JP5300319B2 - 距離継電装置 - Google Patents

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Description

本発明は、距離継電装置に関し、特に、平衡2回線送電線の電源端側に設置するのに好適な距離継電装置に関する。
平衡2回線送電線の保護のために、3段階距離リレー方式が用いられている。3段階距離リレー方式では、短絡距離継電装置(DZS)は、たとえば、保護区間送電線である自回線の80%までの第1の保護区間(短絡距離継電装置の1段動作域A1)の短絡事故に対しては瞬時(第1の時限協調時間ST1=0s)に遮断器を遮断するように整定され、自回線の120%までの第2の保護区間(短絡距離継電装置の2段動作域A2)の短絡事故に対しては第2の時限協調時間ST2(たとえば、400ms)経過後に遮断器を遮断するように整定され、自回線の300%までの第3の保護区間(短絡距離継電装置の3段動作域A3)の短絡事故に対しては第3の時限協調時間ST3(たとえば、1.5s)経過後に遮断器を遮断するように整定されることにより、次区間送電線保護用の短絡距離継電装置との距離整定および時間整定の協調を図っている。
このような3段階距離リレー方式において使用される短絡距離継電装置の動作について、図7を参照して説明する。
電源1から電力を供給される母線から分岐された第1の送電線1L(以下、「自回線1L」と称する。)および第2の送電線2L(以下、「他回線2L」と称する。)の電源端側(母線側)には、短絡距離継電装置(以下、「第1および第2の電源端距離継電装置1101,1102」と称する。)がそれぞれ設置されている。また、自回線1Lおよび他回線2Lの対向端側(母線と反対側)にも、短絡距離継電装置(以下、「第1および第2の対向端距離継電装置1201,1202」と称する。)がそれぞれ設置されている。
第1の電源端距離継電装置1101は、母線に設けられた第1の変成器21から入力される母線電圧Vaと自回線1Lの電源端側に設けられた第1の変流器31から入力される第1の線路電流I1とに基づいて第1のインピーダンスZ1(Z1=Va/I1)を算出する。第1の電源端距離継電装置1101は、算出した第1のインピーダンスZ1に基づいて自回線1Lにおける短絡事故発生を検出すると、自回線1Lの電源端側に設けられた第1の遮断器41を遮断するための第1のトリップ信号S1を発生する。
第2の電源端距離継電装置1102は、第1の変成器21から入力される母線電圧Vaと他回線2L(第2の電源端距離継電装置1102の自回線)の電源端側に設けられた第2の変流器32から入力される第2の線路電流I2とに基づいて第2のインピーダンスZ2(Z2=Va/I2)を算出する。第2の電源端距離継電装置1102は、算出した第2のインピーダンスZ2に基づいて他回線2Lにおける短絡事故発生を検出すると、他回線2Lの電源端側に設けられた第2の遮断器42を遮断するための第2のトリップ信号S2を発生する。
第1の対向端距離継電装置1201は、対向端の母線(以下、「対向端母線」と称する。)に設けられた第2の変成器22から入力される対向端母線電圧Vbと自回線1Lの対向端側に設けられた第3の変流器33から入力される第3の線路電流I3とに基づいて第3のインピーダンスZ3(Z3=Vb/I3)を算出する。第1の対向端距離継電装置1201は、算出した第3のインピーダンスZ3に基づいて自回線1Lにおける短絡事故発生を検出すると、自回線1Lの対向端側に設けられた第3の遮断器43を遮断するための第3のトリップ信号S3を発生する。
第2の対向端距離継電装置1202は、第2の変成器22から入力される対向端母線電圧Vbと他回線2L(第2の対向端距離継電装置1202の自回線)の対向端側に設けられた第4の変流器34から入力される第4の線路電流I4とに基づいて第4のインピーダンスZ4(Z4=Vb/I4)を算出する。第2の対向端距離継電装置1202は、算出した第4のインピーダンスZ4に基づいて他回線2Lにおける短絡事故発生を検出すると、他回線2Lの対向端側に設けられた第4の遮断器44を遮断するための第4のトリップ信号S4を発生する。
次に、第1および第2の電源端距離継電装置1101,1102と第1および第2の対向端距離継電装置1201,1202とにおける第1乃至第4のトリップ信号S1〜S4の発生方法について、第1の電源端距離継電装置1101における第1のトリップ信号S1の発生方法を例として図8乃至図10を参照して説明する。
第1のトリップ信号S1を発生するためのトリップ信号発生回路220は、図8に示すように、母線電圧Vaおよび第1の線路電流I1に基づいて第1の電源端距離継電装置1101の動作域を判定する動作域判定回路221と、動作域判定回路221から入力される第3の判定結果出力信号VD3を第2の時限協調時間ST2だけ遅延する第1の遅延回路(タイマー)2221と、動作域判定回路221から入力される第2の判定結果出力信号VD2を第3の時限協調時間ST3だけ遅延する第2の遅延回路(タイマー)2222と、動作域判定回路221から入力される第1および第3の判定結果出力信号VD1,VD3の論理積をとる第1の論理積回路2231と、第2の判定結果出力信号VD2と第1の遅延回路2221によって遅延された第3の判定結果出力信号VD3との論理積をとる第2の論理積回路2232と、第2の遅延回路2222によって遅延された第3の判定結果出力信号VD3と第1および第2の論理積回路2231,2232の出力信号との論理和をとる論理和回路224と、フェールセーフ用の他の継電装置(不図示)からのFDリレー出力信号SFDと論理和回路224の出力信号との論理積をとる第3の論理積回路2233とを備える。
動作域判定回路221は、母線電圧Vaを第1の線路電流I1で割って第1のインピーダンスZ1(Z1=Va/I1)を算出する。動作域判定回路221は、算出した第1のインピーダンスZ1に基づいて第1の電源端距離継電装置1101の動作域を判定し、判定結果を示す第1乃至第3の判定結果出力信号VD1〜VD3を出力する。
すなわち、動作域判定回路221は、図9に示すように、第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第1の値B1以下であると、「第1の電源端距離継電装置1101の動作域が1段動作域A1である」と判定して、ハイレベルの第1の判定結果出力信号VD1を出力する。また、動作域判定回路221は、第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第2の値B2以下であると、「第1の電源端距離継電装置1101の動作域が2段動作域A2である」と判定して、ハイレベルの第2の判定結果出力信号VD2を出力する。さらに、動作域判定回路221は、第1のインピーダンスZ1の抵抗分R1およびリアクタンス分X1が図9の円内に入っていると、「第1の電源端距離継電装置1101の動作域が3段動作域A3である」と判定して、ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3を出力する。
たとえば、自回線1Lの第1の保護区間(第1の電源端距離継電装置1101の1段動作域A1)において図10(a)に示す時刻t0に短絡事故が発生して、第1のインピーダンスZ1が図9に点P1で示す値となった場合には、動作域判定回路221は、第1のインピーダンスZ1に基づいて「第1の電源端距離継電装置1101の動作域が1段動作域A1である」と判定して、ハイレベルの第1の判定結果出力信号VD1を出力する。また、動作域判定回路221は、第1のインピーダンスZ1が図9の円内にも入っているため、ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3も出力する。
ハイレベルの第1および第3の判定結果出力信号VD1,VD3が入力されると第1の論理積回路2231の出力信号はロウレベルからハイレベルとなるため、論理和回路224の出力信号がロウレベルからハイレベルとなる。その結果、FDリレー出力信号SFDがハイレベルであると、第3の論理積回路2233の出力信号がロウレベルからハイレベルとなるため、第1のトリップ信号S1がトリップ信号発生回路220から第1の遮断器41に出力される。なお、第1のトリップ信号S1は、第1の電源端距離継電装置1101におけるリレー判定時間TRYが経過した時刻t1にトリップ信号発生回路220から出力される。
これにより、第1の遮断器41は第1のトリップ信号S1が入力されてから遮断器遮断時間TCBの経過後に遮断が完了するため、第1の遮断器41は、図10(a)に示すように、リレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms)が経過した時刻t2に完全に遮断される。
一方、図7に示す自回線1Lの第2の保護区間(第1の電源端距離継電装置1101の2段動作域A2)において図10(b)に示す時刻t0に短絡事故が発生して、第1のインピーダンスZ1が図9に点P2で示す値となった場合には、動作域判定回路221は、第1のインピーダンスZ1に基づいて「第1の電源端距離継電装置1101の動作域が2段動作域A2である」と判定して、ハイレベルの第2の判定結果出力信号VD2を出力する。また、動作域判定回路221は、第1のインピーダンスZ1が図9の円内にも入っているため、ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3も出力する。
第3の判定結果出力信号VD3は、第1の遅延回路2221によって第2の時限協調時間ST2(たとえば、400ms)だけ遅延されたのち第2の論理積回路2232に入力される。
ハイレベルの第1の遅延回路2221の出力信号およびハイレベルの第2の判定結果出力信号VD2が入力されると第2の論理積回路2232の出力信号はロウレベルからハイレベルとなるため、論理和回路224の出力信号がロウレベルからハイレベルとなる。
その結果、FDリレー出力信号SFDがハイレベルであると、第3の論理積回路2233の出力信号がロウレベルからハイレベルとなるため、第1のトリップ信号S1がトリップ信号発生回路220から第1の遮断器41に出力される。なお、第1のトリップ信号S1は、第1の電源端距離継電装置1101におけるリレー判定時間TRYおよび第2の時限協調時間ST2の合計時間が経過した時刻t5にトリップ信号発生回路220から出力される。
これにより、第1の遮断器41は、図10(b)に示すように、リレー判定時間TRY、第2の時限協調時間ST2および遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms+400ms=450ms)が経過した時刻t6に完全に遮断される。
下記の特許文献1には、段階限時の距離継電方式により3端子系統送電線を保護する後備保護手段を備えた保護継電装置において事故遮断の選択性を確保し高速遮断ができるようにするために、対向母線を含み対向母線方向の事故を検出する第2段リレーの動作条件を伝送する手段と、対向端からの転送信号を受信する手段と、自端の保護リレーの動作を受信した転送信号が所定時間以上継続したことを条件に自端の遮断器に遮断指令を出力する手段とを備えた保護継電装置が開示されている。
特開平5−76134号公報
しかしながら、上述した第1の電源端距離継電装置1101では、自回線1Lの第2の保護区間(第1の電源端距離継電装置1101の2段動作域A2)において短絡事故が発生した場合には、第1の遮断器41は事故発生時刻t0からリレー判定時間TRY、第2の時限協調時間ST2および遮断器遮断時間TCBの合計時間だけ経過した時刻t6に遮断されるため(図10(b)参照)、この短絡事故を除去するのに時間を要し、設備に悪影響を与えるという問題がある。
特に、平衡受電端子がある3端子系統の場合には、最も近い受電端子までが保護区間となるので、第1の電源端距離継電装置1101の第1の保護区間は最も近い受電端子までの80%までの区間となる。そのため、図11(a),(b)に示すように、最も近い受電端子が第1の電源端距離継電装置1101の設置箇所に近いほど第1の保護区間の範囲は狭くなり第2の保護区間の範囲が広くなる。その結果、上述した第1の電源端距離継電装置1101のように自回線1Lの第2の保護区間における短絡事故発生時に事故除去時間を要すると、設備への悪影響が更に大きくなるという問題がある。
このような問題は、直接接地系の平衡2回線送電線の保護のために使用される3段階距離リレー方式による地絡距離継電装置(DZG)においても存在する。
上記特許文献1記載の保護継電装置では、自回線1Lの第2の保護区間における事故発生時に事故除去時間を短縮することはできるが、対向端子からの転送信号を継続して受信することにより自端子の遮断器を遮断する方式であるので、この転送信号の伝送路が必要であるという問題がある。
本発明の目的は、対向端からの転送信号の伝送路を設けることなく自回線の第2の保護区間における事故発生時に事故除去時間を大幅に短縮することができる電源端側の距離継電装置を提供することにある。
本発明の距離継電装置は、母線から分岐された自回線(1L)および他回線(2L)からなる平衡2回線送電線の電源端に設置される距離継電装置(101)であって、該距離継電装置の保護区間送電線である前記自回線における事故発生を検出すると、該自回線に設けられた遮断器(41)を遮断するためのトリップ信号(S1)を発生するトリップ信号発生回路(20,50)を具備し、該トリップ信号発生回路が、前記母線の母線電圧(Va)、前記自回線を流れる第1の線路電流(I1)および前記他回線を流れる第2の線路電流(I2)に基づいて総合インピーダンス(Z)を算出し、該算出した総合インピーダンスに基づいて前記自回線における事故発生を検出すると前記トリップ信号を発生する手段を備えることを特徴とする。
ここで、前記トリップ信号発生回路が、前記母線電圧、前記第1の線路電流および前記第2の線路電流に基づいて前記総合インピーダンスを算出し、該算出した総合インピーダンスが閾値(Th)以下であると「前記距離継電装置の動作域が0段動作域(A0)である」ことを示す判定結果出力信号(VD4)を出力する動作域判定回路(212,512)と、該動作域判定回路から出力される前記判定結果出力信号の極性が所定の引延し時間(DL)内に反転したか否かを検出する極性反転検出手段(234,25,26;537,55,56)とを備えてもよい。
前記トリップ信号発生回路が、前記動作域判定回路から出力される前記判定結果出力信号(VD4)の極性が前記引延し時間内に反転した場合に、前記自回線の対向端側に設置された他の遮断器(43)が該自回線における事故により遮断されたと判定して前記トリップ信号を発生してもよい。
前記極性反転検出手段が、前記動作域判定回路から入力される前記判定結果出力信号(VD4)の時間軸を前記引延し時間だけ伸張する引延し回路(25;55)と、前記動作域判定回路から入力される前記判定結果出力信号の極性を反転するためのインバータ回路(26;56)と、前記引延し回路の出力信号と前記インバータ回路の出力信号との論理積をとる論理積回路(234;537)とを備えてもよい。
前記トリップ信号発生回路が、前記母線電圧および前記第1の線路電流に基づいてインピーダンス(Z1)を算出し、該算出したインピーダンスに基づいて前記距離継電装置の動作域が1段動作域(A1)および2段動作域(A2)のいずれであるかを判定し、該判定の結果を示す他の判定結果出力信号(VD1,VD2)を出力する他の動作域判定回路(211;511)と、該他の動作域判定回路から出力される前記他の判定結果出力信号が「前記距離継電装置の動作域が前記2段動作域である」ことを示す場合にのみ前記トリップ信号を発生する手段(235;538)とを備えてもよい。
本発明の距離継電装置は、以下に示す効果を奏する。
(1)母線電圧と第1および第2の線路電流から算出した総合インピーダンスに基づいてトリップ信号を発生させるので、対向端からの転送信号の伝送路を設ける必要がない。
(2)第2の時限協調時間だけ待つことなくトリップ信号を発生させることができるので、自回線の第2の保護区間において事故が発生した場合の事故除去時間を大幅に短縮することができる。
(3)事故継続時間も大幅に短縮するので、事故時の設備への悪影響を低減することができる。
(4)主保護継電装置を省略することも可能であるため、設備への投資コストの低減も図れる。
上記の目的を、距離継電装置が、母線の母線電圧と自回線を流れる第1の線路電流と他回線を流れる第2の線路電流とに基づいて総合インピーダンスを算出し、算出した総合インピーダンスに基づいて自回線における事故発生を検出するとトリップ信号を発生することにより実現した。
以下、本発明の距離継電装置の実施例について、図面を参照して説明する。
本発明の一実施例による距離継電装置である第1の短絡距離継電器101(以下、「第1の電源端距離継電装置101」と称する。)は、図1に示すように、母線に設けられた第1の変成器21から入力される母線電圧Vaと自回線1Lに設けられた第1の変流器31から入力される第1の線路電流I1と他回線2Lに設けられた第2の変流器32から入力される第2の線路電流I2とに基づいて自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンス(電源端から見た合成インピーダンス)Z(Z=Va/(I1+I2))を算出し、算出した総合インピーダンスZに基づいて自回線1Lの第2の保護区間(第1の電源端距離継電装置101の2段動作域A2)における短絡事故発生を検出すると、自回線1Lの電源端側に設けられた第1の遮断器41を遮断するための第1のトリップ信号S1を発生する機能を備えている点で、図7に示した従来の第1の電源端距離継電装置1101と相違する。
すなわち、第1の電源端距離継電装置101は、図8に示したトリップ信号発生回路220の代わりに、図2に示すトリップ信号発生回路20を具備する点で、図7に示した従来の第1の電源端距離継電装置1101と相違する。
トリップ信号発生回路20は、図2に示すように、第1および第2の動作域判定回路211,212と、第1および第2の遅延回路(タイマー)221,222と、第1乃至第6の論理積回路231〜236と、論理和回路24と、引延し回路25と、インバータ回路26とを備える。
第1の動作域判定回路211は、図8に示した動作域判定回路221と同様に、母線電圧Vaを第1の線路電流I1で割って第1のインピーダンスZ1(Z1=Va/I1)を算出したのち、算出した第1のインピーダンスZ1に基づいて第1の電源端距離継電装置101の動作域を判定する。
すなわち、第1の動作域判定回路211は、図9に点P1で示したように第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第1の値B1以下であると、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が1段動作域A1である」と判定して、ハイレベルの第1の判定結果出力信号VD1を出力する。また、第1の動作域判定回路211は、図9に点P2で示したように第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第2の値B2以下であると、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が2段動作域A2である」と判定して、ハイレベルの第2の判定結果出力信号VD2を出力する。さらに、第1の動作域判定回路211は、第1のインピーダンスZ1の抵抗分R1およびリアクタンス分X1が図9の円内に入っていると、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が3段動作域A3である」と判定して、ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3を出力する。
第2の動作域判定回路212は、母線電圧Vaを第1および第2の線路電流I1,I2の和(I1+I2)で割って自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZ(Z=Va/(I1+I2))を算出したのち、算出した総合インピーダンスZに基づいて第1の電源端距離継電装置101の動作域が0段動作域A0か否かを判定する。ここで、0段動作域A0とは、図3に示すように、1段動作域内のうちの総合インピーダンスZのリアクタンス分Xが閾値Th以下である領域をいう。なお、閾値Thは、第1の電源側距離継電装置101の動作域が1段動作域A1であるときの総合インピーダンスZのリアクタンス分Xの最大値である第1の値B1’以下に設定される。
すなわち、第2の動作域判定回路212は、図3に点P3で示すように、総合インピーダンスZのリアクタンス分Xが閾値Th以下であると、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が0段動作域A0である」と判定し、ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4を出力する。
第1および第2の遅延回路221,222は、図8に示した第1および第2の遅延回路2221,2222と同様に、第1の動作域判定回路211から入力される第3の判定結果出力信号VD3を第2および第3の時限協調時間ST2,ST3だけそれぞれ遅延する。
第1の論理積回路231は、図8に示した第1の論理積回路2231と同様に、第1の動作域判定回路211から入力される第1および第3の判定結果出力信号VD1,VD3の論理積をとる。
第2の論理積回路232は、図8に示した第2の論理積回路2232と同様に、第2の判定結果出力信号VD2と第1の遅延回路221によって遅延された第3の判定結果出力信号VD3との論理積をとる。
第3の論理積回路233は、第1の動作域判定回路211から入力される第2および第3の判定結果出力信号VD2,VD3の論理積をとる。
引延し回路25は、第2の動作域判定回路212から入力される第4の判定結果出力信号VD4の時間軸を引延し時間DLだけ伸張する。ここで、引延し時間DLは、リレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間よりも長い値に設定される(DL>TRY+TCB)。
インバータ回路26は、第2の動作域判定回路212から入力される第4の判定結果出力信号VD4の極性を反転する。
第4の論理積回路234は、引延し回路25によって時間軸が伸張された第4の判定結果出力信号VD4とインバータ回路26によって極性が反転された第4の判定結果出力信号VD4との論理積をとる。
第5の論理積回路235は、第3の論理積回路233の出力信号と第4の論理積回路234の出力信号との論理積をとる。
論理和回路24は、第1の論理積回路231の出力信号と第2の論理積回路232の出力信号と第2の遅延回路222の出力信号と第5の論理積回路235の出力信号との論理和をとる。
第6の論理積回路236は、フェールセーフ用の他の継電装置(不図示)からのFDリレー出力信号SFDと論理和回路24の出力信号との論理積をとる。
次に、図1に示す自回線1Lの第1の保護区間(第1の電源端距離継電装置101の1段動作域A1)において図4に示す時刻t0に短絡事故が発生した場合のトリップ信号発生回路20の動作について説明する。
自回線1Lの第1の保護区間において時刻t0に短絡事故が発生して、第1のインピーダンスZ1が図9に点P1で示した値となった場合には、第1の動作域判定回路211は、母線電圧Vaと第1の線路電流I1とに基づいて算出した第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第1の値B1以下となるため、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が1段動作域A1である」と判定して、ハイレベルの第1の判定結果出力信号VD1を出力する。また、第1の動作域判定回路211は、第1のインピーダンスZ1が図9の円内にも入っているため、ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3も出力する。
第2の動作域判定回路212は、母線電圧Vaと第1および第2の線路電流I1,I2とに基づいて算出した総合インピーダンスZのリアクタンス分Xが閾値Th以下であると、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が0段動作域A0である」と判定して、ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4を出力する。
ハイレベルの第1および第3の判定結果出力信号VD1,VD3が入力されると第1の論理積回路231の出力信号はロウレベルからハイレベルとなるため、論理和回路24の出力信号がロウレベルからハイレベルとなる。その結果、FDリレー出力信号SFDがハイレベルであると、第6の論理積回路233の出力信号がロウレベルからハイレベルとなるため、第1のトリップ信号S1がトリップ信号発生回路20から第1の遮断器41(図1参照)に出力される。なお、第1のトリップ信号S1は、第1の電源端距離継電装置101におけるリレー判定時間TRYが経過した時刻t1にトリップ信号発生回路20から出力される。これにより、第1の遮断器41は、リレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms)が経過した時刻t2に完全に遮断される。
なお、第2の動作域判定回路212から出力されるハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4はインバータ回路26により極性が反転されてロウレベルとなるため、第4の論理積回路234の出力信号はロウレベルのままとなる。
次に、自回線1Lの第2の保護区間(第1の電源端距離継電装置1101の2段動作域A2)において時刻t0に短絡事故が発生した場合のトリップ信号発生回路20の動作について説明する。
自回線1Lの第2の保護区間において時刻t0に発生した短絡事故の事故点が第1の対向端距離継電装置1201の1段動作域に入っている場合には、自回線1Lの対向端側に設けられた第3の遮断器33は、第1の対向端距離継電装置1201によってリレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms)が経過した時刻t2に完全に遮断される(図4参照)。
また、第1のインピーダンスZ1が図9に点P2で示した値になった場合には、第1の動作域判定回路211は、母線電圧Vaと第1の線路電流I1とに基づいて算出した第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第2の値B2以下となるため、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が2段動作域A2である」と判定して、ハイレベルの第2の判定結果出力信号VD2を出力する。また、第1の動作域判定回路211は、第1のインピーダンスZ1が3段動作域A3内にも入っているため、ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3も出力する。
ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3は、第1の遅延回路221によって第2の時限協調時間ST2(たとえば、400ms)だけ遅延されたのち第2の論理積回路232に入力される。
ハイレベルの第1の遅延回路221の出力信号およびハイレベルの第2の判定結果出力信号VD2が入力されると第2の論理積回路232の出力信号はロウレベルからハイレベルとなるため、論理和回路24の出力信号がロウレベルからハイレベルとなる。
その結果、FDリレー出力信号SFDがハイレベルであると、第6の論理積回路236の出力信号がロウレベルからハイレベルとなるため、第1のトリップ信号S1がトリップ信号発生回路20から第1の遮断器41に出力される。なお、第1のトリップ信号S1は、第1の電源端距離継電装置101におけるリレー判定時間TRYおよび第2の時限協調時間ST2の合計時間が経過した時刻t5にトリップ信号発生回路20から出力される。
これにより、第1の遮断器41は、図4に破線で示すように、リレー判定時間TRY、第2の時限協調時間ST2および遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms+400ms=450ms)が経過した時刻t6に完全に遮断される。
しかしながら、この短絡事故により自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZが図3に矢印で示すように点P3に遷移したのちに第3の遮断器33の遮断により点P4に遷移した場合には、第1の遮断器41は、以下に説明するように、時刻t6よりも第2の時限協調時間ST2からリレー判定時間TRYを引いた値(=ST2−TRY)だけ早い時刻t4に完全に遮断される。
すなわち、時刻t0に発生した短絡事故により自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZが図3に点P3で示す値となった場合には、第2の動作域判定回路212は、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が0段動作域A0である」と判定して、ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4を出力する。ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4は引延し回路25によって引延し時間DLだけ時間軸が伸張されるため、引延し回路25の出力信号は時刻t0+DLまでハイレベルとなる。また、ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4は、インバータ回路26によって極性が反転されることにより、ロウレベルとなる。その結果、第4の論理積回路234の出力信号はロウレベルのままとなる。
その後、事故発生時刻t0から第1の対向端距離継電装置1201におけるリレー判定時間TRYおよび第3の遮断器43の遮断器遮断時間TCBの合計時間が経過した時刻t2に第3の遮断器43が第1の対向端距離継電装置1201によって遮断されると、自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZは図3に点P4で示す値となる。その結果、第2の動作域判定回路212は、「第1の電源端距離継電装置101の動作域が0段動作域A0でない」と判定して、ロウレベルの第4の判定結果出力信号VD4を出力する。ロウレベルの第4の判定結果出力信号VD4は、インバータ回路26によって極性が反転されることにより、ハイレベルとなる。このとき、引延し回路25の出力信号はハイレベルのままとなっているため、第4の論理積回路234の出力信号はロウレベルからハイレベルとなる。また、第1の動作域判定回路211から出力される第2および第3の判定結果出力信号VD2,VD3はハイレベルとなるため、第3の論理積回路233の出力信号はロウレベルからハイレベルとなるので、第5の論理積回路235の出力信号がロウレベルからハイレベルとなる。その結果、FDリレー出力信号SFDがハイレベルであると、第6の論理積回路236の出力信号がロウレベルからハイレベルとなるため、第1のトリップ信号S1がトリップ信号発生回路20から第1の遮断器41に出力される。なお、第1のトリップ信号S1は、時刻t2から第1の電源端距離継電装置101におけるリレー判定時間TRYが経過した時刻t3にトリップ信号発生回路20から出力される。
これにより、第1の遮断器41は、図4に実線で示すように、時刻t2からリレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms)が経過した時刻t4に完全に遮断される。その結果、図4に破線で示した場合に比べて、第1の遮断器41を時間ST2−TRYだけ早く遮断することができる。
以上説明したように、第1の電源端距離継電装置101のトリップ信号発生回路20は、第2の動作域判定回路212から出力される第4の判定結果出力信号VD4の極性が引延し時間DL内に反転した場合に、自回線1Lの対向端側に設置された第3の遮断器43が自回線1Lにおける短絡事故により遮断されたと判定して第1のトリップ信号S1を発生するため、上記特許文献1記載の保護継電装置のように「第3の遮断器43が遮断された」旨を示す転送信号を第1の対向端距離継電装置1201から第1の電源端距離継電装置101に転送する必要はない。
なお、他回線2Lの電源端側に設置される短絡距離継電装置102(以下、「第2の電源端距離継電装置102」と称する。)も第1の電源端距離継電装置101と同様に構成することにより、他回線2Lの第2の保護区間(第2の電源端距離継電装置102の2段動作域A2)において短絡事故が発生した場合に、従来の第2の電源端距離継電装置1102に比べて第2の遮断器42を時間ST2−TRYだけ早く遮断することができる。
以上の説明においては、第3の論理積回路233において第1の動作域判定回路211から出力される第2および第3の判定結果出力信号VD2,VD3の論理積をとるとともに第5の論理積回路235において第3の論理積回路233の出力信号と第4の論理積回路234の出力信号との論理積をとったが、自回線1Lの第2の保護区間において発生した短絡事故が原因で第3の遮断器43が遮断された場合には自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZのリアクタンスXは第1の値B1’よりも大きく第2の値B2’以下となることが大半であるため、第5の論理積回路235において第1の動作域判定回路211から出力される第3の判定結果出力信号VD3と第4の論理積回路234の出力信号との論理積だけをとるようにしてもよい。ここで、第2の値B2’は、第1の電源側距離継電装置101の動作域が2段動作域A2であるときの総合インピーダンスZのリアクタンス分Xの最大値である。
また、総合インピーダンスZは、母線電圧Vaを第1の線路電流I1と第2の線路電流I2との和(I1+I2)で割って算出したが(Z=Va/(I1+I2))、母線電圧Vaを第1の線路電流I1で割って算出した第1のインピーダンスZ1(Z1=Va/I1)と母線電圧Vaを第2の線路電流I2で割って算出した第2のインピーダンスZ2(Z2=Va/I2)との並列インピーダンスを算出して求めてもよい(Z=(Z1×Z2)/(Z1+Z2))。
さらに、第1および第2の電源端距離継電装置101,102を個々に構成したが、一体に構成してもよい。
また、短絡距離継電装置について説明したが、地絡距離継電装置についても、直接接地系の平衡2回線送電線に設置される地絡距離継電装置(DZG)が図5に示すトリップ信号発生回路50を具備することにより、同様の効果を得ることができる。
トリップ信号発生回路50は、第1および第2の動作域判定回路511,512と、第1および第2の遅延回路521,522と、第1乃至第8の論理積回路531〜538と、論理和回路54と、引延し回路55と、インバータ回路56とを備える。
第1の動作域判定回路511は、母線電圧Vaを第1の線路電流I1で割って第1のインピーダンスZ1(Z1=Va/I1)を算出したのち、算出した第1のインピーダンスZ1に基づいて、自回線1Lに設置された地絡距離継電装置(不図示。以下、「第1の地絡距離継電装置」と称する。)の動作域を判定する。
すなわち、短絡距離継電装置について示した図9を参照して説明すると、第1の動作域判定回路511は、点P1で示すように第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第1の値B1以下であると、「第1の地絡距離継電装置の動作域が1段動作域A1である」と判定して、ハイレベルの第1の判定結果出力信号VD1を出力する。また、第1の動作域判定回路511は、点P2で示すように第1のインピーダンスZ1のリアクタンス分X1が第2の値B2以下であると、「第1の地絡距離継電装置の動作域が2段動作域A2である」と判定して、ハイレベルの第2の判定結果出力信号VD2を出力する。さらに、第1の動作域判定回路511は、第1のインピーダンスZ1の抵抗分R1およびリアクタンス分X1が図9の円内に入っていると、「第1の地絡距離継電装置の動作域が3段動作域A3である」と判定して、ハイレベルの第3の判定結果出力信号VD3を出力する。
第2の動作域判定回路512は、母線電圧Vaを第1および第2の線路電流I1,I2の和(I1+I2)で割って自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZ(Z=Va/(I1+I2))を算出したのち、算出した総合インピーダンスZに基づいて第1の地絡距離継電装置の動作域が0段動作域A0か否かを判定する。ここで、0段動作域A0とは、短絡距離継電装置について示した図3を参照して説明すると、1段動作域内のうちの総合インピーダンスZのリアクタンス分Xが閾値Th以下である領域をいう。なお、閾値Thは、第1の地絡距離継電装置の動作域が1段動作域A1であるときの総合インピーダンスZのリアクタンス分Xの最大値である第1の値B1’以下に設定される。
すなわち、第2の動作域判定回路512は、点P3で示したように、総合インピーダンスZのリアクタンス分Xが閾値Th以下であると、「第1の地絡距離継電装置の動作域が0段動作域A0である」と判定し、ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4を出力する。
第1の論理積回路531は、第1の動作域判定回路511から入力される第1および第3の判定結果出力信号VD1,VD3の論理積をとる。
第2の論理積回路532は、第1の動作域判定回路511から入力される第2および第3の判定結果出力信号VD2,VD3の論理積をとる。
第3の論理積回路533は、フェールセーフ用の地絡過電流継電器(不図示)からのFDリレー出力信号SFDと第1の論理積回路531の出力信号との論理積をとる。なお、第3の論理積回路533は、自回線1Lに設置された第1の遮断器(不図示)を瞬時(第1の時限協調時間GT1=0s)に遮断するためのものである。
第4の論理積回路534は、FDリレー出力信号SFDと第2の論理積回路532の出力信号との論理積をとる。
第5の論理積回路535は、FDリレー出力信号SFDと第1の動作域判定回路511から入力される第3の判定結果出力信号VD3との論理積をとる。
第6の論理積回路536は、第1の動作域判定回路511から入力される第2および第3の判定結果出力信号VD2,VD3の論理積をとる。
第1の遅延回路521は、第1の遮断器を第2の時限協調時間GT2(たとえば、400ms)だけ遅らせて遮断するために、第4の論理積回路534の出力信号を第2の時限協調時間GT2だけ遅延する。
第2の遅延回路522は、第1の遮断器を第3の時限協調時間GT3(たとえば、1.5s)だけ遅らせて遮断するために、第5の論理積回路535の出力信号を第3の時限協調時間GT3(たとえば、1.5s)だけ遅延する。
引延し回路55は、第2の動作域判定回路512から入力される第4の判定結果出力信号VD4の時間軸を引延し時間DLだけ伸張する。ここで、引延し時間DLは、リレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間よりも長い値に設定される(DL>TRY+TCB)。
インバータ回路56は、第2の動作域判定回路512から入力される第4の判定結果出力信号VD4の極性を反転する。
第7の論理積回路537は、引延し回路55によって時間軸が伸張された第4の判定結果出力信号VD4とインバータ回路56によって極性が反転された第4の判定結果出力信号VD4との論理積をとる。
第8の論理積回路538は、FDリレー出力信号SFDと第6および第7の論理積回路536,537の出力信号の論理積をとる。
論理和回路54は、第3の論理積回路533の出力信号と第1の遅延回路521の出力信号と第2の遅延回路522の出力信号と第8の論理積回路538の出力信号との論理和をとる。
第1の地絡距離継電装置の2段動作域A2(自回線1Lの第2の保護区間)において発生した地絡事故の事故点が自回線1Lの対向端側に設置された地絡距離継電装置(不図示。以下、「第1の対向端地絡距離継電装置」と称する。)の1段動作域に入っている場合には、自回線1Lの対向端側に設けられた第3の遮断器(不図示)は、第1の対向端地絡距離継電装置によってリレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms)が経過した時刻に完全に遮断される。
また、この地絡事故により自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZが図3の点P3に遷移したのちに第3の遮断器の遮断により点P4に遷移した場合には、自回線1Lに設置された第1の遮断器は、以下に説明するように、従来の地絡距離継電装置を使用した場合に完全に遮断される時刻t6に比べて第2の時限協調時間GT2からリレー判定時間TRYを引いた値(=GT2−TRY)だけ早い時刻t4に完全に遮断される。
すなわち、図6に示す時刻t0に発生した地絡事故により自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZが図3の点P3で示す値となった場合には、第2の動作域判定回路512は、「第1の地絡距離継電装置の動作域が0段動作域A0である」と判定して、ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4を出力する。ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4は引延し回路55によって引延し時間DLだけ時間軸が伸張されるため、引延し回路55の出力信号は時刻t0+DLまでハイレベルとなる。また、ハイレベルの第4の判定結果出力信号VD4は、インバータ回路56によって極性が反転されることにより、ロウレベルとなる。その結果、第7の論理積回路537の出力信号はロウレベルのままとなる。
その後、事故発生時刻t0から第1の対向端地絡距離継電装置におけるリレー判定時間TRYおよび第3の遮断器の遮断器遮断時間TCBの合計時間が経過した時刻t2に第3の遮断器が第1の対向端地絡距離継電装置によって遮断されると、自回線1Lおよび他回線2Lの総合インピーダンスZは図3の点P4で示す値となる。その結果、第2の動作域判定回路512は、「第1の地絡距離継電装置の動作域が0段動作域A0でない」と判定して、ロウレベルの第4の判定結果出力信号VD4を出力する。ロウレベルの第4の判定結果出力信号VD4は、インバータ回路56によって極性が反転されることにより、ハイレベルとなる。このとき、引延し回路55の出力信号はハイレベルのままとなっているため、第7の論理積回路537の出力信号はロウレベルからハイレベルとなる。また、第1の動作域判定回路511から出力される第2および第3の判定結果出力信号VD2,VD3はハイレベルとなるため、第6の論理積回路536の出力信号はロウレベルからハイレベルとなる。その結果、FDリレー出力信号SFDがハイレベルであると、第8の論理積回路538の出力信号がロウレベルからハイレベルとなるため、第1のトリップ信号S1がトリップ信号発生回路50から第1の遮断器に出力される。なお、第1のトリップ信号S1は、第3の遮断器が遮断された時刻t2から第1の地絡距離継電装置におけるリレー判定時間TRYが経過した時刻t3にトリップ信号発生回路50から出力される。
これにより、第1の遮断器は、第3の遮断器が遮断された時刻t2からリレー判定時間TRYおよび遮断器遮断時間TCBの合計時間(たとえば、50ms)が経過した時刻t4に完全に遮断される。その結果、第1の遮断器を時間GT2−TRYだけ早く遮断することができる。
本発明の一実施例による距離継電装置である第1の電源端距離継電装置101について説明するための図である。 図1に示した第1の電源端距離継電装置101が具備するトリップ信号発生回路20の構成を示す図である。 図2に示したトリップ信号発生回路20の動作を説明するための図である。 図2に示したトリップ信号発生回路20の動作を説明するための図である。 本発明による地絡距離継電装置が具備するトリップ信号発生回路50の構成を示す図である。 図5に示したトリップ信号発生回路50の動作を説明するための図である。 3段階距離リレー方式において使用される短絡距離継電装置の動作を説明するための図である。 図7に示した第1の電源端距離継電装置1101が具備するトリップ信号発生回路220の構成を示す図である。 図8に示したトリップ信号発生回路220の動作を説明するための図である。 図8に示したトリップ信号発生回路220の動作を説明するための図である。 平衡受電端子がある3端子系統の場合における第1の電源端距離継電装置1101の第2の保護区間を説明するための図である。
符号の説明
1 電源
1,22 第1および第2の変成器
1〜34 第1乃至第4の変流器
1〜44 第1乃至第4の遮断器
101,102,1101,1102 第1および第2の電源端距離継電装置
20,50,220 トリップ信号発生回路
211,212,511,512 第1および第2の動作域判定回路
221,222,521,522,2221,2222 第1および第2の遅延回路
231〜236 第1乃至第6の論理積回路
24,54,224 論理和回路
25,55 引延し回路
26,56 インバータ回路
531〜538 第1乃至第8の論理積回路
1201,1202 第1および第2の対向端距離継電装置
221 動作域判定回路
2231〜2233 第1乃至第3の論理積回路
1L 自回線
2L 他回線
A0〜A3 0段乃至3段動作域
Va 母線電圧
Vb 対向端母線電圧
1〜I4 第1乃至第4の線路電流
1,Z2 第1および第2のインピーダンス
Z 総合インピーダンス
R,R1,R2 抵抗分
X,X1,X2 リアクタンス分
1,B2,B1’,B2’ 第1および第2の値
Th 閾値
ST1〜ST3,GT1〜GT3 第1乃至第3の時限協調時間
DL 引延し時間
VD1〜VD4 第1乃至第4の判定結果出力信号
FD FDリレー出力信号
1〜S4 第1乃至第4のトリップ信号
0〜t6 時刻
RY リレー判定時間
CB 遮断器遮断時間
P1〜P4 点

Claims (5)

  1. 母線から分岐された自回線(1L)および他回線(2L)からなる平衡2回線送電線の電源端に設置される距離継電装置(101)であって、
    該距離継電装置の保護区間送電線である前記自回線における事故発生を検出すると、該自回線に設けられた遮断器(41)を遮断するためのトリップ信号(S1)を発生するトリップ信号発生回路(20,50)を具備し、
    該トリップ信号発生回路が、前記母線の母線電圧(Va)、前記自回線を流れる第1の線路電流(I1)および前記他回線を流れる第2の線路電流(I2)に基づいて総合インピーダンス(Z)を算出し、該算出した総合インピーダンスに基づいて前記自回線における事故発生を検出すると前記トリップ信号を発生する手段を備える、
    ことを特徴とする、距離継電装置。
  2. 前記トリップ信号発生回路が、
    前記母線電圧、前記第1の線路電流および前記第2の線路電流に基づいて前記総合インピーダンスを算出し、該算出した総合インピーダンスが閾値(Th)以下であると「前記距離継電装置の動作域が0段動作域(A0)である」ことを示す判定結果出力信号(VD4)を出力する動作域判定回路(212,512)と、
    該動作域判定回路から出力される前記判定結果出力信号の極性が所定の引延し時間(DL)内に反転したか否かを検出する極性反転検出手段(234,25,26;537,55,56)と、
    を備えることを特徴とする、請求項1記載の距離継電装置。
  3. 前記トリップ信号発生回路が、前記動作域判定回路から出力される前記判定結果出力信号(VD4)の極性が前記引延し時間内に反転した場合に、前記自回線の対向端側に設置された他の遮断器(43)が該自回線における事故により遮断されたと判定して前記トリップ信号を発生することを特徴とする、請求項2記載の距離継電装置。
  4. 前記極性反転検出手段が、
    前記動作域判定回路から入力される前記判定結果出力信号(VD4)の時間軸を前記引延し時間だけ伸張する引延し回路(25;55)と、
    前記動作域判定回路から入力される前記判定結果出力信号の極性を反転するためのインバータ回路(26;56)と、
    前記引延し回路の出力信号と前記インバータ回路の出力信号との論理積をとる論理積回路(234;537)と、
    を備えることを特徴とする、請求項2または3記載の距離継電装置。
  5. 前記トリップ信号発生回路が、
    前記母線電圧および前記第1の線路電流に基づいてインピーダンス(Z1)を算出し、該算出したインピーダンスに基づいて前記距離継電装置の動作域が1段動作域(A1)および2段動作域(A2)のいずれであるかを判定し、該判定の結果を示す他の判定結果出力信号(VD1,VD2)を出力する他の動作域判定回路(211;511)と、
    該他の動作域判定回路から出力される前記他の判定結果出力信号が「前記距離継電装置の動作域が前記2段動作域である」ことを示す場合にのみ前記トリップ信号を発生する手段(235;538)と、
    を備えることを特徴とする、請求項2乃至4いずれかに記載の距離継電装置。
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