以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[構成]
始めに、図1を参照し、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置を適用したハイブリッド車両1の構成の一例について説明する。図1は、ハイブリッド車両1の概略構成図である。ハイブリッド車両1は、ECU100、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13、車速センサ14、及びハイブリッド駆動装置10を備える。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)、A/D(Analog to Digital)変換器及び入出力インターフェイスなどを有し、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御する電子制御ユニットである。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する制御を実行する。そして、ECU100は、本発明におけるフィードバック制御手段及び制御手段として機能する。なお、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等であってもよい。
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1の車軸たる左車軸SFL(左前輪FLに対応)及び右車軸SFR(右前輪FRに対応)に駆動力としての駆動トルクを供給することによりハイブリッド車両1を駆動するドライブユニットである。ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成については後述する。
PCU11は、不図示のインバータを含み、バッテリ12と後述する各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いはバッテリ12を介さない各モータジェネレータ相互間の電力の入出力を制御する制御ユニットである。具体的には、PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して各モータジェネレータに供給すると共に、各モータジェネレータによって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給する。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される。
バッテリ12は、複数の単位電池セルを直列接続した構成を有し、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する電池ユニットであり、本発明に係る「蓄電手段」の一例である。
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度「Ta」を検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される。
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速「V」を検出するセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される。
ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。図2は、ハイブリッド駆動装置10の概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「モータMG1」と略称する。)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「モータMG2」と略称する。)、入力軸400、ロック機構500、MG2リダクション機構600及び減速機構700を備える。
エンジン200は、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能し、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ガソリンエンジンである。エンジン200は、公知のガソリンエンジンであり、ここでは、その詳細な構成を割愛するが、エンジン200の出力動力たるエンジントルク「Te」は、不図示のクランク軸を介してハイブリッド駆動装置10の入力軸400に連結されている。尚、エンジン200は、本発明に係る内燃機関の採り得る実践的態様の一例に過ぎず、本発明に係る内燃機関の実践的態様には、エンジン200に限らず、公知の各種エンジンが採用される。
モータMG1は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機である。
モータMG2は、モータMG1よりも体格の大きい、本発明に係る「回転電機」の一例たる電動発電機であり、モータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備える。
尚、モータMG1及びモータMG2は、同期電動発電機として機能し、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。
動力分割機構300は、本発明に係る「動力伝達機構」の一例たる複合型遊星歯車機構である。
動力分割機構300は、中心部に設けられた、サンギアS1と、サンギアS1の外周に同心円状に設けられたリングギアR1と、サンギアS1とリングギアR1との間に配置されてサンギアS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC1とを備える。
ここで、サンギアS1は、モータMG1のロータに、その回転軸を共有する形で連結されており、その回転数はモータMG1の回転数(以後、「MG1回転数Nmg1」と呼ぶ。)と等価である。また、リングギアR1は、減速機構700及びMG2リダクション機構600の後述するリングギアR2に連結されており、その回転数は、駆動軸の回転数(以後、「出力回転数Nout」と呼ぶ。)と等価である。更に、キャリアC1は、エンジン200のクランク軸に連結された入力軸400と連結されており、その回転数は、エンジン200の回転数(以後、「エンジン回転数Ne」と呼ぶ。)と等価である。
MG2リダクション機構600は、動力分割機構300と同様の遊星歯車機構である。MG2リダクション機構600は、中心部に設けられたサンギアS2と、サンギアS2の外周に同心円状に設けられたリングギアR2と、サンギアS2とリングギアR2との間に配置されてサンギアS2の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC2とを備える。また、サンギアS2は、モータMG2のロータが連結される。
ここで、MG2リダクション機構600のリングギアR2は、先に述べたように動力分割機構300のリングギアR1と連結され、車軸と一義的な回転状態を呈する。また、キャリアC2は、固定要素により回転不能に固定されている。従って、残余の一回転要素たるサンギアS2に固定されたモータMG2には、駆動軸の回転がMG2リダクション機構600を構成する各ギアのギア比に応じて定まる減速比に応じて減速された形で伝達される。このように、MG2リダクション機構600は、減速ギア機構として機能する。そして、MG2リダクション機構600と動力分割機構300とによって規定される複合型遊星歯車機構は、回転二自由度の差動機構である。よって、モータMG2の回転数(以後、「MG2回転数Nmg2」と呼ぶ。)は、車速Vに応じて一義的に定まる。
減速機構700は、車軸と一義的な回転状態を呈する駆動軸(符号省略)と、この駆動軸に連結された減速ギア(符号省略)と、デファレンシャル(符号省略)とを含むギア機構である。各車軸の回転数は、減速機構700により所定のギア比に従って減速された状態で駆動軸に伝達される。この駆動軸には、先に述べたようにリングギアR1及びリングギアR2が連結されており、各リングギアが、車速Vと一義的な回転状態を呈する構造となっている。
尚、モータMG2は、モータMG1及びエンジン200と異なり、駆動軸に対し、その出力トルク(以後、「MG2トルクTm」と呼ぶ。)を作用させることが可能である。従って、モータMG2は、駆動軸にトルクを付加してハイブリッド車両1の走行をアシストすることも、駆動軸からのトルクの入力により電力回生を行うことも可能である。MG2トルクTmは、モータMG1の入出力トルク(以後、「MG1トルクTg」と呼ぶ。)と共に、PCU11を介してECU100により制御される。
ハイブリッド駆動装置10は、図示破線枠A1及びA2に相当する部位に、レゾルバ等の回転センサが設けられている。これら回転センサは、ECU100と電気的に接続された状態にあり、検出された回転数は、夫々ECU100に対し一定又は不定の周期で送出されている。補足すると、図示破線枠A1に相当する部位の回転数とは、MG2回転数Nmg2であり、図示破線枠A2に相当する部位の回転数とは、MG1回転数Nmg1である。
動力分割機構300は、上述した構成の下で、エンジン200から入力軸400に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1によってサンギアS1及びリングギアR1に所定の比率、具体的には各ギア相互間のギア比に応じた比率で分配する。即ち、動力分割機構300は、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能である。この際、リングギアR1の歯数に対するサンギアS1の歯数としてのギア比「ρ」を定義すると、エンジン200からキャリアC1に対しエンジントルクTeを作用させた場合に、サンギアS1に作用するトルク「Tes」は下記(1)式により、また駆動軸に現れるエンジン直達トルク「Ter」は下記(2)式により、夫々表される。
Tes=−Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
尚、本発明に係る「動力伝達機構」に係る実施形態上の構成は、動力分割機構300のものに限定されない。例えば、本発明に係る動力伝達機構は、複数の遊星歯車機構が組み合わされた複合型遊星歯車機構であってもよい。
ロック機構500は、湿式多板型クラッチ機構である。ロック機構500は、モータMG1の回転軸に連結された第1のクラッチ板と、固定要素に連結された第2のクラッチ板を備えており、これらクラッチ板の係合状態が、図示せぬ油圧制御機構により制御される。この際、クラッチ板同士が係合した状態では、モータMG1は回転不能にロックされ、所謂MG1ロックと称される状態が実現される。一方これらクラッチ板同士が解放された状態では、モータMG1は自由に回転可能である。尚、モータMG1は、動力分割機構300のサンギアS1に連結されており、モータMG1をロックすることは、サンギアS1をロックすることと等価である。即ち、ロック機構500のクラッチ板同士が相互に係合すると、サンギアS1は本発明に係るロック状態となり、クラッチ板同士が解放されると、サンギアS1は本発明に係る非ロック状態となる。
尚、ロック機構500は、例えば、電磁ドグクラッチ機構や電磁カムロック機構等他の係合装置であってもよい。
[制御方法]
以下では、ECU100が実行する制御方法について具体的に説明する。
(各変速モードでの基本制御)
ハイブリッド車両1は、ロック対象となる動力分割機構300のサンギアS1の状態に応じて、本発明に係る変速モードの一例として、固定変速モード及び無段変速モードを選択可能である。以下、各変速モードでの基本的な制御について説明する。
図3は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態を例示する動作共線図である。具体的には、図3(a)は、無段変速モードの場合の動作共線図を示す。また、図3(b)は、固定変速モードの場合の動作共線図を示す。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
図3(a)において、縦軸は回転数を表しており、横軸は、左から順にモータMG1(一義的にサンギアS1)、エンジン200(一義的にキャリアC1)及びモータMG2(一義的に駆動軸)を表す。
ここで、動力分割機構300は、相互に差動関係にある複数の回転要素を備えた回転二自由度の遊星歯車機構であり、サンギアS1、キャリアC1及びリングギアR1のうち二要素の回転数が定まった場合に、残余の一回転要素の回転数が必然的に定まる。即ち、動作共線図上において、各回転要素の動作状態は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態に一対一に対応する一の動作共線によって表される。
図3(a)において、車速V及び出力回転数Noutと一義的な関係にあるモータMG2の動作点が動作点「m1」であるとする。この場合、モータMG1の動作点が動作点「g1」であれば、残余の回転要素の一たるキャリアC1に連結されたエンジン200の動作点は、動作点「e1」となる。この際、ECU100は、出力回転数Noutを維持したままモータMG1の動作点を動作点「g2」及び動作点「g3」に変化させた場合、エンジン200の動作点は、夫々動作点「e2」及び動作点「e3」へと変化する。
即ち、この場合、ECU100は、モータMG1を回転数制御機構として機能させることによって、エンジン200を所望の動作点で動作させる。この状態に対応する変速モードが、無段変速モードである。無段変速モードでは、エンジン200の動作点(以後、「エンジン動作点」と呼ぶ。)は、基本的にエンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点に制御される。なお、この場合のエンジン動作点とは、エンジン回転数NeとエンジントルクTeとの組み合わせによって規定されるエンジン200の一動作条件を意味する。
ここで、無段変速モードでは、MG1回転数Nmg1は可変である必要がある。このため、ECU100は、無段変速モードを選択する場合、ロック機構500を、サンギアS1が非ロック状態となるように制御する。
また、駆動軸にエンジン直達トルクTerを供給するため、ECU100は、エンジントルクTeに応じてサンギアS1の回転軸(以後、「サンギア軸」と呼ぶ。)に現れる先述のトルクTesと大きさが等しく且つ符号が反転した(即ち、負トルクである)反力トルクを、モータMG1からこのサンギア軸に供給する。この場合、動作点g1或いは動作点g2といった正回転領域の動作点で、モータMG1は正回転負トルクの電力回生状態(即ち、発電状態)となる。このように、ECU100は、無段変速モードでは、モータMG1を反力要素として機能させることにより、駆動軸にエンジントルクTeの一部を供給しつつ、サンギア軸に分配されるエンジントルクTeの一部で電力回生(発電)を行う。駆動軸に対し要求されるトルク(以後、「要求駆動トルク」と呼ぶ。)がエンジン直達トルクTerで不足する場合、ECU100は、この回生電力を利用する形で、或いは適宜バッテリ12から電力を持ち出して、モータMG2から駆動軸に対し適宜アシストトルクとしてのMG2トルクTmを供給する。
一方、例えば高速軽負荷走行時等、例えば出力回転数Noutが高い割にエンジン回転数Neが低く済むような運転条件では、モータMG1が、例えば動作点g3の如き負回転領域の動作点となる。モータMG1は、エンジントルクTeの反力トルクとして負トルクを出力しているから、この場合、モータMG1は、負回転負トルクの状態となって力行状態となる。即ち、この場合、モータMG1の入出力トルクであるMG1トルクTgは、ハイブリッド車両1の駆動トルクとして駆動軸に伝達される。他方、ECU100は、エンジン直達トルクTerとMG2トルクTmとの総和がドライバの要求するトルクに合致するように、エンジン200、モータMG1及びモータMG2が相互に協調的に制御する。従って、このようにモータMG1が力行状態に陥った場合、モータMG2は、駆動軸に供給される、要求トルクに対し過剰なトルクを吸収するため、負トルク状態となる。この場合、モータMG2は、正回転負トルクの状態となって電力回生状態となる。このような状態においては、モータMG1からの駆動力をモータMG2での電力回生に利用し、この回生電力によりモータMG1を力行駆動する、といった所謂動力循環と称される非効率な電気パスが生じることとなる。動力循環が生じた状態では、ハイブリッド駆動装置10のシステム効率が低下する。
そこで、ECU100は、予めこのような動力循環が生じ得るものとして定められた運転領域において、ロック機構500によりサンギアS1をロック状態に制御する。その様子が図3(b)に示される。ロック機構500によりサンギアS1がロック状態に移行すると、モータMG1の動作点は、回転数ゼロに対応する図示動作点「g4」に固定される。
この場合、出力回転数Noutとこのゼロ回転とにより、残余のエンジン回転数Neは一義的に固定され、その動作点は図示動作点「e4」となる。即ち、サンギアS1がロックされた場合、エンジン回転数Neは、車速Vと一義的なMG2回転数Nmg2により一義的に決定される。即ち、この場合、変速比が一定となる。この状態に対応する変速モードが固定変速モードである。
ここで、固定変速モードにより走行する範囲について図4を用いて説明する。図4は、車速Vと駆動力とアクセル開度Taとのマップの一例を示す図である。図4は、縦軸を駆動力、横軸を車速Vとした2次元座標を備える。また、図4では、それぞれ異なるアクセル開度Taごとのグラフ「GTa1」乃至「GTa5」が示されていると共に、道路勾配が0%の場合の走行抵抗を示すグラフ「Gre」が示されている。さらに、図4では、固定変速モードでの走行領域を示す固定変速モード領域「Lr」が示されている。また、図4では、固定変速モード領域Lrの拡大図が示されると共に、当該拡大図中には、エネルギの変換効率(以後、単に「効率」と呼ぶ。)が等しい点を結んだ線「Le1」乃至「Le5」が示される。また、効率は、矢印「y1」及び「y2」の方向に向かうに従って高くなる。
ECU100は、例えば図4に示すようなマップを参照し、上述した動力循環が生じ得る運転領域を固定変速モード領域Lrとして特定する。そして、ECU100は、固定変速モード領域Lr中に固定変速モードにすることで、ECU100は、本来モータMG1が負担すべきエンジントルクTeの反力トルクを、ロック機構500の物理的な係合力により代替させる。即ち、この場合、ECU100は、モータMG1を電力回生状態にも力行状態にも制御する必要がないため、モータMG1を停止させる。従って、基本的には、モータMG2を稼動させる必要もなくなり、モータMG2は、言わば空転状態となる。結局、固定変速モードでは、駆動軸に現れる駆動トルクが、エンジントルクTeのうち、動力分割機構300により駆動軸側に分割された直達トルクTerのみとなり、ハイブリッド駆動装置10は、機械的な動力伝達を行うのみとなって、その伝達効率が向上する。
尚、固定変速モードにおいて、ECU100は、モータMG2を必ずしも停止させる必要はない。例えば、ハイブリッド車両1には、各種の電装補器類が備わっており、それら電装補器類の駆動には然るべき駆動電力が必要となる。モータMG2は、この駆動電力に対応する電力をバッテリ12に供給するために、小規模の電力回生を行ってもよい。この場合、ECU100は、エンジントルクTeの直達成分がハイブリッド車両1を走行させるために要求されるトルクに対し余剰となるようにエンジントルクTeを制御し、余剰分のトルクをモータMG2で回生させる。また、ECU100は、エンジン直達トルクTerのみでは駆動トルクが不足する場合、モータMG2を力行駆動させ、MG2トルクTmによって駆動トルクを適宜アシストする。
また、ECU100は、バッテリ12の充電量(以後、「SOC:State of Charge」と呼ぶ。)を所定の目標値(以後、「目標SOCtag」と呼ぶ。)に維持するためのSOCのフィードバック制御(以後、「SOCフィードバック制御」と呼ぶ。)を実行する。即ち、ECU100は、無段変速モードであれ固定変速モードであれ、SOCが目標SOCtagに維持されるように、モータMG1及びモータMG2の電力回生量を制御する。目標SOCは、事前に設定される適合値であり、例えば70%〜80%程度に設定される。そして、ECU100は、各種センサに基づき検出されたSOC(「検出SOCdet」と呼ぶ。)と目標SOCtagとの差分値と、比例定数であるフィードバックゲイン(以後、「FBゲインKf」と呼ぶ。)とに基づき、電力回生量又は電力消費量を定める。FBゲインKfの決定方法については、後述する。具体的には、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtagより低い場合、上述の差分値とFBゲインKfとに基づき、バッテリ12の電力回生量を相対的に大きくするように、エンジン200、モータMG1及びモータMG2の動作状態を制御する。同様に、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtagより高い場合、上述の差分値とFBゲインKfとに基づき、バッテリ12の電力消費量を相対的に増加させるように、エンジン200、モータMG1及びモータMG2の動作状態を制御する。
以下、SOCフィードバック制御を実行しつつ、燃費を向上させるECU100の制御方法について、第1実施形態乃至第4実施形態で説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るECU100の制御について説明する。ECU100は、固定変速モード中に、検出SOCdetが目標SOCtagより小さい場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合のFBゲインKfを、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合のFBゲインKfよりも大きくする。具体的には、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合のFBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfより大きくし、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合のFBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfよりも小さくする。これにより、ECU100は、SOCを目標SOCtagに近づけつつ、エンジン動作点を最適燃費動作点付近に滞在させる割合を多くする。
ここで、「エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い」とは、エンジン動作点が示すエンジントルクTeが、同一のエンジン回転数Neでの最適燃費動作点が示すエンジントルクTeよりも低いことを指す。同様に、「エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い」とは、エンジン動作点が示すエンジントルクTeが、同一のエンジン回転数Neでの最適燃費動作点が示すエンジントルクTeよりも高いことを指す。また、以下では、無段変速モード時のFBゲインKfを、「FBゲインKfcv」と呼ぶ。
これについて図5を用いて説明する。図5は、エンジン動作点のマップを示す。具体的には、図5は、縦軸をエンジントルクTe、横軸をエンジン回転数Neとした2次元座標を示す。また、図5では、効率が等しい点を結んだ線「Le6」乃至「Le9」が示される。なお、効率は、矢印「y3」が示すように、線Le6からLe9に向かって高くなる。また、エンジントルク「Tec」は、モータMG1の出力可能な反力トルクの上限に対応するエンジントルクを指す。そして、図5中のグラフ「Gcv」は、無段変速モードの場合のエンジン動作点の軌道、即ち最適燃費動作点を結んだ線(以後、「最適燃費動作線」と呼ぶ。)を示す。グラフ「GrL」は、固定変速モードの場合であって変速比が大きいローギア時のエンジン動作点の軌道を示す。グラフ「GrH」は、固定変速モードの場合であって変速比が小さいトップギア時のエンジン動作点の軌道を示す。
ECU100は、固定変速モード中に、検出SOCdetが目標SOCtagよりも小さく、エンジン動作点がグラフGcvよりも低い場合、FBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfcvより大きくする。以後、この場合のFBゲインKfを、「FBゲインKfH」と呼ぶ。これにより、ECU100は、エンジントルクTeを増加させて電力回生量を増加させる。従って、ECU100は、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させると共に、SOCを目標SOCtagに早期に近づけることができる。例えば、ECU100は、ローギアで固定変速モードを実行中であって、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い図5に示す位置「P1」にある場合、FBゲインKfをFBゲインKfHに設定する。これにより、ECU100は、エンジン動作点をエンジントルクTeが上昇する方向、例えば位置「P1a」に移動させ、燃費を向上させることができる。
一方、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtagより小さく、エンジン動作点がグラフGcvより高い場合、例えば図5に示す位置「P2」の場合、FBゲインKfを、FBゲインKfcvより小さくする。以後、この場合のFBゲインKfを、「FBゲインKfL」と呼ぶ。これにより、ECU100は、電力回生量を相対的に小さくする。従って、ECU100は、エンジントルクTeの増加を抑制し、FBゲインKfをFBゲインKfcvとした場合と比較してエンジン動作点を最適燃費動作線に近づけ、燃費を向上させることができる。
次に、図6を参照してFBゲインKfとSOCとの関係について説明する。図6は、SOCが目標SOCtag以下の場合であって、異なるFBゲインKfでのSOCの時間変化のグラフを示す。具体的には、図6のグラフ「Gkcv」は、FBゲインKfcvに基づきSOCフィードバック制御を行った場合のSOCの時間変化を示す。グラフ「GkH」は、FBゲインKfHに基づきSOCフィードバック制御を行った場合のSOCの時間変化を示し、グラフ「GkL」は、FBゲインKfLに基づきSOCフィードバック制御を行った場合のSOCの時間変化を示す。
グラフGkH及びグラフGkcvに示すように、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合、FBゲインKfHを用いてSOCフィードバック制御を実行することで、無段変速モード時よりも早期にSOCを目標SOCtagに近づける。即ち、この場合、ECU100は、FBゲインKfcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を大きくし、電力回生量を大きくする。これにより、ECU100は、FBゲインKfcvを用いた場合と比較して、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
一方、ECU100は、グラフGkL及びグラフGkcvに示すように、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合、FBゲインKfLを用いてSOCフィードバック制御を実行することで、無段変速モード時よりも緩やかにSOCを目標SOCtagに近づける。即ち、この場合、ECU100は、FBゲインKfcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を小さくし、電力回生量を小さくする。これにより、ECU100は、FBゲインKfcvを用いた場合と比較して、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
(第1実施形態の処理フロー)
次に、第1実施形態の処理手順の一例について説明する。図7は、第1実施形態でECU100が実行する処理手順を示すフローチャートの一例である。ECU100は、図7に示すフローチャートの処理を、所定の周期に従い繰り返し実行する。
まず、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag未満か否か判定する(ステップS100)。そして、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag未満の場合(ステップS100;Yes)、ステップS101へ処理を進める。一方、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag以上の場合(ステップS100;No)、フローチャートの処理を終了する。なお、この場合の具体的な処理については、第3実施形態で説明する。
次に、ECU100は、固定変速モードであるか否か判定する(ステップS101)。そして、ECU100は、固定変速モードであると判断した場合(ステップS101;Yes)、ステップS102へ処理を進める。一方、ECU100は、固定変速モードではないと判断した場合(ステップS101;No)、即ち、無段変速モードであると判断した場合、フローチャートの処理を終了する。この場合、ECU100は、FBゲインKfcvに基づきSOCフィードバック制御を行う。
次に、ECU100は、エンジン200の出力の高効率方向を判断する(ステップS102)。具体的には、ECU100は、図5に示すエンジン動作点のマップ等を参照し、現在のエンジン動作点が最適燃費動作点より低いか否か判断する。
そして、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点より低いと判断した場合(ステップS103;Yes)、FBゲインKfを、FBゲインKfHに設定する(ステップS104)。即ち、ECU100は、FBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfcvよりも大きく設定する。一方、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点より低くないと判断した場合(ステップS103;No)、FBゲインKfを、FBゲインKfLに設定する(ステップS105)。即ち、ECU100は、FBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfcvよりも小さく設定する。
次に、ECU100は、FBゲインKf及び要求駆動トルクに基づき、エンジン200の出力及び電力回生量を決定する(ステップS106)。即ち、ECU100は、ステップS104又はS105で決定したFBゲインKfに基づき、要求駆動トルクを満たすように、エンジン200、モータMG1、モータMG2を制御する。このようにすることで、ECU100は、SOCを目標SOCtagに近づけつつ、エンジン動作点をより高効率の方向へ移動させることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態に代えて、またはこれに加えて、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtagより小さいときに無段変速モードから固定変速モードへ移行した場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合の目標SOCtagを、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合の目標SOCtagよりも高くする。具体的には、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合の目標SOCtagを、無段変速モード時の目標SOCtagより高くする。また、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合の目標SOCtagを、無段変速モード時の目標SOCtagよりも低くする。これにより、ECU100は、SOCを目標SOCtagに近づけつつ、エンジン動作点を最適燃費動作点付近に滞在させる割合を多くする。
これについて具体的に説明する。以下では、無段変速モード時の目標SOCtagを特に「目標SOCtagcv」と表記する。ECU100は、無段変速モードから固定変速モードへ移行した場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低いか否かに基づき目標SOCtagを変更する。具体的には、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtagより小さく、エンジン動作点が最適燃費動作点より低い場合、目標SOCtagを目標SOCtagcvより大きい値(以後、「目標SOCtagH」と呼ぶ。)に設定する。これにより、ECU100は、FBゲインKfを引き上げたのと同様、SOCフィードバック制御によるSOCの補正量を増やし、電力回生量を増やす。従って、ECU100は、エンジントルクTeを増加させてエンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
一方、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtagより小さく、エンジン動作点が最適燃費動作点より高い場合、目標SOCtagを、無段変速モード時の目標SOCtagcvより小さい値(以後、「目標SOCtagL」と呼ぶ。)に設定する。これにより、ECU100は、FBゲインKfを小さくしたのと同様、SOCフィードバック制御によるSOCの補正量を減らし、電力回生量を減らす。従って、ECU100は、エンジントルクTeの増加を抑制し、目標SOCtagを目標SOCtagcvとした場合と比較してエンジン動作点を最適燃費動作線に近づけ、燃費を向上させることができる。
次に、図8を参照して目標SOCtagとSOCとの関係について説明する。図8は、SOCの時間変化を示すグラフの一例である。具体的には、グラフ「Gtcv」は、目標SOCtagを目標SOCtagcvに設定した場合のSOCの時間変化を示し、グラフ「GtH」は、目標SOCtagを目標SOCtagHに設定した場合のSOCの時間変化を示し、グラフ「GtL」は、目標SOCtagを目標SOCtagLに設定した場合のSOCの時間変化を示す。
グラフGtH及びグラフGtcvに示すように、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合、目標SOCtagHを用いてSOCフィードバック制御を実行することで、SOCの増加量を大きくする。即ち、この場合、ECU100は、目標SOCtagcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を大きくし、電力回生量を大きくする。これにより、ECU100は、目標SOCtagcvを用いた場合と比較して、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
一方、ECU100は、グラフGtL及びグラフGtcvに示すように、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合、目標SOCtagLを用いてSOCフィードバック制御を実行する。これにより、ECU100は、無段変速モード時よりも緩やかにSOCを上昇させる。即ち、この場合、ECU100は、目標SOCtagcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を小さくし、電力回生量を小さくする。これにより、ECU100は、目標SOCtagcvを用いた場合と比較して、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
(第2実施形態の処理フロー)
次に、第2実施形態の処理手順の一例について説明する。図9は、第2実施形態でECU100が実行する処理手順を示すフローチャートの一例である。ECU100は、図9に示すフローチャートの処理を、所定の周期に従い繰り返し実行する。
まず、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag未満か否か判定する(ステップS200)。そして、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag未満の場合(ステップS200;Yes)、ステップS201へ処理を進める。一方、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag以上の場合(ステップS200;No)、フローチャートの処理を終了する。なお、この場合の具体的な処理については、第3実施形態で説明する。
次に、ECU100は、固定変速モードであるか否か判定する(ステップS201)。そして、ECU100は、固定変速モードであると判断した場合(ステップS201;Yes)、ステップS202へ処理を進める。一方、ECU100は、固定変速モードではないと判断した場合(ステップS201;No)、即ち、無段変速モードであると判断した場合、フローチャートの処理を終了する。この場合、ECU100は、目標SOCtagcvに基づき引き続きSOCフィードバック制御を行う。
次に、ECU100は、エンジン200の出力の高効率方向を判断する(ステップS202)。具体的には、ECU100は、図5に示すエンジン動作点のマップ等を参照し、現在のエンジン動作点が最適燃費動作点より低いか否か判断する。
そして、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点より低いと判断した場合(ステップS203;Yes)、目標SOCtagを、目標SOCtagHに設定する(ステップS204)。即ち、ECU100は、目標SOCtagを、無段変速モード時の目標SOCtagcvよりも高く設定する。一方、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点より低くないと判断した場合(ステップS203;No)、目標SOCtagを、目標SOCtagLに設定する(ステップS205)。即ち、ECU100は、目標SOCtagを、目標SOCtagcvよりも低く設定する。
次に、ECU100は、要求駆動トルクに基づき、エンジン200の出力及び電力回生量を決定する(ステップS206)。即ち、ECU100は、ステップS204又はS205で決定した目標SOCtagに基づき、要求駆動トルクを満たすように、エンジン200、モータMG1、モータMG2を制御する。このようにすることで、ECU100は、SOCを増やしつつ、エンジン動作点をより高効率の方向へ移動させることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態に代えて、またはこれに加え、ECU100は、固定変速モード中に、検出SOCdetが目標SOCtagより大きい場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合のFBゲインKfを、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合のFBゲインKfよりも小さくする。言い換えると、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低く、検出SOCdetが目標SOCtagよりも大きい場合では、目標SOCtagより小さい場合と比較して、FBゲインKfを小さくする。一方、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高く、検出SOCdetが目標SOCtagよりも高い場合では、目標SOCtagより低い場合と比較して、FBゲインKfを高くする。これにより、ECU100は、SOCが目標SOCtagに達するまでの燃費を向上させる。
具体的には、ECU100は、例えば図5に示す位置P1のように、最適動作燃費線を示すグラフGcvよりもエンジン動作点が低い場合、FBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfcvより小さくする。以後、この場合のFBゲインKfを、「FBゲインKfL3」と呼ぶ。これにより、ECU100は、SOCフィードバック制御によるSOCの補正量を小さくし電力消費量を減らす。従って、ECU100は、エンジントルクTeの減少を抑制し、FBゲインKfをFBゲインKfcvとした場合と比較して、エンジン動作点を高効率方向に移動させ、燃費を向上させることができる。
一方、ECU100は、例えば図5に示す位置P2のように、最適動作燃費線を示すグラフGcvよりもエンジン動作点が高い場合、FBゲインKfを、FBゲインKfcvより大きくする。以後、この場合のFBゲインKfを、「FBゲインKfH3」と呼ぶ。これにより、ECU100は、電力消費量を増大させてエンジントルクTeを減少させる。従って、ECU100は、FBゲインKfをFBゲインKfcvとした場合と比較して、エンジン動作点を高効率方向に移動させ、燃費を向上させることができる。
次に、図10(a)を参照してFBゲインKfとSOCとの関係について説明する。図10(a)は、検出SOCdetが目標SOCtagより大きい場合の、異なるFBゲインKfでのSOCの時間変化を示す。具体的には、図10のグラフGkcvは、FBゲインKfcvに基づきSOCフィードバック制御を行った場合のSOCの時間変化を示す。グラフGkH3は、FBゲインKfH3に基づきSOCフィードバック制御を行った場合の時間変化を示し、グラフGkL3は、FBゲインKfL3に基づきSOCフィードバック制御を行った場合の時間変化を示す。
ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合、FBゲインKfH3を用いてSOCフィードバック制御を実行することで、グラフGkH3及びグラフGkcvに示すように、無段変速モード時よりも早期にSOCを目標SOCtagに近づける。即ち、この場合、ECU100は、FBゲインKfcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を小さくし、モータMG2を駆動させて電力消費量を増やす。これにより、ECU100は、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
一方、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合、FBゲインKfL3を用いてSOCフィードバック制御を実行することで、グラフGkL及びグラフGkcvに示すように、無段変速モード時よりも緩やかにSOCを目標SOCtagに近づける。即ち、この場合、ECU100は、FBゲインKfcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を大きくし、電力消費量を減少させる。これにより、ECU100は、FBゲインKfcvを用いた場合と比較して、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
なお、ECU100は、上述の第3実施形態に代えて、またはこれに加えて、検出SOCdetが目標SOCtagより大きいときに無段変速モードから固定変速モードへ移行した場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合の目標SOCtagを、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合の目標SOCtagよりも低く設定してもよい。これについて図10(b)を用いて説明する。
図10(b)は、検出SOCdetが目標SOCtagより大きい場合の、異なるFBゲインKfでのSOCの時間変化を示す。具体的には、図10のグラフGtcvは、目標SOCtagcvに基づきSOCフィードバック制御を行った場合のSOCの時間変化を示す。グラフGtH3は、目標SOCtagcvよりも高い目標SOCtag(以後、「目標SOCtagH3」と呼ぶ。)に基づきSOCフィードバック制御を行った場合の時間変化を示す。グラフGtL3は、目標SOCtagcvよりも低い目標SOCtag(以後、「目標SOCtagL3」と呼ぶ。)に基づきSOCフィードバック制御を行った場合の時間変化を示す。
ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合、目標SOCtagH3を用いてSOCフィードバック制御を実行することで、グラフGtH3及びグラフGtcvに示すように、無段変速モード時よりもSOCの減少量を大きくする。即ち、この場合、ECU100は、目標SOCtagcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を小さくし、モータMG2を駆動させて電力消費量を増やす。これにより、ECU100は、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
一方、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合、FBゲインKfL3を用いてSOCフィードバック制御を実行することで、グラフGtL及びグラフGtcvに示すように、無段変速モード時よりもSOCの減少量を緩やかにする。即ち、この場合、ECU100は、目標SOCtagcvを用いた場合よりエンジントルクTeの指令値を大きくし、電力消費量を減少させる。これにより、ECU100は、目標SOCtagcvを用いた場合と比較して、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させることができる。
(第3実施形態の処理フロー)
次に、第3実施形態の処理手順の一例について説明する。図11は、第3実施形態でECU100が実行する処理手順を示すフローチャートの一例である。ECU100は、図11に示すフローチャートの処理を、所定の周期に従い繰り返し実行する。
まず、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag以上か否か判定する(ステップS300)。そして、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag以上の場合(ステップS300;Yes)、ステップS301へ処理を進める。一方、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtag以上でない場合(ステップS300;No)、フローチャートの処理を終了する。
次に、ECU100は、固定変速モードであるか否か判定する(ステップS301)。そして、ECU100は、固定変速モードであると判断した場合(ステップS301;Yes)、ステップS302へ処理を進める。一方、ECU100は、固定変速モードではないと判断した場合(ステップS301;No)、即ち、無段変速モードであると判断した場合、フローチャートの処理を終了する。この場合、ECU100は、FBゲインKfcvに基づき引き続きSOCフィードバック制御を行う。
次に、ECU100は、エンジン200の出力の高効率方向を判断する(ステップS302)。具体的には、ECU100は、図5に示すエンジン動作点のマップ等を参照し、現在のエンジン動作点が最適燃費動作点より低いか否か判断する。
そして、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点より低いと判断した場合(ステップS303;Yes)、FBゲインKfを、FBゲインKfL3に設定する(ステップS304)。即ち、ECU100は、FBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfcvよりも小さく設定する。一方、ECU100は、エンジン動作点が最適燃費動作点より低くないと判断した場合(ステップS303;No)、FBゲインKfを、FBゲインKfH3に設定する(ステップS305)。即ち、ECU100は、FBゲインKfを、無段変速モード時のFBゲインKfcvよりも大きく設定する。
次に、ECU100は、FBゲインKf及び要求駆動トルクに基づき、エンジン200、モータMG1、及びモータMG2を制御する(ステップS306)。即ち、ECU100は、ステップS304又はS305で決定したFBゲインKfに基づき、要求駆動トルクを満たすように、エンジン200、モータMG1、モータMG2を制御する。このようにすることで、ECU100は、SOCを目標SOCtagに近づけつつ、エンジン動作点をより高効率の方向へ移動させることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、ECU100は、第1乃至第3実施形態に代えて、又はこれに加えて、無段変速モードから固定変速モードへ移行した場合、MG2トルクTmを調整して発電させることで、エンジントルクTeの出力可能な上限を引き上げる。これにより、ECU100は、固定変速モードにおいて、エンジン動作点を最適燃費動作点になるべく近づけて効率を向上させる。
具体的には、ECU100は、無段変速モードの場合のエンジントルクTe(以後、「第1エンジン出力」とも呼ぶ。)の上限(以後、「第1エンジン出力上限Lim1」と呼ぶ。)と、無段変速モードから固定変速モードへの移行時のエンジントルクTe(以後、「第2エンジン出力」とも呼ぶ。)の上限(以後、「第2エンジン出力上限Lim2」と呼ぶ。)と、固定変速モード時のエンジントルクTe(以後、「第3エンジン出力」とも呼ぶ。)の上限(以後、「第3エンジン出力上限Lim3」と呼ぶ。)とをそれぞれ異ならせる。そして、ECU100は、第1エンジン出力上限Lim1よりも第2エンジン出力上限Lim2を大きい値に設定し、第2エンジン出力上限Lim2よりも第3エンジン出力上限Lim3を大きい値に設定する。このようにすることで、ECU100は、固定変速モードでの出力可能なエンジントルクTeの範囲を拡大し、エンジン動作点を最適燃費動作点に近づけて燃費を向上させる。これについて、図12を参照しつつさらに詳しく説明する。
図12は、第1エンジン出力乃至第3エンジン出力の大きさの範囲を概念的に示した図である。図12において、線Llim1乃至Llim3は、それぞれ第1エンジン出力上限Lim1、第2エンジン出力上限Lim2、第3エンジン出力上限Lim3の位置を示す。
図12では、第1エンジン出力は、長期的に出力可能なモータMG1の反力トルクに基づき決定されるエンジントルクTeの範囲に設定されている。即ち、この場合、第1エンジン出力上限Lim1は、モータMG1の長期的に出力可能な反力トルクの上限に対応するエンジントルクTeに設定される。一方、第2エンジン出力は、一時的に出力可能なモータMG1の反力トルクに基づき決定されるエンジントルクTeの範囲に設定されている。即ち、この場合、第2エンジン出力上限Lim2は、無段変速モードから固定変速モード移行中にECU100がMG1回転数Nmg1を制御可能にするために一時的に上昇させるモータMG1の反力トルクの上限に基づき決定される。また、ECU100は、第2エンジン出力にてエンジン200を制御する場合、モータMG2により発電させることで要求駆動トルクを適宜調整する。
第3エンジン出力は、モータMG2による発電により駆動力を調整可能なエンジントルクTeの範囲に設定される。即ち、第3エンジン出力上限Lim3は、モータMG2による発電により要求駆動トルクを満たすことが可能な範囲のエンジントルクTeの上限に設定される。そして、ECU100は、第3エンジン出力にてエンジン20を制御する場合、第3エンジン出力上限Lim3の範囲内で、最適燃費動作点に最も近いエンジン動作点を特定し、当該エンジン動作点のエンジントルクTeに基づきエンジン200を駆動させる。また、ECU100は、当該エンジントルクTeのエンジン直達トルクTerが要求駆動トルクを超過する場合、モータMG2により発電させることで要求駆動トルクを満たすように調整する。このようにすることで、ECU100は、固定変速モード中に、要求駆動トルクを満たしつつ、エンジントルクTeを上昇させて、エンジン動作点を効率が高い点まで移動させることができる。
(第4実施形態の処理フロー)
次に、第4実施形態の処理手順の一例について説明する。図13は、第4実施形態でECU100が実行する処理手順を示すフローチャートの一例である。ECU100は、図13に示すフローチャートの処理を、所定の周期に従い繰り返し実行する。
まず、ECU100は、固定変速モードであるか否か判断する(ステップS400)。そして、ECU100は、固定変速モードである場合(ステップS400;Yes)、第3エンジン出力上限Lim3を算出する(ステップS401)。具体的には、ECU100は、MG2トルクTmに基づき要求駆動トルクを満たすことが可能なエンジントルクTeの範囲を特定し、第3エンジン出力上限Lim3を決定する。
一方、ECU100は、固定変速モードではないと判断した場合(ステップS400;No)、さらに固定変速モードに移行中であるか否か判定する(ステップS402)。そして、ECU100は、固定変速モードに移行中であると判断した場合(ステップS402;Yes)、第2エンジン出力上限Lim2を算出する(ステップS403)。即ち、ECU100は、一時的に使用可能なMG1トルクTgに基づき、第2エンジン出力上限Lim2を定める。一方、ECU100は、固定変速モードに移行中ではないと判断した場合(ステップS402;No)、即ち、無段変速モード中であると判断した場合、第1エンジン出力上限Lim1を算出する(ステップS404)。即ち、ECU100は、長期的に使用可能なMG1トルクTgに基づき、第1エンジン出力上限Lim1を定める。
そして、ECU100は、算出されたエンジン出力上限に基づきエンジン20を制御する(ステップS405)。このようにすることで、ECU100は、固定変速モードにおいて、モータMG1の反力トルクの上限から一義的にエンジントルクTeの上限を定める場合に限らず、MG2トルクTmに基づきエンジントルクTeの上限を定めることができる。従って、ECU100は、エンジントルクTeを上昇させてエンジン動作点をより効率がよいエンジン動作点に移動させることができる。
[他の構成例]
本発明に係る動力伝達機構の態様は、図2に例示するものに限定されない。ここで、図14乃至図16を参照し、本発明に適用可能な他の構成例であるハイブリッド駆動装置20の構成について説明する。
図14は、ハイブリッド駆動装置20の概略構成図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には、同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図14において、ハイブリッド駆動装置20は、動力分割機構800及びMG2変速機構900を備える点においてハイブリッド駆動装置10と相違している。
動力分割機構800は、第1遊星歯車機構と第2遊星歯車機構とが組み合わされた、本発明に係る「動力伝達機構」の一例たる複合型遊星歯車機構である。
第1遊星歯車機構は、中心部に設けられたサンギアS3と、サンギアS3の外周に同心円状に設けられたリングギアR3と、サンギアS3とリングギアR3との間に配置されてサンギアS3の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC3とを備える。
第2遊星歯車機構は、中心部に設けられた、サンギアS4と、サンギアS4の外周に同心円状に設けられたリングギアR4と、サンギアS4とリングギアR4との間に配置されてサンギアS4の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC4とを備える。ここで、第2遊星歯車機構のリングギアR4及びキャリアC4は、夫々第1遊星歯車機構のキャリアC3及びリングギアR3に直結されている。
一方、第2遊星歯車機構のサンギアS4は、ロック機構500と連結されており、ロック機構500の作用によりその状態がロック状態と非ロック状態との間で選択的に切り替えられる。
ここで、サンギアS3は、モータMG1のロータに、その回転軸を共有する形で連結されており、その回転数はモータMG1の回転数たるMG1回転数Nmg1と等価である。また、リングギアR3は、駆動軸1000及びMG2変速機構700を介してモータMG2のロータに連結されており、その回転数は、先述した出力回転数Noutと等価である。更に、キャリアC3は、エンジン200のクランク軸に連結された入力軸と連結されており、その回転数は、エンジン200のエンジン回転数Neと等価である。
MG2変速機構700は、駆動軸1000とモータMG2との間に介装された、有段の変速機構である。MG2変速機構700は、その時点で選択される変速段のギア比に応じて、駆動軸1000とモータMG2との間の回転数比を変化させる。
このような構成によれば、サンギアS4がロック状態(所謂O/Dロックと称されるロック形態である)にある場合に変速モードとして固定変速モードが選択され、サンギアS4が非ロック状態にある場合に変速モードとして無段変速モードが選択される。
図15(a)は、本発明の他の構成例であるハイブリッド駆動装置30Aの概略構成図である。尚、同図において、図14と重複する箇所には、同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図15(a)において、ハイブリッド駆動装置30Aは、動力分割機構1100を備える点においてハイブリッド駆動装置20と相違している。
動力分割機構1100は、中心部に設けられたサンギアS5と、サンギアS5の外周に同心円状に設けられたリングギアR5と、サンギアS5とリングギアR5との間に配置されてサンギアS5の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC5とを備える。
ここで、サンギアS5、リングギアR5及びキャリアC5には、夫々モータMG1、モータMG2及びエンジン200が連結されており、これら各ギアの差動作用により、サンギアS5が非ロック状態にあれば、無段変速モードが好適に実現される。一方、サンギアS5をロック状態とすれば、ハイブリッド駆動装置10と同様にMG1ロックと称されるロック形態が実現され、固定変速モードが実現される。
また、図15(b)は、本発明の他の構成例であるハイブリッド駆動装置30Bの概略構成図である。図15(b)において、ハイブリッド駆動装置30Bは、変速機構910を備える点においてハイブリッド駆動装置30Aと相違している。変速機構910は、駆動軸1000と連結した有段の変速機構である。変速機構910は、その時点で選択される変速段のギア比に応じて、駆動軸1000に伝達される回転数比を変化させる。
図16は、本発明の第1実施形態乃至第3実施形態に適用可能な他の構成例であるハイブリッド駆動装置40の概略構成図である。ハイブリッド駆動装置40は、所謂1モータ式のハイブリッド駆動装置であり、エンジン200と、モータMGと、変速機構1200と、を備える。変速機構1200は、例えばMT(Manual transmission)、AT(Automatic Transmission)、DCT(Dual Clutch Transmission)であり、駆動軸1000と連結した有段の変速機構である。変速機構1200は、その時点で選択される変速段のギア比に応じて、駆動軸1000に伝達する回転数比を変化させる。モータMGは、エンジン200と、変速機構1200との間に配置され、駆動軸1000にトルクを付加してハイブリッド車両1の走行をアシストすることも、駆動軸1000からのトルクの入力により電力回生を行うことも可能である。具体的には、減速時には、駆動軸1000の回転が変速機構1200を介してモータMGに伝達され、モータMGは、発電機として機能する。また、エンジン200の負荷が高い状況では、モータMGは、バッテリ12からの電力により電動機として機能し、変速機構1200に伝達されるエンジントルクTeにトルクを付加する。
なお、ハイブリッド駆動装置40をハイブリッド車両1に適用した場合であっても、ECU100は、第1実施形態乃至第3実施形態を好適に実行することができる。具体的には、ECU100は、第1実施形態では、検出SOCdetが目標SOCtagより小さい場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合のFBゲインKfを、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合のFBゲインKfよりも大きくする。また、ECU100は、第2実施形態では、検出SOCdetが目標SOCtagより小さい場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合の目標SOCtagを、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合の目標SOCtagよりも大きくする。さらに、第3実施形態では、ECU100は、検出SOCdetが目標SOCtagより大きい場合、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも低い場合のFBゲインKfを、エンジン動作点が最適燃費動作点よりも高い場合のFBゲインKfよりも小さくする。