JP5314843B2 - 水分散スラリー塗料、その製造方法、及び塗膜 - Google Patents
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Description
また、貯蔵時の熱付加により架橋反応が進行し、塗膜外観、塗膜物性が低下するという問題も生じる。
それを克服するための手段として、原色の水分散スラリー塗料を用意しておいて、それを混合して調色するという方法が考えられる(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この場合でも、原色の水分散スラリー塗料の貯蔵安定性が充分でなければ、色安定性の低下、色再現性の低下、塗膜外観の低下を引き起こすことになり、水分散スラリー塗料に充分な貯蔵安定性が必要となる。
<1> 水性溶媒中に、
異なる組成を有する2種類以上の粒子(A)と、各粒子(A)に対応する1種又は2種以上の粒子(B)を分散してなり、粒子(B)の体積平均粒径は、対応する粒子(A)の体積平均粒子径に対して0.01〜0.2倍であり、
前記各粒子(A)は粒度分布において単一のピークを有し、体積平均粒径が1μm〜5μmであり、
前記2種類以上の粒子(A)が、特定の官能基を有するポリマーを含有する粒子(A)と、前記特定の官能基と硬化反応する硬化剤を含有する粒子(A)と、を含み、
前記硬化剤の官能基がカルボン酸基であって前記特定の官能基がエポキシ基である、又は前記硬化剤の官能基がイソシアネート基であって前記特定の官能基が水酸基である、水分散スラリー塗料である。
したがって、前記<1>に記載の発明によれば、貯蔵時の硬化反応が抑えられた優れた貯蔵安定性を示す水分散スラリー塗料を得ることができる。
この場合、色の異なる着色剤を別々に粒子化しているので、目的の塗色を得るために、樹脂に複数の着色剤を混合してから水に分散して塗色を確認する、という操作を繰り返すような煩雑な作業を経なくとも、原色の水分散スラリー塗料を用意しておいて、この水分散スラリー塗料の配合比を調整することで、目的の塗色を得ることができる。したがって、着色剤を含有する粒子の種類が少なくて済み、製造コストを下げることができる。また、目的の塗色を得るためにおいて多数の試行を必要とせず、煩雑な操作を省略することができる。
したがって、前記<5>の発明によれば、製造し易い粒径の粒子を、水性溶媒中に安定的に分散させることができ、且つ、水性溶媒中での合着を防ぐことができる。
2種類以上の前記水性分散体を混合する工程と、
を有し、
前記2種類以上の前記水性分散体のうち一方の水性分散体が、特定の官能基を有するポリマーを含有する粒子(A)を含み、他方の水分散体が、前記特定の官能基と硬化反応する硬化剤を含有する粒子(A)を含み、
前記硬化剤の官能基がカルボン酸基であって前記特定の官能基がエポキシ基である、又は前記硬化剤の官能基がイソシアネート基であって前記特定の官能基が水酸基である水分散スラリー塗料の製造方法である。
また、前記<6>の発明では、前記水分散体を複数調製しておき、これら水性分散体を混合するので、色の微調整が容易である。
更に、前記<6>の発明では、硬化剤を別に粒子化して水性分散体を調製するので、造粒時に温度を上げることも可能であり、粒子を微細化したり、所望の大きさの粒子としたりすることができる。
したがって、前記<7>に記載の本発明の塗膜は、色安定性、色再現性、塗膜外観に優れる。
本発明の水分散スラリー塗料は、(I)水性溶媒中に、(II)異なる組成を有する2種類以上の粒子(A)と、(III)該粒子(A)の体積平均粒径に対して、0.01〜0.2倍の体積平均粒径を有する粒子(B)と、を分散してなる。
本発明の水分散スラリー塗料は、複数種の粒子(A)を含有し、これらの粒子(A)が貯蔵時において安定的に分散するように、この粒子の体積平均粒径の0.01〜0.2倍の体積平均粒径を有する粒子(B)を含有させる。
このとき、粒子(A)の分散を安定化させるメカニズムについては明らかとなっていないが、粒子(A)間に粒径の小さい粒子(B)が入り込むことで、粒子(A)どうしが接触するのを防いでいるものと推測されるが、本発明ではこのようなメカニズムに限定されない。
なお、色の異なる粒子を二種類以上含む水分散スラリー塗料を調製することの利点としては、水分散スラリー塗料中の各々の粒子をその特定の色に着色する方法に比べて、少ない種類の原色スラリー塗料を準備すればよく、その少数の原色スラリー塗料を任意の組合せで調色し、広範囲の色を容易に発現させることができるという点である。また、水分散スラリー塗料の色が目的の色から多少ずれた場合の微調整が簡易であるという点である。粒子をその特定の色に着色しておく方法では、多数の試行を要するので、色調を調整するのに煩雑な作業を要する。
したがって、本発明の水分散スラリー塗料は、これまでの水分散スラリー塗料と比べると、第3成分としての粒子(B)を含有する点において特徴を有し、且つその粒子(B)の体積平均粒径は、着色剤を含有させた粒子や硬化剤を含有する粒子などの粒子の体積平均粒径に対して0.01〜0.2倍の小ささである点でも特徴を有する。
以下、水分散スラリー塗料を構成する物質について詳細に説明を行う。
水性溶媒とは、水、または水混和性溶媒と水との混合溶媒をいう。
水混和性溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の短炭素鎖アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エーテル類、ジオール類、THF、アセトン等が挙げられる。
水溶性溶液が、水と水混和性溶媒との混合液からなる場合には、水性溶媒中の水混和性溶媒の含有量は1質量%〜50質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましい。
また、水混和性溶媒はイオン交換水と混合するだけでなく、後述の樹脂溶液中に添加して使用しても構わない。
本発明における粒子(A)は、樹脂成分としてポリマーを含有する。
樹脂成分としては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アミド樹脂、ABS樹脂を単独で又はそれらを混合して、或いはアロイ化して使用することができる。
アクリル樹脂は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の重合法により製造され、重量平均分子量は、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは3,000〜50,000である。
ポリエステル樹脂は、例えば、低分子ポリオール及び/又はポリアルキレンエーテルジオールと、ポリカルボン酸と、を反応させて得られる。
ポリエステルは、通常の方法によって製造することができる。
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールとジイソシアネートの重付加物などが挙げられる。
ジイソシアネートの具体例としては、例えば、
(1)炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ジイソシアネート[例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等];
(2)炭素数4〜15の脂環族ジイソシアネート[例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等];
(3)炭素数6〜14の芳香族ジイソシアネート[例えば、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート等];
(4)炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート[例えば、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等];
(5)これらのジイソシアネートの変性物[例えば、カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物等];
(6)およびこれら(1)〜(5)の2種以上の混合物等、
が挙げられる。
これらのうち好ましいものはHDI、TDIおよびIPDIである。
エポキシ樹脂としては、例えば、ポリエポキシドとポリカルボン酸との付加縮合物などが挙げられる。この付加重合の際、活性水素を含有する水酸基が発生する。
また、ポリエポキシドは、脂肪族系、脂環族系、複素環系あるいは芳香族系のいずれであってよい。
多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、およびソルビトールポリグリシジルエーテルが挙げられる。
多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体としては、例えば、ジグリシジルアジペートが挙げられる。
グリシジル脂肪族アミンとしては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
また、本発明において脂肪族系としては、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体も含む。
なお本発明において前記硬化剤の官能基と前記特定の官能基との組み合わせは、前記硬化剤の官能基がカルボン酸基であって前記特定の官能基がエポキシ基であるか、又は前記硬化剤の官能基がイソシアネート基であって前記特定の官能基が水酸基、組み合わせである。
ポリエステル樹脂の活性水素としては、例えば、アルコールとカルボン酸の重縮合末端のアルコール性水酸基やカルボン酸基が挙げられる。反応(縮合)させるときの一方の構成成分であるポリオールを過剰に用いることで活性水素を末端に残存させることができる。
ポリウレタン樹脂の活性水素としては、例えば、活性水素原子含有化合物由来のウレタン化されていない活性水素や、ウレタン結合中の水素が挙げられる。
エポキシ樹脂の活性水素としては例えば、エポキシ化により生成するアルコール性活性水素が挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、イソシアネート基含有化合物、及びブロック化されていてもよいイソシアネート基含有化合物であり、さらに好ましくは、ブロック化されていてもよいイソシアネート基含有化合物である。
特に好ましいものは、室温では硬化反応しないようにブロック化されたHDIイソシアヌレート(トリマー)、及びブロック化されたIPDIイソシアヌレート(トリマー)である。
これらのうちで好ましいものはHDIイソシアヌレートおよびIPDIイソシアヌレートである。
硬化触媒としては、ジアザビシクロオクタン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミン化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、オクチル酸ジルコニウムなどの金属含有化合物が挙げられる。
硬化触媒の配合量は、粒子(A)中、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
等が挙げられる。
粒子(A)は、必要により着色剤を含有することができる。着色剤としては特に限定されないが、例えば、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、フェライト等が挙げられる。有機顔料としては、アゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系等のアゾ顔料、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系等の多環式顔料が挙げられる。
染料としてはニグロシン系、アニリン系が挙げられる。
硬化剤を別に含有させた粒子(A)を水分散スラリー塗料に含有させる場合、造粒時に、前記特定の官能基を有するポリマーと硬化剤とを分けて加熱、溶融できるので、樹脂等と硬化剤の各々の軟化点以上の温度に容易に加熱、溶融できる。その結果、超微粒子のスラリーを得られ、塗膜の外観が向上する。
このような硬化剤としては、粒子(A)のポリマーと反応するような官能基を有する必要があり、合成樹脂の種類によって異なる。例えば、粒子(A)のポリマーが水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等を有する場合、硬化剤はカルボン酸基を有することが好ましく、粒子(A)のポリマーが水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基等を有する場合、硬化剤はイソシアネート基を有することが好ましい。
その他、粒子(A)には添加剤として、必要に応じて充填剤、防錆剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、流動調整剤、ハジキ防止剤等を配合することが好ましい。
本発明のスラリー塗料において、粒子(A)の粒子形状は不定形であっても球状であってもよいが、塗膜の平滑性、均一性の点で球状の方が好ましい。ここで球状とは、粒子の長径/短径の比率が1.0〜1.5の範囲にあるものを指す。好ましくは、粒子の長径/短径の比率が1.0〜1.2である。
長径/短径比率は光学顕微鏡を用いて粒子を観察し、Heywoodの定義により、粒子の平面図について輪郭に接する二つの平行線の最短距離を短径、それに直角方向の平行線の最大距離を長径とし、測定される値の長径と短径の比率を計算して求める。
粒子(A)の粒径の測定法は、電子顕微鏡測定、沈降法、エレクトロゾーン法、動的光散乱法等があるが、測定粒度範囲の適合性より、上記粒径は動的光散乱法で測定した値とする。
粒子(A)は、例えば、前記樹脂としてのポリマー(硬化剤であるポリマーを含む。)や、更に必要に応じて硬化剤や着色剤を有機系溶剤に溶解させたものを、水性媒体中に分散させ、その後、必要により加熱しながら減圧して、水を残存させつつ有機系溶剤を除くという、いわゆる転相乳化法により好適に調製することができる。
また、粒子(A)は、前記樹脂としてのポリマー(硬化剤であるポリマーを含む。)や、更に必要に応じて硬化剤や着色剤を溶融混練し、冷却、粉砕するという、いわゆる混練粉砕法によっても調製することができる。
これら調整法の中でも、粒子の粒径や形状の調節のしやすさから、転相乳化法で調整することが好ましい。
粒子(A)の調製方法については、後述の水分散スラリー塗料の製造方法で詳細に説明する。
本発明の水分散スラリー塗料は、前記粒子(A)の体積平均粒径に対して0.01〜0.2倍の体積平均粒径を有する粒子(B)を含有する。
粒子(B)の体積平均粒径は、粒子(A)どうしの合着を防ぐために、極めて重要な因子である。粒子(B)の体積平均粒径は、粒子(A)の体積平均粒径に対して0.01〜0.2倍であり、好ましくは、0.03〜0.2倍であり、より好ましくは、0.05〜0.2倍である。
粒子(B)の体積平均粒径が、粒子(A)の体積平均粒径に対して0.01倍未満であると、粒子(B)を製造し難く、また取り扱い難い粒子となる。一方、粒子(B)の体積平均粒径は、粒子(A)の体積平均粒径に対して0.2倍よりも大きいと、粒子(A)の分散状態を安定化させ難くなり、粒子(A)どうしが合着し易くなる。この理由は明らかではないが、0.2倍よりも大きな粒径の粒子(B)では粒子(A)の表面に付着し難く、或いは粒子(A)間に粒子(B)が入り込み難くなるためであると推測されるが、本発明ではこのようなメカニズムに限定されない。
粒子(B)の粒径の測定法は、電子顕微鏡測定、沈降法、エレクトロゾーン法、動的光散乱法等があるが、測定粒度範囲の適合性より、上記粒径はフロー法で測定した値とする。
本発明のスラリー塗料には、目的とする用途に応じて必要により公知の添加剤(例えば粘弾性調整剤、反応促進剤、動的表面張力調整剤、充填剤、増粘剤、耐熱もしくは耐候安定剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、防腐剤、着色料など)を任意に含有させることができる。
レオロジーコントロール剤としては、特に制限無く適用することができるが、アニオン性レオロジーコントロール剤や非イオン性レオロジーコントロール剤を適用することが好ましい。
酸基を有するアクリル樹脂としては以下に例示する酸基を含有するモノマーとその他のモノマーからなるアクリル樹脂が挙げられる。酸基を含有するモノマーの共重合比率は40モル%以上が好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。酸基を含有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基を有するモノマー:ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホ基を有するモノマー:モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェートなどのリン酸基を有するモノマーが含まれる。また、これらのモノマーの、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩が挙げられる。ただし、アルカリ可溶性モノマーユニットの原料としてのモノマーはこれらに限定されるものではなく、重合性であり、かつ酸性の官能基またはその塩を有していればよい。また、使用される原料としてのモノマーは、1種でも、2種以上でもよい。これらの内、カルボキシル基を有するモノマーが好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。重量平均分子量としては1,000〜2,000,000が好ましく、さらに好ましくは100,000〜1,000,000である。
中和率としては塗工時のタレ性の観点から50%以上が好ましく、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは100%である。
中和剤としては、特に限定されないがアミノ基を有する化合物、アルカリ性水酸基を有する化合物が挙げられるが、耐水性の観点でアミノ基を有する化合物が好ましい。アミノ基を有する化合物としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等が挙げられるが、これらの内、耐水性の観点からジメチルアミノエタノール、トリエチルアミンが好ましい。
水分散スラリーの25℃における粘度は、塗装性の観点から好ましくは10〜100,000mPa・sであり、さらに好ましくは50〜5,000mPa・sである。粘度が上記範囲内であるとき、塗料として取り扱い易い。
本発明の水分散スラリー塗料の製造方法は、前記粒子(A)のうちの少なくとも1種類と、前記粒子(B)と、を水性溶媒中に分散して、水性分散体を調製する工程と、2種類以上の水性分散体を混合する工程と、を有する。
以下、工程毎に説明を行う。
水性分散体の調製工程では、前記粒子(A)のうち少なくとも1種類と、前記粒子(B)と、を水性溶媒中に分散する。粒子(A)を水性溶媒中に分散に分散させる方法としては、下記の方法が例示できるが、これらに限定されない。
粒子(A)を構成する上記ポリマー(硬化剤であるポリマーを含む。以下同様。)と、必要に応じて硬化剤や着色剤を有機系溶剤に溶解させたものを水性媒体中に分散させ、必要により加熱しながら減圧して、水を残存させつつ有機系溶剤を除去して、粒子(A)を水中に分散させる。
粒子(A)を構成する上記ポリマーと、必要に応じて硬化剤や着色剤などの添加剤を溶融混練し、冷却、粉砕によって得た粒子(A)を、ディスパーサー等を用いて水性媒体中で分散させる。
転相乳化法における系内温度は、好ましくは−5〜100℃であり、より好ましくは30〜80℃である。有機系溶剤の除去のための減圧条件は、0.1〜15Torr(13.3Pa〜2.0×103Pa)であることが好ましく、加熱する場合には、最高100℃までであることが水性媒体を残存させる観点から好ましい。また、有機系溶剤の除去時間は、0.1〜50時間であることが好ましく、より好ましくは2〜10時間である。
次に、この乳化した分散液から有機溶剤を減圧下で留去して粒子分散液とする。このとき、必要に応じて分散安定剤を投入しても良い。
樹脂溶液の液滴及び有機溶剤を留去した後の水分散体中の粒子が安定した分散状態を保つよう、必要に応じて分散安定化剤および分散安定補助剤を添加してもよい。
これらの高分子型分散剤の数平均分子量は通常3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜100,000である。
これらの高分子型分散剤の数平均分子量は通常3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜100,000である。
この工程では、上記工程で調製した2種類以上の前記水性分散体を混合させる。
水分散スラリー塗料に、異なる色を呈する2種類以上の粒子を含有させる場合には、「イエロー」、「シアン」、「マゼンタ」、「ホワイト」、「ブラック」、「光輝性」、「無色」の水分散体を別個に調製し、これらのうちの2つ以上の水分散体を任意に組み合わせて調色することが好ましい。このように、異なる色の水分散体を調製し、この水分散体を複数種組み合わせて混合させることで、広範囲の色を発現させることができる。また、この方法は、色調を調製することも容易であり、少量で多数の色数を必要とする用途においても好適である。
異なる色の水分散体を混合するときの混合比率は特に制限されず、目的の色調に応じて適宜調整する。
特定の官能基を有するポリマーを含有する粒子(A)を含む水分散体と、硬化剤を含有する粒子(A)を含む水分散体との混合比率も特に制限されず、粒子(A)に含まれるポリマーの種類や、硬化剤の種類などによって適宜調整する。
本発明の水分散スラリー塗料は、通常の水系塗料用の塗装機を用いて塗装することができ、塗装機としては、例えば、エアースプレー塗装機や静電気ブロックした静電塗装機、エアレス塗装機等を挙げることができる。
本発明の水分散スラリー塗料を塗布し、焼き付けることによって得られる塗膜の被塗装物の膜厚は、好ましくは10μm以上150μm以下、より好ましくは15μm以上50μm以下である。
攪拌装置、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に4−α−クミルフェノール53部、およびルイス酸触媒(水澤化学工業社製、GalleonEarth)23部を仕込み、攪拌下、系内を窒素ガスで置換し、90℃に昇温した。同温度にてスチレン181部を3時間かけて滴下し、さらに同温度にて5時間反応させた。これを30℃に冷却後、触媒を濾別することにより、スチレン7モルが4−αクミルフェノール1モルに付加したもの(Mw:900)(C0−1)を220部得た。C0−1にEO(エチレンオキサイド)を付加したもの(EO含量45%);Mw1700)16.9部、ポリエチレングリコール(Mw:4000)79.7部、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)3.4部を80℃で3時間反応させ、ポリオキシエチレン鎖Mw3600、オキシエチレン単位含量87%、Mw24,000、疎水部の炭化水素木の炭素数62、HLB17.2の界面活性剤(D−1)100部を得た。
耐圧反応容器に、イオン交換水、界面活性剤、過硫酸アンモニウム、を仕込み、反応容器内の空気を窒素で置換した後、反応容器を密閉して攪拌を開始し、80℃まで上昇した。ついで、表1に示す比率(重量比)で混合したモノマー200部を2時間かけて滴下した。更に、同温度で2時間熟成し、粒子(B)分散液(BL−2及び3)を得た。表1に組成比(重量比)と体積平均粒径を示す。ここでの粒子(B)水分散液(BL−2及び3)中の粒子(B)の体積平均粒径は、動的光散乱粒子径測定法[測定装置は、大塚電子社製:DLS−7000、試料は粒子水分散液をイオン交換水で400倍に希釈して調整した。]で測定することができる。
イオン交換水790部にドデシル硫酸ナトリウムを10部加え、攪拌して均一化した後、アエロジル50(日本アエロジル社製)を加え、攪拌により均一化した。この分散液をダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製)で12時間分散することにより、無機粒子(B)分散液(BL−4)を得た。
無機粒子(B)分散液(BL−4)中の粒子(B)の体積平均粒径は、動的光散乱粒子径測定法[測定装置は、大塚電子社製:DLS−7000、試料は粒子水分散液をイオン交換水で400倍に希釈して調整した。]で測定することができる。無機粒子(B)分散液(BL−4)中の粒子(B)の体積平均粒径は、0.05μmであった。
表2に示す配合比に従い、イオン交換水435部、前記有機粒子(B)分散液(BL−2)100部、前記界面活性剤(D−1)5部を配合し、よく攪拌した。
そこに、アルフォンUG−4010(エポキシ基含有アクリル系ポリマー、東亞合成株式会社製)450部を酢酸エチル100部に溶解した溶液を加えた後、得られた混合溶液を60℃に加熱しながら、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、10,000rpmで2分間攪拌した。
その後、耐圧反応容器に移し、40℃まで昇温しながら減圧で脱溶剤し、レオロジーコントロール剤としてAcrysol RM−8W(ウレタン変性会合型レオロジーコントロール剤、ローム アンド ハース社製)を加えよく攪拌することにより、水分散体(E1)を得た。
そこに、アルフォンUC−3910(カルボン酸含有アクリル系ポリマー、東亞合成株式会社製)450部と酢酸エチル100部の混合溶液を加えた後、得られた混合溶液を60℃に加熱しながら、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、10,000rpmで2分間攪拌した。
その後、耐圧反応容器に移し、40℃まで晶オンしながら減圧で脱溶剤氏、レオロジーコントロール剤としてAcrysol RM−8W(ウレタン変性会合型レオロジーコントロール剤、ローム アンド ハース社製)を加えよく攪拌することにより、水分散体(E2)を得た。
表2に示す配合比に従い、イオン交換水535部、前記有機粒子(B)分散液(BL−3)100部、前記界面活性剤(D−1)5部を配合し、よく攪拌した。
そこに、デスモフェンA575X(水酸基含有アクリル系ポリマー、スミトモバイエルウレタン株式会社製)235部、デュラネートTPA−B80E(硬化剤;HDIイソシアヌレート型ブロック化物、旭化成工業株式会社)112部、ジブチル錫ジラウレート3部、ヘイオゲン BLUE L7080(フタロシアニン顔料、ビーエーエスエフ社製)5部と酢酸エチル100部の混合溶液を加えた後、得られた混合溶液を室温で、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、10,000rpmで2分間攪拌した。
その後、耐圧反応容器に移し、40℃まで昇温しながら減圧で脱溶剤し、レオロジーコントロール剤としてAcrysol RM−8W(ウレタン変性会合型レオロジーコントロール剤、ローム アンド ハース社製)を加えよく攪拌することにより、水分散体(E3)を得た。
上記水分散体(E1)の調整方法と同様にして、但し、有機粒子(B)分散液(BL−2)を添加せず、且つ樹脂濃度を低くし、TKホモミキサーによる攪拌温度を室温として、水分散体(E6)を得た。
表2に示す配合比に従い、無機粒子(B)分散液(BL−3)を添加しないこと以外は、水分散体(E3)、水分散体(E4)、水分散体(E5)の調製方法と同様の方法で、水分散体(E8)、水分散体(E9)、水分散体(E10)を得た。
次に、表2に示す混合量で、水分散体(E8)、水分散体(E9)及び水分散体(E10)を混合して、濃度調整及び粘度調整のために、イオン交換水30部、レオロジーコントロール剤3部を添加し、水分散スラリー塗料(GL−2)を得た。
(1)体積平均粒径比の測定
−粒子(B)の体積平均粒径の測定−
水分散スラリー塗料(FL−1,FL−2)及び(GL−1,GL−2)中の粒子(B)の体積平均粒径は、動的光散乱法で測定した。
測定装置としては、大塚電子社製:DLS−7000を用い、測定試料は、水分散スラリー塗料を高速冷却遠心機 GRX−220(TOMY社製)ロータNo.4IIを用いて1000rpmで58分間遠心分離し、上澄みをイオン交換水で400倍に希釈して調製した。
測定結果を下記表3に示す。
水分散スラリー塗料(FL−1,FL−2)及び(GL−1,GL−2)中の粒子(A)の体積平均粒径は、フロー式粒子画像解析装置で測定した。
測定装置は、シスメックス社製:FPIA−2100を用い、測定試料は、水分散スラリー塗料をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。
測定結果を下記表3に示す。
測定により得られた粒子(B)の体積平均粒径(以下「(B)値」と称する。)と、粒子(A)の体積平均粒径(以下「(A)値」と称する。」から、「(B)値/(A)値」を算出した。算出結果を下記表3に示す。
水分散スラリー塗料20gを高さ20cm、直径3cmの円筒状のガラス容器に入れ、40℃の恒温槽中に10日間静置し、粒子間のブロッキング(合着)の状態を目視により下記の基準にて評価した。評価結果を下記表3に示す。
−評価基準−
○:均一に分散している。
×:容器を振っても沈殿物が再分散しない。
Claims (7)
- 水性溶媒中に、
異なる組成を有する2種類以上の粒子(A)と、各粒子(A)に対応する1種又は2種以上の粒子(B)を分散してなり、粒子(B)の体積平均粒径は、対応する粒子(A)の体積平均粒子径に対して0.01〜0.2倍であり、
前記各粒子(A)は粒度分布において単一のピークを有し、体積平均粒径が1μm〜5μmであり、
前記2種類以上の粒子(A)が、特定の官能基を有するポリマーを含有する粒子(A)と、前記特定の官能基と硬化反応する硬化剤を含有する粒子(A)と、を含み、
前記硬化剤の官能基がカルボン酸基であって前記特定の官能基がエポキシ基である、又は前記硬化剤の官能基がイソシアネート基であって前記特定の官能基が水酸基である、水分散スラリー塗料。 - 前記2種類以上の粒子(A)が、無色又は異なる色を呈する2種類以上の粒子(A)を含むことを特徴とする請求項1に記載の水分散スラリー塗料。
- 前記粒子(A)が、イエロー着色剤を含有する粒子、シアン着色剤を含有する粒子、マゼンタ着色剤を含有する粒子、ホワイト着色剤を含有する粒子、ブラック着色剤を含有する粒子、光輝性着色剤を含有する粒子、着色剤を含有しない粒子、からなる群より選択される少なくとも2種であることを特徴とする請求項2に記載の水分散スラリー塗料。
- 前記粒子(B)の添加量が、前記粒子(A)の総添加量に対して、0.5〜50質量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水分散スラリー塗料。
- 前記粒子(B)の体積平均粒径が、0.05μm〜0.2μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の水分散スラリー塗料。
- 粒度分布において単一のピークを有し体積平均粒径が1μm〜5μmの少なくとも1種類の粒子(A)と、該粒子(A)の体積平均粒径に対して0.01〜0.2倍の体積平均粒径を有する粒子(B)と、を水性溶媒中に分散して、水性分散体を調製する工程と、
2種類以上の前記水性分散体を混合する工程と、
を有し、
前記2種類以上の前記水性分散体のうち一方の水性分散体が、特定の官能基を有するポリマーを含有する粒子(A)を含み、他方の水分散体が、前記特定の官能基と硬化反応する硬化剤を含有する粒子(A)を含み、
前記硬化剤の官能基がカルボン酸基であって前記特定の官能基がエポキシ基である、又は前記硬化剤の官能基がイソシアネート基であって前記特定の官能基が水酸基である水分散スラリー塗料の製造方法。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の水分散スラリー塗料を塗布し、乾燥することによって得られる塗膜。
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