JP5302592B2 - ワークピースの肥大加工方法 - Google Patents
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Description
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とすることは、軸部材等のワークピースにその内部ひずみエネルギを増大させるべく加圧力を軸線方向に加え、この増大した内部ひずみエネルギを積極的に利用することで、ワークピースに座屈をもたらすことなく、ワークピースの一部に安定して肥大部を加工でき、また、内部ひずみエネルギによる肥大部の形成に際して、軸線方向と交差する方向にワークピースに加えられる交番負荷も少なくて済み、更には、肥大加工中のワークピースの疲労損傷を確実に回避できるワークピースの肥大加工方法を提供することにある。
従って、ワークピースに対する上述の加圧力及び交番負荷の付与が維持されていれば、増大した内部ひずみエネルギを利用したワークピースの肥大変形、いわゆるメカニカルラチェット現象に基づくワークピースの肥大変形が逐次的且つ確実に進行し、この結果、ワークピースに所望の肥大部が形成される。
また、ワークピース片側部位の強制変位は上述の回転曲げ以外に、ワークピース片側部位の首振り旋回運動(請求項7)や振り子運動(請求項8)によっても発生可能であり、これら首振り旋回運動及び振り子運動はワークピースの軸線上に中心を有する。また、ワークピース片側部位の強制変位は、ワークピースの軸線を中心とした交番捻り運動(請求項9)によっても発生可能であり、何れの場合にもワークピースの横断面内に交番剪断エネルギを加えることができる。
更にまた、肥大予定域は外形拘束部材内にて肥大変形されてもよく(請求項13)、この場合、外形拘束部材は肥大予定域を肥大変形させた肥大部の外周形状を決定する内周面形状を有する(請求項14)。具体的には、外形拘束部材は肥大部を傘歯車に形成する(請求項15)。
図1中、ワークピース(以下、単にワークと称する)Wは塑性材料、具体的には金属材料からなる軸部材で示されており、本発明の肥大加工方法は、ワークWに対し、軸方向に加圧力、即ち、初期降伏強度以上の圧縮応力を作用させて、内部ひずみエネルギを増大させるとともに、ワークWの軸線と交差する横断方向にはその弾性限度内の交番負荷を加えることで実施される。
上述の交番負荷はワークWの横断方向に繰り返して加えられることから、ワークWの横断面内に繰り返し応力が作用する。このような繰り返し応力によって、加圧力の付加により増大したワークWの内部ひずみエネルギはワークWに塑性流動をもたらす。
肥大加工機は基準線Aを有し、この基準線A上に配置された一対のスリーブホルダ1,2を備えている。これらスリーブホルダ1,2は基準線Aに沿って互いに離間し、一方のスリーブホルダ1は基準線Aの回りに回転可能であるとともに、基準線A上の1点を中心として傾動可能である。より詳しくは、スリーブホルダ1はその傾動角θ及び前記1点、即ち、傾動中心Oの位置をそれぞれ制御可能でもある。
スリーブホルダ1,2はスリーブ孔をそれぞれ有し、これらスリーブ孔内にワークWの両端部をそれぞれ受け入れ可能となっている。受け入れられたワークWの両端は対応する側のスリーブホルダ1,2内の受け部材4,5に受け止められ、これにより、ワークWは受け部材4,5間に挟み込まれる。ここで、本実施例の場合、ワークWは金属材料からなる中実の軸部材である。
このような交番剪断力はワークWの横断面内に繰り返し剪断応力を加え、この繰り返し剪断応力によって、前述の加圧力により増大されたワークWの内部ひずみエネルギはワークW内にその軸芯からの材料の塑性流動を誘発させる。従って、ワークWに対する加圧力及び交番剪断力の付与が維持されていれば、スリーブホルダ1,2間の非拘束状態にあるワークWの肥大予定域での塑性流動が増大した内部ひずみエネルギによって促進される。つまり、肥大予定域にメカニカルラチェット現象に基づく肥大変形がもたらされ、図2(b)に示すように、肥大予定域は径方向外側に向けて肥大変形する。なお、このような肥大変形の逐次的な進行に伴い、スリーブホルダ2は加圧力を受け続けていることで、スリーブホルダ1に向けて移動する。
上述の肥大加工の過程にて、ワークWの曲げ、即ち、スリーブホルダ1の傾動角θや、ワークWの曲げ中心Oの位置が制御される。これらの制御は、ワークWの曲げをその弾性限度内に確実に抑制するばかりでなく、ワークWの横断面内での繰り返し剪断応力の大きさや分布を適性化するうえで有効となり、肥大部Hのより安定した形成を可能とする。
図3(a)は、ワークWの圧縮応力及び傾動角を所定の値に設定した状態、ワークWの肥大加工が実施されたとき、ワークWの回転回数Nが増加するに連れて、ワークWの肥大変形が進行することを表し、図3(a)中、DN/D0は前述した肥大部Hの肥大率を示す。即ち、D0,DNはワークW本来の外径、肥大部Hの外径をそれぞれ示す。
ε0:ワークWの外径が2倍に肥大したときの平均軸方向歪み
N0:回転時定数
N0 *:N0の曲げ角度依存係数
σC:ワークWの軸線方向の圧縮応力
θ:傾動角
α1:N0の傾動角依存指数
α2:N0の加圧応力依存指数
一方、図3(b)は、図3(a)の結果をワークWの回転回数をパラメータとして回転時定数N0と肥大率DN/D0との関係に置き換えて示したものであり、図3(c)は、圧縮応力σ CをパラメータとしたワークWの傾動角θと回転時定数N0との関係をそれぞれ示す。
それ故、前述した実施例での場合のように、ワークWの軸方向の圧縮応力をその初期降伏強度以上に大きくする一方、ワークWの傾動角θに関してはワークWにその弾性限度内の変形が生じる程度に制限することで、ワークWの肥大部Hを迅速且つ有効に形成可能となる。
図4(a)〜(d)は、第2実施例の肥大加工方法を実施するための肥大加工機を概略的に示す。
保持部材6とスリーブホルダ7との間にてワークWを保持するにあたり、スリーブホルダ7は回転体8と同心に位置付けられている。この状態で、ワークWの両端は保持部材6及びスリーブホルダ7にそれぞれ保持される。この後、回転体8の傾動を伴いながら回転体8に対してスリーブホルダ7を所定の偏心量Eだけ偏心させると、図4(d)に示されるように、ワークWの他端は回転体8と同心の位置Poから偏心位置Peに移動し、これに伴い、図4(a)中、破線で示すようにワークWの片側部位に曲げが加えられる。ここでのワークWの曲げは第1実施例の場合同様に、その弾性限度内の変位内に抑制されることは言うまでもない。
このような首振り旋回運動は、偏心量Eに応じてワークWの片側部位を繰り返して曲げることから、ワークWの横断面内に繰り返し剪断力、即ち、交番剪断応力を発生させる。それ故、ワークWの肥大予定域は前述した第1実施例の場合と同様な原理に基づいて肥大変形し、これにより、肥大予定域に肥大部が形成される。
図5(a),(b)は、第3実施例の肥大加工方法を実施するための肥大加工機を概略的に示す。
それ故、スリーブホルダ11,12はワークWの両端部を受け入れ可能とする矩形の孔をそれぞれ有する。そして、スリーブホルダ11,12は基準線Aの回りに回転されるのではなく、スリーブホルダ11のみが基準線Aを中心として交番傾動可能となっている。このようなスリーブホルダ11の交番傾動は、ワークWの片側部位にその軸線を中心としてワークWの板面と直交する方向の振り子運動を付与し、この振り子運動がワークWの片側部位を強制変位させる。
図6(a),(b)は、第4実施例の肥大加工方法を実施するための肥大加工機を概略的に示す。
より詳しくは、本実施例のワークWも中実の軸部材からなり、その両端がスリーブホルダ21、22内の受け部材23,24の内端に当接した状態で、ワークWは受け部材23,24間に挟持されている。なお、スリーブホルダ21内にはスリーブ状のスペーサ25が配置されており、このスペーサ25は受け部材23及びワークWの片側部位をスリーブホルダ21と協働して囲繞している。
更に、図8に示されているように受け部材23,24の内端面には複数の歯31が設けられており、これらの歯31は対応する内端面にて、その周方向に等間隔を存して配置されている。
上述した第1〜第4実施例では何れもワークWの片側部位に強制変位を与えることで、ワークWに単位体積当たりの交番剪断力を発生させているが、第5実施例の肥大加工方法では、ワークWの片側部位を強制変位させる代わりにワークWの片側部位に交番剪断力としての交番衝撃トルクを加えることで、メカニカルラチェット現象に基づきワークWの肥大予定域を肥大変形させる。
更に、図10に示される第6実施例の肥大加工方法を実施するための肥大加工機は、振動発生器32を備えており、この振動発生器32はワークWの横断面に曲げ又は捻りの振動を付与する。このような曲げ又は捻りの振動でも、ワークW内に交番的な捻り剪断応力波(交番剪断応力)を発生させることができ、前述の実施例の場合と同様にメカニカルラチェット現象に基づきワークWへの肥大部の形成が可能となる。
一方、図12に示される第8実施例の肥大加工方法を実施するための肥大加工機は外形拘束部材35を更に備えている点でのみ、第1〜第6実施例の加工機とは異なる。
更に、外形拘束部材35は肥大部と一体に結合されてもよく、この場合、外形拘束部材35とワークWとの結合は肥大部を介した肥大ばめとなる。
本発明は上述の第1〜第8実施例に制約されるものではない。
また、前述の各実施例では、ワークの圧縮応力をその軸線方向の加圧力により得ているが、圧縮応力はワークをその径方向に加圧しても得ることができる。具体的には、この場合のワークは例えば管部材であって、この管部材のワークにはその外周面の一部にラック歯を形成する雌型が押圧されることで、圧縮応力が加えられる。この状態で、ワークに前述したような交番捻り運動、つまり、交番剪断応力が加えられると、ワークは雌型内に肥大変形し、雌型によりワークの一部にラックが成形される。
更にまた、ワークWは必ずしも金属材料に限らず、セラミック焼結体等の非金属材料からなるものであってもよく、要は塑性変形可能であればよい。
4,5 受け部材
6 保持部材
7 スリーブホルダ
8 回転体
9 溝
10 送りねじ
11,12 スリーブホルダ
21,22 スリーブホルダ
23,24 受け部材
25 スペーサ
26 駆動体
27 突起
28 揺動リンク
29 連接ロッド
30 モータ
31 歯
32 振動発生器
33 超音波発生器
34 閉塞板
35 外形拘束部材
A 基準線
H 肥大部
W ワーク(ワークピース)
Claims (16)
- 軸線を有し且つ塑性材料からなるワークピースの外面に非拘束状態の肥大予定域を設けて前記ワークピースを保持し、
前記ワークピースに対して、その内部ひずみエネルギを増大させるべく、初期降伏強度以上の圧縮応力が作用する加圧力を加えるとともに、前記軸線と交差する横断方向に前記ワークピースの弾性限度内の交番負荷を加え、
前記ワークピースの増大した前記内部ひずみエネルギを利用して前記肥大予定域に塑性的な肥大変形を発生させることを特徴とするワークピースの肥大加工方法。 - 前記加圧力は、前記ワークピースの軸線方向に加えられることを特徴とする請求項1に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記交番負荷は、前記ワークピースの横断面内に単位体積当たり所定の交番剪断力として加えられることを特徴とする請求項1又は2に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記交番剪断力は、前記軸線方向でみて前記肥大予定域の片側となるワークピース片側部位を強制変位させることで、繰り返し剪断応力を発生させることを特徴とする請求項3に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記ワークピース片側部位の強制変位は、前記ワークピースをその軸線回りに回転させる回転と、前記軸線上に曲げ中心を有する前記ワークピース片側部位の曲げとにより発生されることを特徴とする請求項4に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記肥大予定域の肥大変形過程にて、前記交番剪断力の過度な付与を阻止すべく前記ワークピース片側部位の曲げ角及び曲げ中心の位置を制御することを特徴とする請求項5に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記ワークピース片側部位の強制変位は前記ワークピース片側部位の首振り旋回運動によって発生され、この首振り旋回運動は前記軸線上に中心を有することを特徴とする請求項4に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記ワークピース片側部位の強制変位は前記ワークピース片側部位の振り子運動によって発生され、この振り子運動は前記軸線上に中心を有することを特徴とする請求項4に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記ワークピース片側部位の強制変位は、前記軸線を中心とした前記ワークピース片側部位の交番捻り運動によって発生されることを特徴とする請求項4に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記交番剪断力は、前記ワークピースに交番衝撃トルクを付与して発生されることを特徴とする請求項3に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記交番剪断力は、前記ワークピースに曲げ又は捻りの振動を付与して発生されることを特徴とする請求項3に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記ワークピースが中空の管部材である場合、前記交番負荷は、前記ワークピースの一端を閉塞した状態で、前記ワークピースの他端開口から前記ワークピース内に導入した音響エネルギにより発生されることを特徴とする請求項1又は2に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記肥大予定域は外形拘束部材内にて肥大変形されることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記外形拘束部材は、前記肥大予定域を肥大変形させた肥大部の外周形状を決定する内周面形状を有することを特徴とする請求項13に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記外形拘束部材は、肥大部を傘歯車に形成することを特徴とする請求項14に記載のワークピースの肥大加工方法。
- 前記外形拘束部材は、前記肥大変形予定部を肥大変形させた肥大部と一体化されることを特徴とする請求項13に記載のワークピースの肥大加工方法。
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