JP5300751B2 - 路盤下の空洞診断方法および路盤の補修方法 - Google Patents

路盤下の空洞診断方法および路盤の補修方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート製の路盤下に生じる空洞を発見するため路盤下の空洞診断方法および路盤の補修方法に関するものである。
従来、コンクリート製の構造物については、目視で外観上発見することのできる欠陥や劣化以外に、内部に存在する欠陥等についても発見する必要があり、また、このような欠陥を数値化することが要求されている。
このようなコンクリート構造物の診断方法としては、重錘によって構造物の表面に垂直に打撃し、この打撃により生じる振動をセンサ等で検知し、フーリエ解析による固有振動数の変化によって、構造物の健全度を評価する方法がある(特許文献1)。
特開2007−51873号公報
しかし、特許文献1記載の方法は、重錘を用いるため、打撃部位ごとに重錘およびこの打撃装置を移動させて設置する必要があり作業が困難であるという問題がる。
一方、例えばコンクリート製の路盤のように、路盤である構造体自体に欠陥等が生じていなくても、路盤下の地盤と路盤との間に空洞が生じてしまうと、路盤の沈下等の恐れがある。したがって、このような路盤下の空洞についての診断方法が望まれる。しかしながら、路盤下の空洞については、コンクリート構造体自体の欠陥に対して発見が困難である場合がある。
すなわち、通常、健全度の評価に用いられる固有振動数は、低次(例えば1次)の振動モードの振動強度が低いことにより、正確な周波数を検出することが困難であるため、高次(例えば2次以降)の振動モードの固有振動数が用いられる。しかし、高次の振動モードは、測定条件等の影響を受けやすいため、路盤下の空洞等を発見するにためには、より高精度な診断手法が必要である。このため、従来は、路盤に穴を開けて直接空洞の有無を確認する方法が採用されており、非破壊でより簡易に空洞の有無を診断可能な方法が望まれている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業が容易であり、かつ、より高精度な診断が可能な、路盤下の空洞診断方法等を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、第1の発明は、上方に軌道が設けられ、鉄筋コンクリートと前記鉄筋コンクリート上に設けられるスラブとからなる路盤下の空洞診断方法であって、前記路盤の上面であって、前記軌道の略中央に起振器を設置し、前記起振器から所定距離離れた位置に加速度計を設置し、前記起振器の設置面に垂直な方向に前記起振器により振動を発振し、発振された発振振動情報と、加速度計により受振した受振振動情報とを取得し、取得された前記発振振動情報および前記受振振動情報からクロススペクトルを算定し、クロススペクトルの実部と虚部とを特定して周波数応答関数の位相特性を算出し、前記位相特性から測定部における測定固有振動数を特定し、あらかじめ得られた無空洞状態における標準固有振動数と前記測定固有振動数とから、前記路盤の下の空洞を診断することを特徴とする路盤下の空洞診断方法である。
前記測定固有振動数は、最も周波数の小さい1次モードの固有振動数であることが望ましい。
前記鉄筋コンクリートの一部には上方に凸部が形成され、前記スラブの上面と前記凸部の上面とが略一致するように、前記凸部の周囲は前記スラブにより埋設されており、前記起振器は、前記凸部の上面に設置され、前記加速度計は、前記スラブの側方に露出した、前記鉄筋コンクリートに設置されてもよい。
第1の発明によれば、路盤の診断面に対して垂直に起振が可能な起振器が用いられるため、確実に診断面に垂直な方向で、かつ、正負方向に振動を付与することができる。このため、重錘等を用いる必要がない。
また、クロススペクトルから周波数応答関数の位相特性を算出し、位相特性から路盤の固有振動数を特定するため、低次(例えば1次)モードの固有振動数を、正確に得ることができる。したがって、測定条件などの影響を受けにくく、再現性が高く、路盤下の空洞の有無などの情報を確実に得ることができる。
第2の発明は、上方に軌道が設けられ、鉄筋コンクリートと前記鉄筋コンクリート上に設けられるスラブとからなる路盤の補修方法であって、前記路盤の上面であって、前記軌道の略中央に起振器を設置し、前記起振器から所定距離離れた位置に加速度計を設置し、前記路盤の面に垂直な方向に前記起振器により振動を発振し、発振された発振振動情報と、加速度計により受振した受振振動情報とを取得し、取得された前記発振振動情報および前記受振振動情報からクロススペクトルを算定し、クロススペクトルの実部と虚部とを特定して周波数応答関数の位相特性を算出し、前記位相特性から測定部における測定固有振動数を特定し、あらかじめ得られた無空洞状態における標準固有振動数と前記測定固有振動数とから、前記路盤の下の空洞の有無を診断し、路盤下に空洞があると診断された部位の前記路盤を削孔して、前記路盤の下にコンクリートを充填することを特徴とする路盤の補修方法である。
第2の発明によれば、低次モードの固有振動数を得ることができるため、再現性が高く、正確なデータを得ることができるため、これまで測定が困難であった路盤下の空洞の有無についても確実に診断を行うことができる。
本発明によれば、作業が容易であり、かつ、より高精度な診断が可能な、路盤下の空洞診断方法等を提供することができる。
路盤1下の空洞の有無についての診断測定状態を示す図で、(a)は立面図、(b)は平面図。 診断装置17のハードウェア構成を示す図。 処理装置15のハードウェア構成を示す図。 解析装置13のハードウェア構成を示す図。 解析装置13の構成を示す図。 空洞有無診断のフロー図。 周波数応答関数の振幅特性と位相特性を示す図で(a)は振幅特性、(b)は位相特性を示す図。 路盤下の空洞の補修方法を示す図。 路盤1’下の空洞の有無についての診断測定状態を示す図で、(a)は立面図、(b)は平面図。
以下、本発明の実施の形態にかかる路盤下の空洞診断方法等について説明する。図1は、路盤1下方の空洞11の有無を診断する状態を示す図で、図1(a)は断面図(図1(b)のS−S線断面図)、図1(b)は平面図である。
路盤1は、地面2上に設けられる鉄筋コンクリート5、鉄筋コンクリート5上に設けられるスラブ6等から構成され、スラブ6上には軌道3が配設される。コンクリート製のスラブ6は、鉄筋コンクリート5の幅よりも幅が狭く、軌道3が配設可能な幅である。したがって、鉄筋コンクリート5とスラブ6とが階段状に配置され、スラブ6の両側方には、鉄筋コンクリート5が露出する。
路盤1を構成するスラブ6の上面(軌道3の中央近傍)には起振器9が設置される。なお、起振器9とスラブ6上面との間には、所定重量のプレート等を設置してもよい。起振器9は、設置面(スラブ6の上面)に対して垂直に加振を行うことのできる起振器であれば、通常用いられる起振器、加振器を用いることができ、例えば、永久磁石と可動コイルとの組み合わせによるものを用いることができる。なお、起振器9は、1Hzから300Hz程度までの加振能力を有することが望ましく、さらに望ましくは1000Hzまで測定可能であるものが望ましい。
起振器9が設置された部位から、所定距離離れた部位には、複数の加速度計7が設置される。加速度計7は、一般的な加速度計でよく、起振器9により発振され、路盤1(スラブ6および鉄筋コンクリート5)を伝達した振動を受振可能であれば良い。なお、加速度計7は、例えば、起振器9が設置されたスラブ6の位置から軌道3方向において所定距離をあけたスラブ6の上面、および、起振器9が設置された位置の軌道3とは垂直な方向において、スラブ6の側方に露出した鉄筋コンクリート5の上面に設置される。なお、スラブ6および鉄筋コンクリート5が複数に分割して形成される場合には、起振器9および加速度計7が互いに分割された構造体にまたがらないように設置されることが望ましい。
図1(b)に示すように、複数の加速度計7は処理装置15と接続される(図1(a)においては、処理装置、解析装置等は図示を省略する)。処理装置15は、さらに解析装置13と接続される。なお、起振器9は、図示を省略した制御装置により制御され、解析装置13と接続される。
図1(a)に示すように、鉄筋コンクリート5と地面2との間には空洞11が形成される。空洞11は、路盤1等の設置後に地面の沈下や軌道上を走行する列車等の振動により形成される。通常、空洞11が存在しない場合には、鉄筋コンクリート5は、下方より地面2により支持される。すなわち、例えば、地面2をばねに置き換えた弾性床上の梁理論等によれば、鉄筋コンクリート5は下方から地面2により支持された状態となる。これに対し、鉄筋コンクリート5の下方の一部に空洞11が形成されると、この部分に対しては地面から支持されず、空洞11の周縁部において、地面2から支持されることとなる。したがって、空洞11の有無によって、路盤1の支持状態が変化するため、鉄筋コンクリート5(路盤1)の変形モード及び固有振動数が変化する。
図2は、本発明にかかる路盤下の空洞を診断する診断装置17を示すハードウェア構成図である。処理装置15は、加速度計7により得られた受振振動を増幅し、デジタル化する部位である。解析装置13は、得られた情報に基づいて、各種の計算を行い、情報処理を行う部位である。なお、図示を省略した制御装置は、起振器9の起振条件の設定や、起振開始および停止等の起振器9の制御を行うものである。
起振器9により発振された振動は、路盤1(鉄筋コンクリート5およびスラブ6)に伝達される。路盤1内を伝播した振動は、加速度計7により受振される。加速度計7により受振された振動情報は、処理装置によって増幅され、デジタル化される。処理された受振振動情報は解析装置13に送られる。一方、起振器9により発振された振動情報は、必要に応じて処理が施され、デジタル情報として解析装置13に送られる。解析装置13は、得られた発振振動情報と受振振動情報とから対象とする部位の固有振動数を算出し、空洞の有無を診断する。
次に、処理装置15のハードウェア構成を説明する。図3は、処理装置15の構成図である。処理装置15は、アンプ、A/D変換機および通信インタフェースからなる。加速度計7より送られる測定信号は、アンプにより増幅され、A/D変換機によりデジタル化される。デジタルデータに変換された測定データは、通信インタフェースを介してデータ解析装置13に送られる。
次に、解析装置13のハードウェア構成を説明する。図4は、解析装置13を実現するコンピュータのハードウェア構成図である。解析装置13は、制御部21、記憶部23、メディア入出力部25、通信制御部27、入力部29、表示部31、周辺機器I/F部33等が、バス35を介して接続される。
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部23、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス35を介して接続された各装置を駆動制御する。なお、制御部21によって起振器9の振動の加振力、変位、速度、加速度、周波数などを制御してもよい。
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部23、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部21が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
記憶部23は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部21が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部21により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
メディア入出力部25(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
通信制御部27は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間等の通信を媒介する通信インタフェースであり、起振器9、処理装置15等との通信制御等を行う。
入力部29は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部29を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
表示部31は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
周辺機器I/F(インタフェース)部33は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部33を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部33は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
バス35は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
次に解析装置13のソフトウェア構成を説明する。図5は、解析装置13の構成を示す図である。解析装置13は、振動情報取得手段41、クロススペクトル算定手段42、位相特性算出手段43、固有振動数特定手段44、標準固有振動数記憶手段46、比較手段45、空洞有無判定手段47を有する。
振動情報取得手段41は、処理装置15によって処理された測定データ(受振振動情報)を解析装置13に読み込む。なお、複数の加速度計7それぞれの情報が別々に取得される。また、振動情報取得手段41は、起振器9によって発振された振動データ(発振振動情報)も解析装置13に読み込む。
クロススペクトル算定手段42は、収集された発振振動データと、受振振動データに基づいて、クロススペクトルを算定する。なお、発振側のデータx(t)、受振したデータz(t)のフーリエ変換をX(f)、Z(f)とし、X(f)の共役複素数をX(f)とすると、クロススペクトルWXZ(f)は式(1)で表わされる。
Figure 0005300751
ここで、周波数応答関数の算定では、発振側のデータx、受振したデータzとして、xとzのクロススペクトルを式(2)のようにおくことができる。なお、式(2)中、Coは実部、Quは虚部である。
Figure 0005300751
位相特性算出手段43は、周波数応答関数を算定し、周波数応答関数について位相特性を算出する。前述の系における周波数応答関数H(f)の振幅特性と位相特性は、それぞれ、式(3)、式(4)のように求められる。なお、本発明においては、位相特性(式(4))が用いられて以後の処理が行われる。
Figure 0005300751
Figure 0005300751
固有振動数特定手段44は、得られた位相特性から固有振動数を特定する。位相特性においては、±90度になる周波数が固有振動数となる。したがって、最も小さな周波数において±90度になる周波数が、一次モードの固有振動数となる。本発明では、一次モードの固有振動数を、測定固有振動数として特定する。
標準固有振動数記憶手段46は、あらかじめ求められた健全状態(空洞がない状態)における固有振動数(これを標準固有振動数と称する)が記憶されている。標準固有振動数は、例えば、施工直後の状態であらかじめ、同様の手順で測定して求めてもよく、または、シミュレーション等により計算により求められた数値を用いてもよい。
比較手段45は、測定された固有振動数と標準固有振動数とを比較する。比較は、例えば、測定固有振動数を標準固有振動数で除して、固有振動数の低下割合を算出してもよい。また、単純に絶対値同士を比較して差を求めてもよい。
空洞有無判定手段47は、比較手段で比較された結果に基づいて、空洞の有無を判定する。たとえば、あらかじめ設定された基準値と、比較手段で比較された結果を比較し、基準値を超えた場合(前述した固有振動数の低下割合であれば、基準値を下回った場合、固有振動数の差であれば、基準値以上の差となった場合)に空洞があると判定する。
次に、本発明にかかる診断装置17の処理の流れを説明する。図6は、空洞診断処理の流れを示すフローチャートである。
まず、起振器9の起振条件が設定される(ステップ101)。起振条件の設定は、制御装置(制御部)等で行ってもよく、あらかじめ設定され記憶された起振条件を読み出して実行してもよい。次いで、設定された起振条件によって、起振器9が駆動され、振動が発振される(ステップ102)。
次に、加速度計7により、被検査体である構造物(路盤1)の振動データ(受振振動情報)を検出する(ステップ103)。次に、処理装置15によって測定データが処理される(ステップ104)。測定データの処理は、測定データを増幅するとともにデジタル変換される。処理された測定データは、解析装置13に送信される。
次に、解析装置15によって処理された測定データおよび起振器9により発振された発振データが、解析装置13の振動情報取得手段により取得される(ステップ105)。さらに、得られた振動情報から、クロススペクトル算定手段によりクロススペクトルが算定される(ステップ106)。得られたクロススペクトルより、位相特性算出手段により位相特性が算出され(ステップ107)、固有振動特定手段により固有振動数が特定される(ステップ108)。
次に、標準固有振動数記憶手段より標準固有振動数が取得され(ステップ109)、測定固有振動数を標準固有振動数で除したものが、あらかじめ設定された基準値と比較される(ステップ110)。測定固有振動数を標準固有振動数で除したものが、基準値以上であれば、当該構造物は健全(空洞がない)であると診断される(ステップ111)。一方、測定固有振動数を標準固有振動数で除したものが、基準値を下回ると、測定部下方に空洞があると判定される(ステップ112)。以上により、被検査体下方の空洞有無が診断される。
図7は、周波数応答特性関数の振幅特性と位相特性の例を表す図である。図7(a)に示すように、振幅特性は、横軸に振動数、縦軸に振幅として表わされる。図7(a)の事例では、同一対象物に対し、わずかに起振条件を変更した場合における全3回(再現性)のそれぞれの振幅特性を示す図である。図7(b)より明らかなように、全3回において、ピークと思われる振動数は、130.1〜137.1Hzとばらつきが確認された。
これに対し、図7(b)は、同様の情報から得られた位相特性を示す図である。位相特性は、横軸に振動数、縦軸に位相角として得ることができる。前述の通り、位相特性においては、±90度における振動数が固有振動数となる。図7(b)においては、A部(36.1Hz)が一次モード(一番振動数の低い)の固有振動数となる。一次モードの固有振動数は、測定条件等による影響をほとんど受けず、極めて高い再現性を示す。一方、二次モードの固有振動数(B部)は、振幅特性で得られたと同様に、測定回数によりばらつきが確認された。すなわち、測定値の再現性や正確性は一次モードの固有振動数を用いることが望ましい。
また、振幅特性(図7(a))においては、位相特性で得られる一次モードの固有振動数(36.1Hz)は明確に認識することができない。したがって、一次モードの固有振動数を得るためには、位相特性により固有振動数を特定する必要がある。
次に、路盤1の補修方法について説明する。図8は路盤1の補修工程を示す図である。まず、前述の方法で、路盤1の各部において、空洞の有無を診断する。次いで、図8(a)に示すように、空洞があると判定された部位の路盤1(スラブ6および鉄筋コンクリート5)に孔18を設ける。
次に、図8(b)に示すように、孔18より、路盤1下方の空洞11にコンクリート19を充填する。以上により、空洞11がコンクリートにより埋め戻され、路盤1の沈下や損傷等を防ぐことができる。なお、空洞11の診断は、軌道上を走行する第1次診断手段である、診断車両により振動測定等を行い、空洞等の有無を簡易に診断し、診断車両で異常が発見された部位のみ、第2次診断手段である本発明にかかる診断方法を用いてもよい。この場合、第1次診断手段により異常が認められた部位では、起振器9および加速度計7等を、常時設置しておき、継続してモニタリングしてもよい。
本実施の形態にかかる路盤1下方の空洞有無診断方法によれば、振動の発振に起振器9が用いられるため、確実に路盤1の設置面に垂直な方向に振動を発振することができ、また、機器の設置等の作業も容易である。また、起振器9を用いることで、重錘では与えることができない高周波の振動も与えることができるため、より確実に振動情報を得ることができる。
また、クロススペクトルを用い、周波数応答関数の位相特性に注目し、位相特性から各測定部における固有振動数を特定するため、一次モードの固有振動数を確実に得ることができる。このため、再現性に優れ、正確な固有振動数を得ることができ、路盤下の空洞の有無を確実に判定することができる。したがって、空洞部を確実に補修することができ、路盤1の沈下等を防止することができる。
次に、第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態にかかる路盤1’の空洞診断状況を示す図であり、図9(a)は断面図(図9(b)のT−T線断面図)、図9(b)は平面図である。なお、以下の説明において、図1で示した構成と同一の機能を奏する構成については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
路盤1’は、鉄筋コンクリート5の一部に、上方に突出する凸部50が形成される。スラブ6は鉄筋コンクリート5上に設置され、凸部50の周囲を覆うように形成される。すなわち、凸部50とスラブ6とは略同一高さであり、スラブ6の上面と凸部50の上面とは略同一面となる。
凸部50は、軌道3の略中央に位置し、軌道3の略中央に露出する。起振器9は凸部50の上面に設置される。一方、加速度計7は、図1と同様に設置してもよいが、鉄筋コンクリート5上に設置することが望ましい。すなわち、加速度計7は、スラブ6の両側方に露出した鉄筋コンクリート5の上面に設置することが望ましい。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、起振器9は直接鉄筋コンクリート5に振動を発振することができ、また、加速度計7は鉄筋コンクリート5内部を伝播した振動を直接受振することができる。このため、より正確な振動情報を得ることができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本発明では、路盤下の空洞の有無のみを診断したが、対象となる路盤1の構造に対し、空洞が生じた場合の固有振動数等の変化と、構造体である路盤1自体の健全度の悪化(クラック等の発の生)が生じた場合の固有振動数の変化等のデータを予め取得し、本発明の方法により診断を行い、診断結果に基づいて、空洞の有無と構造体自体の健全度を同時に判定してもよい。空洞が生じた場合の固有振動数や構造体の健全度の悪化が生じた場合の固有振動数は、あらかじめ試験体等を作成して計測してもよく、シミュレーション等を用いて算出しておいてもよい。
1、1’………路盤
2………地面
3………軌道
5………鉄筋コンクリート
6………スラブ
7………加速度計
9………起振器
11………空洞
13………解析装置
15………処理装置
17………診断装置
18………孔
19………コンクリート
50………凸部

Claims (4)

  1. 上方に軌道が設けられ、鉄筋コンクリートと前記鉄筋コンクリート上に設けられるスラブとからなる路盤下の空洞診断方法であって、
    前記路盤の上面であって、前記軌道の略中央に起振器を設置し、前記起振器から所定距離離れた位置に加速度計を設置し、
    前記起振器の設置面に垂直な方向に前記起振器により振動を発振し、発振された発振振動情報と、加速度計により受振した受振振動情報とを取得し、
    取得された前記発振振動情報および前記受振振動情報からクロススペクトルを算定し、クロススペクトルの実部と虚部とを特定して周波数応答関数の位相特性を算出し、
    前記位相特性から測定部における測定固有振動数を特定し、
    あらかじめ得られた無空洞状態における標準固有振動数と前記測定固有振動数とから、前記路盤の下の空洞を診断することを特徴とする路盤下の空洞診断方法。
  2. 前記測定固有振動数は、最も低い周波数である1次モードの固有振動数であることを特徴とする請求項1記載の路盤下の空洞診断方法。
  3. 前記鉄筋コンクリートの一部には上方に凸部が形成され、前記スラブの上面と前記凸部の上面とが略一致するように、前記凸部の周囲は前記スラブにより埋設されており、前記起振器は、前記凸部の上面に設置され、前記加速度計は、前記スラブの側方に露出した、前記鉄筋コンクリートに設置されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の路盤下の空洞診断方法。
  4. 上方に軌道が設けられ、鉄筋コンクリートと前記鉄筋コンクリート上に設けられるスラブとからなる路盤の補修方法であって、
    前記路盤の上面であって、前記軌道の略中央に起振器を設置し、前記起振器から所定距離離れた位置に加速度計を設置し、
    前記路盤の面に垂直な方向に前記起振器により振動を発振し、発振された発振振動情報と、加速度計により受振した受振振動情報とを取得し、
    取得された前記発振振動情報および前記受振振動情報からクロススペクトルを算定し、クロススペクトルの実部と虚部とを特定して周波数応答関数の位相特性を算出し、
    前記位相特性から測定部における測定固有振動数を特定し、
    あらかじめ得られた無空洞状態における標準固有振動数と前記測定固有振動数とから、前記路盤の下の空洞の有無を診断し、
    路盤下に空洞があると診断された部位の前記路盤を削孔して、前記路盤の下にコンクリートを充填することを特徴とする路盤の補修方法。
JP2010009717A 2010-01-20 2010-01-20 路盤下の空洞診断方法および路盤の補修方法 Expired - Fee Related JP5300751B2 (ja)

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