JP5311190B2 - 吸着装置の製造方法および研磨装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体ウェハを真空吸着により保持する吸着装置の製造方法に関する。さらに、この製造方法により製造された吸着装置を用いた研磨装置に関する。
半導体ウェハを真空吸着により保持する吸着装置として、吸着面側にピン状または凸状をなす複数の剛性の凸部がその先端面が同一高さとなるように形成された吸着装置が従来から知られている(例えば、特許文献1を参照)。この吸着装置では、各凸部の先端面はウェハと接触した状態で凸部間の凹部が負圧に引かれ、ウェハが各凸部の先端面に倣って平坦に保持される。このように、各凸部の先端面がウェハと接触して保持する吸着面となっている。
ウェハと吸着装置の吸着面との間に異物が介在すると、その箇所付近においてウェハが変形して隆起してしまい、例えば、ウェハの平坦化研磨をする場合にこの箇所付近が過剰に研磨されて平坦度が確保できないという不都合が生じる。通常は、ウェハや吸着装置の吸着面は洗浄されるが、異物を完全に除去することは不可能である。
そこで凸部の先端面に樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)製のコーティング層を設けた吸着装置が考案されている。これによりウェハと吸着面との間に入り込んだ異物が弾性を有するコーティング層に埋没するため、ウェハの下面が平坦に保たれ、ウェハと吸着面との間に介在する異物による影響を低減させることができる。
特開平10−50810号公報
凸部を形成するステンレスやセラミックなどの剛性体は、表面を加工等することにより平坦度を比較的簡単に高めることができるが、この凸部の先端面に形成されるコーティング層については加工等により精度良く表面処理することが困難であるため、何ら処理のされていないコーティングされたままの状態で使用されていた。このため、コーティング層は、膜厚が精度良く調整されていない比較的厚めの状態で形成されており、さらに、各先端面において膜厚が互いに異なって表面全体がばらついた状態となっているため、被吸着物たるウェハを平坦に保持できないという問題がある。
また、このように各凸部の先端面におけるコーティング層の膜厚が互いに異なる場合や、当該膜厚が厚く(例えば、数百μm以上に)なっている場合には、真空吸着によって負圧に引かれたウェハの被吸着面から各凸部の先端面(吸着面)に互いに異なる押圧力が加わったときに、各凸部のコーティング層が相互に異なる弾性変形をしやすくなることにより、各凸部のコーティング層の厚さがさらに大きく変異して(ばらついて)しまうため、吸着時にウェハがこの吸着面に倣うことにより、吸着状態におけるウェハの平坦度を阻害する要因にもなっていた。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、研磨による加工精度を向上させることができる吸着装置の製造方法を提供することを目的とする。また、この製造方法により製造された吸着装置を用いた研磨装置を提供することを目的とする。
このような目的達成のため、本発明に係る吸着装置の製造方法は、同一平面上に位置する支持面および支持面より窪んだ凹部からなる上面形状を有したベース部材と、下地層を介してベース部材の少なくとも支持面を覆って設けられた樹脂製のコーティング層とを有し、ベース部材の内部を通って凹部に開口した吸着穴が設けられた吸着部材を備え、吸着部材における支持面上に設けられたコーティング層により形成される吸着面に被吸着物の被吸着面を接触させるとともに、吸着穴を介して凹部内に負圧を作用させて被吸着物を吸着部材の上に真空吸着するように構成された吸着装置の製造方法であって、支持面上に設けられたコーティング層の表面領域を機械加工することによって、吸着面を形成する部分におけるコーティング層および下地層の総膜厚を120μm以上200μm以下、且つ、表面領域の平坦度を10μm以下に調整する機械加工工程と、機械加工工程後の表面領域を表面加工処理することによって、吸着面を形成する部分におけるコーティング層および下地層の総膜厚を40μm以上110μm以下、且つ、表面領域の平坦度を2μm以下に調整する表面加工処理工程と、を備えて構成される
なお、上述の発明において、表面加工処理が、定盤部材の研磨面とベース部材の支持面上におけるコーティング層の表面領域とを接触させた状態で相対移動させて、両者の接触面間に砥粒を介在させることにより表面加工を行うラップ研磨加工であることが好ましい。
さらに、本発明に係る研磨装置は、上記構成の製造方法により製造された吸着装置と、被吸着物を研磨可能な研磨部材とを備え、研磨部材を、吸着装置により真空吸着されて保持された被吸着物の表面に当接させながら相対移動させて、被吸着物の表面を研磨するように構成される。
本発明によれば、吸着状態における被吸着物の平坦度を高めて、研磨による加工精度を向上させることができる。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る吸着装置(ウェハ吸着装置50)を備えた研磨装置の代表例であるCMP装置(化学的機械的研磨装置)を図1に示している。
CMP装置1は、被研磨物たる半導体ウェハ(以下、ウェハと称する)30をその上面側に着脱自在に吸着保持可能なウェハ吸着装置50と、このウェハ吸着装置50の上方位置に設けられ、ウェハ吸着装置50上に保持されたウェハ30の被研磨面31と対向する研磨パッド42が取り付けられた研磨部材41を保持してなる研磨ヘッド40とを備えて構成される。
このCMP装置1では、研磨パッド42の寸法(直径)はウェハ30の寸法(直径)よりも小さく(すなわち研磨パッド42はウェハ30よりも小径であり)、研磨パッド42をウェハ30に接触させた状態で双方を相対移動させることにより、ウェハ30の被研磨面(上面)31全体を研磨できるようになっている。
これらウェハ吸着装置50と研磨ヘッド40とを支持する支持フレーム20は、水平な基台21と、この基台21上にY方向(紙面に垂直な方向でこれを前後方向とする)に延びて設けられたレール(図示しない)上をY方向に移動自在に設けられた第1ステージ22と、この第1ステージ22から垂直(Z方向)に延びるように設けられた垂直フレーム23と、この垂直フレーム23の上部に設けられた第2ステージ24と、この第2ステージ24上から水平(X方向)に延びるように設けられた水平フレーム25と、この水平フレーム25上をX方向(左右方向)に移動自在に設けられた第3ステージ26とを有して構成されている。
第1ステージ22内には第1電動モータM1が設けられており、これを回転駆動することにより第1ステージ22を上記レールに沿ってY方向に移動させることができる。また、第3ステージ26内には第2電動モータM2が設けられており、これを回転駆動することにより第3ステージ26を水平フレーム25に沿ってX方向に移動させることができる。このため、上記電動モータM1,M2の回転動作を組み合わせることにより、第3ステージ26をウェハ吸着装置50上方の任意の位置に移動させることが可能である。
ウェハ吸着装置50は、基台21上に設けられたテーブル支持部27から上方に垂直に延びて設けられた回転軸28の上端部に水平に取り付けられている。この回転軸28はテーブル支持部27内に設けられた第3電動モータM3を回転駆動することにより回転されるようになっており、これによりウェハ吸着装置50をXY平面(水平面)内で回転させることができる。
研磨ヘッド40は、第3ステージ26から垂直下方に延びて設けられたスピンドル29の下端部に取り付けられている。このスピンドル29は第3ステージ26内に設けられた第4電動モータM4を回転駆動することにより回転されるようになっており、これにより研磨ヘッド40全体を回転させて研磨パッド42をXY平面(水平面)内で回転させることができる。
さて、ウェハ吸着装置50は、被研磨物たるウェハ30を真空吸着して保持する、いわゆるウェハチャックとして構成されている。このウェハ吸着装置50は、図2および図3に示すように、ウェハ30を支持するための吸着部材51と、この吸着部材51を保持して回転軸28に連結される回転保持部材70とを主体に構成される。
吸着部材51は、ステンレスやセラミック等の高い剛性を有する材料を用いて円盤状に形成されたベース部材51aと、このベース部材51aの上面側に設けられた(コーティングされた)下地層66およびコーティング層65とを有して構成されており、ネジ等の固定手段(図示しない)により回転保持部材70の上面側に取り付けられる。ベース部材51aの上面側(表面側)には、図3に示すように、上面側から見て円環状の第1凸部52が形成されており、ウェハ30の外周部近傍を支持するようになっている。また、図4(a)に示すように、ベース部材51aの上面側における第1凸部52の内周側には、円柱状の第2凸部53が複数形成されており、ウェハ30の中央側を支持するようになっている。
また、図5に示すように、第1凸部52および第2凸部53の先端面(上面)の高さは、それぞれ互いに同じ高さとなるように構成され、これらの先端面は高い精度で同一平面内に位置するようになっている。また、第1および第2凸部52,53の先端面の高さは、数百μm程度である。
図2に示すように、ベース部材51aの内部中央には、ベース部材51aの下面側(裏面側)で開口するように第1センタ穴58が形成されており、この第1センタ穴58の側部には、図3にも示すように、等間隔に(30度間隔で)並ぶ12本の放射通路59がそれぞれベース部材51aの外周部へ向けて延びるように形成されている。さらに、放射通路59には、第1〜第3吸着穴55〜57が放射通路59の途中から上方へ延びるように形成されて、ベース部材51aの上面側において複数の第2凸部53(および、第1凸部52と)の間に形成された凹部54で開口するようになっている(図4(b)も参照)。これら第1〜第3吸着穴55〜57は、それぞれ吸着部材51の中心軸O1を中心とした第1〜第3の円C1〜C3上において、周方向に等間隔に複数箇所設けられる。
ベース部材51aの上面側における第1凸部52の外周側には、図3および図5に示すように、上面側から見て円環状の第3凸部60が形成されており、第1凸部52との間に溝部61が形成されるようになっている。第3凸部60の先端面(上面)の高さは、第1凸部52の先端面(上面)よりも少しだけ低くなるように設定される。ベース部材51aの外周部近傍には、水供給穴62が上下に貫通して形成されており、水供給穴62の上端部は溝部61で開口するとともに、下端部は回転保持部材70の水供給通路74と繋がるようになっている(図2参照)。そして、この水供給穴62から溝部61に水が供給されて、溝部61が水(ウォーターシール)で満たされるようになっている。
ベース部材51aの上面側には、図5および図6に示すように、下地層66(図6参照)を介して、ポリウレタン樹脂製のコーティング層65が設けられている。そして、第1および第2凸部52,53の先端面に設けられたコーティング層65の表面(上面)には、ウェハ30の下面である被吸着面32と接触可能な吸着面67が形成される。そして、この吸着面67にウェハ30の被吸着面(下面)32を接触させて各吸着穴55〜57に負圧を作用させることで、ウェハ30の被吸着面32が吸着部材51の吸着面67に真空吸着される。なお、下地層66は、ベース部材51aの上面とコーティング層65との塗着性を向上させるために形成されている。
このように、ベース部材51aの上面側にコーティング層65を設けることで、図6(b)に示すように、ウェハ30の被吸着面32とコーティング層65の表面に形成された吸着面67との間に異物Xが介在しても、コーティング層65が有する弾性によって異物Xがコーティング層65に埋没しようとするため、ウェハ30が異物Xによって変形することがなく、吸着状態におけるウェハ30の平坦度を高めることができる。
また、吸着面67(第1および第2凸部52,53の上面上の部分)におけるコーティング層65および下地層66の総膜厚は、80μm(40〜110μmが好ましい)となっている。さらに、このコーティング層65の表面に形成された吸着面67の平坦度は1μm程度(2μm以下が好ましい)に仕上げられている。
ところで、図5に示すように、ベース部材51aの上面側における第1凸部52よりも外周側の部分には、第3凸部60を含む第1凸部52よりも高さの低い円環状領域B1が設けられる。このように、第1凸部52よりも高さの低い円環状領域B1を設けて、ウェハ30の外周部を吸着保持しないようにすることで、ウェハ30が研磨荷重を受けてもウェハ30の外周部で逃げるため、ウェハ30の外周部が研磨されにくくなってウェハ30外周部の過剰研磨を防止することができる。
回転保持部材70は、図2および図3に示すように、ステンレスやセラミック等の高い剛性を有する材料を用いて円盤状に形成され、ネジ等の固定手段(図示しない)により回転軸28の上部に水平に取り付けられる。そのため、回転保持部材70の上面側(表面側)に取り付けられた吸着部材51は、回転保持部材70により水平面内で回転自在に保持されることとなる。
回転保持部材70の中央部には、第2センタ穴71が上下に貫通して形成されており、第2センタ穴71の上端部はベース部材51aの第1センタ穴58と繋がるとともに、下端部は図示しない管路を介してエアオペレートバルブ81(図7参照)と繋がるようになっている。これにより、吸着部材51の各吸着穴55〜57は、放射通路59、第1および第2センタ穴58,71、並びに図示しない管路を介してエアオペレートバルブ81(図7参照)に繋がる。
回転保持部材70の上面側(表面側)には、矩形の溝が渦巻状に延びるように形成され、吸着部材51の下面(裏面)との間に渦巻状に延びる冷却水路72が形成されるようになっている。この冷却水路72の内周部は図示しない管路を介して冷却水供給装置(図示しない)と繋がっており、外周部は回転保持部材70に形成された排水穴(図示せず)と繋がっている。なお、冷却水供給装置から供給された所定温度の水は、渦巻状の冷却水路72を内周側から外周側へ通過してウェハ吸着装置50(回転保持部材70)の温度を一定に保つようになっている。
また、回転保持部材70の外周部近傍には、水供給通路74が上下に貫通して形成されており、水供給通路74の上端部は吸着部材51の水供給穴62と繋がるとともに、下端部は図示しない管路を介して開閉電磁弁85(図7参照)と繋がるようになっている。これにより、吸着部材51の水供給穴62は、水供給通路74および図示しない管路を介して、開閉電磁弁85と繋がる。
前述したように、吸着部材51の各吸着穴55〜57は、放射通路59、第1および第2センタ穴58,71、並びに図示しない管路を介して、図7に示すように、エアオペレートバルブ81の一方のポートに繋がっている。一方、エアオペレートバルブ81の他方のポートには、真空源である真空ポンプ82と、真空破壊用の微圧エアにレギュレートしたエアを供給するコンプレッサ83と、純水を供給可能な純水供給部84とが接続されている。
そして、エアオペレートバルブ81は、図示しない制御部からの電磁弁作動信号を受けて、各吸着穴55〜57が真空ポンプ82に繋がる状態と、各吸着穴55〜57がコンプレッサ83に繋がる状態と、各吸着穴55〜57が純水供給部84に繋がる状態と、各吸着穴55〜57がどれとも繋がらない状態とに切り替える機能を有している。したがって、エアオペレートバルブ81の切替作動により各吸着穴55〜57が真空ポンプ82に繋がると、真空ポンプ82の作動により各吸着穴55〜57に負圧が生じる。また、各吸着穴55〜57がコンプレッサ83に繋がると、コンプレッサ83から各吸着穴55〜57に真空破壊用の高圧エアが供給される。さらに、各吸着穴55〜57が純水供給部84に繋がると、純水供給部84からの水(純水)が各吸着穴55〜57から吸着部材51の上面側に供給される。
また、吸着部材51の水供給穴62は、水供給通路74および図示しない管路を介して、開閉電磁弁85の一方のポートに繋がっている。一方、開閉電磁弁85の他方のポートには、純水供給部84が接続されている。そして、制御部(図示しない)からの電磁弁作動信号を受けて開閉電磁弁85が開放作動すると、水供給穴62と純水供給部84とが繋がるようになっている。したがって、開閉電磁弁85の開放作動により水供給穴62が純水供給部84に繋がると、純水供給部84からの水(純水)が水供給穴62から溝部61に供給される。
次に、本実施形態に係るウェハ吸着装置50の製造方法の一例について、図8を用いて説明する。図8は、ウェハ吸着装置50の製造工程の一例を示すフロー図である。
まず、前述したような構造を有するベース部材51aおよび回転保持部材70をそれぞれ作製する(工程S1)。例えば、ベース部材51aは、ステンレスやセラミック等の高い剛性を有する材料を用いて、機械加工(旋削、研削、研磨およびフライス加工等)などにより円盤状に形成され、表面(上面)の平坦度が2μm以下となるように仕上げられる。その後、ベース部材51aおよび回転保持部材70は、図示しないネジ等の固定手段により一体に結合される。
次いで、ベース部材51aの上面側に、プライマーをスプレーガン等で塗布した後に、乾燥させて下地層66を形成する(工程S2)。なお、下地層66は、ベース部材51aに対するコーティング層65の塗着性を高めるために用いられるものであって、場合によっては必ずしも必要ではなく、ベース部材51a(および回転保持部材70)を作製したのち直接(下地層66を形成しないで)、コーティング層65を形成してもよい。
そして、下地層66の上にポリウレタン系樹脂からなる塗布材をスプレーガン等で塗布した後に、所定温度で乾燥および焼成することでコーティング層65が形成される(工程S3)。このコーティング層65の膜厚は、完成膜厚や、後工程による機械加工および表面加工処理での取代などを考慮した上で決められるものである。また、このとき膜厚が表面全体に均等になるように塗布材を何層にも積層させるように重ね塗りすることが好ましい。なお、コーティング層は、アクリル系樹脂やフッ素系ゴム等からなる塗布材を用いて形成してもよい。
続いて、吸着部材51(および回転保持部材70)において、第1および第2凸部52,53の先端面に設けられたコーティング層65の表面を円盤状の研削砥石により機械加工(研削加工)を行う(工程S4)。この機械加工工程S4では、回転軸O1を中心に回転する吸着部材51の表面(コーティング層65の表面)に、回転および水平方向に揺動運動をする研削砥石を接触させることにより、コーティング層65の表面が研削されて、コーティング層65および下地層66の総膜厚が150μm程度(120〜200μmが好ましい)に調整される。このときコーティング層65の表面の平坦度は10μm以下に抑えられていることが好ましい。なお、この機械加工工程S4は次工程(工程S5)である表面加工処理での取代(仕上代)を減少させて、表面加工処理における加工負担を低減させる等の目的で行われるものであるため、場合によってはコーティング層65が形成されたのち表面加工処理工程S5に移行してもよい。
次いで、吸着部材51(および回転保持部材70)において、前述の機械加工工程S4で膜厚が調整された第1および第2凸部52,53の先端面上のコーティング層65の表面に、図9に示すようなラップ定盤91および研磨材93を用いた表面加工処理(ラップ研磨加工)を行う(工程S5)。この表面加工処理工程S5では、所定の回転軸を中心に回転する円盤状のラップ定盤91の研磨面92と、このラップ定盤91の研磨面92に接触して回転軸O1を中心に回転するとともに下方に荷重(図9中、白抜き矢印で示す)が加えられる吸着部材51(コーティング層65)の表面との間に、砥粒などからなる研磨材93が供給されることにより、コーティング層65の表面に存在する微小なうねり等が研磨(除去)されて当該表面が平坦化される。この状態において、第1および第2凸部52,53の先端面上のコーティング層65および下地層66の総膜厚は80μm程度(40〜110μmであることが好ましく、さらに、50μm〜100μmがより好ましい)に仕上げられる。また、このときコーティング層65の表面(吸着面67)の平坦度は1μm程度(2μm以下が好ましい)に形成される。
そして、一体に連結された吸着部材51および回転保持部材70を、例えば超音波洗浄などの手段により洗浄処理を行い、吸着部材51に付着した砥粒や潤滑剤などを除去して表面全体を清浄化する(工程S6)。これによりウェハ吸着装置50が完成する。
このような方法により製造されたウェハ吸着装置50では、真空ポンプ82の作動により各吸着穴55〜57に負圧を生じさせて被吸着物たるウェハ30の真空吸着を行う場合に、ウェハ30の被吸着面32に接触する吸着面67の吸着状態における平坦度を向上させることができる。すなわち吸着状態におけるウェハ30のうねりを低減させて、平坦度を高めることができる。それでは、ウェハ吸着装置50において、吸着前後における吸着面67の表面状態(表面形状)の変化について、図10および図11を用いて説明する。
まず、図10には、機械加工工程S4後における吸着部材51の吸着面67上に載せられた図示しない基準基板の吸着前の状態(L1)および吸着された状態(L2)の表面形状(うねり曲線)を測定したグラフが示されている。ここで基準基板とは、表面の平坦度等が高精度に調整された円盤状の基板(吸着部材51とほぼ同一の外径寸法を有する)をいう。そして、表面形状の測定は、前述の機械加工によりコーティング層65および下地層66の吸着面67部分の総膜厚が150μm程度に調整された吸着部材51(および回転保持部材70)をCMP装置1の回転軸28上部に取り付けた状態で、真空吸着前後における基準基板(吸着面67上に取り付けられた基準基板)の表面形状を形状輪郭測定器により計測している。
真空吸着前の状態(L1)は、基準基板が吸着面67上に単に載せられているだけの状態であり、外部からの影響をほとんど受けていないほぼ基準基板自体の表面形状が計測されている。これに対して真空吸着が行われると、コーティング層65の吸着面67部分の膜厚が比較的に厚いことや、各部位において膜厚にばらつきがあることに起因して、真空吸着によって基準基板が吸引されて吸着面67の各部位に作用する押圧力により、コーティング層65の弾性変形量が各部位で大きく異なってくることになり(吸着面67全体が一様に引かれず)、吸着面67全体の表面形状が大きく変異してしまうこととなる(本実施例では、中央部が大きく窪んだ表面形状となっている)。したがって、真空吸着された状態(L2)では、基準基板は、表面形状の変異した吸着面67に倣った状態で吸引されるため、図10に示すような中央部が大きく窪んだ表面状態となって平坦度が大きく崩れた状態で保持されることになる。
次いで、図11には、表面加工処理工程S5(および洗浄工程S6)後の完成状態における吸着部材51の吸着面67上に載せられた基準基板の吸着前の状態(L3)および吸着された状態(L4)の表面形状(うねり曲線)を測定したグラフが示されている。ここで、表面形状の測定は、前述の表面加工処理によりコーティング層65および下地層66の吸着面67部分の総膜厚が80μm程度であって平坦度が2μm以下に調整された吸着部材51(および回転保持部材70)をCMP装置1の回転軸28上部に取り付けた状態で、真空吸着前後における基準基板(吸着面67上に取り付けられた基準基板)の表面形状を形状輪郭測定器により計測している。
表面加工処理により仕上げられた吸着面67では、コーティング層65(および下地層66)の膜厚が比較的薄く仕上げられ、且つ、平坦度が2μm以下に高められ膜厚のばらつきも殆んどないため、真空吸着がされて基準基板が吸引されることにより吸着面67の各部位に力が加わっても、コーティング層65の弾性変形量が各部位でほぼ均等になるため(吸着面67全体が一様に引かれるため)、吸着面67全体の表面形状が大きく変異することがなく平坦な面が維持される。したがって、真空吸着される前の状態(L3)と真空吸着された状態(L4)とで基準基板の表面状態は殆んど異なることなく、吸着された状態(L3)でも2μm以下の平坦度が維持される。したがって、このウェハ吸着装置50によれば、被吸着物(基準基板、ウェハ30など)の吸着状態における平坦度をより高めることができる。
次に、このような構成のウェハ吸着装置50を備えたCMP装置1を用いてウェハ30の研磨を行う場合について説明する。CMP装置1によりウェハ30の研磨を行うには、まず、ウェハ吸着装置50の上面に研磨対象となるウェハ30を吸着取り付けする(このときウェハ30の中心はウェハ吸着装置50の回転中心に一致させる)。そして、電動モータM3により回転軸28を駆動してウェハ吸着装置50およびウェハ30を回転させる。次いで、電動モータM1,M2を駆動して第3ステージ26をウェハ30の上方に位置させ、電動モータM4によりスピンドル29を駆動して研磨ヘッド40を回転させる。続いて、研磨ヘッド40を上下動させるエアシリンダ(図示しない)を用いて研磨ヘッド40を降下させ、研磨パッド42の下面(研磨面)をウェハ30の上面(被研磨面)に押し当てるようにする。
このとき、図示しないエア供給源から研磨ヘッド40内に所定のエアを供給して、研磨ヘッド40内のエア圧によりウェハ30と研磨パッド42との接触圧を所定の値に設定する。そして、電動モータM1,M2を駆動して研磨ヘッド40をXY方向(ウェハ30と研磨パッド42との接触面の面内方向)に揺動させる。このとき同時に、図示しない研磨剤供給装置より研磨剤を圧送し、研磨パッド42の下面側に研磨剤を供給させる。これにより、ウェハ30の被研磨面31は、研磨剤の供給を受けつつウェハ30自身の回転運動と研磨ヘッド40の(すなわち研磨パッド42の)回転および揺動運動とにより研磨される。
ウェハ吸着装置50にウェハ30を吸着取り付けするには、まず、図5に示すように、ウェハ吸着装置50の上面にウェハ30を置き、ウェハ吸着装置50の吸着面67にウェハ30の被吸着面32を接触させる。このとき、前述したように、ウェハ30の中心はウェハ吸着装置50の回転中心に一致させるようにする。そして、真空ポンプ92を利用して吸着部材51の各吸着穴55〜57に負圧を生じさせ、ウェハ30の被吸着面32をウェハ吸着装置50の吸着面67に真空吸着させる。これにより、ウェハ30がウェハ吸着装置50に吸着保持される。このとき、前述したように、ウェハ吸着装置50のコーティング層65における吸着面67部分の膜厚がばらつきなく比較的薄く設定され、その表面の平坦度が高められているため、真空吸着されて吸着面67に接触しているウェハ30のうねりを低減させることができ、吸着状態におけるウェハ30の平坦度をより高めることができる。したがって、CMP装置1によるウェハ30の研磨における加工精度(平坦度)を向上させることができる。
なお、ウェハ吸着装置50にウェハ30を吸着取り付けするときには、エアオペレートバルブ81の切替作動により各吸着穴55〜57を真空ポンプ82に繋げることで、真空ポンプ82の作動により各吸着穴55〜57に負圧が生じる。また、ウェハ吸着装置50からウェハ30を取り外すときには、エアオペレートバルブ81の切替作動により各吸着穴55〜57をコンプレッサ83に繋げることで、コンプレッサ83から各吸着穴55〜57に高圧エアが供給されて真空破壊が行われる。さらに、ウェハ吸着装置50の吸着面67(上面)を洗浄するときには、エアオペレートバルブ81の切替作動により各吸着穴55〜57を純水供給部84に繋げることで、純水供給部84からの水(純水)が各吸着穴55〜57から吸着面67上に供給される。
本実施形態のウェハ吸着装置50では、前述したように、ベース部材51aの上面側にコーティング層65(および下地層66)を設け、さらに表面加工処理などによりコーティング層65(吸着面67部分)の膜厚をばらつきなく比較的薄くして表面全体を平坦化しているため、吸着前後において吸着面67が変形することなく(平坦面が崩れることがなく)、吸着状態におけるウェハ30の平坦度を高めることができる。
また、本実施形態のウェハ吸着装置50では、ウェハ30の被吸着面32とコーティング層65の表面に形成された吸着面67との間に異物が介在しても、コーティング層65が有する弾性力によって異物がコーティング層65に埋没しようとするため、ウェハ30が異物によって変形することがなく、ウェハ30の被吸着面32を平坦に保持することができる。
そして、以上のような構成のウェハ吸着装置50を備えたCMP装置1によれば、ウェハ30の加工精度および歩留まりを向上させることができる。
なお、上述した実施形態では、吸着装置が研磨装置の一例であるCMP装置に備えられて適用された例について説明したが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の研磨装置や、投影露光装置(ステッパー)、その他種々の装置に備えられて適用されるものである。また、吸着装置の被吸着物は半導体ウェハに限定されるものではなく、半導体ウェハ以外の基板(ガラス基板など)、その他種々の被吸着物を吸着するように構成してもよい。
本実施形態の吸着装置を備えた研磨装置の一例であるCMP装置を示す正面図である。 本実施形態の吸着装置の正断面図である。 本実施形態の吸着装置の平面図である。 (a)は本実施形態の第1凸部の近傍を示す拡大平面図であり、(b)は吸着穴の近傍を示す拡大平面図である。 本実施形態の第1凸部の近傍を示す拡大断面図である。 本実施形態の吸着装置にウェハが吸着された状態を模式的に示す断面図である。 本実施形態の吸着装置の配管図(ブロック図)である。 本実施形態の吸着装置の製造方法を示す製造工程のフロー図である。 表面加工処理工程の概要を示す正面図である。 機械加工工程後の吸着部材に載置された基準基板において吸着前後の表面形状(うねり曲線)を測定したグラフである。 表面加工処理(および洗浄処理)工程後の吸着部材に載置された基準基板において吸着前後の表面形状(うねり曲線)を測定したグラフである。
符号の説明
1 CMP装置(研磨装置) 30 半導体ウェハ(被吸着物)
42 研磨部材 50 ウェハ吸着装置(吸着装置) 51 吸着部材
51a ベース部材 54 凹部 55 第1吸着穴 56 第2吸着穴
57 第3吸着穴 65 コーティング層 66 下地層 67 吸着面
82 真空ポンプ 91 ラップ定盤(定盤部材) 93研磨材(砥粒)
S4 機械加工工程 S5 表面加工処理工程

Claims (3)

  1. 同一平面上に位置する支持面および前記支持面より窪んだ凹部からなる上面形状を有したベース部材と、下地層を介して前記ベース部材の少なくとも前記支持面を覆って設けられた樹脂製のコーティング層とを有し、前記ベース部材の内部を通って前記凹部に開口した吸着穴が設けられた吸着部材を備え、前記吸着部材における前記支持面上に設けられた前記コーティング層により形成される吸着面に被吸着物の被吸着面を接触させるとともに、前記吸着穴を介して前記凹部内に負圧を作用させて前記被吸着物を前記吸着部材の上に真空吸着するように構成された吸着装置の製造方法であって
    前記支持面上に設けられた前記コーティング層の表面領域を機械加工することによって、前記吸着面を形成する部分における前記コーティング層および前記下地層の総膜厚を120μm以上200μm以下、且つ、前記表面領域の平坦度を10μm以下に調整する機械加工工程と、
    前記機械加工工程後の前記表面領域を表面加工処理することによって、前記吸着面を形成する部分における前記コーティング層および前記下地層の総膜厚を40μm以上110μm以下、且つ、前記表面領域の平坦度を2μm以下に調整する表面加工処理工程と、を備えたことを特徴とする吸着装置の製造方法
  2. 前記表面加工処理が、定盤部材の研磨面と前記ベース部材の前記支持面上における前記コーティング層の表面領域とを接触させた状態で相対移動させて、両者の接触面間に砥粒を介在させることにより表面加工を行うラップ研磨加工であることを特徴とする請求項1に記載の吸着装置の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載された吸着装置の製造方法により製造された吸着装置と、
    前記被吸着物を研磨可能な研磨部材とを備え、
    前記研磨部材を、前記吸着装置により真空吸着されて保持された前記被吸着物の表面に当接させながら相対移動させて、前記被吸着物の表面を研磨するように構成されたことを特徴とする研磨装置。
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