JP4569543B2 - 膨潤可能な棒状体を備えた組織再生器具の前駆体 - Google Patents

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Description

本発明は、組織再生器具の前駆体及び組織再生器具の生産方法に関する。
事故、災害又は疾患によりヒトの神経及び腱などの組織が損傷し、自己の回復力により治癒できない場合、患者の知覚、感覚及び運動能力などに障害が発生する。このような患者に対して、当該損傷部を切除した後、患者の人体における他の部位から組織を採取し、切除部分に移植する治療が行われる場合がある。このような手術を自己移植というが、自己移植は損傷を受けていない他の健常な組織を採取するので、その部位には知覚、感覚及び運動能力などの障害を発生する場合がある。
そこで、切除部位に細胞増殖の足場を備えた器具を埋植し、組織端から細胞を足場に沿って成長させることにより、組織を再生させ、その機能を回復させる治療法について種々の研究がなされている。世にいう再生医療の一環としての研究であり、係る器具はスキャフォールドと呼ばれるものである。係る器具の主な構成としては、外部からの他の細胞の侵入を防止する筒状体と、当該筒状体の内腔に挿入し、神経細胞を長手方向に成長するように誘導するための誘導手段を備えている。
スキャフォールドを用いる再生医療の研究において、当業者は特殊な細胞の機能を頼りに、安易に器具に薬剤又は細胞を組み込むことを考えてしまう。しかしながら、このような薬剤又は細胞を組みこんだ器具は、単純に器具の原価が高価になるだけではく、器具の保存及び安全管理の面で余分な労力を要する。また、医師に薬剤又は細胞の取り扱いの知識及び技術を要求する。このため、当該知識及び技術のない医師は、これらの器具を取り扱うことができない。
例えば、特許文献1の神経再生チューブは、コラーゲン、ラミニンなどを含むゲルを使用しているため、非常に取り扱いにくい。何故ならば、ゲルが流動性を備えており形状が安定しないためである。また、ゲル中の水分が、コラーゲン体に浸透するため、いくらコラーゲン体に架橋処理を施したとしてもコラーゲン体は分解してしまう。これでは、器具を長期保存することができない。
また、特許文献2の神経再生チューブには、シュワン細胞を播種することが開示されているが、細胞を取り扱う知識及び技術を持つ医師でなければ取り扱うことができない。
本発明者らは、上述した再生医療の現状を鑑み、細胞を取り扱わない再生器具の開発に鋭意検討を行った。その結果、コラーゲン製の組織再生器具を発明するに至っている(特許文献3)。かかる器具は、全て生体内分解吸収性の材料であるコラーゲンで構成され、しかも、架橋剤などの化合物を使用していないために、生体内で安全に分解吸収される。さらに、驚くべきことにこの器具は、特殊な細胞を組み込むことなく組織が再生する。つまり、薬剤又は細胞を取り扱う必要がないため、メーカーは安価でこの器具を製造することができる。さらに、製造された器具は長期にわたって分解・劣化することがない。医師は、細胞を取り扱う技術を身につけることなく、切開及び縫合などの一般的な外科手術の技術を持つ医師ならば誰でも容易にこの器具を用いて治療を行うことができる。
これらの器具の開発における次の課題は、取り扱い性の向上による付加価値の向上である。しかも、上述したように薬剤又は細胞を器具に組み込むというものではなく、器具の取り扱い性の向上である。ここで医師が最も取り扱いが容易となる形状として、図1に示すようなコラーゲン筒状体の両端内腔に組織端を挿入するための空間を供えた器具が考えられる。
例えば、特許文献1及び2のように、器具の両端が平滑であると、医師は端−端縫合という極めて高度な技術の縫合にて器具と組織を縫合しなければならない。しかも、係る器具と組織を縫合しても、器具の端面と組織端面が当接しているだけであるため、組織の細胞が器具の外壁へ成長してしまうおそれがある。
一方で、あらかじめ両端内腔に組織端を挿入するための空間を供えた器具を製造しても、再生すべき組織の長さは一定ではないため、ごく限られた組織の再生にしか使用できなくなってしまう。このため、係る器具は再生すべき組織の長さに合わせて切断しなければならないが、切断した面はもちろん平滑となってしまう。
本発明者らは、少なくとも片端に組織端を挿入する空間部を有する神経再生誘導管を開示している(特許文献4)。係る器具は、再生すべき神経の長さに合わせて切断される。そして、中枢神経側の神経端を空間部に挿入することにより埋植することができる。しかしながら、それでも末梢神経側は平滑端を形成してしまう。末梢神経から細胞は成長しないので、器具の外壁に細胞が成長するという弊害は防止できるものの、神経と器具との縫合は端−端縫合を行うことには変わりない。
また、一般的に、係る器具は埋植前に生理食塩水などの軟化用溶液で膨潤させることにより、器具の取り扱い性を向上させることがある。しかしながら、特許文献1〜4の器具は、筒状体の内腔に誘導手段が満遍なく敷き詰められているため、生理食塩水などの軟化用溶媒の浸透速度が十分でなく、飽和膨潤状態に至るまでに時間を要する。さらに、膨潤により誘導手段の外径が筒状体の内径よりも大きくなり、筒状体が変形又は破壊されることがある。また、変形又は破壊しなかった場合であっても、筒状体内壁と誘導手段との間に高い摩擦が生じ、上述の両端内腔に組織端を挿入するための空間を供えた器具を生産することが困難となる。
加えて、誘導手段を筒状体の内腔に敷き詰めた場合、器具の製造段階において、筒状体の内腔に誘導手段を挿入する作業が繁雑となるという問題もある。特に特許文献2の器具の誘導手段は複数本の繊維束であり、その端部が整列していない。このため、筒状体の内腔に誘導手段を挿入する作業の際、繊維束の一部が筒状体の端部に引っかかってしまい、その作業は煩雑である。
国際公開公報1998/022155号パンフレット 特開2005−143979号公報 特開2002−320630号公報 特開2004−208808号公報
本発明の課題は、組織再生器具を生産するための前駆体の製造、及び、前駆体から組織再生器具の製造をより簡便にすることである。
本発明者らは鋭意検討した結果、組織再生器具を生体内に埋植する際、当該器具の取り扱い性を向上させるために、生理食塩水などの軟化用溶媒で器具を浸漬・膨潤させてから使用すること、及び、生理食塩水などの軟化用溶媒による器具の膨潤特性に着目し、本発明を完成するに至った。
本発明は、
[1] 組織を再生する組織再生器具を生産するための前駆体であって、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
前記棒状体は、
非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなる
ことを特徴とする組織再生器具の前駆体、
[2] 前記軟化用溶媒が、生理食塩水である[1]に記載の組織再生器具の前駆体、
[3] 前記棒状体が、略円柱形状である[1]に記載の組織再生器具の前駆体、
[4] 前記棒状体は、略平行に配列した複数本の生分解性材料からなる糸状物の束であって、隣接する糸状物の少なくとも一部が互いに接着したものである[1]に記載の組織再生器具の前駆体、
[5] 前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記筒状体の片端と前記棒状体の片端を揃えた[1]に記載の組織再生器具の前駆体、
[6] 前記固定手段は、前記筒状体の切除領域の少なくとも一部の内壁に設けることを特徴とする[1]に記載の組織再生器具の前駆体、
[7] 前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記筒状体の切除領域側の片端と前記棒状体の片端を揃えた[4]に記載の組織再生器具の前駆体、
[8] 前記固定手段が、親水性高分子である[1]に記載の組織再生器具の前駆体、
[9] 前記固定手段が、接着剤である[1]に記載の組織再生器具の前駆体、
[10] 前記接着剤が、生分解性材料である[9]に記載の組織再生器具の前駆体、
[11] 組織再生器具の前駆体から線状の組織を再生するための組織再生器具を生産する方法であって、
前記組織再生器具の前駆体は、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
前記棒状体は、
非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなるものであり、
(1)軟化用溶媒に前記組織再生器具の前駆体を浸漬し、前記前駆体を膨潤する工程;
(2)前記固定手段を解除し、前記棒状体を前記筒状体内腔において摺動可能にする工程;
(3)前記前駆体の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前記前駆体の一部を切除する工程;
(4)前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、前記棒状体の一部を切除する工程;及び
(5)前記棒状体を前記筒状体中央に配置することにより、前記筒状体の両端内腔に組織挿入部を形成する工程
を含む組織再生器具の生産方法、
[12] 前記前駆体の棒状体の長手方向の長さが、前記前駆体の筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記前駆体の筒状体の片端と前記前駆体の棒状体の片端を揃えたものであって、
前記(3)及び(4)の工程を同時に実施することを特徴とする[11]に記載の組織再生誘導器具の生産方法、
[13] 前記軟化用溶媒が生理食塩水であり、前記前駆体の固定手段が親水性高分子であって、
前記(1)及び(2)の工程を同時に実施することを特徴とする[12]に記載の組織再生誘導器具の生産方法、
[14] 組織再生器具の前駆体から生産された組織再生器具であって、
前記組織再生器具の前駆体は、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
前記棒状体は、
非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなるものであり、
(1)軟化用溶媒に前記組織再生器具の前駆体を浸漬し、前記前駆体を膨潤する工程;
(2)前記固定手段を解除し、前記棒状体を前記筒状体内腔において摺動可能にする工程;
(3)前記前駆体の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前記前駆体の一部を切除する工程;
(4)前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、前記棒状体の一部を切除する工程;及び
(5)前記棒状体を前記筒状体中央に配置することにより、前記筒状体の両端内腔に組織挿入部を形成する工程
により生産された組織再生器具
に関する。
本発明の組織再生器具の前駆体は、容易に両端に組織を挿入するための空間を備えた組織再生器具に生産できる。このため、医師は特別な技術を必要とすることなく係る器具を容易に埋植することができる。
以下、本発明について図面を用いて説明する。図1は本発明の最終的な目的である両端に組織挿入部を備えた組織再生器具Aを示す図である。
「組織再生器具」とは、長手方向を有し、生体内に埋植し、切り離された組織端同士をつなぎ合わせるための器具をいい、その両端は損傷した組織端を挿入するための組織挿入部4を形成する。また、埋植後、損傷した組織は器具の長手方向に沿って再生するが、器具自体は生体内で分解・吸収される再生医療分野における器具をいう。
本発明における組織としては、人体のもつ再生能力により再生しうる組織であれば特に限定されるものではない。例えば、神経、腱、靱帯、血管及び食道などが挙げられる。特に神経、腱及び靭帯の再生に用いることが好適である。
「組織挿入部」とは、組織再生器具Aと組織端とを結合するために組織再生器具Aの両端に形成された空間をいう。組織挿入部4の長手方向の長さは、再生する組織の種類により当業者が適宜決定できるものであるため、特に限定されるものではない。例えば、神経の場合、神経の挿入を容易とする観点から、約2〜40mmであり、好ましくは約2〜10mmである。また、腱の場合、腱の挿入を容易とする観点から、約2〜60mmであり、好ましくは約5〜30mmである。さらに、靭帯の場合、靭帯の挿入を容易とする観点から、約2〜60mmであり、好ましくは約5〜30mmである。組織挿入部4を備えることにより、組織再生器具Aと組織端とを結合において特別な縫合技術を必要としなくとも容易に結合を行うことができ、組織の細胞が周辺組織への成長を防止することができる。
本発明は、上述した図1の組織再生器具Aを生産するための前駆体Bを提供する。図2は、本発明の組織再生器具の前駆体Bの一実施態様を示す図である。組織再生器具の前駆体Bは、長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体1と、筒状体1の内腔に具備し、生分解性材料からなる棒状体21、及び、筒状体1に棒状体21を固定する固定手段31,32を備える。
「組織再生器具の前駆体」とは、医師が患者の組織の損傷状態に応じて、目的の組織再生器具Aを生産するためのものをいう。本発明では、この組織再生器具の前駆体Bを単に「前駆体」と略す場合もある。前駆体Bから組織再生器具Aを生産する方法は、例えば、損傷した組織の長さの計測、器具の長さの計測、器具の切断、溶媒による器具の膨潤及び器具の変形などの工程により生産することができる。これらの工程については後述する。
また、前駆体Bから組織再生器具Aを生産する際に、当該前駆体Bは、その取り扱い性を向上させるために、軟化用溶媒にて浸漬・膨潤する。「非膨潤状態」とは、当該溶液にて浸漬・膨潤する工程前の状態をいい、「飽和膨潤状態」とは当該溶液にて浸漬し、膨潤が飽和となった状態をいう。本発明における浸漬・膨潤の条件は、大気圧下、湿度60%、25〜40℃の軟化用溶媒によるものとする。
「軟化用溶媒」とは、組織再生器具の前駆体Bを軟化させる溶液をいう。主に生理食塩水が使用されるが、これに限定されるものではない。「生理食塩水」とは、人の体液とほぼ等張である0.9重量%塩化ナトリウム水溶液をいう。膨潤が飽和となるまでの時間は、前駆体Bの材料に依存する。飽和膨潤状態と前駆体Bの材料との関係については後述する。

<筒状体>
「筒状体」とは、組織の細胞が周辺組織へ成長することを防止する構造のものをいう。筒状体1の形状は、例えば、円筒形(チューブ形状)及び角筒形(三角形、四角形、五角形及び六角形)などが挙げられる。特に、製造が容易である観点から、円筒形(チューブ形状)が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
筒状体1の長手方向の長さは、患者又は患畜の生物学的分類、体型及び組織の種類に依存するため、特に限定されるものではないが、当業者が想定しうる切除された組織の長さよりも十分に長いことが好ましい。当業者が想定しうる切除された組織の長さとは、例えば、組織がヒトの正中神経である場合は、約1〜300mmである。また、組織がヒトの坐骨神経である場合は、約1〜500mmである。
したがって、例えば、組織がヒトの神経である場合、筒状体1の長手方向の長さは、あらゆるヒトの神経の再生に適用できる観点から、約5mm以上であればよい。原材料の使用量による製造コストが高くならないようにする観点から、好ましくは約10〜200mmである。また、例えば、組織がヒトの靭帯である場合、筒状体の長手方向の長さは、約5mm以上であればよく、好ましくは約10〜100mmである。
一方、筒状体1の内径に関しても再生する組織によって当業者が適宜設定できるものであり、特に限定されるものではない。例えば、組織が神経である場合は、取り扱い頻度が最も高い可能性がある観点から、約1〜20mm、好ましくは約1〜10mmである。また、例えば、組織がヒトの腱である場合は、約1〜30mm、好ましくは約1〜20mmである。さらに、例えば、組織がヒトの靭帯である場合は、約1〜20mmで、好ましくは約1〜10mmである。
筒状体1は、再生医療用に用いるものであることから、生分解性材料からなる。生分解性材料とは、生体内に埋植した場合、当該材料自体は分解、好ましくは分解後吸収されるものをいう。例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−アミノカプロラクトン、コラーゲン及びキトサンなどが挙げられる。これらの材料の中でも炎症反応が生じることがなく、架橋処理などにより分解吸収を制御できる観点から、コラーゲンが好ましい。
「コラーゲン」とは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分をいい、分子の主鎖構造が、(Gly−X−Y)、(Gly−Pro−X)及び(Gly−Pro−Hyp)で構成されるものをいう。ここで、X及びYは、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリン以外の天然若しくは非天然アミノ酸である。
また、コラーゲンのタイプについては、I型、II型及びIII型などが挙げられる。特に、取り扱いが容易である観点から、I型及びIII型が好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明におけるコラーゲンは、熱変性コラーゲンであるゼラチンを含むが、細胞接着性の観点からコラーゲンであることが好ましい。
コラーゲンは、生体組織からの抽出、化学的ポリペプチド合成及び組み替えDNA法などにより製造される。本発明出願当時では、製造コストの観点から、生体組織からの抽出により得られたものが好ましい。また、生体組織の由来は、例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、鳥類、魚類及びヒトなどが挙げられる。また、前記生体組織としては、上記に列挙した動物の皮膚、腱、骨、軟骨及び臓器などが挙げられる。これらの選択は当業者が適宜行うことができるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
さらに、コラーゲンは、工業的な製造を容易とする観点から、溶媒に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンを選択することが好ましい。例えば、酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン及び中性可溶化コラーゲンなどの可溶化コラーゲンが挙げられる。特に取り扱いが容易である観点から、酸可溶化コラーゲンが好ましい。さらに、生体内埋殖時の安全性の観点から、抗原決定基であるテロペプチドの除去処理が施されているアテロコラーゲンであることが好ましい。
ここで筒状体1の製造について説明するが、製造における条件などは、当業者が適宜設定できるものであるため、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
筒状体1を製造する方法としては、例えば、(i) 射出成形、圧縮成形並びに押出成形などの工業的製法により直接筒状体1に成形する方法、(ii) フィルム、織布及び不織布などの膜状物質を製造し、管状に成形する方法、及び、(iii) 紡糸法などにより単糸を製造し、管状に成形する方法などが挙げられる。これらの製造方法は、筒状体1の原材料により当業者が適宜設定できる。例えば、原材料がコラーゲンである場合は、製造が容易であり、かつ製造コストが安価である観点から、(iii) 紡糸法などにより単糸を製造し、管状に成形する方法が好ましい。
単糸は、例えば、湿式紡糸法、乾式紡糸法及び溶融紡糸法などにより製造されたものが挙げられる。例えば、原材料がコラーゲンである場合は、製造が容易であり、製造コストが安価である観点から、湿式紡糸法で製造されたものが好ましい。
湿式紡糸法は、例えば、生体分解性高分子の水溶液を、ギアポンプ、ディスペンサー及び各種押し出し装置などを用いて、凝固浴槽に吐出することにより行われる。均一な紡糸を行うためには脈動が少なく安定して溶液を定量吐出する観点から、ディスペンサーが好ましい。また、吐出するノズルの口径は、単糸の強度が高くなる観点から、約10〜200μm、好ましくは約50〜150μmである。さらに水溶液の濃度は、単糸の強度の観点から、約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%である。
湿式紡糸で用いる凝固浴の溶媒は、生分解性高分子を凝固させる溶媒、懸濁液、乳濁液及び溶液であれば特に限定されるものではない。例えば、糸状物の原材料としてコラーゲンを用いる場合、無機塩類水溶液、無機塩類含有有機溶媒、アルコール類及びケトン類などが挙げられる。無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムなどの水溶液が挙げられる。また、これらの無機塩類をアルコール類又はアセトン類に溶解若しくは分散させた液を用いてもよい。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール及びエチレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としてはアセトン及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、紡糸した糸の強度が高くなる観点から、エタノール、及び、塩化ナトリウムのエタノール分散溶液を用いることが好ましい。
凝固浴槽に吐出された生分解性材料の糸は、凝固浴槽から引き上げたのち、乾燥工程を経て、円柱体に巻きつけることにより筒状体1として成形される。ここで、乾燥工程はコラーゲンが熱変性せず、単糸の周囲に付着した凝固浴槽の液滴を除去し、単糸が破断しない程度の条件で行う。この際、単糸の内部は多少の溶媒が残存していることが好ましい。これは、棒状に巻き取られた後、この残存した溶媒が単糸の外部へと染み出ることにより、単糸の一部が再溶解され、隣接する単糸同士が接着するからである。このような隣接する単糸同士が接着した状態で乾燥することにより、さらに強度が向上した筒状体1を形成することができる。以上の要件を満足するような乾燥方法としては、例えば、コラーゲン水溶液をエタノールの凝固浴槽に吐出して紡糸する場合、紡糸速度(巻き速度又は引き上げ速度)約10〜10,000m/min、湿度約50%以下、温度43℃以下の条件で、空気を送風乾燥する方法が挙げられる。
また、筒状体1の製造方法として、単糸を円柱体に何重にも巻きつけることにより複数層に積層する方法が挙げられる。この時、少なくとも1層の単糸の巻き密度を、他の層の単糸の巻き密度と異なるようにすることによりさらに強度は向上する。本発明における巻き密度とは、筒状体1の長手軸方向の単位長さ当りの巻き回数をいう。例えば、少なくとも1層の単糸の巻き密度は10回/cm未満とし、他の層の単糸の巻き密度を10〜30回/cmとすることが好ましい。詳細は、特開2004−073221号公報の開示内容を参照されたい。
また、筒状体1の側壁に生分解性材料溶液を塗布、乾燥させることによっても、筒状体1の強度は向上する。この処理に用いる生分解性材料は、筒状体1の材料との接着性が向上する観点から、筒状体1の材料と同じ材料であることが好ましい。また、その濃度は、例えば生分解性高分子がコラーゲンである場合、溶液の取り扱いが容易となる観点から、約0.1〜20%(w/w)、好ましくは約1〜10%(w/w)である。
また、筒状体1は必要によりさらに架橋処理を施すことが好ましい。この架橋処理により、前駆体から生産された組織再生器具Aの生体内における分解時間を制御することができる。架橋方法としては、架橋剤による化学的架橋、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射及び熱脱水架橋などが挙げられる。特に、生体内に埋殖しても安全である観点から、熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋の条件は、架橋温度が約100〜140度、架橋時間が6〜72時間である。特に架橋効率及び熱分解を抑える観点から、好ましくは架橋温度が約110〜130度、架橋時間が12〜48時間である。
<コラーゲン棒状体>
筒状体1の内腔には、非膨潤状態の棒状体21を備える。「棒状体」とは、損傷した組織の細胞が、長手方向への成長を誘導する足場となるものをいう。その形態は、例えば、略平行に配列した複数本の生分解性材料からなる糸状物の束からなり、外観は棒のような形状である。「繊維束」とは、複数本の生分解性材料からなる糸状物から構成されたものをいい、全ての糸状物が筒状体1の長手方向に対して略平行に配列し、隣接する糸状物が互いに接着したものをいう。また、「糸状物」とは、単糸及び縒糸の総称をいう。特に製造コストが低い観点から、単糸であることが好ましい。単糸は、上述した筒状体1を構成する単糸と同様の製法で製造すればよい。
非膨潤状態の棒状体21の長手方向に対して直交する占有断面積は、筒状体1の内腔断面積よりも小さい。例えば、筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、棒状体21の長手方向と直交する占有断面積の比率が5〜10となるようにする。よって、繊維束の材料の量が必要最低限の量となり、材料のコストを抑えることができる。「占有断面積」とは、棒状体の長手方向と直交する面であって、当該棒状体を縁どる最外周の線によって囲まれた面の面積をいい、当該面中における空隙は考慮しない。例えば、本発明の棒状体21が繊維束である場合、当該繊維束を構成する複数の糸状物の間には必ず空隙が生じる。最も密な状態である六方最密充填であったとしても、繊維束を構成する複数の糸状物の間には必ず空隙が生じることは明らかである。しかしながら、「占有断面積」とはあくまで繊維束の外周の線により囲まれた面の面積をいい、糸状物間の空隙は考慮しないものとして扱う。
また、棒状体21の長手方向に対して直交する占有断面積は、筒状体1の内腔断面積よりも小さいということは、言い換えると、棒状体21が筒状体1の内壁に局在している状態ともいえる。したがって、棒状体21の占有断面積が、筒状体1の内腔断面積よりも小さいため、当該棒状体21を筒状体1の内腔に挿入する作業が容易となる。また、棒状体21を挿入した後の筒状体1には長手方向を有する空間が存在するため、後述する膨潤作業では、軟化用溶媒が筒状体の内部にまで十分に浸透することができ、均一に棒状体21を膨潤させることができる。しかも、軟化用溶媒の前駆体Bへの浸透が十分に早いため、手術現場における膨潤作業の時間を短縮することができる。本発明において、上記「長手方向を有する空間」を「液体流通路」と称す場合もある。
また、後述する膨潤により飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向に対して直行する平面における占有断面積は、筒状体1の内腔断面積と略同じとなる(図4)。略同じとは、筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、長手方向に対して直行する平面の占有断面積の比率が90〜100となる程度をいう。言い換えれば、飽和膨潤状態の棒状体22が筒状体1の内腔から脱落しない程度に、筒状体1の内腔と接触している状態をいう。さらに言い換えると、棒状体21の膨潤により液体流通路5の占有体積が極端に小さくなる、好ましくは、液体流通路5自体が存在しなくなる状態をいう。占有断面積の意味は上記と同様に扱う。また、当該比率は、棒状体21を筒状体1の内腔に挿入せず、そのまま生理食塩水などの軟化用溶媒により膨潤した時の値である。つまり、飽和膨潤状態の棒状体22の占有断面積は、筒状体1の内腔断面積と略同じであるため、筒状体1が変形又は破壊されることがない。さらに、筒状体1の内壁と、飽和膨潤状態の棒状体22との間に適度な濡れと摩擦抵抗がある状態で、飽和膨潤状態の棒状体22は筒状体1の内腔を摺動することができる。
ここで、棒状体2の材料によっては、軟化溶媒に膨潤させる時の温度(約25℃)における飽和膨潤状態の棒状体22の占有体積と、生体内に埋植した時の温度(約37℃)における飽和膨潤状態の棒状体22の占有体積が異なる場合がある。このような場合は、例えば、筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、長手方向に対して直行する平面の占有断面積の比率を、軟化溶媒に膨潤させる時の温度(約25℃)において90〜95、生体内に埋植した時の温度(約37℃)において96〜100となるように、棒状体2の膨潤特性を適宜設定すればよい。
棒状体2の外観形状は、特に限定されるものではなく、例えば、四角柱、三角柱及び円柱などの形状が挙げられる。しかし、飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向に対して直行する平面における占有断面積は、筒状体1の内腔断面積と略同じとすることを考慮すると、筒状体1の形状と同じ形状であることが好ましい。例えば、筒状体1が円筒形状である場合は、棒状体21も円柱形状であればよい。
繊維束を形成する方法としては、例えば、湿式紡糸後、少なくとも向かい合う2辺が平行な四角形の板状体又はフレームに、単糸をこの二辺と略直行するように複数回巻き取り、巻き取られた単糸を二辺付近で切断することにより得る方法が挙げられる。板状体及びフレームの巻き速度は、上述した単糸から筒状体1を製造する条件と同様とすればよい。そして、繊維束の長手方向に対して直交する占有断面積の比率は、筒状体1の内腔断面積を100とした場合、約5〜10となるように複数本の糸状物を束ねることにより繊維束を得る。繊維束の長手方向に対して直交する占有断面積の比率が、筒状体1の内腔断面積を100とした場合、約5〜10となるようにするためには、例えば、内径約3.0mmの筒状体に対して外径約50μmの単糸を約200〜250本束ねることにより達成される。筒状体1の内腔に挿入した単糸は、飽和膨潤状態にて外径が約200μmになるため、繊維束の占有断面積は筒状体1の内腔断面積を100とした場合における比率で90〜100となる。
その後、隣接する糸状物を接着させることにより棒状体21を得る。接着の方法は、繊維束を生分解性高分子の溶液に浸漬後、乾燥する方法が挙げられる。また、糸状物が架橋されたコラーゲンからなる単糸である場合は、繊維束を水に浸漬する方法が挙げられる。架橋されたコラーゲンは、水溶液に浸漬すると、わずかではあるがコラーゲン単糸の周囲が溶解する。この溶解したコラーゲンは、隣接・接触するコラーゲン単糸に付着するので、乾燥することにより接着が完了する。浸漬する水溶液は、特に限定されるものではなく、水自体も含む。特に、糸状物が酸又はアルカリ可溶性のコラーゲンから得られるものであって、架橋を施した単糸である場合、上述の方法により得られた繊維束は中和処理を施していないことから、水溶液として中和液を選択することができる。中和液は当業者により適宜選択することができる。例えば、酸可溶化コラーゲンにより得られたコラーゲン単糸を束ねた繊維束は、水酸化カルシウム水溶液、水酸化カリウム水溶液又は炭酸水素ナトリウム水溶液(重曹)などの塩基性水溶液により中和することで、繊維束における隣接する糸状物同士が部分的に接着する。
棒状体21の長手方向の長さは、本発明の課題である両端に組織を挿入するための組織挿入部4を備えた組織再生器具Aの生産を容易に行うことができる観点から、図3に示すように筒状体1の長手方向の長さよりも、組織挿入部形成長(D)だけ短い状態で、筒状体1の片端と棒状体21の片端を揃えることが好ましい。「組織挿入部形成長」とは、両端に組織挿入部4を設けるために必要な長さをいう。以下、本発明では組織挿入部形成長をDと略すこともある。具体的な長さは、再生する組織により、当業者が適宜決定できるものであるから、特に限定されるものではないが、組織挿入部4の長手方向の長さの2〜4倍程度であればよい。特に両端に設けること及び組織の挿入を容易に行うことができる観点から、2倍程度、つまり4〜40mmが好ましい。また、筒状体1の片端と棒状体2の片端を揃えることによりその端面は略平滑となることから、本発明ではこの揃えた端を「平滑端」ともいう。一方、これに伴い前駆体Bのもう一端は、筒状体1の片端と棒状体2の片端は揃わず、空間を形成していることから、本発明ではこの空間を「空間部」ともいう。
<固定手段>
このようにして得られた棒状体21は、筒状体1の内腔に挿入する。筒状体1の内腔断面積を100とした場合における棒状体21の長手方向に対して直交する占有断面積の比率は、約5〜10であるため、この作業は非常に容易となる。但し、単に棒状体21を筒状体1の内腔に挿入しただけでは、棒状体21が筒状体1の内腔から滑り落ちてしまい、棒状体21が汚染される弊害を伴う。
例えば、特許文献2のコラーゲン体はチューブに固定されているわけではなく、コラーゲン体はチューブ内を摺動する。搬送時又は使用時にチューブからコラーゲン体が抜け落ちてしまい、コラーゲン体が汚染されるおそれがある。
一方で、この課題を解決すべく特許文献2のコラーゲン体をチューブの内腔に密に充填することが考えられる。しかしながら、埋植前の軟化用溶媒による膨潤によりチューブが変形してしまうおそれがある。
同様に、特許文献3の合成生体吸収性高分子からなるファイバーは、管状体に固定されているわけではなく、繊維束は管状体内を摺動する。このため、特許文献2と同様の問題がある。
特許文献3においても、合成生体吸収性高分子からなるファイバーを管状体の内腔に密に充填することが考えられる。しかしながら、埋植前の軟化用溶媒による膨潤によりチューブが変形してしまうおそれがある。
この弊害を防止するために、本発明では棒状体21を筒状体1に固定する固定手段31,32を備える。しかしながら、単に固定手段31,32を設けただけでは、前駆体Bから器官再生器具Aを製造する際、本発明の目的である両端に組織を挿入するための組織挿入部4を設けた組織再生器具Aを生産することができない。
例えば、特許文献4の器具は、再生すべき神経の長さに合わせて切断する。そして、中枢神経側の神経端を空間部に挿入することにより埋植することができる。しかしながら、マトリックス及び/又は神経誘導路は管状体に固定されてしまっているため、搬送時又は使用時におけるマトリックス及び/又は神経誘導路の抜け落ちの問題はないが、末梢神経側は平滑端を形成するため、端−端縫合を行わなければならないという問題がある。
以上のことから、本発明の前駆体Bは筒状体1に棒状体21を固定する固定手段31,32を備える。但し、当該固定手段31,32は前駆体Bの製造時及び運搬時には、棒状体21は筒状体1に固定されるが、前駆体Bから器官再生器具Aを生産する時には固定は解除され、飽和膨潤状態の棒状体22が筒状体1の内腔を摺動できるような材料又は構造でなければならない。
上述の条件を満足する第1の形態としては、前駆体Bから組織再生器具Aを生産における長さ調節時に、切除される位置に固定手段31を配置し、強固に固定する形態が挙げられる。つまり、図2に示すように、固定手段31は筒状体1の切除領域の一部の内壁に具備する形態である。「筒状体の切除領域」とは、前駆体Bの長さ調節の際に切除される部分をいう。より詳細には、筒状体1の長手方向の長さを100%とした時における、片端から0.01〜50%の比率の長さの範囲内の領域とする。つまり、最大で筒状体1の長手方向の中点から一方の領域とする。但し、本発明の前駆体Bが、長い組織の再生にも適用できるような組織再生器具Aを生産できるように、切除する部分が必要最低限とすることが重要であり、好ましくは0.01〜30%、特に好ましくは0.01〜10%の比率の長さの範囲内の領域である。つまり、固定手段31を含む前駆体Bの一部を切除すれば、飽和膨潤状態の棒状体22は筒状体1の内腔において摺動可能となる。
上述の第1の形態における固定手段31としては、例えば、糸状物、ステープラー、接着剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるいずれか1であるものが挙げられる。糸状物、ステープラーによる固定は、筒状体1の外壁から棒状体21を貫通することで固定することができる。
また、「接着剤」とは、筒状体1と棒状体21との間に介在し、アンカー効果、物理的吸着、共有結合、イオン結合、疎水結合、配位結合及び水素結合などで結合しうるものをいう。接着剤は、水に難溶であり、保存性に優れたものが適宜選択され、例えば、アクリル系樹脂及びフッ素系樹脂などの非生分解性高分子を含む高分子組成物、架橋コラーゲン、ポリ乳酸及び疎水性アミノ酸のホモポリマーなどの生分解性高分子材料が挙げられる。特に、当該接着剤は、前駆体Bの長さ調節において、固定手段3は切除されるものではあるが、もしも残存した場合、生体内において安全でなければならない。このことを考慮すると、接着剤は、架橋コラーゲン、ポリ乳酸及び疎水性アミノ酸のホモポリマーなどの生分解性高分子が好ましく、さらに好ましくは架橋コラーゲンである。
また、第2の形態としては、当該固定手段3を解除可能とする形態が挙げられる。この場合、固定手段32の位置は特に限定されない。本形態における固定手段32は、例えば、糸状物、ステープラー、バインダー及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるいずれか1であるものが挙げられる。糸状物及びステープラーによる固定は、筒状体1の外壁から棒状体21を貫通するように固定することができる。そして、これらの固定手段32の解除は、そのまま固定手段32を物理的に除去すればよい。
一方、「バインダー」とは、筒状体1と誘導手段2を接着するものであるが、当該バインダーを構成する高分子の良溶媒にて溶解されることにより、接着が解除されるものをいう。本発明ではこのような良溶媒を本発明ではバインダー用溶媒という。ただし、このバインダー用溶媒は、処理中に前駆体B自体を溶解してはならないため、前駆体Bを構成する生分解性高分子に対しては貧溶媒でなければならない。
したがって、このバインダー用溶媒を決定すれば、バインダーを構成する高分子も容易に選択することができる。例えば、生分解性高分子がコラーゲンであって、係るコラーゲンが架橋されている場合、コラーゲンの主鎖骨格を分解するような強酸又は強アルカリでなければほとんどの溶媒が適用できる。具体的には、水、メタノール、エタノール、アセトン、ヘキサン、ベンゼン、キシレン、1,2−ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン及びジメチルスルホキシドなどが挙げられる。特に処理後の器具に残存しても生体に影響がない観点から、水が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
水は、水道水、蒸留水、逆浸透水及びイオン交換水などが挙げられる。また、生理学的に許容可能な塩を含んでもよい。つまり、生理食塩水であってもよい。ここで、組織再生器具Aは、埋植時に縫合の取扱い性を向上させるために、軟化用溶媒で膨潤させる。この軟化用溶媒は、主に生理食塩水が一般的に使用される。したがって、水は、本発明の前駆体Bを膨潤させる工程及びバインダーを解除する工程を同時に行うことができる観点から、生理食塩水が好ましい。
そして、例えば、生分解性高分子が架橋コラーゲンであり、バインダー用溶媒として生理食塩水を使用する場合、係るバインダーを構成する高分子は、親水性高分子であれば特に限定されるものではない。このような親水性高分子としては、例えば、未架橋コラーゲン、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリエチレングリコール、及び、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸並びにコンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンが挙げられる。特に筒状体1及び棒状体21を構成する材料が架橋コラーゲンである場合、当該架橋コラーゲンとの接着性が高く、処理後に前駆体Bに残存しても生体に影響がない観点から、未架橋コラーゲンが好ましい。
<組織再生器具の生産>
以下に本発明の組織再生器具の前駆体Bから組織再生器具Aを生産する方法について、図を用いて説明する。尚、組織再生器具の前駆体Bは全てコラーゲンからなるものとし、固定手段3は、未架橋コラーゲンのバインダーとするが、本発明はこれらに限定されるものではないことは上述したとおりである。
本発明の組織再生器具Aの生産方法は、
(1)組織再生器具の前駆体Bを軟化用溶媒に浸漬し、前駆体Bを膨潤させる工程;
(2)固定手段31,32を解除し、飽和膨潤状態の棒状体22を筒状体1の内腔において摺動可能にする工程;
(3)前駆体B1の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前駆体B1の一部を切除する工程;
(4)飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向の長さが、筒状体1の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、飽和膨潤状態の棒状体22の一部を切除する工程;及び
(5)飽和膨潤状態の棒状体22を筒状体1中央に配置することにより、筒状体1の両端内腔に組織挿入部4を形成する工程
を含む。
(1)組織再生器具の前駆体Bを軟化用溶媒に浸漬し、前駆体Bを膨潤する工程
まず、本発明の組織再生器具の前駆体Bを、埋植時に縫合の取扱い性を向上させるために軟化用溶媒に浸漬し軟化させる。軟化用溶媒は、主に生理食塩水が使用されるが、これに限定されるものではない。その条件は、上述したように、大気圧下、湿度60%、25〜40℃の軟化用溶媒によるものとする。
(2)固定手段31,32を解除し、膨潤した棒状体2を筒状体1の内腔において摺動可能にする工程
本工程(2)は、固定手段31,32の形態によってその内容が異なる。例えば、固定手段31,32が第1の形態、つまり、筒状体1の切除領域に固定手段31を配置する形態が挙げられる。この形態の場合、本工程(2)は、後述する工程(3)と同時に実施される。後述する工程(3)において、筒状体1の切除領域に配置した固定手段31は、切除されるからである。
また、例えば、固定手段3が第2の形態、つまり、解除可能なものであるならば、当該第2の形態の固定手段32をそのまま除去すればよい。
さらに、例えば、軟化用溶媒が生理食塩水であり、第2の形態の固定手段32が上述のバインダーである場合は、上述のバインダー用溶媒で処理することにより、解除することができる。特に、当該バインダーが水に可溶な親水性高分子である場合は、上述の工程(1)における生理食塩水に溶解するため、本工程(2)が省略できて好ましい。
このようにして、膨潤した後、固定手段31,32を解除又は切除した前駆体Bにおいては、筒状体1と飽和膨潤状態の棒状体22との間に適度な濡れにより摩擦抵抗が生じる。また、飽和膨潤状態の棒状体22の占有断面積は、筒状体の内腔断面積と略同じとなる。このため、飽和膨潤状態の棒状体22が筒状体1の内腔を摺動することはできるが、内腔からずり落ちることはない。
(3)前駆体B1の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前駆体B1の一部を切除する工程
次に、再生すべき組織の長さに応じて、前駆体B1の一部を切除することにより、その長さを調節する。具体的には、前駆体B1の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さ(以下、本発明ではLと略すこともある)に組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、当該前駆体B1を切除する(図5:B1〜B2)。例えば、再生すべき組織が神経であって、再生すべき神経の長さ(L)が100mmであり、組織挿入部形成長を20mmとした場合、前駆体B2の長さが120mmとなるように切除する。切除は、はさみ、ミクロトーム及び手術用メスなどの切断用の器具を用いて行うことができる。尚、本工程(3)を実施する前において、前駆体Bの長さが再生すべき組織の長さに対応している場合は、特に何もすることなく本工程は実施されたものとみなす。
また、固定手段3が第1の形態、つまり、筒状体1の切除領域に固定手段31を配置する形態の場合、本工程(3)は上述の工程(2)と同時に行うことができる。また、この場合における工程(2)及び(3)において、どうしても固定手段31が残存する場合であっても、固定手段31の残存量は少ないため、飽和膨潤状態の棒状体22を長手方向に加圧することにより固定を解除してもよい。
(4)飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向の長さが、筒状体1の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、飽和膨潤状態の棒状体22の一部を切除する工程
そして、飽和膨潤状態の棒状体22を、筒状体1の内腔を摺動させ、筒状体1の片端から組織挿入部形成長(D)だけ突出させる(図6:B2〜B3)。この突出した部分を切除することによって、飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向の長さを調節する(図6:B3〜B4)。この長さは、患部の切除された組織の長さと略同じとなる。例えば、再生すべき組織が神経であって、組織挿入部形成長(D)を20mmとし、前駆体B2の長さを120mmとした場合、上記の作業により得られる棒状体2の長手方向の長さ(L:再生すべき神経の長さ)は100mmとなる。
ここで図3に示すように、棒状体2の長手方法の長さが、筒状体1の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、筒状体1の片端と棒状体2の片端を揃えた構造(平滑端6及び空間部7を備えた構造)である場合、上述の工程(2)において平滑端5側の前駆体Bの一部を切除すれば、本工程も同時に実施されるため好ましい(図7:B1’〜B2’)。
(5)飽和膨潤状態の棒状体22を筒状体1の中央に配置することにより、筒状体1の両端内腔に組織挿入部4を形成する工程
その後、飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向中点と、筒状体1の長手方向中点が一致するように配置するように摺動すれば、長手方向の長さが、組織挿入部形成長(D)の2分の1(D/2)の組織挿入部4を両端に形成することができる(図8:B4〜A、又は、B’2〜A)。
以上のようにして、本発明の組織再生器具の前駆体Bから生産された組織再生器具Aは、両端に組織挿入部4を設けているために、組織端を挿入するたけで埋植することができ、縫合などを行わなくとも容易に埋植手術を行うことができる。また、筒状体1の外壁に沿って細胞が成長してしまう弊害を防止することができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1:組織再生器具の前駆体Bの製造
(1)筒状体1の製造
酵素可溶化コラーゲンを水に溶解して5%(w/w)水溶液を作製した。このコラーゲン溶液を、99.5%(v/v)エタノール凝固浴槽中に吐出すことにより、直径約200μmのコラーゲン単糸を紡糸した。エタノール凝固浴槽から引き上げられたコラーゲン単糸を、そのまま外径3.0mmのポリフッ化エチレン系繊維製の円筒鋳型に、約4,000m/minの速度で巻き付けた後、乾燥させた。次に、この生成物を5%(w/w)コラーゲン水溶液に浸漬、乾燥することにより筒状体1の最内層を形成した。さらに、この筒状体1の最内層の外周に前記コラーゲン単糸を約4,000m/minの速度で再度巻き付け、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。得られたコラーゲン筒状体を、再度5%(w/w)コラーゲン水溶液を浸漬、乾燥させた後、熱架橋処理を行うことにより、内径3.0mm、外径3.3mm、長さ70mmの架橋コラーゲン製の筒状体1を製造した。
(2)棒状体2の製造
上述したエタノール凝固浴槽による湿式紡糸において、凝固浴槽から引き上げられた単糸を、温度約25度、湿度50%以下の条件で送風乾燥を行いながら、約150mm×150mmの長方形を有するフレームに巻き付けた。この時の紡糸速度は、約4,000m/minとした。次に、フレームに巻き付けた状態で、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。そして、巻き付けられた糸を長さ約50mmとなるように切断し、外径約1.0mmの円柱状となるように束ねた。この円柱状に束ねたものを7.5%(w/w)炭酸水素ナトリウム水溶液に含浸させた後、乾燥することにより、外径約1.0mm、長さ50mmの架橋コラーゲン製の単糸の繊維束からなる棒状体21を作製した。棒状体21の長手方向の長さは、筒状体1の長手方向の長さよりも20mm短い。つまり、組織挿入部形成長(D)は20mmとなる。筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、棒状体21の長手方向に対して直交する断面積の比率が約11.1となる。
(3)図3の組織再生器具の前駆体Bの製造
架橋コラーゲン製の棒状体21の一端から5mmの領域に5%(w/w)コラーゲン水溶液を塗布した。次にこの棒状体21におけるコラーゲン水溶液を塗布した側の片端を、筒状体1の片端と揃えるように、筒状体1の内腔に挿入した。この状態で熱脱水架橋をすることにより、棒状体2を架橋コラーゲンの接着剤31で筒状体1に固定し、図4に示す組織再生器具の前駆体Bを得た。つまり、筒状体1の片端側の内腔には棒状体21が存在し、平滑端6を形成するが、筒状体1のもう一端側の内腔には棒状体21は存在せず、空間部7を形成する。このようにして得られた前駆体Bは、25kGyのγ線滅菌処理を施した。
実施例2:組織再生器具Aの生産
実施例1で得た組織再生器具の前駆体Bを生理食塩水にて、大気圧下、湿度60%、25℃の条件で、20分浸漬することにより器具の前駆体Bを飽和膨潤状態とした。次に、平滑端5から20mmの位置で、ミクロトームを用いて固定手段31を含む前駆体B’1の切除した(図7:B’1〜B’2)。つまり、筒状体1の長手方向の長さは50mm、飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向の長さ(L:再生すべき組織の長さ)は30mmとなる。その後、筒状体1の内腔において飽和膨潤状態の棒状体22を10mm摺動させ、略中央の位置に配置させることにより、両端に組織挿入部4を備えた組織再生器具Aを生産した(図8:B’2〜A)。
本発明の組織再生器具の前駆体は、容易に両端に組織を挿入するための空間を形成した組織再生器具に生産できる。このため、医師が特別な技術を必要とすることなく係る器具を容易に埋植することができ、スキャフォールドを用いた再生医療が医療業界に普及するであろう。
本発明の最終目的である組織再生器具Aを示す図である。 本発明の組織再生器具の前駆体の一実施態様(B)を示す図である。 本発明の組織再生器具の前駆体の変形例(B’)を示す図である。 図2の組織再生器具の前駆体Bを軟化用溶媒により膨潤する工程を示す図である。 図4の組織再生器具の前駆体B1を切除する工程を示す図である。 図5の工程の後、組織再生器具の前駆体B2から、飽和膨潤状態の棒状体22を摺動・突出させた後、突出した部分を切除する工程を示す図である。 軟化用溶媒により膨潤させた図3の組織再生器具の前駆体B’1を切除する工程を示す図である。 図6又は図7の工程の後、飽和膨潤状態の棒状体22を摺動させ、両端に組織挿入部4を設ける工程を示す図である。
符号の説明
1 筒状体
21 棒状体(非膨潤状態)
22 飽和膨潤状態の棒状体
31 第1の形態の固定手段
32 第2の形態の固定手段
4 組織挿入部
5 液体流路
6 平滑端
7 空間部
A 組織再生器具
B、B1〜B4、B’、B’1、B’2 組織再生器具の前駆体

Claims (14)

  1. 組織を再生する組織再生器具を生産するための前駆体であって、
    長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
    前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
    前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
    前記棒状体は、
    非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
    軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなる
    ことを特徴とする組織再生器具の前駆体。
  2. 前記軟化用溶媒が、生理食塩水である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
  3. 前記棒状体が、略円柱形状である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
  4. 前記棒状体は、略平行に配列した複数本の生分解性材料からなる糸状物の束であって、隣接する糸状物の少なくとも一部が互いに接着したものである請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
  5. 前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記筒状体の片端と前記棒状体の片端を揃えた請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
  6. 前記固定手段は、前記筒状体の切除領域の少なくとも一部の内壁に設けることを特徴とする請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
  7. 前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記筒状体の切除領域側の片端と前記棒状体の片端を揃えた請求項4に記載の組織再生器具の前駆体。
  8. 前記固定手段が、親水性高分子である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
  9. 前記固定手段が、接着剤である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
  10. 前記接着剤が、生分解性材料である請求項9に記載の組織再生器具の前駆体。
  11. 組織再生器具の前駆体から線状の組織を再生するための組織再生器具を生産する方法であって、
    前記組織再生器具の前駆体は、
    長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
    前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
    前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
    前記棒状体は、
    非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
    軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなるものであり、
    (1)軟化用溶媒に前記組織再生器具の前駆体を浸漬し、前記前駆体を膨潤する工程;
    (2)前記固定手段を解除し、前記棒状体を前記筒状体内腔において摺動可能にする工程;
    (3)前記前駆体の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前記前駆体の一部を切除する工程;
    (4)前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、前記棒状体の一部を切除する工程;及び
    (5)前記棒状体を前記筒状体中央に配置することにより、前記筒状体の両端内腔に組織挿入部を形成する工程
    を含む組織再生器具の生産方法。
  12. 前記前駆体の棒状体の長手方向の長さが、前記前駆体の筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記前駆体の筒状体の片端と前記前駆体の棒状体の片端を揃えたものであって、
    前記(3)及び(4)の工程を同時に実施することを特徴とする請求項11に記載の組織再生誘導器具の生産方法。
  13. 前記軟化用溶媒が生理食塩水であり、前記前駆体の固定手段が親水性高分子であって、
    前記(1)及び(2)の工程を同時に実施することを特徴とする請求項12に記載の組織再生誘導器具の生産方法。
  14. 組織再生器具の前駆体から生産された組織再生器具であって、
    前記組織再生器具の前駆体は、
    長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
    前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
    前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
    前記棒状体は、
    非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
    軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなるものであり、
    (1)軟化用溶媒に前記組織再生器具の前駆体を浸漬し、前記前駆体を膨潤する工程;
    (2)前記固定手段を解除し、前記棒状体を前記筒状体内腔において摺動可能にする工程;
    (3)前記前駆体の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前記前駆体の一部を切除する工程;
    (4)前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、前記棒状体の一部を切除する工程;及び
    (5)前記棒状体を前記筒状体中央に配置することにより、前記筒状体の両端内腔に組織挿入部を形成する工程
    により生産された組織再生器具。

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