JP5316982B2 - 超微細粒組織鋼からなる高強度成形品及びその製造方法 - Google Patents

超微細粒組織鋼からなる高強度成形品及びその製造方法 Download PDF

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Description

本願発明は、本体が微細なバンブー組織で構成され、この本体の所望する一部の位置に微細な等軸状組織が形成された強靭な成形品とこれを製造する技術に関するものである。
自動車及び航空機等の精密大型機械から各種電化製品及び情報機器等の小型精密機器に至るさまざまな製品に使用されるボルト及びねじ部品等の締結部品に代表される成形品に対しては、製品の安全性、利便性及びコンパクト化等の観点から、より一層の強靭化及び長寿命化が要請される。しかも、これら成形品の製造工程については、環境への負荷を軽減することも重要な要件である。
従来、鋼製部品の強靭化に対しては、主として、合金成分並びに加工及び熱処理条件を最適化することにより達成されてきた。これに対して、最近では省資源、省エネルギー及び環境負荷軽減が可能となる成形品の製造技術が研究されている。例えば、特開2004−60046(以下、特許文献1という)には、合金元素の添加あるいは調質処理によらず、超微細組織を形成させることによって強度が確保されている高強度な成形品、たとえば圧造品や、各種の部品、部材と、そしてその高強度な成形品を簡便に製造することができる、ネジ、ボルトをはじめとする高強度な成形品とその製造方法が提案されている。即ち、特許文献1によれば、短径の平均粒径が最小で0.5μmの線材をヘッダー成形し、転造して小ねじ又はボルト若しくはリベットに加工した高強度の成形品が開示されている(同特許文献の例えば、段落番号0018、表2、表3)。
特開2004−60046 しかしながら、同特許文献では、成形品の平均粒径は最小でも0.5μmであり、引張強さTSは最大でも843MPaである。そして、特に、平均粒径が0.5μmまで超微細粒化された線材の頭部の冷間圧造部についての組織形態及び強度については、何らの記載も示唆もされていない。従って、特に上記冷間圧造を施された部位の強度を重視し、且つ成形品本体が同特許文献に開示されている水準以上の強度が要請される成形品に対しては、対応することができない。
上述したように、成形品本体の所望する部位の強度を差別化して、その所望する限定された部位の強度を本体の強度よりも更に一段と高強度化された成形品を得ることは特許文献1をもってしても、困難である。
そこで、本願発明の目的は、成形品本体の強度が特許文献1により得られる強度水準以上、即ち850MPa水準以上であって、しかも所望する限定された部位の強度がその本体よりも更に一段と高水準の強度を有する成形品と、その製造技術を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本願発明者等は鋭意研究を重ねた。その結果、下記知見を得た。
[第1の知見]
本願発明者等は、温間圧延により得られた、2μm以下0.5μm程度まで細粒化されたフェライト粒径を有する超微細粒組織鋼からなる鋼線又は棒鋼は、引張り強さTSに優れていると同時に、延性特性の中でも絞りRAが従来認識されていなかった優れた高水準を備えていることを新たに知見した。
具体例として、C含有量が0.001〜0.02質量%の炭素鋼成分を有する上記温間圧延材において、圧延方向に垂直な断面におけるフェライトの平均粒径が1.2μm以下0.5μm以上の範囲内のフェライトを主相とする組織を有する棒鋼の機械的性質は、上記温間圧延後、一切の熱処理を施さなくても、図1に示すように、引張強さTSが800MPa程度の高水準においても、絞りRAが70%以上に確保されている。ここで、フェライトを主相とする組織とは、第2相が残部として存在してもよいし、また第2相が存在せずフェライトのみであってもよい組織を意味する。
[第2の知見]
鋼線の製造過程における冷間加工の総減面率と、鋼線の引張強さTS及び絞りRAとの関係を試験した結果、上記第1の知見で得られた温間加工方法により得られた高引張強さTS且つ高絞りRA特性を有する線材の段階で、フェライト粒が当該線材の長手方向に垂直な断面における平均粒径で、少なくとも3μm以下の微細粒組織鋼としておき、このような線材に対して所定の冷間加工を施すことにより、結晶組織は一層微細化され、そして、この冷間加工による組織の微細化に伴って材料の引張強さTSが更に著しく上昇し、しかも引張強さTSが著しく上昇しても、高水準にあった絞りRAの低下量は、この冷間加工が加えられても極めて小さく抑えられることが新たに知見された。
具体例として、C含有量が0.0014〜0.0109質量%の炭素鋼成分の材料に対して温間圧延を行ない、次いで冷間伸線を施す場合、された鋼線の圧延方向に垂直な断面におけるフェライトの平均粒径は、0.175μm以下0.138μm以上の範囲内にまで細粒化され、こうして超微細粒を付与された鋼線の機械的性質は、上記冷間伸線後に一切の熱処理を施さなくても、図2に示すように、引張強さTSが1370〜1521MPaの水準において、絞りRAが71.8〜62.1%という、引張強さTSと絞りRAとの間に極めて優れたバランス特性が得られている。
そして、上記図2の結果は、C含有量が0.0014〜0.0109質量%の極低炭素鋼の場合であり、その金属組織は実質的にセメンタイトフリーの場合である。
以上、第1の知見及び第2の知見から、所定の材料に温間圧延を施してサブミクロンオーダーの粒径のフェライト主体の微細粒組織鋼を調製し、これに冷間加工を施すことにより更に細粒化された超微細粒組織鋼を製造することにより、高引張強さTSを有し、且つ高絞りRAを有する鋼材が得られることがわかる。
[第3の知見]
第3の知見は次の通りである。一般に冷間加工された材料のフェライト粒は、結晶粒が分断されて新たな結晶粒界が生成する等して、冷間加工後の粒の形態は複雑である。結晶粒が10μm程度以上の場合は、結晶粒が分断され新たな結晶粒界が生成する。これに対して、本願発明者等は、鋭意試験研究を重ねた結果、冷間加工前の材料が、上記第1の知見で述べた如き温間加工後の材料であって、結晶粒径がサブミクロンオーダーとなった場合には、これに強冷間加工が施されると、結晶粒の形は、その材料から強冷間加工を施された後の材料(鋼材)への単純な近似的に幾何学的変形に依存して変形し、結晶粒は成長しないという法則を見出した。
そして更に、次の第4の知見を得た。
[第4の知見]
第4の知見は次の通りである。上記第2又は第3の知見で得られた冷間加工後の材料の結晶組織は、超微細粒のバンブー組織を呈しているが、この超微細粒バンブー組織で構成された材料に対して、このバンブー組織の長手方向に実質的に垂直な断面乃至その長手方向に平行でない断面に、冷間で鍛造加工を施すと、この加工領域の表層部には、等軸状のナノ組織が形成されることがわかった。この等軸状ナノ組織部の平均結晶粒径は、元のC方向断面の平均結晶粒径とほぼ同じ程度であって、その硬さは著しく向上するということを発見した。具体的には、据込み率が60〜70%のとき、ビッカース硬さHで、バンブー組織では250〜280の水準であったものが、等軸状組織部では、300〜390程度まで上昇する。この等軸状ナノ組織部は、上記超微細粒のバンブー組織部にみられる機械的性質等の異方性が著しく改善された。本知見は、本願発明において極めて重要な意義を持つ。
なお、バンブー組織(bamboo structure)とは、通常使用されるように、金属粒子間の結晶粒界が加工方向に垂直な方向に延びる竹のような形状をなす金属組織をいう。また、等軸状組織部の結晶粒(以下、「等軸状の結晶粒」という)とは、加工方向の粒径とこれに垂直方向の粒径との比(γ)が、約5:1以下であって、バンブー組織の結晶粒のような加工方向に平行な直線的形状が明らかに消失したものをいう。なお、γの値は、加工比の増大により減少する。
本願発明は、上記第1から第4の知見に基づきなされたものであり、特に本願発明の完成に対しては、第4の知見が最大の決め手である。本願発明の要旨は次の通りである。
第1の発明は、超微細粒組織鋼からなる高強度成形品であって、
C :0.02質量%未満、
Si:0.50質量%以下、
Mn:0.50質量%以下、及び
Al:0.002〜0.05質量%
とする化学成分組成を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼であると共に、圧延方向に垂直な断面におけるフェライトの平均粒径が1.2μm以下0.5μm以上の範囲内のフェライトを主相とする組織を有する温間加工後の材料から製造される前記鋼であって、一部領域に等軸状組織が形成され、この等軸状組織の形成領域の平均粒径が200nm以下であり、残部領域にはバンブー組織が形成され、このバンブー組織の形成領域の長手方向に垂直な断面組織の平均粒径が200nm以下であることを特徴とする。

ここで、「等軸状組織の形成領域」とは、上述した等軸状の結晶粒が形成されている領域を指し、そしてこの領域の「平均粒径」とは、任意方向の断面組織における平均粒径を指す。
なお、本願発明において「成形品」とは、ネジ、ボルト、ナット、シャフト、リベット、ピン、スタッドボルト、ファスナー類、歯車、軸類、バネ及びその他の機械構造部品(日本鉄鋼協会発行、渡辺敏幸著 機械用構造用鋼P46、P97を参照)を指す。
第2の発明は、第1の発明の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品において、前記等軸状組織の形成領域の硬さが、ビッカース硬さで300以上となっており、且つ、前記バンブー組織の形成領域の硬さが230以上となっていることに特徴を有するものである。
第3の発明は、第1の発明の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品において、第2の発明におけるよりも更に高強度化され、前記等軸状組織の形成領域の硬さが、ビッカース硬さで350以上となっており、且つ、前記バンブー組織の形成領域の硬さは250以上となっていることに特徴を有するものである。
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品において、前記成形品がねじ部品であることに特徴を有するものである。
そして、第5の発明は、第4の発明の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品において、前記ねじ部品はその頭部にリセスが形成されており、このリセス底部の表層部の組織に関して、その平均粒径が200nm以下の前記等軸状組織となっており、そしてこのねじ部品の軸部の組織に関しては、この軸部の長手方向に垂直な断面組織の平均粒径が200nm以下の前記バンブー組織となっていることに特徴を有するものである。
そして更に、第6の発明は、第5の発明の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品において、前記ねじはその呼び径が1.4mm以下という、いわゆるマイクロねじであることに特徴を有するものである。
以下、第から第までの発明は、超微細粒組織鋼からなる高強度成形品の製造方法に関する発明である。

第7の発明は、超微細粒組織鋼からなる高強度成形品の製造方法であって、下記化学成分組成:
C :0.02質量%未満、
Si:0.50質量%以下、
Mn:0.50質量%以下、及び
Al:0.002〜0.05質量%
を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を用いた鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半製品に対して温間加工を施すと共に、
当該温間加工は圧延温度が350〜800℃の範囲内において、総減面率が70%以上で、多方向温間多パス圧延で行なわれ、
前記温間加工によって結晶粒径がサブミクロンオーダーの粒径のフェライトを主相とする組織を調整して得られた材料に対して冷間加工、又は冷間加工及び熱処理を施すことによって、前記冷間加工方向に垂直な断面組織の平均粒径が200nm以下に微細粒化されたバンブー組織を有する線材又は鋼線を調製し、
次いで得られた前記線材又は鋼線を用い、これに対して当該線材又は鋼線の長手方向に平行な断面を除く断面に対して工具又は金型により鍛造加工を施す工程を含む成形工程により製造すると共に、
当該鍛造加工は、その加工方法が据込みであって、据込み率は50%以上であり、前記成形工程によって、成形品の一部領域に、平均粒径が200nm以下の等軸状組織を形成することを特徴とする。
の発明は、上記第の発明の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品の製造方法において、上記成形工程は、ねじ部品の成形工程であって、上記線材又は鋼線に対して上記鍛造加工として、上記ねじ部品の頭部にリセスを形成させるために冷間圧造を施す工程を含む成形工程であることに特徴を有するものである。

の発明は、上記第の発明の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品の製造方法において、上記冷間圧造により、上記リセス底面の表層部に平均粒径が200nm以下の等軸状組織を形成させることに特徴を有するものである。

10の発明は、リセス加工における局部的な据込み率(Xp)を、95%以上とすることを特徴としている。

11の発明は、リセス加工における局部的な塑性ひずみ(ε)を3.0以上とすることを特徴としている。

12の発明は、リセス加工におけるねじ頭部の上表面からリセス底面の最も深い点までの深さ(Ltop)と、ねじ頭部の厚さ(h)との比(R)が、
R=Ltop/h≧2.5
となるようにすることを特徴としている。

本願発明は上述した通りの構成とそれにかかわる特徴を有するものである。次に、本願発明の実施の形態及びこの実施形態における態様の限定理由について述べる。
(1)バンブーナノ組織と等軸状ナノ組織の共存
成形品の本体はバンブーナノ組織を形成させ、所望する一部領域には等軸状ナノ組織を形成させることにより、高強度且つ高延性を備えた成形品の一部領域につき一段と強度を向上させ、延性を確保し、同時に機械的性質の等方性を向上させるものである。その際、バンブー組織の結晶粒径は、長手方向に垂直な断面組織の平均粒径を200nm以下にすることにより、引張強さTSが1200MPa程度まで向上し、絞りRAは70%程度が維持される。このような優れた強度−延性バランスにより、強靭性効果が発揮される。例えば、成形品がねじである場合には、ねじり試験における破壊トルク値が優れたものとなる。
上述したバンブーナノ組織は、温間圧延又は熱間圧延の適切な条件により得られたサブミクロンオーダーの微細結晶粒組織鋼に対して、適切な冷間加工が施された場合に得られる。ここで、適切な温間圧延又は熱間圧延条件として、圧延温度が350〜800℃、望ましくは400〜600℃の範囲内において、総減面率が50%以上、望ましくは総減面率が70%以上で、多方向温間多パス圧延で行ない、サブミクロンオーダーの微細結晶粒組織の線材を調製し、次いで、この線材に対して、冷間伸線、若しくは冷間伸線及び冷間圧延よりなる冷間加工、又は冷間加工及び軟化のための熱処理を施すとよい。
こうして、冷間加工方向に垂直方向断面での平均粒径が200μm以下という超微細化されたバンブーナノ組織を有する材料が得られる。
なお、ナノ組織における粒径の測定方法としては、特に限定するものではないが、例えばTEM(Transmission Electron Microscopy)像の画像処理により求めることができる。
一方、等軸状ナノ組織は、バンブーナノ組織の平均粒径が長さ方向に垂直方向断面で上記のようにして得られた200nm以下の場合に、これに鍛造加工を施すことにより形成させることができる。その際、鍛造加工の方向は、バンブーナノ組織のバンブー長手方向に平行とはならない方向に加工することが必要である。かかるバンブーナノ組織の鋼線又は線材から、成形品に加工する例として、ねじを成形する場合を取り上げる。
所要長さに切断された鋼線に、頭部を含めた一次成形をして予備成形品に成形し、次いでねじの外形に中間成形すると共に十字形状等のリセスを形成させる。上記頭部の成形時及び特にリセスの成形加工時には、頭頂部に対して大ひずみ加工が施される。たとえば2段打ちヘッダー成形が行われる。これは、まず、予備据込みパンチでダイスの中に押込んで、ねじの頭部の外形を含むめた「一次成形」し、次いで、仕上げ据込みパンチで、ダイスの中の一次成形品の頭部の最終形状の成形と、十字形状等のリセスしドライバーによりねじを締め込むための窪み部、つまり係合溝の成形とを同時に行なう。
このような成形において、大ひずみ加工が施される頭頂部分のバンブーナノ組織(後述の図4参照)が等軸状ナノ組織(後述の図5参照)に変化する。この際、頭頂部の被加工材質特性として、上記ねじ頭部の冷間圧造を行なうために、高延性が具備されている必要がある。なお、頭部成形後、転造加工によりねじ部を形成させてねじとする。
(2)成形品の本体の強度と特定部位の強度
上述の通り、本願発明品の成形品においては、本体部分に対して特定部位で更に強度をアップさせていることも大きな特徴である。(イ)「本体部分の強度」はビッカース硬さHを指標として230以上であることが望ましく、更にはHを指標として250以上であることが一層望ましい。
一方、(ロ)「特定部位の強度」はビッカース硬さHを指標として、上記本体部分に対応してそれぞれ、300以上であることが望ましく、そして、350以上であることが一層望ましい。
なお、上記において、(イ)「本体部分の強度」及び(ロ)「特定部位の強度」は、それぞれの領域の組織がバンブーナノ組織及び等軸状ナノ組織を呈しているので、従来の硬さHから引張強さTSへの換算値を適用できるとは限らない。この点については、後述する実施例1の考察において、硬さHと引張強さTSとの対応関係で述べる。
(3)特定部位への強度付与の手段
このように、特定部位の強度を本体部分よりも一段と向上させる手段は、この領域に等軸状ナノ組織を形成させることにより達成させることにあり、そのためには、当該部分に鍛造加工を施す。その際、鍛造加工の加工率としては、据込み率で50%以上とすることが望ましい。そして、実際には特定部位の機械的性質の所望する水準に応じて、据込み率を適宜増大設定するものとする。
ここで、「据込み率」とは、鍛造前の被鍛造部の長さ:L0に対する鍛造後の当該部分の長さ:Lの減少分の割合(%表示)とする。
すなわち、据込み率:X(%)は次式により表わされる。
X=〔(L−L)/L〕×100
本発明においては、この据込み率:Xが一般的には、上記のように50%以上とすることが望ましい。また、ねじ頭頂部の成形等においては、図3にも示したが、局部的に、ねじ頭部のリセス形成のめたの部分の長さ(厚み)をLaとし、リセス底面部における変形後の長さ(厚み)をLbとすると、次式
Xp=〔(La−Lb)/La〕×100
で表わされる部分リセスの底面および内周壁面部に与える据込み加工における局部的な据込み率:Xが、X≧95%、さらにはX≧98%とすることが好適に考慮される。そして、この際のリセス加工にともなう局部的な塑性ひずみ(ε)については3.0以上とすることがより有効であり、望ましい。
なお、塑性ひずみは、厳密には、公知の3次元有限要素法により定まるものであるが、単純な圧下加工では、近似的に次式により表わされる。
ε=n〔1−(Lo−L)/Lo〕
本発明においてはこの式で表わされる定義に従うものとし、Lo、Lについてはねじ頭部の形状に応じた上記の局部的な変化(LaからLbへの)として考えると、本発明のねじ成形におけるリセス加工では、リセスの底面および内周壁面部に与えられる局部的な塑性ひずみεが、ε≧3.0となるように、さらにはε≧4.0となるようにする。このようなεとなるようにリセス加工の金型を設計する。
なお、ねじを対象とする場合には、リセスの底面部と内周壁面部とでεは実用レベルで同一であると考えることができる。
さらに本発明におけるねじ成形におけるリセス加工では、図4に示したように、ねじ頭部の上表面からリセス底面の最も深い点までの深さ(Ltop)と、ねじ頭部の厚さ(h)との比(R)が、次式で表わされるものとすることが望ましい。
R=Ltop/h≧2.5
さらには、R≧3.0とすることが好ましい。
(4)成形品の化学成分組成
成形品の化学成分組成は、本願発明の成形品の金属組織として、フェライトを主相とする組織が形成されればよく、第2相が残部として存在してもよいし、また第2相が存在せずフェライトのみとなってもよい。ここで、フェライトが主体であるとは、フェライトの体積割合が70%以上を指すものとする。フェライトの割合がこの程度以上のバンブーナノ組織鋼でC方向断面の平均粒径が200nm以下であれば、引張強さTSが1200MPa以上となるからである。
本願発明の成形品は、線材又は鋼線を被加工材として製造されるので、化学成分組成は、基本的には従来から鋼線、線材として用いられている成分組成範囲であって、上記条件を満たすものであればよいが、適宜、下記の特徴を備えたものを用いることができる。
本願発明の成形品の特徴の化学成分組成上の大きな特徴は、前述した超微細粒組織を有するので、C含有量が0.02質量%未満のセメンタイトフリー組織鋼であっても、本体部分において上記強度が確保されることにある。そして、通常の極低炭素鋼の溶製時に、不純物ではないが、健全な鋼塊又は鋳片の製造時に必要とされる最低限度の化学成分組成を有していればよい。従って、
C:0.02質量%未満、
Si:0.50質量%以下、
Mn:0.50質量%以下、及び
Al:0.002〜0.050質量%
を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるもので十分である。
なお、上記Si、Mn及びAl含有量は、下記不可避不純物の内、O(酸素)含有量を少なくとも0.01質量%以下に抑えるための脱酸元素として、通常の真空脱酸以外の脱酸法による溶製工程を含めて考慮し、Siを0.50質量%まで、Mnを0.50質量%までを許容し、そしてAlは0.002〜0.050質量%の範囲内の含有を必要とする。
また、不可避不純物元素の含有量は特に規定しないが、高強度で高延性の成形品を得る必要性より、P含有量は加工性を低下させるので、0.025質量%以下、S含有量は耐食性及び加工性を低下させるので、0.015質量%以下であることが望ましい。また、O(酸素)も鋼中に含まれる不可避不純物であるが、多量に含有すると耐食性、加工性が低下するので、溶製段階で十分に脱酸しておかなければならない。O含有量は、0.010質量%以下とすることが望ましい。
本願発明を実施例により更に詳しく説明する。以下、本願発明の範囲内にある実施例1及び実施例2、並びに本願発明の範囲外にある比較例1について述べる。
[実施例1]
表1に示す化学成分組成を有する成分No.1の鋼を、真空溶解炉を用いて溶製し、鋼塊に鋳造した。
得られた鋼塊を熱間鍛造により12mmφの棒鋼に成形した。これから温間圧延用素材を採取し、温間における多方向の多パスカリバー圧延により6mmφに成形し、水冷して線材を調製した。この温間圧延の条件は、550℃に加熱した後、圧延温度450〜530℃の範囲内において、6mmφに圧延したものである。この間、圧延の各パス毎に材料を長さ方向軸芯の周りに回転させて圧下方向を変化させ、多方向の多パス圧延を行なった。この温間圧延における12mmφから6mmφへの総減面率Rは75%である。このとき、下記(1)式から算出される真ひずみeは1.39である。なお、多方向圧延の効果により、塑性ひずみεとしては2以上が入っている。
e=−ln(1−R/100)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1)
但し、Rは下記(2)式:
R(%)={(S0−S)/S0}×100 ‥‥‥‥(2)
但し、R:材料に対して施される温間圧延の総減面率(%)
0:温間加工開始直前の材料のC方向断面積
S:温間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で表わされる総減面率Rである。
そして、上記温間圧延された6mmφの線材の平均フェライト粒径は、C方向断面において、0.5μmとなっていた。
次に、上記温間圧延により調製された6mmφの線材を冷間伸線及びひずみ取り焼なましにより、線径1.15mmφの鋼線に調製した。なお、このときの伸線率は96.3%であり、このときの平均塑性ひずみεはε=3.30である。
そして、金属組織はバンブー組織を呈していた。また、フェライト平均粒径は、C方向断面において105nmであった。
また、得られた鋼線の機械的性質は、引張強さTSが1053MPaであって、絞りRAが77.6%であった。このように、かなりの高強度であると共に、延性が著しく優れた鋼線となった。
次に、上記1.15mmφの鋼線からM1.4(呼び径1.4mm)の十字穴(クロスリセス)付きの薄頭小ねじを成形した。その成形方法は、前記実施の形態において説明した、いわゆる2段打ちヘッダー(ダブルヘッダー)で頭部を成形し、次いで転造加工によりねじ部を形成する工程で行った。ここで、頭部成形時の据込み率は、68%であった。
こうして得られた小ねじにつき確性試験を行なった。その結果は次の通りである。
図4に、ねじの軸芯を通る縦断面の3%ナイタール腐食面の拡大断面図を示す。これによれば、成形したねじは、ねじ部の外径が1.4mm、頭部の厚さ(h)が0.22mmであり、ねじ頭部の上表面からリセス底面の最も深い点までの深さ(Ltop)は0.66mmである。そして、頭部の厚さ(h)との比(R)は、R=0.66/0.22=3である。
また、頭部の係合溝の最薄肉厚部の部位は、座面の最小径円周部とこれに近接する係合溝内面との間の部分であって、当該部位の厚さ(Dbsで表記する)は0.133mmである。
そして、図5に、このねじの軸部本体の縦断面の内、図4中に矢印Aで示した部分の金属組織のTEM(Transmission Electron Microscopy)写真を示す。同図からわかるように、軸部本体の部分では軸心方向(伸線方向)に伸長したバンブー組織を呈しており、これに垂直断面組織の平均粒径は98nmであった。これはフェライトからなるバンブーナノ組織となっている。そして、軸心部のビッカース硬さHは、286〜289であった。
なお、ここで上記結果よれば、バンブーナノ組織におけるH=286〜289は、L方向TS=1053MPaにほぼ相当していると考えられるが、一般的なHとTSとの対応関係としてSAE J 417の「硬さ換算表」に付記されている近似の引張強さTSによれば、H=286、289は、ほぼTS=905、915MPaに相当し、大きな差がある。このように、バンブーナノ組織における硬さHと引張強さTSとの対応関係は特異であり、硬さHから単純に引張強さTSに換算することはできない。
一方、図6には、ねじ頭部の2段打ちヘッダー(ダブルヘッダー)で成形加工された、ねじの係合溝の縦断面において、図4中に矢印Bで示した部分の金属組織のTEM写真を示す。同図からわかるように、この部分では等軸状組織に変化している。そして、この部分の平均粒径は100nmであった。これはフェライトからなる等軸状ナノ組織となっている。そして、この領域近辺のビッカース硬さHは、374及び379であった。これは、上記軸部本体と比較して著しく上昇していた。2段打ちヘッダーでの成形加工により等軸状組織に変化し、Hが374及び379を示すこの部分の局所的な据込み率Xは、95%以上であり、局所的塑性ひずみεは3.0以上であると推定される。
なお、上記結果からは、等軸状ナノ組織における高水準の硬さH=374、379と引張強さTSとの対応関係は考察できないが、少なくとも、バンブーナノ組織から等軸状ナノ組織への変化により、材質特性の異方性が大幅に改善されたことが推定される。
また、上記座面の最小径円周部とこれに近接する係合溝内面との間の部分Absの近接部位のビッカース硬さHは、307〜334となっていた。これも、軸心部のビッカース硬さH(286〜289)よりも著しく上昇している。
以上の結果より、ねじ頭部の係合溝の成形時に、被成形材のバンブーナノ組織が等軸状ナノ組織に変化し、係合溝の強度は大幅に向上したことが明らかとなった。
[実施例2と比較例1との比較試験]
実施例2は本願発明の範囲内のものであり、一方、比較例1は本願発明の範囲外にあるものであるが、両者共に軸径が1.6mmφで十字穴(クロスリセス)付きのM1.6小ねじであり、頭部形状・寸法、十字穴形状・寸法、ねじのピッチ及びその他ねじ部の形状・寸法は同一である。その形状・寸法は、JIS B0251のM1.6とした。
これら両者について、リセス強度の比較試験を行なった。実施例2及び比較例1の製造条件はそれぞれ次の通りである。
実施例2:
表1に示した実施例1と同じ化学成分組成を有する成分No.1の鋼を真空溶解炉を用いて溶製し、鋼塊に鋳造した。得られた鋼塊を、実施例1と同じ熱間鍛造条件により、12mmφの棒鋼に成形した。次いで実施例1に準じた温間圧延条件で6mmφに圧延して線材を調製した。この温間圧延で得られた6mmφの線材の平均フェライト粒径は、C方向断面において、0.5μmとなっていた。
次に、上記温間圧延により調製された6mmφの線材を冷間圧延及び伸線により、線径1.3mmφの鋼線に調製した。なお、このときの減面率は95.3%である。鋼線の金属組織はバンブー組織を呈していた。また、フェライト平均粒径は、C方向断面において100nmであった。この伸線工程においては、途中で焼なましを一切行なう必要はなかった。
こうして得られた圧延仕上りの鋼線の機械的性質は、引張強さTSが1014MPa、絞りRAが79.5%であった。このように、高強度で極めて高延性を有する鋼線であった。
次いで、1.3mmφの鋼線からM1.6(呼び径1.6mm)の十字穴(クロスリセス)付き小ねじに成形した。その成形方法は、実施例1に準じて2段打ちヘッダー(ダブルヘッダー)で頭部を成形し、次いで転造加工によりねじ部を形成する工程で行った。ここで、頭部成形時の据込み率は、70%であった。
比較例1:
表2(成分No.2)に示した化学成分組成を有する市販の線径1.6mmφの冷間圧造用鋼線JIS SWCH16Aであって、線材を冷間伸線後、球状化焼なましを行ない、更に冷間伸線によって仕上げた鋼線を、上記実施例2におけると同じ成形方法でM1.6(呼び径1.6mm)の十字穴(クロスリセス)付き小ねじに成形した。次いでこれに浸炭焼入・焼戻し処理を施して仕上げた。
実施例2と比較例1とのリセス強度の比較試験:
以上の通り調製された実施例2と比較例1の各小ねじにつき、十字穴(リセス)の強度試験を行なった。リセス強度試験は、係合溝にドライバーを嵌合させて回転力を与えた時に、十字穴が変形するか、破壊するかにより、ねじにトルク負荷がかからなくなるまでのトルク値で判定した。試験法は、ねじの頭部をバイスで固定し、係合溝にドライバーを嵌合させて、回転数:5rpm、推力:1kgfでトルク負荷をかけたときの最大トルク値をチャートから測定した。
その結果、実施例2の最大トルク値は、4.05kgf・cmであり、比較例1の最大トルク値は、3.17kgf・cmであった。
このように、実施例2のねじの方が、比較例1の浸炭による従来の表面硬化法により高強度化されたねじよりも、リセス強度が著しく優れていることが確認された。
実施例3:
実施例1、2と同じく、表1に示した成分No.1の化学成分組成を有し、真空溶解炉を用いて溶製した鋼塊に鋳造した。得られた鋼塊を熱間鍛造により80mm角の棒鋼に成形した。上記80mm角の各棒鋼から圧延用素材を採取し、温間における多方向の多パスカリバー圧延により18mm角に成形し、水冷して棒鋼を調製した。この温間圧延温度は450〜530℃の範囲内であり、総減面率は94.9%である。なお、温間圧延により調製された18mm角の棒鋼のC方向断面における粒径は全面にわたり、均等化されていた。
次に、18mm角の棒鋼を切削加工により減径し、径6.0mmφの線材に加工した。この線材の引張強さTSは665MPa、絞りRAは80.0%、ビッカース硬さHVは226であり、平均フェライト粒径はC方向断面において、0.8μmとなっていた。
次に、上記温間圧延により調製された6mmφの線材を冷間伸線により、線径1.3mmφの鋼線に調製した。なお、このときの伸線率は95.3%であり、鋼線の金属組織はバンブー組織を呈していた。フェライト平均粒径は、C方向断面において150nmであった。この伸線工程においては、途中で軟化焼なましを一切行なう必要はなかった。
こうして得られた伸線仕上り鋼線の機械的性質は、引張強さTSが1419MPa、絞りRAが70.2%、ビッカース硬さHVが334であった。このように、高強度で極めて高延性を有する鋼線であった。
次いで、1.3mmφの鋼線からM1.6(呼び径1.6mm)の十字穴(クロスリセス)付き小ねじに成形した。その成形方法は、実施例2と同じく、2段打ちヘッダー(ダブルヘッダー)で頭部を成形し、次いで転造加工によりねじ部を形成する工程で行った。ここで、頭部成形時の据込み率も、実施例2と同じ70%である。
得られたM1.6の小ねじのねじり破断トルクを測定した。その結果、実施例3のねじのねじり破断トルクは、3.07kgf・cmであった。一方、前述した比較例1のねじ(SWCH16Aから調製した浸炭焼入・焼戻し処理を施した同じ形状・寸法のM1.6の小ねじ)でも同じ試験を行なった結果、ねじり破断トルクは、3.01kgf・cmであった。
このように、実施例3のM1.6小ねじのねじり破断強度は、従来材の浸炭焼入・焼戻し処理されたM1.6小ねじのねじり破断強度と同等の優れた水準にある。図7に、ねじり破断強度試験における比較例1(SWCH16A浸炭焼入品)及び実施例3のそれぞれのねじりトルクの挙動を示すチャートの例を示す。
なお、上述した各実施例においては、ねじの呼び径が1.4mm(M1.4)及び1.6mm(M1.6)について例示したが、更に呼び径が小さいねじ、例えば、M1.0以下乃至M0.8といったマイクロねじの製造も本発明により製造可能であり、また、バンブーナノ組織の軸本体部と等軸化ナノ組織の係合溝部表層部とからなるねじのリセス強度の優位性も容易に推定される。
本願発明は以上述べた通りの構成を有するので、次の効果が発揮される。
先ず第1に、(1)本願発明に係る成形品に関しては、成形品の本体がバンブーナノ組織で構成され、しかもこの本体の所望する箇所に、必要な深さにだけ、等軸状ナノ組織が形成されているので、成形品本体の強度が著しく優れているだけでなく、本体の上記所望する限定された一部分のみに対しては、更に強度が高くしかも異方性が極力小さいという機械的性質に優れた領域の存在が望まれる成形品、例えば、ねじで特にマイクロねじで従来実現されていない小サイズではあるが従来のサイズと同等の高強度、乃至はそれ以上に高強度のものが得られる。
次に、(2)上記優れた成形品の製造工程に関しては、成形品の素材である線材又は鋼線を冷間加工により製造する工程においては、この素材のスタート材料がすでにサブミクロンオーダーの微細粒鋼で高強度且つ高延性を備えているので、たとえセメンタイトが生成する化学成分組成の材料であっても、球状化焼なまし等材料の軟化のための熱処理等が必須ではなく、所望の線径まで冷間加工することができる。従って、省エネルギー及び環境保全に寄与する。また、鋼の化学成分組成中に、強度向上のために必ずしも所謂合金元素を添加する必要が無い。
また、(3)成形加工ままの成形品の結晶組織が上述した通りのバンブーナノ組織及び等軸状ナノ組織を呈しているので、高強度が付与され、延性水準も確保されている。従って、成形加工品に対して焼入・焼戻し等の調質処理を施す必要が無い。
更に、(4)成形品本体の必要な表層部のみに対して鍛造加工を施すことにより、その部分のみの強度を一層著しく向上させることができる。従来技術における成形品の表面硬化処理によると、例えば、浸炭焼入・焼戻し、窒化処理、液体浸炭窒化処理、高周波焼入・焼戻しあるいは火炎焼入・焼戻しによってでは、表面硬化処理すべき箇所が成形品の一部に限定されている場合や、硬化深さを制御したい場合にはこれが困難な場合があるが、本願発明の方法によれば、それらが容易に達成される。
以上のように、本願発明によれば各種の効果が発揮され、そのため製造工程の簡素化、コストの低減、省資源及び資源のリサイクル化にも寄与し得る、超微細粒組織鋼からなる高強度成形品及びその製造技術を提供することができ、工業上極めて有益な効果がもたらされる。
本願発明の基礎となった第1の知見における、サブミクロン程度のフェライトの平均粒径を有する温間圧延材における強度−延性の優れたバランスを例示するグラフである。 本願発明の基礎となった第2の知見における、温間加工と次に行なう冷間加工とを組合わせることにより得られる、0.2μm以下の超微細フェライト粒を有する材料における強度−延性の優れたバランスを例示するグラフである。 ねじ頭部のリセス形成にともなう変形について説明した図である。 実施例1のねじの軸芯を通る縦断面の3%ナイタール腐食面の拡大断面を示す図である。 実施例1のねじの軸部本体の縦断面の内、図3中に矢印Aで示した部分のバンブーナノ組織を例示するTEM写真の図である。 実施例1のねじ頭部の係合溝の縦断面において、図3中に矢印Bで示した部分の等軸状ナノ組織を例示するTEM写真の図である。 M1.6小ねじのねじり破断強度試験における比較例1(SWCH16A浸炭焼入品)及び実施例3のそれぞれのねじりトルクの挙動を示すチャートの例を示す図である。
符号の説明
1 鋼線
2 予備据込みパンチ(第一パンチ)
3 ダイス
4 仕上げ据込みパンチ(第二パンチ)
5 ねじの中間成形品(ダイスの中)
6 頭部
7 十字形状等のリセス
8 ねじの中間成形品の概略斜視図

Claims (12)

  1. 下記化学成分組成:
    C :0.02質量%未満、
    Si:0.50質量%以下、
    Mn:0.50質量%以下、及び
    Al:0.002〜0.05質量%
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼であると共に、
    圧延方向に垂直な断面におけるフェライトの平均粒径が1.2μm以下0.5μm以上の範囲内のフェライトを主相とする組織を有する温間加工後の材料から製造される前記鋼であって、
    一部領域に等軸状組織が形成され、この等軸状組織の形成領域の平均粒径が200nm以下であり、残部領域にはバンブー組織が形成され、
    このバンブー組織の形成領域の長手方向に垂直な断面組織の平均粒径が200nm以下であることを特徴とする超微細粒組織鋼からなる高強度成形品。
  2. 前記等軸状組織の形成領域の硬さは、ビッカース硬さで300以上であり、且つ、前記バンブー組織の形成領域の硬さは230以上であることを特徴とする請求項1に記載の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品。
  3. 前記等軸状組織の形成領域の硬さは、ビッカース硬さで350以上であり、且つ、前記バンブー組織の形成領域の硬さは250以上であることを特徴とする請求項1に記載の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品。
  4. 前記成形品はねじ部品であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品。
  5. 前記ねじ部品の頭部に成形されたリセス底部の表層部の組織は、平均粒径が200nm以下の前記等軸状組織であり、そして当該ねじ部品の軸部の組織は、長手方向に垂直な断面組織の平均粒径が200nm以下の前記バンブー組織であることを特徴とする、請求項4に記載の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品。
  6. 前記ねじ部品はその呼び径が1.4mm以下であることを特徴とする、請求項5に記載の超微細粒組織からなる高強度成形品。
  7. 下記化学成分組成:
    C :0.02質量%未満、
    Si:0.50質量%以下、
    Mn:0.50質量%以下、及び
    Al:0.002〜0.05質量%
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を用いた鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半製品に対して温間加工を施すと共に、
    当該温間加工は圧延温度が350〜800℃の範囲内において、総減面率が70%以上で、多方向温間多パス圧延で行なわれ、
    前記温間加工によって結晶粒径がサブミクロンオーダーの粒径のフェライトを主相とする組織を調整して得られた材料に対して冷間加工、又は冷間加工及び熱処理を施すことによって、前記冷間加工方向に垂直な断面組織の平均粒径が200nm以下に微細粒化されたバンブー組織を有する線材又は鋼線を調製し、
    次いで得られた前記線材又は鋼線を用い、これに対して当該線材又は鋼線の長手方向に平行な断面を除く断面に対して工具又は金型により鍛造加工を施す工程を含む成形工程により製造すると共に、
    当該鍛造加工は、その加工方法が据込みであって、据込み率は50%以上であり、
    前記成形工程によって、成形品の一部領域に、平均粒径が200nm以下の等軸状組織を形成する
    ことを特徴とする、超微細粒組織鋼からなる高強度成形品の製造方法。
  8. 前記成形工程は、ねじ部品の成形工程であって、前記線材又は鋼線に対して前記鍛造加工として、前記ねじ部品の頭部にリセスを形成させるために冷間圧造を施す工程を含む成形工程であることを特徴とする、請求項に記載の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品の製造方法。
  9. 前記冷間圧造により、前記リセス底面の表層部に平均粒径が200nm以下の等軸状組織を形成させることを特徴とする、請求項に記載の超微細粒組織鋼からなる高強度成形品の製造方法。
  10. リセス加工における局部的な据込み率(Xp)を、95%以上とすることを特徴とする請求項9記載の高強度成形品の製造方法。
  11. リセス加工における局部的な塑性ひずみ(ε)を3.0以上とすることを特徴とする請求項9または10記載の高強度成形品の製造方法。
  12. リセス加工におけるねじ頭部の上表面からリセス底面の最も深い点までの深さ(Ltop)と、ねじ頭部の厚さ(h)との比(R)が、
    R=Ltop/h≧2.5
    となるようにすることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の高強度成形品の製造方法。

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