JP2008043597A - 膨潤可能な棒状体を備えた組織再生器具の前駆体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】組織を再生する組織再生器具を生産するための前駆体であって、長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体1と、筒状体1の内壁に筒状体1の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体21と、筒状体1の内壁に棒状体21を固定する固定手段31を備え、棒状体21は、非膨潤状態での棒状体21の長手方向に対して直交する占有断面積は、筒状体1の内腔の断面積よりも小であり、軟化用溶媒による飽和膨潤状態での棒状体22の長手方向に対して直交する占有断面積は、筒状体1の内腔の断面積と略同じとなる。
【選択図】図4
Description
(請求項の繰り返し)
に関する。
「筒状体」とは、組織の細胞が周辺組織へ成長することを防止する構造のものをいう。筒状体1の形状は、例えば、円筒形(チューブ形状)及び角筒形(三角形、四角形、五角形及び六角形)などが挙げられる。特に、製造が容易である観点から、円筒形(チューブ形状)が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
筒状体1の内腔には、非膨潤状態の棒状体21を備える。「棒状体」とは、損傷した組織の細胞が、長手方向への成長を誘導する足場となるものをいう。その形態は、例えば、略平行に配列した複数本の生分解性材料からなる糸状物の束からなり、外観は棒のような形状である。「繊維束」とは、複数本の生分解性材料からなる糸状物から構成されたものをいい、全ての糸状物が筒状体1の長手方向に対して略平行に配列し、隣接する糸状物が互いに接着したものをいう。また、「糸状物」とは、単糸及び縒糸の総称をいう。特に製造コストが低い観点から、単糸であることが好ましい。単糸は、上述した筒状体1を構成する単糸と同様の製法で製造すればよい。
このようにして得られた棒状体21は、筒状体1の内腔に挿入する。筒状体1の内腔断面積を100とした場合における棒状体21の長手方向に対して直交する占有断面積の比率は、約5〜10であるため、この作業は非常に容易となる。但し、単に棒状体21を筒状体1の内腔に挿入しただけでは、棒状体21が筒状体1の内腔から滑り落ちてしまい、棒状体21が汚染される弊害を伴う。
以下に本発明の組織再生器具の前駆体Bから組織再生器具Aを生産する方法について、図を用いて説明する。尚、組織再生器具の前駆体Bは全てコラーゲンからなるものとし、固定手段3は、未架橋コラーゲンのバインダーとするが、本発明はこれらに限定されるものではないことは上述したとおりである。
(1)組織再生器具の前駆体Bを軟化用溶媒に浸漬し、前駆体Bを膨潤させる工程;
(2)固定手段31,32を解除し、飽和膨潤状態の棒状体22を筒状体1の内腔において摺動可能にする工程;
(3)前駆体B1の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前駆体B1の一部を切除する工程;
(4)飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向の長さが、筒状体1の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、飽和膨潤状態の棒状体22の一部を切除する工程;及び
(5)飽和膨潤状態の棒状体22を筒状体1中央に配置することにより、筒状体1の両端内腔に組織挿入部4を形成する工程
を含む。
まず、本発明の組織再生器具の前駆体Bを、埋植時に縫合の取扱い性を向上させるために軟化用溶媒に浸漬し軟化させる。軟化用溶媒は、主に生理食塩水が使用されるが、これに限定されるものではない。その条件は、上述したように、大気圧下、湿度60%、25〜40℃の軟化用溶媒によるものとする。
本工程(2)は、固定手段31,32の形態によってその内容が異なる。例えば、固定手段31,32が第1の形態、つまり、筒状体1の切除領域に固定手段31を配置する形態が挙げられる。この形態の場合、本工程(2)は、後述する工程(3)と同時に実施される。後述する工程(3)において、筒状体1の切除領域に配置した固定手段31は、切除されるからである。
次に、再生すべき組織の長さに応じて、前駆体B1の一部を切除することにより、その長さを調節する。具体的には、前駆体B1の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さ(以下、本発明ではLと略すこともある)に組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、当該前駆体B1を切除する(図5:B1〜B2)。例えば、再生すべき組織が神経であって、再生すべき神経の長さ(L)が100mmであり、組織挿入部形成長を20mmとした場合、前駆体B2の長さが120mmとなるように切除する。切除は、はさみ、ミクロトーム及び手術用メスなどの切断用の器具を用いて行うことができる。尚、本工程(3)を実施する前において、前駆体Bの長さが再生すべき組織の長さに対応している場合は、特に何もすることなく本工程は実施されたものとみなす。
そして、飽和膨潤状態の棒状体22を、筒状体1の内腔を摺動させ、筒状体1の片端から組織挿入部形成長(D)だけ突出させる(図6:B2〜B3)。この突出した部分を切除することによって、飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向の長さを調節する(図6:B3〜B4)。この長さは、患部の切除された組織の長さと略同じとなる。例えば、再生すべき組織が神経であって、組織挿入部形成長(D)を20mmとし、前駆体B2の長さを120mmとした場合、上記の作業により得られる棒状体2の長手方向の長さ(L:再生すべき神経の長さ)は100mmとなる。
その後、飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向中点と、筒状体1の長手方向中点が一致するように配置するように摺動すれば、長手方向の長さが、組織挿入部形成長(D)の2分の1(D/2)の組織挿入部4を両端に形成することができる(図8:B4〜A、又は、B’2〜A)。
(1)筒状体1の製造
酵素可溶化コラーゲンを水に溶解して5%(w/w)水溶液を作製した。このコラーゲン溶液を、99.5%(v/v)エタノール凝固浴槽中に吐出すことにより、直径約200μmのコラーゲン単糸を紡糸した。エタノール凝固浴槽から引き上げられたコラーゲン単糸を、そのまま外径3.0mmのポリフッ化エチレン系繊維製の円筒鋳型に、約4,000m/minの速度で巻き付けた後、乾燥させた。次に、この生成物を5%(w/w)コラーゲン水溶液に浸漬、乾燥することにより筒状体1の最内層を形成した。さらに、この筒状体1の最内層の外周に前記コラーゲン単糸を約4,000m/minの速度で再度巻き付け、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。得られたコラーゲン筒状体を、再度5%(w/w)コラーゲン水溶液を浸漬、乾燥させた後、熱架橋処理を行うことにより、内径3.0mm、外径3.3mm、長さ70mmの架橋コラーゲン製の筒状体1を製造した。
上述したエタノール凝固浴槽による湿式紡糸において、凝固浴槽から引き上げられた単糸を、温度約25度、湿度50%以下の条件で送風乾燥を行いながら、約150mm×150mmの長方形を有するフレームに巻き付けた。この時の紡糸速度は、約4,000m/minとした。次に、フレームに巻き付けた状態で、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。そして、巻き付けられた糸を長さ約50mmとなるように切断し、外径約1.0mmの円柱状となるように束ねた。この円柱状に束ねたものを7.5%(w/w)炭酸水素ナトリウム水溶液に含浸させた後、乾燥することにより、外径約1.0mm、長さ50mmの架橋コラーゲン製の単糸の繊維束からなる棒状体21を作製した。棒状体21の長手方向の長さは、筒状体1の長手方向の長さよりも20mm短い。つまり、組織挿入部形成長(D)は20mmとなる。筒状体1の内腔断面積を100とした場合における、棒状体21の長手方向に対して直交する断面積の比率が約11.1となる。
架橋コラーゲン製の棒状体21の一端から5mmの領域に5%(w/w)コラーゲン水溶液を塗布した。次にこの棒状体21におけるコラーゲン水溶液を塗布した側の片端を、筒状体1の片端と揃えるように、筒状体1の内腔に挿入した。この状態で熱脱水架橋をすることにより、棒状体2を架橋コラーゲンの接着剤31で筒状体1に固定し、図4に示す組織再生器具の前駆体Bを得た。つまり、筒状体1の片端側の内腔には棒状体21が存在し、平滑端6を形成するが、筒状体1のもう一端側の内腔には棒状体21は存在せず、空間部7を形成する。このようにして得られた前駆体Bは、25kGyのγ線滅菌処理を施した。
実施例1で得た組織再生器具の前駆体Bを生理食塩水にて、大気圧下、湿度60%、25℃の条件で、20分浸漬することにより器具の前駆体Bを飽和膨潤状態とした。次に、平滑端5から20mmの位置で、ミクロトームを用いて固定手段31を含む前駆体B’1の切除した(図7:B’1〜B’2)。つまり、筒状体1の長手方向の長さは50mm、飽和膨潤状態の棒状体22の長手方向の長さ(L:再生すべき組織の長さ)は30mmとなる。その後、筒状体1の内腔において飽和膨潤状態の棒状体22を10mm摺動させ、略中央の位置に配置させることにより、両端に組織挿入部4を備えた組織再生器具Aを生産した(図8:B’2〜A)。
21 棒状体(非膨潤状態)
22 飽和膨潤状態の棒状体
31 第1の形態の固定手段
32 第2の形態の固定手段
4 組織挿入部
5 液体流路
6 平滑端
7 空間部
A 組織再生器具
B、B1〜B4、B’、B’1、B’2 組織再生器具の前駆体
Claims (14)
- 組織を再生する組織再生器具を生産するための前駆体であって、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
前記棒状体は、
非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなる
ことを特徴とする組織再生器具の前駆体。 - 前記軟化用溶媒が、生理食塩水である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記棒状体が、略円柱形状である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記棒状体は、略平行に配列した複数本の生分解性材料からなる糸状物の束であって、隣接する糸状物の少なくとも一部が互いに接着したものである請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記筒状体の片端と前記棒状体の片端を揃えた請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記固定手段は、前記筒状体の切除領域の少なくとも一部の内壁に設けることを特徴とする請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記筒状体の切除領域側の片端と前記棒状体の片端を揃えた請求項4に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記固定手段が、親水性高分子である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記固定手段が、接着剤である請求項1に記載の組織再生器具の前駆体。
- 前記接着剤が、生分解性材料である請求項9に記載の組織再生器具の前駆体。
- 組織再生器具の前駆体から線状の組織を再生するための組織再生器具を生産する方法であって、
前記組織再生器具の前駆体は、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
前記棒状体は、
非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなるものであり、
(1)軟化用溶媒に前記組織再生器具の前駆体を浸漬し、前記前駆体を膨潤する工程;
(2)前記固定手段を解除し、前記棒状体を前記筒状体内腔において摺動可能にする工程;
(3)前記前駆体の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前記前駆体の一部を切除する工程;
(4)前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、前記棒状体の一部を切除する工程;及び
(5)前記棒状体を前記筒状体中央に配置することにより、前記筒状体の両端内腔に組織挿入部を形成する工程
を含む組織再生器具の生産方法。 - 前記前駆体の棒状体の長手方向の長さが、前記前駆体の筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短く、前記前駆体の筒状体の片端と前記前駆体の棒状体の片端を揃えたものであって、
前記(3)及び(4)の工程を同時に実施することを特徴とする請求項11に記載の組織再生誘導器具の生産方法。 - 前記軟化用溶媒が生理食塩水であり、前記前駆体の固定手段が親水性高分子であって、
前記(1)及び(2)の工程を同時に実施することを特徴とする請求項12に記載の組織再生誘導器具の生産方法。 - 組織再生器具の前駆体から生産された組織再生器具であって、
前記組織再生器具の前駆体は、
長手方向に内腔であり、生分解性材料からなる筒状体と、
前記筒状体の内壁に当該筒状体の長手方向と略平行に固定され、軟化用溶媒により膨潤可能な生分解性材料からなる棒状体と、
前記筒状体の内壁に前記棒状体を固定する固定手段を備え、
前記棒状体は、
非膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積よりも小であり、
軟化用溶媒による飽和膨潤状態での前記棒状体の長手方向に対して直交する占有断面積は、前記筒状体の内腔の断面積と略同じとなるものであり、
(1)軟化用溶媒に前記組織再生器具の前駆体を浸漬し、前記前駆体を膨潤する工程;
(2)前記固定手段を解除し、前記棒状体を前記筒状体内腔において摺動可能にする工程;
(3)前記前駆体の長手方向の長さを、再生すべき組織の長さに組織挿入部形成長(D)を加えた長さとなるように、前記前駆体の一部を切除する工程;
(4)前記棒状体の長手方向の長さが、前記筒状体の長手方向の長さよりも組織挿入部形成長(D)だけ短くなるように、前記棒状体の一部を切除する工程;及び
(5)前記棒状体を前記筒状体中央に配置することにより、前記筒状体の両端内腔に組織挿入部を形成する工程
により生産された組織再生器具。
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