ保持枠72は円筒形状の枠体(いわゆる玉枠)であり、内部に撮像レンズ71を保持している。上面321が上板ばね52に、下面322が下板ばね53に保持されており、レンズ保持枠72の中心軸が光軸Axと重なっている。また、レンズユニット7はレンズ保持枠72が上板ばね52及び下板ばね53で挟持されていることで、その変位自由度が光軸Axに沿った方向に規制されている。なお、レンズユニット7は軸に沿った方向に移動するときは、天板部51の貫通孔511を貫通するように移動する。
レンズ保持枠72は外周部の上面321の近傍に、周方向外側に向かって突出した2個の凸部73を備えている。2個の凸部73は上面321からの等距離となるように形成されているものであり、中心軸を挟んで対称の位置に形成されている。凸部73はベース部50の対角線方向に並んで配置されており、凸部73はケースCaの対角のそれぞれの近傍に配置されている。
駆動装置Bは、レンズユニット7に駆動力を付与するものである。駆動装置Bは、移動体1bと、移動体1bを支持する支持脚部6と、移動体1bに固定されたアーム部14と、移動体1bに形成された架設溝12に架設されたSMAアクチュエータ2と、SMAアクチュエータ2の両端を固定するとともに、SMAアクチュエータ2に電気を供給する電極3とを備えている。
図に示すように、移動体1bは直方体形状を有しており、一面の上下方向の略中央に円錐状の凹部である支持凹部15が形成されている。また、下端部には、架設部11を備えており、SMAアクチュエータ2が架設された架設溝12が形成されている。
アーム部14は移動体1bの支持凹部15が形成されている面と隣り合う両側面より突出している。アーム部14は2股に分かれており、レンズユニット7に近接してそれぞれ均等に伸びている。アーム部14は途中で屈曲しており、先端側に変位出力部141が形成されている。2股に分かれたアーム部14の両方に形成された変位出力部141は互いに平行となっており、凸部73の下部で接触している。
SMAアクチュエータ2に用いられるSMAとして例えばNi−Ti合金等を挙げることができる。SMAはそれ自体の温度によって結晶相が変化するものである。本発明に用いられているSMAの場合、低温状態のときは伸長された状態(マルテンサイト相)に、高温状態のときは収縮された状態(オーステナイト相)に相変態する。SMAは温度変化によってこれらの相変態を繰り返す。
SMAアクチュエータ2は所定の電気抵抗を有する導体であるので、電極3よりSMAアクチュエータに通電することでジュール熱が発生する。SMAアクチュエータ2はこのジュール熱によって高温状態になり、高温状態から通電量を減らす或いは通電を遮断することで放熱し、低温状態になる。SMAアクチュエータ2は低温状態のとき伸長し、高温状態のとき収縮するので、低温状態では長く、高温状態では短くなる。
図に示すように、SMAアクチュエータ2は移動体1bの架設溝12に架設されており、移動体1bで折り返すV字状に配置されている。SMAアクチュエータ2の両端部は、それぞれ、凸部73の近傍に電極3にて固定されている。電極3はベース部50に固定されている。
なお、SMAアクチュエータ2はベース部50と平行となるように架設溝12に架設され両端部を電極3で固定されている。SMAアクチュエータ2が伸縮することで、架設溝12がSMAアクチュエータ2に引っ張られる。これにより、移動体1bに支持凹部15を中心とした回転モーメントが作用する。このとき、アーム部14は変位出力部141が持ち上げられるように回動し、変位出力部141が凸部73を押し、レンズユニット7が変位される。
このとき、アーム部14及び変位出力部141は移動体1bに対して対称となるように形成されているとともに、2個の凸部73がレンズユニット7の中心軸を挟んで対称に形成されているので、2個の凸部73には均等な力が作用する。これによって、レンズユニット7は撮像レンズ71の光軸がずれないように変位される。
さらに詳しく説明すると、電極3はSMAアクチュエータ2が平面視で対角線となす角度が同じであり、各電極3から架設溝12までのそれぞれの長さが等しくなる場所でベース部50に固定されている。SMAアクチュエータ2の架設溝12を挟んだ両側が等長、等角度で配置されていることで、架設溝12を挟んで両側のSMAアクチュエータ2の伸縮量を等しくすることができる。
以上のようにSMAアクチュエータ2が設置されていることで、SMAアクチュエータ2が伸縮するときどちらかに偏ってしまうのを抑制することでき、架設溝12に架設されている部分は架設溝12からずれにくい。これにより、SMAアクチュエータ2と架設溝12との摩擦を低減することができる。さらに、SMAアクチュエータ2の伸縮による力が均等な角度且つ力で架設溝12に作用するので、架設溝12の変位方向は凸部73の配列方向と直交する方向、すなわち揺動軸Bxと平行な方向となる。これにより、架設溝12に変位の入力があった場合、移動体1bには揺動軸Bxに直交するとともに、ベース部50と平行な軸(回転軸Cxのひとつ)周りのモーメントが作用する。
バイアスばね4はレンズ保持枠72の周縁サイズと略同じ径の圧縮コイルばねである。バイアスばね4は下端部がレンズ保持枠72の上面721と当接しており、上端部がケースCaの上側と当接している。これにより、バイアスばね4はレンズ保持枠72を下方に付勢している。バイアスばね4は撮像光がイメージセンサImsに入射するのを妨げないように配置されている。
まず、駆動装置Bが駆動していないときの力の釣り合いについて説明する。駆動装置Bは駆動していない場合、レンズユニット7は図中下面側がベース部50に形成された貫通孔501の辺縁部502と接触しており、図中上面側がバイアスばね4から下方に押されている。
一方で、移動体1bの架設溝12にはSMAアクチュエータ2が架設されており、SMAアクチュエータ2は緊張した状態で電極3に固定されている。このとき、架設溝12にはSMAアクチュエータ2による引っ張られる引張力が作用している。移動体1bの変位出力部141は凸部73と接触しており、この引張力によって移動体1bに発生するモーメントによって凸部73には図中上方に向く力が作用している。また、レンズユニット7の図中下面はベース部50の貫通孔501の辺縁部502からも上方に向く力(抗力)が作用している。
レンズユニット7はバイアス力、抗力及びモーメントによる力が釣り合ってベースポジションに静止している。なお、SMAアクチュエータ2の引張力はSMAアクチュエータ2がたわまない程度のものであればよい。また、SMAアクチュエータ2の引張力を強くしてレンズユニット7が貫通孔501の辺縁部502から所定の高さまで浮いたときの、レンズユニット7の位置をベースポジションとすることも可能である。
移動体1bが静止しているとき、SMAアクチュエータ2には通電されておらず、低温(マルテンサイト相)状態であり、SMAアクチュエータ2が伸長された状態になっている。
次に、ベースポジションにある状態からレンズユニット7を移動させる手順を説明する。電極3よりSMAアクチュエータ2に通電させる。上述したとおり、SMAアクチュエータ2に通電することで、SMAアクチュエータ2はジュール熱によって加熱される。これにより、SMAアクチュエータ2はマルテンサイト相からオーステナイト相に相変態する。これにより、SMAアクチュエータ2は収縮する。
SMAアクチュエータ2の収縮により架設溝12は収縮力が作用する。このとき、収縮力は引張力よりも大きな力であり、移動体1bに作用するモーメントの釣り合いが崩れ、回転軸Cxを中心とする反時計回りのモーメントが大きくなる。このモーメントがアーム部14及び変位出力部141に伝達され、変位出力部141が凸部73を上方に押す。レンズユニット7は凸部73を変位出力部141に押され、バイアスばね4から作用されているバイアス力に抗して上方に変位する。
以上、示したように、駆動装置BはSMAアクチュエータ2に通電することでレンズユニット7を持ち上げ、フォーカス動作或いはズーム動作を行うことができる。
SMAアクチュエータ2が収縮している状態で通電を停止すると、ジュール熱の発生が停止され、SMAアクチュエータ2は放熱によって冷却される。そして、SMAアクチュエータ2はオーステナイト相からマルテンサイト相に相変態し、収縮により発生していた収縮力が消失する。収縮力によるモーメントで持ち上げられていたレンズユニット7はバイアスばね4の押圧力で押されて、ベースポジションに戻る。
以上のように、駆動装置Bは、SMAアクチュエータ2への通電ON−OFFによって、レンズユニット7を撮像レンズ71の光軸と撮像装置Cmの光軸Axとが重なった状態で、光軸Axに沿って変位させることができる。また、SMAアクチュエータ2に通電する通電量によって発熱量を変化させ、収縮力を調整し、レンズユニット7の移動量を調整することが可能である。これにより、撮像装置Cmはフォーカス動作、ズーム動作を行う場合であっても、撮像レンズ71の光軸がずれたり、傾いたりしないので、イメージセンサImsに高精度(高解像度)の被写体像を結像することが可能である。
上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。