JP5703804B2 - 組織再生器具の前駆体、その製造方法 - Google Patents
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Description
2 誘導手段、繊維束
「筒状体」とは、組織の細胞が周辺組織へ成長することを防止する構造のものをいう。筒状体1の形状は、例えば、円筒形(チューブ形状)及び角筒形(三角形、四角形、五角形及び六角形)などが挙げられる。特に、製造が容易である観点から、円筒形(チューブ形状)が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
筒状体1の内腔には、誘導手段2を備える。「誘導手段」とは、損傷した組織の細胞が、長手方向への成長を誘導する足場となるものをいう。誘導手段2は、例えば、スポンジ及び繊維束などが挙げられるが、細胞の成長方向に方向性をもたらすことができる観点から、繊維束が好ましい。
繊維束の形状については、上述の様に直線状の繊維束をVの字型にキンクさせた形状であってもよいし、直線状の繊維束をWの字型などの様に複数回キンクさせた形状であってもよく、繊維束の一箇所あるいは複数箇所において、変形後の形状から元の形状に戻ろうとする復元力が働き、筒状体内に係止されるものであれば特に限定されるものではない。
また、組織再生器具は、軟化溶媒によって膨潤させた後、そのまま使用してもよいし、膨潤させた後に、図2あるいは図4に示されるキンクさせた箇所または図6に示される束ねた箇所を切断することで、誘導体が単一の方向に並んだ状態として使用してもよい。
酵素可溶化コラーゲンを水に溶解して5%(w/w)水溶液を作製した。このコラーゲン溶液を、99.5%(v/v)エタノール凝固浴槽中に吐出すことにより、直径約200μmのコラーゲン単糸を紡糸した。エタノール凝固浴槽から引き上げられたコラーゲン単糸を、そのまま外径3.0mmのポリフッ化エチレン系繊維製の円筒鋳型に、約4,000mm/minの速度で巻き付けた後、乾燥させた。次に、この生成物を5%(w/w)コラーゲン水溶液に浸漬、乾燥することにより筒状体1の最内層を形成した。さらに、この筒状体1の最内層の外周に前記コラーゲン単糸を約4,000mm/minの速度で再度巻き付け、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。得られたコラーゲン筒状体を、再度5%(w/w)コラーゲン水溶液を浸漬、乾燥させた後、熱架橋処理を行うことにより、内径3.0mm、外径3.3mm、長さ70mmの架橋コラーゲン製の筒状体1を製造した。
上述したエタノール凝固浴槽による湿式紡糸において、凝固浴槽から引き上げられた単糸を、温度約25度、湿度50%以下の条件で送風乾燥を行いながら、約150mm×150mmの長方形を有するフレームに巻き付けた。この時の紡糸速度は、約4,000mm/minとした。次に、フレームに巻き付けた状態で、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。そして、巻き付けられた糸を長さ切断し、円柱状となるように束ねた。この円柱状に束ねたものを7.5%(w/w)炭酸水素ナトリウム水溶液に含浸させた後、乾燥することにより繊維束2を作製した。繊維束の長さ及び外径は、後述する実施例にしたがって適宜設定できる。
参考例2に従って製造した、長さ110mm、外径0.5mmの繊維束2を中点付近でU字型に屈曲させて、筒状体1の内腔に挿入することにより、図2の態様の組織再生器具の前駆体を製造した。本実施例で製造した前駆体の写真図を図3に示す。尚、筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、繊維束2の長手方向に対して直交する断面積の比率は約11.1である。また、この前駆体を、生理食塩水にて、大気圧下、湿度60%、25℃の条件で、20分浸漬することによりを飽和膨潤状態としたところ、筒状体1が変形することなく図1のような組織再生器具が生産できることを確認した。
参考例2に従って製造した、長さ100mm、外径0.5mmの繊維束を中点付近でV字型にキンクさせる。この時、繊維束2の両端の最短距離は、4.0mmとする。このキンクした繊維束2の両端の最短距離を、筒状体1の内径3.0mmよりも小さくするように変形した後、この繊維束2を挿入することにより、図4の態様の組織再生器具の前駆体を製造する。尚、筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、繊維束2の長手方向に対して直交する断面積の比率は約11.1となる。
参考例2に従って製造した、長さ50mm、外径1.0mmの繊維束を中点付近でく字型にキンクさせる。この時、両端を結ぶ線から頂点への距離は、4.0mmとする。
このキンクした繊維束2の両端を結ぶ線から頂点への距離を、筒状体1の内径3.0mmよりも小さくするように変形させた後、この繊維束2を挿入することにより、図5の態様の組織再生器具の前駆体を製造する。尚、筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、繊維束2の長手方向に対して直交する断面積の比率は約11.1となる。
参考例2に従って製造した、長さ50mm、外径0.13mmの繊維束6本を、ある一端から10mm付近でキンクさせ、10mmの辺と40mmよりなるく字型の繊維束を製造する。さらにこの10本の繊維束の10mmの辺を、40mmの辺が円錐となるように、束ね、この束ねた箇所に5%(w/w)コラーゲン溶液を塗布・乾燥させることにより、誘導手段2を製造する。10本の繊維束の40mmの辺側の端で描かれる円の直径は4.0mmとする。この誘導手段2における繊維束6本の40mmの辺側の端で描かれる円の直径を、筒状体1の内径3.0mmよりも小さくするように変形した後、この繊維束2を挿入し、図6の態様の組織再生器具の前駆体を製造する。尚、筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、繊維束2の長手方向に対して直交する断面積の比率は約11.1となる。
Claims (4)
- 組織を再生する組織再生器具を生産するための前駆体であって、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
生分解性材料からなる直線形状の誘導手段を備え、
前記誘導手段は、当該誘導手段を折り曲げ又は屈曲させた際に生じる当該誘導手段が直線形状に戻ろうとする復元力により前記筒状体の内壁に係止されてなることを特徴とする組織再生器具の前駆体。 - 前記誘導手段が、隣接する糸状体を接着してなる繊維束である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 組織を再生する組織再生器具を生産するための前駆体の製造方法であって、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体を準備し、
生分解性材料からなる直線形状の誘導手段を折り曲げ又は屈曲させて前記筒状体の内腔に挿入し、
当該誘導手段を折り曲げた又は屈曲させた際に生じる当該誘導手段が直線形状に戻ろうとする復元力により前記筒状体の内壁に係止されてなることを特徴とする組織再生器具の前駆体の製造方法。 - 前記誘導手段が、隣接する糸状体を接着してなる繊維束である請求項3に記載の組織再生器具の前駆体の製造方法。
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