以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学補償フィルムの製造方法は、支持体上に棒状ネマチック液晶を垂直配向させた液晶層を有する光学補償フィルムの製造方法において、該支持体上に直接又は他の層を介して少なくとも前記液晶と溶媒を含有する液晶組成物を塗布して液晶層を形成した後、該液晶層中の残留溶媒量を液晶組成物の固形分に対し0.01〜5質量%の範囲内になるように加熱処理しながら液晶を等方相の状態とし、次いで上記の範囲内の溶媒量を維持しながら前記液晶を等方相の状態から過冷却の状態まで、冷却処理するのに要する時間が0.1〜10秒の範囲内で冷却処理して配向させた後、該液晶層に活性線を照射して硬化することを特徴とする。
即ち前記特許文献1〜4の開示技術に対し、本発明の特徴は、少なくとも棒状ネマチック液晶と溶媒を含有する液晶組成物を塗布し液晶層を形成した後、該液晶層を加熱処理することで溶媒を揮発させ所定の残留溶媒量まで該液晶層を乾燥させるとともに、該液晶をまず等方相の状態にすることで液晶分子の配向をほぐし、その後、所定の溶媒量を維持しながら前記等方相の状態から過冷却の状態まで急激に冷却することで液晶を垂直配向させ、次いで活性線を照射して液晶層を硬化、固定化することにある。特に棒状ネマチック液晶を等方相の状態から過冷却の状態まで冷却処理することで、均一な垂直配向を可能にせしめるものである。
また、液晶層の加熱処理から冷却処理までの工程の液晶層の残留溶媒量を、請求項1に規定した溶媒量に維持することで、均一に垂直配向された棒状ネマチック液晶層を得ることが出来る。
上記の製造法を取ることで配向欠陥、配向ムラが抑制された棒状ネマチック液晶を垂直配向、固定化した液晶層を有する光学補償フィルムを提供することが出来る。
その根拠として、以下のことが挙げられる。工程1:液晶性化合物を液晶相にしたときに生じた配向欠陥や配向ムラを無くすためには、一旦液晶性化合物を等方相にする必要が有ること。工程2:そして再び液晶相状態にして液晶層を硬化、固定化する際に、液晶相状態のまま固定化してしまうと、液晶相状態で発生した配向欠陥や配向ムラが多数残ってしまうので、液晶性化合物が液晶相状態である時間を本発明の請求項1に記載の時間内にして冷却し、液晶性化合物を過冷却状態にさせることで液晶分子を動きにくい状態にさせる必要が有ること。
工程1〜2において、液晶層の残留溶媒量を0.01質量%未満にしてしまうと、液晶分子が動きにくい状態になり、工程2における液晶化合物の配向に時間が掛かり過ぎて、過冷却状態になるまでに液晶化合物が垂直配向しきれなくなり、配向ムラ、配向欠陥の原因になる。また、液晶層の残留溶媒量が5質量%を越えると、溶媒による支持体溶解によって、支持体からの配向阻害物質が多量に溶出してしまうため、配向欠陥の原因になることから、液晶層の加熱処理から冷却処理までの工程の液晶層の残留溶媒量を、請求項1に規定した溶媒量に維持する必要が有ることを見出したものである。
以上のメカニズムにより、液晶相状態で再び発生する配向欠陥と配向ムラが抑制された液晶層が得られるものと推察している(図1参照)。
《本発明の光学補償フィルム》
本発明の製造方法に係る光学補償フィルムは、支持体として透明フィルムの上に棒状ネマチック液晶を垂直に配向させて配向を固定した液晶層を設けた光学補償フィルムである。
光学補償フィルムは、基本的に透明フィルムと液晶層とからなる。
なお、本明細書中、直交、平行とは、それぞれ厳密な角度±15°の範囲内にあることをいう。
《棒状ネマチック液晶を垂直に配向させて配向を固定した液晶層》
本発明の液晶層は、下記リターデーション特性を有することが好ましい。
0nm≦Ro≦10nm
−500nm≦Rt≦−100nm
ここでRoは、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、及び厚さd(nm)を用いて、Ro=(nx−ny)×dで定義され、RtはRt={(nx+ny)/2−nz}×dで定義される。
本発明の液晶層は、液晶材料もしくは液晶の溶液を透明フィルム上に直接、または中間層上に塗布し、乾燥と加熱処理、更に冷却処理(配向処理ともいう)を行い紫外線硬化もしくは熱重合などで液晶配向の固定化を行い、垂直方向に配向した棒状ネマチック液晶による位相差層を有することが特徴である。
垂直とは、棒状液晶性化合物の場合は、支持体と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が70°〜90°の範囲内であることを意味する。棒状液晶性化合物は斜め配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するように(ハイブリッド配向)させても良い。斜め配向又はハイブリッド配向の場合でも、平均傾斜角は70°〜90°であることが好ましく、75°〜90°がより好ましく、80°〜90°が最も好ましい。
本発明の液晶層はRoが0nm〜10nm、Rtが−500nm〜−100nmの範囲にある垂直方向に配向した棒状ネマチック液晶による位相差層である。更にRoは0nm〜5nmの範囲がより好ましい。
《棒状ネマチック液晶材料》
本発明の棒状ネマチック液晶層に用いられる重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、もしくは重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができ、相互に混合して用いることもできる。
重合性液晶材料としては、上記のうちでも、配向に際しての感度が高く垂直に配向させることが容易であることから重合性液晶モノマーが好適に用いられる。
具体的な重合性液晶モノマーとしては、下記の一般式(1)で表される棒状液晶性化合物(I)、及び下記の一般式(2)で表される棒状液晶性化合物(II)を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもでき、同様に、化合物(II)としては、一般式(2)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもできる。また、化合物(I)を1種以上と化合物(II)を1種以上を混合して使用することもできる。
化合物(I)を表す一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1及びR2は共に水素であることが好ましい。
Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、もしくはニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素またはメチル基であることが好ましい。
また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と、芳香環とのスペーサであるアルキレン基の鎖長を示すa及びbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることが更に好ましい。
以上の他、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとして、従来提案されている公知の材料を適宜選択して用いることが可能である。
例えば、重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
本発明の棒状ネマチック液晶層を作製するためには、
第一工程:少なくとも液晶と溶媒を含む液晶組成物塗布液を支持体上に塗布乾燥し液晶層を塗設する工程、
第二工程:該液晶層を、液晶層を形成する液晶の(等方相−液晶相相転移温度B)以上の温度に加熱処理し、該液晶層中の残留溶媒量を液晶組成物の固形分に対して0.01〜5質量%の範囲内にするとともに、該液晶を等方相の状態にする工程、好ましくは(等方相−液晶相相転移温度B)〜(B+30℃)の温度範囲に加熱処理する、
第三工程:該液晶層を、液晶層を形成する液晶の(液晶相−固体相相転移温度A)以下に冷却する工程、好ましくは(液晶相−固体相相転移温度A)〜(A−15℃)の温度範囲まで冷却処理する、また液晶層を過冷却の状態まで冷却処理させるに要する時間を0.1〜10秒の範囲内とする、
第四工程:好ましくは冷却された状態のまま紫外線等の活性線により液晶の配向状態を固定化する工程、
とを有する工程により配向ムラや配向欠陥の発生を抑制した液晶層が製造される。
上記残留溶媒量は、ヘッドスペース法を用いて下記方法で測定できる。
(残留溶媒量の測定)
支持体フィルムに液晶塗布液を塗布したサンプルを、不活性ガスで大気圧に満たされた閉鎖系に置き所定の加熱処理を行う。次いで揮発した気体をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製 GC−MS)で定性、定量を行って揮発した溶媒量からサンプルの残留溶媒を算出する。
また、上記(液晶相−固体相相転移温度A)、(等方相−液晶相相転移温度B)は、以下の方法で測定される。
(液晶相−固体相相転移温度A):液晶性物質に対し、市販の示差走査熱量計(例えば、示差走査熱量計DSC−20(セイコー電子工業社製))を用いて、示差走査熱量測定法により求めることができ、固体相から加熱して吸熱反応を示す温度(℃)とする。
(等方相−液晶相相転移温度B):液晶層を支持体上に設けた学補償フィルムを、方位、傾斜角度を問わずに測定して得たリターデーション値から、支持体のリターデーション値を差し引いた時、|Ro|が0.5nm以下、|Rt|が10nm以下の状態になる温度(℃)を言う。リターデーション値の測定には、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用い23℃、55%RHの環境下で測定することができる。
ここで、更に上記用語を定義する。
1)等方相の状態・・・液晶層を支持体上に設けた光学補償フィルムを、方位、傾斜角度を問わずに測定して得たリターデーション値から支持体のリターデーション値を差し引いた時に、|Ro|が0.5nm以下、|Rt|が10nm以下の状態を言う。
2)液晶相の状態・・・液晶が流動性を示し、かつ複屈折性を持つ状態であり、本発明では、液晶層を支持体上に設けた光学補償フィルムを、方位、傾斜角度を問わずに測定して得たリターデーション値から支持体のリターデーション値を差し引いた時に、|Ro|が0.01nm以上、|Rt|が10nm以上の状態を言う。
3)過冷却の状態・・・液晶性物質が(液晶相−固体相相転移温度A)を過ぎて冷却されても固体化(結晶化)せず、上記液晶相の状態を保持する状態
4)垂直配向型棒状ネマチックの液晶相状態・・・屈折率nx,ny,nzがnx=ny<nzを屈折率を持つ液晶性物質。nx=nyの許容範囲は、0≦|nx−ny|≦0.007である。但し、nxは面内の遅相軸方向の屈折率、nyは該遅相軸方向に直交する方向、nzは厚み方向の屈折率である。
クロスニコル下で液晶層を垂直方向から観測すると暗視野になり、それ以外の方位、傾斜角度から観測すると明視野になる状態。
5)配向ムラ・・・距離0.1mm間のリターデーション値の変化量が0.100nm以上あること。
6)配向欠陥・・・偏光顕微鏡でクロスニコル下で観察したとき、液晶の配向欠陥によって生じる輝点。
第一工程において、少なくとも重合性液晶材料と溶媒を混合した塗布液を作製し、支持体上に塗布する。
溶媒としては、上述した重合性液晶材料等を溶解することが可能な溶媒であり、かつ透明樹脂フィルムの性状を低下させない溶媒であれば特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、等の炭化水素類;メトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートもしくはγ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種または2種以上が使用可能である。
上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類またはケトン類と、グリコール類との混合系である。
溶液の濃度は、重合性液晶材料等の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚に依存するため一概には規定できないが、通常は液晶組成物の固形分に対し1%〜60%が好ましく、より好ましくは3%〜40%の範囲で調整される。
本発明に用いられる液晶層形成用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することができる。
添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物、またはアクリル基もしくはメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物、特開2007−45993号公報に記載のオニウム塩、フッ化アクリレートポリマー等が挙げられる。
本発明の液晶層形成用組成物に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には、本発明の液晶層形成用組成物の40%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。
これらの化合物の添加により、本発明における液晶材料の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
また、溶剤を配合した液晶層形成用組成物には、塗工を容易にするために表面張力を調整するため界面活性剤等を加えることができる。
添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級或いは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族或いは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、更に溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる重合性液晶材料の10ppm〜10%が好ましく、より好ましくは100ppm〜5%であり、もっと好ましくは0.1〜1%の範囲である。
液晶層形成用組成物を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、インクジェット法、もしくは押し出しコート法等が挙げられる。
第二工程において、液晶層形成用組成物を塗工した後、液晶層を形成する液晶の(等方相−液晶相相転移温度B)以上の温度に加熱処理し、残留溶媒量を液晶組成物の固形分に対し0.01〜5質量%とするとともに、該液晶を等方相の状態にする工程は、乾燥手段としてフィルムの両面に熱風を吹かせる加熱ゾーンを用いるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段でもよい。
加熱処理による液晶層中の残留溶媒量は、液晶の配向性を高める上では、できるだけ少量の残留である方が効果が高くなる為、0.01〜2質量%であることより好ましい。
また、上記加熱処理工程においては、できるだけ短時間に支持体上に塗設された液晶層から溶媒を揮発し所定の範囲にすることが好ましい。しかしながら、急激な加熱処理をすると溶媒の蒸発による発泡が起こるため、加熱条件は慎重に選択すべきである。本発明においては、使用する溶媒の中で最も低い沸点、好適にはその(沸点−5℃)を上限とする範囲で乾燥することが好ましい。また、必要に応じて風を送ってもよい。その場合、一般には風速20m/秒以下、好ましくは15m/秒以下の範囲が用いられる。それを越えると風の擾乱のために液晶層に乱れが生じるため好ましくない。風速は段階的ないしは連続的に増大させてもよいし、むしろ好ましい。加熱処理工程初期の段階では風の擾乱を避けるために無風でもよい。
第三工程の冷却工程は、フィルムの両面に乾燥した冷風を吹かせ露点制御を行いながら冷却する方法や、所定の温度に制御可能な冷却ロールにより冷却処理することが好ましい。特に、本発明のように急激な冷却を行うには冷却ロールを用いることが好ましい。また、冷却工程でも液晶層中の残留溶媒量を該加熱処理前の溶媒量(100質量%)に対し0.01〜5質量%の範囲の溶媒量を維持することが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましい。
冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、フィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。更に表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面に傷等が発生するのを防止できる。もちろん表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
棒状ネマチック液晶層のリターデーションを調整するためには、棒状液晶の配向、液晶層の膜厚制御、紫外線硬化時の温度、チルト角制御、及び支持体と空気界面でのプレチルト角の制御等を行うことが好ましい。
第四工程である重合性液晶材料を硬化させる工程では、重合性液晶材料を硬化させるためのエネルギーが与えられ、熱エネルギーでもよいが、通常は、重合を起こさせる能力がある活性線の照射によって行う。
必要であれば重合性液晶材料と共に重合開始剤を用いてもよい。
活性線としては、重合性液晶材料を重合せさることが可能な活性線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nmの光が好ましく、より好ましくは250〜450nmであり、より好ましくは300〜400nmの波長の紫外線である。
本発明においては、紫外線(UV)を活性線として照射し、紫外線で重合開始剤からラジカルを発生させ、ラジカル重合を行わせる方法が好ましい。活性線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易である。
この紫外線を照射するための光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、もしくはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等を挙げることができる。
なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。照射強度は、液晶の配向を固定した層の形成に用いられる重合性液晶材料の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜に調整すればよい。
活性線の照射による配向固定化工程は、上述した液晶層形成用層を形成する工程における処理温度、すなわち重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。
電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、重合開始剤が不要な場合があるが、一般的に用いられている例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられる。
光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、もしくは1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。
光重合開始剤の添加量としては、一般的には液晶組成物の固形分に対して0.01%〜20%が好ましく、より好ましくは0.1%〜10%であり、もっと好ましくは0.5%〜5%の範囲で、本発明の重合性液晶材料に添加することができる。
尚、光重合開始剤の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で増感剤を添加することも可能である。
本発明における液晶層の膜厚は0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.2〜5μmの範囲内であることがより好ましい。
《支持体》
本発明の液晶層を塗設するための支持体は透明フィルムであることが好ましく、透明フィルムとしては、光学用途として使用することができる20〜300μm全ての透明フィルムを使用することができる。特に、セルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム及びポリアクリレートフィルム、ポリシクロオレフィンフィルムから選ばれる透明フィルムが好ましい。
市販のセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4FR−1、KC4FR−2、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、(以上コニカミノルタオプト(株)製)を挙げることができる。
市販のポリシクロオレフィンフィルムとしては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
市販のポリカーボネートフィルムとしては、ピュアエース(帝人化成(株)製)、エルメック(カネカ(株))等が挙げられる。
上記フィルムの中では、特に、光学補償フィルムを用いて偏光板を作製する際、鹸化処理のし易さからセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。
これらの透明フィルムは、重合性液晶材料を含む塗布液を塗設する前に、表面処理することが好ましい。
表面処理としては、通常の方法を採用することができ、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等を挙げることができる。
〔セルロースエステルフィルム〕
本発明の支持体としては前述の通りセルロースエステルフィルムであることが好ましい。
セルロースエステルは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同08−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
セルロースエステルの分子量が小さ過ぎると引裂強度が低下するが、分子量を上げ過ぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなり過ぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で60000〜300000のものが好ましく、70000〜200000のものが更に好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルは重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が4.0以下であることが好ましく、更に好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることができる。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)から合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、溶液流延法で製造されたものでも、溶融流延法で製造されたものでもよいが、少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で剥離残溶量が3〜40質量%である時に幅手方向に1.01〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、剥離残溶量が3〜40質量%である時に幅手方向及び長手方向に、各々1.01〜1.5倍に延伸されることが望ましい。
本発明においては、長尺フィルムを用いることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示す。また、基材フィルムの幅は1.4m以上が好ましく、1.4〜4mであることがより好ましい。
セルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明支持体であることが好ましい。
〈アクリル系重合体〉
本発明では、アクリル系重合体をセルロースエステルフィルムに添加することが好ましい。なお、ここでアクリル系重合体にはメタクリル系重合体も含まれる。
本発明に用いられるアクリル系重合体としては、セルロースエステルフィルムに含有させた場合、機能として延伸方向に対して負の複屈折性を示すことが好ましく、特に構造が限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上30000以下である重合体であることが好ましい。
重合体のセルロースエステルフィルム中での含有量は、セルロースエステル全質量に対し、総量として5質量%以上であれば、リターデーション値Rtの調整に十分な作用をする。
重合体は、後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することができる。
〈ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物〉
本発明ではセルロースエステルフィルムには、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を含むことも好ましい。
エステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明においては、エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
本発明に用いられるエステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、或いはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース或いはケストース挙げられる。
このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、リターデーション値の変動を抑制して、表示品位を安定化する為に、上記エステル化合物を、セルロースエステルフィルムの1〜30質量%含むことが好ましく、特には、5〜30質量%含むことが好ましい。
〈その他の添加剤〉
(可塑剤)
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて可塑剤を含有することができる。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、セルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、セルロースエステルフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースエステルフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記セルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(微粒子)
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、微粒子を含有することが好ましい。
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
《中間層》
本発明においては、支持体と液晶層の間に液晶の垂直配向を補助したり、支持体からの溶出物をブロックするような中間層を設けることが好ましい。
中間層は、透明樹脂で構成される。透明樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが更に好ましい。
特に好ましくは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂、或いは架橋剤と反応部位を有する樹脂との混合組成物である。
硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等の紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物を更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。
例えば、特開昭59−151110号号公報に記載のものを用いることができる。例えば、紫光UV−7510B(日本合成化学(株)製)、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
硬化性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜25質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
アクリレート系樹脂としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
これらの市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E(新中村化学工業(株)製)等を適宜選択して利用できる。
また、その他として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジオキサングリコールアクリレート、エトキシ化アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
本発明の架橋剤と反応部位を有する樹脂の混合組成物としては、例えばポリビニルアルコールとグリオキザール、ゼラチンとグリオキザール等が挙げられる。
また、中間層には、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有しても良い。フッ素−アクリル共重合体樹脂とは、フッ素単量体とアクリル単量体とからなる共重合体樹脂で、特にフッ素単量体セグメントとアクリル単量体セグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。
〈中間層の製造方法〉
中間層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、中間層を形成する塗布組成物を塗布し、支持体上に塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することが好ましい。
塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。
また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.01〜1μm、好ましくは0.02〜0.7μmである。
上記UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。
張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることができる。
中間層を形成する塗布組成物には溶媒が含まれていてもよい。塗布組成物に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒からも適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
有機溶媒としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等が好ましい。また、有機溶媒の含有量としては塗布組成物中、5〜80質量%が好ましい。
《本発明の光学補償フィルムを偏光板保護フィルムとして使用した偏光板及び液晶表示装置》
本発明の光学補償フィルムは、偏光膜と偏光膜を挟む2枚の偏光板保護フィルムとからなる偏光板において、該偏光板保護フィルムの少なくとも一枚とすることができる。
そして本発明の光学補償フィルムは、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。
特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、光漏れが低減された、色味むら、正面コントラストなど視認性に優れ液晶表示装置を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《実施例にかかる測定方法》
(リターデーションの測定)
実施例では、アッベ屈折計(4T)を用いてフィルムの平均屈折率を測定した。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が590nmにおけるフィルムのリターデーション測定を行った。リターデーションの算出は、下記式(i)、(ii)を用いた。
(i):Ro=(nx−ny)×d
(ii):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直行する方向の屈折率ny、フィルム厚み方向の屈折率をnz、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
(液晶性材料の液晶相−固体相相転移温度A)
液晶性物質に対し、市販の示差走査熱量計(示差走査熱量計DSC−20(セイコー電子工業社製))を用いて、示差走査熱量測定法により求め、固体相から加熱して吸熱反応を示す温度とする。
(液晶性材料の等方相−液晶相相転移温度B)
未硬化液晶層を支持体上に設けた光学補償フィルムを、方位、傾斜角度を問わずに測定して得たリターデーション値から、支持体のリターデーション値を差し引いた時、|Ro|が0.5nm以下、|Rt|が10nm以下の状態になる温度を言う。リターデーション値の測定には、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用い23℃、55%RHの環境下で測定する。
(液晶層の残留溶媒量の測定)
ヘッドスペース法を用いる。支持体フィルム上に液晶塗布溶液を塗布したサンプルを、不活性ガスで大気圧に満たされた閉鎖系に置き、所定の加熱処理を行う。加熱処理後、揮発した気体をガスクロマトグラフィーで定性、定量を行って揮発した溶媒量から、サンプルの残留溶媒量を算出し、液晶組成物の固形分に対する比率(質量%)を求める。
実施例1
《光学補償フィルム1の作製:本発明》
《透明フィルムの作製》
〈透明フィルムA−1の作製〉
(二酸化珪素分散液)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 12質量部
(1次粒子の平均径16nm、見かけ比重90g/リットル)
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
(芳香族末端エステル1)
反応容器に、フタル酸820部(5モル)、1,2−プロピレングリコール608部(8モル)、安息香酸610部(5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.30部を一括して仕込み窒素気流中で撹拌の下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で6.65×103Pa〜最終的に4×102Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステル1を得た。
粘度(25℃、mPa・s);19815
酸価 ;0.4
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(分子末端に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数を言う。酸価及び水酸基価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
(ドープ液)
セルロースエステル(アセチル基置換度1.80、プロピオニル基置換度0.70、総アシル基置換度2.50) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5質量部
上記芳香族末端エステル1 5質量部
二酸化珪素分散液 10質量部
メチレンクロライド 430質量部
エタノール 40質量部
上記ドープ組成物を密封容器に投入し、70℃まで加熱し、撹拌しながら、セルロースエステルを完全に溶解しドープ液を得た。次に、ドープ液を濾過した後、33℃に温度調整したドープ液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に幅2.5mで均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブという)に44℃の温風を当てて乾燥させ、残留溶媒量が120質量%で剥離し、剥離の際の張力を掛けて1.01倍の縦延伸倍率となるようにロールの周速差を利用して延伸し、次いで、残留溶媒量24質量%、温度135℃にてテンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に1.30倍の延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させ、幅保持を開放した後に120℃で乾燥させた。以上のようにして作製した膜厚60μm、幅2.5m、長さ5000mのセルロースエステルフィルムである透明フィルムA−1をコアに巻き取った。
このセルロースエステルフィルムのリターデーションは、Roは70nm、Rtは200nm、Rt/Roは2.86であった。
尚、上記残留溶媒量は以下の方法で測定した。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量で、下記のガスクロマトグラフィーにより測定した質量であり、Nは該Mを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。測定は、ヒューレット・パッカード社製ガスクロマトグラフィー5890型SERISIIとヘッドスペースサンプラーHP7694型を使用し、以下の測定条件で行った。
ヘッドスペースサンプラー加熱条件:120℃、20分
GC導入温度:150℃
昇温:40℃、5分保持→100℃(8℃/分)
カラム:J&W社製DB−WAX(内径0.32mm、長さ30m)
《中間層の塗設》
透明フィルムと液晶層との間に、下記中間層を設けた。
〈中間層用組成物の調製〉
紫光 UV−7605B(日本合成化学製) 25質量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン)(イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製) 1.25質量部
溶剤(PGME/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量比20/80))
75質量部
〈中間層の塗設〉
上記作製した透明フィルムA−1上に中間層組成物をスリットダイで塗布し、熱風の温度80℃、乾燥時間30秒で乾燥した。続いて酸素濃度1.5%雰囲気中で高圧水銀灯により50mJ/cm2の照射強度で紫外線照射し、乾燥膜厚で1μmの中間層を設けた。塗設された中間層のゲル分率は約50質量%であり、半硬化層であった。
(ゲル分率)
半硬化中間層を約0.1gをとり、これを秤量して質量(W1)を測定した。次いで、これを微孔性テトラフルオロエチレン膜(膜質量W2)に包んで、約50mlの酢酸エチルに7日間浸漬したのち、可溶分を抽出した。これを乾燥し、全体の質量(W3)を測定した。これらの測定値から、下記式により半硬化中間層のゲル分率(質量%)を求めた。
ゲル分率(質量%)={(W3−W2)/W1}×100
《液晶層の塗設》
次いで、得られた中間層上に下記重合性液晶組成物を用いて、液晶層を設けた。
〈重合性液晶組成物の調製及び塗設〉
UCL−018(大日本インキ化学工業製) 25質量部
溶媒(PGMEA/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
75質量部
からなる重合性液晶組成物を調製した。この重合性液晶材料の(液晶性材料の液晶相−固体相相転移温度A)は前記測定法により測定したところ23℃であった。また、(液晶性材料の等方相−液晶相相転移温度B)は同様に70℃であった。
重合性液晶組成物溶液をダイコーターにより中間層上に5μmの厚みで塗布した。
次いで上記液晶層を塗布したフィルムを加熱処理ゾーンに移し、80℃で加熱処理して液晶層中の残留溶媒量を液晶組成物の固形分に対し0.1質量%にした。その時のフィルム上の液晶層をその温度のまま固定化させて、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、リターデーション値を測定し、得られた値から支持体フィルムのリターデーション値を差し引くと、Ro=0.1nm、Rt=−3nmであり、液晶の状態が等方相の状態であることが分かった。
加熱処理後のフィルムを、冷却ロールにより冷却時間1秒で20℃まで温度低下させた。その時の液晶の状態は、液晶性物質が(液晶相−固体相相転移温度A)を過ぎて冷却されても固体化(結晶化)せずに流動性を示し、かつ自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いてリターデーション値を測定し、得られた値から支持体フィルムのリターデーション値を差し引くと、Ro=0.1nm、Rt=−300nmであり、複屈折を持っており、液晶相の状態を保持する状態であるため、過冷却の状態であることが分かった。
次いで、液晶層を塗布したフィルムに酸素濃度0.2%、温度20℃で250mJ/mmの紫外線を80秒照射して、重合性液晶組成物を硬化させ、棒状ネマチック液晶層を有する光学補償フィルム1を得た。
得られた液晶層を塗設した光学補償フィルムを、偏光顕微鏡を用いて評価したところ、クロスニコル偏光子の間に挟んだ場合に黒色に見え、クロスニコル偏光子の間で該光学補償フィルムを傾けた場合に白色に観察された。従って、前記液晶層は垂直配向していることが確認でき、下記評価で、配向ムラ、配向欠陥に優れていた。
この液晶層のリターデーションを測定したところ、Roは0.3nm、Rtは−288nm、また液晶層が積層された本発明の光学補償フィルム1のRoは70nm、Rtは−88nmであった。
《光学補償フィルム2の作製:比較例》
光学補償フィルム1と同様にして、透明フィルム1の上に中間層を塗設し、上記重合性液晶組成物を用いて、ダイコーターにより中間層上に5μmの厚みで液晶層を塗布した。
次いで液晶層を塗布したフィルムを加熱処理ゾーンに移し、50℃で加熱処理して液晶層中の残留溶媒量を液晶組成物の固形分に対し0.1質量%にした。その時の液晶の状態は、流動性を示し、かつ自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いてリターデーション値を測定し、得られた値から支持体フィルムのリターデーション値を差し引くと、Ro=0.1nm、Rt=−300nmであり、複屈折を持っており、液晶相の状態であることが分かった。
加熱処理後のフィルムを、冷却ロールにより冷却時間1秒で20℃まで温度低下させた。その時の液晶の状態は、液晶性物質が(液晶相−固体相相転移温度A)を過ぎて冷却されても固体化(結晶化)せず、流動性と複屈折性を併せ持っており、過冷却状態であることが分かった。
次いで、液晶層を塗布したフィルムに酸素濃度0.2%、温度20℃で250mJ/mmの紫外線を80秒照射して、重合性液晶組成物(C−1)を硬化させ、棒状ネマチック液晶層を有する光学補償フィルム2を得た。
得られた液晶層を塗設した光学補償フィルムを、偏光顕微鏡を用いて評価したところ、クロスニコル偏光子の間に挟んだ場合に黒色に見え、クロスニコル偏光子の間で該光学補償フィルムを傾けた場合に白色に観察され、前記液晶層は垂直配向していることが確認できたが、下記評価で配向ムラ、配向欠陥が観察された。
《光学補償フィルム3〜31の作製》
残留溶媒量、加熱処理温度、冷却温度、冷却時間を変えた以外は光学補償フィルム1、2と同様にして、表1に示す光学補償フィルム3〜31を作製した。尚表中、液晶組成物の状態(液晶相、等方相、または過冷却の状態)については、前記測定により判断した。
《評価》
(配向ムラ)
光学補償フィルム試料を、ヱトー(株)製複屈折位相差測定装置 AD−175SIを用いて、測定スポット0.5mmで0.5mmピッチでのリターデーションRo測定を行った。測定は、フィルムの面内遅相軸を傾斜軸として40°傾斜させて行った。
なお、液晶層の塗布を行う前に二軸性の透明フィルム支持体の位相差ムラは測定して、0.1mm間隔で0.1nm未満でムラがないことを確認しておいた。
配向(位相差)ムラの基準としては、以下を用いた。
間隔 リターデーション差 評価
0.1mm 0.100nm未満 ◎
0.1mm 0.100以上0.150nm未満 ○
0.1mm 0.150以上0.200nm未満 △
0.1mm 0.200nm以上 ×
(配向欠陥)
作製した光学補償フィルムを偏光顕微鏡下でクロスニコル下で観察し、配向状態及び配向欠陥の評価を行い、液晶層中に生じた配向欠陥の数を光学顕微鏡で観察して調べた結果、点欠陥の個数(1.0mm2範囲の平均値)を数えた。
○:0〜3個
△:4〜10個
×:11個以上
以上の評価結果を表1に示す。
表1より、本発明の光学補償フィルムは、液晶層の配向欠陥が少なく、配向ムラもないサンプルであることが分かる。
実施例2
《偏光板の作製》
上記作製した光学補償フィルム1〜31を、40℃の2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し、3分間水洗して鹸化処理し、アルカリ処理フィルムを得た。
次いで、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次に上記作製した偏光膜、及び市販の偏光板保護フィルムであるコニカミノルタタック、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を上記の方法で鹸化処理し、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として、光学補償フィルム、偏光膜、偏光板保護フィルムKC4UYの順で積層して視認側の偏光板を作製した。
《液晶表示装置の作製》
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
IPSモード型液晶表示装置である日立製液晶テレビWooo W17−LC50の予め貼合されていた視認側の偏光板を剥がして、偏光板の吸収軸が一致するように上記作製した偏光板を液晶セルのガラス面に貼合しIPSモード型液晶表示装置を作製した。その際、偏光板の光学補償フィルムが液晶セル側になるように貼合した。
《液晶表示装置の評価》
(視野角)
視野角特性の評価にはELDIM社製EZ−contrastを用い黒表示及び白表示時の透過光量を測定した。視野角の評価はコントラスト=(白表示時の透過光量)/(黒表示時の透過光量)を算出し10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角が左右60°以上のものを「○」とし、実用上問題ないとの評価を行った。
◎:視野角が非常に広い
○:視野角が広い
△:視野角がやや狭い
×:視野角が狭い
(色味)
黒表示時の色味測定を、Topcon製SR−3Aにて行った。
正面と斜め上(方位角45度)の倒れ角60°(正面基準)との色味測定を行い、((x−x’)2+(y−y’)2)1/2を評価した。数字の小さい方が色味が安定していることを表す。
※式中、正面:(x、y)、斜め:(x’、y’)を表す。
○:0.00以上0.04未満
△:0.03以上0.07未満
×:0.07以上
(色ムラ)
目視により色ムラを評価した。
◎:色ムラが全く観察されない
○:色ムラがほんの部分的に観察される
△:色ムラが、全面的に弱いものが観察される
×:色ムラがはっきりと全体に観察される
得られた結果を表2に示す。
今回の測定において、本発明の液晶表示装置は、視野角、色味、色ムラが比較例に対して優れていることが分かる。
実施例3
〈透明フィルムA−2の作製〉
(メタ)アクリル系重合体:攪拌機、2個の滴下ロート、ガス導入管及び温度計の付いたガラスフラスコに、MMA90モル%/HEA10モル%のモノマー混合液40g、連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸3.0g及びトルエン30gを仕込み、90℃に昇温した。その後、一方の滴下ロートから、MMA90モル%/HEA10モル%のモノマー混合液60gを3時間かけて滴下すると共に、同時にもう一方のロートからトルエン14gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.6gを3時間かけて滴下した。その後更に、トルエン56gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.6gを2時間かけて滴下した後、更に2時間反応を継続させ、(メタ)アクリル系重合体を得た。
上記MMA、HEAはそれぞれ以下の化合物の略称である。
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:β−ヒドロキシエチルアクリレート
該(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は下記測定により4000であった。
(分子量測定)
重量平均分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈インライン添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクにセルロースエステルBを添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。
濾過後のセルロースエステル溶液を充分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、インライン添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースエステル(アセチル基置換度1.60、プロピオニル基置換度0.90、総アシル基置換度2.50) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 380質量部
エタノール 70質量部
セルロースエステル(アセチル基置換度1.60、プロピオニル基置換度0.90、総アシル基置換度2.50) 100質量部
(メタ)アクリル系重合体 5.5質量部
下記糖エステル化合物 5.5質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液を濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液を濾過した。濾過したドープ液を100質量部に対し、濾過したインライン添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、1.8m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が120%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを50℃で溶媒を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に、180℃、1.4倍の延伸倍率で延伸した。120℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、平均膜厚が40μmのセルロースエステルフィルムである透明フィルムA−2を作製した。フィルム幅は1.5m、巻き取り長は5000mとした。
得られたフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、480nm、590nm及び630nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したリターデーション値の外挿値より算出した。
このセルロースエステルフィルムの位相差は、R0は60nm、Rtは130nm、Rt/Roは2.17であった。
〈透明支持体A−3の作製〉
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン1.2部、ジブチルエーテル0.15部、トリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、DCPと略記)20部、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(以下、MTFと略記)140部、及び8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン(以下、MTDと略記)40部からなるノルボルネン系モノマー混合物と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、更に水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/MTF/MTD開環重合体水素化ポリマーを20%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去した後、軟質重合体(クラレ社製;セプトン2002)、及び酸化防止剤(チバ・ジャパン(株)社製;イルガノックス1010)を、得られた溶液にそれぞれ添加して溶解させた(いずれも重合体100部あたり0.1部)。次いで、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて除去し、水素化ポリマーを溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化して回収した。重合体中の各ノルボルネン系モノマーの共重合比率を、重合後の溶液中の残留ノルボルネン類組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、DCP/MTF/MTD=10/70/20でほぼ仕込組成に等しかった。この開環重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は31,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5、水素添加率は99.9%、Tgは134℃であった。
得られた開環重合体水素添加物のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥して水分を除去した。次いで、前記ペレットを、リップ幅1.6mのコートハンガータイプのTダイを有する短軸押出機(三菱重工業株式会社製:スクリュー径90mm、Tダイリップ部材質は炭化タングステン、溶融樹脂との剥離強度44N)を用いて溶融押出成形し、乾燥工程途中にて、テンター装置を用い、幅手方向に延伸温度155℃にて1.5倍延伸し、膜厚60μm、幅1.5m、長さ5000mのシクロオレフィンポリマーフィルムである透明支持体A−3を得た。
このシクロオレフィンポリマーフィルムの位相差は、Roは70nm、Rtは200nm、Rt/Roは2.86であった。
上記透明支持体A−2、透明支持体A−3を用いて、実施例1、実施例2と同様にして光学補償フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、同様な評価を実施したところ、本発明の構成の光学補償フィルムは配向ムラ、配向欠陥に優れ、本発明の液晶表示装置は、視野角、色味、色ムラに優れた結果を示し、実施例1、2を再現した。
実施例4
実施例2で用いた日立製液晶テレビWooo W17−LC50の替わりに、VAモード型液晶表示装置であるAQ−32AD5(シャープ(株)製)を用いて、実施例2で用いた光学補償フィルム、偏光板を組み込んだ液晶表示装置を作製し、実施例2と同様な評価を実施したところ、本発明の光学補償フィルムを用いた液晶表示装置は、視野角、色味、色ムラが比較に対して優れていた。