以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、原稿搬送装置(原稿搬送機構)を有するデジタル複合機として本発明を具体化する。
図1は本実施形態におけるデジタル複合機の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、複合機101は、画像読取部102および画像形成部103を備えている。画像読取部102は、原稿の画像を読み取りその画像のデジタルデータを生成する。画像読取部102は、コンタクトガラス等の透明板からなる原稿台104をその筐体上面に有している。原稿は、その原稿台104に載置することができる。原稿台104の下方には走査光学系105が配置されている。走査光学系105は、第1キャリッジ106や第2キャリッジ107、集光レンズ108を備える。第1キャリッジ106には線状の光源109およびミラー110が設けられ、第2キャリッジ107にはミラー111および112が設けられている。光源109は原稿を照明する。ミラー110、111、112は、原稿からの反射光をレンズ108に導き、レンズ108はその光像をラインイメージセンサ113の受光面に結像する。この走査光学系105において、第1キャリッジ106および第2キャリッジ107は、副走査方向114に往復動可能に設けられている。第1キャリッジ106および第2キャリッジ107を副走査方向114に移動することによって、原稿台104に載置された原稿の画像をイメージセンサ113で読み取ることができる。イメージセンサ113は、受光面に入射した光像から、原稿の画像データを生成する。生成された画像データは、画像形成部103において用紙に印刷することができる。また、生成された画像データは、図示しないネットワークアダプタ等を介して、ネットワークを通じて他の機器へ送信することもできる。
画像形成部103は、画像読取部102で得た画像データや、上記ネットワークを通じて他の機器から受信した画像データを用紙に印刷する。画像形成部103には、感光体ドラム115が設けられている。この感光体ドラム115は、一定速度で矢印方向116に回転する。感光体ドラム115の周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器117、露光器118、現像器119、転写器120、クリーニングユニット121が配置されている。帯電器117は、感光体ドラム115表面を一様に帯電させる。露光器118は、一様に帯電した感光体ドラム115の表面に、画像データに応じて光を照射し、感光体ドラム115上に静電潜像を形成する。現像器119は、その静電潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム115上にトナー像を形成する。転写器120は、感光体ドラム115上のトナー像を用紙に転写する。クリーニングユニット121は、転写後も感光体ドラム115表面に残留した廃トナーを感光体ドラム115から除去して感光体ドラム115表面をクリーニングする。感光体ドラム115が回転することによりこれらのプロセスが一連で行われる。
画像形成部103は、手差しトレイ131、給紙カセット122および123等から、感光体ドラム115と転写器120との間の転写部に用紙を給送する。手差しトレイ131や各給紙カセット122、123には、様々なサイズの用紙を載置または収容することができる。画像形成部103は、ユーザの指定した用紙や、自動検知した原稿のサイズに応じた用紙を選択し、選択した用紙を給送ローラ124により手差しトレイ131やカセット122、123から引き出す。引き出した用紙は搬送ローラ125やレジストローラ126で転写部に送り込む。トナー像を転写した用紙は、定着器127に搬送される。定着器127は、定着ローラ128および加圧ローラ129を有しており、熱と押圧力によってトナー像を用紙に定着する。画像形成部103は、定着器127を通過した用紙を排紙トレイ130へ排紙する。
このような複合機101において、画像読取部102の上側には原稿搬送機構である原稿搬送装置135が開閉可能に取り付けられている。原稿搬送装置135には、原稿トレイ136、搬送路137および排紙トレイ138が備えられている。ユーザは、原稿台104に原稿を載置するか、この原稿搬送装置135に原稿をセットする。原稿搬送装置135は、原稿トレイ136にセットされた原稿を1枚ずつ搬送路137へ送り出す。その搬送路137上には画像読取位置139がある。画像読取部102の筐体上面には、原稿台104だけでなく、その画像読取位置139に対する読取用スリットガラス140も設けられている。原稿搬送装置135にセットされた原稿の画像を読み取る場合、画像読取部102は、第1キャリッジ106および第2キャリッジ107を画像読取位置139に合わせて一時的に固定する。原稿が画像読取位置139を通過するとき、スリットガラス140を通じて原稿を照明し、原稿の画像を読み取る。画像読取位置139を通過した原稿は、排紙トレイ138に排出される。
図2は原稿搬送装置の機械的構成の一例をより詳細に示す断面図である。原稿搬送装置135は、原稿トレイ136に載置された原稿束Pから原稿を1枚ずつ分離するため、ピックアップローラ201、給送ベルト202および分離ローラ203を備えている。ピックアップローラ201は、原稿束Pの最上面の先端に押し当てられる。その状態でピックアップローラ201を駆動することで、原稿束Pから原稿が引き出される。引き出された原稿が2枚以上あっても、それらの原稿から1枚目の原稿を給送ベルト202および分離ローラ203が分離して搬送路137の下流側へ搬送する。その下流には、レジストローラ204および搬送ローラ205が設けられている。レジストローラ204で画像読取位置139に搬送するタイミングを調整し、搬送ローラ205が画像読取位置139へ原稿を搬送する。その画像読取位置139で原稿の画像が読み取られる。画像読取位置139を通過した原稿は、排紙ローラ206により排出部から排出トレイ138へ排紙される。
原稿トレイ136には、原稿セットセンサ207が設けられている。原稿セットセンサ207は、原稿トレイ136上の原稿の有無を検知する。原稿セットセンサ207が原稿を検知すると、原稿搬送装置135は、原稿載置面の一部を構成する昇降板208を上昇させて、原稿束Pの最上面をピックアップローラ201に押し当てる。原稿セットセンサ207の検知結果は、原稿トレイ136にセットされた原稿の搬送完了を確認するのにも用いられる。
図3は、複合機の上部外観を示す斜視図である。上述のように、原稿台104に隣接してスリットガラス140が配置され、原稿搬送装置135の画像読取位置139が対向して配置されている。複合機101の手前側には、ユーザが複写機に対する指示や各種設定を入力する操作部301が設けられている。本実施形態では、操作部301は、指示入力や各種情報の表示に使用されるタッチパネル式の表示部302および処理開始を指示するスタートボタン303を備えている。
図4は、複合機における制御系のハードウェア構成図である。本実施形態の複合機101は、CPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、ROM(Read Only Memory)403、HDD(Hard Disk Drive)404および原稿搬送装置135、画像読取部102、画像形成部103における各駆動部に対応するドライバ405が内部バス406を介して接続されている。ROM403やHDD404等はプログラムを格納しており、CPU401はその制御プログラムの指令にしたがって複合機101を制御する。例えば、CPU401はRAM402を作業領域として利用し、ドライバ405とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。内部バス406には、表示部302も接続されており、例えば、給紙カセット内の用紙がなくなっている旨の信号がCPU401へ送信されると、CPU401は、表示部302に「給紙カセットに用紙を収容して下さい」というメッセージを表示させる。
さらに、本複合機101では、原稿搬送装置135の原稿セットセンサ207の他、各種のセンサ407も内部バス406を介して接続されている。このセンサ407には、搬送路137に配置された原稿の有無を検知するセンサや給紙カセット内の用紙の有無を検知するセンサ、さらには温湿度センサ等が含まれる。CPU401は、例えばROM403に格納されたプログラムを実行することで、以下の各手段を実現するとともに、これらセンサからの信号に応じて各手段の動作を制御する。
図5は、複合機の機能ブロック図である。異物検知部501は、画像読取部102が読み取った画像データに基づいて、画像読取位置139における異物の有無を検知する。特に限定されないが、本実施形態では、画像読取部102は読み取った画像データをRAM402またはHDD404に一旦保持し、異物検知部501が、当該保持された画像データに対して後述の異物検知処理を実施する。
異物検知部501は、異物の有無についての情報をサイズ比較部502に通知する。ここで、異物の有無についての情報(以下、異物情報という。)は、異物のサイズを示す情報(以下、サイズ情報という。)と、検知された異物のスリットガラス140上での位置を示す情報(以下、位置情報という。)とを含む。サイズ比較部502は、異物検知部501から異物情報を受け取ると、検知された異物のサイズ情報と予め設定されている閾値とを比較する。検知された異物のサイズが閾値以下である場合、サイズ比較部502はその旨を異物情報とともに異物画像データ補正部503に通知する。検知された異物のサイズが閾値よりも大きい場合、サイズ比較部502はその旨を報知部504に通知する。
上記通知を受けた異物画像データ補正部503は、位置情報に基づいて、異物が検知された箇所で読み取られた画像データに対して補正処理を行う。ここでは、異物画像データ補正部503は画像読取部102が保持している画像データに対して後述の補正処理を行う。一方、上記通知を受けた報知部504は、原稿トレイ136に載置された原稿の搬送が完了したときに、搬送された全原稿の中から閾値より大きなサイズの異物が検知された画像データに対応する原稿(以下、異物検知原稿ともいう。)を特定するための情報を報知する。報知方法は、表示、音声等ユーザが認識可能な任意の方法を採用することができる。本実施形態では、報知部504は、操作部301が備える表示部302に、図6に例示するような、異物の排除のための清掃を要求するメッセージ601を表示する。図6に示すように、メッセージ601には、異物検知原稿を特定するための情報602(ここでは、異物検知原稿が何番目に搬送された原稿であるかを示す番号)が含まれている。なお、図6の例は、全6ページの原稿中の4ページ目で異物が検知されたことを示している。複数のページにおいて異物が検知された場合には、異物が検知された全ページを特定するための情報が表示される。表示方法は任意であるが、例えば、第3、第4、第5ページにおいて異物が検知された場合、「3,4,5/6」や「3-5/6」等の表示をすることができる。
なお、取得した画像データの用途は特に限定されない。文書データとして複合機内のHDD404に登録されてもよく、ネットワークアダプタ505を通じて外部の装置へ送信されてもよい。また、画像形成部103において用紙に印刷することも可能である。
図7は、本実施形態の複合機が実行する制御手順の一例を示す図である。まず、ユーザは、原稿搬送装置135の原稿トレイ136に原稿をセットする。複合機101は、原稿トレイ136に原稿が載置されたことを原稿セットセンサ207が検知したかどうかをチェックする(ステップS701)。原稿が載置されていることを確認すると、複合機101は、スタートボタン302押下等の搬送開始指示があるまで待機する(ステップS701Yes、S702No)。搬送開始の指示があると、原稿搬送装置135が、原稿トレイ136に載置された原稿を1枚、画像読取位置139へ搬送する(ステップS702Yes、S703)。そして、原稿が画像読取位置139を通過するとき、画像読取部102は、スリットガラス140を通じて原稿の画像を読み取る(ステップS704)。上述のように、読み取られた画像データは画像読取部102に一旦保持される。
このとき、異物検知部501が、当該保持された画像データに対して異物検知処理を実施する(ステップS705)。ここでは、異物検知部501は、ラインイメージセンサ113が取得した主走査方向の画像データを、副走査方向にわたって画素ごとに比較する。特に限定されないが、本実施形態では、異物検知部501は、まず、ラインイメージセンサ113が取得した主走査方向の各画素の画像データを2値化する。次いで、副走査方向の次列について、ラインイメージセンサ113が取得した主走査方向の各画素の画像データを2値化する。そして、各画素について、2値化データが同一であるか否かを判定する。すなわち、副走査方向に隣接する画素の2値化データが同一であるか否かを判定する。同一である場合、副走査方向に黒筋あるいは白筋が発生している可能性がある。異物検知部501は、上述の副走査方向に隣接する画素の2値化データを原稿の一端から他端にわたって行い、同一データが予め設定された画素数連続した場合に「異物有」と判定する。また、異物検知部501は、同一データが予め設定された画素数連続した画素を検知した際に、同一データが主走査方向に連続しているか否かを確認し、その画素数を取得する。なお、副走査方向の原稿の一端から他端までの範囲で比較することは必須ではなく、例えば、原稿の一端から固定長(例えば、数mm)等の、一部の範囲の画像データのみで異物の有無を判定してもよい。
なお、画像データを2値化する際の閾値は、例えば、モノクロ256階調である場合、その中央値である“128”に設定することができる。例えば、“180”等、一方にオフセットさせた閾値を使用してもよい。また、黒筋を検知する場合と白筋を検知する場合とで、2値化データを得るための閾値を異なる値としてもよい。さらに、各画素の画像データを、2値化に限らず任意の区分数に分類し、隣接する画素データが同一区分であるか否かにより異物検知を実施することもできる。加えて、画像データがカラーデータである場合、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれか1色の画像データを使用して上述の異物検知を行ってもよく、複数色の画像データのそれぞれにおいて上述の異物検知を実施し、同一位置に異物が検知された場合にのみ「異物有」と判定してもよい。
異物検知部501は、上述の異物検知処理において、「異物有」と判定した場合、その異物を検知したラインイメージセンサ113の主走査方向の位置(位置情報)、および主走査方向に連続する画素数(サイズ情報)を、異物情報としてサイズ比較部502に入力する(ステップS705Yes)。
異物情報を受信したサイズ比較部502は、受信したサイズ情報と予め設定されている閾値とを比較する(ステップS706)。当該閾値は、主として、原稿搬送装置135による原稿搬送において発生が不可避である紙粉に起因する黒筋や白筋を識別するために設定される。例えば、紙粉の直径が数十ミクロン程度であることから、画素ピッチが20μm程度である1200dpiの解像度を有するラインイメージセンサ113では閾値は1〜3画素程度に設定すればよく、画素ピッチが10μm程度である2400dpiの解像度を有するラインイメージセンサ113では閾値は1〜5画素程度に設定すればよい。
受信した異物のサイズ情報が閾値以下である場合、サイズ比較部502はその旨を異物情報とともに異物画像データ補正部503に通知する(ステップS706Yes)。このとき、異物画像データ補正部503は、画像読取部102が保持している画像データにおいて、上記閾値以下のサイズの異物があると判定された画素に対して画像処理を施し、当該異物に起因する筋状の画像データを除去する(ステップS707)。当該画像処理の方法は任意であり、積分処理や置換処理等を使用することができる。例えば、積分処理では、複数画素からなる一定サイズの領域内の目的画素(例えば、中央画素)に対して、積分演算を実施する積分フィルタを使用することができる。なお、コストの観点から当該積分フィルタの領域サイズを小さくする必要がある場合には、積分フィルタサイズ内に収まる幅(画素数)をサイズ比較部502に設定する閾値としてもよい。また、置換処理では、例えば、主走査方向の1列の画像データにおいて、「異物有」と判定された画素に隣接する「異物無」と判定された画素データにより「異物有」と判定された画素データを置換したり、「異物有」と判定された画素の両側に隣接する「異物有」と判定された画素データの平均値により「異物有」と判定された画素データを置換したりすることができる。
上述のように、紙粉のような微細な粒子に起因する黒筋や白筋は1画素〜数画素の幅であるため、このような画像処理を施した場合であっても、画像がぼやける等の画質劣化は発生しない。
一方、受信した異物のサイズ情報が閾値より大きい場合、サイズ比較部502はその旨を報知部504に通知する(ステップS706No)。このとき、報知部504は、画像読取部102から、画像読取部102が保持している画像データに対応する原稿を特定するための情報を取得し、記憶する(ステップS712)。ここでは、報知部504は、原稿を特定するための情報として、原稿が何番目に搬送された原稿であるかを示す番号を画像読取部102から取得する。なお、このような情報は、画像読取部102に限らず、原稿搬送装置135や原稿搬送装置135を制御するCPU401等の他部から取得してもよい。
異物画像データ補正部503または報知部504に上述の通知をしたサイズ比較部502は、異物検知部501が検知した全ての異物についての異物情報について、サイズ情報と閾値との大小関係を比較し、その結果に応じて、異物画像データ補正部503または報知部504に上述の通知を行う(ステップS708Yes)。
異物検知部501が検知した全ての異物についての処理が完了すると、画像取得部102は保持していた画像データをHDD404に取得した画像データとして登録し、画像データの保持を終了する。また、複合機101は、読み取られた原稿が最終原稿であるか否かを確認する(ステップS708No、S709)。例えば、複合機101は、原稿セットセンサ207や搬送路137のジャムセンサ等により、原稿トレイ136上および搬送ローラ205よりも上流側に原稿が存在するか否かをチェックする。原稿が検知されていることを確認すると、複合機101は、最終原稿は読み取られていないと判断し、後続の原稿を1枚、画像読取位置139へ搬送させる(ステップS709No、S703)。そして、画像読取部102により取得された、新たに搬送された原稿の画像データに対して上述の処理(ステップS704〜S708)が実施される。なお、ステップS705において、画像読取部102に保持された画像データについて、異物検知部501が「異物無」と判定した場合、画像取得部102は保持していた画像データをHDD404に取得した画像データとして登録して画像データの保持を終了し、次原稿の有無を確認する(ステップS705No、S709)。
最終原稿が読み取られていた場合、報知部504は、表示部302に、上述の異物が検知された画像データに対応する原稿を特定するための情報を表示する(ステップS709Yes、S710Yes、S713)。上述のように、本実施形態では、当該表示は異物の排除のための清掃を要求するメッセージとともになされる(図6参照)。なお、閾値を越えるサイズの異物が検知されず、報知部504が異物検知原稿を特定するための情報を有していない場合は、報知部504は当該表示を行わない(ステップS710No)。
そして、複合機101は、最終原稿が排紙トレイ138に搬出されるまで待機し(ステップS711No)、最終原稿が排紙トレイ138に搬出されると手順が終了する(ステップS711Yes)。なお、ネットワークアダプタ505を通じて外部の装置へ取得した画像データを送信する場合や、画像形成部103において用紙に印刷する場合、当該送信や印刷は、画像データがHDD404に登録される都度実施される構成であってもよく、全原稿の画像データがHDD404に登録された後、ユーザからの指示を待って実施される構成であってもよい。また、送信や印刷を完了した後は、画像データは、所定のタイミングでHDD404から消去される構成であってもよい。
以上のように、本実施形態における複合機は、原稿読取の際に、取得された画像データが予め設定された閾値以下の幅で副走査方向にのびる黒筋や白筋を含む場合、当該黒筋や白筋を自動的に消去する。また、取得された画像データが予め設定された閾値よりも大きい幅で副走査方向にのびる黒筋や白筋を含む場合、当該黒筋や白筋に対しては何ら処理することなく、対応する原稿を特定する情報を報知する。すなわち、微細な異物に起因する黒筋や白筋は画像取得時に自動的に消去され、比較的大きな異物に起因する黒筋や白筋についてのみ、その発生した原稿の情報が通知される。したがって、異物が検知された画像に一様に画像処理が実施されることがないため、異物により発生した筋を目立たなくするための画像処理によって、ぼやけた画像等の画質が劣化した画像データになることがない。また、画像処理に要する負荷が比較的小さいため、画像読取速度を低下させることなく高速で原稿画像を読み取ることができる。
また、ユーザは、取得した画像データの用途に応じて、原稿の画像を再読み込みするか否かを判断することができるため、非常に効率的である。例えば、原稿内容の確認が可能であれば画像中に筋が存在していても許容される場合には、ユーザは再読み取りをせずにスリットガラスの清掃のみを行えばよく、高画質であることが求められ、筋の存在が許容されない場合には、ユーザはスリットガラスの清掃後に再読み取りを行えばよい。原稿の画像を再読み取りする場合には、再読み取りすべき原稿が特定されているため、効率的に再読み取りを行うことができる。特に、スリットガラス上の異物が原稿搬送に伴って排除された場合等であっても、異物が検知された原稿を確実に特定できるため有益である。
なお、上記実施形態では、サイズ比較部502が閾値より大きい異物を検知した場合、原稿トレイに載置された最終原稿の読み取りが完了したときに、報知部504が、異物検知原稿を特定するための情報を表示する構成について説明した。しかしながら、報知部504は、このような報知に加えて、サイズ比較部502が閾値より大きい異物を検知したときに、直ちに異物を検知したことを報知する構成を採用することもできる。
図8は、複合機が原稿読取中に表示部に表示する表示画面の一例を示す図である。この例では、表示画面801は、原稿搬送の進捗情報を示す進捗表示部802、原稿読み取りを一時停止するために使用される一時停止ボタン803、原稿読み取りを中止するために使用される読取中止ボタン804を備える。進捗表示部802には、原稿搬送装置135が搬送中の原稿の搬送順情報(搬送開始から何番目に搬送された原稿であるかを示す情報)が表示される。図8の例では、原稿トレイ136に載置された原稿束の4ページ目が搬送中であることが示されている。また、表示画面801は、その下部に、複合機101の装置状態を表示するサブメッセージ表示部805を備える。サブメッセージ表示部805には、例えば、トナー残量が少ない等、画像読取等の動作を停止して対応すべき内容ではないけれども、ユーザに報知した方が好ましい情報等が表示される。
例えば、サイズ比較部502が閾値よりもサイズが大きい異物を検知したときに、図6に示すようなメッセージ601を直ちに表示部302に表示する構成では、進捗表示部802に示される情報がメッセージ601により隠されてしまう。この場合、ユーザは、異物が検知されたことは認識できるが、原稿搬送の進捗状況を認識することができなくなる。原稿搬送の進捗状況は、ユーザが画像読取処理を中止するか否かを判断する重要な要素である。例えば、異物検知原稿が原稿束の最初の数ページ内で発生していればユーザは直ちに停止してスリットガラスの清掃後に原稿読み取りをやり直すことも可能であるし、異物検知原稿が数十ページ読取後に発生していればユーザは原稿束の搬送を最後まで継続し、後述の手法により画像データの差し替えという対応をとることもできる。すなわち、進捗状況が認識可能であることは、ユーザにとってより好ましい。最終原稿の読み取りが完了したときの報知に加えて、異物を検知したときに直ちに異物検知を報知する構成とすることで、このようなユーザの判断が可能となり、ユーザの対応の選択肢を増やすことができる。
そこで、本実施形態では異物検知を直ちに報知する場合、表示画面801のサブメッセージ表示部805にその旨を表示する。図9は、その表示画面の一例を示す図である。図9の例に示すように、サイズ比較部502が閾値より大きい異物を検知した際に、報知部504が「異物を検知しました」等の情報をサブメッセージ表示部805に表示する。これにより、ユーザは原稿搬送の進捗状況が認識可能な状態で、異物が検知されたことを認識することができる。
また、この例では、ユーザが一時停止ボタン803や読取中止ボタン804を使用しなかった場合、図10に示すように、最終原稿の画像読み取りが完了するとメッセージ601が表示部302に表示される。このとき、メッセージ601は、ユーザにより容易に認識できるように、表示画面801と重なる状態で表示される。なお、図10の例では、全6ページの原稿の中で、第4ページ目のみで、閾値を越えるサイズの異物が検知されている。
ところで、最終原稿の画像読み取りが完了の際に表示されたメッセージ601を確認したユーザは、例えば、以下のようにして、原稿画像の再読み取りを行うことができる。この実施形態では、タッチパネル式の表示部302に表示されているメッセージ601内の終了ボタン603を押下すると、原稿再読み取り設定画面が表示部302に表示される。原稿再読み取り設定画面は、閾値より大きなサイズの異物が検知された画像データに対応する原稿を再読み取りし、当該画像データを新たに取得する画像データに差し替えるか否かの指示を要求する画面である。なお、本実施形態では、当該設定画面を報知部504が表示するようになっており、報知部504が差し替え指示を要求する入力要求部として機能する構成になっているが、入力要求部は報知部と独立して設けてもよい。
図11は、複合機が表示部に表示する原稿再読み取り設定画面の一例を示す図である。この例では、原稿再読取設定画面1101は、再読み取りする原稿のみを再度読み取らせる場合に選択する選択再読取ボタン1102、異物が検知された原稿搬送の際に原稿トレイ136に載置されていた全原稿を原稿トレイ136に再度載置し、異物検知原稿のみを再度読み取らせる場合に選択する一括再読取ボタン1103、読み取られた画像データを表示部302に表示させる場合に選択する画像確認ボタン1104、再読み取りを行わない場合に選択する終了ボタン1105を備える。
ユーザが終了ボタン1105を押下した場合、報知部504はそのまま処理を終了する。また、ユーザが画像確認ボタン1104を押下した場合、報知部504は、異物検知原稿を特定するための情報602に基づいて、画像データが登録されているHDD404から該当する画像データを抽出して表示部302に表示する。
図12は、複合機が表示部に表示する原稿プレビュー画面の一例を示す図である。この例では、原稿プレビュー画面1201は、選択再読取ボタン1202、一括再読取ボタン1203、終了ボタン1205および画像表示欄1206を備える。選択再読取ボタン1202、一括再読取ボタン1203、終了ボタン1205の各機能は、上述の選択再読取ボタン1102、一括再読取ボタン1103、終了ボタン1105と同一である。画像表示欄1206には、閾値よりも大きなサイズの異物が検知された画像データが表示される。特に限定されないが、図12の例では、画像表示欄1206には、異物検知原稿が複数ある場合に表示する画像データを選択するためのボタン、表示された画像データを拡大や縮小するためのボタン、表示領域を移動させるためのボタン等の操作用ボタンが設けられている。この構成では、ユーザは読み取られた画像データの状態を目視により確認でき、必要に応じて画像データの差し替えを実施することができる。なお、図12の例では、ユーザは、画像表示欄1206の上部に設けられている再読取チェックボックス1207をチェック状態(オン状態)にすることで、その画像データを原稿再読み取りする画像データとして指定することができる。また、画像表示欄1206表示される画像は、HDD404に登録された画像データそのものであってもよく、異物による黒筋や白筋が認識可能な範囲で解像度を低下させた画像データであってもよい。
そして、再読み取りする画像データを指定した後、ユーザが選択再読取ボタン1202を押下すると、再読み取り指定された原稿のページ数(ここでは、第4ページ目)が表示部302に表示され、原稿トレイ136または原稿台104への当該原稿の載置が要求される。原稿載置後にユーザがスタートボタン303を押下すると、当該原稿の画像が読み取られ、HDD404に登録されている先に取得された画像データが、新たに取得された画像データに差し替えられる。また、再読み取りする画像データを指定した後、ユーザが一括再読取ボタン1203を押下すると、先の原稿搬送の際に原稿トレイ136に載置されていた全原稿を原稿トレイ136に再度載置することが表示部302を通じて要求(表示)される。原稿載置後にユーザがスタートボタン303を押下すると、原稿搬送が開始され、再読み取り指定された原稿(ここでは、第4ページ目)のみ、原稿の画像が読み取られる。このとき、再読み取りの対象でない原稿は、画像を読み取る必要がないため、通常の搬送速度よりも高速で搬送されるようになっている。そして、HDD404に登録されている先に取得された画像データが、新たに取得された画像データに差し替えられる。なお、原稿再読取の際にも上述の異物検知が実施されることはもちろんである。
この構成では、例えば、異物検知原稿が少なく原稿枚数も少ない場合等、原稿束から再読取対象原稿のみを抽出するのが比較的容易なときには異物原稿のみを搬送して原稿を再読み取りさせることができ、異物検知原稿が多く原稿枚数も多い場合等、原稿束から再読取対象原稿のみを抽出するのが困難な場合には全原稿を搬送して指定された原稿のみを再読み取りさせることができる。したがって、ユーザは、黒筋や白筋が発生した画像データの再読み込みを極めて容易に実施することができる。
一方、原稿再読み取り設定画面1101において、ユーザが選択再読取ボタン1102を押下した場合、表示部302に異物検知原稿のページ数(ここでは、第4ページ目)が表示され、原稿トレイ136または原稿台104への載置が要求される。原稿載置後にユーザがスタートボタン303を押下すると、当該原稿の画像が読み取られ、HDD404に登録されている先に取得された画像データが、新たに取得された画像データに差し替えられる。また、原稿再読み取り設定画面1101において、ユーザが一括再読取ボタン1103を押下すると、先の原稿搬送の際に原稿トレイ136に載置されていた全原稿を原稿トレイ136に再度載置することが表示部302を通じて要求される。原稿載置後にユーザがスタートボタン303を押下すると、原稿搬送が開始され、異物が検知された原稿(ここでは、第4ページ目)のみ、原稿の画像が読み取られる。そして、HDD404に登録されている先に取得された画像データが、新たに取得された画像データに差し替えられる。
なお、この場合、選択再読取ボタン1102、一括再読取ボタン1103の押下後、表示部302に、ユーザが再読み込みする原稿を指定するための設定画面が表示される構成であってもよい。この構成では、例えば、画像形成部103において読み取られた画像データが印刷され、印刷された画像データにより原稿再読み取りの要否をユーザが判定できる場合等に、表示部302に画像データを表示させることなく、ユーザが再読み取りする原稿を指定することが可能になる。
以上説明したように、本発明によれば、微細な異物に起因する黒筋や白筋は画像取得時に自動的に消去され、比較的大きな異物に起因する黒筋や白筋はその発生した原稿の情報がユーザに通知される。したがって、異物が検知された画像に一様に画像処理が実施されることがないため、意図しない画質劣化のない画像データを取得することができる。また、画像読取の際の画像処理が必要最小限の画像処理であるため、高速で原稿画像を読み取ることができる。また、ユーザは、取得した画像データの用途に応じて、原稿の画像を再読み込みするか否かを判断することができるため非常に効率的である。さらに、原稿の画像を再読み取りする場合、再読み取りすべき原稿が特定されているため、効率的に再読み取りを行うことができる。加えて、原稿トレイに原稿束を再配置するだけで、異物検知原稿の再読み取りを行うことも可能である。
なお、上述した各実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、原稿搬送装置の構造は上述の実施形態に限定されず、原稿台がスリットガラスを兼ね、原稿台の任意の位置を原稿読取位置とする原稿搬送装置等いかなる原稿搬送装置を有する画像読取装置に対しても適用可能である。
また、上述の実施形態では、デジタル複合機の原稿搬送装置として本発明を具体化したが、デジタル複合機に限らず、ファクシミリ、スキャナ、複写機などの原稿供給機能を備える画像読取装置に本発明を適用することも可能である。なお、これらの機器は、上述の異物検知動作を実行するか否かを選択的に設定できる構成であってもよい。