JP4345296B2 - 癒着防止膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、組織再生誘導及び促進作用を有するコラーゲン含有癒着防止膜に関する。本発明の癒着防止膜は、生体適合性が良好であり、生体内で長期間安定に癒着防止効果を発揮し、縫合可能であるため、例えば胸膜、心膜、脳硬膜、漿膜などの生体内膜状組織および各種臓器などの欠損部または切断面への補填、補綴用膜として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
各種の外科手術においては、患部の切除、および損傷部位の修復等を行うことが多く、特に肺、心臓、肝臓、脳、消化器官、胆嚢などの各種臓器を対象とする場合には、その切断面や欠損部などに、該臓器の組織を覆っている膜状物を補填または補綴しなければ、その臓器の根本的な機能を損なう場合が多い。これらの処置を不完全に行うと、臓器の機能不全により死亡するか、もしくは生命の危機を逃れても、予後が大変悪くなる傾向が良く観うけられる。またこれらの補綴、補填部位での縫合固定が不良であると、該処置を行った臓器自身の機能はかろうじて維持できたとしても、これらの臓器から滲出または漏出した体液、消化液、内容物などにより感染したり、他臓器への攻撃、浸食を引き起こして生命の危機を招くこともある。
【0003】
さらに、これら補綴または補填した膜状物と臓器との癒着が高頻度に発生するケースがあり、その結果として、経時的に臓器の機能不全を誘発する事もある。このような各種の問題点を解決する目的で、臓器または該臓器の組織を覆う膜状物または癒着防止膜が、様々な材料により開発されている。
【0004】
癒着を防止する機構として、最も単純かつ効果的である方法は、損傷または欠損等により傷ついた組織と、この組織に物理的に接触が可能である別の組織とを隔壁により接触させないことである。しかし、これを合成繊維等で行う場合、生体適合性の不足から、過度の石灰化、異物反応、炎症反応などの様々な不都合が生じてくる。また、隔壁として生体適合性材料を用いた場合であっても、材料自身が、損傷または欠損した組織と、それに対応する別組織との癒着を媒介してしまってはならない。これらの条件を満足するものとしては、ヒアルロン酸やゼラチンなどが挙げられる。両者は共に粘性のある水溶性の液体として取り扱うことが可能であり、様々な加工方法により、ゲルとして利用することが可能である。
【0005】
これらの材料は主に動物等の生体より抽出・精製されるものであるから、生体適合性が良好であり、既に医薬品をはじめ、様々な医療分野で実用化が成されている。
例えば、ヒアルロン酸を利用する癒着防止膜、医用材料等は特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10などに記載されている。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献1】
特開平6−73103号公報
【特許文献2】
特公平7−30124号公報
【特許文献3】
登録特許第2670996号公報
【特許文献4】
特開平8−333402号公報
【特許文献5】
特開昭61−234864号公報
【特許文献6】
登録特許第2648308号公報
【特許文献7】
特開平8−157378号公報
【特許文献8】
特開平9−296005号公報
【特許文献9】
特開平7−102002号公報
【特許文献10】
特表平7−509386号公報
【0007】
特許文献11には、動物由来コラーゲンのみを利用した医療用膜を改良した膜として、架橋したコラーゲン繊維からなる不織布層の少なくとも一面が、コラーゲン被膜で覆われた医療用コラーゲン膜が記載されている。特許文献12には、コラーゲン繊維の不織布上にゼラチンまたはヒアルロン酸を単独で癒着防止膜に利用した技術が記載されている。特許文献13には、コラーゲン繊維の不織布層とコラーゲンのスポンジ層の上にゼラチンまたはヒアルロン酸の被覆層を有する癒着防止膜が記載されている。
【0008】
【特許文献11】
特開2000−93497号公報
【特許文献12】
特開2000−271207号公報
【特許文献13】
特開2000−210376号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記した技術は生体適合性、生体内分解・吸収性、物理的・機械的強度、取り扱いの容易さ、長期間の癒着防止効果などの点において十分満足できるものではない。長期間にわたって十分な癒着防止効果を発揮し、副作用もほとんどなく、しかも生体適合性、生体内分解・吸収性が良く、縫合固定が可能な機械的強度を同時に満足する改良された医用材料が求められている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、種々鋭意検討を行った結果、本発明者らはコラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層とを有する積層膜状物の表面に、コラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含む被覆層を設けることにより、有意に耐分解性が向上した癒着防止層を構築することを可能とし、癒着防止効果が長期間維持される癒着防止膜が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) コラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層とを有する積層膜状物の表面に、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を有してなる癒着防止膜、
(2) コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層がスポンジ状もしくはフィルム状である上記1記載の癒着防止膜、
(3) コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層がコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を架橋反応に付してなる層である上記1記載の癒着防止膜、
(4) コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層の厚さが約50μm〜20mmである上記1記載の癒着防止膜、
(5) 癒着防止膜を構成するコラーゲンが酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲンまたは中性可溶化コラーゲンである上記1記載の癒着防止膜、
(6) 癒着防止膜を構成するコラーゲンの一部もしくは全部が架橋されている上記1記載の癒着防止膜、
(7) コラーゲン繊維からなる不織布層が(1)コラーゲンまたは(2)コラーゲンとヒアルロン酸との混合物でコラーゲン繊維が互いに接合された不織布層である上記1記載の癒着防止膜、
(8) コラーゲン繊維からなる不織布層の厚さが約50μm〜10mm、コラーゲンからなるスポンジ層の厚さが50μm〜20mmであり、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層の厚さが約50μm〜20mmである上記1記載の癒着防止膜、
(9) コラーゲン繊維からなる不織布層が、コラーゲン繊維からなる不織布を1〜6枚積層させたものである、上記1記載の癒着防止膜、
(10) コラーゲン繊維の直径が約10〜1,000μm、コラーゲン繊維からなる不織布層の嵩密度が約5×10−4〜50g/cmである上記1記載の癒着防止膜、および
(11) 膜全体の厚さが約150μm〜50mmである上記1記載の癒着防止膜
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、コラーゲン繊維からなる不織布層とは、コラーゲン繊維からなる2次あるいは3次構造を有する構造物であり、コラーゲン繊維空隙の一部または全部が気体、液体、固体などで満たされていてもよく、コラーゲン繊維の外周面の一部または全部が固体または液体で覆われていてもよい。コラーゲン繊維は▲1▼コラーゲンまたは▲2▼コラーゲンとヒアルロン酸との混合物等のバインダーで互いに接合されていてもよい。
またコラーゲン繊維を構成するコラーゲンは、その一部もしくは全部が架橋されていてもよい。また、コラーゲン繊維を構成するコラーゲンやコラーゲンとヒアルロン酸との混合物におけるコラーゲンは、酸可溶化コラーゲンを用いた場合、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例、マグネシウム、カルシウム等)等の塩として用いてもよく、アルカリ可溶化コラーゲンを用いた場合、無機酸(例、塩酸、硫酸、硝酸、等)、有機酸(例、酢酸、クエン酸等)との塩として用いてもよい。ヒアルロン酸は、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例、マグネシウム、カルシウム等)等の塩として用いてもよい。
【0013】
コラーゲン繊維の直径は通常、約10〜1,000μm、好ましくは約20〜250μmである。コラーゲン繊維からなる不織布層は通常、1〜6枚、好ましくは2〜4枚のコラーゲン不織布が積層されたものである。
コラーゲン繊維からなる不織布層の嵩密度は、通常、約5×10−4〜50g/cm、好ましくは約0.05〜50g/cmである。厚さは通常、約50μm〜10mm、好ましくは、約0.2〜2mmである。
【0014】
コラーゲンからなるスポンジ層とは、コラーゲンを含有し、通常、スポンジ状などの形態を有する層状物である。コラーゲンは、酸可溶化コラーゲンを用いる場合、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例、マグネシウム、カルシウム等)等の塩としてもよい。アルカリ可溶化コラーゲンを用いる場合、無機酸(例、塩酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(例、酢酸、クエン酸等)との塩としてもよい。また、コラーゲンは架橋反応処理されていてもよい。コラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層とを有する積層膜状物を作成するため、コラーゲン、ヒアルロン酸、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む水溶液などをコラーゲンからなるスポンジ層とコラーゲン繊維からなる不織布層との接着される面に塗布し、コラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層とを接着してもよい。コラーゲンからなるスポンジ層の厚さは、通常、約50μm〜20mmであり、好ましくは、約0.1〜1mmである。コラーゲンからなるスポンジ層はコラーゲン繊維からなる不織布層の片面または両面のいずれに積層されていてもよく、コラーゲン繊維からなる不織布層が複数枚の不織布で構成されている場合は、不織布間に積層されていてもよい。
【0015】
コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層とは、コラーゲンとヒアルロン酸を含有し、通常、スポンジ状もしくはフィルム状などの形態を有する層状物である。コラーゲンとヒアルロン酸との混合物は、酸可溶化コラーゲンを用いる場合、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例、マグネシウム、カルシウム等)等の塩としてもよい。アルカリ可溶化コラーゲンを用いる場合、無機酸(例、塩酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(例、酢酸、クエン酸等)との塩としてもよい。
コラーゲンとヒアルロン酸の混合比率(重量比)は約1:100から約100:1の範囲が用いられ、好ましくは約3:7から約7:3の範囲であり、さらに好ましくは約1:1である。コラーゲンとヒアルロン酸との混合物は架橋反応処理されていてもよい。コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層とコラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層とを有する積層膜状物とを接着させるため、コラーゲン、ヒアルロン酸、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む水溶液などを、被覆層と積層膜状物との接着される面に塗布してもよい。コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層の厚さは、通常、約50μm〜20mmであり、好ましくは、約0.1〜1mmである。該被覆層は、積層膜状物の片面または両面のいずれに積層されていてもよい。
【0016】
本発明の癒着防止膜は、コラーゲン繊維からなる不織布層、コラーゲンからなるスポンジ層、およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を積層させた、積層構造を有する。本発明の癒着防止膜の全体の厚さは、通常、約150μm〜50mmであり、好ましくは約0.5〜9mmである。
本発明の癒着防止膜は十分に縫合可能な膜強度を主にコラーゲン繊維からなる不織布層が担当し、組織再生の誘導・促進を主にコラーゲンからなるスポンジ層が担当し、生体適合性と周囲組織との癒着防止効果をコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層が発揮する。
【0017】
本発明の癒着防止膜は、コラーゲンおよびヒアルロン酸が生体由来材料であり、生体適合性が非常に優れているだけでなく、移植された生体内では徐々に分解・吸収され、最終的には全て分解・吸収されることとなる。特にコラーゲン繊維からなる不織布層は、生体内欠損部位等の組織再生が完了するまでの間、補填、補綴、シールする足場として存在し、縫合固定の一定期間、その膜強度を維持した後に、全て分解・吸収される。また、最外層のコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層は、その粘性と徐放作用により、損傷または欠損部位の組織と周囲組織との癒着を防止する。なお、この癒着を防止する期間は、損傷または欠損部位の組織が、自然状態で周囲組織との癒着が起こらない程度まで再生・治癒するまでの期間持続する。これらの癒着防止効果を発揮しつつ、徐々に体内で分解・吸収され、最終的にはこれらコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層も消失する。
【0018】
本発明の癒着防止膜の製造方法を以下に記載する。
本発明において使用される代表的なコラーゲンの原料としては、例えば酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲンまたは中性可溶化コラーゲンなどが挙げられる。これらの可溶化コラーゲンとは、溶媒に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンである。例えば、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン、中性可溶化コラーゲン等の可溶化コラーゲンが挙げられる。特に可溶化処理と同時にコラーゲンの抗原決定基であるテロペプタイドの除去処理が施されている、アテロコラーゲンが好適である。これらコラーゲンの可溶化方法については、特公昭46−15003号公報、特公昭43−259839号公報、特公昭43−27513号公報等に記載されている。またコラーゲンの由来については、ウシ、ブタ、鳥類、魚類、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、ヒト等の動物種の皮膚、腱、骨、軟骨、臓器等から抽出されるものである。コラーゲンのタイプとしてはI型、III型等の分類可能なタイプのうちいずれかに限定されるものではないが、取り扱い上の観点から、I型が特に好適である。
【0019】
酸可溶化コラーゲンを用いる場合、コラーゲンは凝固後、水中で炭酸アルカリ金属(例、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例、炭酸水素ナトリウム等)、水酸化アルカリ金属(例、水酸化ナトリウム等)などにより中和した塩として用いてもよい。また、アルカリ可溶化コラーゲンを用いる場合、コラーゲンは凝固後、水中で無機酸(例、塩酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(例、酢酸、クエン酸等)などにより中和した塩として用いてもよい(以下の場合も同様)。
【0020】
ヒアルロン酸は動物由来、微生物由来のどちらでも良いが、医療用グレードの物が特に好適である。ヒアルロン酸はアルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム等)等の塩として用いてもよい。
また、コラーゲンを可溶化させる溶媒については、コラーゲンを可溶化できる溶媒であれば、特に限定されないが、好ましくは、水、中性塩(例、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等)の水溶液、希鉱酸(例、希塩酸、希硝酸等)、親水性有機溶媒(例、エチルアルコール、エチレングリコールなどの1価ないし多価アルコール類)を含んでいてもよい。取り扱い上、水が好適である。
【0021】
コラーゲン繊維からなる不織布は、常法(例えば、特開2000−93497に記載の方法)に従ってコラーゲン水溶液から連続紡糸してコラーゲン糸を得、不織布状に加工することにより好適に製造される。
本発明に用いられるコラーゲン水溶液の濃度は、使用するコラーゲンの種類により任意であり、紡糸可能であればどの様な濃度でも構わないが、通常は約0.1重量%〜20重量%、このうち湿式紡糸では約1重量%〜10重量%程度が特に好適である。また、紡糸時のコラーゲンの吐出速度は、紡糸可能である範囲であれば任意である。
【0022】
紡糸の際、コラーゲン溶液の吐出に用いる装置は、汎用のギアポンプ、ディスペンサー、各種押し出し装置等、何を用いても良いが、均一な紡糸を行うためには脈動が少なく安定してコラーゲン溶液を定量吐出できる装置が良い。
また、紡糸を行う際の口金の孔径サイズは紡糸さえ可能であれば、特に限定はされないが、あまりに大きな孔径ではバインダー処理による繊維状物から膜状物にする操作が困難となり、また極度に細径であると膜強度の向上が難しくなるので、通常、約10μm〜1000μm、好ましくは約50μm〜700μmの範囲が用いられる。さらに口金の孔数は単数でも複数でも良い。口金の形状も特に限定はされず、紡糸可能であれば、例えばスリット状、各種形状などの物を用いても良い。さらに口金の孔長に関しては、これも紡糸可能であれば特に限定はされないが、可溶化コラーゲン分子中のコラーゲン分子を、少しでも多く配向させる目的において、可能な限り長い方が好ましい。
【0023】
湿式紡糸で用いられる凝固浴としては、一般的にコラーゲンを凝固させうる溶媒、懸濁液、乳濁液もしくは溶液であれが特に限定はされないが、無機塩類水溶液、無機塩類含有有機溶媒、アルコール類、ケトン類またはこれらの任意の組み合わせが用いられる。無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの水溶液、特に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの水溶液が好ましい。これらの無機塩類をアルコール、アセトンに溶解/分散させた無機塩類含有有機溶媒等を用いてもよく、この場合特に塩化ナトリウムのエタノール溶解/分散溶液が好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノールなどの炭素数1から6のアルコール類やエチレングリコールなどのグリコール類、好ましくはエタノールが挙げられる。ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0024】
上記凝固浴はコラーゲンの凝固のためだけではなく、後述する各種架橋剤との組み合わせにより、コラーゲンの凝固と架橋処理を同時に実施できる加工方法も有効である。たとえば、エタノールとグルタルアルデヒドを混和した溶液を、凝固処理と架橋処理を兼ね備えた凝固浴として使用した場合、両者の工程を一度に行うことができ、紡糸されたコラーゲン糸はそのまま架橋処理される。これらの同時処理は、工程の合理化だけではなく、希薄なコラーゲン溶液による紡糸や細径の糸を紡糸する際に非常に有効である。
【0025】
上記の不織布層の形成方法において、特に好適な具体例を以下に記す。コラーゲン吐出用口金の孔径がφ200μm程度で、孔長15〜20mm程度のものを使用し、脈動なくコラーゲン溶液をディスペンサー等で吐出させ、約99.5容量%エタノール凝固浴中へ湿式紡糸すことが望ましい。約99.5容量%エタノール凝固浴中にコラーゲンを押し出す際には、吐出口金を随時移動させ、紡糸された糸が任意の方向より交差し得る状態で連続的に押し出し、糸を多重多層状態にした後に凝固液を除去して再度エタノールで洗浄し、減圧乾燥する事により、非常に良好な綿状の繊維状物を簡便に得ることができる。この方法は、紡糸と不織布化が同時に実施できるので、工程の簡素化、短縮化、経済性の面で特に有効である。
【0026】
この例は代表的なものであり、繊維状物が得られさえすれば 、これに限定されるものではなく、例えば前述のコラーゲン繊維ステープルを利用しても良いし、凝固浴の種類、凝固浴と架橋剤の混合浴の利用、また乾燥方法等を変更し、さらにそれらの組み合わせを変更してもよい。
【0027】
一方、コラーゲン水溶液から間欠吐出による非連続紡糸、又は通常の連続紡糸を行った後に得られる糸を切断処置することにより、連続、非連続紡糸のいずれの場合においても短いステープル状の繊維状物が得られる。これらを適当な大きさの容器に均一に分散させた状態で、減圧乾燥、自然乾燥などの方法により乾燥させた不織布(繊維状物)を製造することも可能である。
【0028】
上記方法で得られた不織布は十分な縫合強度を獲得するために、必要によりさらに架橋処理を施してもよい。この架橋処理により、特に湿潤時における物理的な強度が向上し、縫合に必要な強度が十分に確保できる。また、生体内に移植された際に分解・吸収される時間を、未架橋の場合に比較して飛躍的に遅延させる為でもある。この架橋処理により、生体の欠損部を補填または補綴し、欠損による臓器・組織等の機能不全を防止し、しかも創傷面の修復および組織の再生を完了するまでの期間、体内で必要な膜強度を維持したまま残存することが可能となる。
【0029】
この架橋方法には、大別して物理的架橋方法と化学的架橋方法が存在する。物理的架橋処理法としては、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射、熱脱水架橋処理などがあげられる。このうち熱脱水架橋処理が好ましい。熱脱水架橋処理では、コラーゲン単糸が巻き取られた状態で減圧下加熱処理することにより物理的に架橋処理される。この架橋処理では、架橋温度と架橋時間により生体適合性と分解吸収性をコントロールすることが可能である。物理的架橋と化学的架橋はそれぞれ単独で行ってもよいし、併用してもよく、また併用する場合にはその順番は問わない。
化学的架橋反応に用いる架橋剤としては、コラーゲンとの架橋反応が可能であれば如何なる架橋剤でも使用可能であり、例えばアルデヒド類、エポキシ類、カルボジイミド類、イソシアネート類などが挙げられる。アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサル、ジアルデヒドデンプン等、エポキシ類としてはグリセロールジグリシジルエーテル等、カルボジイミド類としては水溶性カルボジイミド等、イソシアネート類としてはヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。好ましくはグルタルアルデヒドである。コラーゲン単糸の架橋は、通常、架橋剤の溶液中にコラーゲン単糸を浸漬することにより行われる。架橋剤溶液の溶媒は特に限定されないが、水やエタノール等が好適であり、特にエタノールが最適である。架橋剤溶液の濃度と浸漬時間により、分解吸収性と生体適合性をコントロールすることが可能である。架橋剤がグルタルアルデヒドである場合、溶液の濃度は、通常約0.001容量%〜25容量%、好ましくは、約0.01容量%〜1.0容量%である。
【0030】
上記の方法により得られるコラーゲン繊維からなる不織布層はその物理的強度を向上させる目的で、バインダー処理を施してもよい。バインダー処理とは、不織布層に、(1)コラーゲンまたは(2)コラーゲンとヒアルロン酸との混合物の水溶液などを含浸させた後、自然乾燥、送風下乾燥、減圧乾燥、低温下乾燥などの適当な乾燥方法で乾燥を行い、不織布層の繊維同士を結合させる処理である。
このバインダー処理により得られる不織布層は、未処理の不織布層よりもはるかに物理的強度が向上し、従って縫合強度も格段に向上する。要求される物理的強度の程度により、この含浸・乾燥の工程を1回〜数10回以上繰り返しても差し支えない。
【0031】
ただし、バインダー処理を行う際には、コラーゲン繊維のみからなる、不織布層に架橋処理が施されていない場合、(1)コラーゲンまたは(2)コラーゲンとヒアルロン酸との混合物の水溶液等に含浸した時点で不織布層自身が溶解してしまう場合がある。従って、前述の方法等で、前もって架橋処理を施しておくのが望ましい。
なお、バインダー処理法としては、(1)コラーゲン水溶液または(2)コラーゲンとヒアルロン酸との混合物の水溶液に不織布層を含浸する方法の他に、適当な容器または型中に不織布層とともにコラーゲンまたはコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を流延または充填する方法や、不織布層にコラーゲン溶液またはコラーゲンとヒアルロン酸との混合物の溶液を直接塗布する方法もある。
【0032】
本発明では、スポンジ層を利用したバインダー処理方法を用いてもよい。例えば、あらかじめスポンジ状に乾燥しておいたコラーゲン層で不織布層を挟んで得た膜状物、もしくは該スポンジ層と不織布層を同時に圧縮し、不織布層を該スポンジ層に埋入させた膜状物を、希薄なコラーゲンまたはその上記した塩基塩又は酸付加塩の溶液または水の存在下で、常圧もしくは減圧下に置くことにより、スポンジ層のコラーゲンを溶解させ、不織布層に溶液を十分に浸透させてから、各種乾燥法で乾燥させる方法等が用いられる。
このスポンジ層を利用したバインダー処理方法は、不織布層の繊維同士を結合させるために、実際に使用されるコラーゲン量に対して、水分などの溶媒成分が非常に少量で済む。従って後工程で乾燥を行う際に短時間で終了する上、乾燥時における収縮、変形などが非常に少ないという大きなメリットがある。また、通常の含浸工程では、含浸用コラーゲン溶液中の実質コラーゲン量は、実用的溶液粘度の関係から、数%程度が限界であり、残り90%以上は水分等の溶媒成分となる。したがって、含浸・乾燥の操作に時間を要し、この操作自体を反復する必要があるが、操作が非常に簡便であるというメリットがある。無論、これらの方法は代表的な例示であり、不織布層または圧縮された不織布層の繊維同士をコラーゲンを用いて接合させる方法であれば、どのような方法でも良く、上記代表例には特に限定されない。また、バインダー処理には、上記コラーゲン水溶液の他、ヒアルロン酸溶液、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物の水溶液なども使用できる。
【0033】
ついで上記方法により得られるコラーゲン繊維からなる不織布層に、コラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を形成させてもよい。該形成方法は常法に従い、凍結乾燥などの方法により容易に実施可能である。形成する製造工程上の順序・方法等については特に限定されない。具体的な製法としては、例えば、コラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状もしくはフィルム状の被覆層を積層するか、またはコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層を独自に作製して、その後に、該被覆層、スポンジ層、およびコラーゲン繊維からなる不織布層を、コラーゲン、ヒアルロン酸、またはコラーゲンとヒアルロン酸との混合物の水溶液などを用いて接着する方法がある。また、コラーゲン繊維からなる不織布層を、コラーゲンの水溶液に浸漬させた後に一度凍結し、再度、同様にコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む水溶液に浸漬させ、これらを凍結して一体化した後に凍結乾燥することにより、同時にコラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層の3種の層を有する癒着防止膜を得る方法などがある。
【0034】
また、容器中に充填したコラーゲン溶液およびコラーゲンとヒアルロン酸の混合物からなる溶液中にコラーゲン不織布を浸漬させた後に、フリーザーで凍結し、さらに凍結乾燥してコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸の混合物からなるスポンジ層中にコラーゲン不織布が含有されている状態に成型することも可能である。しかし、これらは本発明の加工方法の一例を示したに過ぎず、これらの加工の目的はコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸の混合物からなるスポンジ状もしくはフィルム状の被覆層とコラーゲン繊維からなる不織布層が生体内移植時に簡単に剥離・分離すること無く、一体化されることが目的であり、これが達成されるのであれば、どのような加工順序、方法を用いても構わない。
【0035】
コラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層の作製については、コラーゲン溶液またはコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む水溶液を容器に流延、または所望の厚さとなるまで充填し、汎用フリーザー等で十分に凍結した後、凍結乾燥機で乾燥することにより、均一なスポンジ層が得られる。この時、コラーゲンからなるスポンジ層またはコラーゲンとヒアルロン酸の混合物からなるスポンジ層に形成される微細な多孔の孔径は、コラーゲン溶液またはコラーゲンとヒアルロン酸の混合物からなる溶液の濃度とその溶媒、凍結時の温度と凍結時間などにより変化する。
【0036】
コラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層における各種原料の総量およびスポンジ状の被覆層の厚さについては、対象となる部位の癒着防止効果、損傷・切断部位の修復、組織再生の誘導などにおける支障を来さないように、約1〜4週間程度、スポンジ層が体内で残存している程度が望ましい。このコラーゲンとヒアルロン酸の混合物からなるスポンジ状の被覆層の厚さ、およびスポンジ層の形成に使用される総原料量は、生体内に移植された場合の分解・吸収時間、組織再生の誘導への影響を考慮して、任意にコントロールすることが可能である。スポンジ層の厚さは各々、具体的には約50μm〜20mm、好ましくは100〜1000μmであり、特に乾燥終了時の厚さが1〜10mmであり、これらを圧縮して使用する場合において、100μm〜1mmの厚さとなることが好ましい。これらの状況を考慮して、コラーゲン水溶液およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む溶液の濃度範囲は、0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜10重量%であることが望ましい。また凍結温度は−200〜−10℃、好ましくは汎用のフリーザーまたはディープフリーザーで設定可能である−80〜−10℃であることが好ましい。また、凍結乾燥機は安定して乾燥が可能であれば特に限定はされない。
【0037】
さらに、コラーゲン水溶液およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む水溶液の容器への充填量は、仕上がりスポンジの厚さが、約50μm〜20mm、好ましくは10〜1000μm程度になるように充填すれば良い。これらの値は、使用する目的に応じて随時変更が可能であり、これらの例示に限定されない。
【0038】
癒着防止効果を発揮するコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層は、スポンジの形状のみには限定されず、例えば、通常の流延方式などにより得られるフィルム状などの形状に加工されていても良い。また、癒着防止効果を付与するためにコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を形成する場合には、目的に応じて膜の片面または両面、あるいは一部分または全面被覆など様々な形態が選択可能であり、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層の形成方法、または、その部位については特に限定されるものでは無く、任意の組み合わせが可能である。
【0039】
上記の各種架橋方法により、架橋処理を施される対象としては、膜を構成する不織布層、コラーゲンからなるスポンジ層、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層、およびこれらが一体化され積層化された癒着防止膜の一部または全部が対象となる。また、架橋の順序、架橋方法の組み合わせは任意であり、特に限定されない。しかし、最も好ましくは、コラーゲン繊維からなる不織布層においてグルタルアルデヒドなどのアルデヒト類を用いて架橋を施し、しかる後にコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を形成し、これと一体化させ、最後に熱脱水架橋を施す。これらの方法においては、コラーゲンの紡糸、不織布化の工程において、エタノール等の凝固剤と、グルタルアルデヒドに代表される架橋剤類を混合し、紡糸と架橋の工程を一度に行う方法なども含まれる。
酸可溶化コラーゲンは、そのまま癒着防止膜の材料として生体に使用すれば、周囲の体液等を酸性化してしまう場合がある。これを避けるため、水溶液中で炭酸アルカリ金属(例、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例、炭酸水素ナトリウム等)、水酸化アルカリ金属(例、水酸化ナトリウム等)などにより中和した塩として用いてもよい。また、アルカリ可溶化コラーゲンは、無機酸(例、希塩酸、希硝酸等)、有機酸(例、酢酸、クエン酸等)などにより中和した塩として用いてもよい(以下の場合も同様)。酸(希塩酸、希硝酸、酢酸等)で中和して用いてもよい。中性可溶化コラーゲンはそのまま用いてもよい。
【0040】
本発明の癒着防止膜は、縫合強度、生体適合性、生体内分解・吸収性、組織再生の促進・誘導の点において優れた癒着防止膜である。コラーゲン繊維からなる不織布層において、バインダー処理を行う場合には、これにより形成される層をも熱脱水架橋することが良い。しかし、これはあくまでも一例であって、例えば、全ての層を熱脱水架橋により処理しても、何ら問題は無く、また、滅菌と架橋を兼ねて、例えばγ線を照射しても良い。
【0041】
上記方法により得られる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を有する癒着防止膜は、さらに圧縮成形することが可能である。コラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を単独で圧縮した後に、圧縮されていない不織布層と組み合わせて一体化しても良い。特に好ましくは、製膜の最終工程において不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層およびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層が一体化されているものを同時に圧縮することである。これは圧縮することにより膜厚が減少し、薄膜化されることで、手術現場において実際に癒着防止膜を使用する際に、縫合における縫合針の貫通性、任意の形状への切断等の取り扱いが特に向上し、移植手術等がより円滑に行える。圧縮の方法は汎用のプレス機で行うことが可能であるが、医療用途を目的とすることから、十分に丈夫な滅菌済みの包装材、例えばアルミパック、高強度樹脂包装材等により無菌的に包装された状態で圧縮されることが望ましい。また、癒着防止膜を圧縮する圧力に関しては、膜本体を破壊しない範囲において特に制限はされないが、通常、10〜1000kgf/cm2 であることが望ましい。
【0042】
本発明の癒着防止膜は、生体適合性が良好であり、副作用がほとんどなく生体内で長期間安定に癒着防止効果を発揮し、しかも縫合可能であるため、例えば胸膜、心膜、脳硬膜、漿膜などの生体内膜状組織および各種臓器などの欠損部または切断面への補填、補綴用膜として用いられる。本発明の癒着防止膜は自体公知の方法により、人間や動物に安全に使用できる。
【0043】
【実施例】
以下に実施例、実験例を示して本発明を詳細に説明する。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
本発明の実施例で使用するコラーゲンはアテロ化した酸可溶化コラーゲンであるブタ由来I型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製、SOFDタイプ、Lot No.0102226)を用い、ヒアルロン酸はヒルネート注キット(菱山製薬株式会社製)を用いた。
【0044】
(実施例1) 癒着防止膜(3層状)の作製
(1)コラーゲン繊維からなる不織布層の作製
酸可溶化コラーゲン7重量%水溶液150mLを99.5容量%エタノール(和光純薬製、特級)3L凝固浴中に押し出し脱水凝固後、得られたコラーゲン糸を、特開2000−93497に記載の方法に従って積層させコラーゲン不織布を得た。次に、得られたコラーゲン不織布をクリーンベンチ内で風乾させた後に、そのままバキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中にて高真空下(1torr以下)、120℃、24時間の条件で、熱脱水架橋反応を施した。
架橋反応終了後、架橋されたコラーゲン不織布の糸間の隙間を埋めるために、バインダー処理として、コラーゲン1重量%水溶液をコラーゲン不織布に塗り込んだあと、乾燥を行った。塗り込み操作と乾燥操作を3回繰り返すことによって、コラーゲン繊維からなる不織布層を得た。その後、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中にて高真空下(1torr以下)、120℃で12時間加熱し、塗り込んだコラーゲンに熱脱水架橋反応を施した。架橋反応後、コラーゲン膜状物を0.1N水酸化ナトリウム水溶液中に30分間浸して中和処理を行った後、水酸化ナトリウム水溶液中から取出した。コラーゲン繊維からなる不織布層表面に残存した水酸化ナトリウムを蒸留水により洗浄し、クリーンベンチ内で風乾した。
【0045】
(2)コラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層、およびコラーゲンからなるスポンジ層の作製
ヒアルロン酸1重量%水溶液と等量のコラーゲン1重量%水溶液を混合し、コラーゲンとヒアルロン酸との等量混合物250mLを得た。酸性状態にある該混合物を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、直方体状に空間を有する金属製の器(縦11cm、横11cm)の中に充填し、-20℃で一夜凍結した。該凍結物を凍結乾燥機(EYELA社製:FDU-830型)にて減圧下(1torr以下)で約24時間凍結乾燥して、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層を得た。
コラーゲンからなるスポンジ層も同様の手法を用いて、コラーゲン1重量%水溶液250mLから作製した。
【0046】
(3)上記(2)で得られたコラーゲンからなるスポンジ層を圧縮機(井内盛栄堂社製:15tプレス機)にて100kgf/cmの圧力で圧縮したのち、これと上記(1)で得られたコラーゲン繊維からなる不織布層とをコラーゲン1重量%水溶液で接着して二層構造物を得た。上記(2)で得られたコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層をコラーゲンからなるスポンジ層の圧縮操作と同様に圧縮した後、これを該二層構造物のコラーゲン繊維からなる不織布層の上に、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む溶液で接着した。このようにして、コラーゲン繊維からなる不織布層の一方の面にコラーゲンからなるスポンジ層、反対側の面にコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層の3種類の層からなる積層構造を有する癒着防止膜を得た。その後、癒着防止膜のコラーゲンおよびヒアルロン酸を前述の架橋反応処理と同様にバキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中にて高真空下(1torr以下)、110℃で24時間加熱し、熱脱水架橋反応を行った。このようにして、癒着防止層として外層にコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層が、もう一方の外層に細胞の接着・成長する足場、組織再生誘導の促進を担うコラーゲンからなるスポンジ層、中心層に縫合固定に耐えうる強度を維持するためのコラーゲン繊維からなる不織布層の3種類の層を有する厚さ約3mmの癒着防止膜を得た。
【0047】
(実施例2) 癒着防止膜(5層状)の作製
実施例1と同様の手法を用いてコラーゲン繊維からなる不織布層、圧縮されたコラーゲンからなるスポンジ層2枚、圧縮されたコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層2枚を各々作製した。コラーゲンからなるスポンジ層をコラーゲン繊維からなる不織布層の両表面に実施例1同様に接着し、積層構造物を得た。さらに、該積層構造物の両表面にコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層を実施例1同様に接着し、熱脱水架橋処理をバキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中にて高真空下(1torr以下)、110℃、24時間の条件で施した。このようにして、中心に縫合に耐えうる強度を担うコラーゲン繊維からなる不織布層、その両表面に組織の再生・誘導促進を担うコラーゲンからなるスポンジ層、さらに外層に癒着防止能を発揮するコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層を有する合計5層構造からなる厚さ約5mmの癒着防止膜を得た。
【0048】
(実施例3) 癒着防止膜(4層状)の作製
実施例1と同様の手法を用いてコラーゲン繊維からなる不織布層、圧縮されたコラーゲンからなるスポンジ層2枚、および圧縮されたコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層1枚を各々作製した。コラーゲンからなるスポンジ層をコラーゲン繊維からなる不織布層の両面に実施例1と同様に接着し、3層積層構造物を得た。さらに、該積層構造物の一方の面にコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層を実施例1と同様に接着し、熱脱水架橋処理をバキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中にて高真空下(1torr以下)、110℃、24時間の条件で施した。このようにして、中心に縫合に耐えうる強度を担うコラーゲン繊維からなる不織布層、その両表面に組織の再生・誘導促進を担うコラーゲンからなるスポンジ層、該積層構造物の一方の面に、癒着防止能を発揮するコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層を有した、合計4層構造からなる厚さ約4mmの癒着防止膜を得た。
【0049】
(実施例4) スポンジ作製と不織布への貼付
実施例1と同様にコラーゲン繊維からなる不織布層を作製した後、コラーゲン1重量%溶液250mL(溶液A)、およびコラーゲン1重量%溶液とヒアルロン酸1重量%水溶液との等量混合物からなる水溶液250mL(溶液B)を調製し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液で中和処理した。次に、図1のように金属製の平板1の上にコラーゲン繊維からなる不織布層2を置き、その上に液漏れ防止用のポリフッ化エチレン系繊維ゴム製パッキン3をのせて、上部に開口部41を有する形状の金属製の充填容器4を被せ、しっかりと固定した(図1)。続いて充填容器4(縦15cm、横15cm)の最上部の開口部41から充填容器4中に溶液Aを充填し、-20℃で12時間凍結した。該凍結物を凍結乾燥機(EYELA社製:FDU-830型)にて減圧下(1torr以下)で約24時間凍結乾燥して、コラーゲン繊維からなる不織布層の上にコラーゲンからなるスポンジ層を作製・接着した二層構造物を得た。該二層構造物を圧縮機(井内盛栄堂社製:15tプレス機)にて100kgf/cmの圧力で圧縮した。次に溶液Aを充填した側とは反対側の不織布層に同様にして溶液Bを充填し溶液Aと同様にスポンジ層を作製・接着し、圧縮した。このようにして、スポンジ層の作製と不織布層への接着を同時に行い、コラーゲン繊維からなる不織布層の上にコラーゲンからなるスポンジ層、コラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層を有した3層構造物が得られた。
【0050】
(実施例5) 癒着防止膜(5層状)の作製
(1)架橋反応後、コラーゲン繊維からなる不織布層を7.5%炭酸水素ナトリウム水溶液中に30分浸して中和処理を行った後、炭酸水素ナトリウム水溶液中から取出し、不織布層表面に残存した炭酸水素ナトリウムを蒸留水により洗浄し、クリーンベンチ内で風乾する操作以外は、実施例1と同様にしてコラーゲン繊維からなる不織布層を得た。
(2)別途、実施例1と同様にしてコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むスポンジ状の被覆層、およびコラーゲンからなるスポンジ層を各々2枚作製した。
(3)次にコラーゲン不織布からなる膜状物の両面に該スポンジ状の被覆層を実施例1と同様の手法を用いて接着し、熱脱水架橋を施すことで、中心に縫合に耐えうる強度を担うコラーゲン繊維からなる不織布層、その両表面に組織の再生・誘導促進を担うコラーゲンからなるスポンジ層、さらに外層に癒着防止能を発揮するコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層を有する合計5層構造からなる厚さ約5mmの癒着防止膜を得た。
【0051】
(実施例6) 癒着防止膜(5層状)の作製
(1)実施例5と同様にして、コラーゲン繊維からなる不織布層を作製した。(2)別途、以下の手順でコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層、およびコラーゲンからなるスポンジ層を各々2枚作製した。
コラーゲン1重量%水溶液125mLとヒアルロン酸1重量%水溶液125mLを調製し、混合した後に1N HNOを用いてpH1.5に調整した。混合物を−20℃にて24時間凍結し、室温にて融解することで、コラーゲンとヒアルロン酸の混合物からなるゲル状物を得た。得られたゲル状物をリン酸緩衝液中に30分間浸して中和し、次に滅菌蒸留水中で洗浄を30分間行い、洗浄を合計3回行った。中和されたゲル状物を実施例1と同様の手順にて凍結乾燥をすることで、コラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層を得た。
コラーゲンからなるスポンジ層は実施例1と同様の手法を用いて、コラーゲン1重量%水溶液250mLから作製した。
【0052】
(3)その他の操作は実施例と同様にして行い、中心に縫合に耐えうる強度を担うコラーゲン繊維からなる不織布層、その両表面に組織の再生・誘導促進を担うコラーゲンからなるスポンジ層、さらに外層に癒着防止能を発揮するコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むスポンジ状の被覆層を有する合計5層構造からなる厚さ約5mmの癒着防止膜を得た。
【0053】
(実施例7) 癒着防止膜(5層状)の作製
(1)実施例5と同様にして、コラーゲン繊維からなる不織布層を作製した。
【0054】
(2)別途、コラーゲンからなるスポンジ層は実施例1と同様の手法を用いて2枚作製した。
また、以下の手順でコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むフィルム状の被覆層を作製した。
ヒアルロン酸1重量%水溶液と等量のコラーゲン1重量%水溶液を混合し、ヒアルロン酸とコラーゲンとの等量混合物約125mLを得た。酸性状態にある該混合物を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、上部に開口部を有する充填容器中に充填しクリーンベンチ内で風乾することで、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むフィルム状の被覆層を1枚作製した。同様にして、もう1枚のコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むフィルム状の被覆層を作成した。
【0055】
(3)コラーゲンからなるスポンジ層を圧縮機(井内盛栄堂社製:15tプレス機)にて100kgf/cmの圧力で圧縮したのち、これを上記(1)で得られたコラーゲン繊維からなる不織布層の両面にコラーゲン1重量%水溶液で接着して三層構造物を得た。上記(2)で得られたコラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含むフィルム状の被覆層を該三層構造物の外層に、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む溶液で接着した。その後、各層および接着に用いたコラーゲンおよびコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を前述の架橋反応処理と同様にバキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中にて高真空下(1torr以下)、110℃で24時間加熱し、熱脱水架橋反応を行った。このようにして、癒着防止層として最外層にコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含むフィルム状の被覆層、その内層に細胞の接着・成長する足場、組織再生誘導の促進を担うコラーゲンからなるスポンジ層が圧縮された層、中心層に縫合固定に耐えうる強度を維持するためのコラーゲン繊維からなる不織布層の3種類の層を有する厚さ約5mmの5層積層構造からなる癒着防止膜を得た。
【0056】
(実験例1) 耐分解性試験
試料1〜3としてコラーゲンとヒアルロン酸の混合比を変えた(3:7、5:5、7:3)スポンジ状の被覆層を有する癒着防止膜を実施例1と同様に作製した。試料は1cm×1cm平方に切断して試験に使用した。比較試料としてヒアルロン酸からなるスポンジ状の被覆層を有する癒着防止膜を作製し、試料1〜3同様に切断して試験に使用した。各々の試料にはバキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中にて高真空下(1torr以下)、110℃、24時間の条件で、熱脱水架橋を施した。各試料を注射用蒸留水10mL中で37℃恒温漕にて定温保存し、経時的変化を30分、24時間、3日後の3点で被覆層の面積を測定し、その減少率により分解の度合いを観察し、耐分解性を表1に示す評価基準によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0057】
【表1】
耐分解性スコアリング
Figure 0004345296
【0058】
【表2】
耐分解性試験
Figure 0004345296
【0059】
表2から明らかなように、比較試料(ヒアルロン酸単独)は1日後には完全溶解していた。実際には30分〜1時間以内に完全溶解してしまった。また、ヒアルロン酸の比率が高い試料3は、3日後には完全分解していた。試料1、2は3日後にもその形状を維持しつつ残存している事が観察された。また、3日後の試料2については用手的に調べたところ、ヒアルロン酸特有の粘性が保持されていることが確認できた。このことから、ヒアルロン酸とコラーゲンを混合することで、飛躍的に耐分解性が向上することが確認された。
【0060】
(実験例2) 埋植試験
実施例1で得られた癒着防止膜を、ウサギ(n=8)の背部筋肉内に埋植して、その組織反応を肉眼と光学顕微鏡により観察し、生体適合性を評価した。埋植試料は、実施例1で得られた癒着防止膜を1.5mm×10mmの大きさに切断して使用した。また、比較試料としては、高密度ポリエチレンプレートを試料と同じ大きさに切断して使用した。なお、比較試料はEOG滅菌を行って使用した。試料膜は25kGyのγ線を照射して滅菌した後に埋植試験に使用した。埋植はまず、ウサギ(体重約2.5kg〜3.0kg)に通常の吸入麻酔を行い、次に無菌的にウサギ背部脊髄を挟んで左に比較試料、右に間隔を置いて、試料二種類を各々埋植した。埋植方法は、滅菌した15ゲージの注射針を用いて皮膚表面に対して約30゜の角度より刺入して、注射針内に充填しておいた試料膜および比較試料を押し出して、ウサギ筋肉内に埋植した。この後、埋植1週間後の4羽、さらに4週間後に4羽を観察対象として使用した。各観察時間において、ウサギ4羽のうち2羽については、麻酔下で試料埋植部位を切開し、埋植部分と周辺組織の観察を炎症反応を中心に目視による観察を行った。
【0061】
これらの観察結果より、いずれの観察時間において、また、全てのウサギにおいて、試料膜は比較試料に対して顕著な炎症反応等を示さず、本発明により得られる癒着防止膜の生体適合性が良好であることが分かった。なお、埋植後4週間経過した場合においては、試料膜の一部が分解・吸収されていることが見受けられた。
【0062】
(実験例3) 癒着防止作用試験
実施例1により得られた、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物からなるスポンジ状の被覆層を有する癒着防止膜(以下試料1)を、ウサギ(n=8)の腹壁欠損部(1cm平方)および腸漿膜をメスで剥離した部分に埋植・縫合固定した。埋植後1週間後、6週間後に開腹して癒着防止膜の残存量から耐分解性、癒着の程度から癒着防止効果を観察した。この時、欠損部のみの箇所(以下比較1)、ヒアルロン酸スポンジからなる被覆層を有する癒着防止膜(以下比較2)を比較試料として比較評価を行った。
【0063】
試料1と比較2を比較した結果、1週間後における残存量に関しては、試料1では被覆層が残存していたが、比較2ではヒアルロン酸からなる被覆層は全て分解・吸収されてしまっていた。6週間後では、試料1に関しても被覆層だけでなく癒着防止膜自体が分解・吸収されていた。このことからも、コラーゲンとヒアルロン酸を混合することで耐分解性が向上したことが判明した。すなわち、癒着防止効果の持続性が向上することは明らかである。
【0064】
また癒着防止効果については、表3に示す判断基準に基づき評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0065】
【表3】
癒着の程度判別基準
Figure 0004345296
【0066】
【表4】
癒着防止効果の評価結果
Figure 0004345296
【0067】
表4から明らかなように、6週間後において試料1では等級分類2以上の癒着を認めた例が無かったのに対して、比較1は等級4以上、比較2では等級3以上の癒着を認めた。以上より、本発明の癒着防止膜が有効な癒着防止効果を有し、かつ高い耐分解性を有することが明らかとなった。
以上のことから、本発明の癒着防止膜はその表面にコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を有することにより、癒着防止効果、耐分解性において優れることは明白である。
【0068】
【本発明の効果】
本発明の癒着防止膜は、縫合強度、生体適合性、癒着防止性能を合わせ持つ。特に、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む癒着防止層は高い耐分解性を有し、癒着防止効果の継続時間を飛躍的に延ばすものである。よって、手術などにおける生体内の損傷部位もしくは出血部位、またはそれらと正常部位との癒着を防止することができる縫合可能な人工生体膜として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例4の説明図である。
【符号の説明】
1. 平板
2. コラーゲン繊維からなる不織布層
3. パッキン
4. 充填容器
41.開口部

Claims (11)

  1. コラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層とを有する積層膜状物の表面に、コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層を有してなり、コラーゲンとヒアルロン酸の混合比率(重量比)は3:7から7:3の範囲である癒着防止膜。
  2. コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層がスポンジ状もしくはフィルム状である請求項1記載の癒着防止膜。
  3. コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層がコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を架橋反応に付してなる層である請求項1記載の癒着防止膜。
  4. コラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む被覆層の厚さが50μm〜20mmである請求項1記載の癒着防止膜。
  5. 癒着防止膜を構成するコラーゲンが、酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲンまたは中性可溶化コラーゲンである請求項1記載の癒着防止膜。
  6. 癒着防止膜を構成するコラーゲンの一部もしくは全部が架橋されている請求項1記載の癒着防止膜。
  7. コラーゲン繊維からなる不織布層が(1)コラーゲンまたは(2)コラーゲンとヒアルロン酸との混合物でコラーゲン繊維が互いに接合された不織布の層である請求項1記載の癒着防止膜。
  8. コラーゲン繊維からなる不織布層の厚さが50μm〜10mmであり、コラーゲンからなるスポンジ層の厚さが50μm〜20mmであり、コラーゲンとヒアルロン酸の混合物を含む被覆層の厚さが50μm〜20mmである請求項1記載の癒着防止膜。
  9. コラーゲン繊維からなる不織布層が、コラーゲン繊維からなる不織布を1〜6枚積層させたものである、請求項1記載の癒着防止膜。
  10. コラーゲン繊維の直径が10〜1,000μm、コラーゲン繊維からなる不織布層の嵩密度が×10−4〜50g/cmである請求項1記載の癒着防止膜。
  11. 膜全体の厚さが150μm〜50mmである請求項1記載の癒着防止膜。
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