JP5318395B2 - ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル含有油性組成物 - Google Patents
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Description
界面活性剤等の皮膚刺激緩和剤として、トレハロースモノ脂肪酸エステル(特許文献1:特開平10−45560号公報)、パーフルオロアルキル基およびポリオキシアルキレン基を側鎖として持つシリコーン(特許文献2:特開平6−199629号公報)、アルコール刺激緩和剤として、フェニルエチル−α−グルコシド、フェニルエチル−β−グルコシドのようなグルコース誘導体(特許文献3:特開平8−283121号公報)、脂溶性薬剤の刺激緩和剤としてポリアルキレングリコール(特許文献4:特開2002−212024号公報)、経皮外用剤の刺激緩和剤としてクエン酸トリアルキル、多価アルコール、水(特許文献5:特開平5−255118号公報)が開示されている。しかしながら、化粧品の基剤として大きな配合比を占める油剤に関しては、安全性に関しては研究されているが(非特許文献1: 杉山、太田、「化粧品油性原料の皮膚刺激性評価」、日皮協ジャーナル、日本産業皮膚衛生協会、1999年2月、第41巻、p.136−142)、刺激緩和作用については研究されていない。
(1)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルとジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、プロピレングリコールのいずれか1つあるいは複数を含有する油性組成物。
(2)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは、構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル〜0.8モル:1.0モルであることを特徴とする(1)記載の油性組成物。
(3)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは、構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モルであることを特徴とする(1)記載の油性組成物。
(4)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの25℃における粘度が2,500〜4,500mPa・sであることを特徴とする(1)記載の油性組成物。
(5)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルが皮膚刺激緩和成分であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の油性組成物。
(6)顔用または身体用の保湿化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の油性組成物。
(7)(6)記載の油性組成物からなる皮膚刺激緩和化粧料。
2.本発明の油性組成物は刺激緩和効果に優れるので、本発明の油性組成物を用いることにより、刺激物質による皮膚のバリア破壊を抑制することができる。バリア破壊の抑制により肌荒れが改善し、皮膚が保護されるので、肌荒れ改善効果・保湿効果に優れる油性組成物を提供することができる。
3.本発明の油性組成物を用いることにより、皮膚刺激に伴う乾燥から引き起こされる老化に対し、優れた保湿効果により皮膚の健康を維持するので老化を予防できる。
4.本発明の油性組成物は、軟膏状化粧料、軟膏状医薬部外品、軟膏状皮膚外用剤、リップクリーム、あるいは、油性増粘剤でゲル化した油性ゲル状化粧料、油性ゲル状医薬部外品、油性ゲル状皮膚外用剤、油性ゲル状リップクリーム等に適用できる。本発明の油性組成物は、顕著な刺激緩和効果及び肌荒れ防止効果を有するので、保湿化粧料、肌荒れ改善外用薬に適している。本発明は、刺激緩和化粧料として適している。
本発明は、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルと、2価アルコールを含有する油性組成物を基本構成とする。皮膚刺激緩和性に優れ、安定した油性組成物を構成する。
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは、構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル〜0.8モル:1.0モルが好ましく、特に、0.5モル:1.0モルが好ましい。
本発明に用いるダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(以下「DEG−DA」と称することがある)は、ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化して得られる。 ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの25℃における粘度は、2,500〜4,500mPa・sであることが好ましく、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは皮膚刺激緩和成分である。
本発明の油性組成物料に配合するダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの配合量は必ずしも制限されないが、化粧料全量に対し、10〜80質量%が好ましい。
<ダイマージリノール酸>
ダイマージリノール酸は、一般的にはダイマー酸と呼ばれる2塩基酸で、2分子のリノール酸[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸]等の不飽和脂肪酸を重合させたリノール酸の2量体である。リノール酸の重合反応の生成物にはリノール酸の2量体の他に、未反応のリノール酸や3量体、さらに高重合のリノール酸重合体が含まれる。分子蒸留によりリノール酸の2量体の含有量を90質量%以上に高めることができる。また、得られたリノール酸の2量体の不飽和結合に水素を添加して安定化させることができる。これらのリノール酸の2量体を水素添加したものは、一般的には水添ダイマー酸と呼ばれている。本発明のダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの合成に用いるダイマージリノール酸としては、これらのダイマー酸、及び、水添ダイマー酸の何れをも使用することができるが、酸化安定性の観点から水添ダイマー酸を使用することがより好ましい。水添ダイマー酸は市販品、例えばユニケマ社PRIPOL1006、PRIPOL1009、PRIPOL1025等を用いることが可能である。
ジエチレングリコールはO(CH2CH2OH)2の化学式で表される化合物であり、有機合成原料として市販されている。
いずれにしてもダイマージリノール酸と比べてジエチレングリコールが過剰なので、カルボキシル基はほとんど残存せず、オリゴマーの末端に残存する官能基はほとんど水酸基となる。ダイマージリノール酸とジエチレングリコールのモル比が1に近づくと重合度が増大し、油剤の粘性が増大し好ましくない。また、ジエチレングリコールと比べてダイマージリノール酸のモル濃度が過剰になると、残存する官能基がカルボキシル基となり、安全性の点で好ましくない。
なお、特許文献6には、各種のダイマー酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを配合した化粧料について検討されているが、刺激緩和作用は検討されていない。特開2004−256515号公報には、ダイマー酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマー酸:ジエチレングリコール=1:0.5)/混合アルコール(ベヘニルアルコール:イソステアリルアルコール:フィトステロール=9:1:1)エステルが開示されているが、本願発明の仕込み比率がダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル〜0.8モル:1.0モルであるダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは開示されておらず、極性が異なり、両者は物性、使用性が全く異なる。
本発明の油性組成物に配合する2価のアルコールとしては、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、プロピレングリコール等が挙げられる。
本発明の油性組成物としては軟膏状化粧料、軟膏状医薬部外品、軟膏状皮膚外用剤、リップクリーム、あるいは、油性増粘剤でゲル化した油性ゲル状化粧料、油性ゲル状医薬部外品、油性ゲル状皮膚外用剤、油性ゲル状リップクリーム等が挙げられる。本発明の油性組成物は、顕著な刺激緩和効果及び肌荒れ防止効果を有するので、保湿化粧料、肌荒れ改善外用薬に適している。刺激緩和化粧料として適している。
本発明の油性組成物には、その用途、使用目的、剤形などに応じて、トリグリセライド油、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、油性増粘剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
エステル油としては2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル等が挙げられる。
炭化水素油として、スクワラン、流動パラフィンなどが挙げられる。
シリコーン油として、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等があげられる。
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体があげられる。
油性増粘剤として、パルミチン酸デキストリン、マイクロクリスタリンワックス、(ベヘン酸/エイコサンニ酸)グリセリル、シリカ、シリル化シリカ等が挙げられる。
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等をあげることができる。
金属イオン封鎖剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩をあげることができる。
べたつきを抑えたり、色を付けたりするために、粉末成分として、例えば、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末、無機白色顔料、無機赤色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等のタール色素をあげることができる。
紫外線遮断剤として、例えば、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等をあげることができる。
薬効成分として、例えば、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD2、コレカルシフェロール等のビタミンD類、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類をあげることができる。
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を配合することができる。
以下に、本発明の乳化組成物の主要な成分の1つであるダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルに関する製造例及び刺激緩和作用、安全性等の確認試験を記載する。なお、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは以下「DEG−DA」と表記する場合がある。
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル)をDEG−DAの例1とし、その製造を示す。
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)349g(0.6モル)及びジエチレングリコール127g(1.2モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生成する水を留去しながら12時間エステル化反応を行い、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5:1.0)(以下「DEG−DA5」と表すことがある)416gを淡黄色高粘度油状物として得た。
得られた3ロットの油剤の物性値を以下表1に示す。
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.8モル:1.0モル)をDEG−DAの例2とし、その製造を示す。
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)372g(0.64モル)及びジエチレングリコール84.8g(0.8モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生成する水を留去しながら14時間エステル化反応を行い、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.8:1.0)(以下「DEG−DA8」と表すことがある)375gを淡黄色高粘度油状物として得た。
得られた油剤の物性値を以下表2に示す。
油剤としてDEG−DA5、市販のダイマー酸エステル、ダイマージオールエステルを用いての薬物皮膚浸透性を評価した。
1.試料
表3に示すDEG−DA5を油剤とし及び市販のダイマー酸エステル、ダイマージオールエステルに、1%となるようイブプロフェン(Sigma)を溶解した試料を用いて、薬物皮膚浸透試験を実施した。
−80℃に冷凍保存されたYucatan Micropig背部皮膚(5ヵ月齢雌性、日本チャールスリバー(株))を室温で30分間解凍し、皮膚についた余分な脂肪を取り除いた後、約2cm四方に切断し試験に用いた。
有効面積0.95cm2で皮膚をセルにはさみ、試料0.2mlを塗布した。48時間後に皮膚表面の試料を拭き取りにより除去し、皮膚をメタノール/0.1%リン酸水溶液混液(70:30)中で鋏およびホモジナイザーを用いて破砕してイブプロフェンを抽出し、皮膚中のイブプロフェン量をHPLCにて測定した。測定結果を表3に示す。
2.1 HPLC測定条件
検出器:紫外吸光光度計LC−10AD((株)島津製作所 製)
測定波長:220nm
カラム:TSK−GEL ODS−80Ts4.6mm×150mm(東ソ(株))
移動相:メタノール:0.1%リン酸水溶液= 75:25
流 速:1ml/分
2.2 データ処理
CLASS−VP(島津製作所(株)製)を用い、イブプロフェンのピーク面積から別に検量線を作成し、計算により濃度を求めた。
測定結果を表3に示す。
イブプロフェンは経皮吸収性の指標として一般的に用いる。イブプロフェンの皮膚への吸収が少なければ、刺激物質の吸収を抑制する効果に優れる。
DEG−DA5にイブプロフェンを溶解した場合、48時間後の皮膚中のイブプロフェン量が21μgなのに対して、市販のダイマー酸エステル、ダイマージオールエステルの場合、イブプロフェン量は37μg〜70μgであった。ダイマー酸エステル、ダイマージオールエステルの中でも油剤としてのDEG−DA5は、極めてイブプロフェンの皮膚浸透を抑制する効果に優れ、刺激物質の吸収抑制効果に優れている。市販油剤の中でもLUSPLAN DD-DHR:日本精化(株)製 ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物 (イブプロフェン量37μg)、LUSPLAN DD-DA7:日本精化(株)製 ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル(イブプロフェン量42μg)もイブプロフェンの吸収量が低いほうであるが、両油剤とも粘性が高く、べたつきが強く、ぎらつくので、保湿化粧料に用いることは困難である。
DEG−DA5、DEG−DA8と市販の油剤の刺激緩和作用を比較した。
1.被験物質
表4に示す油剤をそのまま、あるいは動物やヒトで刺激性があると報告されているラウリン酸を油剤中に0.5質量%、0.8質量%、1.2質量%添加して被験物質とした。
2.1 コラーゲンゲルの作製
タイプI−ACコラーゲン(高研)水溶液と正常ヒト線維芽細胞(CAMBLEX製)の培地中懸濁液、並びに適量の再構築液をスターラーで混合して調製し、タイプI−ACコラーゲン(高研)の最終濃度0.1質量%、正常ヒト線維芽細胞(CAMBLEX製)の最終濃度4.0×105cells/mLとして、6wellカルチャーインサート(FALCON製)に1mL滴下した。培養培地はDMEM+10%FBSを用いた。コラーゲンゲルを、約16時間(12時間〜24時間)培養した。
2.2 被験物質のコラーゲンゲルへの適用
2.1で作製したコラーゲンゲル上にラウリン酸0.5質量%、0.8質量%、1.2質量%添加および無添加の被験物質を1g添加し、24時間暴露させた。24時間暴露後、被験物質を除去しMTTassayによる細胞生存率を測定・算出し、細胞生存率のラウリン酸濃度依存性を調べた。
結果を表4に示す。
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5:1.0)はラウリン酸を1.2質量%添加したものでも細胞生存率は約80%であり、刺激緩和効果に極めて優れることが分かった。ラウリン酸無添加よりも、ラウリン酸0.5%添加のほうが細胞生存率が向上しているデータがあるがDEG−DA5で95%→104%、LUSPLAN DD-ISで72%→78%)、これはデータのばらつきによる。
ラウリル硫酸ナトリウムを添加したクリームを正常ヒト線維芽細胞に適用し、クリームがラウリル硫酸ナトリウムの刺激を緩和する効果を調べた。
1.被験クリーム
表5に示された処方のDEG−DA5を配合したクリームである試験例13と参考比較例1、参考比較例2のクリームを用い、各クリーム、並びに、それらのクリームに10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を添加混合し、クリーム中のラウリル硫酸ナトリウムの含有量を0.1%に調整したものを用いた。
被験クリームを培地に混合希釈した。
正常ヒト線維芽細胞を96穴プレートに3.5×103播種し、5日間培養した。
コンフルエントの状態で、被験クリームの濃度が0.156%〜20%となるように混合希釈した培地に交換し、細胞を被験クリームに暴露させた。
20時間暴露後MTTアッセイ法を用いて細胞生存率を求めた。
ラウリル硫酸ナトリウムを含有しないクリームを各種濃度で細胞に暴露したときの生存率を図1に、0.1%の濃度でラウリル硫酸ナトリウムを含有させたクリームを各種濃度で細胞に暴露したときの生存率を図2に示す。
図1に示すように、各例ともラウリル硫酸ナトリウムを含有しないクリームを各種濃度で細胞に暴露したとき、培地中のクリームの濃度が0.156%から20%に増大するにつれて、生存率は約80%から約60%にほぼ同様に低下した。
一方、図2に示すように、0.1%の濃度でラウリル硫酸ナトリウムを含有させたクリームを各種濃度で細胞に暴露したとき、培地中のクリームの濃度を0.156%から10%まで増大させても、各例とも細胞生存率は約80%から約70%にほぼ同様に低下する程度であった。
しかしながら、培地中のクリームの濃度を20%にすると0.1%の濃度でラウリル硫酸ナトリウムを含有させた試験例1のクリームは54%の細胞生存率を維持したが、0.1%の濃度でラウリル硫酸ナトリウムを含有させた参考比較例1及び2のクリームでは細胞が殆ど死滅した(細胞生存率1%)。
従って、試験例1のクリームはラウリル硫酸ナトリウムの刺激を緩和する効果が特に優れている。
DEG−DA5、DEG−DA5を油剤として配合したクリーム(試験例1とする)、流動パラフィン、流動パラフィンを配合したクリーム(参考比較例1)について、ラウリル硫酸ナトリウムの刺激を緩和する効果をヒトパッチテストにて評価した。
1.前処理被験品
DEG−DA5、流動パラフィン並びに表5の組成の試験例1、参考比較例1のクリームをパッチテスト被験品を適用する前に皮膚に塗布した。
2.パッチテスト被験品
0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液と滅菌水(対照)をパッチテスト被験品とした。
過去のパッチテストにおいてラウリル硫酸ナトリウム0.1〜0.5%水溶液で擬陽性反応以上を示し、貼付部位にかゆみ、かぶれなどの皮膚症状がでていない、健康な20〜50代の12名(男3名、女9名)を用いた。
4.試験方法
前処理被験品を塗布し、その後、パッチテスト被験品を検体とした24時間閉塞貼付試験を行った。被験者の上腕内側部にあらかじめ10mm×30mmの範囲を片腕3箇所および2箇所(両腕で5箇所)マーキングし、各箇所の経皮水分蒸散量をDelfin製vapometerを用いて測定した。次に、前処理被験品4品を1箇所ずつ10μL塗布し5〜10分程度なじませた(残り1箇所は前処理被験品無塗布)。前処理被験品が皮膚になじんだことを確認後、パッチテスト被験品約20μLを人体貼付試験用フィンチャンバー(直径11mm大正製薬)上の濾紙に滴下し、直ちに被験者の5箇所のマーキング箇所に22時間閉塞貼付した。フィンチャンバーを除去して、2時間後(貼付24時間後)および翌日24時間後(貼付48時間後)に表6に示す判定基準に従って、皮膚反応を目視観察した。同時に経皮水分蒸散量を測定した。
目視判定結果を表7に示す。
前処理被験品無塗布の場合、0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液貼付24時間後の皮膚刺激評点平均値0.750であるが、前処理被験品を塗布することにより、皮膚刺激評点平均値が低減する。特に、DEG−DA5(0.208)、試験例1のクリーム(0.167)は刺激緩和効果が顕著であり、前処理被験品無塗布と比べて皮膚刺激評点平均値が2/10〜3/10に低減している。参考比較例1のクリーム(0.458)は、前処理被験品無塗布と比べて6/10であり刺激緩和効果が認められるが、流動パラフィン(0.667)は、前処理被験品無塗布と比べて9/10であり、刺激緩和効果は殆ど認められない。
DEG−DA5、並びにDEG−DA5を配合した試験例1のクリームが顕著な刺激緩和作用を有することが確認できた。
経皮水分蒸散量測定結果を表7に示す。
前処理被験品無塗布の場合、0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液貼付24時間後の経皮水分蒸散量は8である。滅菌水を貼付したときの経皮水分蒸散量は3であり、それと比べて明らかに皮膚バリアが破壊され、肌荒れが進んでいることがわかる。DEG−DA5、試験例1のクリームを事前に塗布することにより、0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液貼付24時間後の経皮水分蒸散量はそれぞれ5及び4であり、前処理被験品無塗布8の約半分に抑制される。
従って、刺激緩和効果及び肌荒れ防止効果が発揮されている。参考比較例1のクリームを事前に塗布した場合、0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液貼付24時間後の経皮水分蒸散量は7であり、前処理被験品無塗布8と殆ど変わらず、刺激緩和効果及び肌荒れ防止効果が殆ど認められない。流動パラフィンを事前に塗布した場合は、0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液貼付24時間後の経皮水分蒸散量は11であり、前処理被験品無塗布8の約1.4倍であり、皮膚刺激並びに肌荒れが増強されている。
DEG−DA5(DEG−DA5)、DEG−DA5を配合したクリームのアトピー性皮膚炎または皮脂欠乏症の被験者に対する刺激緩和効果をヒトパッチテストにて検証した。
1−1 年齢構成
19歳〜45歳までの男性20例で平均年齢は27.9歳であった。試験途中の脱落はなかった。
1−2 被験者の皮膚疾患
事前に試験担当医師が被験者の症状について診断した。アトピー性皮膚炎11例、皮脂欠乏症9例であった。アトピー性皮膚炎疾患の被験者は軽症が7例、軽症〜中等症が2例、中等症が2例であった。
DEG−DA5およびDEG−DA5を配合したクリーム3種、参考比較例として化粧品用油剤として一般的に使用される流動パラフィンとスクワランを配合したクリーム4種及び皮膚科で処方される保湿剤の代表としてワセリンを前処理被験品とした。無処理を対照とした。
1.DEG−DA5を20%配合した試験例1のクリーム
2.DEG−DA5を10%配合した試験例2のクリーム
3.DEG−DA5を5%配合した試験例3のクリーム
4.流動パラフィンを20%配合した参考比較例1のクリーム
5.流動パラフィンを10%配合した参考比較例3のクリーム
6.スクワランを20%配合した参考比較例2のクリーム
7.スクワランを10%配合した参考比較例4のクリーム
8.DEG−DA5
9.ワセリン(日興リカ製)
10.無処理 (対照)
試験例1、参考比較例1、2のクリームの処方は表5に示した。試験例4、5、参考比較例3、4のクリームの処方を表8に示す。
前処理剤の安全性確認試験のため24時間クローズドパッチテストを実施した。貼付した4被験物質[DEG−DA5配合20%クリーム(試験例1)、流動パラフィン20%配合クリーム(参考比較例1)、スクワラン20%配合クリーム(参考比較例2)、ワセリン]の目視評価結果を表8に示した。DEG−DA5配合クリームや流動パラフィン配合クリームが各判定時間で全陰性の結果に対し、スクワラン配合クリームでスコア3を示した被験者が24h判定で1名、ワセリンではスコア1を示した被験者が24hで1名認めた。しかし、48h、7日目では刺激反応が低減しており、アレルギー症状ではないことが確認できた。以上の結果より、4被験物質は、24h閉塞貼付結果、明らかな一次皮膚刺激性はないことが確認できた。
皮膚一次刺激の緩和効果を評価するため、皮膚刺激物質として0.5%ラウリル硫酸ナトリウム(関東化学)水溶液(以下、SLSと呼ぶ)をパッチテスト被験品とした。各塗布部には、対照としてそれぞれ滅菌水を同時に貼付した。
被験者の背部にプラスチック枠を用いて10mm×30mmの領域を10箇所設定し、DEG−DA5、ワセリン並びに試験例1〜5、参考比較例1〜4のクリームの一定量(約15μL)を微量分注器で量り採り、1箇所に1種類の前処理被験品を塗布した。前処理被験品塗布領域は9箇所であり、残りの1箇所は対照として無処理区とした。
その後、皮膚刺激物質である0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(SLS)および対照の滅菌水をパッチテスト被験品として24時間クローズドパッチテストを実施した。パッチテストには大正製薬のフィンチャンバーを使用した。
塗布部は背骨を挟んで左右5箇所を選択した。塗布部は試験担当医師が被験者の背部を所見し、紅斑等の炎症部位は避けて前処理被験品塗布、パッチ絆貼付を行った。
以下の2項目を評価した。
1) 皮膚所見: パッチテストによる皮膚変化の目視判定(試験2日目、3日目、7日目)
2) 理学検査: vapometer(Delfin)による経表皮水分蒸散量(試験2日目、3日目)
6.1 皮膚所見
目視判定は皮膚刺激判定基準(表9)に準じて試験担当医師が行った。判定結果は評点にかえ平均値を算出した。得られた値を無塗布部、ワセリン塗布部と比較して有効性を判断した。
vapometerを用いて得られた経表皮水分蒸散量測定値は、各パッチ絆貼付部位より無貼付部位値を差し引いた値を解析に用いた。それぞれの被験物質塗布部の値と無塗布部、ワセリン塗布部と比較して、有効性を判断した。
貼付24時間後、48時間後、7日目に皮膚刺激基準に従って試験担当医師が目視判定した。貼付24時間後の目視判定結果を表10に、貼付48時間後の目視判定結果を表11に示す。図3、図4に各前処理剤における20名の0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(SLS)皮膚刺激スコアのうち、皮膚刺激基準スコア3、4だけを抜粋し、24時間後、48時間後の総和人数を示した。皮膚刺激基準スコアが4を超える被験者はいなかった。
24時間判定では、無塗布部位と比較してDEG−DA5塗布部位、DEG−DA5 20%配合クリーム(試験例1)塗布部位で明らかに目視評価スコア3,4以上を示した被験者が少なく、次いでDEG−DA5 10%配合クリーム(試験例2)、DEG−DA5 5%配合クリーム(試験例3)であった。ワセリンは0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(SLS)貼付による目視評価スコア3,4以上を示した被験者が5人と無塗布部位の12人と比較すると、少ない結果となったが、DEG−DA5およびDEG−DA5配合クリームと比較するとその人数は多かった。DEG−DA5配合はスコア1以上の合計点数として見ると全体的に刺激が緩和されていることが認められ、さらに、前述のように刺激が強いスコア3以上も少ないことが認められる。
Wilcoxon符号付順位和検定の結果、DEG−DA5塗布部位(DEG−DA5)、DEG−DA5 20%配合クリーム(試験例1)塗布部位、DEG−DA5 10%クリーム(試験例2)塗布部位でワセリン塗布部位と比較して有為にスコアが低い結果となった(p<0.05)。DEG−DA5 5%配合クリーム(試験例3)では抑制傾向はみられたものの有為差はなかった。また、DEG−DA5 20%配合クリーム(試験例1)は、流動パラフィン20%配合クリーム(参考比較例1)、スクワラン20%配合クリーム(参考比較例2))と比較して有意に刺激スコアが抑制されていた。さらに、DEG−DA5 10%配合クリーム(試験例2)は、流動パラフィン10%配合クリーム(参考比較例3)、スクワラン10%配合クリーム(参考比較例4)と比較して有意に刺激スコアが抑制されていた。
Wilcoxon符号付順位和検定の結果、DEG−DA5塗布部位(DEG−DA5)、DEG−DA5 20%配合クリーム(試験例1)塗布部位、DEG−DA5 5%クリーム(試験例3)塗布部位でワセリン塗布部位と比較して有為にスコアが低い結果となった(p<0.05)。また、DEG−DA5 20%配合クリーム(試験例1)はスクワラン20%配合クリーム(参考比較例2)と比較して有意に刺激スコアが抑制されていた(p<0.05)。
7日目判定は、アレルギー症状の有無を確認するために実施した。その結果、スコア1以上を示した被験者は1名のみで無塗布部のSLS貼付部位であり、前処理剤の影響はなかった。
表13、図5、図6に各被験物質の経表皮水分蒸散量値の平均値を示す。貼付24h後では、SLS貼付部位でその刺激性によるTEWL値抑制傾向が認められた箇所はDEG−DA5、DEG−DA5 20%配合クリーム(試験例1)、DEG−DA5 10%配合クリーム(試験例2)であった。DEG−DA5 20%クリーム(試験例1)、DEG−DA5 10%クリーム(試験例2)は無塗布部位に対して、またDEG−DA5 20%クリーム(試験例1)はワセリン塗布部位に対しても有為に刺激抑制効果が認められた(p<0.05)。貼付48h後では、すべての前処理剤において無塗部位と比較するとSLS貼付によるTEWL値上昇が有為に抑制されていた(p<0.05)。特にDEG−DA5(DEG−DA5)、DEG−DA5 20%配合クリーム(試験例1)ではワセリン塗布部位と比較しても有為に抑制された(p<0.05)。
本試験では、DEG−DA5およびDEG−DA5を配合したクリームの刺激成分浸透抑制効果をアトピー性皮膚炎患者の方、皮脂欠乏症の方20名を対象にして検証した。その結果、DEG−DA5およびDEG−DA5配合クリームが濃度依存的にSLSの刺激を抑制する傾向が認められ、ヒトに用いる際に効果を発揮するおおよその濃度が示唆された。
また、DEG−DA5およびDEG−DA5配合クリームのアトピー性皮膚炎疾患者、皮脂欠乏症疾患者に対する24時間クローズドパッチテストによる安全性確認ができた。
以上の結果より、DEG−DA5を配合した化粧料は、バリア機能が低下したアトピー性皮膚炎疾患者、皮脂欠乏症者の使用に適している。
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(DEG−DA)と2価アルコールを含有する油性組成物に関する実施例及び比較例について以下に記載する。
油性組成物の調製
実施例1〜5、比較例1〜5の油性組成物を、表14の処方にて、1〜9の成分を加熱溶解し、攪拌しながら冷却して調製した。
ガラス瓶に油性組成物を充填し、40℃の恒温槽に入れ、1ヵ月後の安定性(外観)を以下の基準により評価した。
○:変化なし
×:液状油が分離した
2価アルコールを配合しない比較例1、2価のアルコールに換えてエタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、グルコース、ラフィノースを配合した比較例2〜5は40℃1ヶ月で、液状油が分離した。
比較例5
実施例1の油剤(DEG−DA5)をスクワランに置き換え、ジプロピレングリコールの換わりに油性増粘剤のパルミチン酸デキストリンを配合して安定化させた比較例6の油性組成物を、表15の処方にて成分1〜5を加熱溶解し、攪拌しながら冷却して調製した。
実施例1と比較例6の油性組成物の刺激緩和作用を比較した。
1.被験物質
実施例1、比較例6の油性組成物をそのまま、あるいは動物やヒトで刺激性があると報告されているラウリン酸を油性組成物中に0.5質量%、0.8質量%添加して被験物質とした。
2.1 コラーゲンゲルの作製
タイプI−ACコラーゲン(高研)水溶液と正常ヒト線維芽細胞(CAMBLEX製)の培地中懸濁液、並びに適量の再構築液をスターラーで混合して調製し、タイプI−ACコラーゲン(高研)の最終濃度0.1質量%、正常ヒト線維芽細胞(CAMBLEX製)の最終濃度4.0×105cells/mLとして、6wellカルチャーインサート(FALCON製)に1mL滴下した。培養培地はDMEM+10%FBSを用いた。コラーゲンゲルを、約16時間(12時間〜24時間)培養した。
2.2 被験物質のコラーゲンゲルへの適用
2.1で作製したコラーゲンゲル上にラウリン酸0.5質量%、0.8質量%添加および無添加の被験物質を1g添加し、24時間暴露させた。24時間暴露後、被験物質を除去しMTTassayによる細胞生存率を測定・算出し、細胞生存率のラウリル硫酸ナトリウム濃度依存性を調べた。
結果を図7、表16に示す。
Claims (7)
- ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルと、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、プロピレングリコールのいずれか1つあるいは複数を含有する油性組成物。
- ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは、構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル〜0.8モル:1.0モルであることを特徴とする請求項1記載の油性組成物。
- ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは、構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モルであることを特徴とする請求項1記載の油性組成物。
- ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの25℃における粘度が2,500〜4,500mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の油性組成物。
- ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルが皮膚刺激緩和成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の油性組成物。
- 顔用または身体用の保湿化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の油性組成物。
- 請求項6記載の油性組成物からなる皮膚刺激緩和化粧料。
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