JP5313042B2 - 窒化処理摺動部材および摺動部材用鋼材並びに摺動部材の製造方法 - Google Patents
窒化処理摺動部材および摺動部材用鋼材並びに摺動部材の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5313042B2 JP5313042B2 JP2009120973A JP2009120973A JP5313042B2 JP 5313042 B2 JP5313042 B2 JP 5313042B2 JP 2009120973 A JP2009120973 A JP 2009120973A JP 2009120973 A JP2009120973 A JP 2009120973A JP 5313042 B2 JP5313042 B2 JP 5313042B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- nitriding
- less
- sliding member
- steel material
- ferrite
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Description
求められている。鋼材の表面処理技術として従来から適用されている浸炭焼入れは、表面硬化層の形成に加えて内部硬度の向上をもたらすことから、上記した歯車やシャフト等の動力伝達部品における疲労強度を向上させるための手段として幅広く適用されている。
Cは、鋼材の強度(即ち、摺動部材の強度)を確保するのに必須の元素である。その効果を発揮させるためには、C含有量は0.10%以上とする必要がある。しかしながら、C含有量が過剰になると、窒化物の生成が阻害され、硬化層深さが浅くなると共に、最高硬さも低くなって、摺動特性が発揮されないので、0.40%未満とする必要がある。C含有量の好ましい下限は0.15%であり、好ましい上限は0.25%である。
Siは、鋼材の脱酸成分として必須の元素である。その効果を発揮させるためには、Siは0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になると、鋼材の靭性を低下させると共に、加工性が低下し、またフェライト粒が生成、粗大化しやすくなるので、0.35%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.10%であり、好ましい上限は0.30%である。
Mnは、鋼材の脱酸成分として必須の元素である。また、焼入れ性を高めて鋼材の強度を確保する上で有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnは0.20%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mnを過剰に含有させると、硬化層(窒化層)が異常硬化してしまい(最高硬さが1000Hv以上)、鋼材の靭性を低下させるので、上限を1.20%とする。Mn含有量の好ましい下限は0.35%であり、好ましい上限は1.00%である。
Crは、Mnと同様に焼入れ性を高めて鋼材の強度を確保する上で有用な元素である。また、Crは窒化物を形成して硬化層の硬さを確保する上で重要な成分である。こうした効果を発揮させるためには、Crは少なくとも0.8%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、またフェライト粒が生成、粗大化しやすくなるので、1.2%以下とする必要がある。Cr含有量の好ましい下限は0.85%であり、好ましい上限は1.05%である。
sol.Al(酸可溶性Al)は、摺動部材における硬化層の最高硬さ(800Hv以上)を確保する上で有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.3%以上含有させる必要があるが、過剰に含有させると、窒化処理によって生成するAlNが増大し、表層硬化部を脆化させて却って摩耗量が増大するので、0.90%以下とする必要がある。sol.Alの含有量の好ましい下限は0.50%であり、好ましい上限は0.75%(より好ましくは0.70%)である。
Moは、鋼材の焼入れ性を高め鋼材の強度を確保する上で有用な元素である。Moによるこうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、Mo含有量が過剰になると、硬化層(窒化層)が異常硬化してしまい(最高硬さが1000Hv以上)、靭性を劣化させるので、0.80%以下とすることが好ましい。
Ti,NbおよびVは、鋼材中の拡散性水素をトラップして、遅れ破壊を抑制する上で有効な元素である。遅れ破壊は、鋼材の強度(引張強度TS)が1000MPaを超える場合に特に注意する必要がある。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、その含有量が過剰になると、鋼材を脆化させるので、いずれも0.01%以下とすることが好ましい。
下記表1、2に示す各種化学成分組成を有する鋼材(鋼種A〜P、A1〜M1)を、真空溶解炉にて溶製し、熱間鍛造にて一辺が60mmの立方体状の鋼片を得た。得られた鋼片を、大気炉にて1250℃×1時間の溶体化処理を行なった後、900℃×1時間の焼準処理を行ない、供試材を作製した。
Ac3変態点=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]+[Mo]+104×[V]+150×[Al] …(1)
但し、[C]、[Si]、[Mo]、[V]および[Al]は、夫々C、Si、Mo、Vおよびsol.Alの含有量(質量%)を示す。
窒化ガス雰囲気:N2:H2=25:75(体積比)の混合ガス雰囲気
雰囲気圧力:50Pa
窒化温度・時間:520℃×10時間
プラズマを起こす電圧:450V
フェライトの平均結晶粒径は、窒化層表面に略垂直な面で部材を切断し、窒化層表面から深さ500μmまでの領域を、鏡面研磨仕上げした後、ナイタールエッチングで組織を現出させ、光学顕微鏡で観察した(観察倍率:200倍)。組織写真を画像解析にかけて、粒内に炭化物を含まない白い部分(初析フェライト部分)の結晶粒の粒径を、面積が等価な円の直径に換算した大きさと評価し(測定個数:各30個)、これを平均化して、フェライトの「平均円相当径」とした。また、フェライトの面積率は、結晶粒径を測定した視野で観察されるフェライト結晶粒の面積率を画像解析して求めた。
表面から深さ方向に、10μmピッチで最大300μmまで(表面から深さ300μmの位置まで)、荷重:25gf(0.245N)にてビッカース硬さHvを測定した。また表面から深さ方向に100μmの位置でのビッカース硬度Hvと、硬化層での最高硬さも同様に測定した。
実施例1に示した鋼種Aの鋼材(表1)について、実施例1と同様にして鋼片を作製した後、大気炉にての加熱温度を変化させる以外は、実施例1と同様にして一辺が60mmの立方体状の各種試験片を得た。次いで、実施例1と同様にして図1に示したリング状試験片を作製して、同様の窒化処理を行なった後、バレル研磨を施し、各試験片の表面粗さRaを粗さ計で3点測定し、その平均を求めた。また、焼入れ(油冷)直後の段階の試験片について、実施例1と同様にしてフェライト粒径、フェライト面積率および硬度分布を評価した。これらの結果を、加熱温度と共に、下記表5に示す(試験No.30〜32)。尚、試験No.32のものは、加熱温度を950℃としたものであり、測定結果は表3に示したもの(試験No.1)と同じである。
Claims (9)
- 鋼材表面を窒化処理してなる窒化処理摺動部材であって、前記鋼材はC:0.10〜0.40%未満(「質量%」の意味、化学成分については以下同じ)、Si:0.05〜0.35%、Mn:0.20〜1.20%、Cr:0.8〜1.2%、sol.Al:0.3〜0.90%を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、且つ表面から深さ500μmまでの領域において、フェライトの面積率が5%以下であると共に、そのフェライト粒径が平均円相当径で30μm以下であることを特徴とする窒化処理摺動部材。
- 前記鋼材は、更に、Mo:0.80%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の窒化処理摺動部材。
- 前記鋼材は、更にTi:0.01%以下(0%を含まない)、Nb:0.01%以下(0%を含まない)およびV:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1または2に記載の窒化処理摺動部材。
- ビッカース硬さが750Hv以上である硬化層の深さが、表面から100μm以上に及ぶと共に、前記硬化層の最高硬さが800Hv以上、1000Hv未満であり、且つ表面粗さRaが0.4μm未満である請求項1〜3のいずれかに記載の窒化処理摺動部材。
- 摺動部材が歯車である請求項1〜4のいずれかに記載の窒化処理摺動部材。
- 電気自動車に適用されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の窒化処理摺動部材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の化学成分組成を有するものである窒化処理摺動部材用鋼材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の窒化処理摺動部材を製造するに当り、請求項1〜3のいずれかに記載の化学成分組成を有し、表面から深さ500μmまでの領域において、フェライトの面積率が5%以下であると共に、そのフェライト粒径が平均円相当径で30μm以下である鋼材を、所定の形状に加工した後、窒化処理を行なうことを特徴とする窒化処理摺動部材の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の窒化処理摺動部材を製造するに当り、請求項1〜3のいずれかに記載の化学成分組成を有する鋼材を、Ac3変態点以上の温度に30分以上加熱した後、Ms点以下の温度まで臨界冷却速度以上で冷却し、引き続き所定の形状に加工した後、窒化処理を行なうことを特徴とする窒化処理摺動部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009120973A JP5313042B2 (ja) | 2009-05-19 | 2009-05-19 | 窒化処理摺動部材および摺動部材用鋼材並びに摺動部材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009120973A JP5313042B2 (ja) | 2009-05-19 | 2009-05-19 | 窒化処理摺動部材および摺動部材用鋼材並びに摺動部材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010270348A JP2010270348A (ja) | 2010-12-02 |
JP5313042B2 true JP5313042B2 (ja) | 2013-10-09 |
Family
ID=43418608
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009120973A Expired - Fee Related JP5313042B2 (ja) | 2009-05-19 | 2009-05-19 | 窒化処理摺動部材および摺動部材用鋼材並びに摺動部材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5313042B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5477111B2 (ja) * | 2010-03-30 | 2014-04-23 | 新日鐵住金株式会社 | 窒化高周波焼入れ用鋼及び窒化高周波焼入れ部品 |
JP6043078B2 (ja) * | 2012-03-30 | 2016-12-14 | 株式会社神戸製鋼所 | 耐焼付き性に優れた電気自動車モータ用歯車 |
JP2017179394A (ja) * | 2016-03-28 | 2017-10-05 | 株式会社神戸製鋼所 | 肌焼鋼 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6144159A (ja) * | 1984-08-08 | 1986-03-03 | Kobe Steel Ltd | 浸炭窒化性にすぐれた冷間鍛造用鋼 |
JPH07102343A (ja) * | 1993-09-30 | 1995-04-18 | Daido Steel Co Ltd | 窒化処理部品の製造方法 |
JPH09125192A (ja) * | 1995-10-31 | 1997-05-13 | Nkk Corp | 面疲労強度の優れた窒化鋼部材 |
-
2009
- 2009-05-19 JP JP2009120973A patent/JP5313042B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2010270348A (ja) | 2010-12-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5927868B2 (ja) | 冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼およびその製造方法 | |
JP4956146B2 (ja) | 鍛造性と結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼およびその製造方法並びに浸炭部品 | |
JP6098732B2 (ja) | 浸炭鋼部品の製造方法及び浸炭鋼部品 | |
KR101464712B1 (ko) | 템퍼링 연화 저항성이 우수한 강 부품 | |
WO2012105405A1 (ja) | 窒化用鋼および窒化部品 | |
JP5669339B2 (ja) | 高強度浸炭部品の製造方法 | |
WO2013147258A1 (ja) | 耐焼付き性に優れた歯車 | |
CN112292471B (zh) | 机械部件 | |
JP4687616B2 (ja) | 鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品 | |
JP2007131871A (ja) | 高周波焼入れ用鋼材 | |
JP6082302B2 (ja) | 面疲労強度に優れた浸炭部品およびその製造方法 | |
JP4853366B2 (ja) | ショットピーニングを施した鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品 | |
JP5313042B2 (ja) | 窒化処理摺動部材および摺動部材用鋼材並びに摺動部材の製造方法 | |
JP2008057624A (ja) | 無段変速機用プーリ | |
JP5405325B2 (ja) | 差動歯車およびその製造方法 | |
JP5336972B2 (ja) | 窒化用鋼および窒化部品 | |
WO2019244504A1 (ja) | 機械部品の製造方法 | |
JP6111121B2 (ja) | 耐焼付き性に優れた歯車 | |
JP5912778B2 (ja) | 耐剥離性および耐衝撃疲労特性に優れた歯車 | |
JP6109730B2 (ja) | 浸炭後の曲げ疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法並びに浸炭部品 | |
JP4757831B2 (ja) | 高周波焼入れ部品およびその製造方法 | |
JP6043078B2 (ja) | 耐焼付き性に優れた電気自動車モータ用歯車 | |
JP2016186120A (ja) | 浸炭窒化用鋼材および浸炭窒化部品 | |
JP6043080B2 (ja) | 耐剥離性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼、および歯車とその製造方法 | |
JP2024034952A (ja) | 窒化高周波焼入れ用鋼材及び鋼部品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20110901 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20130617 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130625 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20130703 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Ref document number: 5313042 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |