JP5320726B2 - コラーゲン繊維束の製造方法 - Google Patents

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本発明は、コラーゲン繊維束の製造方法、当該製造方法により製造された繊維束、及び、繊維束を有する組織再生器具に関する。
事故や災害あるいは疾患によりヒトの神経及び腱などの組織が損傷し、自己の回復力により治癒できない場合、患者は知覚、感覚及び運動能力などに障害が発生する。このような患者に対して、当該損傷部を切除した後、患者の人体における他の部位から組織を採取し、切除部分に移植する治療が行われる場合がある。このような手術を自己移植というが、自己移植は損傷を受けていない他の健常な組織を採取するので、その部位には知覚、感覚及び運動能力などの障害を発生する場合がある。
そこで、切除部位に細胞増殖の足場を備えた器具を埋植し、組織端から細胞を足場に沿って成長させることにより、組織を再生させ、その機能を回復させる治療法について種々の研究がなされている。世にいう再生医療の一環としての研究であり、係る器具はスキャフォールドと呼ばれるものである。係る器具の主な構成としては、外部からの他の細胞の侵入を防止する筒状体と、神経細胞等を長手方向に成長するように誘導するための繊維束を備えている。例えば、上記特許文献1では、誘導手段としてコラーゲン糸を略並行に複数配列させた繊維束を採用している。これは、神経細胞を特定方向に成長させるために方向性を有する部材が必要となるからである。
しかしながら、当該繊維束を取り扱う上でいくつか技術的課題が生じる。例えば、特許文献1における繊維束を構成する単糸同士は互いに接着していない。このため、繊維束の端部において糸が分岐しており、チューブの内腔に繊維束を挿入する際に、この分岐した部分が物理的に障害となる。つまり、再現よくチューブに繊維束を挿入することができないため、組織再生器具の製造が困難となる。また、うまく挿入できるように繊維束を構成する糸の数を減らすことが考えられるが、今度はチューブの内壁と繊維束との適度な摩擦が生じないため、チューブの内腔から繊維束又は当該繊維束を構成する単糸が抜け落ちるという問題が生じる。
このため、繊維束を構成する糸同士は互いに接着させる必要がある。繊維束を構成する糸同士を互いに接着させる方法としては、主に高分子を含有する水溶液(以下、バインダー溶液という)を含浸後、乾燥させる方法が公知である。当該方法は、いわゆるバインダー処理と称するものである。コラーゲン繊維束を製造するにあたってのバインダー処理は、平行に配列した複数本のコラーゲン糸を何らかの治具で固定した後、バインダー溶液を含浸させる作業を行うのが通常である。
しかしながら、係る作業は、例えば、平行に配列した複数本のコラーゲン糸内にシリンジを用いてバインダー溶液を注入したり、刷毛等を用いて平行に配列した複数本のコラーゲン糸の周囲にバインダー溶液塗布するなどの手作業により行うため、製造コストが高いという問題がある。また、量産化が困難という問題もある。
また、浴槽にバインダー溶液を入れ、当該バインダー溶液に平行に配列した複数本のコラーゲン糸を浸漬させる方法も考えられるが、当該方法においてはバインダー溶液を多量に要するため、製造コストが高いという問題は解決されない。さらに、平行に配列した複数本のコラーゲン糸を固定した治具ごとバインダー溶液に浸漬するため、当然のごとく治具にもバインダー溶液が付着する。これにより、治具を取り外しにくいという問題も生じる。加えて、このような治具を繰り返し使用するためには洗浄する必要がある。
国際公開公報1998/022155号パンフレット
本発明の課題は、従来と比較して製造効率のよいコラーゲン繊維束の製造方法を提供することである。
本発明は、
[1] コラーゲン繊維束の製造方法であって、
(i) 水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理を施して製造されたコラーゲン糸を用意する工程
(ii) 前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程
(iii) 水、無機塩水溶液又は中和水溶液に浸漬する工程
(iv) 乾燥する工程
を含むことを特徴とするコラーゲン繊維束の製造方法、
[2] 前記コラーゲン糸が、湿式紡糸法により得られた単糸である[1]に記載のコラーゲン繊維束の製造方法、
[3] 前記架橋処理が熱脱水架橋である[1]に記載のコラーゲン繊維束の製造方法、
[4] 前記水可溶化コラーゲンが、酸可溶化コラーゲン又はアルカリ可溶化コラーゲンである[1]に記載のコラーゲン繊維束の製造方法、
[5] (ii) 前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程が、方形のフレームにコラーゲン糸を複数回巻き取ることを特徴とする[1]に記載のコラーゲン繊維束の製造方法、
[6] コラーゲン糸を複数回巻き取る箇所を複数設けることを特徴とする[5]に記載の繊維束の製造方法、
[7] 方形のフレームにおける一定幅の領域内にコラーゲン糸を複数回巻き取ることを特徴とする[5]に記載のコラーゲン繊維束の製造方法、
[8] コラーゲン糸を含む繊維束であって、
(i) 水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理を施して製造されたコラーゲン糸を用意する工程
(ii) 前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程
(iii) 水、無機塩水溶液又は中和水溶液に浸漬する工程
(iv) 乾燥する工程
を含む製造方法により得られたコラーゲン繊維束、
及び、[9] [8]に記載のコラーゲン繊維束を備える組織再生器具に関する。
本発明のコラーゲン繊維束の製造方法は、コラーゲン繊維束における複数のコラーゲン単糸の固定に水、無機塩水溶液又は中和水溶液のいずれかを用いるので、従来と比較して製造の時間効率がよく、製造コストも安価となる。
本発明のコラーゲン繊維束の製造方法は、
(i) 水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理を施して製造されたコラーゲン糸を用意する工程
(ii) 前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程
(iii) 水、無機塩水溶液又は中和水溶液に浸漬する工程
(iv) 乾燥する工程
を含むことを特徴とする。
ここで「コラーゲン繊維束」とは、コラーゲン糸が複数本略平行に配列したものであって、当該複数のコラーゲン糸は固定されているものをいう。略平行とは、厳密的に平行でなくてもよく、それぞれのコラーゲン糸同士がなす角度は長手方向に対して約45度以下、好ましくは約30度以下であり、特に好ましくは約15度以下であり、最も好ましくは約5度以下である。本発明のコラーゲン繊維束においては、コラーゲン単糸の一部が溶解して隣接するコラーゲン糸と接着した状態で、乾燥、好ましくはさらに架橋処理を施すことにより、当該複数のコラーゲン糸は固定されるのである。
コラーゲン繊維束の外観の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、四角柱、三角柱及び円柱などの形状が挙げられる。
また、コラーゲン繊維束を構成するコラーゲン糸の本数は、コラーゲン糸の外径及び当該コラーゲン繊維束の用途に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。コラーゲン繊維束の用途に関しての詳細は後述するが、主に組織再生器具の部品としての用途が挙げられる。例えば、本発明のコラーゲン繊維束が末梢神経を再生するための、筒状体を基本構造とする組織再生器具の部品としての用途に用いる場合であって、コラーゲン繊維束を構成するコラーゲン糸の外径が約10〜100μmである場合、内径1.0mmの筒状体に対して、コラーゲン糸の本数は約10〜1000本である。
上記「コラーゲン」とは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分をいい、分子の主鎖構造が、主に(Gly−X−Y)、(Gly−Pro−X)及び(Gly−Pro−Hyp)で構成されるものをいう。ここで、X及びYは、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリン以外の天然及び非天然アミノ酸である。
また、コラーゲンのタイプについては、I型、II型及びIII型などが挙げられる。中でも取り扱いが容易である観点から、I型及びIII型が好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明におけるコラーゲンは、熱変性コラーゲンであるゼラチンを含むが、細胞接着性の観点からコラーゲンであることが好ましい。
コラーゲンは、生体組織からの抽出、化学的ポリペプチド合成及び組み替えDNA法などにより製造される。本発明出願当時では、製造コストが安価である観点から、生体組織からの抽出により得られたものが好ましい。また、生体組織の由来は、例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、鳥類、魚類及びヒトなどが挙げられる。また、前記生体組織としては、これらの皮膚、腱、骨、軟骨及び臓器などが挙げられる。これらの選択は当業者が適宜行うことができるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
さらに、コラーゲンは、工業的な製造を容易とする観点から、水に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンを選択する。例えば、そのようなコラーゲンとしては、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン及び中性可溶化コラーゲンなどが挙げられる。特に使用できる溶媒の種類が多い観点から、酸可溶化コラーゲンが好ましい。さらに、生体内埋殖時の安全性が高い観点から、抗原決定基であるテロペプチドの除去処理が施されているアテロコラーゲンであることが好ましい。
以下、本発明のコラーゲン繊維束について、各工程毎に説明する。
(i) 水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理を施して製造されたコラーゲン糸を用意する工程
本工程では、コラーゲン糸を用意する。ここで、コラーゲン糸とは、コラーゲンを原材料とした糸であって、単糸(いわゆるモノフィラメント)及び複数の糸状物を縒ることにより形成した縒糸(いわゆるマルチフィラメント)を含む。係るコラーゲン糸は、水可溶化コラーゲンを原材料し、架橋処理を施したものである。このようなコラーゲン糸は、架橋処理により水難溶化しているものの、水可溶化コラーゲンを原材料とする以上、水溶液中においては、若干量は水に溶解する性質を有する。そして、当該水溶液から引きあげられたコラーゲン糸は、水分が乾燥するまでは、主にコラーゲンと相溶性の高い材料(コラーゲン自体も含む)で構成された物と容易に接着することができる。
また、本工程は、市販のものを購入することによっても理論上実施可能であるが、現在、市販されているコラーゲン糸は存在しない。但し、コラーゲン単糸の製造技術はいくつか存在する。
コラーゲン単糸は、主に紡糸により製造することができる。紡糸としては、例えば、溶融紡糸、乾式紡糸及び湿式紡糸などが挙げられる。特に、原材料がコラーゲンであることを考慮すると、製造が容易であり、かつ製造コストが安価である観点から、湿式紡糸が好ましい。
湿式紡糸法は、例えば、コラーゲンの水溶液を、ギアポンプ、ディスペンサー及び各種押し出し装置などを用いて、凝固浴槽に吐出する。脈動が少なく安定して溶液を定量吐出する観点から、ディスペンサーが好ましい。また、吐出するノズルの口径は、製造される単糸の強度が十分となる観点から、約10〜200μm、好ましくは約50〜150μmである。さらに水溶液の濃度は、単糸の強度の観点から、約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%である。
湿式紡糸で用いる凝固浴の液体としては、コラーゲンを凝固させる溶媒、懸濁液、乳濁液及び溶液であれば特に限定されるものではない。例えば、そのような液体としては、無機塩類水溶液、無機塩類含有有機溶媒、アルコール類及びケトン類などが挙げられる。無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムなどの水溶液が挙げられる。また、これらの無機塩類をアルコール類又はアセトン類に溶解若しくは分散させた液を用いてもよい。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール及びエチレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としてはアセトン及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、紡糸した糸の強度が高い観点から、エタノール、塩化ナトリウムのエタノール溶液及び塩化ナトリウムのエタノール分散溶液を用いることが好ましい。
凝固浴槽に吐出されたコラーゲンの単糸は、凝固浴槽から引き上げたのち、乾燥工程を経て、ボビンに巻きつけることにより成形される。ここで、乾燥工程はコラーゲンが熱変性せず、単糸の周囲に付着した凝固浴槽の液滴を除去し、かつ単糸が破断しない程度の条件で乾燥させる。その乾燥条件としては、例えば、コラーゲン水溶液をエタノールの凝固浴槽に吐出して紡糸する場合、紡糸速度(=巻き速度又は引き上げ速度)約10〜10,000m/min、湿度約50%以下、温度43℃以下の条件で、空気を送風乾燥する方法が挙げられる。
凝固浴槽から取り出された単糸は、架橋処理によりコラーゲンを水難溶化させる。架橋処理は、1回に限らず複数回行うことができる。架橋処理としては、上述したように架橋剤による化学的架橋、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射及び熱脱水架橋などが挙げられる。特に、生体内埋殖後における安全性が高い観点から、熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋の条件は、架橋温度が約100〜140度、架橋時間が6〜72時間である。特に架橋効率及び熱分解を抑える観点から、好ましくは架橋温度が約110〜130度、架橋時間が12〜48時間である。
なお、以上に製造されたコラーゲン単糸は、例えば、縒糸機等を用いることにより、縒糸とすることもできる。
(ii) 前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程
本工程では、上記(i)の工程で用意したコラーゲン糸を複数本を略平行に配列させる。コラーゲン糸を複数本略平行に配列させる方法は、いくつか存在するが、本工程を実施する上でも、また、後述する「(iii) 水又は無機塩水溶液に浸漬する工程」を実施する上でも、後述する第3の方法が最も好ましい。
例えば、第1の方法として、コラーゲン糸を一定の長さに切断した後、当該切断したコラーゲン糸を略平行に配列させる方法が挙げられる。ここで、コラーゲン糸を一定の長さに切断は、コラーゲン糸を方形のフレームに巻き取った状態で行うことが好ましい。
上記第1の方法における切断したコラーゲン糸を略平行に配列させる作業が若干煩雑ではあるため、第2の方法を採用することが好ましい。第2の方法とは、コラーゲン糸を方形のフレームに巻き取った後、繊維束を形成するために必要な本数分を、当該コラーゲン糸をフレームに巻き取った状態のまま、方形のフレームにおいてコラーゲン糸を巻き取る二辺上を滑らせることにより、1まとめにする方法である。当該方法によれば、フレームの第1面側と第2面側それぞれにおいて略平行に配列した複数本のコラーゲン糸が存在するため、最終的には少なくとも同時に2つのコラーゲン繊維束を製造することができる。もちろん、1まとめにする箇所が増えることによっても、同時に製造できるコラーゲン繊維束の数は増加する。但し、コラーゲン糸を1まとめに寄せる際に糸が切れやすい場合がある点と、寄せるべきコラーゲン糸の本数を数えるのが煩雑である点、及び、コラーゲン糸のテンションが緩み、当該コラーゲン糸が扱いにくくなる場合がある点は注意をしなければならない。
さらに、第3の方法を採用することにより、第2の方法における注意点は無くなる。第3の方法とは、図1に示すように、当該方形のフレームにおける一定幅の領域内にコラーゲン糸を複数回巻き取る方法である。ここで、本発明では、一定幅の範囲を便宜上、「巻き取り領域」と称する。第3の方法も方形のフレームを用いるので、当然の如く、フレームの第1面側と第2面側それぞれにおいてコラーゲン糸が複数本平行に配列した状態になり、最終的には少なくとも同時に2つのコラーゲン繊維束を製造することができる。さらに、図1に示すように、「巻き取り領域」を方形のフレームにおいてコラーゲン糸を巻き取る二辺上に複数箇所設けることにより、同時に製造できるコラーゲン繊維束の数は増加する。当該方法によれば、フレームへの巻き回数がコラーゲン繊維束におけるコラーゲン糸の本数となる点においても好ましい態様といえる。ここで、一定幅は、コラーゲン糸の外径及びコラーゲン繊維束におけるコラーゲン糸の本数により適宜設定することができるため、特に限定されるものではない。例えば、コラーゲン糸の外径が約10〜100μmであり、コラーゲン繊維束におけるコラーゲン糸の本数が約10〜1000本である場合、一定幅は、約10〜50mmとすればよい。
(iii) 水、無機塩水溶液又は中和水溶液に浸漬する工程
本工程では、上記(ii)の工程で略平行に配列した複数本のコラーゲン糸を、水、無機塩水溶液又は中和水溶液等の実質的に高分子を含まない溶液に浸漬することにより、コラーゲン糸の周囲は溶解させる。つまり、コラーゲン糸の原材料が水可溶化コラーゲンであるが、コラーゲン糸は架橋処理されているため、コラーゲン糸は水、無機塩水溶液又は中和水溶液中においても周囲が若干溶解する程度で済む。この際に溶解した箇所は、略平行に配列した複数本のコラーゲン糸を当該水、無機塩水溶液又は中和水溶液から引き上げた後、後述の「(iv) 乾燥する工程」を経ることにより、コラーゲン糸は、隣接するコラーゲン糸と接着することができるのである。
水は、水道水、蒸留水、逆浸透水及びイオン交換水などが挙げられる。また、無機塩水溶液における無機塩は、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されるものではない。無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び塩化カリウム等が挙げられる。
中和水溶液は、コラーゲン糸の原材料が酸可溶化コラーゲン又はアルカリ可溶化コラーゲンである場合であって、係るコラーゲンより単糸を湿式紡糸法により製造した場合にとりわけ好適に使用される。これは、コラーゲン糸の原材料が酸可溶化コラーゲンである場合は、製造されたコラーゲン単糸も酸性を有し、一方で、コラーゲン糸の原材料がアルカリ可溶化コラーゲンである場合は、製造されたコラーゲン単糸も塩基性を有するからである。
中和水溶液は、薬理学的に許容される塩のみを含む溶液であれば特に限定されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液及びアンモニア水などが挙げられる。特に、本発明のコラーゲン繊維束が生体組織又は細胞に適合させることから、このような中和水溶液が残存した場合における生体組織又は細胞への影響が少ない観点から、中和水溶液は、弱酸性又は弱塩基性を有することが好ましい。したがって、例えば、コラーゲン糸の原材料が酸可溶化コラーゲンである場合は、炭酸水素ナトリウム水溶液が最も好ましい。
以上の水、無機塩水溶液及び中和水溶液は、実質的に高分子を含まない水溶液であるため、浴槽にこれら水溶液を入れ、当該水溶液に平行に配列した複数本のコラーゲン糸を浸漬させる方法を採用したとしても、その製造コストは安価である。また、コラーゲン糸を上述の方形のフレームに巻き取った状態のまま、当該水溶液に含浸させても、当該方形のフレームには何も付着しないため、何度も繰り返して使用することができる。
さらに、これらの水溶液は、平行に配列した複数本のコラーゲン糸内への浸透が速い上に、その乾燥効率もよい。また、当該方法により製造されたコラーゲン繊維束は、平行に配列した複数本のコラーゲン糸の糸間の空隙は残ったまま隣接するコラーゲン糸同士が接着することを可能とするため、繊維束特有の方向性が失われることがない上に、適度な耐キンク性及び可撓性を有する。
一方、バインダー溶液は粘度が高く、平行に配列した複数本のコラーゲン糸内への浸透が遅い上に、その乾燥効率も悪いので、コラーゲン繊維束の製造に時間を要する。また、平行に配列した複数本のコラーゲン糸にバインダー溶液を浸透させたとしても、糸間の空隙をバインダー溶液を構成する高分子が占有するため、繊維束特有の方向性が失われる上に、繊維束が剛直になり、適度な耐キンク性及び可撓性を有さない場合がある。
(iv) 乾燥する工程
本工程では、上記(iii)の工程で、水、無機塩水溶液又は中和水溶液から引き上げられた平行に配列した複数本のコラーゲン糸を乾燥する。乾燥は、自然乾燥、風乾、減圧による乾燥、高温による乾燥及び凍結乾燥等が挙げられ、特に限定されるものではない。
尚、上記(iii)の工程で、上記(i)のコラーゲン糸に施された架橋構造が、加水分解されている可能性があることと、コラーゲン糸同士の結合を強固なものにする観点から、(iv)の工程後は、再度架橋処理を行うことが好ましい。架橋処理の条件等は上述の通りなのでその説明は省略する。
以上の製造方法により製造されたコラーゲン繊維束は、例えば、組織再生器具及び細胞培養基材として用いることができる。特に繊維束の方向性を生かすことができる観点から、コラーゲン繊維束は、組織再生器具の一部として用いることが好ましい。
「組織再生器具」とは、長手方向を有し、生体内に埋植し、切り離された組織端同士をつなぎ合わせるための器具をいう。また、埋植後、損傷した組織は器具の長手方向に沿って再生する一方、器具自体は生体内で分解・吸収される再生医療分野における器具をいう。
本発明における組織としては、人体のもつ再生能力により再生しうる組織であれば特に限定されるものではない。例えば、神経、腱、靱帯、血管及び食堂などが挙げられるが、特に神経、腱及び靭帯の再生に用いることが好適である。
本発明のコラーゲン繊維束を組織再生器具の一部として用いる場合の具体的な態様としては、従来公知の組織再生器具における繊維束の代わりに本発明のコラーゲン繊維束をそのまま代用することができる。従来公知の組織再生器具としては、例えば、特許文献1、特開2002−320630号公報、特開2004−208808号公報及び特開2005−143979号公報等に開示されたものが挙げられる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(i) 水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理を施して製造されたコラーゲン糸を用意する工程
酸可溶化コラーゲンを水に溶解して5%水溶液を作製した。このコラーゲン溶液を、99.5容量%エタノール凝固浴槽中に吐出すことにより、直径約200μmのコラーゲン単糸を紡糸した。エタノール凝固浴槽から引き上げられたコラーゲン単糸を、温度約25度、湿度50%以下の条件で送風乾燥を行いながら、ボビンに巻き取った。この時の紡糸速度は、約4,000mm/minとした。次に、ボビンに巻き取りた状態で、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施すことによりコラーゲン単糸を製造した。
(ii) 前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程
次にボビンに巻き取られたコラーゲン単糸を、図1に示すような態様で約150mm×150mmの長方形を有するフレームに巻き取った。具体的には、幅約3mmの巻き取り領域を、コラーゲン単糸を巻き取る二辺上に5箇所設け、それぞれの巻き取り領域において250回ずつコラーゲン単糸を巻き取った。この時の巻き取り速度は、約4,000 mm/minとした。フレームに巻き取り略平行に配列した複数本のコラーゲン単糸は、外径約3.0mmの円柱状の形状であった。
(iii) 水、無機塩水溶液又は中和水溶液に浸漬する工程
次に、略平行に配列した複数本のコラーゲン単糸をフレームに巻き取りた状態で、中和水溶液である7.5%炭酸水素ナトリウム水溶液に含浸させた。
(iv) 乾燥する工程
そして、7.5%炭酸水素ナトリウム水溶液から略平行に配列した複数本のコラーゲン単糸をフレームに巻き取った状態のまま引き上げた後。自然乾燥を行った。
フレームに巻き取った状態の略平行に配列した複数本のコラーゲン単糸を、長さ50mmとなるように切断することによりコラーゲン繊維束を製造した。
図2は、本実施例で製造したコラーゲン繊維束の外観写真である。コラーゲン単糸が略平行に配列し、その方向性が明確にあることが確認できる。
本発明のコラーゲン繊維束の製造方法は、従来と比較して製造効率、特に製造の時間効率がよく、製造コストも安価であるコラーゲン繊維束を製造することができる。特に方形のフレームを用いる態様に至っては、複数のコラーゲン繊維束を同時に製造することができる。
本発明のコラーゲン繊維束の製造方法において、複数のコラーゲン繊維束を同時に製造することができる態様を示す図であうr。 本発明のコラーゲン繊維束の製造方法により製造したコラーゲン繊維束の外観写真である。
符号の説明
1 コラーゲン単糸
2 ボビン
3 テンションプーリー
4 方形のフレーム
41 巻き取り領域

Claims (9)

  1. コラーゲン繊維束の製造方法であって、
    (i)水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理を施して製造されたコラーゲン糸を用意する工程
    (ii)前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程
    (iii)水、無機塩水溶液又は中和水溶液に浸漬する工程
    (iv)乾燥する工程
    を含むことを特徴とするコラーゲン繊維束の製造方法。
  2. 前記コラーゲン糸が、湿式紡糸法により得られた単糸である請求項1に記載のコラーゲン繊維束の製造方法。
  3. 前記架橋処理が熱脱水架橋である請求項1に記載のコラーゲン繊維束の製造方法。
  4. 前記水可溶化コラーゲンが、酸可溶化コラーゲン又はアルカリ可溶化コラーゲンである請求項1に記載のコラーゲン繊維束の製造方法。
  5. (ii)前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程が、方形のフレームにコラーゲン糸を複数回巻き取ることを特徴とする請求項1に記載のコラーゲン繊維束の製造方法。
  6. コラーゲン糸を複数回巻き取る箇所を複数設けることを特徴とする請求項5に記載の繊維束の製造方法。
  7. 方形のフレームにおける一定幅の領域内にコラーゲン糸を複数回巻き取ることを特徴とする請求項5に記載のコラーゲン繊維束の製造方法。
  8. コラーゲン糸を含む繊維束であって、
    (i)水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理を施して製造されたコラーゲン糸を用意する工程
    (ii)前記コラーゲン糸複数本を略平行に配列させる工程
    (iii)水、無機塩水溶液又は中和水溶液に浸漬する工程
    (iv)乾燥することで隣接するコラーゲン線維を接着する工程
    を含む製造方法により得られた単糸同士が伸長方向に方向性を保持した状態で接着したコラーゲン繊維束。
  9. 請求項8に記載のコラーゲン繊維束を備える組織再生器具。
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