JP5320645B2 - リチウムイオン二次電池用負極活物質及び負極 - Google Patents
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Description
現在の負極材は、主に高容量を追求した黒鉛質が主力であるが、コスト低減の要求も強く、初期のメソフェーズピッチを原料とするタイプからコークスとピッチバインダーを主原料とした人造黒鉛、更には天然黒鉛を基材とするタイプが開発され実用化に至っている。
しかし、ハードカーボンは、樹脂を基材とする場合は焼成得率の低さや原料価格が高価であることからコスト高は避けられず、また、コールタールのような瀝青物を出発物質とすると、晶質化を防ぐために焼成前の原料の調整にかなりの手間を要し、コスト高となり好ましくない。
一方、比較的熱処理温度の低いソフトカーボン系の材料の利用としては、生コークス(ディレードコークス)や、仮焼コークス(カルサインコークス)を原料とすることがコスト面で好ましく、入手の容易性という観点からは仮焼コークス(カルサインコークス)が有利なので、これを原料に利用できればコスト面で好ましいが、直接粉砕したものは、メソフェーズが炭化したエッジ部分やベーサル面が露出しており、電解液との長期的な反応性、充放電サイクル性能等解決すべき性能は残されている。
特許文献2(特開2009−059676号公報)にあるように、本願出願人は先に、仮焼したニードルコークス粉末に光学的等方性ピッチを加えて加熱混合し、焼成して得られる炭素粉末をリチウムイオン二次電池用負極活物質とすることを提案し、負極活物質の高入出力特性を改善した。
しかしながら、リチウムイオン二次電池に対する高性能化、低コスト化の要請は近年益々強まり、また、HEV等の用途に使用するリチウムイオン二次電池の負極活物質は、長期間使用するため長寿命化と電池製造コストの低減のため電池組立歩留まり向上が強く求められている。
この条件を満足する市販のコークスの例としては、例えばシーケム株式会社製のLPC−UL、LPC−U、LPC−UH、LPC−S50、LPC−S55、LPC−S60等が挙げられる。
熱膨張率が0.95×10-6/℃よりも小さい場合は、石油ピッチ系ニードルコークスの一部の銘柄が考えられるが、限りなく鱗片状の天然黒鉛に近い結晶配向となる。電解液との反応性は結晶配向が大きいほど大きくなるので、放電容量が大きくなることは期待されるが、電解液の分解によるガス発生、サイクル劣化、及び内部抵抗の上昇の問題があり、好ましくない。
なお、生コークスは石炭系コークス、石油系コークスのどちらを用いても良い。
本発明の仮焼コークスもしくは生コークスの平均粒子径D50は、5〜30μm程度とするのが好ましいが、HEV用のリチウムイオン二次電池の負極材として使用する場合は、入出力特性の確保のため、ある程度比表面積が大きい方が望ましいため、平均粒径D50は、好ましくは8〜15μm、より好ましくは9〜12μm程度である。
そして、SEM観察による最大粒子径は75μm以下であるのが好ましい。電極の導電性を確保し、出力特性を発現させるため、比較的薄く塗布するので粒子径が75μm以上の粒子が存在すると塗工時に筋を引くという不具合の発生が考えられるためである。平均粒子径が5μm以下では、比表面積が大きくなりすぎ、充放電における不可逆容量が大きくなり、ハンドリング性能が低下するなどの問題が生じるので好ましくない。
また、負極活物質の吸油量に着目した。すなわち、負極活物質の吸油量を低減させることによって、負極活物質同士及び負極活物質と集電金属箔との密着性が向上して長寿命となることに注目した。
これは、活物質である炭素材の吸油量を低減させることにより、バインダー樹脂が活物質内部に吸収されることが少なくなり、接着に有効利用されやすくなる原理に基づくものである。
このように吸油量を低減させた活物質は、活物質同士および集電金属箔との密着性が強化され、長寿命化に優れた効果があると共に、電極製造時のハンドリング性や歩留まり向上にも寄与するのである。
比表面積は、吸着等温線から得られた吸着ガス量を、単分子層として評価して表面積を計算するBETの多点法によって求めた。
P/V(P0−P)=(1/VmC)+{(C−1)/VmC(P/P0)……(1)
S=kVm ……………………………………………………………(2)
P0 :飽和蒸気圧
P :吸着平衡圧
V :吸着平衡圧Pにおける吸着量
Vm :単分子層吸着量
C :吸着熱などに関するパラメーター
S :比表面積
k :窒素単分子占有面積 0.162nm2
全細孔容積は、吸着等温線から得られた平衡相対圧(P/P0)=0.99付近の飽和吸着ガス量から求めた。
孔径2nm以下のマイクロポア容積は、窒素ガスの吸着膜の厚さtに対して吸着量をプロットしたt−プロット法により求めた。
吸着膜の厚さは、0.35〜0.50nmの範囲でHarkins & Juraの式
t=〔13.99/{0.034−log(P/P0}〕0.5……………………(3)
により求めた。
吸油量の測定は、株式会社あさひ総研製の吸油量測定器S−410型を使用して亜麻仁油を用いてJIS K6217にしたがって測定した。
これに対極としてリチウム金属を用い、セパレーターを介し対向させて電極群とした後、1MLiPF6/EC:MEC(1:2)の電解液を加えてコインセルを形成し、充放電試験に供した。
充放電条件は、まず電流値0.5mA/cm2で定電流充電をおこない、電圧値が0.01Vになった後定電圧充電に切り替え、電流値が0.01mA/cm2に下がるまで充電を行った。充電終了後、電流値0.5mA/cm2で定電流放電をおこない、電圧値が1.5Vとなったところで放電終了した。
また、負極活物質の吸油量が低減されており、バインダー樹脂が負極活物質内部に吸収されることが少なく、負極活物質同士及び負極活物質と集電金属箔との密着性が向上するので電極が長寿命となりHEV等の用途に最適である。
炭素粉末A
熱膨張係数が1.0×10-6/℃の石炭系仮焼コークス(仮焼温度:1300℃)を粉砕し、平均粒子径(D50)=7.45μmとした。粉砕した仮焼ニードルコークス100重量部と軟化点110℃のバインダーピッチ20重量部を加えた後、加熱ニーダーを使用して150℃で1時間混捏した。これを非酸化性雰囲気下1000℃で焼成後、解砕、目開き38μmの篩いを通過させて炭素質粉末Aを得た。
炭素粉末B
石炭系生コークスを粉砕し、平均粒子径(D50)=9.45μmとした。粉砕した生コークス100重量部と軟化点110℃のバインダーピッチ20重量部を加えた後、加熱ニーダーを使用して150℃で1時間混捏した。これを非酸化性雰囲気下1000℃で焼成後、解砕、目開き38μmの篩いを通過させて炭素質粉末Bを得た。
炭素粉末Aと炭素粉末Bを重量比で1:1で混合して混合物を得た。この混合物の炭素粉末の諸物性を表1に示す。
炭素粉末Aと炭素粉末Bを重量比で3:7で混合して混合炭素粉末を得た。生成した粉末の諸物性を表1に示す。
熱膨張係数が1.0×10-6/℃の仮焼コークス(仮焼温度:1300℃)を粉砕し、平均粒子径(D50)=8.14μmとした。粉砕した仮焼コークス100重量部と軟化点110℃のバインダーピッチ8重量部を加えた後、加熱ニーダーを使用して150℃で1時間混捏した。これを非酸化性雰囲気下1000℃で焼成後、解砕、目開き38μmの篩いを通過させて炭素質粉末を得た。生成した粉末の諸物性を表1に示す。
熱膨張係数が1.0×10-6/℃の仮焼コークス(仮焼温度:1300℃)を粉砕し、平均粒子径(D50)=8.14μmとした。粉砕した仮焼コークス100重量部と軟化点110℃のバインダーピッチ8重量部を加えた後、加熱ニーダーを使用して150℃で1時間混捏した。この混捏物を非酸化性雰囲気下1000℃で焼成後、解砕、目開き38μmの篩を通過させて炭素質粉末を得た。生成した比較例1の炭素粉末の諸物性を表1に示す。
Claims (5)
- 平均粒径D50が3〜20μmで900〜1500℃で仮焼したコークス粉末100重量部に光学的等方性ピッチを10〜30重量部加えて加熱混合し、800〜1300℃で焼成して得た炭素粉末Aと平均粒径D50が3〜20μmの生コークス粉末100重量部に光学的等方性ピッチを10〜30重量部加えて加熱混合して800〜1300℃で焼成して得た炭素粉末Bとの混合物からなるリチウムイオン二次電池用負極活物質。
- 請求項1において、炭素粉末Aと炭素粉末Bの混合重量比が1:1〜3:7であるリチウムイオン二次電池用負極活物質。
- 請求項1または2において、SEM観察による最大粒子径が75μm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
- 請求項1または2のいずれかのリチウムイオン二次電池用負極活物質に有機バインダーと分散媒を加えて混練りしたペーストを金属製の集電体上に塗工、乾燥、プレスすることにより、塗工厚さが30〜100μm、電極密度が0.9〜1.5g/cm3であるリチウムイオン二次電池用負極。
- 平均粒径D50が3〜20μmで800〜1500℃で仮焼したコークス粉末と平均粒径D50が3〜20μmの生コークスを混合した混合粉末100重量部に光学的等方性ピッチを10〜30重量部加え、加熱混合して800〜1300℃で焼成するリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
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