JP5299415B2 - 円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体およびその製造方法 - Google Patents

円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池や液晶表面素子などに用いられる透明導電膜をスパッタリング法で製造する際に利用される、スパッタリングターゲット用酸化物焼結体、特に円筒形状を有する円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体に関する。
透明導電膜は、高い導電性と可視光領域における高い透過率を有することから、太陽電池、液晶表示素子、その他各種の受光素子の電極などに利用されるほか、自動車や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケースなどの各種防曇用の透明発熱体としても利用されている。
透明導電膜としては、高透過率かつ低抵抗の膜を得られることから、酸化スズをドーパントとして含む酸化インジウム膜や、酸化アルミニウムや酸化ガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛膜などの酸化物膜が広く用いられている。
このような酸化物膜からなる透明導電膜の製造方法として、スパッタリング法が用いられている。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の成膜や精密な膜厚制御を必要とする際に有効な手法であり、操作が簡便なことから、工業的に広範囲に使用されている。
スパッタリング法では、一般にチャンバー内に約10Pa以下の100%アルゴンガスもしくは酸素を数%含むアルゴンガスを導入し、膜の原料となるスパッタリングターゲットを陰極に設置し、基板をこのターゲットに対して平行に設置した状態で、電極間に高電圧を印加することによって、グロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させている。プラズマ中のアルゴン陽イオンが、陰極のターゲットに衝突した際に弾き飛ばされたターゲット成分の粒子が、基板上に堆積して膜を形成する。
スパッタリングターゲットとしては、通常、膜の原料となる酸化物の焼結体を平板状に加工したものが用いられ、この平板状の酸化物焼結体を、バッキングプレートと呼ばれる金属板に貼り付けて、使用している。ターゲットとして用いられる酸化物焼結体には、基本特性として、高密度であることが要求される。これは、スパッタリング中に発生するアーキングやパーティクルの発生といった不具合を低減するためである。
スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法によって、高周波スパッタリング法と直流スパッタリング法とに大きく分けられる。現在、いずれのスパッタリング法においても、成膜レートを高めるために、陰極に磁場を印加しながらスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング法が一般的に採用されている。
これまで、スパッタリングターゲットとしては、平板状のものが一般的に利用されていたが、この平板状スパッタリングターゲットには、マグネトロンスパッタリング法において、その使用効率が20〜30%にとどまるという問題がある。これは、磁場によってプラズマを平板状スパッタリングターゲットの特定箇所に集中して衝突させるため、ターゲット表面の特定箇所にエロージョンが進行する現象が起こり、最深エロージョン部がターゲット中のバッキングプレートまで達したところで、ターゲットの寿命となってしまうためである。
この問題に対して、スパッタリングターゲットを円筒形状とすることで、ターゲットの使用効率を上げることが提案されている。このスパッタリング法は、円筒形状のバッキングチューブの外周に円筒形酸化物焼結体を形成して円筒形スパッタリングターゲットとし、バッキングチューブの内側に磁場発生設備と冷却設備を設置して、円筒形スパッタリングターゲットを回転させながら、スパッタリングを行うものである。このような円筒形スパッタリングターゲットの使用により、ターゲットの使用効率を60〜70%にまで高めることができている。
円筒形スパッタリングターゲットの製造方法としては、溶射法、熱間等方圧プレス法(HIP法)、焼結法などが知られている。
溶射法は、たとえば特許文献1に記載されているように、アンダーコートを施した円筒形状のバッキングチューブを回転させながら、プラズマ溶射法またはガス溶射法などにより、原料となる酸化物粉末をその上に溶射して付着させ、ターゲットを形成する手法である。しかしながら、溶射中に原料が気泡を含みやすく、高密度のターゲットを得ることが難しいという問題がある。
熱間等方圧プレス法(HIP法)は、たとえば、特許文献2に記載されているように、円筒形状のバッキングチューブの外周に、アンダーコートを施した後、その周囲に原料酸化物粉末を充填し、アルゴンなどの不活性ガスを圧力媒体として用い、50MPa以上の圧力をかけてプレスしながら、900〜1100℃程度の温度で原料酸化物を焼成して、ターゲットを形成する方法である。この方法では、設備の投資費とランニングコストが高く、また酸化物焼結体とバッキングチューブを剥離することが困難で、ターゲットのリサイクルが不可能という問題がある。
焼結法は、原料酸化物粉末に、水、バインダ、および分散剤を加え、混合してスラリーとした後、スラリーを鋳込み成形、もしくはスプレードライヤを用いて噴霧および乾燥させて造粒粉とした後に、冷間静水圧プレス法(CIP法)などによって成形し、得られた成形体を、酸素含有ガスが流れる雰囲気中において常圧で焼成する方法であり、相対密度90%以上の高密度なターゲットを製造することができる。
しかしながら、焼結法で円筒形スパッタリングターゲットを形成しようとすると、酸化物焼結体の焼成時に、焼結体に割れやクラック、変形(反り)が発生するという問題がある。これらの不具合には、焼結体において目視では発見するのが難しい微細なクラックの発生も含まれ、この場合には、焼成後の工程、すなわち、焼結体を加工する工程やバッキングチューブと接合するボンディング工程、さらにはスパッタリング中において、酸化物焼結体に割れが発生する原因となっている。
また、スパッタリング法において、安定して均質な特性の膜を均一な膜厚で得るためには、酸化物焼結体の密度、結晶粒径、バルク抵抗について可能な限り均一とすることが望まれるが、円筒形スパッタリングターゲットの場合、このようなバルク特性にばらつきが生じやすいという問題がある。
この問題に対して、特許文献3において、円筒形状の成形体を焼結させる際に、同等の焼結収縮率を有する板状の酸化物成形体の上で焼成を行うことで、焼成時の割れやクラックを低減し、さらにはターゲットへの加工時における割れやクラックを低減することが開示されている。しかしながら、この円筒形スパッタリングターゲットにおいても、焼成後の工程、すなわち、焼結体を加工する工程やバッキングチューブと接合するボンディング工程、さらにはスパッタリング中における酸化物焼結体の割れについては、十分に改善されていないのが実情である。
特開平05−222527号公報 特開平05−156431号公報 特開2005−281862号公報
本発明の目的は、高密度でかつバルク均一性が高く、焼成時のみならず、焼成後の製造工程、スパッタリング時において、クラック、割れ、変形などの不具合が十分に抑止される、高品質な円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者が、円筒形状の成形体を焼結させる工程について、鋭意検討を行ったところ、以下の知見が得られている。すなわち、通常、酸化物焼結体を焼結させる場合、常圧において、炉内に下方より上方に向けて酸素含有ガスなどの雰囲気ガスを流通させた状態で、昇温速度や焼成温度を管理しつつ、焼成を行う、常圧焼結法が用いられる。この常圧焼結法により円筒形状の酸化物焼結体を得ようとする場合、円筒形状の成形体を焼成するために炉の炉内容積が大きくなり、これに起因して、炉内の高さ方向や、成形体の内側と外側とで、酸素含有ガスなどの雰囲気ガスの流れが不均一となっているとの知見が得られている。
具体的には、下方から上方に向けて成形体に対して斜めに上昇する雰囲気ガスの流れに沿って、この部分では炉内温度が低くなるが、この主となる流れから外れた部分では炉内温度が相対的に高くなっており、特に、成形体の内側では、外側とはガスの流れも異なってくることもあって、それぞれにおける炉内温度分布が不均一なものとなっている。
この炉内温度の不均一性に起因して、焼結体の各部で収縮速度の差が生じて、割れ、クラック、変形が生ずるものと考えられる。特に、この焼成工程で発生するクラックは、収縮速度の差によってさまざまな程度のものが発生し、この収縮速度の差によっては、焼結後の焼結体、該焼結体を研削加工した加工体においても、クラックを目視で発見できない場合がある。このようなクラックが存在するものは製品から排除されず、加工体をバッキングチューブに貼り付けるボンディング工程における割れや、スパッタリング時における割れにもつながるため、ターゲットの収率、品質を低下させる要因となっているものと考えられる。
このような知見に基づいて、本発明者は、円筒形状の成形体を焼結させる工程における炉配置について鋭意検討を行い、密度、比抵抗、結晶粒径の各バルク特性の均一性が高い円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体を得るに至ったものである。
すなわち、本発明は、雰囲気ガスを供給するための配管と、該雰囲気ガスを上方より排出する出口とを備える焼成炉を用いて、常圧において、円筒形状の成形体を焼結させて、円筒形状の酸化物焼結体を得る工程を含む、円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体の製造方法に関する。
特に、本発明では、
少なくとも2枚のメッシュ状の敷板を隙間を介して配置し、該少なくとも2枚のメッシュ状の敷板の上に、前記円筒形状の成形体の中空部分の下方を前記隙間が通過するように、該円筒形状の成形体を載置し、
前記配管を少なくとも3本配置し、該配管のうち、1本を、配管出口の高さが該円筒形状の成形体の高さ方向の下部付近となるように配管の長さを調整し、別の1本を、配管出口の高さが該円筒形状の成形体の高さ方向の上部付近となるように配管の長さを調整し、さらに別の1本を、前記メッシュ状の敷板の隙間を介して前記円筒形状成形体の中空部分に前記雰囲気ガスが流れるように配管の長さを調整して、それぞれ配置して、該雰囲気ガスを炉内に流通させて、前記焼成を行う、
ことに特徴がある。
前記出口が前記炉の天井部の一方側に設けられている炉を用い、前記3本の配管を前記炉の他方側にその幅方向に沿って並んで配置することが好ましい。
また、前記メッシュ状の敷板を2枚として、該2枚の敷板を5〜10mmの隙間を介して配置することが好ましい。
本発明の円筒形酸化物焼結体は、上記の本発明の製法によって得られ、円筒形状であって、バルクの各点における測定される、密度の相対標準偏差が1%以下、比抵抗値の相対標準偏差が10%以下、かつ、平均結晶粒径の相対標準偏差が5%以下である、ことを特徴としている。
密度が理論密度の90%以上であることが好ましい。
また、本発明の円筒形酸化物焼結体スパッタリングターゲットは、上記の製法で得られた前記円筒形状の酸化物焼結体と、バッキングチューブとを、低融点半田、金属樹脂ペースト、または導電性樹脂を用いて接合することによって、得られたものであることが好ましい。
本発明によれば、相対密度が90%以上で、高密度かつ焼結体の各点において測定される、密度のばらつき(相対標準偏差)が1%以下、バルク比抵抗値のばらつき(相対標準偏差)のばらつきが10%以下、かつ、結晶粒径のばらつき(相対標準偏差)が5%以下となる、きわめて均一性の高い円筒形酸化物焼結体を得ることができる。
この酸化物焼結体を用いることで、ターゲットの製造工程で、割れ、クラック、変形のない酸化物焼結体を得ることができるため、ターゲット自体の収率を向上させることができるのみならず、製造工程で除去しきれない、目視が不可能なクラックの製造工程や加工工程における発生が抑制され、もってスパッタリング時における酸化物焼結体の割れが減少することから、透明導電膜の収率自体も向上させることができる。
円筒形状の成形体を焼成するための焼成炉の炉内配置を示す概略図である。 円筒形状の成形体用のゴム型の斜視図である。
まず、本発明の製造方法の特徴である、焼成炉における炉内配置について、図1を参照しながら、説明する。
本発明に用いられる焼成炉は、従前より円筒形酸化物焼結体の製造に用いられているものを用いることができ、通常は、電気炉が採用される。また、従来の焼成炉と同様に、本発明に用いる焼成炉においても、雰囲気ガスを供給するための配管と、該雰囲気ガスを上方より排出する出口が備えられている。そして、本発明においても、常圧焼結法により、円筒形状の成形体を焼結させて、円筒形状の酸化物焼結体を得る点は、従来と同様である。
本発明では、焼成炉内に成形体を配置するための支持体として、少なくとも2枚のメッシュ状の敷板(2)を用い、これらの敷板(2)を、隙間(9)を介するようにして、配置する。通常は、図1に示すように2枚の敷板(2)を配置し、該隙間(9)を通じて、特に、敷板(2)の下方から上方に雰囲気ガスが流動できるようにすれば十分である。なお、メッシュ状の敷板を用いるのは、円筒形成形体の底面にもより効率よく空気や酸素を供給するためである。
本発明では、この2枚のメッシュ状の敷板(2)の上に、円筒形状の成形体(1)の中空部分(8)の下方を隙間(9)が通過するように、成形体(1)を載置する。
この隙間(9)の間隔は、雰囲気ガスがこの隙間(9)を介して成形体(1)の中空部分(8)に十分に流通できれば任意であるが、その流通性および支持体としての安定性の観点から、この隙間の間隔は、5〜10mm程度とすることが好ましい。
焼成炉では、酸素含有ガスや純酸素ガスなどの雰囲気ガスを、配管を通じて炉内に供給するが、本発明では、この配管を少なくとも3本配置し、該配管のうち、第1の配管(3−1)を、配管出口の高さが該円筒形状の成形体の高さ方向の下部付近となるように配管の長さを調整し、第2の配管(3−3)を、配管出口の高さが該円筒形状の成形体の高さ方向の上部付近となるように配管の長さを調整し、第3の配管(3−2)を、前記メッシュ状の敷板の隙間を介して前記円筒形状成形体の中空部分に前記雰囲気ガスが流れるように配管の長さを調整して、それぞれ配置している。
通常、焼成炉の炉内における配管の配置は、出口(4)とは逆側の下方において、配管出口の高さが成形体(1)の高さ方向の下部付近となるように、1本ないしは2本の配管が配置される。これに対して、本発明では、上述のように、少なくとも3本の配管を配置することにより、第1の配管(3−1)から出た雰囲気ガスは、主に成形体(1)の一方側の外周の高さ方向の下部付近に接触して分流し、反対側に回り込み、成形体(1)の側方側の下部および中間部、成形体(1)の反対側の下部から上部にかけて接触しつつ、上昇する経路をとって出口(4)に流れ、また、第2の配管(3−3)から出た雰囲気ガスは、主に成形体(1)の外周の高さ方向の中間部から上部付近に接触し分流し、反対側に回り込み、成形体(1)の側方側の中間部から上部、成形体(1)の反対側の中間部から上部にかけて接触しつつ、上昇する経路をとって出口(4)に流れ、さらに、第3の配管(3−2)から出た雰囲気ガスは、主に敷板(2)の間の隙間(9)を通過して、成形体(1)の中空部分(8)を上昇する経路をとって出口(4)に流れる。このような炉内配置により、焼成中に、円筒形状の成形体の高さ方向にわたって、また、外側と内側との間で、それぞれ均一な雰囲気ガスの流れ作ることができる。これにより、炉内の温度分布を均一なものとすることができ、焼結を均一に進行させることが可能となる。
なお、配管の配置は、出口(4)が炉の天井部の一方側に設けられている場合には、3本の配管(3−1〜3−3)を、炉の他方側にその幅方向に沿って並んで配置することが好ましい。ただし、出口(4)の配置に応じて、雰囲気ガスが成形体(1)の高さ方向にわたって、外側と内側のいずれにも十分に接触するように、適宜配置を変更することは可能である。
具体的な配管の長さ、大きさなどについては、適用される炉および成形体の大きさに応じ、かつ、それらに応じて調整できるようになっていることが好ましい。具体的な一例としては、炉として、電気炉の炉内の大きさが30×40×30cm〜40×50×40cm程度である場合、成形体の大きさをφ15×25cm〜φ20×30cm程度とし、2枚のメッシュ状の敷板を炉の底面から2〜5cmのところに、0.5〜1cmの隙間を空けて配置するようにして、雰囲気ガスの出口がある側と反対側の壁から2〜5cmのところに、3本の配管を5〜10cm間隔で配置し、第1の配管の配管出口を、メッシュ上1〜5cmのところに、第2の配管の配管出口をメッシュ上20〜25cmのところに、第3の配管の配管出口をメッシュ下1〜4cmのところに、それぞれ位置させる。
本発明では、このような炉内配置に特徴を有するものであって、この炉を用いた焼成の条件などについては、基本的には、用いる炉や対象となる酸化物の組成などに応じて、適宜設定されるものである。ただし、一般的な焼成時の条件の例としては、次のような条件を挙げることができる。
まず、成形体からバインダ、分散剤などの有機分を分解および揮発させる脱脂処理を、300〜500℃の温度で、5〜20時間程度行う。バインダや分散剤の分解温度を考慮に入れると、350〜450℃の温度で10〜15時間程度行なうことがより好ましい。脱脂処理時の温度が300℃より低い場合や脱脂処理の保持時間が5時間より短いと、十分な脱脂効果が得られず、温度が500℃より高い場合や保持時間が20時間を超えると、生産性が悪化してしまう。脱脂処理時には、配管から、通常大気を雰囲気ガスとして流す。流量は、配管1本につき、炉内容積0.1m3当たり5〜20L/min程度とすることが好ましい。雰囲気ガスの流量が5L/minより少ないと脱脂が不十分となり、20L/minより多いと炉内温度分布がばらつく原因となる。このような流量で雰囲気ガスを流すことにより、炉内の温度差を±20℃の範囲内で制御することができる。
次に、成形体を焼結させる焼成を行うが、このとき昇温速度は、効果的に内部の空孔を外部へ放出させるために150℃/hr以下とする。昇温速度が遅いほど、昇温時の炉内温度分布が均一となるほか、焼結体表面と内部の粒成長速度も均一になることから、より効率的に空孔を外部へ放出できるため、好ましくは100℃/hr以下、さらに好ましくは80℃/hr以下とする。なお、昇温速度が15℃/hrより遅い場合には生産性が低下し、150℃/hrより速い場合には炉内の温度分布が不均一となってしまう。
また、焼結温度は、酸化物の組成によって異なるが、たとえば、酸化インジウムを主成分とする酸化物焼結体の場合には1200〜1600℃、高密度な焼結体を得るため観点から、1300〜1600℃とすることが好ましく、酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体の場合には1200〜1400℃、同様の観点から、1250〜1350℃とすることが好ましい。
焼結時間は、5〜40時間、充分な焼結性と生産性との兼ね合いから、好ましくは10〜30時間、さらに好ましくは15〜25時間とする。焼結温度が低いと高密度な焼結体が得られず、一方、焼結温度が高すぎると、焼結体の反りが大きくなってしまうほか、還元反応が進み、表面からの金属元素の揮発が著しくなってしまう。
また、焼成時には、雰囲気ガスとして純酸素ガスを流す。流量は、配管1本につき、炉内容積0.1m3当たり5〜20L/min程度とする。
このような炉内配置を特徴とする本発明の製法によって、得られる円筒形酸化物焼結体において、バルクの各点における測定される、密度の相対標準偏差を1%以下、比抵抗値の相対標準偏差を10%以下、かつ、平均結晶粒径の相対標準偏差を5%以下とすることができ、バルク特性がきわめて均一である酸化物焼結体を得ることが可能となる。
なお、本発明に用いられる酸化物の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、酸化インジウムを主成分とし、酸化スズを1〜10質量%含むもの、または、酸化亜鉛を主成分とし、酸化アルミニウムを1〜3質量%含むものなどが代表的に例示されるが、これらに限定されることなく、本発明は、透明導電膜形成用の酸化物焼結体スパッタリングターゲットに広く適用されるものである。
上述の通り、本発明の特徴は、脱脂工程および焼成工程において用いられる焼成炉の炉内配置を工夫することにより、得られる円筒形酸化物焼結体のバルク特性を均一にしている点に特徴があるが、特に、好適な酸化物焼結体を得るための製造条件について、以下、簡単に説明を行う。
まず、使用する原料粉末の平均粒径は0.1〜1.5μmであることが好ましく、原料粉の粒径が小さいほど、焼結の駆動力が大きくなることから、より高密度な焼結体を得るためには、0.1〜1.0μmであることがさらに好ましい。平均粒径が1.5μmを超えると、粗大粒子が多くなり、粉末の焼結性が阻害され、焼結体密度を相対密度で90%以上とすることができなくなる可能性がある。一方、0.1μm未満まで微細化すると、取扱いが困難となり、粉末の凝集により、かえって焼結性が阻害されてしまうおそれがある。
原料粉末の混合法としては、ボールミル法、ビーズミル法、ジェットミル法などがよく利用されている。本発明に用いる原料粉末の混合方法は特に限定されず、上記のいずれの方法も使用することができるが、ビーズミルを用いることで、より高密度、高品質の酸化物焼結体を得ることができる。これはボールミルと比較してビーズミルがより均一性の高い、微細な原料粉末を得ることができるためである。ジェットミルでも同様に均一性の高い、微細な混合粉末を得ることができるが、処理できる原料の量が多いことや、装置の簡便性の点で、ビーズミルを用いる方が好ましい。
ビーズミル法とは、ベッセルと呼ばれる容器の中に、ビーズ(粉砕メディア、ビーズ径1〜3mm)を70〜90%充填しておき、ベッセル中央の回転軸を周速7〜10m/secで回転させることにより、ビーズに運動を与える。そこに、原料粉末などの被粉砕物を液体に混ぜたスラリーをポンプで送り込み、ビーズを衝突させることによって微粉砕および分散させる。ビーズミルの場合、被粉砕物に合わせてビーズ径を小さくすれば効率が上がる。一般的に、ビーズミルはボールミルの1000倍近い加速度で、微粉砕と混合を実現することができる。
ビーズミルには、ガラス、セラミック、金属などの従来用いられているメディアを用いることができ、粉砕効率の点から使用するビーズの径は1〜3mmであることが好ましい。ビーズミルの場合、混合時間は、1〜6時間程度とする。またパス数は1回でも良いが、2回以上が好ましく、5回以上で十分な効果が得られる。
ビーズミル法では、原料粉末にポリカルボン酸などの分散剤を添加することで、原料粉末をより効率的に粉砕および混合することが可能である。高密度な酸化物焼結体を得るために添加する分散剤の量は、0.5〜2質量%とすることが好ましい。分散剤の量が0.5質量%より少ない場合には、原料粉末を十分に分散することができず、2質量%より多い場合には、工程における脱バインダ工程時に割れが発生しやすくなるため好ましくない。
次に、このようにして処理されたスラリーを用いて成形を行う。成形方法としては、鋳込み成形法、プレス成形法のいずれも採用することができる。鋳込み成形を行う場合、得られたスラリーを鋳込み成形用の型に注入して成形体を製造する。スラリーのチキソトロピー現象を防ぐため、ビーズミル処理から鋳込みまでの時間は、10時間以内とすることが好ましい。なお、鋳込み成形用の型としては、図2に示すような、上下蓋(5a、b)と、外枠(7)と、中枠(6)からなるものを用いることができ、外枠(7)と中枠(6)の間の空間にスラリーを投入する。この場合、これらの型の材質は、石膏などの吸水性のものを用いることができる。
プレス成形を行う場合、得られたスラリーにバインダとしてポリビニルアルコール(PVA)などを添加し、必要に応じて水分調節を行ってから、スプレードライヤで噴霧および乾燥させて、球状の造粒粉とする。高密度な酸化物焼結体を得るためにはスラリーに添加するバインダの量は0.5質量%以上2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.7質量%以上1.5質量%以下である。2質量%を超えると、焼成工程における脱バインダ工程時に割れが発生しやすくなるため好ましくない。
このとき、バインダ添加後のスラリー粘度が0.01Pa・s〜0.3Pa・sとなるように調整することが好ましく、造粒時のつまりを防止するため、0.01Pa・s〜0.1Pa・sとなるように調整することがより好ましい。また、スラリー濃度(スラリー中酸化物重量/スラリー全重量×100)は60〜75%の間で調製することが望ましい。スラリー濃度が60%以下の場合、スラリー中の水分量が多くなってしまうことから、造粒時のスプレードライヤチャンバ内の温度調節が難しくなってしまう。また、スラリー濃度が75%より高い場合、スラリー中の水分量が少ないことからチューブ内、またはスプレードライヤ中のスラリー導入部分においてスラリーが固化し、つまりが発生する原因となる。
その後、得られた造粒粉をプレス成形する。プレス方法としては、金型成形法を用いて円筒形状に1次成形した成形体をCIP法によって2次成形する方法と、造粒粉を円筒形状のゴム型に充填し、直接CIP法によって成形する方法のいずれも使用することができる。CIPの圧力は十分な圧密効果を得るため100MPa以上であることが好ましく、さらに200〜500MPaであることがより好ましい。100MPaより小さい場合には十分な圧密効果を得ることができず、500MPa以上の場合には装置の耐久性を考えると、量産には適しているとはいえない。
なお、プレス成形用の型としても、図2に示すような、上下蓋(5a、b)と、外枠(7)と、中枠(6)からなる構造のものを用いることができ、外枠(7)と中枠(6)の間の空間に造粒粉を投入する。この場合、これらの型の材質は、蓋にはシリコンゴム、中枠には硬質プラスチックゴム、外枠には軟質ゴムをそれぞれ用いることができる。
鋳込み成形法またはプレス成形法により得られた成形体を、本発明の炉内配置とした焼成炉を用いて、焼成して、焼結させることにより、本発明の酸化物焼結体を得ることができる。
上記の方法で製造された本発明の円筒形酸化物焼結体は、平面研削などにより加工し、所定の寸法にした後、純金属もしくは合金からなるバッキングチューブに接合して、ターゲット材とする。接合剤としては、低融点半田、金属粉末を含む樹脂ペーストもしくは導電性樹脂を用いることができるが、導電性および展延性の点で、低融点半田を用いるのが好ましい。このような低融点半田としてはインジウムを主成分として80%以上含むものが、特に導電性および展延性に優れているため好ましい。
以下、本発明の例示を目的として、その実施例について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
50%体積粒度分布径が0.65μmの酸化亜鉛と、50%体積粒度分布が1.84μmの酸化アルミニウムを、98:2(質量%)となるように秤量し、(酸化物重量)/(酸化物重量+水重量)×100=60%となるように水(純水)を加え、また酸化物の総重量に対してポリカルボン酸系分散剤を0.7質量%添加してスラリーを調整した。
調整したスラリーを、直径3mmのビーズを入れたビーズミル(アシザワファインテック株式会社製)で、5Pass処理した。このときのミル回転数は1300rpm、処理時間は260分であった。
ビーズミル粉砕処理後のスラリーに、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA)を1質量%添加した後、スプレードライヤ(大川原加工機株式会社製)にて噴霧および乾燥して、球状の造粒粉とした。このときPVA添加後のスラリーについて粘度計(芝浦システム株式会社製)によりスラリー特性を測定したところ、スラリー粘度は15mPa・s、スラリー比重は1.88であった。また、得られた造粒粉の粒度分布は、粒径>75μmが6.9%、45μm<粒径<45μmが35.3%、25μm<粒径<45μmが48.0%、粒径<25μmが9.8%であり、タップ密度は1.52g/mlであった。
得られた造粒粉を円筒形状のゴム型に充填し、冷間静水圧プレス(CIP)成形を行った。このとき使用したゴム型は、その外枠(7)の寸法が、その外径が216mm、その内径が204mmであり、中枠の外径が148mm、高さが250mmであった。CIP成形における荷重は、294MPa(3ton/cm2)とした。
作製した成形体の寸法は、外径が186mm、内径が146mm、高さが179mmであった。作製した成形体について4本を、炉内容積0.06m3(内寸:40×50×30cm)の焼成炉(丸祥電器株式会社製、電気炉)に、図1に示すように配置して、脱脂過程および焼成工程に供した。2枚のメッシュ状の敷板(2)を、炉の底面から3cmのところに、1cmの隙間を空けて配置した。また、雰囲気ガスの出口(4)がある側と反対側の壁から3cmのところに3本の配管を10cm間隔で配置した。このうち、第1の配管(3−1)の配管出口を、メッシュ上2cmのところに、第2の配管(3−3)の配管出口をメッシュ上16cmのところに、第3の配管(3−2)の配管出口をメッシュ下2cmのところに、それぞれ位置させた。それぞれの配管の内径は13mmであった。
脱脂工程および焼結過程における条件は、以下の通りであった。
(脱脂過程)
脱脂温度:450℃
昇温速度:150℃までは30℃/hrで、150〜450℃の間を9℃/hrで、それぞれ昇温した。なお、350℃、400℃、450℃において、それぞれ6時間温度保持を行った。
保持時間:350℃、400℃、450℃にてそれぞれ6時間
雰囲気ガス:通常大気
雰囲気ガス流量:総量で30L/min(配管1本当たり10L/min)
(焼結過程)
焼結温度:1340℃
昇温速度:30℃/hr
保持時間:20時間
雰囲気ガス:純酸素ガス(酸素100%)
雰囲気ガス流量:総量で15L/min(配管1本当たり5L/min)
冷却速度:100℃まで0.7℃/minで冷却
焼結後の円筒形酸化物焼結体の寸法は、外径が163mm、内径が127mm、高さが145mmであった。
円筒形酸化物焼結体の不具合について確認をしたところ、4本とも、割れ、欠け、クラック、変形などは見られなかった。
得られた焼結体を、内径160mm、外形127mm、高さ142.5mmになるように研削加工した。研削後の加工体を確認したところ、4本とも割れ、クラック、変形などの不具合の発生はなかった。
このうち1本の加工体について、密度、バルク比抵抗値、平均結晶粒径のバラツキを評価した。測定点は、円筒形酸化物加工体の円周方向については90°ごとに4点、高さ方向については上底からおよそ2cm、下底からおよそ2cm、上下の測定点の中間点の3点であり、1つの加工体について計12点を測定した。
密度の測定は、加工体の各測定点を、バンドソーを使用して4〜5cm角程度の大きさで切り出した後、行った。アルキメデス法で評価した密度の平均値は、5.347g/cm3(相対密度93.3%、理論密度として、5.728g/cm3を使用)、ばらつきを示す相対標準偏差は0.1%であった。
バルク比抵抗値については、円筒形酸化物加工体の外周面および内周面において、各測定点について、4探針抵抗計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスターGP MCP−T610)を用いて評価した、比抵抗の平均値は、円筒形酸化物加工体の外周面における平均値が、3.063×10-3Ωcm、相対標準偏差が6.0%、円筒形酸化物加工体の内周面における平均値が、2.931×10-3Ωcm、相対標準偏差が4.7%であった。
平均結晶粒径は、円筒形酸化物加工体の外周面をサーマルエッチング法によって粒界を浮き出させた後、SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S‐4800)を用いて観察(倍率1000倍、視野50μm四方)を行い、SEM像からコード法を用いて評価した。コード法は、SEM写真に任意の長さの線を引き、線が横切った粒子の数で線の長さを割り、この値をSEM写真の縮尺に当てはめて換算し、結晶粒径を算出する方法である。その結果、結晶粒径の平均値は、2.97μm、相対標準偏差は4.1%であった。また上記のSEM観察像からは円筒形酸化物加工体表面に微小なクラックの発生は確認されなかった。
(実施例2)
50%体積粒度分布径が0.65μmの酸化亜鉛と、同じく1.84μmの酸化ガリウムを、99.4:0.5(質量%)となるように秤量し、(酸化物重量)/(酸化物重量+水重量)×100=60%となるように水(純水)を加え、また酸化物の総重量に対してポリカルボン酸系分散剤を0.7質量%添加してスラリーを調整した。
調整したスラリーを、直径3mmのビーズを入れたビーズミルで5Pass処理した。このときミル回転数は1300rpm、処理時間は200分であった。
ビーズミル粉砕処理後のスラリーにバインダとしてPVAを1質量%添加した後、スプレードライヤにて噴霧および乾燥して、球状の造粒粉とした。このときPVA添加後のスラリー粘度は、16mPa・s、スラリー比重は1.91であり、得られた造粒粉の粒度分布は、粒径>75μmが11.4%、45μm<粒径<45μmが35.2%、25μm<粒径<45μmが41.9%、粒径<25μmが11.4%であり、タップ密度は1.53g/mlであった。
得られた造粒粉を円筒形状のゴム型に充填し、実施例1と同様の方法でCIP成形し、得られた4本の成形体を同じ焼成炉を用いて焼結させた。このときの脱脂過程、焼結過程の条件は、以下の通りである。
(脱脂過程)
脱脂温度:400℃
昇温速度:150℃までは30℃/hrで、150〜400℃の間を9℃/hrで、それぞれ昇温した。なお、350℃、400℃において、それぞれ6時間温度保持を行った。
保持時間:350℃、400℃にてそれぞれ6時間
雰囲気ガス:通常大気
雰囲気ガス流量:総量で30L/min(配管1本当たり10L/min)
(焼結過程)
焼結温度:1230℃
昇温速度:15℃/hr
保持時間:20時間
雰囲気ガス:純酸素ガス(酸素100%)
雰囲気ガス流量:総量で15L/min(配管1本当たり5L/min)
冷却速度:100℃まで0.7℃/minで冷却
得られた円筒形酸化物焼結体の寸法は、外径が163mm、内径が125mm、高さが145mmであった。
割れ、クラック、変形などを確認したところ、4本とも、不具合は見られなかった。
得られた焼結体を外径160mm、内径134.4mm、高さ142.5mmになるように研削加工した。研削後の加工体を確認したところ、4本とも割れ、クラック、変形などの不具合の発生はなかった。
この加工体のうち1本について、実施例1と同様の方法で、密度、バルク比抵抗値、平均結晶粒径のバラツキを評価した。
アルキメデス法で評価した密度の平均値は5.632g/cm3(相対密度97.5%、理論密度として5.776g/cm3を使用)であり、ばらつきを示す相対標準偏差は0.5%であった。また、4探針抵抗計を用いて評価した比抵抗の平均値は、円筒形酸化物加工体の外周面が1.961×10-3Ωcm、相対標準偏差は5.4%、円筒形酸化物加工体の内周面の平均値が1.867×10-3Ωcm、相対標準偏差は6.6%であった。さらに、結晶粒径の平均値は、6.6μm、相対標準偏差は4.2%であった。またSEM観察像からは円筒形酸化物加工体表面に微小なクラックの発生は見られなかった。
(実施例3)
50%体積粒度分布径が0.4μmの酸化インジウムと、同じく1.54μmの酸化スズを、90:10(質量%)となるように秤量し、(酸化物重量)/(酸化物重量+水重量)×100=65%となるように水(純水)を加え、また酸化物の総重量に対してポリカルボン酸系分散剤を1.6質量%添加してスラリーを調整した。
調整したスラリーを、直径3mmのビーズを入れたビーズミルで5Pass処理した。このときミル回転数は1400rpm、処理時間は300分であった。
ビーズミル粉砕処理後のスラリーに、バインダとしてPVAを1.4質量%添加した後、スプレードライヤにて噴霧および乾燥して、球状の造粒粉とした。このときPVA添加後のスラリー粘度は、45mPa・S、スラリー比重は1.97であり、得られた造粒粉の粒度分布は粒径>75μmが12.2%、45μm<粒径<45μmが56.1%、25μm<粒径<45μmが27.8%、粒径<25μmが3.9%であり、タップ密度は1.52g/mlであった。
得られた造粒粉を円筒形状のゴム型に充填し、実施例1と同様の方法で、CIP成形し、得られた4本の成形体を同じ焼成炉を用いて焼結させた。このときの脱脂過程、焼結過程の条件は以下の通りである。
(脱脂過程)
脱脂温度:400℃
昇温速度:150℃までは30℃/hrで、150〜450℃の間を9℃/hrで、それぞれ昇温した。なお、350℃、400℃において、それぞれ6時間保持を行った。
保持時間:350℃、400℃にてそれぞれ6時間
雰囲気ガス:通常大気
雰囲気ガス流量:総量で30L/min(配管1本当たり10L/min)
(焼結過程)
焼結温度:1550℃
昇温速度:120℃/hr
保持時間:30時間
雰囲気ガス:純酸素ガス(酸素100%)
雰囲気ガス流量:総量で30L/min(配管1本当たり10L/min)
冷却速度:100℃まで0.7℃/minで冷却
得られた円筒形酸化物焼結体の寸法は、外径が162mm、内径が126mm、高さが144mmであった。
割れ、クラック、変形などを確認したところ、4本とも、不具合は見られなかった。
得られた焼結体を、外径160mm、内径134.4mm、高さ142.5mmになるように研削加工した。研削後の加工体を確認したところ、4本とも割れ、クラック、変形などの不具合の発生はなかった。
この加工体のうち1本について、実施例1と同様の方法で、密度、バルク比抵抗値、平均結晶粒径のバラツキを評価した。
アルキメデス法で評価した密度の平均値は7.112g/cm3(相対密度99.5%、理論密度として7.151g/cm3を使用)であり、ばらつきを示す相対標準偏差は0.4%であった。また、4探針抵抗計を用いて評価した比抵抗の平均値は、円筒形酸化物加工体の外周面が2.932×10-4Ω・cm、相対標準偏差が6.0%、円筒形酸化物加工体の内周面の平均値が2.971×10-4Ωcm、相対標準偏差が5.6%であった。また、結晶粒径の平均値は、5.67μm、相対標準偏差は3.0%であった。またSEM観察像からは円筒形酸化物加工体表面に微小なクラックの発生は見られなかった。
(比較例1)
実施例1と同様の製造方法で、酸化亜鉛98質量%、酸化アルミニウム2質量%の酸化物成形体を4本作製した。
これを焼結炉内に配置し、2本の同じ高さ(敷板上2cmで、成形体の下部付近に配管出口の高さが合うように長さを調整)の配管から、雰囲気ガスを流して脱脂工程、焼成工程を行った。脱脂工程および焼成工程におけるその他の条件は、実施例1と同様であった。
焼結後の円筒形酸化物焼結体を確認したところ、4本中2本にクラックの発生が確認された。クラックの発生が目視で確認されなかった円筒形酸化物焼結体を、実施例1と同様の寸法に加工した後、実施例1と同様の方法で、密度、バルク比抵抗値、平均結晶粒径のバラツキを評価した。
アルキメデス法で評価した密度の平均値は5.358g/cm3(相対密度93.5% 理論密度として5.728g/cm3を使用)であった。密度のばらつきを示す相対標準偏差は1.5%であり、円筒形酸化物加工体の高さ方向における密度のばらつきが大きかった。また、4探針抵抗計を用いて評価した比抵抗の平均値は、円筒形酸化物加工体の外周面が3.133×10-4Ωcm、相対標準偏差が6.9%、円筒形酸化物加工体の内周面の平均値が2.756×10-4Ωcm、相対標準偏差が7.6%であり、内周面に対して外周面の比抵抗が大きく、その差が12%であった。また、結晶粒径の平均値は5.67μm、相対標準偏差は6.8%であり、円筒形酸化物加工体の高さ方向において、ばらつきが大きかった。
Figure 0005299415
1 円筒形状酸化物成形体
2 敷板
3−1 雰囲気ガス配管
3−2 雰囲気ガス配管
3−3 雰囲気ガス配管
4 雰囲気ガス出口
5a、5b 上下蓋(シリコンゴム製)
6 中枠(硬質プラスチックゴム製)
7 外枠(軟質ゴム製)
8 中空部分
9 隙間

Claims (6)

  1. 雰囲気ガスを供給するための配管と、該雰囲気ガスを上方より排出する出口とを備える焼成炉を用いて、常圧において、円筒形状の成形体を焼結させて、円筒形状の酸化物焼結体を得る工程を含む、円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体の製造方法において、
    少なくとも2枚のメッシュ状の敷板を隙間を介して配置し、該少なくとも2枚のメッシュ状の敷板の上に、前記円筒形状の成形体の中空部分の下方を前記隙間が通過するように、該円筒形状の成形体を載置し、
    前記配管を少なくとも3本配置し、該配管のうち、1本を、配管出口の高さが該円筒形状の成形体の高さ方向の下部付近となるように配管の長さを調整し、別の1本を、配管出口の高さが該円筒形状の成形体の高さ方向の上部付近となるように配管の長さを調整し、さらに別の1本を、前記メッシュ状の敷板の隙間を介して前記円筒形状成形体の中空部分に前記雰囲気ガスが流れるように配管の長さを調整して、それぞれ配置して、該雰囲気ガスを炉内に流通させて、前記焼成を行う、
    ことを特徴とする、円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体の製造方法。
  2. 前記出口が前記炉の天井部の一方側に設けられている炉を用い、前記3本の配管を前記炉の他方側にその幅方向に沿って並んで配置する、請求項1に記載の円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体の製造方法。
  3. 前記メッシュ状の敷板が2枚からなり、該2枚の敷板を5〜10mmの隙間を介して配置する、請求項1または2に記載の円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかの製造方法によって得られ、円筒形状であって、バルクの各点における測定される、密度の相対標準偏差が1%以下、比抵抗値の相対標準偏差が10%以下、かつ、平均結晶粒径の相対標準偏差が5%以下である、円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体。
  5. 密度が理論密度の90%以上である、請求項4に記載の円筒形スパッタリングターゲット用酸化物焼結体。
  6. 請求項1〜3のいずれかの製造方法によって得られた前記円筒形状の酸化物焼結体と、バッキングチューブとを、低融点半田、金属樹脂ペースト、または導電性樹脂を用いて接合することによって得られたものである円筒形酸化物焼結体スパッタリングターゲット。
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