JP5309145B2 - ナノポアによる分子の捕捉、再捕捉およびトラッピング - Google Patents

ナノポアによる分子の捕捉、再捕捉およびトラッピング Download PDF

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Description

本発明は一般に、分子の検出および特性評価に関し、より具体的には、分子の特性を評価するナノポア(nanopore)デバイス構成および対応する技術に関する。
分子、特に生体分子の検出、分析および定量は、広範囲にわたる用途、例えば保健および生命科学の分野において重要なものとなっている。特に、単一分子センシングを実行する能力は関心の的である。固体ナノポアの開発は、単一巨大分子、特にタンパク質やDNAのような生体分子の特性を評価する大きな可能性を示した。このような特性評価の用途には、数ある用途の中でも、例えば、タンパク質の折畳みの分析およびDNAの配列決定がある。
例えば、固体ナノポアによるDNAの配列決定を考えると、DNA分子、例えば一本鎖DNA(ssDNA)をナノポアに通し、電場または他の駆動力によって、このDNAが、例えばナノポアを通ってイオン溶液の供給リザーバからイオン溶液の収集リザーバへ移動(translocation)するときに、その分子をDNA鎖に沿って塩基ごとに分析する。関心の高い研究であるにもかかわらず、固体ナノポアによるこのようなDNA捕捉(capture)およびナノポアを通した移動は、現在のところよく分かっていない。さらに言えば、一般に、分子レベルにおいて、ナノポアとの具体的な相互作用およびナノポアにおける運動はまだ確認されていない。ナノポアを単独で使用した、またはナノポアをより複雑なデバイスの一部として使用した単一分子の徹底的な特性評価は、分子とナノポアの相互作用の動力学のより完全な理解および制御が達成されるまでは達成不可能である。
本発明は、ナノポアを用いて単一分子を操作し、単一分子の特性を評価することができるナノポアデバイス構成、および該構成を使用する技術を提供する。本発明に基づく分子分析システムの例示的な一構成では、ナノポアを含む構造体、ならびに第1および第2の流体リザーバが提供される。これらの2つのリザーバは、ナノポアを介して流体接続されている。これら2つの流体リザーバのうちの一方の流体リザーバから、これら2つの流体リザーバのうちの他方の流体リザーバへのナノポアにおける分子種の移動を検出するように、検出器が接続されている。ナノポアを移動した後に、少なくとも1回、ナノポアを再移動するように分子種を誘導する、ナノポアでの条件をもたらす制御信号を生成するように、コントローラが接続されている。
このシステムによって、分子または分子成分などの分子種を捕捉し、再捕捉し、ナノポアの条件ならびに第1および第2のリザーバの条件に関して分子種を分析することができる。以下に詳細に説明するように、これによって、本発明は、分子の挙動特性を解明する広範囲にわたる実験および分析を可能にする。この分子捕捉/再捕捉制御システムは、測定時間間隔の両端でのナノポアにおける分子の位置についての情報を提供し、その時間間隔の間に分子に加えられた力についての情報を提供し、溶液中の分子の経路の評価を可能にする。したがって、ナノポアに到達する分子の動力学を、ナノポアに入る分子の動力学と相関させることができ、それぞれの活動を個別に研究することができる。
したがって、本発明は、構造体によって分離された2つの流体リザーバ間の前記構造体のナノポアを通して、分子種が複数回にわたって移動する分子分析法を提供する。
本発明のこの技術は、分子種を、ナノポアを通して、第1の流体リザーバから、この分子種に対して反応性である環境を含む第2の流体リザーバに移動させ、かつナノポアの第2の流体リザーバから第1の流体リザーバへの分子再移動を誘導する、ナノポアでの条件をもたらすことによって、分子種を反応性の環境に曝露する方法を可能にする。
本発明のこの技術はさらに、構造体によって分離された2つの流体リザーバ間の前記構造体のナノポアを通して分子種を複数回にわたって移動させ、かつナノポアのそれぞれの分子種移動間に、2つのリザーバのうちの一方のリザーバ内のナノポアの近傍に分子種を維持する、ナノポアでのトラッピング条件を適用することによって、分子種を空間的にトラップする方法を可能にする。
本発明はさらに、ゲノム配列を決定する方法を可能にする。この方法では、ゲノムからの複数のヌクレオチド断片を第1の流体リザーバに供給する。第1の流体リザーバと、構造体によって第1のリザーバから分離された第2の流体リザーバとの間の前記構造体のナノポアを通して、それぞれのヌクレオチド断片を、選択した回数だけ移動させる。それぞれのヌクレオチド断片がナノポアを移動するときに、そのヌクレオチド断片を検出する。
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明および添付図、ならびに特許請求の範囲から明白となる。
図1A〜1Fは、ナノポアによって分子を捕捉および再捕捉する、本発明によって提供される例示的な一技術中の選択されたさまざまな時点において、ナノポアと相互作用している分子を概略的に示す図である。 図1A〜1Fの分子捕捉/再捕捉技術について、ナノポアを通る測定イオン電流を、時間の関数として示すプロットであり、このプロットは、図1A〜1Fの図に対応する電流測定値を特定している。 図1A〜1Fの分子捕捉/再捕捉技術を可能にする、本発明によって提供される例示的なナノポアシステム構成の概略図である。 図4A〜4Bは、DNA分子の捕捉/再捕捉分析のために、本発明に従って、DNA分子に提供することができる例示的な種の概略図である。 本発明のナノポアベースの分子捕捉/再捕捉システムを機能させるフィードバック制御ループのブロック図である。 図5のフィードバック制御ループを機能させる例示的な制御シーケンスのタイミング図である。 図7Aは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システム内でのナノポアの順方向移動に対する、事象電荷欠損として知られる測定イオン遮断電流の測定時間積分のヒストグラムプロットである。図7Bは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システム内でのナノポアの逆方向移動に対する、事象電荷欠損として知られる測定イオン遮断電流の測定時間積分のヒストグラムプロットである。 図8Aは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムにおける分子捕捉率のプロットである。図8Bは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムにおける再捕捉確率のプロットである。 図9A〜9Fは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システム内のナノポアでの分子の再捕捉の捕捉時間ヒストグラムを、さまざまな遅延時間について示すプロットである。 図10Aは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムにおける計算確率密度のプロットである。図10Bは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムにおける計算確率密度のプロットである。図10Cは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムにおける計算確率密度のプロットである。図10Dは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムにおける分子再捕捉のプロットである。 図11Aは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムに関して、ナノポアの分子移動の計算確率を、時間の関数として示すプロットである。図11Bは、本発明に基づく実験分子捕捉/再捕捉システムに関して、ナノポアの分子移動の計算確率を、距離に対して示すプロットである。 図12Aは、本発明に基づく実験空間トラップの電流遮断および印加電圧を示すプロットである。図12Bは、本発明に基づく実験空間トラップの電流遮断の拡大図である。
図1A〜1Fを参照すると、ある1つの分子がナノポアと相互作用するときの様子が概略的に示されており、これらの図は、本発明が提供する例示的な一方法で、その分子がナノポアにおいて捕捉および再捕捉される過程中の選択したいくつかの時点を示している。ナノポア14と相互作用させるため、供給リザーバまたはシス(cis)リザーバ12に分子10が入れられる。ナノポアから分子を受け取るため、ナノポア14の反対側に、収集リザーバまたはトランス(trans)リザーバ16が提供されている。
例示的な一配置では、シスおよびトランスリザーバが、ナノポアを通ってこれらのリザーバ間を行き来することができるイオン溶液を含む。シスおよびトランスリザーバ内に配置された電極18、20は、リザーバ内の溶液と電気的に接触し、したがって、選択された電圧をリザーバ間に印加し、または選択された電流をリザーバ間に流して、それぞれのリザーバ内のナノポア14の近傍に、電場を発生させることができる。図1Aに示すように、一方のリザーバ、例えばシスリザーバは接地電位に維持され、トランスリザーバには選択された電圧が印加される。
第1の捕捉ステップでは、ナノポア14を通して分子を移動させるように、トランスリザーバ電圧をセットする。図1の例では、分子が負に帯電していると仮定する。したがって、トランスリザーバに印加された正電圧は、図1Aのシスリザーバ内の矢印によって示されているように、ナノポアを通ってトランスリザーバへ向かう電気力を分子上に生み出す。この分子は、ブラウン運動と電気泳動運動の組合せにより、シスリザーバのバルク溶液から、ナノポア14の近傍へ移動する。
図1Bを参照すると、ナノポアに到達した後、印加電圧によって生じた電気泳動力によって、分子は、ナノポアに入り、ナノポアを完全に通過することができる。すなわち、ナノポアをトランスリザーバへ移動させることができる。図1Cに示すように、ナノポアを移動した後も、ナノポアからトランスリザーバのバルク溶液へ向かって分子を駆動する、ナノポアの近位電場の影響ならびに熱的な力および拡散力の下で、分子は移動し続ける。
分子を再捕捉するため、分子がトランスリザーバのバルク溶液内へ脱出することが可能になる前に、ナノポアを横切る駆動力を逆転させる。図1Dに示すように、分子は負に帯電しているので、この場合にはトランスリザーバ電圧が負極性に逆転し、それにより、分子上の電気泳動力をナノポアの方へ向ける。この構成によって、分子は、図1Eに示すように、ナノポアをシスリザーバへ再移動する。
その最初の方向とは逆方向にナノポアを移動した、再捕捉された分子を、図1Fに示すように、駆動電圧を最初の極性に戻し、ナノポアへ向かう電気泳動力を再び発生させることによって、三たび捕捉することができる。ナノポアにおけるこの分子捕捉およびシスリザーバとトランスリザーバの間の通過は、ナノポアの近傍からリザーバ溶液のバルク内へ分子が脱出しない限り、またはナノポアの近傍からリザーバ溶液のバルク内へ分子が脱出するまで、任意の回数、繰り返すことができる。
本発明によれば、ナノポアにおける分子の捕捉および再捕捉は、所与の用途または実験の必要性に基づいて検出され、制御される。一般に、分子のナノポア通過は、後に一般的に詳述する都合のよい任意の技術によって検出することができる。概論的導入の目的上、ここでは、例示的な第1の検出技術を、ナノポアを通ってシスリザーバとトランスリザーバの間に流れるイオン電流を分子が遮断するのを検出する技術として説明する。移動の間、分子は、ナノポアを通過するイオン溶液の流れを部分的に遮断し、それにより、ナノポアのインピーダンスを増大させ、対応するナノポアを通るイオン電流を低減させる。それにより、これらの2つのリザーバの電極間の閉回路の電流を測定すると、このようなイオン電流の低減の示唆が得られる。
図2は、図1A〜1Fの捕捉および再捕捉過程を使用する実験システムについて、測定されたイオン電流を、時間の関数として示した例示的なプロットである。分かりやすくするため、プロットの中央の電流6.6nAは削除してある。このプロットに示すように、分子が、図1Aの場合のようにシスリザーバ内にある第1の時間間隔Aの間は、塞がっていないナノポアに対応する電流レベルが測定される。次いで、時刻Bにおいて、図1Bのように、ナノポアを移動している分子によってイオン電流が遮断されたことに対応する電流の低減が測定される。電流の遮断が検出された後、分子を再捕捉するために電圧を逆転させる前に、遅延時間tdelayの間隔Cが生じる。この遅延時間の間、分子は、図1Cに示すように、ナノポアから遠ざかるように駆動され、測定された電流は空のナノポアを示す。図2の例では、遅延時間tdelayが、2msに設定されている。
この遅延時間の終わりに、分子を再捕捉するため、電圧を逆転させる。この再捕捉時間tcaptureの間隔Dの間、分子は、図1Dのように、ナノポアの方へ駆動され、測定された電流は空のナノポアを示す。時刻Eにおいて、ナノポアをシスリザーバへ再移動している再捕捉された分子によって、図1Eのように、イオン電流が遮断されていることに対応する電流の低減が再び測定される。間隔Fで、分子は、図1Fのように再びシスリザーバ内にあり、追加の捕捉事象を待つ。後に詳述するが、選択した分子実験または分子分析を可能にするため、ナノポアに向かってシスリザーバからトランスリザーバへ分子を駆動するために印加電圧が設定される間隔A、およびナノポアに向かってトランスリザーバからシスリザーバへ分子を駆動するために印加電圧が設定される間隔Dを変化させ、または固定することができる。やはり後に詳述するが、選択した実験条件または分析条件を達成するため、駆動電圧極性を逆転させる前の遅延間隔Cも変化させることができる。
この制御シーケンスによって、分子を捕捉し、再捕捉し、ナノポアの条件ならびにシスおよびトランスリザーバの条件に関して分子を分析することができる。後に詳細に説明するように、これによって、本発明は、分子の挙動特性を解明する広範囲にわたる実験および分析を可能にする。この分子捕捉/再捕捉制御シーケンスは、測定時間間隔の両端でのナノポアにおける分子の位置についての情報を提供し、その時間間隔の間に分子に加えられた力についての情報を提供し、溶液中の分子の経路の評価を可能にする。したがって、ナノポアに到達する分子の動力学を、ナノポアに入る分子の動力学と相関させることができ、それぞれの活動を個別に研究することができる。
本明細書において、用語「分子」は、DNA鎖などの完全な分子実体を指すことが意図されている。本明細書において、用語「分子成分」は、分子のサブユニットまたは成分を指すことが意図されている。例えば、ヌクレオチドは、DNA分子の分子サブユニットである。4種類のDNA塩基のそれぞれが4つの異なるヌクレオチド型を形成する。一例において、分子成分は、分子を一緒に形成する一連の、別個の、異なる実体であることができる。この分子捕捉/再捕捉制御シーケンスは、ナノポアの移動によって特性評価する分子、分子成分または他の分子種に対して使用することができる。
本発明の分子捕捉システムの態様に移ると、分子捕捉システム23の例示的な一実施態様が、図3に概略的に提供されている。このシステムは、分子を移動させるためのアパーチャ(aperture)、ポア(pore)、ホール(hole)、チャネル(channel)、バイア(via)または他の開口があけられた構造体25を含む。多くの用途ではナノポア14が好ましい。本明細書において、用語「ナノポア」は、一般に直径が約1ミクロン未満であるアパーチャまたは開口を指す。
本発明によれば、ナノポアの直径または大きさは、所望の分子条件を達成するように選択される。ナノポアの例示的な1つの選択では、ナノポアが、分子がナノポアを通過する間、分子が線状化されている必要がある、すなわち、ナノポアの制限容積内にある分子部分が二次構造以上の構造を含んでいない必要がある、十分に小さい直径を有する。ナノポアを通過した後、線状化された分子は一般に、秩序立ってまたは無秩序に凝縮し始める。その結果、ナノポアの分子移動持続時間の変化を、例えば分子再捕捉前の遅延の持続時間または通過方向の関数として測定することによって、分子凝縮事象、例えば核酸またはタンパク質の折畳みが始まり、または完了する時間を決定することができる。
この例が示すように、選択した分析または分子構造に合わせて、ナノポアの大きさを調整することができる。一般に、ナノポアの直径は約1ミクロン以下、好ましくは約100nm以下、より好ましくは10nmまたは5nm以下である。例えば、dsDNAが、ナノポアを線状に移動する場合、例えば約3nm〜約10nmのナノポア直径が好ましいことがある。ssDNAが、ナノポアを線状に移動する場合には、約5nm未満のナノポア直径が好ましいことがある。ナノポア直径はさらに、分子駆動力と協調して、移動の間、分子が選択した立体配置をとることができるように選択される。例えば、分子上に電気泳動力を生成する所与の電場に対して、分子の再捕捉を可能にし、同時に、分子が、曲がることなくナノポアを移動するように、ナノポア直径を選択することができる。したがって、ナノポア直径は、対象となる分子、および適当なサイズのナノポアを通過する運動を本発明の捕捉/再捕捉技術によって繰り返し特性評価することができる任意の分子の状態に合わせて調整される。
ナノポアの直径は、分子がナノポアを通過するときに、その分子が、所与の用途の規定に応じて、二次構造以上の構造をとることが可能である、または可能でないように選択することができる。ナノポアが一次構造の通過だけが可能であるとき、測定される輸送特性、例えばナノポアを通過するのに要する時間は、ナノポアを通過する前に存在した二次構造以上の構造の強度を示すものであることがある。ナノポアが、二次構造以上の構造が移動することが可能であるとき、測定される輸送特性は、このような二次構造以上の構造の存在の有無または位置を示すものであることがある。例えば、dsDNAの通過が移動することが可能なナノポアでは、ナノポアを通過する一本鎖核酸の始まりと終わりに対応して、捕捉事象と再捕捉事象の間に輸送特性の変化が起こった時刻に基づいて、ssDNA鎖に結合した相補的なオリゴマーの位置を、再捕捉事象の間に決定することができる。
このナノポア捕捉および再捕捉過程は、天然または合成分子とともに使用することができる。生体分子、例えば、一本鎖または二本鎖DNAおよびRNAなどの核酸、タンパク質、多糖、脂質ならびに合成ポリマーを含むポリマーは全て、本発明のナノポア捕捉および再捕捉過程によって特によく処理される。例えばオリゴヌクレオチドまたはDNA塩基の配列などの分子成分に対して適用することにより、このナノポア捕捉および再捕捉過程を、完全分子の1つまたは複数の部分からなる種に対して適用することもできる。したがって、本発明は、特定の分子、分子種または分子成分に限定されず、また、ナノポアの特定の大きさまたは幾何形状に限定されない。構造体25の厚さを貫通してあけられた、分析する選択分子または種に適した、全体に円形、角形または他の幾何形状のナノポアを使用することができる。
構造体25は、シスリザーバとトランスリザーバとを分離する構造体の2つの表面間に概ねマイクロスケールからナノスケールの長さのナノポアを形成することができる、基板、チップ、掛け渡された層、膜または他の構造体として実現することができる。本明細書において、用語「膜」は一般に、その大きさを横切って自立し、その縁が、例えば基板などの構造フレームによって支持された薄い材料層を指す。この構造体は、後述するように、所与の用途および選択した移動検出機構に対する要件に応じて、例えばマイクロエレクトロニクス材料として、電気絶縁性、導電性または半導電性とすることができる。シスおよびトランスリザーバ12、16は、この構造体と協調して、リザーバ内の流体をナノポアに送達して、流体内の種をナノポアと相互作用させることができるフローチャネル、流体入口および出口または流体ポート、或いは他の流体構造として提供することができる。
上記で説明したとおり、例示的な一実施態様では、それぞれのリザーバのナノポアの近傍に、ナノポアを移動するように一方のリザーバ内の分子種を誘導する駆動力場が加えられる。図1の例では、リザーバ溶液、例えば帯電した分子を含むイオン溶液中の電荷によって、ナノポアを横切る電圧またはナノポアを通過する電流を印加するため、リザーバ内に電極18、20が配置されている。この電気泳動力は、後に詳述するように、電圧の印加によってうまく制御することができる。
本発明は、広範囲にわたる駆動力場の代替機構を提供する。ナノポアが、十分な直径のアパーチャとして提供される場合には、外部リザーバからの流体流れによって駆動力を提供することができる。小さいが電気的に中性の分子種を分析するためには、印加電圧または電流によりナノポア内に生じる電気浸透流によって、必要な駆動力を提供することができる。さらに、流体力学的な圧力、磁力、例えば磁気部分によって標識された分子に対する磁力、光学トラッピング(trapping)、および、機械力、例えば原子間力顕微鏡の先端などのプローブによる機械力を使用することもできる。どのような移動力を使用するにしても、その移動力は、複数回の分子再捕捉およびトラッピング事象を可能にするため、リザーバ間の方向性を逆転させることができるものであることが好ましい。
図3に示すように、電気泳動力を上記のように使用する例示的な一実施態様では、電気フィードバック制御回路26の部分として、リザーバ間に電圧Vを印加する。印加する電圧は、バルクリザーバ溶液からナノポアの近傍へ分子種を引き寄せるのに十分な大きさであることが好ましい。
特徴的な電圧レベルおよびそのような電圧レベルに反応した分子の挙動を決定するため、この電圧印加によって生み出される分子上の力をモデル化することができる。例えば、巨大分子DNAを仮定すると、帯電したリン酸主鎖に対する印加電圧による電気力と、リザーバ内の流体分子との衝突によるランダムな熱力とに基づいて、DNA鎖の運動をモデル化することができる。熱力と電気力の間の競合の結果、ナノポアと分子の間には、それよりも短い距離では、電気力が、熱力および拡散力を上回る可能性が高い特徴的な距離が存在する。
例示的な1つのモデルでは、平均すると、拡散が、モデル化のため位置r=Oに位置すると特定されるナノポアから半径方向に、ナノポアから遠ざかる方向に分子を駆動すると仮定する。こうすると、半径方向の拡散速度Vd(r)は、Vd(r)=D/rと定義することができる。Dは、DNA鎖の拡散定数である。電場Eによって、J=σEによって与えられるイオン電流密度Jが生じる。σは、リザーバ溶液、例えばイオン溶液のイオン導電率である。ナノポアの直径よりもはるかに大きい距離だけナノポアから離れたリザーバ内において、電流密度および電場は、半球状に対称であり、これらは、電圧バイアスされたナノポアを通る測定イオン電流Iと、下式のような関係にある:
Figure 0005309145
自由溶液中のDNA鎖は、特徴的な電気泳動度μに基づく速度で移動することが知られている。DNA鎖のコンホメーションの自由度を無視し、DNA鎖の電荷が、rに位置するその質量中心のまわりに対称に分布すると仮定した場合、半径方向の電気泳動速度ve(r,t)は次式によって与えられる:
Figure 0005309145
次に、この電気泳動速度ve(r,t)を拡散速度vd(r)と比較すると、特徴的な距離Lが存在し:
Figure 0005309145
それよりも大きいと、拡散によってナノポアから遠ざかるDNA鎖の平均速度が電気泳動速度よりも大きくなることが分かる。ナノポアから距離Lよりも遠いリザーバ内の位置にDNA鎖がある場合、ドリフトおよび拡散による分子の運動の集団平均(ensemble average)は、ナノポアに向かう方向ではなく、むしろナノポアから遠ざかる方向になる。距離Lよりもナノポアに近いリザーバ内の位置に分子がある場合、分子の運動の集団平均はナノポアに向かう方向になる。
したがって、このモデルに基づくと、リザーバに加える電場が強いほど、その中で、リザーバ流体バルク内で失われることなく分子を占有することができるリザーバ容積は大きくなる。上記のモデルによって、対象となる所与の分子およびリザーバ構成に対して必要な電場および電圧印加を選択することができる。加える電場強度の上限は、ナノポアが形成された構造体の破壊電圧、制御回路の電流飽和、および移動検出技術の時間分解能によって与えられる。移動検出技術の時間分解能が関係するのは、より高い電場によって駆動されるより高速の移動が、より高速の電流測定を要求するためである。このモデルは、選択した分子、ナノポア構成およびリザーバ条件に関して、分子捕捉および再捕捉事象を達成するのに必要な分子駆動力を決定する技術の一例を提供する。
再び図3を参照すると、選択した駆動力実施態様において、対応するナノポア移動検出技術を使用して、分子とナノポアの相互作用を検出し、分子に加える力の方向を後続の捕捉事象のためナノポアへ戻る方向へ変化させるタイミングを制御する。図3にも示された上述の例示的な実施態様では、電流をモニタリングして、分子10による、ナノポアを通過するイオン電流の遮断を検出する。この実施態様では、検出回路26が、イオン電流をモニタリングする電流モニタリング要素Iまたは別の要素と、イオン電流の変化を検出したことに応答して電圧を印加する電圧源Vの大きさおよび極性を調整するように接続されたフィードバックコントローラ28とを提供する。
本発明は、イオン電流測定によるナノポア移動検出に限定されない。分子によるナノポア移動は、例えば、ナノポアを横切る電子流の測定、ナノポアに位置する分子を通しての電流トンネリングの測定などの横断電流の測定によっても検出することができ、これらはともに、ナノポアに位置する電極によってモニタリングされる。ナノポア移動の検出は、例えば、静電容量変調の測定、光学的検出、または選択された他の検出技術によっても達成することができる。分子がナノポアを通過するときに測定することができる追加の輸送特性には、静電容量、コンダクタンス、抵抗、電荷、濃度、例えば分子の長さに沿った単量体の数、光学特性、例えば蛍光標識付けなどによる蛍光および近距離場ラマン散乱などによるラマン散乱、ならびに化学構造などがある。ナノポア移動は、電子デバイスの変調、例えばナノポアの位置におけるFETチャネルのコンダクタンスの変調によっても検出することができる。また、分子とナノポアの相互作用を検出するため、ナノポアに隣接して、電気化学センサまたは他のセンシング素子を配置することもできる。本発明は、特定の移動検出技術に限定されない。
議論を分かりやすくするため、ここでは、例示的な一検出技術、すなわちイオン電流遮断測定を詳細に論じる。しかし、本発明がこれに限定されないことは明白である。ナノポアシステム内の電流および他のパラメータを検出する適当なある範囲の方法およびデバイス配置は、例えば、2004年6月8日に発行された米国特許第6,746,594号、2004年1月6日に発行された米国特許第6,673,615号、2003年9月30日に発行された米国特許第6,627,067号、2002年10月15日に発行された米国特許第6,464,842号、2002年3月26日に発行された米国特許第6,362,002号、2001年7月31日に発行された米国特許第6,267,872号、2000年1月18日に発行された米国特許第6,015,714号、1998年8月18日に発行された米国特許第5,795,782号、2004年6月24日に公開された米国特許出願公開第2004/0121525号、2003年6月5日に公開された米国特許出願公開第2003/0104428号、および2008年6月17日に公開された米国特許出願公開第2008/0171316号に記載されているように実現することができる。これらの文献は、それぞれその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
次に、図3のシスおよびトランスリザーバ12、16などの分子捕捉システムのリザーバの条件に移ると、リザーバ内の流体は同じ流体または異なる流体とすることができる。リザーバ流体は、導電性または非電導性とすることができ、対象となる分子と相互作用するある範囲の種を含むことができる。リザーバが異なる環境を含む場合、ナノポアおよびその支持構造体によってそれらの環境が分離されていることにより、それらの環境間のナノポア移動を制御することによって、それらの環境に分子を選択的に曝露することができる。したがって、例えば流体特性の変化が分子に及ぼす影響を決定するために、本発明の分子捕捉および再捕捉過程を使用して、分子と流体環境との相互作用を制御することができる。例えば、異なる流動媒体間の輸送に対する分子によるナノポア移動特性の変化を使用して、分子内または分子間相互作用の存在の有無または速度論に関する情報を得ることができる。具体的には、移動持続時間は、分子の立体配置の影響を直接に受けるため、シスリザーバ条件とトランスリザーバ条件の違いによって生じる分子の非平衡立体配置を、移動持続時間の偏差、イオン電流遮断の相違、トンネリング測定、光学検出などの他の検出機構の変調、またはこれら全てによって、明確に識別することができる。
本発明によれば、例示的な一実施形態において、シスおよびトランスリザーバは、pHが異なる流体を含む。例えば、シスリザーバは、比較的に低いpHの流体を含むことができ、トランスリザーバは、dsDNA分子を変性させるのに十分なpHを有する流体を含むことができる。この構成では、DNA分子は、最初に、二本鎖分子として、ナノポアを移動し、ナノポアで一本鎖分子として再捕捉される。それぞれの移動事象の正確な検出と協調して、ナノポアにおける再捕捉のタイミングを制御することによって、分子の変性に必要な時間を直接的に測定することができる。
シスおよびトランスリザーバはさらに、例えば流体の浸透圧モル濃度またはイオン強度の変化を生じさせるため、選択した溶媒、溶質またはイオンの濃度が異なる流体を含むことができる。これらの2つのリザーバ流体は、例えば溶媒の識別の違い、溶質の識別、例えば所与の電荷のイオンの変化、または溶質の有無によって区別することもできる。それぞれのリザーバ内の流体に加えるエネルギーを、例えば温度、磁場または電場、機械的撹拌、音響エネルギー、光エネルギー、あるいはリザーバ流体への他のエネルギーの供給を制御することによって、明確に制御することもできる。2つのリザーバ内の流体の粘度を相違させることもできる。
例示的な一実施形態では、トランスリザーバが、選択した反応種を流体中に含む。シスリザーバに含まれる分析対象分子が、ナノポアをトランスリザーバへ移動すると、分析対象分子と選択した反応種との間の反応が始まる。次いで、分析対象分子がシスリザーバに移動するようにすることによって、この反応を終了させることができる。分析対象分子のシスリザーバとトランスリザーバの間の移動を制御することによって、反応を制御し、反応の中間点における分子の特性を、それぞれの移動事象における検出移動持続時間またはイオン電流遮断に基づいて分析することができる。
分析対象分子と相互作用種との間のこのような制御された反応は、例えば核酸と相補核酸、タンパク質、層間化合物(intercalcating compound)、アルキル化剤または他の種と間の結合として提供することができる。このような化合物とタンパク質および他の分子との間の同様の相互作用を研究することもできる。同様に、一方のリザーバ内での特定の分子内または分子間事象を促進しまたは阻害する、もう一方のリザーバに含まれる種の能力を決定することもできる。例えば、ポリマー、例えばタンパク質または核酸の折畳みに影響を及ぼすシャペロンの能力を決定することができる。
このような相互作用は、分析対象分子が再捕捉されることを妨げることがあることに留意されたい。これは例えば、分析対象分子が分解され、または別の種と結合していて、もはやナノポアにはまり込まないために起こる。分子による相互作用が、所与の流動条件下でナノポアを再び通過する分子の能力を妨げると予想される場合には、それによって分子がナノポアを通過するまで、分子駆動力の強さを増大させることができる。このような実験での測定を使用して、分子内の相互作用の強さまたはその分子と別の種との間の相互作用の強さを決定することができる。
さらに、シスリザーバ内の流体とトランスリザーバ内の流体との間の選択した相違を使用して、例えば、流体のpH、イオン強度、温度または他の特性が、分子間または分子内事象に対して直接の影響を有するかどうかを判定することができる。例えば、一方のリザーバ内の流体に曝露する前および後の移動特性に基づいて、分子間折畳み事象の存在の有無または速度論を、その流体の特性の関数として決定することができる。
分子間相互作用によって生じうる分子に対する他の変化を研究することもできる。例えば、化学種、例えば薬物、イオン、オリゴマー、界面活性剤、ヌクレオチドプローブおよびプライマー、補因子、酵素基質ならびに他の種をトランスリザーバに加えて、分析対象分子がトランスリザーバへ移動した後に分析対象分子と相互作用させることができる。次いで、ナノポアによって1回または数回、分子を再捕捉して、移動持続時間の変化、またはトランスリザーバ内の種への曝露によって生じた分子の変化を示すことができる他の特性の変化を検出する。例えば、移動持続時間または他の特性の偏差によって、結合、ハイブリダイゼーション、対合、変性、開裂、化学反応または置換、特定のコンホメーションの安定化、あるいは誘導されたコンホメーションの他の変化を示すことができる。このような研究は、本発明に従って、例えば、例えば候補結合化合物のアッセイおよびプロテオミクスによる薬物の発見に対して使用することができる。
さらに、本発明によれば、2つのリザーバ間に異なる媒質を含めることができる。例えば、一方のリザーバにゲルを含めることができる。ゲルを所定の場所、例えばトランスリザーバ内に配置することによって、例えば電気泳動または選択した他の技術を実行するため、分子とゲルとの相互作用を制御することができる。
シスリザーバ特性とトランスリザーバ特性とを相違させることによって可能になるこれらの例示的な分析に加えて、本発明の分子捕捉/再捕捉シーケンスは、別の利点を提供し、リザーバ流体およびリザーバ構成が共通である分析とリザーバ流体およびリザーバ構成が異なる分析の両方を、広範囲に可能にする。例えば、この捕捉/再捕捉過程では、観察される電子信号が1回の分子移動の結果であることを、単一分子、単一信号ベースで、リアルタイムに確認することができる。分子が最初にナノポアを通過しなかった場合、その分子はナノポアを通って再び移動することができず、そのため、再捕捉されたそれぞれの分子は、ナノポアを(2回)通過したことを紛れもなく示しており、したがって、検出された移動電流信号は、その分子がナノポアを通過したことに対応していることが確認される。このような確認がなされない場合には、推定される移動の数千または数百万回の統計的または化学的検査が従来通りに必要となるであろう。したがって、分子がナノポアを複数回、移動するときの複数回の移動測定を使用して、測定の誤差を低減させ、さらに測定信号のノイズを補正することができる。例えば、複数回の捕捉および再捕捉事象のデータを使用して、分子の移動によって生成された信号を、単一分子ベースでバックグラウンドノイズから区別することができる。この技術は、PCRのような高感度検定が存在しない多分散試料および分析物に対しても有効である。
この捕捉/再捕捉過程では、分析対象の単一の分子に対して短時間に多数の移動測定値を得ることができることに特に留意されたい。後に詳細に説明するとおり、駆動力極性の逆転のタイミングによって、捕捉事象と再捕捉事象の間の遅延を制御することができる。この能力により、合理的な実験条件下および実験時間で、多くの移動測定を実施することができる。例えば、分子の特性に関して、1回の測定によって達成することができるよりも高い正確さを提供するために、これらの多くの測定値を平均し、または他の方法で統計学的に分析して、広範囲にわたる分析結果を得ることができる。例えば、多数の捕捉/再捕捉サイクルを使用して、分子の長さ、直径、その分子に結合した他の分子の有無を含むコンホメーション、およびその分子を構成する成分、単量体または他の種の組成をより正確に測定することができる。捕捉/再捕捉サイクルを繰り返すことによって、イオン電流信号の測定を改良し、シグナル対ノイズ比を増大させることができ、例えば1つまたは複数のデバイスがナノポアと一体化された用途において、測定および信号誤差を補正することができる。このような測定は、例えば2004年6月8日に発行された米国特許第6,746,594号、2004年1月6日に発行された米国特許第6,673,615号、2003年9月30日に発行された米国特許第6,627,067号、2002年10月15日に発行された米国特許第6,464,842号、2002年3月26日に発行された米国特許第6,362,002号、2001年7月31日に発行された米国特許第6,267,872号、2000年1月18日に発行された米国特許第6,015,714号、2004年6月10日に発行された米国特許第5,795,782号、2004年6月24日に公開された米国特許出願公開第2004/0121525号、2003年6月5日に公開された米国特許出願公開第2003/0104428号、および2004年6月10日に公開された米国特許出願公開第2004/0110205号に記載されている。これらの文献は、それぞれその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
分子のコンホメーションの動力学を測定する例示的な技術を特に考えると、最初の移動に続くナノポアを通した再捕捉および移動を使用して、分子の初期のコンホメーションが、移動によってどのような影響を受けるのかを調べることができる。例えば、シスリザーバからトランスリザーバへのナノポア移動によって、DNA鎖が引き伸ばされ、または線状化される場合、ナノポアを通したシスリザーバへの再捕捉後、DNA鎖の移動持続時間は増大することになる。同様に、シスリザーバからトランスリザーバへのナノポア移動によって、タンパク質が線状化される場合、ナノポアを通したシスリザーバへの再捕捉後に、タンパク質の移動持続時間は増大し、タンパク質が折り畳まれる場合には、ナノポアを通したシスリザーバへの再捕捉後、タンパク質の移動持続時間は短縮されることになる。シスリザーバからトランスリザーバへのナノポア移動によって、タンパク質が引き伸ばされ、または線状化される場合、ナノポアを通したシスリザーバへの再捕捉後、タンパク質の移動持続時間は短縮されることになる。
本発明によって提供される同様の用途では、例えば特定の配列、塩基ミスマッチ、タンパク質の接着、または主鎖に対する損傷に起因する欠陥を生じさせるDNA分子構造の変動が、欠陥部位で分子が曲がる傾向を増大させることがある。この曲がりを、分子の捕捉および再捕捉を繰り返すことによって検出し、測定することができる。
これらの例では、選択した分子実験または分子分析に合わせて、対象となる環境をその分析に提供するリザーバ条件を有するように、本発明の分子捕捉/再捕捉システムをカスタマイズすることができることが例示される。分子捕捉/再捕捉シーケンスを本発明に従って制御して、リザーバ条件に対する分子の曝露の開始および持続時間を制御する。分子捕捉/再捕捉事象のたびに起こるナノポア移動は、リザーバ条件に対する曝露に起因する分子特性の検出および測定を提供する。それによって、この分子捕捉/再捕捉システムは、ナノスケール実験環境とその環境に対する分子検出構成の両方を提供する。
さらに、サブミクロンスケールの単一分子トラップを形成するように、本発明の分子捕捉/再捕捉システムを制御することができる。ナノポアを通して分子を両方の方向に連続的に移動させることによって、分子は、ナノポアの近傍に空間的にトラップされ、分子を、ナノポアを通して、選択した所望のリザーバに移動させることができる。イオン電流の遮断の検出、または分子によるナノポア移動に対応する選択した他のパラメータは、トラップ内の分子の位置を明らかにし、トリガされた電圧または他の駆動力極性の逆転によって、分子トラップ状態を維持するためのフィードバック機構を提供する。これによって、化学修飾の必要性なしに、トラップされた分子を検出し、その特性を評価することができる。
本発明の捕捉/再捕捉システム内にトラップされた分子を、所望の実験または分析のため、長時間、システム内に維持することができる。例えば、長いトラップ持続時間の間に、一方のリザーバの特性を時間の経過とともにゆっくりと変化させ、このゆっくりとした変化に対する分子の応答を測定することができる。この変化は例えば、一方のリザーバの温度、pH、イオン濃度または他の特性を含む。
本発明の分子捕捉/再捕捉システムはさらに、DNA配列決定ツールとして、別の重要な利点を提供する。一般に、ナノポア配列決定の注目すべき利点は、最小限の化学薬品または酵素依存増幅を必要とする安価な試料調製が見込まれることである。したがって、直接鎖配列決定法または他の技術によるナノポア配列決定のコストは、例えばサンガー法(Sanger method)または超並列処理法(massively parallel approach)によるアンサンブル配列決定よりもはるかに低くなることが予想される。これらの方法とは違い、ナノポア配列決定は、高価な精製蛍光試薬、ポリメラーゼまたはリガーゼの使用を必要とせず、非増幅ゲノムDNAだけを必要とし、高価な酵素、クローニングまたは増幅ステップのコストを排除する。さらに、ナノポア配列決定は、例えば長さ5,000〜50,000ヌクレオチドの非常に長いDNA断片の配列決定を可能にすることができる。非常に長いDNA断片は、より短い断片と比較して、複数の配列読取りのアセンブリを大幅に単純にすることができ、アセンブリ工程のコストおよびよく知られた不完全性を低減させることができる。
しかし、従来のDNA配列決定法と同様に、ナノポア配列決定も、ゲノム配列の使用可能なドラフト(draft)を生成するために、一般に6倍以上のカバレージ深度(depth of coverage)を必要とすること、すなわち、ゲノムのそれぞれの領域を、少なくとも6回読み取る必要があることを理解されたい。二倍体ヒトゲノムドラフトが望ましく、このゲノムを50,000個のヌクレオチド断片に断片化すると仮定すると、このような約120,000個の断片の配列を読まなければならないことになる。ポアソン分布計算によれば、ゲノムの>99.9%が6回以上読まれることを保証するためには、標的ゲノムの複数のコピーから誘導された120,000個の断片を含む混合物、すなわち複数の細胞からの抽出物を、18倍のカバレージ深度で分析すべきであると予測される。これは、約2,000,000個の個々の断片を読むことに対応する。
したがって、長い配列を読むことができ、長さ>50,000ヌクレオチドの断片を移動(translocating)させる従来のナノポア配列決定システムの限界を克服することができることが、特に重要である。このような限界は、ナノポア捕捉率が、溶液モル濃度、すなわち配列決定する断片末端の濃度に依存する結果である。短い、例えば<50ヌクレオチドの一本鎖オリゴマーの超ハイスループット移動は容易に達成され、これらの短い分子に対して、濃度正規化された測定捕捉速度定数は、約5.8オリゴマー(秒 μM)-1である。しかし、短いオリゴマーに対して通常使用されるマイクロモル濃度では、長さ50,000ヌクレオチドのポリマー溶液の粘度は非常に高い。したがって、ナノポアを通した移動させる長いオリゴマーの溶液は、混合および分子拡散を阻害すると思われる過大な粘度を回避するため、比較的に低いナノモル濃度に維持されなければならない。50,000ヌクレオチドの断片を含むこのような低ナノモル濃度の溶液では、長さ50,000ヌクレオチドの断片と長さ50ヌクレオチドの断片に対する捕捉速度定数が同一である場合でも、単位時間当たりにナノポアが捕捉する分子は、数個、おそらくは5〜10秒当たり1〜2個にしかならない。したがって、大量の断片を読まなければならない場合には、ナノポアを通って移動した1つの断片と次の分子の捕捉との間のロス時間(dead time)を最小化することが重要である。
本発明の分子捕捉/再捕捉システムは、この限界を克服して、長さ50,000ヌクレオチドのオリゴマーの6倍以上のカバレージを達成することができる効率的で時間を節約する方法を提供する。最初に、最初のナノポア移動後に分子が再捕捉されるようにする分子駆動力を正確に制御することにより、例えば、分子がナノポアを移動させてから1または2ミリ秒以内にリザーバ間の電圧バイアスを逆転させることによって、分子を再捕捉することができる。長さ10,000〜50,000ヌクレオチドの分子は、このような短い時間では、ナノポアの近くの半球形の電場の外に拡散できず、分子は、ナノポアまで戻るとすぐに移動を開始するため、ナノポアにおける捕捉と再捕捉の間のロス時間は、それぞれナノポアを通って一度だけ移動する一連の分子の一連の捕捉事象間のロス時間よりも2〜3桁小さい。
したがって、ナノポアによって捕捉された50,000ヌクレオチドのそれぞれの断片を、本発明に従って、再捕捉し、選択した回数、例えば、トランスチャンバ内に意図的に廃棄するまでに6倍のカバレージが必要であると仮定して6回以上、再読することができる。それにより、本発明の分子捕捉/再捕捉システムでは、捕捉−再捕捉シーケンスによって、選択したヌクレオチド断片を、選択した回数、繰り返し分析し、続いて、次のヌクレオチド断片を繰り返し分析し、これを、溶液中の研究対象の全てのヌクレオチド断片が、必要なカバレージ深度に従って分析されるまで繰り返すことができる。
さらに、従来の方法での断片のランダムサンプリングによって、すなわち、それぞれの捕捉された断片を一度だけ捕捉して読むことによって、ゲノムの>99.9%が必要な回数(例えば6回以上)読まれることを保証することを必要とするのではなしに、本発明の分子捕捉/再捕捉システムは、リアルタイムソフトウェアまたは他の診断システムを使用して、以前に読んだ断片と、ナノポアを最初に通過する間に読まれなかった断片とを区別することができる。この構成では、それぞれの移動事象からの検出信号を、収集した信号のデータベースと比較して、未読の断片を識別する。未読断片が明白に識別された場合には、所望の倍数のカバレージを保証するため、その断片を、再分析のために選択した回数だけ再捕捉する。ある断片が、既読であると識別された場合には、シスリザーバへ再捕捉されるようにするのではなく、トランスリザーバのバルク溶液中にその既読断片が廃棄されるように、分子駆動力を制御する。
その結果、この構成では、未読の断片だけが再捕捉され、必要な回数、例えば6回以上読まれ、既読の断片は、既読か否かを判定するのに必要な初期の移動の後に、トランスチャンバに廃棄される。本発明によって提供されるこの技術は、ゲノムの>99.9%が6回以上読まれることを保証するのに必要な18倍のカバレージ深度を回避する。
本発明の分子捕捉/再捕捉システムによって可能となる分子移動データのリアルタイム分析は、広範囲にわたる追加の方法を提供する。例えば、使用する配列決定法に関係なく、ゲノム内のある種の配列は、一般に他の配列よりも読むのが難しく、より低品質の読出しを生成することはよく知られている。本発明によれば、個々のヌクレオチド断片の最初の数回の分子断片移動、例えば6回以上の移動によって、不完全な読出しまたは低品質の読出しが生成されたと、リアルタイムソフトウェアが判定した場合、その断片を即座に再捕捉して、所望の正確さの読出しを生成するに必要な追加の回数だけ、配列を再決定するように、再捕捉システムを制御することができる。本発明のこの技術は、読み取るのが難しいゲノムの特定の断片にランダムに当たるためにゲノム全体を再サンプリングする従来の必要性を排除する。
これらの例は、本発明の分子捕捉/再捕捉システムに、配列決定するヌクレオチド断片および断片の配列を決定する回数を選択するデータ分析能力を実装することができることを例示する。リアルタイムデータ分析によって、分子の分析を開始し、継続し、終了させ、または再開するように、システムを制御することができる。このシステムによって可能になる分子捕捉および移動の時間スケールが、リアルタイムデータ分析の速度に対応するとき、この時間スケールは、洗練された形で利用される。したがって、本発明に基づく分子捕捉および再捕捉により、従来の単一捕捉ナノポア配列決定に関連した重大な限界を克服する方式で、ゲノム配列決定を達成することができる。
次に、本発明の他の態様に移ると、分子が捕捉されまたは再捕捉される効率が向上するように、対象となる分子を適合させること、および対象となる分子に随伴成分を提供することができる。例えば、ナノポアの近くの半球形の電場の外へオリゴマーが拡散すると、再捕捉効率は一般に低下するため、用途によっては、その分子の再捕捉効率を向上させるように、分子構造を適合させることが好ましいことがある。
例示的な一技術では、分子がナノポアから出ようとしているときに分子の速度が低下するように、分子を適合させる。移動中の分子の速度を低下させることにより、バルク溶液中へ拡散するまでに、分子が半球形の再捕捉場内に滞在する時間が長くなる。図4Aを参照すると、例示的な一構成では、例えば、DNA鎖32の5'末端に、そのDNA鎖自体よりも大きいが、ナノポアを移動させるには十分に小さい直径を有する化学基または分子34を結合させることができる。図4Bを参照すると、さらに、またはあるいは、DNA分子32の電荷と反対の極性の電荷を有する化学基または分子36、例えば負に帯電したDNA骨格とは逆の正電荷を有する化学基または分子36を結合させることができる。結合させた基は、その大きな直径によってナノポアの側壁と相互作用するか、または分子駆動力とは反対の正電荷を有するため、対象となるDNA鎖に結合させた基は、DNA鎖自体よりもはるかにゆっくりとした速度でナノポアを移動させる。その結果、全体の移動速度は低下し、バルク溶液中へ拡散するまでに、DNA鎖が半球形の再捕捉場に滞在する時間が長くなる。DNAの3'末端は、5'末端よりもナノポアによって捕捉されやすいことが知られているため、このような基は、DNA鎖の5'末端に結合させることが好ましいことがある。
さらに、DNA鎖自体の電荷とは反対の極性の電荷を有する基、またはDNA鎖自体の直径よりも大きな直径を有する基のこのような結合が、DNA鎖の5'末端に位置すると、DNA分子が最初に5'末端から3'末端へ捕捉され、ナノポアを通過する確率が大幅に低下する。実際、最初のナノポア移動の後、DNA分子が、3'末端から5'末端へ再捕捉され、移動される可能性が低いのは、分子の5'末端がまだ十分にナノポア内に留まっている間に、リザーバ間のナノポアを横切る電圧バイアスを逆転させた場合に限られる。分子およびその延長部分が完全にナノポアから出た場合にはおそらく、再捕捉によって、分子は、再び3'末端から5'末端へナノポアを通って移動する。
本発明によって提供される別の構成では、DNA鎖の5'末端に、図4BのようにDNA鎖よりも大きな直径を有し、さらにはナノポア自体よりも大きな直径を有する化学基または分子を結合させることができる。この条件は、最初にDNA分子の3'末端だけが捕捉されること、したがって、最初のナノポア移動が3'末端から5'末端であることを保証する。この条件はさらに、DNA分子が、ナノポアからトランスリザーバ内へ決して解放されないことを保証する。最初の移動の後、電圧バイアスを逆転させると、DNA鎖は、ナノポアを通って5'末端から3'末端へ移動し、シスリザーバ内へ解放される。この分子の3'末端は、ナノポアを出て最後にシスリザーバ内へ入ることになるため、本質的に5'末端よりもナノポアによって捕捉されやすいこの3'末端は、解放の直後、ナノポアに最も近いことになる。したがって、ナノポアよりも大きな直径を有する化学基または分子をDNA鎖の5'末端に結合させることは、トランスリザーバ内において分子が決して失われないことを保証し、シスリザーバ内において、分子は、シスリザーバからの再捕捉に最も有利な向きに解放されるため、シスリザーバ内において分子が失われる確率を低下させる。
DNA鎖に結合させる分子を、例えばシスリザーバ内のナノポアに隣接した構造体にも結合させるような配置に、この構成を拡張することができる。例えば、ナノポアが形成された膜の表面に相補鎖を配置し、DNA鎖とハイブリッド形成させることができる。DNA鎖は、順方向と逆方向の両方の方向に、ナノポアを移動させることができるが、ナノポアの近傍から脱出することができないように、シスリザーバ内に効果的につなぎ留められる。
これらの例では、分子の捕捉、移動および再捕捉特性が制御されるように、本発明に従って、捕捉する分子に、選択した種を、随伴種として提供することができることが例示される。本発明は、特定の種が提供されることを必要とせず、必要なのは、考慮中の分子移動の特性に基づく、選択した種と分子との結合または他の相互作用だけである。したがって、この技術は、分子の移動および再捕捉の態様において、追加の制御の程度を提供する。
次に、図5を参照すると、図1〜3のようなナノポアを通した分子の捕捉、移動および再捕捉を制御する、本発明によって提供される制御システム40の例示的な一実施態様が示されている。この図に示すように、ナノポアは、例えばPEEKフローセル42のリザーバ間に接続されるように構成されている。図3に示したフィードバック制御回路26によって、検出電流Iが供給され、この電流Iは、測定デバイス、例えばモレキュラデバイシズ社(Molecular Devices, Corp.)のAxopatch 200B増幅器などの電流増幅器44に供給される。この増幅器は、ナノポアイオン電流に対応する電流Iを測定し、後述するように、フィードバックコントローラによってセットされたバイアス電圧Vnanopore-cellを、リザーバ間に印加する。測定電流Iは次いで、高域フィルタ46によって処理される。この高域フィルタは、DCベースライン電流レベルを除去する。その結果、電流ベースラインが正のとき、フィルタ出力パルスは負であり、ベースラインが負のとき、フィルタ出力パルスは正である。捕捉/再捕捉シーケンス中の分子捕捉事象に関して、ステップに対するフィルタの整定時間は最小化されるべきであり、このような整定時間は、例えば単純なRCフィルタによって達成することができる。さらに、増幅器の出力を絶対値回路に通して、電流が+Iから-Iに切り換わるときに観察される大きなステップを排除することができる。
フィルタリングされた出力信号は、加えられた分子駆動力の極性を逆転させるフィードバックトリガを生成するため、コントローラ48、例えばナショナルインスツルメンツ社(National Instruments, Inc.)のPXI-6070E DAQカード上のプログラムされたアナログ回路によって受け取られる。コントローラ48は、選択電流コンパレータ閾値、選択トリガ遅延および電圧制御を含むようにプログラムされる。コントローラ48は、フィードバック制御電圧VCONTROLを生成し、この電圧は増幅器44に送られ、増幅器44は、フローセル42においてシスリザーバとトランスリザーバの間のナノポアを横切って、対応する電圧バイアスを印加する。分子捕捉/再捕捉シーケンス中の捕捉事象に関しては、コンパレータを使用して、PXI-6070Eカード上にカウンタとともに実装されたパルス発生器をトリガして、電圧の変化を生み出すことができる。分子捕捉/再捕捉シーケンス中の再捕捉事象に関しては、リザーババイアス電圧を制御するためのアナログ波形のプログラムされた出力をトリガするために使用されるコンパレータに、帯域通過信号が送られる。このコントローラはさらに、この制御電圧を、フィルタリングした電流信号測定値とともに電圧制御信号をハードドライブに記録するため、データ収集システム、例えばモレキュラデバイシズ社(Molecular Devices Corp.)のDigidata 1322Aに送る。
このシステムによって可能となる例示的な分子捕捉/再捕捉サイクルを示すタイミング図が図6に示されている。分子が、ナノポアをシスリザーバからトランスリザーバへ移動させると、移動の間、測定電流Iは低減し、この電流低減により、移動の始めに負の高域フィルタパルスが生成され、移動の終わりに正のパルスが生成される。印加電圧バイアスの極性を逆転させる前に設ける遅延時間tdelayは、移動事象の始まりを検出したとき、または移動事象の終わりを検出したときから開始することができる。図6の例では、この遅延が、移動事象の始まりから開始される。後に説明するように、この遅延時間は、一定に維持し、または所与の捕捉/再捕捉シーケンスごとに変更することができる。この遅延時間の終わりに、ナノポアセルにおけるバイアス電圧Vnanopore cellの極性を逆転させる。多くの用途で、分子をシスリザーバへ移動させるために分子を再捕捉するのに十分であることが分かっている予め設定された持続時間treverseの間、この逆極性バイアスを印加することが適当であることがある。この再捕捉持続時間の終わりに、ナノポアセルにおけるバイアス電圧Vnanopore cellの極性を再び逆転させ、システムは、シスリザーバからトランスリザーバへの分子移動の検出を待つ。
印加電圧バイアスの極性を逆転させる前に設ける遅延時間tdelayは、システム動作の考慮事項に基づいて、所与の分子分析ごとに設定することができる。最初に、分子がナノポアを通過した直後に、分子駆動力場を、逆転させるのではなく、オフにする場合を考えると、分子がナノポアから距離Lだけ拡散する平均時間は、L2/Dとなる。Dは、前述の拡散定数である。次に、分子がナノポアを移動させた後に、分子駆動力場をオフにせず、その代わりに、遅延時間の間、ナノポアから遠ざかる方向に分子を誘導する場合を考えると、この閾値距離に到達する実際の時間はより短くなる。したがって、より長い間、捕捉半球内に分子を保持したい場合には、希望に応じて、本発明に従って、分子がナノポアを移動させたらすぐに、電圧をオフにすることができるが、しかし、その場合、ナノポアに入る分子を検出したときではなく、ナノポアを出る分子を検出したときにシステムをトリガしなければならないため、このトリガ/検出システムがより複雑になることがあり、あまり好ましくない。したがって、多くの用途で、分子駆動力の極性を逆転させる前に、ある遅延時間を設けることが好ましいことがある。
一般に、追加の移動のため分子を保持するため、外側へ移動する分子が前述の最も外側のトラップ距離Lに到達するのにかかる特徴的な時間よりも、遅延時間tdelayの方がはるかに短いことが好ましいことがある。拡散を無視すると、この時間は、微分方程式
Figure 0005309145
または
Figure 0005309145
から計算することができ、その結果、
Figure 0005309145
となる。4kbのDNA鎖の一例では、この値が130msである。ドリフト項を無視した拡散では、時間L2/Dが約400msである。実際問題として、実験に基づく分析および数値計算による結果は、近単位効率を有する再捕捉、すなわちナノポアから遠ざかる方向に急速に拡散する分子の確率分布のテールでさえも、再捕捉することができるように効率的な再捕捉を可能にするために、好ましい最大遅延を数msとすることができることを示す。例えば印加電圧の増大に起因する電流の増大に対して、遅延時間を延長することができる。ある用途に関しては、分子が最も外側の捕捉距離Lに到達するのに要する特徴的な時間よりもはるかに短い遅延時間である限りにおいて、数十ms、例えば100ms未満の最大遅延時間が好ましいことがある。
所与の用途に対する最低許容遅延時間は、ナノポアを通過する分子を完全に検出するための考慮事項によって決定することができる。印加電圧バイアスを逆転させた後のある時間の間、例えば約<数100マイクロ秒の間、ナノポア構造、例えば膜は、容量的に帯電し、過剰電流を引き込む。この時間の間、分子移動事象を検出することはできない。この電流を、Axopatch 200Bの静電容量補償回路によって、遷移の縁で、約50マイクロ秒ほど、フィードバック回路に並列に供給することができるが、移動の検出は不可能である。したがって、多くの実施態様に対するトリガ回路は、例えば高域ステップ応答に関連づけられた、分子がナノポアを再移動させるまでに経過しなければならない特徴的なリセット時間を有していなければならない。さらに、移動事象の開始の検出に基づいて再捕捉をトリガするフィードバック制御パラダイムが与えられた場合、遅延時間tdelayは、電圧を逆転させる前に分子による完全な移動を収容する十分な長さを有していなければならず、この遅延は、移動持続時間の不確実性によって制限される。最後に、それぞれの移動は、分子が思いもよらない挙動を示し、何らかの理由でトラップから失われる危険を伴うため、総分子トラップ時間を最大にしたい場合には、移動間の遅延を最大にすべきである。したがって、これらの考慮事項に基づき、遅延時間tdelayの最小値は、約0.5ms〜約1msであることが好ましい。
所与の用途に対して希望する場合には、ナノポアを通して移動した後に、ナノポアの近傍から分子が失われた場合、または、ナノポアを再び通過しないような形で分子が変形した場合に、電圧の印加がリセットされることを保証するように、分子捕捉/再捕捉システムを制御することができる。このようなリセット制御を得るため、分子移動事象を示すものである電圧極性逆転の回数を計数するカウンタを実装することができる。予め指定された時間、例えば約200ms〜約1000msの間に、カウンタがインクリメントしない場合、システムから分子が失われたことが分かり、電圧の極性をその以前の状態に切り換えることによって、リセットすべきである。これにより、ナノポアの近傍から分子が失われた後も、順次捕捉/再捕捉サイクルを継続することができる。
図6のタイミング図に示した制御タイミングシーケンスは、分子の捕捉および再捕捉のために本発明に従って実現することができる広範囲にわたる制御タイミング技術の一例に過ぎない。例えば、一代替技術では、閾値電圧VTHRESHを決定する。この閾値電圧VTHRESHは、印加電圧VAPPLIEDの絶対値がこの閾値電圧よりも大きい場合、すなわち|VAPPLIED|>VTHRESHである場合を除いて、それよりも低い電圧では、対象となる分子がナノポアを移動させないことが分かっている電圧である。次いで、第1の印加電圧V1を、|V1|>VTHRESH、第2の印加電圧V2を、|V2|<VTHRESHと定義する。
これらの電圧選択を用い、最初に、印加ナノポアバイアスを、VAPPLIED=+V1としてセットすることによって、分子捕捉-再捕捉サイクルを開始させる。このバイアスは、例えばシスリザーバからトランスリザーバへの第1の移動事象を生じさせる。分子の移動を検出した後、印加電圧を、VAPPLIED=-V2としてセットする。この電圧は、分子をナノポアで保持し、ナノポアを通した移動を生じさせず、例えばトランスリザーバ内のナノポアでナノポアを空間的にトラップする。選択したトラップ持続時間の後、印加電圧をVAPPLIED=+V2にセットして、ナノポア内への分子の侵入と、上で説明したナノポア構造体の帯電による電圧遷移とを区別することができるように、分子をナノポアから遠ざける。最後に、印加電圧をVAPPLIED=-V1にセットして、ナノポアを通したもう一方のリザーバへの分子の移動を生じさせる。この例示的な制御タイミングシナリオは、本発明の分子捕捉/再捕捉サイクルを、さまざまな分子事象に適合させることができること、および本発明の分子捕捉/再捕捉サイクルが、特定の制御/測定シーケンスに限定されないことを例示する。必要なのは、制御シーケンス中の1つまたは複数の時点において分子駆動力を調整して、順方向と逆方向の両方向のナノポアの分子移動を少なくとも1回、生じさせることだけである。
上で説明した選択した分子制御シーケンスを可能にする例示的なナノポア構造に移ると、本発明によれば、ナノポアは、ナノポアのナノスケールの直径を収容し、ナノポアのマイクロスケール以下の長さを収容する支持構造体内に配置されることが好ましい。上で説明したとおり、支持構造体の表面間のナノポアの長さは、2つのリザーバを分離する構造体の概略の厚さを規定する。支持構造体は、2つのリザーバ間で電圧バイアスの極性が切り換えられたときに容量的に帯電することがある。流体と接触する支持構造体の面積が小さいほど、容量性電荷は少なくなり、制御および検出トリガは高速になる。したがって、大部分の用途で、小面積の支持構造体が好ましいことがある。
マイクロエレクトロニクス膜は、ナノポア支持構造体として特によく適している。特に、イオン性流体およびDNAなどの帯電分子の場合のように、リザーバに供給される流体が導電性である用途に対して、この膜は、2つのリザーバ間を電気的に絶縁する、例えばSiNxなどの窒化物、酸化物または他の絶縁構造体として提供することができる。この膜は、複数の材料、複合材料、または選択した検出/トリガ制御スキームを可能にする他の選択した配置から形成することができる。
ナノポアは、都合のよい任意の工程、例えばイオンビームミリング、電子ビームミリング、イオンビームスカルプティング(sculpting)、ウェットまたはドライエッチング、あるいは選択した他の工程によって、選択した固体支持構造体中に形成することができる。ナノポアの支持構造体、ならびに電気プローブ、センサ、接点パッド、電子デバイスまたは他の構造体は、所与の分子分析用途に対して望ましい適当な任意の方法で製造することができる。マイクロエレクトロニクス膜を形成し、このような膜に、検出電子接続およびプローブを伴ってナノポアを形成する製造工程は、例えば2004年8月31日に発行された米国特許第6,783,643号、2003年9月30日に発行された米国特許第6,627,067号、2007年8月21日に発行された米国特許第7,258,838号、2002年10月15日に発行された米国特許第6,464,842号、2004年11月18日に公開された米国特許出願公開第2004/0229386号、2008年7月17日に公開された米国特許出願公開第2008/0171316号、2005年1月13日に公開された米国特許出願公開第2005/0006224号、2005年11月3日に公開された米国特許出願公開第2005/0241933号、および2005年6月16日に公開された米国特許出願公開第2005/0126905号に記載された、所与の用途に対して最も適した方法で実施することができる。これらの文献は、それぞれその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明は、固体支持構造体およびナノポアに限定されない。所与の用途に適した生物学的ナノポアを使用することができる。例えば、α溶血素と呼ばれるタンパク質は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)が産生する毒素である。水溶液中のこのタンパク質の単量体は、脂質二重層内または細胞膜内に、脂質二重層を貫通する直径約1.5nmの水性チャネルまたはナノポアを生み出す七量体として自己集合する。
実験固体ナノポアシステムおよび制御技術を用い、本発明に従って達成された測定結果およびデータ分析を説明するため、以下の実施例を提供する。
実施例I
集光透過型電子顕微鏡(TEM)ビームを使用して、厚さ約20nmのSiN膜に、直径約6nmのナノポアを形成した。膜の支持されていない領域の横方向の寸法は20ミクロン超であり、それにより、ナノポアを、無限電気絶縁シートの穴として効果的に生じさせることができた。システムの静電容量を低減させるため、このSiN膜を、標準MEMSバルクマイクロ機械加工によって形成されたピラミッド形のくぼみを有する3mmシリコンウェーハ上に形成された厚さ2μmの二酸化ケイ素層上に支持させた。この構成において、シリコンウェーハ、ナノポアリザーバフローセル配置および流体入力の総静電容量は、13pFと測定された。
シリコンウェーハ上に形成したこの膜−ナノポア構成を、PDMSガスケットでPEEKフローセルに組み付けた。組付けの後、ウェーハ構成、ホルダおよびガスケットを、100W、500mTの酸素プラズマで60秒間洗浄した。このプラズマ洗浄の直後に、10mM TE緩衝液を含むpH8の1M KCl溶液をフローセルに加え、2つのリザーバ間のナノポアおよび測定回路を通るベースラインイオン電流を確立した。電圧を印加し、カットオフ周波数10kHzの4極低域ベッセルフィルタを有する抵抗性フィードバックモードのAxopatch 200B増幅器を使用して電流を測定した。Digidata 1322AデジタイザおよびpClampソフトウェアを使用して、この増幅器の出力を200kHzでデジタル化し、ディスクに連続的に記録した。
ニューイングランドバイオラブズ社(New England Biolabs)から、6キロ塩基対(kilobase-pair:kbp)DNA断片と4kbp DNA断片の等モル混合物を入手した。これらの断片は、TE緩衝液に入れて濃度0.5mg/mLで提供された。4μLを、1M 塩緩衝液50μLで希釈し、次いで、ほぼ全量を、接地電極が接触したフローセルの容積1〜2μLのシスリザーバにゆっくりと加えた。これは、シスチャンバ内のDNAの繰返し可能な濃度を保証した。
このフローセルに120mVの順方向電圧を印加し、このフローセルを、ナショナルインスツルメンツ社(National Instruments, Inc.)のNational Instruments DAQカード(PXI-6070E)およびLabviewソフトウェアによって制御した。増幅した電流信号を帯域フィルタに通し、これを使用して、電圧の逆転をトリガした。分子がポアに入ったことを検出した後、プログラムされた遅延時間の間、順電圧を維持し、その後、-120mVの逆電圧を印加した。フィルタによって導入される遅れは、ナノポアを通した約100〜200μsの移動時間に匹敵し、それにより、たとえ移動検出の前縁で逆転がトリガされたとしても、遅延が、完全に分子の移動の後であるとみなすことができた。電圧を逆転させた後、500msの間、電圧を-120mVに維持し、 次いで+120mVに復帰させた。この正電圧への戻りはトリガされず、その間隔の間に分子が移動したかどうかに関わりなく、電圧を最初に逆転させてから500ms後に実施した。
個々の分子移動からの電流遮断信号は、遮断の持続時間、遮断の大きさ、および遮断事象の長さにわたる電流遮断の積分によって特徴づけることができる。本明細書では事象の面積または事象電荷欠損(event charge deficit: ecd)と呼ぶこの最後の量は、イオン電流の一部を遮断する分子がなければナノポアを通過したであろう追加の電荷の量である。このecdは、分子がナノポアを移動するときの分子のコンホメーションから、例えば分子が折り畳まれているのか、または折り畳まれていないのかということから独立しており、分子の長さに依存する。
図7Aは、順方向、すなわちシスリザーバからナノポアを経てトランスリザーバに向かう方向に測定した全ての移動のecdのヒストグラムプロットである。このヒストグラムは、4kbpおよび6kbpの自由移動を表す2つのガウス分布の和にフィッティングされており、プロット中の点線は、それらの和をヒストグラムにフィッティングした2つのガウス分布を表している。>30pCの大きなecdを有する信号は、移動中のある時点でナノポア壁に滞留した分子を表し、したがってより長い移動時間を有する。これらの信号はフィッティングに含まれていない。
フィッティングしたこれらのガウス分布およびそれぞれの信号のecdに基づいて、所与の遮断が4kbp分子または6kbp分子の移動に対応する可能性を、順方向移動事象と逆方向移動事象の両方の事象において求めた。逆方向移動による信号は、それぞれの逆方向移動の直前の順方向移動が4kbp分子であるかまたは6kbp分子であるのかによって分類した。図7Bは、4kbpおよび6kbp順方向移動の後の逆方向移動のecdのヒストグラムプロットである。このプロットはecd逆方向移動を示し、ある分子長の順方向移動が、70%以上の確率で、その長さの逆方向移動に先行していることが分かった。
図7A〜7Bの順方向および逆方向移動ヒストグラムを比較すると、逆方向にナノポアを移動した分子の長さは、直前に順方向にナノポアを移動した分子の長さと一致することが分かる。言い換えると、戻っているそれぞれの分子の長さは、ナノポア分解能の範囲内において、直前にナノポアを移動させた分子の長さと同じあると測定された。このことは、トリガされた電圧逆転が、その通過の検出がその逆転をトリガした同じ分子を再捕捉したことを証明した。
追加の分析では、それぞれの分子移動信号を「事象」として特定することによって、上記の実験のデータを分析した。それぞれの事象は、電圧バイアスが正のときに起こったのか、または負のときに起こったのかに基づいて、それぞれ「順方向」または「逆方向」に分類した。さらに、それぞれの事象を、バイアス電圧の最後の遷移からのその事象の発生の持続時間によって分類した。事象は、時間分解能と統計上の正確さとの間の妥協によって選択した幅50msの量子化された時間増分に振り分けた。この実験は、多くの順方向および逆方向の捕捉および再捕捉サイクルに対して実行し、事象がビン(bin)の時間境界内で生じた場合、それぞれのビンを一事象だけ増分した。次いで、ビンに蓄積した事象の総数を、実験中にそのビンにアクセス可能であった総時間で割ることによって、それぞれのビンの計数率を求めた。逆方向事象に関しては、その時間は、ビン時間増分に、順方向/逆方向サイクル数を掛けたものである。順方向移動事象に関しては、それぞれの順方向移動事象がバイアス遷移をトリガし、それによって後に起こった順方向事象のサンプリングを終了させるため、状況はより複雑であった。これにより、時間ビンの有効長は、逆方向遷移までの遅延時間に応じて短縮され、それによって、正電圧遷移後、より短い時間生じている事象よりも長い時間生じている事象に、より少ないサイクルが、事象に関連づけられた。
このデータ分析に関して、図8Aは、瞬時捕捉率、すなわち移動のために分子がナノポアに到達した率を、直前の電圧逆転からの時間の関数として示したプロットである。上述のとおり、これらの移動実験の遅延時間は、2msに設定した。グラフのそれぞれの点は、その点を中心とした50msの時間間隔の間に分子がナノポアに入った平均率を表す。例えば、25msの点は、このプロットでは「電圧フリップ」として示されている電圧極性逆転後の0〜50msの率を示す。順方向バイアスでの捕捉に対応する実線、および逆方向バイアスでの再捕捉に対応する破線は、以下で論じるドリフト-拡散モデルの予測を表す。このプロットでは、上述の両方のビニング(binning)データ効果が考慮されている。
電圧バイアス極性の切換え後、t秒からt + dt秒までの間に分子がナノポアを移動する確率はr(t)dtである。ナノポアへの分子の到着が、その電圧極性切換えと相関しない場合、r(t)は一定であると予想される。しかし、図8Aのプロットから、r(t)は、両方向とも一定でないことが分かる。シスリザーバからの分子を捕捉する順方向移動では、捕捉率は、電圧が正になったすぐ後に抑制される。これは、シスリザーバ内の分子が、逆電圧極性であった直前の500msの間に、ナノポアから遠ざけられていたためである。対照的に、再捕捉率は、分子駆動電圧が負極性に切り換えられた直後に大幅に増大した。これは、負極性への切換えが、ナノポアを通した直前の分子移動によってトリガされ、そのために、電圧が逆転したときに分子がナノポアのすぐ近くにあったためである。
図8Aのデータプロットに示された再捕捉率のピークが、トリガされた電圧極性逆転の直後に出現していることは、同じ分子が再捕捉されていることを証明している。それは、トランスリザーバのバルク溶液からの別の分子の捕捉とは完全に矛盾するであろう。さらに、電圧極性の逆転自体が、捕捉の確率を増大させる場合には、電圧極性が負から正に切り換わるときにも、同様の増大が予想されるはずだが、実際には、抑制される。
図8Bは、電圧バイアス極性逆転の500msの持続時間のうちに再捕捉された分子の割合を、順方向移動の始まりの検出と電圧極性逆転との間の選択した時間遅延の関数として示したプロットである。破線は、以下で論じるドリフト-拡散モデルの予測を表す。このプロットされたデータは、電圧逆転後に分子が再捕捉された確率が、最初の移動事象と電圧バイアス逆転との間の時間に依存することを示している。この時間を知っている唯一の分子は、最初にポアを順方向に移動し、それによって逆転をトリガした分子である。したがって、このデータから、この再捕捉実験では、実際に、同じ分子が2回、移動したことが確かであることが分かる。
前述の捕捉-再捕捉実験は、最初の移動の検出と電圧極性の逆転との間の遅延時間を、2ms、3ms、4ms、8ms、16msおよび32msに設定して実施した。図9A〜9Fは、分子がナノポアを再移動する確率を、これらの時間遅延ごとに示したヒストグラムである。プロット中のそれぞれのバーは、対応する時点を中心とする1msの間隔の間に再捕捉された順方向移動分子の割合を表す。太線は、以下で論じるドリフト-拡散モデルの予測を表す。これらのプロットから、4ms未満の遅延時間では、10ms未満のうちに、大部分の分子がナノポアに到達し、ナノポアを移動したことが分かる。再捕捉時間の分布と全体の再捕捉成功率の両方が、電圧極性逆転前の遅延時間の持続時間に強く依存することも分かる。
これらの分子捕捉-再捕捉実験の結果をさらに分析するため、分子運動の動力学について検討する。ナノポア付近のDNA分子の球対称分布のドリフト拡散式は、以下のように与えられる:
Figure 0005309145
-は、ポアから遠ざかる運動を意味し、+はポアに近づく運動を意味する。長さの無次元単位xをx=r/L、時間の無次元単位sをs=t/τとすると、
Figure 0005309145
およびτ=L2/Dであるので、上式は以下のようになる:
Figure 0005309145
このドリフト-拡散式を、以下の初期条件および境界条件に関して数値的に解くことによって、上述の分子捕捉-再捕捉実験をモデル化した:
Figure 0005309145
r0は、ナノポアから分子までの初期距離であり、一端が壁でつながれたガウス鎖のこの壁からの平均距離とし、この実験では、4kbp DNAに対しては30nm、6kbp DNAに対して37nmを使用した。分子が単位効率でポアを通って移動すると仮定した捕捉半径rcは、r0よりも5nm小さく選択した。これらの半径が外側再捕捉距離Lよりもはるかに小さい限りにおいて、実験結果は、これらの半径に対して選択した値にほとんど依存しないことが分かった。計算を単純にするため、無限大の反射境界条件を選択した。
図10A〜10Dは、4kb dsDNAについて、1M KC1、3.5nAでのこれらの計算結果をプロットしたものである。図10A〜10Dは、線形確率密度p(r)=2πr2c(r)をプロットしたものであり、c(r)は体積密度であり、p(r)drは、rとr+drの間に分子が見つかる確率を表す。図10Aは、電流がナノポアから遠ざかる方向に導かれるときの、時間による確率密度の変化を示す。初期確率密度は30nmにおけるデルタ関数である。確率のピークは、時間が長くなるにつれてナノポアから離れていくが、拡散のため、30ms後でも、ナノポアから500nm以内に分子が留まっている可能性はかなりある。図10B〜10Cは、電圧を逆転させ、分子をナノポアに向かわせた後の図10Aにプロットした確率密度の変化を示す。図10Bは、外側への移動の2ms後に電圧を逆転させた実験のシミュレーションの結果を示し、図10Cは、外側への移動の16ms後に電圧を逆転させた実験のシミュレーションを示す。分子の正味の流束は内向きだが、確率分布はナノポアから離れるにつれてついにはゆがむことに留意されたい。これは、ナノポアの近くの分子が移動し、分布から除去されるためである。
図10Bは、無次元時間t/τのうちに分子がナノポアを移動する確率を、さまざまな無次元出発半径x0=r0/Lについて示したプロットである。外側再捕捉距離Lよりも短い出発距離では、大部分の移動が、1/2τのうちに起こることが分かった。図10Bは、1/2τのうちに分子がナノポアに戻る確率を、出発距離に対して示したプロットである。x0=0.4から出発した分子は、1/2τのうちに85%がナノポアに到達することが分かった。これらのシミュレーションにおいて、瞬間的な移動が推定される無次元捕捉半径は0.01であった。
分子駆動力の電圧極性を、電気力がナノポアから離れる方向を向くように設定すると、シスリザーバ内のDNAの定常状態濃度は、以下のように表現される:
Figure 0005309145
cは、ナノポアから遠い位置にあるDNAの濃度である。500msの電圧逆転ウインドウにおいて、この濃度がこの平衡値にどれくらい近づくかは、演繹的に不明であり、そのため、この式を、ドリフトが外向きの500msに対して、以下のような初期条件および境界条件に関して解く:
c(r,0)=c
c(rc,t)=0 (5)
c(∞,t)=c
この解を、内向きのドリフトに対して解くときの初期条件として使用して、図8Aのプロットに示された予測される順方向分子移動率をもたらした。
実施例II
実施例Iの分子捕捉-再捕捉システムを、単一分子空間トラップとして動作するように修正した。希釈濃度12ng/μLの5.4kbp DNA分子と10kbp DNA分子の混合物を、溶液として使用した。1つの分子のトラップ内の他の分子への置換えを検出することを可能にするために、この異なる分子の混合物を使用した。第2の分子が、トラップされた分子を置き換える場合、検出される分子長が変化する確率は、この溶液混合物では50%である。ここでは、シスリザーバからの第2の分子が、捕捉され、最初にトラップされていた分子を置き換えるのに十分に近い位置にある確率を低くするため、比較的に低濃度の分子を使用した。さらに、この濃度では、順方向移動電圧バイアス極性下において、新たな分子は、0.4Hz以下の率でナノポアに到達した。逆方向移動電圧バイアス極性下では、バックグラウンド到着率は1桁小さかった。上記で定義した事象電荷欠損を測定することによって、トラップ内での5.4kbp 分子の10kbp 分子への置換えおよびその逆の置換えを検出することが可能であった。
この単一分子トラッピング実験では、両方の方向のナノポアの分子移動の検出から2ms後に電圧極性の逆転をトリガするように、フィードバック制御を修正した。150mVの分子駆動力電圧バイアス絶対値を使用し、Axopatch 200B上のピペット静電容量補償によって、膜の帯電による過剰電流を部分的に補償した。
図12Aは、単一分子トラップに対する、測定された電圧および電流トレースのプロットであり、ここでは、250msの間にナノポアを通して12回、移動させた10kbp dsDNA分子についてモニタリングした。この電流トレースは、ナノポアを通したイオン電流を、時間の関数として示す。このプロットを見やすくするため、電流軸の中心から2.4nA分を削除し、時間軸も圧縮した。矢印を付けた短いパルスは、分子がナノポアを移動するときに遮断されているイオン電流を示す。それぞれの通過の検出から2ms後に、電圧バイアスを逆転させた。最初に、正電圧バイアスで分子を捕捉した。それぞれの遷移の初めの指数関数的な低下は、膜静電容量の充電に起因する。図12Bは、ナノポアを通した10kbp分子の個々の通過に起因する拡大イオン電流トレースのプロットである。それぞれのトレースには、図12Aの電流トレースから抜き出した部分を特定するローマ数字が付けられている。この実験は、単一の分子を繰り返し調べるために、能動フィードバックを有する本発明の電圧バイアス固体ナノポア捕捉-再捕捉システムが、その単一分子を、ナノポアの近傍に空間的にトラップする原理の納得のいく証明を提供する。
これらの実施例および以上の説明から、本発明が、分子、特に核酸、タンパク質などのポリマー分子の特性を決定するために、分子捕捉/再捕捉サイクルを実施するナノポアベースのシステムを提供することが例示される。分子がナノポアを移動した後に、分子を再捕捉することにより、その分子を何度も調べることができ、それによって、例えば、ナノポアの最初の捕捉および移動の間または後に気づくことがあるデータの不確実性を低減させ、またはあいまい性を排除することができる。本発明のナノポアシステムを単独で使用した、またはより複雑なシステムの部分として使用した、例えばDNA分子の配列を決定するための単一分子の徹底的な特性評価が、本発明の分子捕捉/再捕捉サイクルによって可能になる。本発明はさらに、例えば分子の特性に対する溶液中の種の効果を評価するために、自由溶液中の分子の動力学を、ミリ秒以下の時間スケールおよびミクロン以下の長さスケールで精査し、制御する技術を可能にする。同じ分子によるナノポアの移動を繰り返すことにより、物質の基本形を限局し、操作する原子物理学分野の方法と類似の方法で、長時間にわたって、溶液中の分子を空間的にトラップし、その特性を評価し、操作することができる。
当然ながら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に、さまざまな変更および付加を実施することができることが理解される。したがって、本明細書が主張する保護は、主題請求項および本発明の範囲に合法的に含まれるその全ての等価等物に及ぶものとみなすべきであることを理解されたい。

Claims (68)

  1. ナノポアを含む構造体と、
    該ナノポアを介して流体接続された第1および第2の流体リザーバであって、各リザーバはイオン導電率σにより特徴づけられるイオン溶液を含み、リザーバの一方が分析対象分子を含み、該分子は該イオン溶液中における電気泳動度μおよび拡散定数Dにより特徴づけられる、前記第1および第2の流体リザーバと、
    該2つの流体リザーバのうちの一方から、該2つの流体リザーバのうちの他方への該ナノポアを通る分子種移動の指標としてのナノポアを通るイオン電流Iを検出するように接続された検出器と、
    分析対象分子による複数回のナノポアの移動を生じさせる第1および第2のリザーバ間の変化する電圧バイアスを印加するコントローラおよび制御回路であって、各電圧バイアスの変化が、分子のナノポア移動の検出の後、約時間t(L)以下の時間に生じ、ここで
    Figure 0005309145
    であり、それにより分析対象の分子を、各ナノポア移動の後に各リザーバにおいてナノポアから測定した半球形の再捕捉場距離L内に維持して、分析対象の分子がナノポアを繰り返し移動するようにし、ここで
    Figure 0005309145
    である、前記コントローラおよび制御回路
    を備える分子分析システム。
  2. 前記ナノポアを含む構造体が静電容量により特徴付けられ、前記コントローラが、分子のナノポア移動の検出に応答して、その間にナノポア構造体が容量充電される時間遅延の後に電圧バイアスの変化を生じさせる、請求項に記載のシステム。
  3. 前記コントローラが、選択した回数だけ前記ナノポアを再移動するように前記分析対象の分子種を誘導する、該ナノポアでの時間依存的に変化する2つのリザーバ間の電圧バイアスの条件をもたらす一連の制御信号生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記コントローラが前記第1の流体リザーバから前記第2の流体リザーバへの前記ナノポアの分子種移動の検出に応答して変化する電圧バイアスを生じさせる制御信号を生成し、かつ該第2の流体リザーバから該第1の流体リザーバへの該ナノポアの分子種再移動に対応する予め指定された移動持続時間の後に、該制御信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
  5. 前記検出器が、前記ナノポアの分子種移動中の移動持続時間を検出し、かつ該ナノポアの分子種再移動中の再移動持続時間を検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
  6. 前記第1および第2の流体リザーバ間の変化する電圧バイアスが、前記ナノポアを通して選択された方向に移動および再移動するように分子種を誘導するために、該コントローラによって選択される逆転可能な極性を有する、請求項1に記載のシステム。
  7. 前記検出器が、前記ナノポアの分子種移動の指標として、該ナノポアを通るイオン電流を測定するように接続された増幅器を備える、請求項1に記載のシステム。
  8. 前記コントローラが、測定された電流をフィルタリングする高域フィルタを備える、請求項に記載のシステム。
  9. 前記コントローラが、前記検出器からの信号が前記ナノポアの分子種移動を示すものかどうかを判定する予め指定された閾値を有するコンパレータを含む、請求項に記載のシステム。
  10. 前記構造体が膜を備える、請求項1に記載のシステム。
  11. 前記ナノポアが約1ミクロン以下の直径を有する、請求項1に記載のシステム。
  12. 前記ナノポアが約100nm以下の直径を有する、請求項1に記載のシステム。
  13. 前記ナノポアが約10nm以下の直径を有する、請求項1に記載のシステム。
  14. 前記ナノポアが約5nm以下の直径を有する、請求項1に記載のシステム。
  15. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子が巨大分子を含む請求項1に記載のシステム。
  16. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子が分子成分を含む請求項1に記載のシステム。
  17. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子がポリマー分子を含む請求項1に記載のシステム。
  18. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子が生体分子を含む請求項1に記載のシステム。
  19. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子が生体分子の成分を含む請求項1に記載のシステム。
  20. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子がDNA分子を含む請求項1に記載のシステム。
  21. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子がオリゴヌクレオチドを含む請求項1に記載のシステム。
  22. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子がヌクレオチドを含む請求項1に記載のシステム。
  23. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子少なくとも1種の分子を含み、該分子は該分子とは電荷が異なる結合した少なくとも1つ含む請求項1に記載のシステム。
  24. 前記流体リザーバのうちの一方に含まれる分析対象の分子少なくとも1種の分子を含み、該分子は該分子とは直径が異なる結合した少なくとも1つ含む請求項1に記載のシステム。
  25. 前記流体リザーバのうちの一方が、溶液中に前記分析対象の分子種と反応性である種を含む、請求項1に記載のシステム。
  26. 前記反応性の種がタンパク質を含む、請求項25に記載のシステム。
  27. 前記反応性の種が相補的な核酸を含む、請求項25に記載のシステム。
  28. 前記反応性の種がイオン種を含む、請求項25に記載のシステム。
  29. 前記流体リザーバのうちの一方が、前記分析対象の分子種と反応性であるという条件により特徴付けられる溶液を含む、請求項1に記載のシステム。
  30. 前記2つの流体リザーバが、異なる流体を含むように構成されている、請求項1に記載のシステム。
  31. 前記2つの流体リザーバが、pHが異なる流体を含むように構成されている、請求項30に記載のシステム。
  32. 前記2つの流体リザーバが、溶媒の濃度が異なる流体を含むように構成されている、請求項30に記載のシステム。
  33. 前記2つの流体リザーバが、溶質の濃度が異なる流体を含むように構成されている、請求項30に記載のシステム。
  34. 前記2つの流体リザーバが、温度が異なる流体を含むように構成されている、請求項30に記載のシステム。
  35. 構造体によって分離された2つの流体リザーバであって、各リザーバはイオン導電率σにより特徴づけられるイオン溶液を含み、リザーバの一方は分析対象分子を含み、該分子は該イオン溶液中における電気泳動度μおよび拡散定数Dにより特徴づけられる、前記2つの流体リザーバ間の該構造体のナノポアを通して分析対象の分子種を複数回にわたって移動させるステップ
    該2つの流体リザーバのうちの一方から、該2つの流体リザーバのうちの他方への該ナノポアを通る分子種移動の指標として、ナノポアを通るイオン電流Iを検出するステップ;および
    分析対象分子による複数回のナノポアの移動を生じさせる、変化する電圧バイアスを、第1および第2のリザーバ間に印加するステップであって、各電圧バイアスの変化は、分子のナノポア移動の検出の後、約時間t(L)以下の時間に生じ、
    Figure 0005309145
    であり、それにより分析対象の分子を、各ナノポア移動の後に各リザーバにおいてナノポアから測定した半球形の再捕捉場距離L内に維持して、分析対象の分子がナノポアを繰り返し移動するようにし、
    Figure 0005309145
    である、前記ステップ
    を含む、分子分析法。
  36. 前記分子種による前記ナノポアの繰り返し移動が、該ナノポアの2回の移動を含む、請求項35に記載の方法。
  37. 前記分子種による前記ナノポアの繰り返し移動が、該ナノポアの3回以上の移動を含む、請求項35に記載の方法。
  38. 前記分子種による前記ナノポアの繰り返し移動が、該ナノポアの10回超の移動を含む、請求項35に記載の方法。
  39. 前記分子種による前記ナノポアの繰り返し移動が、該ナノポアの50回超の移動を含む、請求項35に記載の方法。
  40. 前記ナノポアを繰り返し移動するように前記分子種を誘導する電圧バイアスがその間にナノポア構造体が容量充電される予め指定された遅延時間の後に分子のナノポア移動の検出に応答して生成される、請求項35に記載の方法。
  41. 前記ナノポアの分子種移動を検出するステップが、移動持続時間を決定するステップを含む、請求項35に記載の方法。
  42. 変化する電圧バイアスを第1および第2のリザーバ間に印加するステップが、一連の電圧極性逆転印加し、該流体リザーバ間で繰り返し該ナノポアを通る分子種移動を誘導するステップを含む、請求項35に記載の方法。
  43. 前記分子種がそれらの間で移動する前記2つの流体リザーバが、異なる流体を含む、請求項35に記載の方法。
  44. 前記分子種が巨大分子を含む、請求項35に記載の方法。
  45. 前記分子種が分子成分を含む、請求項35に記載の方法。
  46. 前記分子成分が生体分子成分を含む、請求項45に記載の方法。
  47. 前記生体分子成分がヌクレオチド断片を含む、請求項46に記載の方法。
  48. 前記生体分子成分がオリゴヌクレオチドを含む、請求項46に記載の方法。
  49. 前記分子種がポリマー分子を含む、請求項35に記載の方法。
  50. 分子種が生体分子を含む、請求項46に記載の方法。
  51. 前記分子種がDNAを含む、請求項35に記載の方法。
  52. 前記分子種が少なくとも1種の分子を含み該分子は該分子とは電荷が異なる合した種をなくとも1つむ、請求項35に記載の方法。
  53. 前記分子種が少なくとも1種の分子を含み該分子は該分子とは直径が異なる合した種をなくとも1つむ、請求項35に記載の方法。
  54. 分子種を反応性の環境に曝露する方法であって、以下のステップ:
    分子種を、ナノポアを通して、第1の流体リザーバから2の流体リザーバに移動させるステップであって、各リザーバはイオン導電率σにより特徴づけられるイオン溶液を含み、リザーバの一方は分析対象分子を含み、該分子は該イオン溶液中における電気泳動度μおよび拡散定数Dにより特徴づけられ、いずれか一方のリザーバが該分子種と反応性である環境を含む、前記ステップ;
    該2つの流体リザーバのうちの一方から、該2つの流体リザーバのうちの他方への該ナノポアの分子種移動の指標として、ナノポアを通るイオン電流Iを検出するステップ;および
    分析対象分子による複数回のナノポアの移動を生じさせる、変化する電圧バイアスを、第1および第2のリザーバ間に印加するステップであって、各電圧バイアスの変化は、分子のナノポア移動の検出の後、約時間t(L)以下の時間に生じ、
    Figure 0005309145
    であり、それにより分析対象の分子を、各ナノポア移動の後に各リザーバにおいてナノポアから測定した半球形の再捕捉場距離L内に維持して、分析対象の分子がナノポアを繰り返し移動するようにし、
    Figure 0005309145
    である、前記ステップ
    を含む、上記方法。
  55. 前記分子種と反応性である境が流体中に反応性の種を含む、請求項54に記載の方法。
  56. 前記分子種と反応性である境がタンパク質を含む、請求項54に記載の方法。
  57. 前記分子種と反応性である境が生体分子を含む、請求項54に記載の方法。
  58. 前記分子種のナノポアを通る繰り返し移動の間に、前記流体リザーバのうちの少なくとも一方の特性を、時間の経過とともに変化させるステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
  59. 前記流体リザーバのうちの少なくとも一方の特性を変化させるステップが、リザーバの温度を変化させることを含む、請求項58に記載の方法。
  60. 前記流体リザーバのうちの少なくとも一方の特性を変化させるステップが、リザーバのpHを変化させることを含む、請求項58に記載の方法。
  61. 前記流体リザーバのうちの少なくとも一方の特性を変化させるステップが、リザーバのイオン濃度を変化させることを含む、請求項58に記載の方法。
  62. 前記流体リザーバのうちの少なくとも一方の特性を変化させるステップが、該リザーバのうちの一方に反応性の種を供給することを含む、請求項58に記載の方法。
  63. ゲノムを配列決定する方法であって、以下のステップ:
    ゲノムからの複数のヌクレオチド断片を第1の流体リザーバに供給するステップ、
    該第1の流体リザーバと、構造体によって該第1のリザーバから分離された第2の流体リザーバとの間で、該構造体のナノポアを通して、それぞれのヌクレオチド断片を選択した回数だけ移動させるステップであって、各リザーバはイオン導電率σにより特徴づけられるイオン溶液をヌクレオチド断片と共に含み、該ヌクレオチド断片は該イオン溶液中における電気泳動度μおよび拡散定数Dにより特徴づけられる、前記ステップ;
    該2つの流体リザーバのうちの一方から、該2つの流体リザーバのうちの他方への該ナノポアを通るヌクレオチド断片移動の指標としてナノポアを通るイオン電流Iを検出することにより、それぞれのヌクレオチド断片が該ナノポアを移動するときに、そのヌクレオチド断片を検出するステップ;および
    ヌクレオチド断片による複数回のナノポアの移動を生じさせる、変化する電圧バイアスを、第1および第2のリザーバ間に印加するステップであって、各電圧バイアスの変化は、ナノポアを通るヌクレオチド断片の移動の検出の後、約時間t(L)以下の時間に生じ、
    Figure 0005309145
    であり、それによりヌクレオチド断片を、各ナノポア移動の後に各リザーバにおいてナノポアから測定した半球形の再捕捉場距離L内に維持して、ヌクレオチド断片がナノポアを繰り返し移動するようにし、
    Figure 0005309145
    である、前記ステップ
    を含む、上記方法。
  64. それぞれのヌクレオチド断片を、前記ナノポアを通して少なくとも5回移動させる、請求項63に記載の方法。
  65. それぞれのヌクレオチド断片を、前記ナノポアを通して少なくとも10回移動させる、請求項63に記載の方法。
  66. それぞれのヌクレオチド断片を、前記ナノポアを通して少なくとも20回移動させる、請求項63に記載の方法。
  67. それぞれのヌクレオチド断片を検出するステップが、ヌクレオチド断片が以前に検出され、かつ前記選択した回数だけ移動したかどうかを判定し、そうである場合に、そのヌクレオチド断片の前記第1のリザーバへの更なる移動を停止することにより、そのヌクレオチド断片を前記第2のリザーバ内へ廃棄するステップを含む、請求項63に記載の方法。
  68. それぞれのヌクレオチド断片を検出するステップが、ヌクレオチド断片が以前に検出され、かつ前記選択した回数だけ移動したかどうかを判定し、そうでない場合に、前記ヌクレオチド断片を、少なくとももう1回、前記ナノポアを通して移動させるステップを含む、請求項63に記載の方法。
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