まず、図1は一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示す。撮影光学系の光軸91に沿って撮影光学系に入射する光束100は、あらゆる方向に直線偏光した光の集まりである。入射光束100の内の所定の方向の偏光成分101(図では垂直方向)のみが、撮影光学系近傍に配置された瞳分割偏光部材110を通過する。
瞳分割偏光部材110は、瞳部分92(以下、測距瞳92と呼ぶ)を通過する光束の直線偏光方向を所定角度回転するとともに、瞳部分93(以下、測距瞳93と呼ぶ)を通過する光束の直線偏光方向を上記所定角度とは異なる角度回転する。測距瞳92から出射する光束102は所定方向に直線偏光している。また、測距瞳93から出射する光束103は光束102の直線偏光方向と略直交する方向に直線偏光している。
撮像素子211は、光束102の直線偏光方向の光を選択的に受光する画素212と、光束103の直線偏光方向の光を選択的に受光する画素213とが、測距瞳92,93の並び方向に交互に配列されている。
このような構成により、画素212と213はそれぞれ、撮影光学系に入射する撮影光束の中の同一方向に直線偏光した成分の光束を受光することができる。瞳分割偏光部材110を出射する直線偏光方向の異なる2つの光束102,103をハーフミラー等で波面分割することなく、撮像素子211上の画素212,213を用いて空間的に分離して検出することができる。
本願発明の撮像装置をデジタルスチルカメラに適用した一実施の形態を説明する。図2は一実施の形態のデジタルスチルカメラの構成を示す。デジタルスチルカメラ201は交換レンズ202とカメラボディ203から構成され、これらはマウント部204により結合される。このデジタルスチルカメラ201の交換レンズ202は、上述した瞳分割偏光部材110を備えている。
交換レンズ202は瞳分割偏光部材110、レンズ209、ズーミング用レンズ208、フォーカシング用レンズ210、絞り207、レンズ駆動制御装置206を備えている。レンズ駆動制御装置206は、瞳分割偏光部材110の制御と位置検出、フォーカシング用レンズ210、絞り207の駆動制御、ズーミング用レンズ208、フォーカシング用レンズ210および絞り207の状態検出、後述するボディ駆動制御装置214との通信によるレンズ情報の送信とカメラ情報の受信などを行う。なお、瞳分割偏光部材110は絞り207に近接(図では前側)して配置される。
カメラボディ203は撮像素子212、電気接点213、ボディ駆動制御装置214、液晶表示素子駆動回路215、液晶表示素子216、接眼レンズ217、メモリーカード219などを備えている。撮像素子212は交換レンズ202の予定結像面に配置され、交換レンズ202により結像された被写体像を画像信号に変換する。ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212からの画像信号の読み出しと画像信号の補正、レンズ駆動制御装置206との通信(レンズ情報の受信/カメラ情報(デフォーカス量)などの送信)、交換レンズ202の焦点調節状態の検出、デジタルスチルカメラ全体の動作制御などを行う。
液晶表示素子駆動回路215は、ボディ駆動制御装置214の制御にしたがって液晶ビューファインダ(EVF:電気的ビューファインダー)の液晶表示素子216を駆動する。接眼レンズ217は撮影者が液晶表示素子216を観察するためのレンズである。メモリーカード219は画像信号を格納記憶するための画像ストレージである。ボディ駆動制御装置214とレンズ駆動制御装置206は、マウント部204に設けられた電気接点部213を介して各種情報(レンズ情報、フォーカシングレンズ駆動のためのデフォーカス量等)の授受を行う。
撮像素子212には後述する画素が二次元状に配置されている。交換レンズ202を通過して撮像素子211上に形成された被写体像は撮像素子211により光電変換され、その出力はボディ駆動制御装置214へ送られる。ボディ駆動制御装置214は、画素出力に基づき所定の焦点検出位置でのデフォーカス量を算出し、このデフォーカス量をレンズ駆動制御装置206へ送る。また、ボディ駆動制御装置214は撮像素子211の出力に基づき生成した画像信号をメモリーカード219に格納する。さらに、ボディ駆動制御装置214は画像信号を液晶表示素子駆動回路215へ送り、この画像信号を液晶表示素子216に表示させる。撮影者は液晶表示素子216に表示された画像を接眼レンズ217を介して観察することができる。
カメラボディ203には不図示の操作部材(シャッターボタン、焦点検出位置の設定部材等)が設けられており、ボディ駆動制御装置214はこれらの操作部材からの操作状態信号を検出し、検出結果に応じた動作(撮像動作、焦点検出位置の設定動作)の制御を行う。
レンズ駆動制御装置206は、レンズ情報をフォーカシング状態、ズーミング状態、絞り設定状態、絞り開放F値などに応じて変更する。具体的には、レンズ208、210の位置、絞り207の位置および瞳分割偏光部材110の位置をモニターし、これらのモニター情報に応じてレンズ情報を演算したり、あるいは予め用意されたルックアップテーブルからモニター情報に応じたレンズ情報を選択する。レンズ駆動制御装置206は、受信したデフォーカス量に基づきレンズ駆動量を算出し、このレンズ駆動量に基づきフォーカシングレンズ210を不図示のモーター等の駆動源により合焦点へと駆動する。
図3は瞳分割偏光部材110の構成を示し、(a)は断面図、(b)〜(d)は光の入射方向から見た正面図である。(a)図に示すように、瞳分割偏光部材110は、光入射側に直線偏光素子120が、光出射側に旋光素子130がそれぞれ配置されている。(b)図に示すように、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。
ここで、垂直方向とは、図2に示す撮像装置における通常の撮影姿勢(正位置撮影姿勢)を基準とした場合の方向である。通常の撮影姿勢では、水面などの水平な反射面(自然界では存在頻度が高い)から反射される光は水平方向の直線偏光成分を多く含む。したがって、垂直方向の直線偏光成分のみを透過させることによって、水面などの水平面の反射成分を除去し、良好な撮影結果を得ることが可能となる。
(c)図に示すように、旋光素子130は垂直方向に対し+22.5度および−22.5度傾いた光学軸を持つ1/2波長位相シフト素子(1/2波長板)132、133から成る。1/2波長板132と133は、入射光束を垂直方向の分割線で略対称に水平方向に2分するように並置されている。1/2波長板132と133は、可視光の波長範囲において1/2波長位相シフト効果を有する。
(d)図に示すように、旋光素子132から出射する光束112は直線偏光方向が+45度回転される。一方、旋光素子133から出射する光束113は直線偏光方向が−45度回転される。光束112と113は互いに直線偏光方向が直交する。
図4は撮像素子211の全体模式図(正面図)である。撮像素子211は、直線偏光方向が垂直方向から+45度傾いた直線偏光成分を受光する第1画素212と、直線偏光方向が垂直方向から−45度傾いた直線偏光成分を受光する第2画素213とが、交互に水平方向に並んだ画素行が垂直方向に配列された構造となっている。
図5は撮像素子211の部分拡大図(正面図)である。第1画素212と第2画素213は、市松模様状に二次元状に配列される。水平方向に瞳分割され互いに直交した方向に直線偏光した光束により形成される2像は、焦点調節状態に応じて撮像素子211上で水平方向に相対的にずれる。一方の像の空間分布は、第1画素212の水平方向の配列(例えば212a、212b、212c、・・・)によって受光される。他方の像の空間分布は、第2画素213の水平方向の配列(例えば213a、213b、213c、・・・)によって受光される。撮像素子211のどの部分の画素を焦点検出に用いるかによって、焦点検出位置の選択が可能になる。
図6は偏光型瞳分割位相差検出方式による焦点検出を説明するための図であり、(a)は図2の光軸を含む紙面に垂直な面における断面図、(b)は偏光素子配列の正面図である。90は、交換レンズ202の予定結像面に配置された撮像素子211の前方d4の距離にある交換レンズ202の射出瞳面(絞り207および絞り207より後方の光学系によって決定される面)である。91は交換レンズ202の光軸である。また、92、93は一対の測距瞳、すなわち瞳分割偏光部材110により瞳分割された一対の光束が絞り207の開口により制限されてできる射出瞳面90の一対の領域であり、図6では模式的に楕円で示す。
14a、14bは+45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳92を出射する直線偏光の光を透過する。また、15a、15bは−45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳93出射する直線偏光の光を透過する。72,82は測距瞳92を出射する光束で、+45度方向に直線偏光されている。また、73,83は測距瞳93を出射する光束で、−45度方向に直線偏光されている。
12a、12b、13a、13bは光電変換部である。1つの画素は光電変換部とその前に配置された偏光素子とから構成される。画素は半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。偏光素子も光電変換部上に一体的に形成される。なお、図6では隣接する4画素を模式的に例示するが、他の画素も同様である。光電変換部12aと偏光素子14aの組み合わせ、および光電変換部12bと偏光素子14bの組み合わせが、第1画素212を形成する。また、光電変換部13aと偏光素子15aの組み合わせ、および光電変換部13bと偏光素子15bの組み合わせが、第2画素213を形成する。
図6(b)に示すように、偏光素子14a、15a、14b、15bは、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束を交互に透過するように配置される。図6(a)において、光電変換部12aには、測距瞳92を出射する光束72と測距瞳93を出射する光束が向かう。偏光素子14aは測距瞳92を出射する光束72を透過し、測距瞳93を出射する光束を阻止する。光電変換部12aは、光束72が光電変換部12a上に形成する像の光強度に対応した信号を出力する。
光電変換部13aには、測距瞳93を出射する光束73と測距瞳92を出射する光束が向かう。偏光素子15aは測距瞳93を出射する光束73を透過し、測距瞳92を出射する光束を阻止する。光電変換部13aは、光束73が光電変換部13a上に形成する像の光強度に対応した信号を出力する。また、光電変換部12bには、測距瞳92を出射する光束82と測距瞳93を出射する光束が向かう。偏光素子14bは測距瞳92を出射する光束82を透過し、測距瞳93を出射する光束を阻止する。光電変換部12bは、光束82が光電変換部12b上に形成する像の光強度に対応した信号を出力する。
光電変換部13bには、測距瞳93を出射する光束83と測距瞳92を出射する光束が向かう。偏光素子15bは測距瞳93を出射する光束83を透過し、測距瞳92を出射する光束を阻止する。光電変換部13bは、光束83が光電変換部13b上に形成する像の光強度に対応した信号を出力する。
上述した第1画素212と第2画素213を直線状に多数配置し、各画素の光電変換部の出力を測距瞳92および測距瞳93に対応した出力グループにまとめることによって、測距瞳92と測距瞳93を各々通過する焦点検出光束が画素列上に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。この情報に対して後述する像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことにより、いわゆる偏光型瞳分割位相差検出方式で一対の像の像ズレ量が検出される。像ズレ量は光軸に対して垂直な面内の方向のズレ量であるから、これを後述する方式により光軸方向のズレ量、すなわちデフォーカス量(撮像素子面と光学系の合焦面との光軸方向の偏差)に変換する。
図7は、一実施の形態のデジタルスチルカメラ(撮像装置)201の動作を示すフローチャートである。ボディ駆動制御装置214は、カメラ201の電源スイッチ(不図示)がオンされるとこの動作を繰り返し実行する。ステップ100で電源がオンされるとステップ110へ進み、絞りを“撮影F値”、すなわち被写界の輝度または手動操作に応じて設定される絞り開口の大きさに設定して撮像を行い、画素のデータを読み出し、電子ビューファインダーに表示させる。ステップ120において、“焦点検出F値”、すなわち焦点検出用の画素のデータを読み出す場合に適用される絞り開口の大きさをデフォーカス量の大きさに応じて決定する。
図8を参照して焦点検出F値について説明する。瞳分割偏光部材110を出射する光束112,113は、瞳分割偏光部材110の直後に配置された絞りの開口の大きさにより制限を受ける。絞りが大きな開口88の場合には、光束112,113が制限された光束112a、113aの重心115、116の瞳の並び方向(水平方向)の間隔はG1となる。一方、絞りが小さい開口89の場合には、光束112,113が制限された光束112b、113bの重心117、118の瞳の並び方向(水平方向)の間隔はG2となる。間隔G2は間隔G1より狭くなる。
同一のデフォーカス量の場合に、光束112a、113aが形成する一対の像のズレ量(間隔G1に略比例)は、光束112b、113bが形成する一対の像のズレ量(間隔G2に略比例)より大きくなる。デフォーカス量が小さな合焦近傍では、焦点検出時に絞り開口を大きくして焦点検出精度を向上させる。同一のデフォーカス量の場合に、光束112a、113a(光束が太い)が形成する一対の像のコントラストは、光束112b、113b(光束が細い)が形成する一対の像のコントラストより低くなる。
デフォーカス量が大きな状態では、もともと像のコントラストが低下して像ズレ量の検出が困難になり焦点検出不能となりやすいので、デフォーカス量が大きな場合には焦点検出時に絞り開口を絞り込んで小さくし、焦点検出不能を回避する。また、初回の焦点検出時あるいは前回焦点検出不能時にも、絞り開口を絞り込んで小さくし、焦点検出不能を回避する。
図7のステップ130において、焦点検出位置の画素領域に対応した第1画素のデータおよび第2画素のデータに基づいて後述する像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を行い、像ズレ量を演算する。なお、焦点検出位置は不図示の操作部材を用いて撮影者により指定されているものとする。続くステップ140では、焦点検出F値および測距瞳距離に応じて像ズレ量をデフォーカス量に変換する(詳細を後述する)。ステップ150で合焦近傍か否か、つまり算出されたデフォーカス量の絶対値が所定値以内であるか否かを調べる。
合焦近傍でないと判定した場合はステップ160へ進み、デフォーカス量をレンズ駆動制御装置206へ送信し、交換レンズ202のフォーカシングレンズ210を合焦位置に駆動させ、ステップ110へ戻って上記動作を繰り返す。なお、焦点検出不能な場合もこのステップ160へ分岐し、レンズ駆動制御装置206へスキャン駆動命令を送信し、交換レンズ202のフォーカシングレンズ210を無限から至近までの間でスキャン駆動させ、ステップ110へ戻って上記動作を繰り返す。
一方、合焦近傍であると判定した場合はステップ170へ進み、不図示の操作部材の操作によりシャッターレリーズがなされたか否かを判定する。シャッターレリーズがなされていないと判定された場合は、ステップ110へ戻って上記動作を繰り返す。シャッターレリーズがなされたと判定された場合はステップ180へ進み、レンズ駆動制御装置206に対して絞り調整命令を送信し、交換レンズ202の絞り値を撮影F値(撮影者または自動により設定されたF値)にする。絞り制御が終了した時点で、撮像素子211に撮像動作を行わせ、撮像素子211の全画素からデータを読み出して、メモリーカード219に格納する。メモリーカード219に保存する前に、画像処理(周囲画素に基づく補間処理、高周波成分カット処理等)を行ってもよい。その後、ステップ110へ戻って上記動作を繰り返す。
図7のステップ130における像ズレ検出演算処理について説明する。撮像素子211において、水平方向に延在する同一行に属する一対のデータ系列、例えば図5に示す第1画素の列(212a、212b、212c、・・・)のデータ系列と、第2画素の列(213a、213b、213c、・・・)のデータ系列の組み合わせで像ズレ検出を行う。
一対のデータ系列を(E1〜EL)、(F1〜FL)と一般化して表現した場合に、データ系列(E1〜EL)に対しデータ系列(F1〜FL)を相対的にずらしながら次式により2つのデータ列間のずらし量kにおける相関量C(k)を演算する。
C(k)=Σ|En−Fn+k| ・・・(1)
(1)式において、Σ演算においてnのとる範囲は、ずらし量kに応じてEn,Fn+kのデータが存在する範囲に限定される。また、ずらし量kは整数であり、一対のデータの検出ピッチを単位とした相対的シフト量である。
(1)式による演算結果は、図9(a)に示すように、一対のデータ系列の相関が高いシフト量(図9(a)ではk=kj=2)において相関量C(k)が最小(小さいほど相関度が高い)になる。次に、下記(2)〜(5)式による3点内挿の手法を用いて連続的な相関量に対する最小値C(x)を与えるシフト量xを求める。
x=kj+D/SLOP ・・・(2),
C(x)= C(kj)−|D| ・・・(3),
D={C(kj-1)−C(kj+1)}/2 ・・・(4),
SLOP=MAX{C(kj+1)−C(kj),C(kj-1)−C(kj)} ・・・(5)
(2)式で求めたシフト量xに検出ピッチ(同一種類の画素の配置ピッチ)を乗じて像ズレ量Xに換算する。
焦点検出の可能または不能、つまり像ズレ量Xの信頼性があるかどうかは、次のようにして判定される。図9(b)に示すように、一対のデータ系列の相関度が低い場合は、内挿された相関量の最小値C(x)の値が大きくなる。したがって、C(x)が所定値以上の場合は信頼性が低く焦点検出不能であると判定する。あるいは、C(x)をデータのコントラストで規格化するために、コントラストに比例した値となるSLOPでC(x)を除した値が所定値以上の場合は信頼性が低く焦点検出不能であると判定する。あるいはまた、コントラストに比例した値となるSLOPが所定値以下の場合は、被写体が低コントラストであり、算出された像ズレ量Xの信頼性が低く焦点検出不能であると判定する。
図7(c)に示すように、一対のデータ系列の相関度が低く、所定のシフト範囲kmin〜kmaxの間で相関量C(k)の落ち込みがない場合は、最小値C(x)を求めることができず、このような場合は焦点検出不能と判定する。
次に、図7のステップ140における像ズレ量からデフォーカス量への変換処理の詳細を説明する。焦点検出が可能であった場合は、算出された像ズレ量をデフォーカス量に変換する。図10に像ズレ量とデフォーカス量の関係を示す。図では、光軸91上にある点像被写体(黒地に白点)に対して、測距瞳92,93を通過して結像する光束62,63と撮像素子が配置された予定結像面P0の関係を示している。
図10(a−1)に示すように、光束62,63の結像位置P1が予定結像面P0より後方である場合は、予定結像面P0からの結像位置P1のデフォーカス量d(光線の進行方向を−とする)に応じて、予定結像面P0上には測距瞳92,93を通過する光束62,63によって一対の像52,53が形成される。図10(a−2)に示すように、測距瞳92を通過する光束62によって形成される像52は、測距瞳93を通過する光束63によって形成される像53から像ズレ量X(−方向)だけ変位している。
また、図10(b−1)に示すように、光束62,63の結像位置P2が予定結像面P0に一致している場合(合焦)には、予定結像面P0からの結像位置P1のデフォーカス量dは0でとなる。図10(b−2)に示すように、測距瞳92を通過する光束62によって形成される像52は、測距瞳93を通過する光束63によって形成される像53と一致し、像ズレ量Xが0になる。
さらに、図10(c−1)に示すように、光束62,63の結像位置P3が予定結像面P0より前方である場合は、予定結像面P0からの結像位置P3のデフォーカス量dに応じて、予定結像面P0上には測距瞳92,93を通過する光束62,63によって一対の像52,53が形成される。この場合は、図10(a−1)に示す場合と像の位置関係が逆転する。図10(c−2)に示すように、測距瞳92を通過する光束62によって形成される
像52は、測距瞳93を通過する光束63によって形成される像53から像ズレ量X(+方向)だけ変位している。
予定結像面P0から測距瞳92,93までの距離Z(測距瞳距離)は、瞳分割偏光部材110または絞り207の位置と絞り以降にある光学系の配置に基づいて演算により求めることができる。測距瞳92,93の重心間隔Hは、図8に示す重心間隔G1,G2を射出瞳面90の距離に換算することによって得られる。像ズレ量X、測距瞳重心間隔Hおよび測距瞳距離Zにより、結像位置の予定結像面に対するデフォーカス量dを次式により求めることができる。
d=X・Z/(X+H) ・・・(6)
また、一対のデータ系列がぴったり合致した場合(X=0)の場合は、実際にはデータ列が検出ピッチの半分だけずれた状態となるので、(2)式で求めたシフト量xはデータピッチの半分だけオフセットされて像ズレ量Xに換算され、(6)式に適用される。
《撮像素子の変形例》
図11は、一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出に適用可能な瞳分割偏光部材の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)と(c)は光入射方向から見た正面図である。図11(a)において、瞳分割偏光部材110は、光入射側に旋光素子150と、光出射側に直線偏光素子140とが配置される。図11(b)において、旋光素子150は、垂直方向に対して入射光の直線偏光の角度を+45度および−45度回転させる液晶素子152、153から成る。液晶素子152と153は、入射光束を垂直方向の分割線で略対称に水平方向に2分するように並置されている。液晶素子152と153には、捩れ角が+45度、−45度のツイステッドネマチック液晶を硬化したものが使用される。
図11(c)において、直線偏光素子140は、垂直方向に対して入射光の直線偏光の角度が+45度および−45度の直線偏光成分のみを通過させる直線偏光素子部142、143から成る。直線偏光素子部142から出射する光束は直線偏光方向が+45度となり、直線偏光素子部143から出射する光束は直線偏光方向が−45度となる。直線偏光素子部142、143から出射する光束は、旋光素子150に入射する前の直線偏光方向が垂直方向に揃っている。
図12は、一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出に適用可能な撮像素子の変形例の構成を示し、(a)が断面図、(b)が正面図である。なお、以下では図6を参照して説明する。16a、16bは入射光の直線偏光方向を−45度回転する旋光素子であり、17a、17bは入射光の直線偏光方向を+45度回転する旋光素子である。これらの旋光素子は、捩れ角が+45度、−45度のツイステッドネマチック液晶を硬化したものが使用される。また、18は旋光素子16a、16b、17a、17bと光電変換部12a、12b、13a、13bの間に配置された直線偏光素子である。
図12(a)において、1つの画素は光電変換部とその前に配置された偏光素子および旋光素子とから構成される。画素は半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。偏光素子18および旋光素子16a、16b、17a、17bも光電変換部12a、12b、13a、13b上に一体的に形成される。なお、図12では隣接する4画素を模式的に例示するが、他の画素も同様である。図12(b)に示すように、旋光素子16a、17a、16b、16bは測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束を交互に透過するように配置される。
光電変換部12a、旋光素子16aおよび偏光素子18の組み合わせ(光電変換部12b、旋光素子16bおよび偏光素子18の組み合わせ)によって、測距瞳92を出射する光束72は、旋光素子16aで直線偏光方向が垂直方向に戻され、偏光素子18を通過して光電変換部12aに受光される。測距瞳93を出射する光束は、旋光素子16aで直線偏光方向が水平方向に回転され、偏光素子18により通過を阻止されるので、光電変換部12aに受光されない。
光電変換部13a、旋光素子17aおよび偏光素子18の組み合わせ(光電変換部13b、旋光素子17bおよび偏光素子18の組み合わせ)によって、測距瞳93を出射する光束73は、旋光素子17aで直線偏光方向が垂直方向に戻され、偏光素子18を通過して光電変換部13aに受光される。測距瞳92を出射する光束は、旋光素子17aで直線偏光方向が水平方向に回転され、偏光素子18により通過を阻止されるので、光電変換部13aに受光されない。
図13は、一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出に適用可能な撮像素子の他の変形例の構成を示し、(a)が断面図、(b)が正面図である。なお、以下では図6を参照して説明する。20a、20bは入射光の直線偏光方向を−45度回転する旋光素子であり、21a、21bは入射光の直線偏光方向を+45度回転する旋光素子である。これらの旋光素子は、磁気光学効果(ファラデー効果)により直線偏光方向+45度、−45度回転する材料(磁性ガーネット膜)である。また、19は旋光素子の旋光効果を電気的に制御するための透明電極であり、透明電極19に所定の電圧を加えるとともに、不図示の外部磁場を印加することにより、磁性ガーネット膜の磁化方向を制御し、旋光効果の有無を制御することができる。18は旋光素子と光電変換部の間に配置された直線偏光素子である。
図13(a)において、1つの画素は光電変換部とその前に配置された偏光素子、旋光素子および透明電極とから構成される。画素は半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。偏光素子18、旋光素子20a、20b、21a、21bおよび透明電極19も光電変換部12a、12b、13a、13b上に一体的に形成される。なお、図13では隣接する4画素を模式的に例示するが、他の画素も同様である。
図13(b)に示すように、旋光素子20a、21a、20b、21bは、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束とを交互に透過するように配置される。光電変換部12a、旋光素子20aおよび偏光素子18の組み合わせ(光電変換部12b、旋光素子20bおよび偏光素子18の組み合わせ)によって、測距瞳92を出射する光束72は、旋光素子20aで直線偏光方向が垂直方向に戻され、偏光素子18を通過して光電変換部12aに受光される。測距瞳93を出射する光束は、旋光素子20aで直線偏光方向が水平方向に回転され、偏光素子18により通過を阻止されるので、光電変換部12aに受光されない。
光電変換部13a、旋光素子21aおよび偏光素子18の組み合わせ(光電変換部13b、旋光素子21bおよび偏光素子18の組み合わせ)によって、測距瞳93を出射する光束73は、旋光素子21aで直線偏光方向が垂直方向に戻され、偏光素子18を通過して光電変換部13aに受光される。測距瞳92を出射する光束は、旋光素子21aで直線偏光方向が水平方向に回転され、偏光素子18により通過を阻止されるので、光電変換部13aに受光されない。
透明電極19の制御により、焦点検出時は、旋光素子20a、20bにより入射光の直線偏光方向を−45度回転し、旋光素子21a、21bにより入射光の直線偏光方向を+45度回転する。撮影時は、旋光素子20a、20bにより入射光の直線偏光方向を−45度以外の方向に調整して回転し、また旋光素子21a、21bにより入射光の直線偏光方向を+45度以外の方向に調整して回転する。回転方向の調整により、偏光素子18を通過する光量が減少する。これにより、絞り開口の大きさや露光時間を制御することなく、撮影光量を制御することが可能になる。
図14は、円偏光を用いた一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示す。撮影光学系の光軸91に沿って撮影光学系に入射する光束100は、あらゆる方向に直線偏光した光の集まりである。入射光束100の内の所定の方向の偏光成分101(図では垂直方向)のみが、撮影光学系近傍に配置された瞳分割偏光部材110を通過する。瞳分割偏光部材110は垂直方向に偏波面を持つ直線偏光101を右円偏光と左円偏光に分割し、右円偏光成分は測距瞳92を通過し、左円偏光成分は測距瞳93を通過する。測距瞳92から出射する光束142は右円偏光しており、また測距瞳93から出射する光束143は左円偏光している。撮像素子211には、光束142の右円偏光を選択的に受光する画素212と、光束143の左円偏光を選択的に受光する画素213とが測距瞳92,93の並び方向に交互に配列されている。
図15は、図14に示す一実施の形態の円偏光型瞳分割位相差検出に適用可能な瞳分割偏光部材110の構成を示し、(a)は断面図、(b)、(c)および(d)は光入射方向から見た正面図である。図15(a)に示すように、瞳分割偏光部材110は、光入射側に直線偏光素子120と光出射側に円偏光素子160が配置される。図15(b)において、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。
図15(c)に示すように、円偏光素子160は垂直方向に対し、+45度および−45度傾いた光学軸を持つ1/4波長位相シフト素子(1/4波長板)162、163から成る。1/4波長板162と163は、入射光束を垂直方向の分割線で略対称に水平方向に2分するように並置されている。1/4波長板162と163は、可視光の波長範囲において1/4波長位相シフト効果を有する。また、図15(d)に示すように、円偏光素子162は入射する垂直方向の直線偏光を右回転の円偏光に変換し、円偏光素子162から出射する光束142は右円偏光となる。円偏光素子163は入射する垂直方向の直線偏光を左回転の円偏光に変換し、円偏光素子163から出射する光束143は左円偏光となる。
図16は、図14に示す一実施の形態の円偏光型瞳分割位相差検出に適用可能な撮像素子211の部分拡大図である。画素222と画素223は市松模様状に二次元状に配列される。水平方向に瞳分割され互いに反対回転方向に円偏光した光束により形成される2像は、焦点調節状態に応じて撮像素子211上で水平方向に相対的にずれる。一方の像の空間分布は、画素222の水平方向の配列(例えば222a、222b、222c、・・・)によって受光される。また、他方の像の空間分布は、画素223の水平方向の配列(例えば223a、223b、223c、・・・)によって受光される。
図17は、図14に示す一実施の形態の円偏光型瞳分割位相差検出に適用可能な撮像素子の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)は正面図である。なお、以下では図6を参照して説明する。22a、22bは入射光の右円偏光成分を透過し、左円偏光成分を反射する円偏光素子であり、23a、23bは入射光の左円偏光成分を透過し、右円偏光成分を反射する円偏光素子である。円偏光素子22a、22b、23a、23bは、螺旋構造の回転方向が右回転と左回転のコレステリック液晶である。なお、円偏光素子を1/4波長板とその出射光を直線偏光に変調する直線偏光素子から構成してもよい。
19は円偏光素子の円偏光効果を電気的に制御するために円偏光素子を挟んで配置される透明電極であり、透明電極19に所定の電圧を印加しない状態ではコレステリック液晶がプレーナ配向となるため、円偏光素子22a、22b、23a、23bが円偏光効果を有する。透明電極19に所定の電圧を印加すると、コレステリック液晶分子が揃ってホメオトロピック配向となって円偏光効果はなくなる。
図17(a)に示すように、1つの画素は光電変換部とその前に配置された円偏光素子および透明電極とから構成される。画素は半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。円偏光素子および透明電極も光電変換部上に一体的に形成される。なお、図17では隣接する4画素を模式的に例示する。また、図17(b)に示すように、円偏光素子22a、23a、22b、23bは、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束とを交互に透過するように配置される。
光電変換部12aと円偏光素子22aの組み合わせ(光電変換部12bと円偏光素子22bの組み合わせ)によって、測距瞳92を出射する光束(右円偏光)は、円偏光素子22aを通過して光電変換部12aに受光される。測距瞳93を出射する光束は、円偏光素子22aにより通過を阻止されるので光電変換部12aに受光されない。また、光電変換部13aと円偏光素子23aの組み合わせ(光電変換部13bと円偏光素子23bの組み合わせ)によって、測距瞳93を出射する光束(左円偏光)は、円偏光素子23aを通過して光電変換部13aに受光される。測距瞳92を出射する光束は、円偏光素子23aにより通過を阻止されるので光電変換部13aに受光されない。
焦点検出時は透明電極19に電圧を印加せず、円偏光素子22a、22b、23a、23bの円偏光効果を有効にする。撮影時は透明電極19に電圧を印加し、円偏光素子22a、22b、23a、23bの円偏光効果を無効にして撮影光量の低下を防止する。
図18は瞳分割偏光部材の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)、(c)および(c)は光入射方向から見た正面図である。ここでは瞳を上下左右方向に4分割した例を示す。図18(a)に示すように、瞳分割偏光部材110は、光入射側に直線偏光素子120と、光出射側に旋光素子170が配置されている。また、図18(b)に示すように、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。
図18(c)において、旋光素子170は、上下左右に4等分された部分(1/2波長板)172、173、174、175から構成される。垂直方向に対し、偏光素子部分172の光学軸は+22.5度、偏光素子部分173の光学軸は−22.5度、偏光素子部分174の光学軸は0度、偏光素子部分175の光学軸は+45度傾いている。偏光素子部分172と偏光素子部173が左右方向の瞳分割を行う対であり、偏光素子部分174と偏光素子部分175が上下方向の瞳分割を行う対である。
図18(d)において、旋光素子172から出射する光束372は直線偏光方向が+45度回転される。また、旋光素子173から出射する光束373は直線偏光方向が−45度回転される。光束372と373は互いに直線偏光方向が直交する。旋光素子174から出射する光束374は直線偏光方向が保存される。また、旋光素子175から出射する光束375は直線偏光方向が+90度回転される。光束374と375は互いに直線偏光方向が直交する。光束374および375は、光束372および373と直線偏向方向が45度をなす。
図19は、図18に示す瞳分割偏光部材110に適用可能な撮像素子211の部分拡大図(正面図)である。画素232は+45度の直線偏光成分を受光し、測距瞳372から出射する光束の全部と、測距瞳374,375を出射する光束の半分を受光する。また、画素233は−45度の直線偏光成分を受光し、測距瞳373から出射する光束の全部と、測距瞳374,375を出射する光束の半分を受光する。
画素234は垂直方向(0度)の直線偏光成分を受光し、測距瞳374から出射する光束の全部と、測距瞳372,373を出射する光束の半分を受光する。また、画素235は水平方向(+90度)の直線偏光成分を受光し、測距瞳375から出射する光束の全部と、測距瞳372,373を出射する光束の半分を受光する。画素232と画素233が交互に配列された画素行と、画素234と画素235が交互に配列された画素行とが交互に垂直方向に配列される。
水平方向の像ズレ検出に用いられる2像は、測距瞳372、374,375の領域を通過する光束と、測距瞳373、374,375の領域を通過する光束とによって形成される。一方の像の空間分布は、画素232の水平方向の配列によって受光される。他方の像の空間分布は、画素233の水平方向の配列によって受光される。像の検出ピッチは1画素おきとなる。一対の測距瞳の領域に共通部分(測距瞳374、375)を含むが、その重心位置は異なるので、偏光型瞳分割位相差検出が可能となる。
垂直方向の像ズレ検出に用いられる2像は、測距瞳374、372,373の領域を通過する光束と測距瞳375、372,373の領域を通過する光束によって形成される。一方の像の空間分布は、画素234の垂直方向の配列によって受光される。他方の像の空間分布は、画素235の水平方向の配列によって受光される。像の検出ピッチは3画素おきとなる。一対の測距瞳の領域に共通部分(測距瞳372、373)を含むが、その重心位置は異なるので、偏光型瞳分割位相差検出が可能となる。水平方向の像ズレ検出は1行おきに可能であり、垂直方向の像ズレ検出は各列で可能である。
図20は、図18に示す瞳分割偏光部材に適用可能な撮像素子211の部分拡大図(正面図)である。4種類の画素232〜235が232→234→233→235の順番に配列された画素行が、1画素ずつ横ズレしながら垂直方向に配列される。水平方向の像ズレ検出に用いられる2像は、測距瞳372、374,375の領域を通過する光束と、測距瞳373、374,375の領域を通過する光束とによって形成される。一方の像の空間分布は、画素232の水平方向の配列によって受光される。また、他方の像の空間分布は、画素233の水平方向の配列によって受光される。像の検出ピッチは3画素おきとなる。
垂直方向の像ズレ検出に用いられる2像は、測距瞳374、372,373の領域を通過する光束と、測距瞳375、372,373の領域を通過する光束とによって形成される。一方の像の空間分布は、画素234の垂直方向の配列によって受光される。また、他方の像の空間分布は、画素235の水平方向の配列によって受光される。像の検出ピッチは3画素おきとなる。水平方向の像ズレ検出は各行で可能であり、垂直方向の像ズレ検出は各列で可能である。
図21は瞳を斜め方向に4分割する瞳分割偏光部材の変形例を示し、(a)は断面図、(b)、(c)および(d)は光入射方向から見た正面図である。(a)図に示すように、瞳分割偏光部材110は光入射側に直線偏光素子120、光出射側に旋光素子180が配置される。また、(b)図に示すように、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。
図21(c)において、旋光素子180は、斜め左右に4等分された部分(1/2波長板)182、183、184、185から構成される。垂直方向に対し、偏光素子部分185の光学軸は+22.5度、偏光素子部分184の光学軸は−22.5度、偏光素子部分182の光学軸は0度、偏光素子部分183の光学軸は+45度傾いている。偏光素子部分182と偏光素子部分183が右上がり45度斜め方向の瞳分割を行う対であり、偏光素子部分184と偏光素子部分185が左上がり45度斜め方向の瞳分割を行う対である。
図21(d)において、旋光素子185から出射する光束385は直線偏光方向が+45度回転され、また、旋光素子184から出射する光束384は直線偏光方向が−45度回転される。光束384と385は互いに直線偏光方向が直交する。旋光素子182から出射する光束382は直線偏光方向が保存され、また、旋光素子183から出射する光束383は直線偏光方向が+90度回転される。光束382と383は互いに直線偏光方向が直交する。光束382および383は、光束384および385と直線偏向方向が45度をなす。
図22は、図21に示す瞳分割偏光部材に適用可能な撮像素子211の部分拡大図(正面図)である。画素265は+45度の直線偏光成分を受光し、測距瞳385から出射する光束の全部と、測距瞳382,383を出射する光束の半分を受光する。画素264は−45度の直線偏光成分を受光し、測距瞳384から出射する光束の全部と、測距瞳382,383を出射する光束の半分を受光する。画素262は垂直方向(0度)の直線偏光成分を受光し、測距瞳382から出射する光束の全部と、測距瞳384,385を出射する光束の半分を受光する。画素263は水平方向(+90度)の直線偏光成分を受光し、測距瞳383から出射する光束の全部と、測距瞳384,385を出射する光束の半分を受光する。
画素262、263,264,265からなるユニットが2次元に配列される。右上がり斜め45度方向の像ズレ検出に用いられる2像は、測距瞳382、384,385の領域を通過する光束と測距瞳383、384,385の領域を通過する光束によって形成される。一方の像の空間分布は、画素262の右上がり斜め45度方向の配列によって受光される。また、他方の像の空間分布は、画素233の右上がり斜め45度方向の配列によって受光される。
一対の測距瞳の領域に共通部分(測距瞳384、385)を含むが、その重心位置は異なるので偏光型瞳分割位相差検出が可能となる。左上がり斜め45度方向の像ズレ検出に用いられる2像は、測距瞳384、382,383の領域を通過する光束と測距瞳385、382,383の領域を通過する光束によって形成される。一方の像の空間分布は、画素264の左上がり斜め45度方向の配列によって受光される。また、他方の像の空間分布は、画素265の左上がり斜め45度方向の配列によって受光される。一対の測距瞳の領域に共通部分(測距瞳382、383)を含むが、その重心位置は異なるので偏光型瞳分割位相差検出が可能となる。
図23は瞳を水平方向に4分割した瞳分割偏光部材の他の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)、(c)および(d)は光入射方向から見た正面図である。(a)図に示すように、瞳分割偏光部材110は、光入射側に直線偏光素子120、光出射側に旋光素子190がそれぞれ配置される。また、(b)図に示すように、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。
図23(c)において、旋光素子190は、水平方向に4分割された部分(1/2波長板)192、193、194、195から構成される。垂直方向に対し、偏光素子部分192の光学軸は+22.5度、偏光素子部分193の光学軸は−22.5度、偏光素子部分194の光学軸は0度、偏光素子部分195の光学軸は+45度傾いている。偏光素子部分192と偏光素子部分193が水平方向の瞳分割(高精度な像ズレ検出:重心間隔が広い)を行う対であり、偏光素子部分194と偏光素子部分195が水平方向の瞳分割(大デフォーカス時の像ズレ検出:重心間隔が狭い)を行う対である。偏光素子部分192と偏光素子部分193の並び方向の幅より、偏光素子部分192と偏光素子部分193の並び方向の幅が狭いので、大デフォーカス時の像コントラスト低下は偏光素子部分192と偏光素子部分193を通過する光束によって形成される像のほうが小さくなる。
図23(d)において、旋光素子192から出射する光束392は直線偏光方向が+45度回転される。また、旋光素子193から出射する光束393は直線偏光方向が−45度回転される。光束392と393は互いに直線偏光方向が直交する。旋光素子194から出射する光束394は直線偏光方向が保存され、旋光素子195から出射する光束395は直線偏光方向が+90度回転される。光束394と395は互いに直線偏光方向が直交する。光束394および395は、光束392および393と直線偏向方向が45度をなす。図23に示す瞳分割偏光部材110に対応する撮像素子211には、図19、図20に示す撮像素子211が用いられる。
図24は、瞳を垂直方向および水平方向に4分割した瞳分割偏光部材の他の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)、(c)および(d)が光入射方向から見た正面図である。(a)図に示すように、瞳分割偏光部材110は、光入射側に直線偏光素子120が、光出射側に旋光素子300がそれぞれ配置される。また、(b)図に示すように、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。
図24(c)において、旋光素子300は、中心部が垂直方向に2分割され、周辺部が水平方向に2分割された部分(1/2波長板)302、303、304、305から構成される。垂直方向に対し、偏光素子部分302の光学軸は+22.5度、偏光素子部分303の光学軸は−22.5度、偏光素子部分304の光学軸は0度、偏光素子部分305の光学軸は+45度傾いている。偏光素子部分302と偏光素子部分303が水平方向の瞳分割を行う対であり、偏光素子部分304と偏光素子部分305が垂直方向の瞳分割を行う対である。
図24(d)において、旋光素子302から出射する光束312は直線偏光方向が+45度回転される。また、旋光素子303から出射する光束313は直線偏光方向が−45度回転される。光束312と313は互いに直線偏光方向が直交する。旋光素子304から出射する光束314は直線偏光方向が保存され、旋光素子305から出射する光束315は直線偏光方向が+90度回転される。光束314と315は互いに直線偏光方向が直交する。光束314および315は、光束312および313と直線偏向方向が45度をなす。図24に示す瞳分割偏光部材110に対応する撮像素子211には、図19、図20に示す撮像素子が用いられる。
図25は、図1に示す一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出に適用可能なカラー撮像素子の構成を示す。なお、以下では図6を参照して説明する。16は+45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳92を出射する直線偏光の光を透過する。また、17は−45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳93を出射する直線偏光の光を透過する。偏光素子16、17と光電変換部12a、13a、12b、13bの間には、図26に示す分光透過特性を持つカラーフィルタR,G,Bが配置される。
1つの画素は、光電変換部とその前に配置された偏光素子およびカラーフィルタとから構成される。画素は半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。偏光素子およびカラーフィルタも光電変換部上に一体的に形成される。なお、図25では隣接する4画素を模式的に例示するが、他の画素も同様である。
変更素子16,17は、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束とを交互に透過するように配置される。光電変換部12a、変更素子16、フィルタGの組み合わせによって、測距瞳92を出射する光束のうち、緑の波長成分が光電変換部12aに受光される。測距瞳93を出射する光束は偏光素子16により通過を阻止されるので、光電変換部12aに受光されない。また、光電変換部12b、旋光素子17、フィルタGの組み合わせによって、測距瞳93を出射する光束のうち、緑の波長成分が光電変換部12bに受光される。測距瞳92を出射する光束は偏光素子17により通過を阻止されるので、光電変換部13aに受光されない。
図27は、図25に示す撮像素子211の部分拡大図(正面図)である。カラーフィルタR、G、Bはベイヤー配列となっている。ベイヤー配列ユニット240は、緑画素241、244、青画素242および赤画素243からなり、+45度方向の直線偏光成分を通過する偏光素子が付けられている。ベイヤー配列ユニット250は、緑画素241、244、青画素242および赤画素243からなり、+45度方向の直線偏光成分を通過する偏光素子が付けられている。これらのベイヤー配列ユニット240、250が市松模様状に二次元状に配列される。
水平方向に瞳分割され互いに直交した方向に直線偏光した光束により形成される2像は、焦点調節状態に応じて撮像素子上で水平方向に相対的にずれる。一方の像の空間分布の緑色成分は、緑画素241、244の水平方向の配列(例えば241a、241b、・・・、244a、244b、・・・)によって受光される。また、他方の像の空間分布の緑色成分は、緑画素251、254の水平方向の配列(例えば251a、251b、・・・、254a、254b、・・・)によって受光される。
一方の像の空間分布の青色成分は、青画素242の水平方向の配列(例えば242a、242b、・・・)によって受光される。また、他方の像の空間分布の青色成分は、青画素252の水平方向の配列(例えば252a、252b、・・・)によって受光される。一方の像の空間分布の赤色成分は、赤画素243の水平方向の配列(例えば243a、243b、・・・)によって受光される。また、他方の像の空間分布の赤色成分は、赤画素253の水平方向の配列(例えば253a、253b、・・・)によって受光される。
図28は、図14に示す一実施の形態の瞳分割型位相差検出に適用可能な瞳分割偏光部材の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)は光入射方向から見た正面図である。(a)図に示すように、瞳分割偏光部材110は、円偏光素子320と、円偏光素子320の円偏光効果を電気的に制御するための円偏光素子320を挟んで配置される透明電極321とから構成される。(b)図に示すように、円偏光素子320は2つの部分322,323から成り、2つの部分322,323は入射光束を垂直方向の分割線で略対称に水平方向に2分するように並置されている。
円偏光素子部分322、323は、螺旋構造の回転方向が右回転と左回転のコレステリック液晶である。透明電極321に所定の電圧を印加しない状態では、コレステリック液晶がプレーナ配向となるために、円偏光素子は円偏光効果を有する。透明電極321に所定の電圧を印加すると、コレステリック液晶分子が揃ってホメオトロピック配向となり、円偏光効果はなくなる。
透明電極321に電圧を印加しない状態では、円偏光素子部分322は入射光の右円偏光成分を透過し、左円偏光成分を反射する。また、円偏光素子部分323は入射光の左円偏光成分を透過し、右円偏光成分を反射する。透明電極321を電圧を印加した状態では、円偏光素子部分322と円偏光素子部分323は、入射光に何の作用もせずにそのまま透過させる。
図29は、円偏光を利用し撮影時の光量確保するようにした一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示す。図28に示す瞳分割偏光部材110と、図17に示す撮像素子を用いた撮像装置では、撮像時に撮影光量を増加させることが可能となる。瞳分割偏光部材110を制御(円偏光効果を無効化)することによって、入射する光束100(あらゆる方向に直線偏光した光の集まり)は瞳分割偏光部材110をそのままの状態で通過し、光量の低下は発生しない。撮像素子211を制御(円偏光効果を無効化)することによって、画素212,213は画素に入射する光束を光量の低下を伴わずに受光することができる。
図30は、図29に示す一実施の形態を適用したジタルスチルカメラ(撮像装置)の動作を示すフローチャートである。この一実施の形態のカメラでは、撮像時に瞳分割偏光部材を制御して光量の低下を防止する。なお、図7に示す処理と同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。ステップ105において、ステップ110における撮像に先立ち、瞳分割偏光部材と撮像素子の円偏光効果を無効化する。ステップ125では、ステップ130の焦点検出に先立ち、瞳分割偏光部材と撮像素子の円偏光効果を有効化する。また、ステップ175では、ステップ180の撮像に先立ち、瞳分割偏光部材と撮像素子の円偏光効果を無効化する。
図31は、図1に示す一実施の形態の瞳分割型位相差検出に適用可能な瞳分割偏光部材の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)、(c)および(d)は光入射方向から見た正面図である。(a)図において、瞳分割偏光部材110は、光入射側に直線偏光素子120が、光出射側に旋光素子330がそれぞれ配置される。旋光素子330は周囲をコイル119に囲まれる。(b)図は、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。
図31(c)において、旋光素子330は2つの部分332,333から成り、2つの部分322,323は入射光束を垂直方向の分割線で略対称に水平方向に2分するように並置されている。旋光素子332,333は、磁気光学効果(ファラデー効果:コイル119に流す電流によって乗じる磁場の影響により偏光面が回転する)によって、直線偏光方向+45度、−45度回転する材料(磁性ガーネット膜)である。コイル119に流す電流を調整することによって、直線偏光方向+45度、−45度から変化させることが可能である。
図31(d)において、旋光素子332から出射する光束112は、直線偏光方向が+45度回転される。また、旋光素子333から出射する光束113は、直線偏光方向が−45度回転される。その結果、光束112と113は互いに直線偏光方向が直交する。
コイル119に流す電流を制御し、焦点検出時は、旋光素子332、333により入射光の直線偏光方向を+45度および−45度回転する。また、撮影時は、旋光素子332、333により入射光の直線偏光方向を+45度および−45度以外の方向に調整して回転する。回転方向の調整によって、撮像素子に設けられた偏光素子を通過する光量が減少する。これにより、絞り開口の大きさや露光時間を制御することなく、撮影光量を制御することが可能になる。
図32は、図1に示す一実施の形態の瞳分割型位相差検出に適用可能な瞳分割偏光部材の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)、(c)および(d)は光入射方向から見た正面図である。(a)図に示すように、瞳分割偏光部材110は、光入射側に直線偏光素子120が、光出射側に旋光素子340がそれぞれ配置される。
図33は旋光素子340の詳細な構成を示す。旋光素子340は、ガラス基板344上に形成された透明電極341に挟まれた捩れ角が所定角度のツイステッドネマチック液晶層340aからなる液晶素子340a、および同様の構造の液晶素子340b、340c・・を多層に重ねた構成となっている。各層のツイステットネマチック液晶層による旋光効果の有無を、各層に設けられた透明電極の電圧の印加の有無により制御できる。ツイステッドネマチック層の捻り角は微小角(例えば+11.25度、あるいは−11.25度)に設定されており、何層目までの液晶層をONにするかで、旋光素子を出射する光束の直線偏光方向が、入射光束の直線偏光方向に対して回転する角度を調整することが可能に
なる。
図32(b)に示すように、直線偏光素子120は入射する光束の垂直方向の直線偏光成分のみを通過させる。また、図32(c)に示すように、旋光素子340は2つの部分342,343から成り、2つの部分342,343は入射光束を垂直方向の分割線で略対称に水平方向に2分するように並置されている。さらに、図32(d)に示すように、焦点検出時には、透明電極の制御により旋光素子332から出射する光束112は直線偏光方向が+45度回転される。また、旋光素子333から出射する光束113は直線偏光方向が−45度回転される。光束112と113は互いに直線偏光方向が直交する。
撮影時は、旋光素子332、333により入射光の直線偏光方向を+45度および−45度以外の方向に調整して回転する。回転方向の調整により、撮像素子に設けられた偏光素子を通過する光量が減少する。これにより、絞り開口の大きさや露光時間を制御することなく、撮影光量を制御することが可能になる。
図34は、直線偏光を利用し撮影時の光量調整するようにした一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示す。図31および図32に示す瞳分割偏光部材110と、図6に示す撮像素子とを用いた撮像装置では、撮像時に撮影光量を調整することが可能となる。瞳分割偏光部材110を制御(直線偏光の旋光効果を無効化)することによって、入射する光束100(あらゆる方向に直線偏光した光の集まり)のうち、垂直方向に直線偏光した光束101のみが測距瞳92,93を通過し、通過の際に直線偏光の方向は回転されない。測距瞳92,93を通過した光束144(直線偏光方向が垂直)は、撮像素子211の画素212、213に受光される。画素212は+45度方向の直線偏光成分、画素213は−45度方向の直線偏光成分を受光するので、光束144のうち画素212、213に受光される。光量は半分になる。
図35は、図1に示す一実施の形態の瞳分割型位相差検出に適用可能な瞳分割偏光部材の変形例の構成を示し、(a)は断面図、(b)および(c)は光入射方向から見た正面図である。(a)図において、瞳分割偏光部材110は、光入射側に旋光素子330が、光出射側に直線偏光素子140がそれぞれ配置される。また、旋光素子330は周囲をコイル119に囲まれる。
図35(b)において、旋光素子330は2つの部分332,333から成り、2つの部分322,323は入射光束を垂直方向の分割線で略対称に水平方向に2分するように並置されている。旋光素子332,333は、磁気光学効果(ファラデー効果:コイル119に流す電流によって乗じる磁場の影響により偏光面が回転する)により、直線偏光方向+45度、−45度回転する材料(磁性ガーネット膜)である。コイル119に流す電流を調整することによって、直線偏光方向+45度、−45度から変化させることが可能である。
図35(c)において、直線偏光素子140は垂直方向に対し、入射光の直線偏光の角度が+45度および−45度の直線偏光成分のみを通過させる直線偏光素子部142、143から成る。直線偏光素子部142から出射する光束は、直線偏光方向が+45度となる。直線偏光素子部143から出射する光束は、直線偏光方向が−45度となる。コイル119に流す電流を制御し、旋光素子332、333により同一方向に直線偏光した入射光束が旋光素子332、333により偏光方向が回転され出射時の偏光方向が回転され、直線偏光方向を+45度および−45度となるように調整される。
図36は、直線偏光を利用し、焦点検出時と撮影時の入射光束の直線偏光方向を選択するようにした一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示す。図35に示す瞳分割偏光部材110と図6に示す撮像素子を用いた撮像装置では、焦点検出時と撮像時に入射光束の直線偏光方向を選択することができる。瞳分割偏光部材110を制御することによって、入射する光束100(あらゆる方向に直線偏光した光の集まり)のうち、特定の方向に直線偏光した光束101aのみが測距瞳92,93を通過する。測距瞳92,93を通過した光束102は、45度方向に直線偏光し、光束103は−45度方向に直線偏光しており、撮像素子211の画素212、213にそれぞれ受光される。
入射光束100のうちから特定の方向101aを調整することによって、反射光の偏光成分を除去したクリアな画像を得ることができる。
図37は、瞳分割偏光部材を反射タイプにした一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示す。撮影光学系の光軸91に沿って撮影光学系に入射する光束100は、あらゆる方向に直線偏光した光の集まりである。入射光束100のうちの所定の方向の偏光成分101(図では垂直方向)のみが撮影光学系近傍に配置された瞳分割偏光部材110により反射される。
瞳分割偏光部材110は、図15に示す瞳分割偏光部材を反射タイプに変更した構成となっており、測距瞳92、測距瞳93に相当する部分にコレステリック液晶が用いられている。測距瞳92は、入射する光束のうちの垂直方向の直線偏光成分を右円偏光して反射する。また、測距瞳93は、入射する光束のうちの垂直方向の直線偏光成分を左円偏光して反射する。測距瞳92から出射する光束142は右円偏光している。また、測距瞳93から出射する光束143は左円偏光している。撮像素子211には光束142の右円偏光を選択的に受光する画素212と、光束143の光を選択的に受光する画素213とが測距瞳92,93の並び方向に交互に配列されている。
図38は一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示し、(a)は断面図、(b)は正面図である。90は交換レンズの予定結像面に配置された撮像素子211の前方d4の距離にある交換レンズの射出瞳面、91は交換レンズの光軸、92、93は一対の測距瞳、512a、512b、513a、513bは光電変換部である。522a、522bは+45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳92を出射する直線偏光の光を透過する。また、523a、523bは−45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳93出射する直線偏光の光を透過する。72,82は測距瞳92を出射する光束であり、+45度方向に直線偏光されている。また、73,83は測距瞳93を出射する光束であり、−45度方向に直線偏光されている。530,531,532,533はマイクロレンズである。
1つの画素は、光電変換部とその前に配置された偏光素子とマイクロレンズとから構成される。画素は半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。偏光素子とマイクロレンズ光電変換部上に一体的に形成される。なお、図38では隣接する4画素を模式的に例示するが、他の画素についても同様である。
マイクロレンズ530、532により光電変換部512a、512bは射出瞳90上に測距瞳92を含む領域として投影される。また、マイクロレンズ531、533により光電変換部513a、513bは射出瞳90上に測距瞳93を含む領域として投影される。図38(b)において、偏光素子522a、523a、522b、523bは、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束とを交互に透過するように配置される。
図38(a)において、光電変換部512aには、測距瞳92を出射する光束72と測距瞳93を出射する光束が向かう。偏光素子522aは光束72を透過し、測距瞳93を出射する光束を阻止する。光電変換部512aは光束72がマイクロレンズ530上に形成
する像の強度に対応した信号を出力する。また、光電変換部512bには、測距瞳92を出射する光束82と測距瞳93を出射する光束が向かう。偏光素子522bは光束82を透過し、測距瞳93を出射する光束を阻止する。光電変換部512bは光束72がマイクロレンズ532上に形成する像の強度に対応した信号を出力する。
光電変換部513aには、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束73が向かう。偏光素子523aは光束73を透過し、測距瞳93を出射する光束を阻止する。光電変換部513aは光束73がマイクロレンズ531上に形成する像の強度に対応した信号を出力する。また、光電変換部513bには、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束83が向かう。偏光素子523bは光束83を透過し、測距瞳93を出射する光束を阻止する。光電変換部513bは光束83がマイクロレンズ533上に形成する像の強度に対応した信号を出力する。
以上のような構成では、マイクロレンズを用いるため入射光束を効率よく光電変換部に導くことによって光量をかせぐことができ、低輝度時の性能が向上する。
図39は、図38に示す一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出の変形例を示し、(a)は断面図、(b)は正面図である。612a、612b、612c、612dと、613a、613b、613c、613dはそれぞれ光電変換部である。622a、622b、622c、622bは+45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳92を出射する直線偏光の光を透過する。また、623a、623b、623c、623dは−45度の直線偏光成分を透過する偏光素子であり、測距瞳93を出射する直線偏光の光を透過する。72は測距瞳92を出射する光束であり、+45度方向に直線偏光されている。また、73は測距瞳93を出射する光束であり、−45度方向に直線偏光されている。630,631,632,633はマイクロレンズである。
1つの画素は、一対の光電変換部とその前に配置された一対の偏光素子とマイクロレンズとから構成される。画素は半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。偏光素子とマイクロレンズ光電変換部上に一体的に形成される。なお、図39では隣接する4画素を模式的に例示するが、他の画素についても同様である。
マイクロレンズ630、631,632,633によって、光電変換部612a、612b、612c、612dは射出瞳90上に測距瞳92を含む領域として投影される。また、マイクロレンズ630、631,632,633によって、光電変換部613a、613b、613c、613dは射出瞳90上に測距瞳93を含む領域として投影される。
図39(b)において、偏光素子622a、622b、622c、622b、623a、623b、623c、623bは、測距瞳92を出射する光束と測距瞳93を出射する光束を交互に透過するように配置される。
図39(a)において、マイクロレンズ632と一対の偏光素子622c、623cと一対の光電変換部612cからなる画素を例にして説明する。マイクロレンズ632には、測距瞳92を出射する光束72と測距瞳93を出射する光束73が通過する。偏光素子622cは光束72を透過し、測距瞳93を出射する光束73を阻止する。偏光素子623cは光束73を透過し、測距瞳93を出射する光束72を阻止する。光電変換部612cは、光束72がマイクロレンズ632上に形成する像の強度に対応した信号を出力する。また、光電変換部613cは、光束73がマイクロレンズ632上に形成する像の強度に対応した信号を出力する。
各画素の光電変換部の出力を測距瞳92および測距瞳93に対応した出力グループにまとめることによって、測距瞳92と測距瞳93をそれぞれ通過する焦点検出光束が画素列上に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。該情報に対して後述する像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことによって、いわゆる瞳分割位相差検出方式で一対の像の像ズレ量が検出される。
以上のような構成では、マイクロレンズを用いるため入射光束を効率よく光電変換部に導くことができ、光量をかせぐことができるので、低輝度時の性能が向上する。偏光を用いずにマイクロレンズの作用のみで瞳分割を行う方式と比較すると、マイクロレンズの収差や回折による瞳分割の不完全性(瞳の外形がぼけて、一対の瞳の一部が重なってしまう)の問題がない。
また撮像素子が焦点検出専用となっているために、この他に撮像専用の撮像素子を設けた場合には、2つの撮像素子間の位置調整誤差や環境変化による位置変動が焦点検出誤差になるという問題がある。しかし、上述した構成を採用することにより、このような問題を解消できる。
図40は変形例の撮像装置の構成を示す。図2に示す撮像装置では撮像素子211を画像データ生成用に用いているが、図40に示すように撮像専用の撮像素子212を設け、撮像素子211は焦点検出と電子ビューファインダー表示用に用いるようにしてもよい。図40において、カメラボディ203には撮影光束を分離するハーフミラー221が配置され、透過側に撮像専用の撮像素子212が配置され、反射側に焦点検出兼電子ビューファインダー表示用の撮像素子211が配置される。撮影前は撮像素子211の出力に応じて、焦点検出および電子ビューファインダー表示が行われる。レリーズ時は撮像専用の撮像素子212の出力に応じた画像データが生成される。ハーフミラー221を全反射ミラーとし、撮影時は撮影光路から退避するようにしてもよい。
このようにすれば、焦点検出兼電子ビューファインダー表示用の撮像素子211の画素サイズを大きくしても、その出力は焦点検出と解像度の要求が低い電子ビューファインダー表示に用いるだけなので、画像データの解像度が低下することがない。
なお、図25に示す撮像素子211では赤、青,緑の3原色のフィルタを使用しているが、2つの色のみの撮像素子や4色以上の色を検出するフィルタを備えた撮像素子にも適用可能である。図25に示す撮像素子211では、色分解フィルタに原色フィルタ(RGB)を用いた例を示したが、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)を採用してもよい。色分解は、色フィルタ以外にも光電変換部を構成するフォトダイオードの分光感度特性を光電変換部毎に変更することによっても達成することができる。また、図25に示す撮像素子211では、すべての色分解フィルタ上に偏光素子を設けた例を示したが、特定の色分解フィルタ(例えば緑色フィルタ)のみに偏光素子を設けるようにしてもよい。
図41は変形例の撮像装置の構成を示す。図2に示す撮像装置では撮像素子211の全画素が入射光を偏光状態に応じて選別して受光する構成となっているが、図41に示す撮像装置の構成において、撮像素子211は画像情報を得るための撮像画素と撮像光学系の焦点調節状態を検出するために用いられる焦点検出画素とからなる。
このような構成にすることにより以下のような効果がある。
撮像画素は入射光の偏光状態と無関係に全ての入射光を受光するので、受光光量が増加し、低輝度被写体の撮影に有利である。
撮像画素は入射光の偏光状態と無関係に全ての入射光を受光するので、撮影光学系への入射光が予め偏光しているような場合にも画像の乱れが少ない。例えば空や水面から来る光は特定の方向に偏光しているが、これらが画面の一部に入った場合においても、画像においてその部分が極端に暗くなったりすることがない。
撮像画素は入射光の偏光状態と無関係に全ての入射光を受光するので、複屈折を利用したローパスフィルタと撮像素子を組み合わせた場合にも問題が発生しない。
図41において瞳分割偏光部材110は撮影光学系の光路中の進退可能に配設されるとともに、瞳分割偏光部材110の進退はレンズ駆動制御装置206の制御のもとに行われる。
図42は撮像素子211上の焦点検出画素を備えた焦点検出領域の配置を示す図であって、撮像素子211の中央およびその左右に焦点検出領域701、702、703が水平方向に延在する。撮像画素211のその他の領域には撮像画素が配置されている。
図43は図41の撮像装置における偏光型瞳分割位相差検出の概要構成を示しており、撮像素子211以外の構成は図14の構成と同一である。撮像素子211の焦点検出領域701、702、703は、測距瞳92,93の並び方向に配列されている。
図44は焦点検出領域701、702、703のひとつの領域の近傍を拡大して画素単位で表示した図である。撮像画素800は図26に示す分光透過特性を持つカラーフィルタを備えた赤画素(R)、緑画素(G)、青画素(B)からなり、赤画素(R)、緑画素(G)、青画素(B)はベイヤー配列規則により2次元状に配列している。
焦点検出画素は測距瞳92を通過する右円偏光を選択的に受光する焦点検出画素802と、測距瞳93を通過する左円偏光を選択的に受光する焦点検出画素803とからなり、焦点検出画素802と焦点検出画素803は交互に隣接して配置されるとともに、複数の焦点検出画素が焦点検出領域の延在方向に直線状に配置される。焦点検出画素802、803には受光量を確保するためにカラーフィルタは配置されておらず、その分光特性は光電変換を行うフォトダイオードの分光感度、撮像素子の前面に配置される赤外カットフィルタ(不図示)の分光特性を総合した分光特性(図45)となり、図26で示した色フィルタの分光特性を加算したような分光特性となり、その感度の光波長領域は緑画素/赤画素/青画素の感度の光波長領域を包括している。
図46は図43に示す偏光型瞳分割位相差検出の概要構成において、光軸近傍の焦点検出画素の配列構成を拡大して測距瞳と焦点検出画素の関係を、光軸を通る水平面で切った断面で示した図である。90は交換レンズの予定結像面に配置された撮像素子211の前方d4の距離にある交換レンズの射出瞳面、91は交換レンズの光軸、92、93は一対の測距瞳、851〜854は焦点検出画素の光電変換部、861〜864は焦点検出画素のマイクロレンズである。
891〜894は円偏光子アレイであり、マイクロレンズ861〜864の前面にそれぞれのマイクロレンズに入射する光束を通過させるように位置調整されて配置される。円偏光子891、893は、射出瞳90の領域94を通り円偏光子891、893に入射する光束872、882のうち測距瞳92を通る右円偏光を通過し、測距瞳93を通る左円偏光を遮断する。円偏光子892、894は、射出瞳90の領域94を通り円偏光子892、894に入射する光束873、883のうち測距瞳92を通る右円偏光を遮断し、測距瞳93を通る左円偏光を通過する。
円偏光子891〜894は1/4波長板と直線偏光素子の重ね合わせにより形成される。直線偏光素子としては、微細周期構造体(ワイヤーグリッド型の偏光素子)や屈折率の異なる材料の周期多層膜構造(フォトニック結晶)等を採用することができる。1/4波長板としては、複屈折材料(水晶)や屈折率の異なる材料の周期多層膜構造(フォトニック結晶)等を採用することができる。
円偏光子891、マイクロレンズ861、光電変換部851からなる焦点検出画素および円偏光子893、マイクロレンズ863、光電変換部853からなる焦点検出画素は、測距瞳92を通過する光束のみを受光することになり、図44の焦点検出画素802に相当する。
円偏光子892、マイクロレンズ862、光電変換部852からなる焦点検出画素および円偏光子894、マイクロレンズ864、光電変換部854からなる焦点検出画素は、測距瞳93を通過する光束のみを受光することになり、図44の焦点検出画素803に相当する。
焦点検出画素のうち円偏光子を除いた光電変換部、マイクロレンズは半導体基板29上に半導体製造プロセスにより形成される。偏光子アレイは別途平板部材として製造され、光電変換部およびマイクロレンズに対して位置決めされて固定される。なお、図46では隣接する4つの焦点検出画素を模式的に例示するが、他の焦点検出画素についても同様である。
以上のような構成により焦点検出画素は測距瞳92、93により分割された光束が形成する一対の像の強度分布に対応した一対の信号を出力する。
図47は図43に示す偏光型瞳分割位相差検出の概要構成において、光軸近傍の撮像画素の配列構成を拡大して測距瞳と撮像画素の関係を、光軸を通る水平面で切った断面で示した図である。821〜824は撮像画素の光電変換部、831〜834は撮像画素のマイクロレンズである。
図46と異なる点は円偏光子アレイ891〜894の代わりに、透明部材アレイ841〜844が配置されている点である。透明部材アレイは偏光特性を備えておらず入射光を全て通過させるので、透明部材841、マイクロレンズ831、光電変換部821からなる撮像画素、透明部材842、マイクロレンズ832、光電変換部822、透明部材843、マイクロレンズ833、光電変換部823からなる撮像画素、透明部材844、マイクロレンズ834、光電変換部824からなる撮像画素は、測距瞳92と測距瞳93を合わせた領域94を通過する光束を全て受光することになる。
以上の図46、図47で説明した実施形態において、円偏光子アレイおよび透明部材は略同一厚で一体的な平板として製造され、撮像画素および焦点検出画素のマイクロレンズの前面に光軸方向の位置と光軸と直交する平面内での位置が調整された上で半導体基板(チップ)または半導体基板のパッケージに対して固定される。光軸方向の位置精度を向上させるために、マイクロレンズの頂点に密着させるようにしてもよい。
図48は、図41に示す一実施の形態を適用したデジタルスチルカメラ(撮像装置)の動作を示すフローチャートである。この一実施の形態のカメラでは、撮像時に瞳分割偏光部材を撮影光学系の光路から退避して光量の低下を防止する。なお、図7に示す処理と同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。ステップ106において、焦点検出に備え、レンズ駆動制御装置に指令を出して瞳分割偏光部材を撮影光学系の光路中に挿入する。
ステップ145では、レンズ駆動制御装置より得た撮影光学系の射出瞳サイズ情報および射出瞳距離情報に応じて像ズレ量をデフォーカス量に変換する。
例えば射出瞳半径をP、射出瞳距離をQとすると、半径Pの半円の重心位置は4・D/(3・π)となるから、一対の測距瞳の重心間隔H=8・D/(3・π)となる。従って射出瞳距離Qを測距瞳距離Zと略等しいとして(6)式に適用すれば、デフォーカス量dを求めることができる。
ステップ176では、撮像に備え、レンズ駆動制御装置に指令を出して瞳分割偏光部材を撮影光学系の光路中から退避する。
ステップ181では、レンズ駆動制御装置に対して絞り調整命令を送信し、交換レンズの絞り値を撮影F値(撮影者または自動により設定されたF値)にする。絞り制御が終了した時点で、撮像素子211に撮像動作を行わせ、撮像素子211の全画素からデータを読み出す。焦点検出画素位置のデータは焦点検出画素と同色の近傍の撮像画素のデータから補間する。
ステップ48では、撮像画素のデータおよび補間したデータをメモリーカードに格納する。
図49、図50は図46、図47に示した焦点検出画素および撮像画素の構造の変形例を示した断面図である。図46、図47に示した焦点検出画素および撮像画素においては、マイクロレンズ861〜864およびマイクロレンズ831〜834が半導体基板29上に形成される画素構造の最上部に形成されるため、表面部がレンズアレイ構造により平坦になっていなかったのに対し、図49、図50に示した焦点検出画素および撮像画素においては、マイクロレンズ861〜864およびマイクロレンズ831〜834が半導体基板29上においてインナーレンズとして形成されることによりレンズ表面部が平坦化されている点である。
平坦化されたマイクロレンズアレイ表面部には、平坦化層830が半導体プロセスにより形成され、さらにその上部に円偏光子アレイ891〜894および透明部材841〜844が半導体プロセスによりマイクロレンズアレイなどと一体化されて、半導体基板29に形成される。
このような構造においては、偏光子アレイおよび透明部材を別体として形成した後にマイクロレンズアレイ等を形成した半導体基板29と位置合わせして固定する場合に比較して、位置合わせ精度の向上が期待できるとともに、環境変化に応じた位置ズレの恐れがなくなり、位置合わせの手間も省けるといったメリットがある。
なおこのような構造にした場合には撮像画素の表面に設けた透明部材を省略することもできる。
また図46、図47に示した焦点検出画素および撮像画素においては、マイクロレンズ861〜864の前に円偏光子アレイ891〜894および透明部材841〜844が配置されているが、半導体プロセスで偏光素子アレイ、透明部材を形成する場合には、図38と同様に光電変換部とマイクロレンズの間に円偏光子アレイ891〜894および透明部材841〜844を配置することも可能である。
図46、図47および図49、図51の実施形態においては、一対の測距瞳92,93に入射する光束を異なる方向の円偏光に偏光するとともに、異なる方向に円偏光された一対の光束が形成する一対の像を、異なる方向に円偏光した光束のみを受光する一対の焦点検出画素配列で受光することにより瞳分割位相差検出を実現しているが、一対の測距瞳92,93に入射する光束を異なる方向の直線偏光に偏光するとともに、異なる方向に直線偏光された一対の光束が形成する一対の像を、異なる方向に直線偏光した光束のみを受光する一対の焦点検出画素配列で受光することにより瞳分割位相差検出を実現してもよい。
図48のデジタルスチルカメラ(撮像装置)の動作を示すフローチャートにおいては、撮像時に瞳分割偏光部材を撮影光学系の光路から退避して光量の低下を防止しているが、被写界輝度が高い場合は撮像時に瞳分割偏光部材を撮影光学系の光路に挿入したままにしてもよいし、瞳分割偏光部材を撮影光学系の光路に進退する機構を省略するために、常に撮像時に瞳分割偏光部材を撮影光学系の光路に挿入したままにしてもよい。
図44に示す拡大図においては、焦点検出画素802、803は色フィルタを備えていないが、図51に示すように焦点検出画素が撮像画素800と同一のベイヤー配列規則に従った色フィルタを備えるようにすることもできる。
このようにすれば、撮像時に焦点検出画素位置の画素信号を補間する際に、焦点検出画素の信号も補間演算に使用することができる。
図51において、青フィルタと右円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素902、緑フィルタと右円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素912、青フィルタと左円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素903、緑フィルタと左円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素913がこの順番に並んだユニットが複数隣接して配置された配列から焦点検出画素列は形成される。
像ズレ検出においては同色で円偏光の方向が異なる焦点検出画素の出力同士(焦点検出画素902と903の信号および焦点検出画素912と913の信号)で行われる。
図52は図51の焦点検出画素902、903を通常の撮像画素(青画素)に置換したものである。このような焦点検出画素配置にすれば、撮影時に図51の焦点検出画素902、903の画素補間を行う必要がなくなるために、画像品質が向上する。
図48のステップ110においては、電子ビューファインダーに表示させるために、撮像素子の全画素の信号を読み出しているが、表示のための画素数は撮像時の画素数より少なくても構わないので、電子ビューファインダー表示時には撮像素子から画素加算により画素数を少なくして画素データを読み出すようにしてもよい。
しかしながら加算処理を行うことにより、焦点検出画素の信号と撮像画素の出力が混合したり、一対の焦点検出画素の信号が混合してしまうので、画素の加算パターンと撮像画素および一対の焦点検出画素の配置パターンを一致させておく必要がある。
図52は図41の撮像装置に用いられる撮像素子211の焦点検出領域近傍の拡大図であって、赤画素(R)、緑画素(G)、青画素(B)はベイヤー配列規則により2次元状に配列している。
また青フィルタと右円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素902、緑フィルタと右円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素912、青フィルタと左円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素903、緑フィルタと左円偏光のみを通過する円偏光子を備えた焦点検出画素913もベイヤー配列規則により配置されている。
画素加算は水平方向の同色隣接2画素および垂直方向の同色隣接2画素の計4画素の信号を加算することにより行われる。また撮像画素と焦点検出画素の信号が混合しないように、画素加算時の読み出し位置の調整が行われる。例えば図53において、水平方向の読み出し位置の調整は、2行目1列目の青画素を加算される4つの青画素の左上の画素として加算し、次に2行目2列目の緑画素を加算される4つの緑画素の左上の画素として加算し、次に2行目4列目の素画素を加算される4つの青画素の左上の画素として加算し、次に2行目5列目の緑画素を加算される4つの緑画素の左上の画素として加算するというように行われる。
水平方向の読み出し位置の調整は、2行目1列目の青画素を加算される4つの青画素の左上の画素として加算し、次に3行目1列目の緑画素を加算される4つの緑画素の左上の画素として加算し、次に6行目1列目の素画素を加算される4つの青画素の左上の画素として加算し、次に7行目1列目の緑画素を加算される4つの緑画素の左上の画素として加算するというように行われる。
焦点検出画素902、903、912、913は上記のような加算読み出しにおいて、加算時に同一種類の焦点検出画素のみが加算されるように配置されている。
電子ビューファインダー表示時に撮像素子から画素加算により読み出された焦点検出画素信号は、像ズレ検出演算においては同色で円偏光の方向が異なる焦点検出画素の加算出力同士(焦点検出画素902と903の加算信号および焦点検出画素912と913の加算信号)で行われる。
図53においては焦点検出画素が色フィルタが備えているが、図44のように色フィルタを備えないようにしてもよい。
以上図41〜図53に示した実施形態は図1〜図40に示した実施形態にあわせて変更を加えて適用することが可能である。
なお、上述した撮像素子は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサとして形成することができる。
上述した従来の撮像装置において、絞り位置を検出し、像ズレ量と絞り位置情報に基づいて撮影光学系のデフォーカス量を検出することによって、焦点検出精度を向上させることができる。
《発明の適用範囲》
撮像装置は、カメラボディに交換レンズが装着されたデジタルスチルカメラやフィルムスチルカメラに限定されない。レンズ一体型のデジタルスチルカメラやビデオカメラやフィルムカメラにも適用することができる。また、携帯電話などに内蔵される小型カメラモジュールや監視カメラなどにも適用することができる。カメラ以外の焦点検出装置や測距装置やステレオ測距装置にも適用することができる。
以上説明したように、一実施の形態によれば次のような効果が得られる。
まず、従来の撮像装置では、瞳分割して直線偏光する際に、瞳に入射する光束において異なる直線偏光の光束について瞳分割を行っている。被写界の物体により反射、屈折、透過、散乱等の光学的作用を受けた光は、直線偏光の方向が一様でなく偏っている場合がある。直線偏光の方向が一様でない光束を瞳分割して得られた二つの像の間の合致性は本来的に低下しているので、焦点検出精度が悪化してしまう。
これに対し上述した一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出方式の撮像装置では、被写界の物体による反射、屈折、透過、散乱などの光学的作用の影響を受けずに焦点検出ができ、高精度な焦点検出が可能になる。
次に、従来の撮像装置では、直線偏光方向に応じて二つの光束を分光特性、光量および偏光特性を含め正確に分離可能な偏光ハーフミラーまたはハーフミラーを製作するのは困難であり、二つの光束の分離の不完全性によって二つの像の合致性が低下し、焦点検出精度が低下していた。また、偏光ハーフミラーあるいはハーフミラーで分離して二つの像を撮像するので大きなスペースを必要とし、各像を撮像するために個別の撮像素子を必要としていた。さらに、焦点検出のために瞳分割に直線偏光を用いる場合、そのままの状態で撮影を行うと撮影光量が低下してしまう。撮影時に偏光素子と偏光ハーフミラー、ハーフミラーを撮影光路外に退避する場合には、退避用のスペースと退避のためのタイムラグと退避機構が必要となっていた。
これに対し上述した一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出方式の撮像装置では、像の合致性が高く、高精度な焦点検出ができる。また、ハーフミラーなどの光分離部材が不要なためスペースを節約できるとともに、単一の撮像素子のみで焦点検出ができる。さらに、撮影時に特別な機構やスペースを必要とせずに、瞬時に通常の露光量での撮影ができる。
従来の偏光型瞳分割位相差検出方式では、瞳を二分して一方向の像ズレを検出する例が開示されているのみであって、異なる方向で同時に像ズレを検出するにはどのようにシステムを構築すべきかに関してはなんの示唆もなかった。また、従来の偏光型瞳分割位相差検出方式では、像ズレ量(光軸に対して垂直な面内でのズレ量)のデフォーカス量(光軸方向のズレ量)への変換については記載がない。さらに、従来の偏光型瞳分割位相差検出方式においては、分割される瞳と予定焦点面の間の距離がレンズ交換およびフォーカシングおよびズーミングによって変化するので、像ズレ量からデフォーカス量への変換関係は単純な線形変換とはならない。さらにまた、従来の偏光型瞳分割位相差検出方式においては、焦点調節状態によらず同じ偏光型瞳分割位相差検出方式で焦点検出を行っているので、デフォーカス量が大きい状況で焦点検出不能に陥る場合がある。なお、合焦近傍の精度を重視した焦点検出モードと、デフォーカス量が大きい状況で焦点検出不能に陥らない焦点検出モードとを切り替えることについての記載はない。
これに対し上述した一実施の形態の偏光型瞳分割位相差検出方式の撮像装置では、異なる方向において同時あるいは切換えて像ズレ検出ができる。また、レンズ交換あるいはフォーカシングおよびスーミングにより分割される瞳の位置が変化した場合でも、正確なデフォーカス量を算出できる。さらに、大デフォーカス時においても確実に焦点検出ができる。
図41〜図53に説明した実施形態においては、上記メリットに加えて、撮像時の画像品質が向上するというメリットがある。
以上説明した実施の形態あるいは変形例の特徴は以下のように纏めることができる。
(1)撮像装置は、撮影光学系の射出瞳を通過する被写体からの光を、重心と偏光特性が異なる対の光束に分割する瞳分割偏光光学部材(瞳分割偏光光学系)と、上記各光束を総合的に受光する第1画素と、上記各光束を選択的に受光する第2画素とが二次元状に配置された撮像素子とを備えるように構成することができる。
(2)(1)に記載の撮像装置において、上記第1画素の出力に基づいて画像情報を生成するとともに、上記第2画素の出力に基づいて上記撮像光学系の焦点調節状態に応じた焦点情報を生成するように構成することができる。
(3)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記瞳分割偏光光学系は上記撮影光学系の絞り開口近傍に配置され、この絞り開口を通過する被写体光を分割するように構成することができる。
(4)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記瞳分割偏光光学系は、上記対の光束のそれぞれを偏光方向が略直交する直線偏光に分割するように構成することができる。
(5)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記瞳分割偏光光学系は、右円偏光と左円偏光の対に分割するように構成することができる。
(6)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記瞳分割偏光光学系は、上記撮影光学系の射出瞳を通過する被写体からの光を、重心と偏光特性が異なる複数対の光束に分割するように構成することができる。
(7)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記第2画素の内の、上記瞳分割偏光光学系により分割された対の光束の重心を結ぶ方向に延在し、上記対の光束の内の一方を受光する複数の第3画素の出力で表される信号波形と、上記対の光束の内の他方を受光する複数の第4画素の出力で表される信号波形とのズレ量を演算し、このズレ量に基づいて上記撮影光学系のデフォーカス量を検出する焦点検出演算回路を備えるように構成することができる。
(8)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記瞳分割偏光光学系は撮影光学系の光路中に進退可能に配設されるように構成することができる。
(9)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記第2画素の内の、上記対の光束の一方を受光する第3画素と、上記対の光束の他方を受光する第4画素とが交互に直線状に配置されるように構成することができる。
(10)(9)に記載の撮像装置において、上記第3画素は上記対の光束の内の所定の方向に直線偏光した第1光束を受光し、上記第4画素は上記対の光束の内の上記第1光束とは異なる方向に直線偏光した第2光束を受光するように構成することができる。
(11)(10)に記載の撮像装置において、上記第3画素および上記第4画素には、光電変換部が受光する光束の直線偏光方向を規制する直線偏光素子が一体的に備えられるように構成することができる。
(12)(11)に記載の撮像装置において、上記第3画素の直線偏光素子は、上記瞳分割偏光光学系により分割された対の光束の内の第1光束を上記第3画素の光電変換部が受光するように直線偏光方向を規制し、上記第4画素の直線偏光素子は、上記瞳分割偏光光学系により分割された対の光束の内の第2光束を上記第4画素の光電変換部が受光するように直線偏光方向を規制するように構成することができる。
(13)(9)に記載の撮像装置において、上記第3画素は上記対の光束の内の右円偏光した第1光束を受光し、上記第4画素は上記対の光束の内の左円偏光した第2光束を受光するように構成することができる。
(14)(13)に記載の撮像装置において、上記第3画素および上記第4画素には、光電変換部が受光する光束の円偏光方向を規制する偏光素子が一体的に備えられるように構成することができる。
(15)(14)に記載の撮像装置において、上記偏光素子は、1/4波長板とその出射光を直線偏光に変調する直線偏光素子から構成されるように構成することができる。
(16)(14)に記載の撮像装置において、上記偏光素子は、右旋性のコレステリック液晶素子と左旋性のコレステリック液晶素子とから構成されるように構成することができる。
(17)(16)に記載の撮像装置において、上記コレステリック液晶素子の円偏光変調特性を制御する制御部を備えるように構成することができる。
(18)(11)または(14)に記載の撮像装置において、上記偏光素子は周期構造体からなるように構成することができる。
(19)(18)に記載の撮像装置において、上記偏光素子は屈折率の異なる材料の多層膜周期構造体からなるように構成することができる。
(20)(19)に記載の撮像装置において、上記偏光素子は第2画素の平坦部上に一体的に形成されるように構成することができる。
(21)(20)に記載の撮像装置において、上記第2画素のインナーレンズ構造を有するように構成することができる。
(22)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記撮像素子の各画素には、光電変換部が受光する光束の偏光特性を電気的に制御する第2偏光制御部が一体的に備えられるように構成することができる。
(23)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記2次元状に配置された第1画素には所定の色フィルタ配列規則に基づいた色フィルタが配設されるとともに、上記第2画素には色フィルタが配設されないように構成することができる。
(24)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記2次元状に配置された第1画素および第2画素には所定の色フィルタ配列規則に基づいた色フィルタが配設されるように構成することができる。
(25)(24)に記載の撮像装置において、上記第2画素の内、同色の色フィルタを備えた画素群に対して、上記対の光束の一方を受光する第3画素と、上記対の光束の他方を受光する第4画素とが交互に直線状に配置されるように構成することができる。
(26)(1)または(2)に記載の撮像装置において、像素子は2次元状において順次近接する複数の画素を選択し、選択された画素の出力を加算して出力する加算回路とを備え、記第2画素は、上記対の光束の一方を受光する第3画素と、上記対の光束の他方を受光する第4画素とに分類されるとともに、上記加算回路の1回の加算動作において第1画素の出力のみ、または第3画素の出力のみ、または第3画素の出力のみが加算回路により加算されるように、第1画素および第3画素および第3画素の配置パターンと加算回路による画素の選択パターンとを一致させたように構成することができる。
(27)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記第1画素および第2画素は、光電変換部を上記撮影光学系の絞り開口近傍に投影するマイクロレンズを備えるように構成することができる。
(28)(1)または(2)に記載の撮像装置において、上記第2画素の出力に基づいて像ズレ量を演算し、上記像ズレ量と上記撮影光学系の射出瞳距離および射出瞳サイズに基づいて上記撮影光学系のデフォーカス量を検出する焦点検出手段を備えるように構成することができる。
12a、12b、13a、13b、512a、512b、513a、513b、612a、612b、612c、612d、613a、613b、613c、613d:光電変換部
14a、14b、15a、15b、16、17、120、140、522a、522b、523a、523b、622a、622b、622c、622d、623a、623b、623c、623d:偏光素子
16a、16b、17a、17b,20a、20b、21a、21b、22a、22b、23a、23b:旋光素子
19、321:透明電極
88,89:絞り開口
110:瞳分割偏光部材
115,116,117,118:重心
119:コイル
130,150,170,180,190,300,330,340:旋光素子
160:円偏光素子
211、212:撮像素子
212,213:画素
530〜533、630〜633:マイクロレンズ