JP5308312B2 - 電気化学式センサの診断方法及び電気化学式センサの診断装置 - Google Patents
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Description
このような電気化学式センサは、例えば、高信頼性が要求される警報装置等に搭載されるため、濃度の検知が正常に機能していることを常に確保する必要性が高い。すなわち、電気化学式センサにおいて濃度の検知が正常に機能しているか否か等を診断して、正常に機能している場合にはそのまま電気化学式センサの使用を継続し、正常に機能していない場合又は正常に機能しない前兆がある場合には直ちに使用を中止し交換作業を行う等の対策が望まれる。
特許文献1では、電気化学式センサの検知極から対極の間にパルス的な電圧を加え、パルスを停止した後の電気化学式センサの出力、すなわち、キャパシタンスの出力(放電特性)から当該電気化学式センサが正常か否かを診断する方法が提唱されている。具体的には、正常時におけるキャパシタンスの出力と実際に測定したキャパシタンスの出力とを比較することにより、電気化学式センサが誤作動しているか等の異常を診断できるとされる。
特許文献2では、電気化学式センサを組み込んだガス検出装置の電源をオフした後、再度オンした際の当該電気化学式センサの出力ピークや出力ボトムの有無から、電気化学式センサの検知極と対極とのショートやセンサ感度の低下等の異常の発生を診断する方法が提唱されている。
上記特許文献1及び特許文献2に記載の電気化学式センサの診断方法及び診断装置では、電解質溶液又は固体電解質が完全に乾燥状態となり、検知極と対極との間に電流が流れなくなって絶縁状態となったりガスに対する反応が消失してはじめて異常が発生しているものと診断することができる。しかし、水分が完全に乾燥状態となった場合になって初めて異常が発生したと診断するだけでは、例えば高信頼性が要求される警報器等に電気化学式センサを使用した場合などにおいて検知対象ガスを正確に検知できない期間が生じ、高信頼性を確保できない可能性がある。
すなわち、検知対象ガスが接触する検知極と対極との間に設けられた電解質中に水分が充分に存在している「正常状態」(湿潤状態)から、当該水分が完全に乾燥状態(完全乾燥状態)となる過程においては、電解質中の抵抗が増加するため、この電解質抵抗を用いることにより電解質が上記湿潤状態から完全乾燥状態となる過程にある状態(水枯れ状態)にあると診断することができる。この水枯れ状態は、電解質に水分が充分には存在していない状態であり、電気化学式センサの出力はほぼ正常であるが、電解質中の抵抗が上昇している「異常状態」である。なお、電解質中の水分が完全に乾燥状態(完全乾燥状態)となった状態では電気化学式センサの出力がなくなってしまう状態となる。
したがって、電解質に水分が充分に或いは完全に存在していない状態(水枯れ状態、完全乾燥状態)となり、電気化学式センサの電解質中の抵抗が上昇している異常状態であるか否かを、簡単且つ確実に診断することができる。
よって、電解質中の水分が完全に乾燥してセンサ出力が低下してしまう前の段階(水枯れ状態)で、電解質中の水分がなくなりかけていることを知ることができ、例えば、電気化学式センサによる検知対象ガスの濃度検知の機能が低下し始める前に、当該電気化学式センサの交換等の対策を採ることが可能となる。
すなわち、電気化学式センサに対応する等価回路における電解質に相当する抵抗成分(インピーダンス)は、電気化学式センサに交番電流又は交番電圧を流すことにより、当該等価回路中の検知極及び対極における反応(分極)抵抗成分(インピーダンス)をほぼ無視できる状態で得ることができ、電解質の抵抗成分(インピーダンス)をより正確に反映した指標として取り出すことができる。そして、電解質に水分が充分に或いは完全に存在していない状態(水枯れ状態、完全乾燥状態)となると、当該電解質中の電導度の減少により当該電解質の抵抗成分(インピーダンス)が増加するため、そのインピーダンスが正常状態での正常時インピーダンスに対して増加している場合には、電解質中の抵抗が上昇している異常状態であると、より正確かつ確実に診断することができる。
よって、電解質中の水分が完全に乾燥してしまう前の段階(水枯れ状態)で、電解質中の水分が減少し始めていることをより正確に知ることができる。
すなわち、電気化学式センサに対応する等価回路における電解質に相当する抵抗成分(インピーダンス)は、電気化学式センサに交番電流を流すことにより、当該等価回路中の検知極及び対極における反応抵抗成分(インピーダンス)をほぼ無視できる状態となり、電解質の抵抗成分(インピーダンス)をより正確に反映した指標となっているが、この抵抗成分(インピーダンス)に対応する出力電圧も、電解質の抵抗成分(インピーダンス)をより正確に反映した指標となっている。そして、電解質に水分が充分に或いは完全に存在していない状態(水枯れ状態、完全乾燥状態)となると、当該電解質中の電導度の減少により交番電流印加時の当該電解質の出力電圧が増加するため、電解質の出力電圧が正常状態での正常時電圧に対して増加している場合には、異常状態であると、より正確かつ確実に診断することができる。また、出力電圧に代えて出力電流とした場合には、電気化学式センサが正常状態での出力電流である正常時電流に対して、電流の減少が認められた場合に、電気化学式センサが異常状態であると診断することができる。
すなわち、検知対象ガスが接触する検知極と対極との間に設けられた電解質中に水分が充分に存在している正常状態(湿潤状態)から、当該水分が完全に乾燥状態(完全乾燥状態)となる過程においては、電解質中の抵抗が増加するため、この電解質抵抗を用いることにより電解質が上記湿潤状態から完全乾燥状態となる過程にある状態(水枯れ状態)にあると診断することができる。この水枯れ状態は、電解質に水分が充分には存在していない状態であり、電気化学式センサの出力はほぼ正常であるが、電解質中の抵抗が上昇している「異常状態」である。なお、電解質中の水分が完全に乾燥状態(完全乾燥状態)となった状態では電気化学式センサの出力がなくなってしまう状態となる。
したがって、電解質に水分が充分に或いは完全に存在していない状態(水枯れ状態、完全乾燥状態)となり、電気化学式センサの電解質中の抵抗が上昇している異常状態であるか否かを、簡単且つ確実に診断することができる。
よって、電解質中の水分が完全に乾燥してセンサ出力が低下してしまう前の段階(水枯れ状態)で、電解質中の水分がなくなりかけていることを知ることができ、例えば、電気化学式センサによる検知対象ガスの濃度検知の機能が低下し始める前に、当該電気化学式センサの交換等の対策を採ることが可能となる。
すなわち、電気化学式センサに対応する等価回路における電解質に相当する抵抗成分(インピーダンス)は、電気化学式センサに交番電流又は交番電圧を流すことにより、当該等価回路中の検知極及び対極における反応抵抗成分(インピーダンス)をほぼ無視できる状態で得ることができ、電解質の抵抗成分(インピーダンス)をより正確に反映した指標として取り出すことができる。そして、電解質に水分が充分に或いは完全に存在していない状態(水枯れ状態、完全乾燥状態)となると、当該電解質中の電導度の減少により当該電解質の抵抗成分(インピーダンス)が増加するため、そのインピーダンスが正常状態での正常時インピーダンスに対して増加している場合には、電解質中の抵抗が上昇している異常状態であると、より正確かつ確実に診断することができる。
よって、電解質中の水分が完全に乾燥してしまう前の段階(水枯れ状態)で、電解質中の水分が減少し始めていることをより正確に知ることができる。
すなわち、電気化学式センサに対応する等価回路における電解質に相当する抵抗成分(インピーダンス)は、電気化学式センサに交番電流を流すことにより、当該等価回路中の検知極及び対極における反応抵抗成分(インピーダンス)をほぼ無視できる状態となり、電解質の抵抗成分(インピーダンス)をより正確に反映した指標となっているが、この抵抗成分(インピーダンス)に対応する出力電圧も、電解質の抵抗成分(インピーダンス)をより正確に反映した指標となっている。そして、電解質に水分が充分に或いは完全に存在していない状態(水枯れ状態、完全乾燥状態)となると、当該電解質中の電導度の減少により交番電流印加時の当該電解質の出力電圧が増加するため、電解質の出力電圧が正常状態での正常時電圧に対して増加している場合には、異常状態であると、より正確かつ確実に診断することができる。また、出力電圧に代えて出力電流とした場合には、電気化学式センサが正常状態での出力電流である正常時電流に対して、電流の減少が認められた場合に、電気化学式センサが異常状態であると診断することができる。
図1は、本発明の電気化学式センサの診断方法及び診断装置で使用する電気化学式センサ100の全体構成を示す縦断面図である。図2は、電気化学式センサ100の要部であるセンサ本体10の縦断面図である。
電解質層1は、後述するように、アノード極2での一酸化炭素の酸化反応に伴って発生するプロトン(H+)等のカチオンがカソード極3に移動する(あるいはカソード極3からOH-等のアニオンがアノード極2に移動する)際の媒質として機能し、例えば、濾紙等の基体に下記の化学式で示される芳香族スルホン酸塩(重合体)を含む電解液を含浸させて構成することができる。
なお、本実施形態では、拡散制御板6はステンレス等の金属からなる薄板で形成され、拡散制御孔6aは打ち抜き等の任意の方法で形成されている。
電気化学式センサ100のアノード極2(検知極)に一酸化炭素が接触すると、下記(1)に示すように、アノード極2では一酸化炭素と水とが反応して二酸化炭素を生成するとともにプロトン(H+)及び電子(e-)が発生する。
CO + H2O → CO2 + 2H+ + 2e- ・・・ (1)
上記(1)の反応は、基本的には、測定雰囲気中において一酸化炭素が拡散する速度に依存した拡散律速反応である(酸素と一酸化炭素が共存するアノード極2の混成電位付近においては一酸化炭素の酸化反応は拡散律速となる。)。
1/2・O2 + H2O + 2e- → 2OH- ・・・ (2)
なお、図4の(a),(b),(c)、図5の(a),(b),(c)はそれぞれ、水タンク20内の水が満タン(水量100%)である状態で240秒ごとに雰囲気中の一酸化炭素の濃度を変化させた際の電気化学式センサ100の出力(電圧値)を示しており、図4(a)は気温20℃、相対湿度10%、(b)は気温20℃、相対湿度が40%、(c)は気温20℃、相対湿度が95%、図5(a)は気温50℃、相対湿度5%、(b)は気温50℃、相対湿度が40%、(c)は気温50℃、相対湿度が95%と相対湿度を変化させた結果である。なお、水タンク20内の水が満タン量の20%以下である状態でも、同様の出力結果であった。
これら図4の(a),(b),(c)、図5の(a),(b),(c)は、電解質層1に電解質中の水分が充分に存在している正常状態における電気化学式センサ100の出力を示しており、雰囲気中の相対湿度が変化したとしても、当該電気化学式センサ100の出力は変動せず、一酸化炭素の濃度に応じて特定の出力(電圧値)を示している。すなわち、測定雰囲気中の一酸化炭素の濃度に応じて、階段状に特定の電圧値を示す場合には、電気化学式センサ100は電解質層1に水分が充分に存在している正常状態である。
図4(f),図5(f)のように、電気化学式センサ100の出力が雰囲気中の一酸化炭素濃度を検知できても、水がなく、いずれ検知できなくなる状態が異常状態である。すなわち、電解質1中の水分が充分に存在している湿潤状態を正常状態とし、当該湿潤状態から水分が完全に乾燥状態となるまでの過程を水枯れ状態、水分が完全に乾燥状態となった状態を完全乾燥状態として、完全乾燥状態だけでなく水枯れ状態をも異常状態であるものとして、後述する電気化学式センサ100の診断方法の診断対象とする。
なお、図4の(d),(e),(f)、図5の(d),(e),(f)はそれぞれ、水タンク20内の水が全く無い(0cc)である状態で240秒ごとに雰囲気中の一酸化炭素の濃度を変化させた際の電気化学式センサ100の出力(電圧値)を示しており、図4(d)は気温20℃、相対湿度10%、(e)は気温20℃、相対湿度が40%、(f)は気温20℃、相対湿度が95%、図5(d)は気温50℃、相対湿度5%、(e)は気温50℃、相対湿度が40%、(f)は気温50℃、相対湿度が95%と相対湿度を変化させた結果である。
上述のとおり、電解質層1を備えた電気化学式センサ100において検知対象ガスの濃度を正確に検知するためには、電解質層1中に水分が充分に存在する状態であることが重要である。言い換えれば、電解質1中に水分が充分に存在しない状態となり、電解質中の抵抗が上昇している状態(水枯れ状態、或いは完全乾燥状態)となっているか否かを診断し、できるだけ早く異常状態を察知することが重要である。そこで、本願では、電気化学式センサ100の電解質中の抵抗が上昇している状態(異常状態)となっているか否かを診断して、検知対象ガスの濃度を正確に検知することができない状態となりかけていることをできるだけ早く察知する。以下、電気化学式センサ100の診断方法及び診断装置300について説明する。なお、電気化学式センサ100の診断装置300は、少なくとも電気的特性(インピーダンスや出力電圧)を検出可能に構成された測定機器からなり電解質層1の電気的特性を検出する検出手段(後述する第2実施形態においては、図8の第1電圧検出手段304に相当する)と、CPU、記憶手段等を含むコンピュータからなる診断手段(後述する第2実施形態においては、図8の診断手段306に相当する)とを含んで構成される。
ここで、上記電気化学式センサ100のセンサ本体10におけるセンサ手段11は、図2に示すように、電解質層1の両側(上下面)にアノード極2とカソード極3とが夫々接続されて形成されるが、当該センサ手段11は、図6に示すような等価回路に相当すると考えることができる。すなわち、アノード極2は反応抵抗R2とキャパシタンス(電気二重層容量)C2との並列接続構成、カソード極3は反応抵抗R3とキャパシタンス(電気二重層容量)C3との並列接続構成、電解質層1は抵抗R1とそれぞれ等価であるため、センサ手段11は、当該電解質層1である抵抗R1を挟んでアノード極2の並列接続構成及びカソード極3の並列接続構成をそれぞれ直列に接続した等価回路に相当する。
なお、図7に示すように、電気化学式センサ100の交流電流を流した場合における当該電気化学式センサ100のインピーダンスは交流電流の周波数に応じて変化し、周波数が高くなるにつれインピーダンスが所定値付近で安定する。この安定したインピーダンスは、電解質層1の水分の存在度合いを正確に示した指標となるが、例えば、交流電流の周波数が10Hz以上、好ましくは20Hz以上である場合に、確実に所定値付近で安定するため、より正確に電解質層1における水分の存在度合いを正確に示す指標となる。
なお、このインピーダンスは、気温20℃、相対湿度95%で、水タンク20内の水量を、満タン(水量100%)、水量20%、水なし(0cc)とした場合において、交流電流の周波数を40Hz、1kHzとした際の値である。表1では、各水量に対応して3つの異なる電気化学式センサ100のインピーダンスを計測している。
したがって、正常状態の正常時インピーダンス(上記数Ω)に対し、電解質層1のインピーダンスが増加している場合に、電解質層1の水分が充分に存在していない、或いは完全に存在していない状態であると確実に診断することができる。なお、このような診断指標は予め診断手段306内の記憶手段(図示せず)に格納しておくこともできる。
なお、このインピーダンスは、気温20℃、50℃それぞれにおいて、相対湿度を変化させ、水タンク20内の水量を、満タン(水量100%)、水量20%、水なし(0cc)とした際の値である。表2及び表3では、各水量に対応して4つ或いは5つの異なる電気化学式センサ100のインピーダンスを計測している。
したがって、正常状態の正常時インピーダンス(上記数Ωから数十Ω)に対し、電解質層1のインピーダンスが増加している場合に、診断手段306により、電解質層1の水分が充分に、或いは完全に存在していない状態であると確実に診断することができる。
特に、表2の0cc、高湿(長期)の欄、及び表3の0cc、高湿の欄に示すように、COに対する感度が出ている場合(表中○で示す)があるが、湿度が低下するとCOに対する感度が低下している(表中△、×で示す)ことがわかる。すなわち、この感度が○から△を経て×に到る過程は、電解質層1の水分が充分に存在していない状態であり、当該水分が完全に存在しない完全乾燥状態に移行する過程(水枯れ状態)にあるものと考えられ、電気化学式センサ100の電解質中の抵抗上昇による異常状態になっていると考えられる。なお、表2の水なし(0cc)、高湿(長期)の欄、及び表3の水なし(0cc)、高湿の欄に示すように、水枯れ状態(センサ出力は正常であるが、完全乾燥になりかけている状態)となった場合のインピーダンスは数百Ω(例えば、200〜300Ω程度)である。したがって、電解質層1の水分が充分に存在していない状態であるにもかかわらず、COに対する感度が良好である場合であっても、電解質層1のインピーダンスが数百Ω(例えば、200Ω程度)以上となっている場合には、当該電解質層1は、時間が経過すると電解質層1の水分が完全に乾燥した完全乾燥状態となる過程(水枯れ状態)にあり、電気化学式センサ100の電解質中の抵抗上昇による異常状態になっていると簡易且つ確実に診断することができる。なお、電解質抵抗が200〜300Ω程度でもCO感度が良好であるのは、反応抵抗を含めたセンサの全抵抗が数十k〜数百kΩとなるためである。
よって、電解質層1の水分が充分に存在していない状態(水枯れ状態)となり、電気化学式センサ100の電解質中の抵抗上昇による異常状態になっていることを簡易且つ確実に知ることができ、電気化学式センサ100の交換等をセンサ出力に異常が見られる前に確実に行うことができる。
上記第1実施形態では、診断手段306が、交流電流を印加した際の電解質層1のインピーダンスが増加するか否かにより異常状態か否かを診断したが、交流電流に代えてパルス状の矩形電圧を印加し、そのときの電気化学式センサの出力電圧が電気化学式センサのインピーダンスに対応するものとなるので、パルス状の矩形電圧を印加した際の電気化学式センサの出力電圧を検知することで、交流電流を流したときの電気化学式センサのインピーダンスを間接的に検知して、異常状態か否かを診断することもできる。
具体的に説明すると、診断装置300は、図8に示すように、電気化学式センサ100と負荷抵抗301(例えば1kΩの負荷抵抗)とを直列状態で接続しており、電気化学式センサ100の手前のP点に一定電圧を印加する電源手段302と、負荷抵抗301を出た直後のA点にパルス状の矩形電圧を印加する矩形電圧印加手段303を備えている。また、診断装置300は、電気化学式センサ100を出た直後のB点におけるB点電圧を検出する第1電圧検出手段304、負荷抵抗301を出た直後のA点におけるA点電圧を検出する第2電圧検出手段305、第1電圧検出手段304によるB点電圧及び第2電圧検出手段305によるA点電圧を入力可能であり、電気化学式センサ100が異常状態か否かを診断する診断手段306を備えている。ここで、電源手段302は、P点に印加する一定電圧を1.0Vとしており、矩形電圧印加手段303は、A点に印加する矩形電圧を2.0Vと0Vとに切り換えるパルス状の矩形電圧としている。即ち、P点を基準として、PA間に±1.0Vを印加してB点の電圧(電位)を計測するものである。また、P点に印加する電圧(1.0V)及びA点に印加する矩形電圧(2.0Vと0V)については、適宜変更することができる。
一方、図9(b)に示すように電気化学式センサ100が、異常状態としての完全乾燥状態、すなわち、水タンク20の水が0ccで、電解質層1に水分が完全に存在していない状態の場合のB点電圧は、上記矩形電圧が印加された場合には当該矩形電圧が略そのままの値で出てくる、つまり、B点電圧が2.0Vと0Vとで周期的に変化するパルス状の矩形電圧になることを示している。これは、上記と同様に電気化学式センサ100の電解質抵抗が数10k〜数100kΩとなるので、1kΩの負荷抵抗301が数10k〜数100kΩの電解質抵抗と比べて無視できるほど小さくなり、AB間の電圧がほぼ0Vとなるためである。
また、図9(c)に示すように、電気化学式センサ100が、水枯れ状態、すなわち、水タンク20の水が0ccで、電解質層1に水分が完全に存在していない完全乾燥状態となりかけている場合のB点電圧は、上記矩形電圧が印加された場合には、上記(b)よりも電圧の変化幅が小さくなり、低電圧側と高電圧側とで周期的に変化するパルス状の矩形電圧になることを示している。例えば、電解質抵抗が200Ωの場合は、低電圧側が0.83Vで且つ高電圧側が1.17Vとなる周期的に変化するパルス状の矩形電圧となり、電解質抵抗が300Ωの場合は、低電圧側が0.77Vで且つ高電圧側が1.23Vとなる周期的に変化するパルス状の矩形電圧となる。これは、上記と同様に電気化学式センサ100の電解質抵抗が200〜300Ωとなって、この電解質抵抗(200〜300Ω)が1kΩの負荷抵抗301の3/10(電解質抵抗が300Ωの場合)〜1/5(電解質抵抗が200Ωの場合)となり、AB間の電圧が0.77(電解質抵抗が300Ωの場合)〜0.83V(電解質抵抗が200Ωの場合)となるためである。
特に、図9の(c)では、電解質層1に水分が完全に存在しない状態となり、その後、高湿度(相対湿度95%)に維持した状態のものであるから、当該水分が完全に存在しない状態となるまでの過程にある水枯れ状態を示しているものと考えられる。したがって、診断手段306において、診断装置300のB点電圧が、電気化学式センサ100が正常状態である場合の正常時電圧(図8では1V)に対してある閾値(印加電圧の大きさに比例して設定。例えば基準電圧1.0Vからの振れ幅を±0.2V程度とする。)以上に振れ幅が増加して、完全乾燥状態におけるB点電圧(図8では±1.0V)よりも振れ幅が小さい場合には、CO感度が正常であったとしても図9(c)に示すように異常状態であると診断することができる。すなわち、電解質層1に水分が完全に存在していない完全乾燥状態となるまでの過程にある水枯れ状態を異常状態として診断することができ、電気化学式センサ100の電解質中の抵抗上昇による異常状態になっていると簡易且つ確実に診断することができる。正常時電圧については予め診断手段306内の記憶手段(図示せず)に格納しておくこともできる。
よって、本願の電気化学式センサ100の診断方法及び診断装置300によれば、電解質層1の水分が充分に存在していない状態(水枯れ状態)となり、電気化学式センサ100の電解質中の抵抗上昇による異常状態になっていることを簡易且つ確実に知ることができ、電気化学式センサ100の交換等をセンサ出力に異常が見られる前に確実に行うことができる。
(1)上記実施形態では、電気化学式センサ100を診断するにあたり、当該電気化学式センサ100が設置される対象は特定しなかったが、設置対象を検知対象ガスの濃度検知の高信頼性が要求されるガス警報器とすることができる。すなわち、検知対象ガスの濃度を正確に表すことができない状態になりかけていることを簡便且つ確実に知ることができる本願の診断方法及び診断装置を有効に利用することにより、より高信頼性を担保した警報器を構成することができる。
電解質抵抗を、電気化学式センサに交流電流を流した状態における電気化学式センサの出力電圧より算出したものとし、交流電流を印加した電気化学式センサの出力電圧に基づいて異常状態か否かを診断することができる。つまり、電気化学式センサに交流電流を印加した状態において、電気化学式センサの出力電圧は電気化学式センサのインピーダンスに対応したものとなっているので、電気化学式センサに交流電流を印加した状態において、電気化学式センサが正常状態での出力電圧である正常時電圧に対して、電気化学式センサの出力電圧の増加が認められた場合(例えば、出力電圧が正常時電圧よりも設定値以上増加している場合)に、診断手段が、電気化学式センサが異常状態であると診断することができる。このときの交流電流は、例えば、10Hz以上の高周波の交流電流を印加する。そして、電気化学式センサの正常状態とは、電解質中に水分が充分に存在している状態である。ここで、交流電流を印加した電気化学式センサの出力電圧に代えて、交流電流を印加した電気化学式センサの出力電流に基づいて、その出力電流の減少が認められた場合に異常状態と診断することもできる。
また、電解質抵抗を、電気化学式センサに交流電圧を印加した状態における電気化学式センサの出力電流より算出したものとし、交流電圧を印加した際の電気化学式センサの出力電流に基づいて異常状態か否かを診断することもできる。つまり、電気化学式センサに交流電圧を印加した状態において、電気化学式センサの出力電流は電気化学式センサのインピーダンスに対応したものとなっているので、電気化学式センサが正常状態での出力電流である正常時電流に対して、電気化学式センサの出力電流の減少が認められた場合(例えば出力電流が正常時電流よりも設定値以上減少している場合)に、診断手段が、電気化学式センサが異常状態であると診断することができる。このときの交流電圧は、例えば、10Hz以上の高周波の交流電圧を印加する。そして、電気化学式センサの正常状態とは、電解質中に水分が充分に存在している状態である。ここで、交流電圧を印加した電気化学式センサの出力電流に代えて、交流電圧を印加した電気化学式センサの出力電圧に基づいて、その出力電圧の増加が認められた場合に異常状態と診断することもできる。
2 アノード極(検知極)
3 カソード極(対極)
11 センサ手段
20 水タンク
100 電気化学式センサ
300 診断装置
Claims (10)
- 検知対象ガスが接触する検知極と、対極との間に固体又は液体の電解質とを有するセンサ本体を備え、前記検知極と前記対極との間に流れる電流又は当該電流に対応する電圧に基づいて、前記検知対象ガスの濃度を検知する電気化学式センサの診断方法であって、
前記センサ本体の下方に、水又は水を吸収させた吸水性樹脂を内部の空間に収容する水タンクが接続されて、当該内部に存在する水が前記センサ本体の電解質に供給され、
電解質抵抗が増加した場合に、前記電気化学式センサが、前記水タンク内に水が全く無くなって前記電解質に水分が充分には存在していない水枯れ状態から前記電解質に水分が完全に存在していない完全乾燥状態の過程にある異常状態であると診断する電気化学式センサの診断方法。 - 前記電解質抵抗が、前記電気化学式センサに交番電流又は交番電圧を流した状態における前記電気化学式センサのインピーダンスであり、
前記電気化学式センサが正常状態での前記インピーダンスである正常時インピーダンスに対して、インピーダンスの増加が認められた場合に、前記電気化学式センサが前記異常状態であると診断する請求項1に記載の電気化学式センサの診断方法。 - 前記インピーダンスが、前記電気化学式センサに交番電流を流した状態における前記電気化学式センサの出力電圧又は出力電流により算出したものであり、
前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電圧である正常時電圧に対して、電圧の増加が認められた場合に、又は、前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電流である正常時電流に対して、電流の減少が認められた場合に、前記インピーダンスの増加が認められたとして、前記電気化学式センサが前記異常状態であると診断する請求項2に記載の電気化学式センサの診断方法。 - 前記交番電流として、周波数が10Hz以上の交番電流を流す請求項2又は3に記載の電気化学式センサの診断方法。
- 前記インピーダンスが、前記電気化学式センサに交番電圧を印加した状態における前記電気化学式センサの出力電流又は出力電圧により算出したものであり、
前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電流である正常時電流に対して、電流の減少が認められた場合に、又は、前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電圧である正常時電圧に対して電圧の増加が認められた場合に、前記インピーダンスの増加が認められたとして、前記電気化学式センサが前記異常状態であると診断する請求項2に記載の電気化学式センサの診断方法。 - 前記交番電圧として、周波数が10Hz以上の交番電圧を印加する請求項2又は5に記載の電気化学式センサの診断方法。
- 検知対象ガスが接触する検知極と、対極との間に固体又は液体の電解質とを有するセンサ本体を備え、前記検知極と前記対極との間に流れる電流又は当該電流に対応する電圧に基づいて、前記検知対象ガスの濃度を検知する電気化学式センサの診断装置であって、
前記センサ本体の下方に、水又は水を吸収させた吸水性樹脂を内部の空間に収容する水タンクが接続されて、当該内部に存在する水が前記センサ本体の電解質に供給され、
電解質抵抗を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された電解質抵抗が増加した場合に、前記電気化学式センサが、前記水タンク内に水が全く無くなって前記電解質に水分が充分には存在していない水枯れ状態から前記電解質に水分が完全に存在していない完全乾燥状態の過程にある異常状態であると診断する診断手段とを備えて、
請求項1〜6の何れか1項に記載の電気化学式センサの診断方法を実行するように構成されている電気化学式センサの診断装置。 - 前記電解質抵抗が、前記電気化学式センサに交番電流又は交番電圧を流した状態における前記電気化学式センサのインピーダンスであり、
前記電気化学式センサが正常状態での前記インピーダンスである正常時インピーダンスに対して、インピーダンスの増加が認められた場合に、前記診断手段が、前記電気化学式センサが前記異常状態であると診断する請求項7に記載の電気化学式センサの診断装置。 - 前記インピーダンスが、前記電気化学式センサに交番電流を流した状態における前記電気化学式センサの出力電圧又は出力電流により算出したものであり、
前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電圧である正常時電圧に対して、電圧の増加が認められた場合に、又は、前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電流である正常時電流に対して、電流の減少が認められた場合に、前記診断手段が、前記インピーダンスの増加が認められたとして、前記電気化学式センサが前記異常状態であると診断する請求項8に記載の電気化学式センサの診断装置。 - 前記インピーダンスが、前記電気化学式センサに交番電圧を印加した状態における前記電気化学式センサの出力電流又は出力電圧により算出したものであり、
前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電流である正常時電流に対して、電流の減少が認められた場合に、又は、前記電気化学式センサが正常状態での前記出力電圧である正常時電圧に対して、電圧の増加が認められた場合に、前記診断手段が、前記インピーダンスの増加が認められたとして、前記電気化学式センサが前記異常状態であると診断する請求項8に記載の電気化学式センサの診断装置。
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