JP5304104B2 - ボールペン用水性インキ組成物 - Google Patents
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Description
ボール受け座の摩耗は、インキ通路のボールで隠れる部分の割合が増加することになり、インキ吐出量が減少する。摩耗が進むと完全にインキ通路が塞がれることもあり、筆記不能となることもある。また、顔料インキの顔料の沈降を抑制するためにインキを高粘度としたものなどは、インキの流動性が低いので筆記抵抗が大きくなってしまうものであった。
そこで、ボールの回転によるボール受け座の摩耗を抑制するためや、筆記抵抗を軽いものとするためなどに、インキに潤滑剤を添加することが行われている。
例えば、特許文献1には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルを用いた例が、特許文献2には、剪断減粘性インキにポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルを用いた例が、特許文献3には、剪断減粘性インキにポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルを用いた例が開示されている。
また、文献1に記載されているインキは、粘度が低いものであり、また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルは、界面活性効果が高いので、潤滑効果を高めるためにオキシエチレンの数が多いものを大量に使用しようとすると、インキの表面張力が下がり、筆跡が滲んでしまう。文献2に記載の発明に開示されているインキのように、擬塑性付与剤を使用してインキの粘度を高くして滲みにくくすることはできるが、文献1と同様に、十分な潤滑性の付与と析出による筆記しようとした初期に筆跡が形成されない状態の抑制とを両立できないものであった。
また、文献3に記載の発明では、2種類のリン酸誘導体を用いている例(実施例10では、オキシエチレンの数が1のものと6のものとを併用)があるが、オキシエチレンの数が1なので水への溶解性が劣りイオン化されにくいため金属への吸着量が少なくなるので潤滑効果は弱く、しかもペン先近傍での水の乾燥による析出の問題が発生するものである。
また上記(数1)で示される化合物と上記(数2)で示される化合物との比率は、(数1)で示される化合物の比率が1:1より大きくなった場合、金属に吸着する分子数は変わらないので、潤滑効果に差はない。但し、ペン先で水が揮散すると、(数2)で示される化合物が相対的に少なくなっているため可溶化力が弱まるのでカスレの問題は解消されない。また(数1)で示される化合物の比率が1:9より少なくなると、(数2)で示される化合物の可溶化力と相俟って、潤滑効果が激減してしまう。従って、潤滑効果及び可溶化力を考慮すると(数1)で示される化合物と(数2)で示される化合物との比率は、1:1〜1:9が適切である。
酸性染料としては、C.I.アシッドブルー1、塩基性染料としては、C.I.ベーシックブルー7、直接染料としては、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ダイレクトオレンジ8等が挙げられる。
顔料としては、従来公知の顔料を使用することが出来、具体例として、ファーネストブラック、コンタクトブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等の無機顔料、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同17、同22、同38、同41、同48:2、同48:3、同49、同50:1、同53:1、同57:1、同58:2、同60、同63:1、同63:2、同64:1、同88、同112、同122、同123、同144、同146、同149、同166、同168、同170、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同190、同194同206、同207、同209、同216、同245、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同16、同17、同22、同25、同60、同66、C.I.PIGMENT BROWN 25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同93、同94、同95、同97、同99、同108、同109、同110、同117、同120、同139、同153、同166、同167、同173C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36等の有機顔料等が挙げられる。これらは、1種もしくは2種以上混合して用いることが出来る。
多糖類の使用量は、インキ全量に対して0.10重量%以上1.00重量%以下が好ましい。0.10重量%未満では、ゲル構造が弱すぎて、顔料が沈降する場合がある。一方、1.00重量%を越えた場合、粘度が高くなり過ぎるため、筆跡の中心部が抜けやすくなる。
多糖類の分子鎖には多く水酸基があり、分子鎖同士が水素結合により強固に結合している。そのため、該多糖類は水に対する溶解性が悪くなっているので、水に対する溶解性をあげてボールペン用インキに剪断減粘性をより醸し出すためには、80℃や90℃といった高温で溶解させるか、或いは高剪断力を有する機械を用いて溶解することが有効である。但し、高剪断力すぎると分子鎖が切断され逆効果となってしまう場合がある。
具体的なものとしては、(数1)で示される化合物としてフォスファノール RB−410(4オキシエチレンオレイルエーテルリン酸)、(数2)で示される化合物としてフォスファノール RS710(9オキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸)以上東邦化学工業(株)製)が挙げられる。尚、これらリン酸誘導体はナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アミン塩などあらかじめ塩にしたものをインキに用いても、これらリン酸誘導体をインキ配合時に併用することによってインキ中で塩にして用いてもよく、その場合のアルカリの具体的な例としては水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
例えば、高剪断力を有するヘンシェルミキサー等の撹拌機に水と多糖類を入れ撹拌溶解した後、ボールミル、ビーズミル、ロールミル等の分散機により分散した顔料やその他残りの成分を入れ、さらに混合撹拌することにより容易に得られる。脱泡機による泡の除去やろ過機による粗大物のろ過等を必要に応じて行っても良い。
イオン交換水 68.5重量部
エチレングリコール 25.0重量部
プロクセルGXL(防黴剤、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ICIジャパン(株)製) 0.5重量部
ケルザンAR(三晶(株)製) 6.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、1400rpmで30分撹拌溶解後、取り出し、粘度調整剤溶液1を得た。
イオン交換水 72.5重量部
エチレングリコール 25.0重量部
プロクセルGXL 0.5重量部
ゼータシーガム(伯東(株)製) 2.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、2800rpmで30分間撹拌溶解後、取り出し、粘度調整剤溶液2を得た。
イオン交換水 73.5重量部
エチレングリコール 25.0重量部
プロクセルGXL 0.5重量部
アルカシーガム(伯東(株)製) 1.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、2800rpmで60分間撹拌溶解後、取り出し、粘度調整剤溶液3を得た。
フォスファノールRB410(上記(数1)で示される化合物、4オキシエチレンオレイルエーテルリン酸、東邦化学工業(株)製) 20.0重量部
イオン交換水 80.0重量部
これらをスリーワンモータにて攪拌しながら、20%水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加え、pH8.0±0.5に調整する。
フォスファノールRS710(上記(数2)で示される化合物、9オキシエチレンアルキルエーテルリン酸、東邦化学工業(株)製) 20.0重量部
イオン交換水 80.0重量部
これらをスリーワンモータにて攪拌しながら、20%水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加え、pH8.0±0.5に調整する。
プライサーフA212C(6オキシエチレントリデシルエーテルリン酸、第一工業製薬(株)製) 20.0重量部
イオン交換水 80.0重量部
これらをスリーワンモータにて攪拌しながら、20%水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加え、pH8.0±0.5に調整する。
フォスファノールPE510(6オキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸、東邦化学(株)製) 20.0重量部
イオン交換水 80.0重量部
これらをスリーワンモータにて攪拌しながら、20%水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加え、pH8.0±0.5に調整する。
イオン交換水 34.2重量部
プロピレングリコール 6.0重量部
グリセリン 14.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.4重量部
コートサイドS(防黴剤、武田薬品工業(株)製) 0.1重量部
TSA739(消泡剤、シリコーンエマルジョン、GE東芝シリコーン(株)製)
0.1重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液1 2.0重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液2 5.0重量部
ジョンクリルJ734(スチレン・アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー
1.0重量部
FUJI SP BLACK 8970(顔料分散体、冨士色素(株)製)
25.0重量部
ジエタノールアミン(pH調整剤) 0.2重量部
粘度調整剤溶液1 12.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、1300rpmで30分間混合撹拌し、取り出した。その後、ろ過を行い、減圧脱泡機にて脱泡して黒色のボールペン用水性インキを得た。
イオン交換水 29.7重量部
エチレングリコール 10.0重量部
グリセリン 10.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.4重量部
コートサイドS 0.1重量部
TSA739 0.1重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液1 1.0重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液2 9.0重量部
ジョンクリル450(スチレン・アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー
(株) 2.0重量部
FUJI SP RED 5653(顔料分散体、冨士色素(株)製)
25.0重量部
ジエタノールアミン 0.2重量部
粘度調整剤溶液2 12.5重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、1400rpmで60分間攪拌後、取り出した。その後、ろ過を行い、実施例1と同様に脱泡して赤色のボールペン用水性インキを得た。
イオン交換水 32.2重量部
プロピレングリコール 10.0重量部
グリセリン 10.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.4重量部
コートサイドS 0.1重量部
TSA739 0.1重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液1 3.0重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液2 3.0重量部
ジョンクリルJ775(スチレン・アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー
(株)製) 5.0重量部
FUJI SP BLUE 6474(顔料分散体、冨士色素(株)製)
18.0重量部
FUJI SP VIOLET 9602(顔料分散体、冨士色素(株)製)
2.0重量部
トリエタノールアミン 1.2重量部
粘度調整剤溶液2 15.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、1300rpmで30分間攪拌後、取り出した。その後、ろ過を行い、実施例1と同様に脱泡して青色のボールペン用水性インキを得た。
イオン交換水 28.2重量部
エチレングリコール 10.0重量部
グリセリン 10.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.4重量部
コートサイドS 0.1重量部
TSA739 0.1重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液1 2.0重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液2 10.0重量部
ジョンクリル450(スチレン・アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー
(株)製) 2.0重量部
FUJI SP BLACK 8041(顔料分散体、冨士色素(株)製)
25.0重量部
ジエタノールアミン 0.2重量部
粘度調整剤溶液3 12.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、1400rpmで60分間攪拌後、取り出した。その後、ろ過を行い、実施例1と同様に脱泡して黒色のボールペン用水性インキを得た。
イオン交換水 36.2重量部
エチレングリコール 10.0重量部
グリセリン 10.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.4重量部
コートサイドS 0.1重量部
TSA739 0.1重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液1 2.0重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液2 2.0重量部
ジョンクリル450(スチレン・アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー
(株)製) 2.0重量部
FUJI SP BLACK 8041(顔料分散体、冨士色素(株)製)
25.0重量部
ジエタノールアミン 0.2重量部
粘度調整剤溶液3 12.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、1400rpmで60分間攪拌後、取り出した。その後、ろ過を行い、実施例1と同様に脱泡して黒色のボールペン用水性インキを得た。
イオン交換水 36.7重量部
プロピレングリコール 6.0重量部
グリセリン 14.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.4重量部
コートサイドS(防黴剤、武田薬品工業(株)製) 0.1重量部
TSA739(消泡剤、シリコーンエマルジョン、GE東芝シリコーン(株)製)
0.1重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液1 2.0重量部
リン酸エステルのナトリウム塩調整液2 2.6重量部
ジョンクリルJ734(スチレン・アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー
1.0重量部
FUJI SP BLACK 8970(顔料分散体、冨士色素(株)製)
25.0重量部
ジエタノールアミン(pH調整剤) 0.2重量部
粘度調整剤溶液1 12.0重量部
これらの配合物をヘンシェルミキサーに入れ、1300rpmで30分間混合撹拌し、取り出した。その後、ろ過を行い、減圧脱泡機にて脱泡して黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液1とリン酸エステルのナトリウム塩調整液2を除き、リン酸エステルのナトリウム塩調整液3を7重量部加えた以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液1とリン酸エステルのナトリウム塩調整液2を除き、リン酸エステルのナトリウム塩調整液3を15重量部加えた以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液1とリン酸エステルのナトリウム塩調整液2を除き、リン酸エステルのナトリウム塩調整液3を0.5重量部とリン酸エステルのナトリウム塩調整液4を0.5重量部加え、その減った分イオン交換水を増やした以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液2を除き、その分イオン交換水を増やした以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液1を除き、その分イオン交換水を増やした以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液1を5重量部に増やし、リン酸エステルのナトリウム塩調整液2を4重量部に減らし、その増えた分イオン交換水を減らした以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液2を20重量部に増やし、その増えた分イオン交換水を減らした以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
実施例2において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液1を0.75重量部に減らし、その減らした分イオン交換水を増やした以外は実施例2と同様になして赤色のボールペン用水性インキを得た。
実施例1において、リン酸エステルのナトリウム塩調整液2を除き、その代わりにリン酸エステルのナトリウム塩調整液3を加えた以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用水性インキを得た。
上記作成サンプルのボール出高さを測定後、螺旋筆記試験機(精機工業研究所製)にて、筆記速度7cm/秒、筆記角度70°、筆記荷重100gの条件で、JIS P3201の筆記用紙Aにて、インキを使い切るまで筆記し、終了後、ボールの沈み量を工具顕微鏡にて測定した。また、書き出し後5mの筆跡幅をルーペにて測定した。インキが使い切る前に筆記できなくなった場合は、インキ残量を筆記前のリフィル内インキ高さに対する比で求めた。
試験用ボールペンを各6本用意し、直線で150mm筆記した後、キャップをしないで横向き状態で50℃、30%の恒温恒湿室内に1日〜5日間放置する。1日後、3日後、5日後に各々2本のサンプルを直線引きし、書き出しからの筆跡状態を確認し、インキのないカスレた長さを測定した。
Claims (1)
- 着色剤と、多糖類と、水溶性有機溶剤と、水と、下記一般式(数1)にて示されるリン酸誘導体と、下記一般式(数2)にて示されるリン酸誘導体とを少なくとも含有し、(数1)、(数2)にて示されるリン酸誘導体の重量比率が1:1〜1:9であるボールペン用水性インキ組成物。
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