JP5304762B2 - 杭の施工方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の鋼管杭の施工方法は、軸管の切欠部より上方に内管を引き込んだ状態で鋼管杭を地盤の所定深さまで回転貫入し、鋼管杭を回転させながら上下に移動させ、鋼管杭の先端付近の地盤を砕くことによって砕土部を設ける。そして、この砕土部内の所定高さに鋼管杭の先端を位置させた状態で内管を圧下することによって砕土部を締め固めた後、内管を軸管に固定するものである(特許文献1の[0013]参照)。
特許文献2に記載の場所打ち杭の構築方法は、「先端近傍の外周に沿って螺旋羽根を設けた鋼管の先端に、該鋼管に対して上方への移動と回動とを拘束して、掘削刃を備えた底板を装着し、該鋼管内に該底板への荷重伝達軸を挿入し、該荷重伝達軸により該底板を係止して該底板の該荷重伝達軸からの離脱を防止し、次いで該鋼管に回転力を付与して該鋼管を該底板と該荷重伝達軸の下降を伴って支持層まで沈降させて後、該底板への該荷重伝達軸による係止を解除し、該荷重伝達軸により該底板に押圧力を付与し、次いで該荷重伝達軸を引き上げて後、該鋼管内に鋼製芯材を降下させてコンクリートを打設し、ケーシングとして使用した該鋼管を撤去することを特徴とする」ものである。
<先端支持力確保に関する課題>
特許文献1においては、先端支持力を確保するために、底板を有する内管を地盤に圧下するようにしているが、設計上必要とされる先端支持力を得ることができているかどうかは不明である。
この点、特許文献2においては、荷重伝達軸によって底板に押圧力を付与するとしているが、こちらの場合についても設計上必要とされる先端支持力を得ることができているかどうかは不明である。
杭施工後において、所定の先端支持力が得られていなかった場合、一旦施工された杭の支持力を向上させることはできないため、設計変更により杭径を増加させるか、増し杭のように杭の本数を増やすことによって対処せざるを得なくなる。
このように、杭施工時において、先端支持力が得られているか否かということは重要なことであるにも関わらず、従来例において、杭施工時に設計上必要とされる先端支持力が得られているかどうかを確認し、先端支持力不足の場合には、設計上必要とされる先端支持力を得るために必要とされる支持力を考慮しつつそれを増大させるという考えのものはない。
特許文献1、2共に、螺旋翼を有する鋼管を回転させて地盤に貫入させるため、回転貫入時に土砂が鋼管内に入らないようにする目的で、底板を必要としている。また、特許文献1、2共に、先端支持力を増すために杭先端の地盤を押し固めるという作業を行うため、上記の底板が螺旋翼を備えた鋼管と分離できる構造になっている必要がある。つまり、回転貫入時に鋼管の先端を塞ぎ、かつ貫入後には鋼管と分離できる構造の底板が必要なのである。
この点、特許文献2においては、螺旋翼を備えた鋼管に底板を装着し、該底板を荷重伝達軸で保持した状態で鋼管を回転貫入させるようにしている。このように、特許文献2では、底板を鋼管側に装着しているものの、鋼管の回転貫入時に底板が離脱するのを防ぐために、荷重伝達軸を鋼管に挿入した状態で回転貫入させねばならず、特許文献1と同様に施工性が悪いという問題がある。
本実施の形態の杭の施工方法に用いる部材は、図1に示すように、下端部近傍に螺旋翼1を備えた鋼製のケーシング3と、該ケーシング3の下端面を塞ぐ底板5と、ケーシング3内に立て込まれる既製杭7とを備えている。
以下、各部材を詳細に説明する。
ケーシング3は、先端近傍に螺旋翼1が溶接された鋼管よって形成されており、その外径は例えば、φ400〜φ600である。また、ケーシング3の上端には、回転力を伝達するための突部9が設置されている。
ケーシング3の先端には底板5が、ケーシング3の回転貫入中はケーシング3に保持されると共に既製杭7によって押圧されることでケーシング3から離脱するように保持されている。底板5のケーシング3に対する保持構造10については後述する。
ケーシングに備えた螺旋翼1はケーシング3に与えた回転力を地盤に伝え貫入推進力を与えると共に先端支持力の確認および付与の際の押圧力に対する反力を地盤に伝える役割を果たす。従って、翼設置位置近傍の地盤の強度に応じ、反力をとるために充分な翼径(受圧面積)および板厚を予め設定する。
ここで、ケーシングで反力をとって先端支持力の確認および付与を行うためには螺旋翼1の投影面積が、底板の面積の3倍以上になるように設定するのが好ましい。この理由は以下の通りである。
押込み支持力=150(支持力係数)×N(N値)×Ap(底板の面積)・・・・(1)
他方、螺旋翼による引抜き抵抗は、下式(2)で求められる。
引抜き抵抗=50(係数)×N(N値)×Apw(螺旋翼の投影面積)・・・・(2)
ケーシングで反力をとって先端支持力の確認および付与を行うためには、引抜き抵抗>押込み支持力の関係が必要である。
したがって、(1)(2)式から、Apw>3Apとなる。つまり、螺旋翼の投影面積が底板の面積の3倍より大きくなることである。
なお、引抜き抵抗としては、螺旋翼による抵抗以外にケーシング3の周面抵抗が付加されるので、Apw=3Apの場合であっても引抜き抵抗>押込み支持力の関係が成立する。そこで、Apw≧3Apすなわち螺旋翼1の投影面積が、底板の面積の3倍以上になるように設定した。
底板5はケーシング3の下端面に保持されており、ケーシング3の回転貫入中は土砂がケーシング3内に侵入するのを防止し、既製杭の建て込みに際して下方の地盤を押圧して先端支持力を得る機能を有する。
底板5の保持構造10は、図3、図4に示すように、ケーシング3の下端部の外周に形成した矩形状でかつ貫通孔11を有する係止部13を、底板5に形成した2枚の係止片15(貫通孔17あり)の隙間に挿入し、係止片15と係止部13にピン19を挿入することで、ケーシング3と底板5を連結するというものである。
この保持構造10をより詳細に説明する。
他方、底板5における係止部13に対応する位置には、係止部13が挿入可能な隙間を形成するように係止片15が2枚設置されており、係止片15にも貫通孔17が形成されている(図3、図4参照)。
ケーシング3の係止部13を底板5の係止片15の隙間に挿入して、係止部13と係止片15の貫通孔17にピン19を挿入することで、ケーシング3と底板5をピン19によって連結している。
また、ケーシング3が下方に移動するときは、底板5がケーシング3の先端に押し付けられるので、底板5がケーシング3から分離することはない。さらに、回転貫入中には、ケーシング3を上下方向に移動させることもあるが、その際、上方向に移動させたときに、底板5がケーシング3と離れようとする力が作用するが、その動きはピン19によって規制され、両者が分離することはない。しかも、ケーシング3が上方向に移動する際、底板5とケーシング3が離れようとする力は小さいので、ピン19はこの小さい力に抵抗できる程度の強度であれば足りる。
以上のように、ケーシング3と底板5とを上記のような保持構造10にしたので、ケーシング3の回転貫入の際に、特許文献2の例のようにケーシング3の内部に荷重伝達軸を挿入して底板5を保持しなくても、両者を離れることがない構造になっている。
しかも、ケーシング3と底板5を繋ぐピン19は弱い力で破壊するので、ケーシング3と底板5を容易に分離させることもできる。
また、ケーシング3側に設ける係止部13あるいは係止片15はケーシング3の外周面ではなく、内周面に設けるようにしてもよい。
既製杭7は、ケーシング3内に立て込まれる杭であって、例えば鋼管杭、PHC杭、RC杭などがあるが、これに限定されるものではない。既製杭7の外径は、既製杭7のケーシング3内への建て込みおよびその後のケーシング引き抜きに支障がないようケーシング内径より余裕を持って小さいサイズとするのが好ましい。例えば、ケーシング3の径をφ400〜φ600としている本例においては、既製杭の外径は例えばφ300〜φ500とするのが好ましい。
各工程について、さらに詳細に説明する。
回転貫入工程は、ケーシング3の先端に底板5を保持させた状態でケーシング3を地盤21に回転貫入して、支持層23のある所定深さまで貫入させる工程である。回転貫入中は、底板5がケーシング3に保持されており、回転貫入時の回転方向の動きや、上下動によっても底板5がケーシング3から外れることはない。したがって、土砂がケーシング3内に侵入することはない。
このように、ケーシング3を回転貫入させることで、無排土で地盤21に貫入させることができる。
既製杭建込み工程は、先端が支持層23まで貫入されたケーシング3内に既製杭7を建て込む工程である。
底板離脱工程は、既製杭7によって底板5をケーシング3から離脱させる工程である。具体的には、既製杭7の頭部を、図8(c)に示すように、ジャッキ25によってケーシング3に反力を取りながら押圧することにより、既製杭7を下方に押し込むことで、底板5とケーシング3下端を連結していたピン19を破壊あるいは変形させることで、底板5とケーシング3のピン19による連結を切離す。前述したように、ピン19は容易に破壊されるので、底板離脱工程におけるジャッキ25の押圧力は小さくてよい。
先端支持力確認付与工程は、底板5を離脱させた状態で既製杭7をジャッキ25によって所定の圧力で押圧して所定の先端支持力を有しているかどうかを確認すると共に杭先端に必要な先端支持力を付与する工程である。
ケーシング3で反力をとりながら、ジャッキ25によって既製杭7を設計先端支持力相当の圧力で押圧することで、ケーシング3と離脱した底板5が下方の地盤を押圧する。ジャッキ25の押圧力を図示しない圧力計で計測しながらジャッキ25を作動させ、圧力計の表示が設計先端支持力相当の圧力に達するまで押圧を行う。
ケーシング3を地盤21に回転貫入した時点ですでに先端支持力が得られていたのか、それともジャッキ25による押圧力によって地盤が底板5によって押圧されて先端支持力が得られたのかの区別は難しいので、この点は特に問題としない。
ケーシング引抜工程は、ケーシング3を貫入時と逆回転させながら地中から引抜く工程である。
ケーシング3を引く抜くことで、図8(e)に示すように、既製杭7が先端支持力を得て状態で地中に設置され、杭の施工が完了する。
3 ケーシング
5 底板
7 既製杭
9 突部
11 貫通孔(係止部)
13 係止部
15 係止片
17 貫通孔(係止片)
19 ピン
21 地盤
23 支持層
25 ジャッキ
Claims (5)
- 先端近傍に螺旋翼を備えたケーシングを用いて無排土で杭を施工する杭の施工方法であって、前記ケーシングの先端を塞ぐ底板を保持した状態で前記ケーシングを地盤に回転貫入する回転貫入工程と、前記ケーシングを所定深さまで貫入した後、ケーシング内に既製杭を建て込む既製杭建込み工程と、既製杭によって前記底板を前記ケーシングから離脱させる底板離脱工程と、底板を離脱させた状態で既製杭を設計先端支持力相当の圧力で押圧して所定の先端支持力を有しているかどうかを確認すると共に杭先端に先端支持力を付与する先端支持力確認付与工程と、前記ケーシングを引抜くケーシング引抜工程とを備えたことを特徴とする杭の施工方法。
- 前記先端支持力確認付与工程は、既製杭を設計先端支持力相当の圧力で押圧したときの底板の沈下量が底板直径の0.1倍以下であれば所定の先端支持力を有しているとすることを特徴とする請求項1記載の杭の施工方法。
- 前記先端支持力確認付与工程は、ジャッキによってケーシングに反力を取りながら所定押圧力を前記既製杭に付与することを特徴とする請求項1又は2記載の杭の施工方法。
- 前記螺旋翼の投影面積が、前記底板の面積の3倍以上になるように設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の杭の施工方法。
- 前記底板は、前記ケーシングに保持構造によって保持されており、該保持構造は、水平方向の貫通孔を有する係止部をケーシングの外周又は内周の少なくとも2箇所に設け、水平方向の貫通孔を有する係止片を前記底板の上面側の周縁の少なくとも2箇所に設け、前記係止部と前記係止片が回転方向で当接するように配置すると共に前記係止部と前記係止片の貫通孔を共に挿通するようにピンを挿入してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の杭の施工方法。
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