JP5311235B2 - 脊椎整復フレーム - Google Patents

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Description

本発明は、脊椎手術において患者を載せる脊椎整復フレームに関し、より詳しくは、患者の手術体位を調節し、脊柱アライメントを術者の意図に合わせて調節する機能を有する脊椎整復フレームに関する。
脊柱アライメントの善し悪しは、脊椎疾患の発症や脊椎に起因する臨床症状だけでなく、生命予後にも密接にかかわっていることが知られており、脊椎手術ではそれを好ましい状態に矯正することが手術の成否を決める重要な要因となる。脊椎手術の一例として、骨粗鬆症による椎体の圧迫骨折に対する椎体形成術が知られている。椎体形成術は、圧迫骨折により圧潰した椎体内に骨セメントなどの補強剤を注入して、骨折椎体を安定化させて痛みを緩和する最小侵襲手技である。患者の術後成績(前屈姿勢の矯正、痛みの緩和など)を良くするためには、手術において、患者の体位(脊柱アライメント)を調節することにより、骨折椎体をできうる限り生理的な状態に変形矯正することが重要になる。これらは通常、圧迫骨折における椎体形成術に限らず、脊柱変形を矯正する脊椎手術全般にあてはまることである。
一方、従来の脊椎手術においては、患者の手術体位や脊柱ならびに椎体間のアライメントを調整したい場合は、4点フレームで体幹を固定し、経験的に脚部に枕やスポンジを入れ、矯正していた。このような方法では、医師の要求どおりの患者の手術体位を得ることは難しいだけでなく、手術中の患者の手術体位の変更はできなかった。
このため、脊椎手術においては、4点フレームを備えた機器自体の機構により、患者の手術体位や椎体及び椎体間などの可動部位を変形矯正の目的に合わせて調整できることが望まれる。下記特許文献1に提案されているダイナミック・フレームは、腹臥位手術の位置決めのためのものであり、4点フレームにおけるパッド位置を1つのパッドあたり縦、横、高さ方向の3自由度で調整することができるようにしている。
特表2007−508073号公報
しかしながら、特許文献1のダイナミック・フレームは、最大で12箇所の調整機能を有していることになり、このことは患者姿勢の矯正には有利になるが、操作は極めて煩わしいものになる。また、特許文献1には、段落[0004]において「患者の胸郭に矯正力をかけることにより、外科医がこのような矯正のための操作を行うことを能動的に助けることができる位置決め装置を使用することができれば有用であると考えられる。」との記載があるものの、患者の脊柱アライメントや椎体及び椎体間の変形の調整については言及がされていない。
すなわち、特許文献1のダイナミック・フレームにおけるパッドの回転や角度調整は、パッドを体表に適した位置に固定するものであって、患者の脊柱アライメントや椎体及び椎体間の変形を矯正するなどの医学的効果を意図したものではなかった。本願の発明者らによる実験では、パッドのみを調整しても意図した患者姿勢や椎体間の間隔は得られなかった。
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、簡単な操作でありながら、患者の脊柱アライメントや椎体間の間隔を、術者の意図に合わせて矯正する機能を備えた脊椎整復フレームを提供することを目的とする。
発明者らは従来の脊椎手術における経験を踏まえ、研究、実験等を積み重ねて、脊椎手術における患者の脊柱アライメントや椎体間の間隔を適切に矯正するには、骨盤を回旋させることが効果的であることを発見した。この発見に基いて、下記のような脊椎整復フレームを発明した。
本発明の脊椎整復フレームは、脊椎手術の治療中において患者をうつ伏せに載せて用いる脊椎整復フレームであって、基台に、患者の頭尾方向に回転移動可能に支持された可動台を備えており、患者の胸部を支持する胸部支持部と患者の骨盤部を支持する骨盤部支持部とが、患者の腹部においては、患者を支持する部材を設けないようにして、患者の腹部を浮かせるように配置されており、前記可動台の回転移動の中心は、前記骨盤部支持部の支持面側にあり、前記中心を中心とした前記可動台の任意の点の軌跡は、患者の頭尾方向に延び患者の背中側が腹部側に向かう方向に凹んだ凹部を形成する軌跡であり前記骨盤部支持部及び患者の脚部を支持する脚部支持部が、前記可動台に固定されており、かつ前記可動台と一体に回転移動可能であり、前記可動台は、回転移動により前記脚部支持部側の端部が上昇又は下降することにより、患者の下半身部を起伏させることができ、脊椎手術において、前記可動台を前記脚部支持部が上昇する方向に回転移動させて、前記骨盤部支持部及び前記脚部支持部を、患者の足首側に移動しつつ回転移動させ、かつ前記骨盤部支持部を前記脚部支持部側が持ち上がるように傾斜させて、脚部と一体に骨盤を回旋させることにより、患者の脊柱アライメントの調節をするともに、患者の腹部側の椎体間に引張力を作用させて、椎体間の間隔を広げて後弯変形の矯正をすることを特徴とする。
この構成によれば、可動台の回転移動による患者の脚部の傾斜と一体に患者の骨盤を回旋させることができる。一方、可動台の回転移動の中心は、骨盤部支持部の支持面側にある。したがって可動台の回転移動は、患者の骨盤近傍を中心として骨盤を回旋させるように作用することになり、骨盤の回旋に有利になる。また、患者の腹部を浮かせた状態、すなわち腹部の腹圧の逃がした状態で、骨盤を回旋でき、このことも骨盤の回旋に有利になる。
また、骨盤の回旋は、脊椎整復フレームが備える可動台の回転移動により実現できるので、調整用の枕やスポンジ等を追加することは不要になり、手術中において患者の脊柱アライメントの調節や椎体間の間隔の矯正をすることも可能になる。さらに、骨盤の回旋は可動台の回転移動で足りるので、操作が簡単になるとともに、複雑な機構も不要になる。前記本発明の脊椎整復フレームにおいては、下記のような各種構成とすることが好ましい。
前記胸部支持部は昇降可能であることが好ましい。この構成によれば、胸部支持部の高さをあらかじめ調整しておくことにより、脚部の傾斜により患者が前方に滑ることを防止でき、患者の姿勢が安定することになる。
前記可動台と一体で円弧上の溝が形成された可動フレームと、前記基台に取り付けられた複数のローラとをさらに備えており、前記可動台は、前記溝に前記複数のローラが係合して前記基台に支持され、前記溝が前記複数のローラに沿って変位することにより、前記可動フレームと一体に前記可動台が回転移動することが好ましい。この構成によれば、可動台の回転移動は、可動フレームに形成した円弧上の溝を複数のローラに沿って移動させれば足り、簡単な構造で患者の骨盤近傍を中心とした可動台の回転移動が可能になる。
前記可動フレームの底面を円弧状に形成し、前記円弧状の底面にギアを形成し、前記ギアに噛み合わせた歯車の回転により、前記可動フレームが回転移動することが好ましい。この構成によれば、可動台の回転移動には、複雑なリンク機構等は不要になり構造が簡単になる。
前記可動台を回転移動させるための操作ハンドルをさらに備えていることが好ましい。この構成によれば、手術中における可動台の回転移動に有利になる。
患者の腰の浮き上がり防止用のベルトをさらに備えていることが好ましい。この構成によれば、脚部の傾斜による骨盤の回旋作用がより確実に得られる。
本発明によれば、可動台の回転移動により患者の骨盤を回旋させることができる。この場合、可動台の回転移動の中心は、骨盤部支持部の支持面側にあるので、可動台の回転移動は、患者の骨盤近傍を中心として骨盤を回旋させるように作用することになり、骨盤の回旋に有利になる。また、患者の腹圧を逃がした状態で骨盤を回旋でき、このことも骨盤の回旋に有利になる。また、骨盤の回旋は、脊椎整復フレームが備える可動台の回転移動により実現できるので、手術中において患者の姿勢及び椎体間の間隔を調整することも可能になる。さらに、骨盤の回旋は可動台の回転移動で足りるので、操作が簡単になるとともに、複雑な機構も不要になる。
このような本発明の機構を活用すれば、脊椎を構成する構造体の可動部位(椎体間又は骨折椎体などの骨折部)に変形矯正力を作用させ、特に矢状面における異常なアライメントや変形を、術者の意図するものに安全かつ簡便に矯正することができるようになる。
本発明の一実施形態に係る脊椎整復フレームの斜視図。 本発明の一実施形態に係る脊椎整復フレームに患者を載せた状態を示す側面図。 本発明の一実施形態に係る脊椎整復フレームにおける可動台の駆動機構を示す正面図。 図3のA部の拡大図。 図4を矢印B方向から見た側面図。 図4のCC線における断面図。 本発明の一実施形態に係る可動台の釣り合いを説明する図。 本発明の一実施形態に係る可動台が起伏する様子を示す側面図。 本発明の一実施形態に係る脊椎整復フレームに患者を載せた状態を示す側面図。 図9に示した患者のD部(腰部)における脊柱を摸式的に示した拡大図。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る脊椎整復フレームの斜視図を示している。脊椎整復フレーム1は、基台2に、可動台3が取り付けられたものである。基台2には、一対の胸部支持部4が取り付けられている。可動台3には、一対の骨盤部支持部5及び一対の脚部支持部6が取り付けられている。胸部支持部4においては、支持体7に胸用パッド8が取り付けられており、支持体7と一体にスライド部9が設けられている。スライド部9はレール10に係合しており、スライド部9をレール10に沿って移動(矢印a方向)させることにより、一対の胸部支持部4の間隔を調整することが可能になる。
骨盤部支持部5においては、支持体11に骨盤部用パッド12が取り付けられており、支持体11と一体にスライド部13が設けられている。スライド部13はレール14に係合しており、スライド部13をレール14に沿って移動(矢印b方向)させることにより、一対の骨盤部支持部5の間隔を調整することが可能になる。脚部支持部6においては、支持体15に脚部用パッド16が取り付けられており、支持体15は可動台3の一部である横フレーム17に固定されている。
図2は、図1に示した脊椎整復フレーム1に患者を載せた状態を示す側面図である。患者の胸部、骨盤部、脚部は、それぞれ胸用パッド8、骨盤部用パッド12、脚部用パッド16に載せられている。この状態で、可動台3を回転移動させることにより、主に患者の下半身部を起伏させることができる。この起伏の詳細については、可動台3の構造を説明した後に説明する。
図3は、図1の脊椎整復フレーム1の可動台3の駆動機構を示す正面図である。図4は、図3のA部の拡大図である。図4では、A部を部分的に断面状態で図示している。図5は、図4を矢印B方向から見た側面図である。図6は、図4のCC線における断面図である。図3〜6では可動台3の駆動機構を説明するために図示は要部のみとしている。例えば、図1のケース20、21は、図3〜6では図示を省略している。
図1、3に示した操作ハンドル25は、図5に示したように、シャフト26に固定されている。シャフト26にはウォームギア27が取り付けられている。ウォームギア27には、ウォームホイール28が噛み合っている。操作ハンドル25を回転させることにより、シャフト26と一体のウォームギア27が回転する。ウォームギア27が回転すると、これに噛み合っているウォームホイール28が、操作ハンドル25の回転方向に応じて、矢印c方向又はd方向に回転することになる。
図3、4に示したように、ウォームホイール28はシャフト22に固定されている。図3に示したように、シャフト22の両端には、平歯車23が固定されている。したがって、ウォームホイール28が回転するとシャフト22が回転し、これと一体に一対の平歯車23が回転することになる。図3、4に示したように、平歯車31は可動フレーム30の底面側に配置されている。一方、図6に示したように、可動フレーム30の底面にはギア35が形成されており、ギア35に平歯車23が噛み合っている。
このため、シャフト22の回転と一体に平歯車23が回転すると、平歯車23に噛み合っている可動フレーム30が回転移動することになる。図6において、平歯車23が矢印c方向に回転すると、可動フレーム30は矢印e方向に回転移動し、平歯車23が矢印d方向に回転すると、可動フレーム30は矢印f方向に回転移動することになる。
次に、可動フレーム30の支持について説明する。図4において、基台2(図1)と一体の支持壁36に、ローラ32が取り付けられている。より具体的には、ローラ32はシャフト33に取り付けられており、シャフト33にはナット34が締め付けられている。図6に示したように、ローラ32は、ローラ32aとローラ32bとで2個一対になっている。図4に示したように、可動フレーム30には、凹状の溝31が形成されており、図4、6に示したように、溝31に一対のローラ32が係合している。図4に示したように、ローラ32は支持壁36に取り付けられているので、可動フレーム30は、一対のローラ32を介して基台2(図1)と一体の支持壁36に支持されていることになる。
図7は、可動台3の力の釣り合いを説明する図である。図2に示したように、脊椎整復フレーム1に患者を載せた状態において、患者の胸部、骨盤部、脚部は、それぞれ胸用パッド8、骨盤部用パッド12、脚部用パッド16に載せられている。このうち、骨盤部用パッド12、脚部用パッド16は、それぞれ支持体11、15を介して可動台3に取り付けられている。このため、可動台3には、骨盤部用パッド12及び脚部用パッド16が支持している患者の体重分の力f1が下向きに加わることになる。パッド類を含めた可動台3の重量をf2とすると、患者を載せた状態においては、可動台3にはf1とf2を合計した力Fが下向きに作用していることになる。
図7において、可動台3を支持しているのは、可動フレーム30の溝31に係合している一対のローラ32である。可動フレーム30は、図3に示したように左右一対になっている。このため、図7に示したように、可動フレーム30の一個分には、可動台3に作用する力Fの半分の0.5Fの力が下向きに作用しているとみなすことができる。
下向きの荷重0.5Fの作用により、溝31の上端面31aにローラ32aが当接する。これに伴い、可動フレーム30はローラ32aを中心に反時計回りに回転移動しようとする。しかし、溝31の下端面31bがローラ32bを押圧し、可動フレーム30の回転移動は規制されることになる。このことにより、可動フレーム30の回転方向の釣り合いが保たれることになる。
一方、溝31の下端面31bがローラ32bを押圧することにより、可動フレーム30には、荷重0.5Fと同じ下向きに反力Rbが作用する。これに対し、溝31の上端面31aがローラ32aを押圧することにより、可動フレーム30には上向きに反力Raが作用する。このことにより、上下方向における可動フレーム30の力の釣り合いが保たれることになる。したがって、可動フレーム30は、患者を載せた状態において、回転方向及び上下方向の釣り合いが保たれ、静止状態を維持することが可能になる。
図8は、可動台3が起伏する様子を示す側面図である。操作ハンドル25(図1)を回転させることにより、平歯車23が矢印c方向又はd方向に回転する。平歯車23が矢印d方向に回転すると、可動フレーム30は、矢印f方向に回転移動する。この場合、可動台3の端部が上昇し、これと一体に脚部用パッド16も上昇することになる。一方、平歯車23が矢印c方向に回転すると、可動フレーム30は、矢印e方向に回転移動する。この場合、可動台3の端部が下降し、これと一体に脚部用パッド16も下降することになる。
図7を用いて説明した通り、可動台3は溝31の円弧状の上端面31aがローラ32aに当接し、かつ溝31の円弧状の下端面31bがローラ32bに当接した状態で釣り合いが保たれている。また、可動フレーム30の底面は、溝31を形成する円弧と同心円の円弧で形成されている。このため、平歯車23の回転に伴って可動フレーム30が回転移動すると、溝31の円弧状の上端面31aがローラ32aに沿って、かつ溝31の円弧状の下端面31bがローラ32bに沿って回転移動することになる。
すなわち、可動台3は、釣り合い状態が保たれつつ、可動台3と一体の可動フレーム30の円弧上の溝31が一対のローラ32に当接しつつ、回転移動することになる。このため、可動台3上の任意の点の軌跡は、溝31を形成する円弧の中心Cを中心とした円の円弧と一致することになる。可動フレーム30の溝31を形成する円弧は、上側(患者側)に凹部を形成しており、円弧の中心は骨盤部用パッド12の支持面側にある。
この構成では、可動台3の回転移動により、患者の脚部の傾斜と一体に患者の骨盤を回旋させることができるとともに、可動台3の回転移動は、患者の骨盤近傍を中心として骨盤を回旋させるように作用することになり、骨盤の回旋に有利になる。さらに図8に示したように、可動台3の端部(脚部用パッド16側)が上昇する際には、脚部用パッド16及び骨盤部用パッド12は、後方(患者の足首側)に移動しつつ回転移動することになる。このような可動台3の回転移動は、後に説明するように、患者の腰椎において骨折椎体の後方短縮を防ぎつつ、前方椎体間の間隔を広げるのに有利になる。
図9は、患者を脊椎整復フレーム1に載せた状態を示す側面図である。本図では、可動台3は、回転移動により脚部用パッド16側の端部が上昇している。2点鎖線で示した可動台3は、可動フレーム30の脚部側が水平状態(図2の状態)にあるときを示している。本図の状態では、可動台3の回転移動に伴い、可動台3と一体の骨盤部用パッド12及び脚部用パッド16も回転移動している。脚部用パッド16の上昇に伴い患者の脚部が傾斜し、脚部の足首側が持ち上がっている。脚部の傾斜は、骨盤に回旋作用を生じさせることになる。
一方、骨盤部支持部5(図1)は基台2に直接取り付けてもよいが、本実施形態では可動台3に取り付けている。したがって、前記の通り可動台3の回転移動に伴い、可動台3と一体の骨盤部用パッド12も回転移動する。この骨盤部用パッド12の回転移動により、骨盤部用パッド12は、後端側(脚部用パッド16側)が持ち上がるように傾斜する。このことは、骨盤部用パッド12が骨盤の回旋作用の妨げにならないように、骨盤部を支持することになり、骨盤の回旋により有利になる。
以下、図10を参照しながら骨盤の回旋について説明する。図10は、図9に示した患者のD部(腰部)における脊柱を摸式的に示した拡大図である。脊柱は多数の椎体が繋がって形成されている。図10では、3つ分の椎体40a、40b、40cを断面状態で図示している。各椎体は、硬くて緻密な外側の皮骨質42と、細かい骨が網目状に詰まった内側の海綿骨43からできている。椎体40aと椎体40bとの間、椎体40bと椎体40cとの間には、それぞれ軟骨である椎間板41がある。図10では、椎体40bは圧迫骨折しており、隣接する他の2つの椎体40b、40cに比べ幅Wが狭くなっている。このことにより、脊柱は椎体40bの近傍においては、局所後弯(腰曲がりの状態)を呈している(矢印g方向)。
圧迫骨折の治療として、図10に示したように圧迫骨折した椎体40bの海綿骨43に、管状のインサータ44を刺し込んで、インサータ44の先端から椎体40b内に骨セメントなどの補強剤を注入する治療がある(椎体形成術)。この治療においては、骨セメントなどの補強剤を注入する前に、矢印g方向に弯曲(後弯)した脊柱に、逆向き(矢印k方向)に力を加えて、骨折により圧潰した椎体変形をできるだけ生理的な状態に変形を矯正することが望ましい。このことにより、椎体40bを圧迫骨折する前の生理的な状態に近づけることができ、骨セメントなどの補強剤の注入が容易になるとともに、骨折により発生していた後弯変形を矯正して、骨セメントなどの補強剤注入後の脊柱をいわゆる“背筋が伸びた生理的な状態”に復元しやすくなる。
ここで、図9において、D部を含む患者の腰部を、時計方向に回転させることができれば、脊柱を図10の矢印kで示した方向に弯曲させることが可能になる。この弯曲に伴って、椎体の前方部(腹側部:図10では下側)には矢印h、j方向に引張力が作用し、椎体40aと椎体40cとの間の間隔を広げる力が働くことになる。これにより、骨折椎体40b内の骨折部には、それを開大させようとする力が作用し、結果として圧迫変形を呈していた骨折椎体が整復され、圧迫骨折により矢印g方向に弯曲(後弯)していた脊柱アライメントも、骨折椎体変形が生じる前の生理的なアライメントを復元することになる。
本実施形態では前記の通り、可動台3の回転移動による脚部用パッド16の上昇に伴い脚部を傾斜させ、骨盤の回旋作用を生じさせることが可能になる。図10において脊柱を矢印k方向に弯曲させた場合は、椎体40bの前方部(腹側部:図10では下側)側において、椎体40aと椎体40cとの間の間隔を広げることができる。しかし、脊柱の弯曲に伴い、椎体40bの後方部(背側部:図10では上側)側が短縮圧迫されると、椎体の後壁に骨折が及んでいる場合には骨折骨片が脊柱管内に突出して脊髄などの神経組織を圧迫する可能性があり危険である。
一方、前記の通り、本実施形態においては、可動台3の脚部用パッド16側が上昇する際には、脚部用パッド16及び骨盤部用パッド12は、後方(患者の足首側)に移動しつつ回転移動する。このことは、椎体間の前方部(腹側部)側の椎体間の開大に有利になるとともに、骨盤の回旋に伴う椎体の後壁の短縮を防止することになり、骨片の脊柱管内突出のリスクが解消される。このため、本実施形態は、患者の腰椎において骨折椎体の後方短縮を防ぎつつ、前方椎体間の間隔を広げるのに有利になる。したがって、本実施形態によれば、圧迫骨折により後弯変形した脊柱を骨折する前の状態に近づけ易くなり、本実施形態は骨セメントなどの補強剤の注入による脊椎整復固定に有利になる。
また、図2、9に示したように患者が脊椎整復フレーム1に乗った状態では、患者の胸部及び骨盤部は胸用パッド8及び骨盤部用パッド12で支持されている。図1に示したように、胸用パッド8及び骨盤部用パッド12は、それぞれ2個一対になっている。また、胸用パッド8と骨盤部用パッド12との間、すなわち患者の腹部においては、患者を支持する部材は設けていない。
このことにより、脊椎整復フレーム1上の患者の上半身は腹部を浮かせた状態で、4個所で支持されることになる。この状態では、治療中に患者の腹圧を逃がすことができ、X線透視にも有利になる。腹圧を上昇させないことは脊柱管内の硬膜外静脈叢における鬱血を防止し、脊椎手術中の出血を減少させる効果がある。したがって、治療の際には、X線透視による患者の脊柱部の状態を確認しながら、操作ハンドル25を回転させて可動台3を回転移動させて、脊柱アライメントを術者の目的に応じた状態に調節することが可能になる。
前記実施形態においては、胸部支持部4は昇降可能に構成してもよい。この構成において、胸部支持部の高さをあらかじめ調整しておくことにより、脚部の傾斜により患者が前方に滑ることを防止でき、患者の姿勢が安定することになる。胸部支持部4を昇降可能にするには、例えば図1に示したスライド部9及びレール10と同様の係合構造を縦方向に配置すればよい。
また、前記実施形態において、患者の腰の浮き上がり防止用のベルトを追加して、脚部の傾斜による骨盤の回旋作用がより確実に得られるようにしてもよい。例えば図1のように、骨盤部用パッド12を支持する一対の支持体11にスリット18を形成し、このスリット18にベルトを挿通させるようにすればよい。
前記実施形態においては、本発明に係る脊椎整復フレームを圧迫骨折の治療に用いる例で示したが、これに限るものではない。前記の通り、本発明に係る脊椎整復フレームは、骨盤の回旋に有利になる。また、図8に示したように、可動フレーム30は脚部用パッド16側の上昇のみならず下降も可能になる。したがって、本発明に係る脊椎整復フレームは、脊柱アライメントを適正な形状に保つ必要のある治療に適している。
1 脊椎整復フレーム
2 基台
3 可動台
4 胸部支持部
5 骨盤部支持部
6 脚部支持部
8 胸用パッド
12 骨盤部用パッド
16 脚用パッド
23 平歯車
30 可動フレーム
31 溝
35 ギア
32,32a,32b ローラ

Claims (6)

  1. 脊椎手術の治療中において患者をうつ伏せに載せて用いる脊椎整復フレームであって、
    基台に、患者の頭尾方向に回転移動可能に支持された可動台を備えており、
    患者の胸部を支持する胸部支持部と患者の骨盤部を支持する骨盤部支持部とが、患者の腹部においては、患者を支持する部材を設けないようにして、患者の腹部を浮かせるように配置されており、
    前記可動台の回転移動の中心は、前記骨盤部支持部の支持面側にあり、
    前記中心を中心とした前記可動台の任意の点の軌跡は、患者の頭尾方向に延び患者の背中側が腹部側に向かう方向に凹んだ凹部を形成する軌跡であり
    前記骨盤部支持部及び患者の脚部を支持する脚部支持部が、前記可動台に固定されており、かつ前記可動台と一体に回転移動可能であり、
    前記可動台は、回転移動により前記脚部支持部側の端部が上昇又は下降することにより、患者の下半身部を起伏させることができ、
    脊椎手術において、前記可動台を前記脚部支持部が上昇する方向に回転移動させて、前記骨盤部支持部及び前記脚部支持部を、患者の足首側に移動しつつ回転移動させ、かつ前記骨盤部支持部を前記脚部支持部側が持ち上がるように傾斜させて、脚部と一体に骨盤を回旋させることにより、患者の脊柱アライメントの調節をするともに、患者の腹部側の椎体間に引張力を作用させて、椎体間の間隔を広げて後弯変形の矯正をすることを特徴とする脊椎整復フレーム。
  2. 前記胸部支持部は昇降可能である請求項1に記載の脊椎整復フレーム。
  3. 前記可動台と一体で円弧上の溝が形成された可動フレームと、
    前記基台に取り付けられた複数のローラとをさらに備えており、
    前記可動台は、前記溝に前記複数のローラが係合して前記基台に支持され、
    前記溝が前記複数のローラに沿って変位することにより、前記可動フレームと一体に前記可動台が回転移動する請求項1又は2に記載の脊椎整復フレーム。
  4. 前記可動フレームの底面を円弧状に形成し、前記円弧状の底面にギアを形成し、前記ギアに噛み合わせた歯車の回転により、前記可動フレームが回転移動する請求項3に記載の脊椎整復フレーム。
  5. 前記可動台を回転移動させるための操作ハンドルをさらに備えている請求項1からのいずれかに記載の脊椎整復フレーム。
  6. 患者の腰の浮き上がり防止用のベルトをさらに備えている請求項1からのいずれかに記載の脊椎整復フレーム。
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