しかしながら、電気自動車の場合は、空調システム側においてバッテリ電力を消費することは、1回のバッテリ充電で走行できる車両の走行距離に対して直接影響を及ぼすことになる。このことから、電気ヒータを暖房用の熱源として使用することは、低外気温時や暖房立ち上がり時等、他の熱源が利用できない場合に限ることとし、極力抑制することが効率面からも望ましいとされている。また、燃焼式ヒータは、燃料の燃焼熱によってクーラント(熱媒)等を加熱する構成とされるため、新たに燃焼装置やその付帯設備を追加設置する必要がある等、使い勝手や経済面からも多くの課題を有している。
以上のような状況から、低外気温時や暖房立ち上がり時等の運転においても必要な能力を安定的に確保して暖房できるとともに、新たな熱源の確保によって電気ヒータの使用を可及的に抑制することが可能な効率のよい車両空調システムとそれを高効率で自動運転することが可能な運転制御方法の提供が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高効率でかつ必要な冷暖房能力を安定的に確保することができる車両空調システムと、該空調システムを用いて効率のよい冷房制御、送風モード制御、モータ/バッテリ冷却制御、暖房制御および除湿暖房制御を行うことができる自動運転制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両空調システムおよびその運転制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる車両空調システムは、送風機の送風流路中に配設されている冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器により温調された空気を車室内に吹き出すHVACユニットと、冷媒圧縮機、冷媒の循環方向を切替える冷媒切替え手段、外気との熱交換により冷媒を凝縮する第1冷媒凝縮器、第1膨張弁および前記冷媒蒸発器がこの順に接続されるとともに、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器に対して第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器が並列に接続され、前記第1冷媒凝縮器に対して前記冷媒切替え手段を介して前記第2冷媒凝縮器が並列に接続されているヒートポンプサイクルと、クーラント循環ポンプ、車室内の排出空気から熱を回収する換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータおよび前記冷媒/クーラント熱交換器が順次接続され、前記換気排熱回収器、前記モータ/バッテリおよび前記電気ヒータが熱源として選択的に利用可能とされているクーラントサイクルとを備え、前記クーラントサイクルは、前記換気排熱回収器および前記モータ/バッテリに対する第1バイパス回路と、前記換気排熱回収器に対する第2バイパス回路とを備えており、該クーラントサイクルは、前記換気排熱回収器と前記モータ/バッテリと前記電気ヒータ、前記換気排熱回収器と前記モータ/バッテリ、前記モータ/バッテリと前記電気ヒータ、前記モータ/バッテリまたは前記電気ヒータのいずれかから選択的に熱を前記冷媒/クーラント熱交換器に回収し、前記ヒートポンプサイクルは、前記冷媒/クーラント熱交換器で回収された前記熱を熱源として暖房制御または除湿暖房制御のいずれかの運転モードで運転可能とされていることを特徴とする。
本発明によれば、クーラント循環ポンプ、換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータおよび冷媒/クーラント熱交換器が順次接続され、車室内の排出空気から熱を回収する換気排熱回収器が組み込まれたクーラントサイクルに、換気排熱回収器およびモータ/バッテリに対する第1バイパス回路と、換気排熱回収器に対する第2バイパス回路とが設けられ、モータ/バッテリからの排熱および電気ヒータによる熱の他に、換気排熱回収器により回収される排熱が熱源として選択的に利用可能とされている。つまり、クーラントサイクルは、ヒートポンプサイクルによるヒートポンプ暖房および除湿暖房時に、換気排熱回収器とモータ/バッテリと電気ヒータ、換気排熱回収器とモータ/バッテリ、モータ/バッテリと電気ヒータ、モータ/バッテリ、電気ヒータの5種の熱源のいずれか1つを選択し、その熱を冷媒/クーラント熱交換器で回収してヒートポンプサイクルの暖房用熱源として有効に利用することができる。従って、低外気温時や暖房立ち上がり時には、電気ヒータによる熱を利用することによって必要な能力を確保し、安定した暖房あるいは除湿暖房を行うことができる。また、モータ/バッテリからの排熱が利用できる場合や、車室内温度が目標温度に到達し換気排熱回収器からの排熱を利用できる場合には、優先的に排熱を利用し、電気ヒータの使用を可及的に抑制することにより、電力消費を抑えた効率のよい運転を行うことができ、車両の走行距離の延長に貢献することができる。更に、熱源の選択に対応してクーラントを第1バイパス回路あるいは第2バイパス回路に選択的に流すことにより、換気排熱回収器とモータ/バッテリ、あるいは換気排熱回収器をバイパスしてクーラントを効率よく加熱し、循環することができるため、クーラント循環ポンプや電気ヒータでの消費動力を低減することができるとともに、換気排熱の有効利用によって暖房用熱源の更なる多様化が可能となるため、その分電気ヒータの使用を抑制し、空調システムでの消費電力を低減することができる。
さらに、本発明の車両空調システムは、上記の車両空調システムにおいて、前記クーラントサイクルは、クーラントをラジエータに循環し、前記モータ/バッテリを空冷するモータ/バッテリ冷却回路を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、クーラントサイクルが、ラジエータを用いた空冷のモータ/バッテリ冷却回路を備えているため、必要に応じてヒートポンプサイクルの冷却機能を利用したクーラントサイクルを介してのモータ/バッテリの冷媒冷却と、ラジエータを介してのモータ/バッテリの空冷冷却を併用することができる。従って、モータ/バッテリのクーラント入り口温度等を見張りながら、冷媒冷却または空冷冷却のいずれかでモータ/バッテリを効率よくかつ確実に冷却することができる。
さらに、本発明の車両空調システムは、上述のいずれかの車両空調システムにおいて、前記ヒートポンプサイクルおよび前記クーラントサイクルは、各々のサイクルの切替えによって、冷房制御、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、モータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御、暖房制御、除湿暖房制御のいずれかの運転モードが選択可能とされていることを特徴とする。
本発明によれば、ヒートポンプサイクルが冷媒圧縮機、冷媒切替え手段、第1冷媒凝縮器、第1膨張弁および冷媒蒸発器と、第1膨張弁および冷媒蒸発器に並列に接続された第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器と、第1冷媒凝縮器に対して冷媒切替え手段を介して並列に接続された第2冷媒凝縮器により構成され、クーラントサイクルがクーラント循環ポンプ、換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータおよび冷媒/クーラント熱交換器により構成されているため、これらのサイクルの切替えによって、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器を機能させて行う冷房制御、HVACユニットの送風機を運転しながら併せてヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、ヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリ冷却制御、クーラントサイクルの換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータ等により加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの第2冷媒凝縮器を機能させて行う暖房制御、同様にして加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器を機能させて行う除湿暖房制御等のいずれかの運転モードを選択することができる。従って、効率のよい冷房、暖房、除湿暖房等の運転の他に、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風運転やモータ/バッテリの冷媒冷却運転等の多様な運転を行うことができ、空調システムを幅広く利用することができる。
さらに、本発明の車両空調システムは、上述のいずれかの車両空調システムにおいて、前記ヒートポンプサイクルは、前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第1冷媒凝縮器、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器の順に循環することにより冷房制御モードで運転されると同時に、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器に並列に接続されている前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器に並行して冷媒を循環することにより、前記クーラントサイクルを介して前記モータ/バッテリが冷却可能とされていることを特徴とする。
本発明によれば、第1膨張弁および冷媒蒸発器と並列に第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器を接続しているため、HVACユニットに配設されている冷媒蒸発器に冷媒を流し、冷房制御モードで運転しながら、これに並列に接続されている冷媒/クーラント熱交換器に並行して冷媒を流し、クーラントサイクルを介してモータ/バッテリを冷媒冷却することができる。従って、高温環境下では、車室内の冷房を行いながら、モータ/バッテリを冷媒によって強制冷却し、走行モータを効率よく運転することができる。
さらに、本発明の車両空調システムは、上述のいずれかの車両空調システムにおいて、前記HVACユニットを送風機のみを駆動して送風モード制御で運転すると同時に、前記ヒートポンプサイクルを前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第1冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させて冷却運転することにより、前記クーラントサイクルを介して前記モータ/バッテリが冷却可能とされていることを特徴とする。
本発明によれば、HVACユニットを送風運転しながら、ヒートポンプサイクルを運転して第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器側のみに冷媒を流すことにより、クーラントを冷却することができる。これによって、クーラントサイクルを介してモータ/バッテリを冷媒冷却することができ、従って、車室内の冷暖房等が不要時においても、送風効果のみを得ながら、モータ/バッテリを冷媒により強制冷却し、走行モータを効率よく運転することができる。
さらに、本発明の車両空調システムは、上述のいずれかの車両空調システムにおいて、前記ヒートポンプサイクルを前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第1冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させてモータ/バッテリ冷却制御モードで運転することにより、前記クーラントサイクルを介して前記モータ/バッテリが冷却可能とされていることを特徴とする。
本発明によれば、HVACユニットの機能、すなわち車室内の送風を含む空調機能の一切を停止しながら、ヒートポンプサイクルを運転して第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器側のみに冷媒を流すことにより、クーラントを冷却することができる。これによって、クーラントサイクルを介してモータ/バッテリを冷媒により強制冷却することができる。従って、車室内の空調機能を停止した状態においても、モータ/バッテリを冷媒により強制冷却し、走行モータを効率よく運転することができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムは、送風機の送風流路中に配設されている冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器により温調された空気を車室内に吹き出すHVACユニットと、冷媒圧縮機、冷媒の循環方向を切替える冷媒切替え手段、外気との熱交換により冷媒を凝縮する第1冷媒凝縮器、第1膨張弁および前記冷媒蒸発器がこの順に接続されるとともに、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器に対して第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器が並列に接続され、前記第1冷媒凝縮器に対して前記冷媒切替え手段を介して前記第2冷媒凝縮器が並列に接続されているヒートポンプサイクルと、クーラント循環ポンプ、車室内の排出空気から熱を回収する換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータおよび前記冷媒/クーラント熱交換器が順次接続され、前記換気排熱回収器、前記モータ/バッテリおよび前記電気ヒータが熱源として選択的に利用可能とされているクーラントサイクルとを備え、前記ヒートポンプサイクルおよび前記クーラントサイクルは、各々のサイクルの切替えによって、冷房制御、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、モータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御、暖房制御、除湿暖房制御のいずれかの運転モードが選択可能とされ、運転開始時、予め設定されている温度や圧力等の設定値と、所定箇所に設けられている温度や圧力等を検出する各センサからの検出値と、制御パネルの設定とを読み込み、前記送風機がオフのときは、モータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御を行い、前記送風機がオンのときは、更にエアコンスイッチのオン/オフを判断し、該スイッチがオフの場合、温調ダイヤルがマックスクールのときは、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御を行い、温調ダイヤルがマックスクール以外のときは、暖房制御を行い、前記エアコンスイッチがオンの場合、温調ダイヤルがマックスクールのときは、冷房制御を行い、温調ダイヤルがマックスクール以外のときは、更に前記蒸発器のフロスト防止要否を判断し、要の場合、暖房制御を行い、否の場合、除湿暖房制御を行う構成とされていることを特徴とする。
本発明によれば、上記構成とされたヒートポンプサイクルおよびクーラントサイクルの切替えによって、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器を機能させて行う冷房制御、HVACユニットの送風機を運転しながら併せてヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、ヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリ冷却制御、クーラントサイクルの換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータ等により加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの第2冷媒凝縮器を機能させて行う暖房制御、同様に加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器を機能させて行う除湿暖房制御等のいずれかの運転モードを選択することができる。従って、効率のよい冷房、暖房、除湿暖房等の運転の他に、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風運転やモータ/バッテリの冷媒冷却運転等の多様な運転を行うことができ、空調システムを幅広く利用することができる。そして、この空調システムの運転を開始する際、予め設定されている、例えば蒸発器フロスト温度Taef、モータ/バッテリの空冷切替え温度Tcmi1、モータ/バッテリの冷媒冷却切替え温度Tcmi2、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1、第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1、第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1等の設定値と、例えばモータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmi、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmo、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcni、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno、換気排熱回収器のクーラント出口温度Tcho、外気温度Taot、第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso、第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi等を検出する各センサからの検出値と、例えば送風スイッチ、エアコンスイッチ、温調ダイヤル等の制御パネルの設定とを読み込み、そのデータに基づいて、車両空調システムをモータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、暖房制御、冷房制御、および除湿暖房制御のいずれかで自動運転を行うことができる。このため、電気自動車にあって、排熱を有効利用した快適な空調運転、ならびにモータ/バッテリの効率のよい冷却運転を実現することができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムは、送風機の送風流路中に配設されている冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器により温調された空気を車室内に吹き出すHVACユニットと、冷媒圧縮機、冷媒の循環方向を切替える冷媒切替え手段、外気との熱交換により冷媒を凝縮する第1冷媒凝縮器、第1膨張弁および前記冷媒蒸発器がこの順に接続されるとともに、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器に対して第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器が並列に接続され、前記第1冷媒凝縮器に対して前記冷媒切替え手段を介して前記第2冷媒凝縮器が並列に接続されているヒートポンプサイクルと、クーラント循環ポンプ、車室内の排出空気から熱を回収する換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータおよび前記冷媒/クーラント熱交換器が順次接続され、前記換気排熱回収器、前記モータ/バッテリおよび前記電気ヒータが熱源として選択的に利用可能とされているクーラントサイクルとを備え、前記ヒートポンプサイクルおよび前記クーラントサイクルは、各々のサイクルの切替えによって、冷房制御、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、モータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御、暖房制御、除湿暖房制御のいずれかの運転モードが選択可能とされ、暖房制御時、前記クーラントサイクルの前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcmo>Tcnoか否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータにより加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させ、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行う構成とされていることを特徴とする。
本発明によれば、上記構成とされたヒートポンプサイクルおよびクーラントサイクルの切替えによって、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器を機能させて行う冷房制御、HVACユニットの送風機を運転しながら併せてヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、ヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリ冷却制御、クーラントサイクルの換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータ等により加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの第2冷媒凝縮器を機能させて行う暖房制御、同様に加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器を機能させて行う除湿暖房制御等のいずれかの運転モードを選択することができる。従って、効率のよい冷房、暖房、除湿暖房等の運転の他に、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風運転やモータ/バッテリの冷媒冷却運転等の多様な運転を行うことができ、空調システムを幅広く利用することができる。そして、暖房制御時は、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合、電気ヒータに通電してクーラントを加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACユニットに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒を第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器に流し、電気ヒータにより加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしているため、モータ/バッテリの排熱が利用できず、通常ではヒートポンプ暖房が困難な低外気温時(例えば、−10℃)や暖房立ち上がり時においても、電気ヒータにより加熱されたクーラントを熱源とすることにより、必要な暖房能力を確保して効率のよい暖房運転を行うことができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムは、送風機の送風流路中に配設されている冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器により温調された空気を車室内に吹き出すHVACユニットと、冷媒圧縮機、冷媒の循環方向を切替える冷媒切替え手段、外気との熱交換により冷媒を凝縮する第1冷媒凝縮器、第1膨張弁および前記冷媒蒸発器がこの順に接続されるとともに、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器に対して第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器が並列に接続され、前記第1冷媒凝縮器に対して前記冷媒切替え手段を介して前記第2冷媒凝縮器が並列に接続されているヒートポンプサイクルと、クーラント循環ポンプ、車室内の排出空気から熱を回収する換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータおよび前記冷媒/クーラント熱交換器が順次接続され、前記換気排熱回収器、前記モータ/バッテリおよび前記電気ヒータが熱源として選択的に利用可能とされているクーラントサイクルとを備え、前記ヒートポンプサイクルおよび前記クーラントサイクルは、各々のサイクルの切替えによって、冷房制御、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、モータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御、暖房制御、除湿暖房制御のいずれかの運転モードが選択可能とされ、除湿暖房制御時、前記クーラントサイクルの前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcmo>Tcnoか否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合は、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータによって加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器で凝縮した後、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器と前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器との双方に並行して流し、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行う構成とされていることを特徴とする。
本発明によれば、上記構成とされたヒートポンプサイクルおよびクーラントサイクルの切替えによって、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器を機能させて行う冷房制御、HVACユニットの送風機を運転しながら併せてヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、ヒートポンプサイクルの冷媒/クーラント熱交換器を機能させてクーラントを冷却し、モータ/バッテリを冷媒により冷却するモータ/バッテリ冷却制御、クーラントサイクルの換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータ等により加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの第2冷媒凝縮器を機能させて行う暖房制御、同様に加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニットに配設されているヒートポンプサイクルの冷媒蒸発器および第2冷媒凝縮器を機能させて行う除湿暖房制御等のいずれかの運転モードを選択することができる。従って、効率のよい冷房、暖房、除湿暖房等の運転の他に、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風運転やモータ/バッテリの冷媒冷却運転等の多様な運転を行うことができ、空調システムを幅広く利用することができる。そして、除湿暖房制御時には、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合、電気ヒータに通電してクーラントを加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒をHVACに配設されている冷媒蒸発器と冷媒/クーラント熱交換器とに並行に流し、電気ヒータで加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしているため、モータ/バッテリの排熱が利用できず、通常ではヒートポンプ暖房が困難な低外気温時(例えば、−10℃)や暖房立ち上がり時においても、電気ヒータにより加熱されたクーラントを熱源とすることにより、必要な暖房能力を確保して効率のよい除湿暖房運転を行うことができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムを自動運転する運転制御方法において、運転開始時、予め設定されている温度や圧力等の設定値と、所定箇所に設けられている温度や圧力等を検出する各センサからの検出値と、制御パネルの設定とを読み込み、前記送風機がオフのときは、モータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御を行い、前記送風機がオンのときは、更にエアコンスイッチのオン/オフを判断し、該スイッチがオフの場合、温調ダイヤルがマックスクールのときは、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御を行い、温調ダイヤルがマックスクール以外のときは、暖房制御を行い、前記エアコンスイッチがオンの場合、温調ダイヤルがマックスクールのときは、冷房制御を行い、温調ダイヤルがマックスクール以外のときは、更に前記蒸発器のフロスト防止要否を判断し、要の場合、暖房制御を行い、否の場合、除湿暖房制御を行うことを特徴とする。
本発明によれば、運転を開始する際に、予め設定されている、例えば蒸発器フロスト温度Taef、モータ/バッテリの空冷切替え温度Tcmi1、モータ/バッテリの冷媒冷却切替え温度Tcmi2、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1、第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1、第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1等の設定値と、例えばモータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmi、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmo、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcni、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno、換気排熱回収器のクーラント出口温度Tcho、外気温度Taot、第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso、第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi等を検出する各センサからの検出値と、例えば送風スイッチ、エアコンスイッチ、温調ダイヤル等の制御パネルの設定とを読み込み、該データに基づいて、車両空調システムをモータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、暖房制御、冷房制御、および除湿暖房制御のいずれかで自動運転するようにしている。このため、電気自動車にあって、排熱を有効利用した快適な空調運転、ならびにモータ/バッテリの効率のよい冷却運転を実現することができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムを冷房制御運転する運転制御方法において、冷房制御時、前記クーラントサイクルの前記モータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1との関係が、Tcmi>Tcmi1か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第1冷媒凝縮器、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器の順に循環させ、前記モータ/バッテリの冷却なしで冷房運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、冷房制御時、モータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmiが予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1以上か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、第1冷媒凝縮器で凝縮された冷媒をHVACユニットに配設されている冷媒蒸発器に流し、モータ/バッテリの冷却なしで冷房運転を行うようにしている。このため、モータ/バッテリのクーラント入り口温度によりモータ/バッテリに対する冷却の要否を確認しながら、冷房運転することができる。
さらに、本発明の車両空調システムの運転制御方法は、上記の車両空調システムの運転制御方法において、前記クーラント入り口温度Tcmiが前記空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、さらに前記クーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2との関係が、Tcmi>Tcmi2か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第1冷媒凝縮器、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器の順に循環させて冷房運転を行うとともに、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器にも並行して冷媒を循環させてクーラントの冷却運転を行い、前記クーラントサイクルを介して前記モータ/バッテリを冷媒冷却し、前記クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、前記冷房運転と共に前記モータ/バッテリを空冷運転することを特徴とする。
本発明によれば、クーラント入り口温度Tcmiが空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、クーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2以上か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、第1冷媒凝縮器で凝縮された冷媒をHVACユニットに配設されている冷媒蒸発器と冷媒/クーラント熱交換器とに並行して流し、冷房運転と共にクーラントサイクルを介してモータ/バッテリを冷媒冷却するようにし、また、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、冷媒を冷媒蒸発器のみに流し冷媒/クーラント熱交換器への冷媒循環を中止して、モータ/バッテリを空冷運転するようにしている。このため、冷房運転を行いながら、モータ/バッテリのクーラント入り口温度に応じてモータ/バッテリを適切に冷却することができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムを送風モード制御運転する運転制御方法において、送風モード制御時、前記クーラントサイクルの前記モータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1との関係が、Tcmi>Tcmi1か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、前記モータ/バッテリの冷却は不要とみなし、前記送風機のみを運転して送風運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、送風モード制御時、モータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1以上か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、モータ/バッテリの冷却は不要とみなし、HVACユニットの送風機のみを運転して送風運転を行うようにしている。このため、モータ/バッテリのクーラント入り口温度によりモータ/バッテリに対する冷却の要否を確認しながら、送風運転することができる。
さらに、本発明の車両空調システムの運転制御方法は、上記の車両空調システムの運転制御方法において、前記クーラント入り口温度Tcmiが前記空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、さらに前記クーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2との関係が、Tcmi>Tcmi2か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、前記送風機を運転して送風運転を行うとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第1冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させてクーラントの冷却運転を行い、前記クーラントサイクルを介して前記モータ/バッテリを冷媒冷却し、前記クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、前記送風運転と共に前記モータ/バッテリを空冷運転することを特徴とする。
本発明によれば、クーラント入り口温度Tcmiが空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、クーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2以上か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、ヒートポンプサイクルにより第1冷媒凝縮器で凝縮された冷媒を第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器に流し、送風運転と共にクーラントサイクルを介してモータ/バッテリを冷媒冷却するようにし、また、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、ヒートポンプサイクルを停止し、モータ/バッテリを空冷運転するようにしている。このため、送風運転を行いながら、モータ/バッテリのクーラント入り口温度に応じてモータ/バッテリを適切に冷却することが可能となる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムをモータ/バッテリ冷却制御運転する運転制御方法において、モータ/バッテリ冷却制御時、前記クーラントサイクルの前記モータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1との関係が、Tcmi>Tcmi1か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、前記モータ/バッテリの冷却は不要とみなし、前記モータ/バッテリの冷却運転を見合わせることを特徴とする。
本発明によれば、モータ/バッテリ冷却制御時、モータ/バッテリのクーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1以上か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、モータ/バッテリの冷却は不要とみなし、モータ/バッテリの冷却運転を見合わせるようにしている。このため、モータ/バッテリのクーラント入り口温度によりモータ/バッテリに対する冷却の要否を確認しながら、モータ/バッテリの冷却運転を見合わせることができる。
さらに、本発明の車両空調システムの運転制御方法は、上記の車両空調システムの運転制御方法において、前記クーラント入り口温度Tcmiが前記空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、さらに前記クーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2との関係が、Tcmi>Tcmi2か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第1冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させてクーラントの冷却運転を行い、前記クーラントサイクルを介して前記モータ/バッテリを冷媒冷却し、前記クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、前記モータ/バッテリを空冷運転することを特徴とする。
本発明によれば、クーラント入り口温度Tcmiが空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、クーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2以上か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、ヒートポンプサイクルにより第1冷媒凝縮器で凝縮された冷媒を第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器に流し、クーラントサイクルを介してモータ/バッテリを冷媒冷却するようにし、また、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、ヒートポンプサイクルを停止し、モータ/バッテリを空冷運転するようにしている。このため、モータ/バッテリのクーラント入り口温度に応じてモータ/バッテリを適切に冷却することができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムを暖房制御運転する運転制御方法において、暖房制御時、前記クーラントサイクルの前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcmo>Tcnoか否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合は、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータにより加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させ、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、暖房制御時、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合は、電気ヒータに通電してクーラントを加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACユニットに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒を第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器に流し、電気ヒータにより加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。従って、モータ/バッテリの排熱が利用できず、通常ではヒートポンプ暖房が困難な低外気温時(例えば、−10℃)や暖房立ち上がり時にも、電気ヒータにより加熱されたクーラントを熱源とすることにより、必要な暖房能力を確保して効率のよい暖房運転を行うことができる。
また、本発明の車両空調システムの運転制御方法は、上記の車両空調システムの運転制御方法において、前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、前記換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcho>Tcnoか否かを判断し、TchoがTcno未満の場合は、さらに前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniと、予め設定されている前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係が、Tcni<Tcni1か否か、前記第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1との関係が、Taso<Taso1か否か、前記第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、Prsi<Prsi1か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合は、前記クーラントサイクルのクーラントを前記モータ/バッテリの排熱により加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させ、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行い、前記クーラント入り口温度Tcni、前記空気側吐出温度Tasoおよび前記入り口冷媒圧力Prsiが各々前記条件を満たしている場合は、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータおよび前記モータ/バッテリの双方により加熱するとともに、該クーラントを熱源として前記ヒートポンプ暖房運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TchoがTcno未満の場合は、さらに冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniが、予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1未満か否か、第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoが、予め設定されている第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1未満か否か、第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiが、予め設定されている第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1未満か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合は、クーラントをモータ/バッテリの排熱により加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACユニットに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒を第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器に流し、該クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行い、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合は、電気ヒータに通電してクーラントを電気ヒータおよびモータ/バッテリの双方により加熱するとともに、該クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。このように、モータ/バッテリの排熱が利用できる場合は、更に換気排熱が利用できるか否かを判断し、換気排熱が利用できない場合は、更に電気ヒータの利用が必要か否かを判断し、本当に電気ヒータが必要な場合に限り電気ヒータに通電してクーラントを加熱するようにしている。このため、各々の状態において、必要な暖房能力を確保して効率のよい暖房運転を行うことができると同時に、電気ヒータの使用を可及的に抑制し、空調システム側での消費電力を低減して車両の走行距離延長に貢献することができる。
また、本発明の車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムの運転制御方法において、前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、前記換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcho>Tcnoか否かを判断し、TchoがTcno以上の場合は、更に前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniと、予め設定されている前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係が、Tcni<Tcni1か否か、前記第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1との関係が、Taso<Taso1か否か、前記第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、Prsi<Prsi1か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合は、前記クーラントサイクルのクーラントを前記モータ/バッテリの排熱および前記換気排熱回収器により加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器、前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器の順に循環させ、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行い、前記クーラント入り口温度Tcni、前記空気側吐出温度Tasoおよび前記入り口冷媒圧力Prsiが各々前記条件を満たしている場合は、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータ、前記モータ/バッテリの排熱および前記換気排熱回収器により加熱するとともに、該クーラントを熱源として前記ヒートポンプ暖房運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TchoがTcno以上の場合は、更に冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniが、予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1未満か否か、第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoが、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1未満か否か、第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiが、予め設定されている第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1未満か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合、クーラントをモータ/バッテリの排熱および換気排熱回収器により加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACユニットに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒を第2膨張弁および冷媒/クーラント熱交換器に流し、該クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行い、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合は、電気ヒータに通電してクーラントを電気ヒータ、モータ/バッテリの排熱および換気排熱回収器により加熱するとともに、該クーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。このように、モータ/バッテリの排熱が利用できる場合は、換気排熱が利用できるか否かを判断し、換気排熱が利用できる場合は、更に電気ヒータの利用が必要か否かを判断し、本当に電気ヒータが必要な場合に限り電気ヒータに通電してクーラントを加熱するようにしている。このため、各々の状態において、必要な暖房能力を確保して効率のよい暖房運転を行うことができると同時に、電気ヒータの使用を可及的に抑制し、空調システム側での消費電力を低減して車両の走行距離延長に貢献することができる。
さらに、本発明にかかる車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムを除湿暖房制御運転する運転制御方法において、除湿暖房制御時、前記クーラントサイクルの前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcmo>Tcnoか否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合は、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータによって加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器で凝縮した後、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器と前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器との双方に並行して流し、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、除湿暖房制御時に、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが、冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合は、電気ヒータに通電してクーラントを加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒をHVACに配設されている冷媒蒸発器と冷媒/クーラント熱交換器とに並行に流し、電気ヒータで加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。従って、モータ/バッテリの排熱が利用できず、通常ではヒートポンプ暖房が困難な低外気温時(例えば、−10℃)や暖房立ち上がり時にも、電気ヒータにより加熱されたクーラントを熱源とすることにより、必要な暖房能力を確保して効率のよい除湿暖房運転を行うことができる。
さらに、本発明の車両空調システムの運転制御方法は、上記の車両空調システムの運転制御方法において、前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、前記換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcho>Tcnoか否かを判断し、TchoがTcno未満の場合は、さらに前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniと、予め設定されている前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係が、Tcni<Tcni1か否か、前記第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1との関係が、Taso<Taso1か否か、前記第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、Prsi<Prsi1か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合は、前記クーラントサイクルのクーラントを前記モータ/バッテリの排熱により加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器で凝縮した後、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器と前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器との双方に並行して流し、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行い、前記クーラント入り口温度Tcni、前記空気側吐出温度Tasoおよび前記入り口冷媒圧力Prsiが各々前記条件を満たしている場合は、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータおよび前記モータ/バッテリの双方により加熱するとともに、該クーラントを熱源として前記ヒートポンプ除湿暖房運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TchoがTcno未満の場合は、さらに冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniが、予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1未満か否か、第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoが、予め設定されている第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1未満か否か、第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiが、予め設定されている第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1未満か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合、クーラントをモータ/バッテリの排熱により加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACユニットに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒をHVACに配設されている冷媒蒸発器と冷媒/クーラント熱交換器とに並行して流し、該クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行い、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合、電気ヒータに通電してクーラントを電気ヒータおよびモータ/バッテリの双方により加熱するとともに、該クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。このように、モータ/バッテリの排熱が利用できる場合は、換気排熱が利用できるか否かを判断し、換気排熱が利用できない場合は、更に電気ヒータの利用が必要か否かを判断し、本当に電気ヒータが必要な場合に限り電気ヒータに通電してクーラントを加熱するようにしている。このため、各々の状態において、必要な暖房能力を確保して効率のよい暖房運転を行うことができると同時に、電気ヒータの使用を可及的に抑制し、空調システム側での消費電力を低減して車両の走行距離延長に貢献することができる。
さらに、本発明の車両空調システムの運転制御方法は、上述のいずれかの車両空調システムの運転制御方法において、前記モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、前記換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoと、前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcho>Tcnoか否かを判断し、TchoがTcno以上の場合は、さらに前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniと、予め設定されている前記冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係が、Tcni<Tcni1か否か、前記第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1との関係が、Taso<Taso1か否か、前記第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiと、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、Prsi<Prsi1か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合は、前記クーラントサイクルのクーラントを前記モータ/バッテリの排熱および前記換気排熱回収器によって加熱するとともに、前記ヒートポンプサイクルにより前記冷媒圧縮機からの冷媒を前記第2冷媒凝縮器で凝縮した後、前記第1膨張弁および前記冷媒蒸発器と前記第2膨張弁および前記冷媒/クーラント熱交換器との双方に並行して流し、前記クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行い、前記クーラント入り口温度Tcni、前記空気側吐出温度Tasoおよび前記入り口冷媒圧力Prsiが各々前記条件を満たしている場合、前記電気ヒータに通電し、前記クーラントサイクルのクーラントを該電気ヒータ、前記モータ/バッテリの排熱および前記換気排熱回収器により加熱するとともに、該クーラントを熱源として前記ヒートポンプ除湿暖房運転を行うことを特徴とする。
本発明によれば、モータ/バッテリのクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上のときは、換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TchoがTcno以上のときは、さらに冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口温度Tcniが、予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器のクーラント入り口必要温度Tcni1未満か否か、第2冷媒凝縮器の空気側吐出温度Tasoが、予め設定されている前記第2冷媒凝縮器の空気側必要吐出温度Taso1未満か否か、第2冷媒凝縮器の入り口冷媒圧力Prsiが、予め設定されている第2冷媒凝縮器の入り口必要冷媒圧力Prsi1未満か否かを各々判断し、各々が条件を満たしていない場合は、クーラントをモータ/バッテリの排熱および換気排熱回収器により加熱するとともに、ヒートポンプサイクルによりHVACユニットに配設されている第2冷媒凝縮器で凝縮された冷媒をHVACに配設されている冷媒蒸発器と冷媒/クーラント熱交換器に流し、該クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行い、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合は、電気ヒータに通電してクーラントを電気ヒータ、モータ/バッテリの排熱および換気排熱回収器によって加熱するとともに、該クーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。このように、モータ/バッテリの排熱が利用できる場合は、換気排熱が利用できるか否かを判断し、換気排熱が利用できる場合は、更に電気ヒータの利用が必要か否かを判断し、本当に電気ヒータが必要な場合に限って電気ヒータに通電してクーラントを加熱するようにしている。このため、各々の状態において、必要な暖房能力を確保して効率のよい除湿暖房運転を行うことができると同時に、電気ヒータの使用を可及的に抑制し、空調システム側での消費電力を低減して車両の走行距離延長に貢献することができる。
本発明の車両空調システムによると、ヒートポンプサイクルによるヒートポンプ暖房および除湿暖房時において、換気排熱回収器とモータ/バッテリと電気ヒータ、換気排熱回収器とモータ/バッテリ、モータ/バッテリと電気ヒータ、モータ/バッテリ、電気ヒータの5種の熱源のいずれか1つを選択し、その熱を冷媒/クーラント熱交換器により回収してヒートポンプサイクルの暖房用の熱源として有効利用することができるため、低外気温時や暖房立ち上がり時には、電気ヒータによる熱を利用することによって必要な能力を確保し、安定した暖房あるいは除湿暖房を行うことができる。また、モータ/バッテリからの排熱が利用できる場合や、車室内温度が目標温度に到達し換気排熱回収器からの排熱を利用できる場合には、優先的に排熱を利用し、電気ヒータの使用を可及的に抑制することにより、電力消費を抑えた効率のよい運転を行うことができ、車両の走行距離の延長に貢献することができる。更に、熱源の選択に対応してクーラントを第1バイパス回路あるいは第2バイパス回路に選択的に流すことにより、換気排熱回収器とモータ/バッテリ、あるいは換気排熱回収器をバイパスしてクーラントを効率よく加熱し、循環することができるため、クーラント循環ポンプや電気ヒータでの消費動力を低減することができるとともに、換気排熱の有効利用によって暖房用熱源の更なる多様化が可能となるため、その分電気ヒータの使用を抑制し、空調システムでの消費電力を低減することができる。
また、本発明の車両空調システムの運転制御方法によると、予め設定されている温度や圧力等の設定値と、所定箇所に設けられている温度や圧力等を検出する各センサからの検出値と、制御パネルの設定とに基づいて、上記の車両空調システムをモータ/バッテリを冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御、モータ/バッテリの冷媒冷却を含む送風モード制御、暖房制御、冷房制御、および除湿暖房制御のいずれかで自動運転できるようにしているため、電気自動車にあって、排熱を有効利用した快適な空調運転、ならびにモータ/バッテリの効率のよい冷却運転を実現することができる。
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図27を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る車両空調システム1のシステム構成図が示されている。車両空調システム1は、HVACユニット(Heating Ventilation and Air Conditioning Unit;HVACユニット)2と、ヒートポンプサイクル3と、クーラントサイクル4とから構成されている。
HVACユニット2は、送風用のブロア(送風機)5と、該ブロア5の送風路中に上流側から下流側に順次配設されているヒートポンプサイクル3を構成する冷媒蒸発器6およびサブコンデンサとも称される第2冷媒凝縮器7とを備えており、車両のインストルメントパネル内に設置され、冷媒蒸発器6および第2冷媒凝縮器7によって温調された空気を車室内に吹出し、車室内の空調を行うように構成されている。
ヒートポンプサイクル3は、冷媒を圧縮する電動モータを内蔵した冷媒圧縮機8と、該冷媒圧縮機8の2分岐された吐出側冷媒配管に設けられた第1電磁弁9および第2電磁弁10からなる冷媒循環方向を切替える冷媒切替え手段11と、第1電磁弁9側の冷媒配管中に順次設けられている冷媒と外気とを熱交換する第1冷媒凝縮器12および逆止弁13と、逆止弁13の下流側冷媒配管に第1膨張弁(EEV;電子膨張弁)14を介して設けられている上記冷媒蒸発器6と、該冷媒蒸発器6の下流側の吸入側冷媒配管に設けられているアキュームレータ15と、をこの順に接続して構成された閉サイクルの冷媒回路16を有している。
また、ヒートポンプサイクル3は、第2電磁弁10から第1膨張弁14の入り口側に至る冷媒配管17中に第1冷媒凝縮器12および逆止弁13に対して並列に接続されている上記第2冷媒凝縮器7と、第1膨張弁14および冷媒蒸発器6に対して並列に接続されている冷媒配管18中に設けられている第2膨張弁(EEV;電子膨張弁)19および冷媒/クーラント熱交換器20と、を備えた構成とされている。なお、冷媒/クーラント熱交換器20は、ヒートポンプサイクル3内を循環される冷媒と、クーラントサイクル4内を循環されるクーラントとを熱交換するための熱交換器である。
クーラントサイクル4は、上記冷媒/クーラント熱交換器20と、クーラント循環ポンプ21と、車室内から外部に排出される空気から熱を回収する換気排熱回収器22と、走行モータおよび/またはその電源バッテリ23(以下、単にモータ/バッテリと称するものとし、該モータには、モータを駆動するインバータを含む場合と含まない場合とが含まれるものとする。)と、PTCヒータ等の電気ヒータ(PTC)24とを順次接続して構成されている閉サイクルのクーラント回路25を有している。このクーラント回路25において、電気ヒータ24は、冷媒/クーラント熱交換器20の上流側に、また換気排熱回収器22は、冷媒/クーラント熱交換器20の下流側にそれぞれ配設されている。なお、換気排熱回収器22が配設されている車室内空気の排出路には、圧力リリーフ弁(PRV)26が設けられている。
また、クーラントサイクル4は、換気排熱回収器22の入り口側に第3電磁弁27が設けられ、モータ/バッテリ23の出口側に第4電磁弁28が設けられるとともに、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23に対して第5電磁弁29を備えた第1バイパス回路30が接続され、換気排熱回収器22に対して第6電磁弁31を備えた第2バイパス回路32が接続された構成とされている。
さらに、クーラントサイクル4には、モータ/バッテリ23の出口側と入り口側との間に、第7電磁弁33および第2クーラント循環ポンプ34を介してクーラントを空冷するラジエータ35を備えたモータ/バッテリ冷却回路36が設けられている。なお、モータ/バッテリ冷却回路36には、リザーブタンク37が接続されているとともに、ラジエータ35に対面して外気を流通する冷却ファン38が配設されている。また、このラジエータ35および冷却ファン38と、上記第1冷媒凝縮器12とは、一体にモジュール化されたコンデンサ/ラジエータ/ファンモジュール(CRFM)としてもよい。
本実施形態に係る車両空調システム1は、以上のように構成されているため、ヒートポンプサイクル3の冷媒圧縮機8において圧縮された冷媒を、冷媒切替え手段11の第1電磁弁9から第1冷媒凝縮器12に導入して凝縮し、この冷媒を逆止弁13、第1膨張弁14を介してHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6に流通させ、ブロア5から送風される空気と熱交換させて該空気を冷却し、車室内に吹出すことによって車室内の冷房に供することができる。同時に、第2膨張弁19を介して冷媒/クーラント熱交換器20に冷媒を導き、この冷媒でクーラントサイクル4側のクーラントを冷却し、該クーラントをクーラント循環ポンプ21でモータ/バッテリ23に循環することにより、車室内を冷房しながらモータ/バッテリ23を冷媒冷却することができる。
また、ヒートポンプサイクル3を上記のように運転しながら、第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒を、第2膨張弁19を介して冷媒/クーラント熱交換器20側のみに導くことによりクーラントサイクル4側のクーラントを冷却し、車室内の冷房を停止した状態あるいはブロア5のみを運転した送風モード状態で、モータ/バッテリ23を冷媒によって冷却することもできる。なお、モータ/バッテリ23は、ヒートポンプサイクル3を停止した状態で、クーラントを第7電磁弁33および第2クーラント循環ポンプ34を介してモータ/バッテリ冷却回路36側に循環し、ラジエータ35を機能させることにより空冷することができる。
一方、ヒートポンプサイクル3の冷媒圧縮機8で圧縮された冷媒を、冷媒切替え手段11の第2電磁弁10および冷媒配管17を経てHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7側に導き、ブロア5から送風される空気と熱交換させて該空気を加熱し、この空気を車室内に吹出すことによって車室内の暖房に供することができる。この場合、第2冷媒凝縮器7で放熱して凝縮された冷媒は、第2膨張弁19を介して冷媒/クーラント熱交換器20に導入され、クーラントサイクル4側のクーラントから吸熱して蒸発された後、アキュームレータ15を経て冷媒圧縮機8に吸入されることになる。
同様に、ヒートポンプサイクル3では、第2冷媒凝縮器7で凝縮された冷媒を、第1膨張弁14および冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20との双方に並行して流すことができる。これによって、クーラントサイクル4側のクーラントから吸熱しながら、HVACユニット2においてブロア5から送風される空気を冷媒蒸発器6でいったん冷却除湿した後、これを第2冷媒凝縮器7で加熱することにより、除湿暖房を行うことができる。
そして、上記暖房および除湿暖房の際、ヒートポンプサイクル3側では、冷媒/クーラント熱交換器20でクーラントから吸熱して冷媒を蒸発させることにより、クーラントを熱源として暖房および除湿暖房を行っている。このクーラントは、クーラント循環ポンプ21を介してクーラントサイクル25内を循環される間に、モータ/バッテリ23、電気ヒータ24および換気排熱回収器22の3つ熱源の組み合わせから、以下の5種の熱源のいずれか1つを選択し、その熱を冷媒/クーラント熱交換器20で回収してヒートポンプサイクル3での暖房用熱源としている。
(A)換気排熱回収器22とモータ/バッテリ23と電気ヒータ24との組み合わせ。
(B)換気排熱回収器22とモータ/バッテリ23との組み合わせ。
(C)モータ/バッテリ23と電気ヒータ24との組み合わせ。
(D)モータ/バッテリ23単独。
(E)電気ヒータ24単独。
このように、モータ/バッテリ23の排熱および電気ヒータ24の熱の他に、換気排熱回収器22により回収される車室内空気の換気排熱を利用することによって、暖房用熱源を多様化することができる。
上記5種の熱源のうち、(A)の換気排熱回収器22とモータ/バッテリ23と電気ヒータ24を利用する場合は、第3電磁弁27および第4電磁弁28を開、第5電磁弁29および第6電磁弁31を閉として、クーラントを換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23および電気ヒータ24の順に循環すればよく、(C)のモータ/バッテリ23と電気ヒータ24を利用する場合は、第6電磁弁31および第4電磁弁28を開、第5電磁弁29および第3電磁弁27を閉とし、換気排熱回収器22をバイパスして第2バイパス回路32を介してモータ/バッテリ23および電気ヒータ24にクーラントを循環すればよく、さらに、(E)の電気ヒータ24のみを利用する場合は、第3電磁弁27、第4電磁弁28および第6電磁弁31を閉、第5電磁弁29を開とし、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23をバイパスして電気ヒータ24にクーラントを循環すればよい。なお、(B)および(D)では、各電磁弁を(A)および(C)と同様の開閉状態としたまま、電気ヒータ24への通電をオフにすればよい。
しかして、本実施形態によれば、ヒートポンプサイクル3によるヒートポンプ暖房および除湿暖房時において、換気排熱回収器22を介して車室内の排出空気から回収された排熱を暖房用の熱源として有効利用することができる。このため、低外気温時や暖房立ち上がり時には、電気ヒータ24による熱を利用することによって必要な能力を確保し、安定した暖房あるいは除湿暖房を行うことができ、また、モータ/バッテリ23からの排熱が利用できる場合や車室内温度が目標温度に到達し換気排熱回収器22からの排熱が利用できる場合には、優先的に排熱を利用し、電気ヒータ24の使用を可及的に抑制することにより、電力消費を抑えた効率のよい運転を行うことができる。従って、車両の走行距離の延長にも貢献することができる。
また、クーラントサイクル4には、第1バイパス回路30および第2バイパス回路32が設けられているため、熱源の選択に対応してクーラントを第1バイパス回路30あるいは第2バイパス回路31に選択的に流すことによって、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23、あるいは換気排熱回収器22をバイパスしてクーラントを効率よく加熱し、循環することができる。従って、クーラント循環ポンプ21や電気ヒータ(PTC)24での消費動力を低減することができる。
また、クーラントサイクル4が、ラジエータ35を用いた空冷のモータ/バッテリ冷却回路36を備えているため、必要に応じてヒートポンプサイクル3の冷却機能を利用したクーラントサイクル4を介してのモータ/バッテリ23の冷媒冷却と、ラジエータ35を介してのモータ/バッテリ23の空冷冷却とを併用することができる。これによって、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度等を見張りながら、冷媒冷却または空冷冷却のいずれかでモータ/バッテリ23を効率よくかつ確実に冷却することができる。
さらに、本実施形態によれば、ヒートポンプサイクル3およびクーラントサイクル4のサイクルの切替えによって、以下のいずれかの運転モードを選択することができる。
(1)HVACユニット2のブロア5を運転しながら、HVACユニット2に配設されているヒートポンプサイクル3の冷媒蒸発器6を蒸発器、第1冷媒凝縮器12を凝縮器として機能させて行う冷房制御運転。
(2)HVACユニット2のブロア5を運転しながら、併せてヒートポンプサイクル3の第1冷媒凝縮器12を凝縮器、冷媒/クーラント熱交換器20を蒸発器として機能させてクーラントを冷却し、クーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒により冷却するモータ/バッテリ23の冷媒冷却を含む送風モード制御運転。
(3)HVACユニット2のブロア5を停止した状態で、ヒートポンプサイクル3の第1冷媒凝縮器12を凝縮器、冷媒/クーラント熱交換器20を蒸発器として機能させてクーラントを冷却し、クーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒により冷却するモータ/バッテリ冷却制御運転。
(4)HVACユニット2のブロア5を運転しながら、クーラントサイクル4の換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23、電気ヒータ24等によって加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニット2に配設されているヒートポンプサイクル3の第2冷媒凝縮器7を凝縮器、冷媒/クーラント熱交換器20を蒸発器として機能させて行う暖房制御運転。
(5)HVACユニット2のブロア5を運転しながら、上記(4)と同様にして加熱されたクーラントを熱源とし、HVACユニット2に配設されているヒートポンプサイクル3の第2冷媒凝縮器7を凝縮器、冷媒蒸発器6および冷媒/クーラント熱交換器20を蒸発器として機能させて行う除湿暖房制御運転。
従って、本実施形態の車両空調システム1によると、効率のよい冷房、暖房、除湿暖房等の運転の他に、モータ/バッテリ23の冷媒冷却を含む送風運転やモータ/バッテリ23の冷媒冷却運転等の多様な運転を行うことができ、車両空調システム1を幅広く利用することができる。
また、クーラントサイクル4では、そのサイクル中に接続されている換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23および電気ヒータ24の3つ熱源の組み合わせにより、上記した5種の熱源(A)ないし(E)のいずれか1つを選択し、その熱を冷媒/クーラント熱交換器20で回収してヒートポンプサイクル3の暖房用熱源とすることができる。このように、換気排熱回収器22により回収された車室内空気の換気排熱を利用することによって、暖房用熱源の多様化が可能となり、従って、その分電気ヒータ24の使用を抑制することができ、空調システム1での消費電力を低減することができる。
また、本実施形態では、ヒートポンプサイクル3において、第1膨張弁14および冷媒蒸発器6に対して並列に第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20を接続しているため、第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒をHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6に流し、冷房制御モードで運転しながら、これに並列に接続されている冷媒/クーラント熱交換器20にも並行して冷媒を流しクーラントを冷却することにより、クーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒により冷却することができる。従って、高温環境下では、車室内の冷房を行いながら、モータ/バッテリ23を冷媒によって強制冷却し、走行モータを効率よく運転することができる。
同様に、ブロア5を駆動しHVACユニット2を送風運転しながら、ヒートポンプサイクル3を運転し、第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒を第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20側のみに流すことにより、クーラントを冷却することができる。これによって、冷却されたクーラントおよびクーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒により冷却することができ、従って、車室内の冷暖房等が不要な場合においても、送風効果のみを得ながら、モータ/バッテリ23を冷媒により強制冷却し、走行モータを効率よく運転することができる。
さらに、本実施形態によれば、HVACユニット2の機能、すなわち車室内の送風を含む空調機能の一切を停止しながら、上記と同様にヒートポンプサイクル3を運転し、第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒を第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20側のみに流すことにより、クーラントを冷却することができる。これによって、冷却されたクーラントおよびクーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒により強制冷却することができる。従って、車室内の空調機能を停止した状態においても、モータ/バッテリ23を冷媒により強制冷却し、走行モータを効率よく運転することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図2ないし図27を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に係る車両空調システムを自動運転する運転制御方法に係るものであり、図2ないし図7には、その制御フローが示され、図8には、その運転モードのパターンを一覧表にした図が示され、図9ないし図27には、各運転モードでの冷媒およびクーラントの流れを示す(図中に矢印表示)サイクル図が示されている。
本実施形態によれば、図2に示されるように、運転が開始(スタート)されると、まずステップS1において、予め設定されている蒸発器6のフロスト温度Taef、モータ/バッテリ23の空冷切替え温度Tcmi1、モータ/バッテリ23の冷媒冷却切替え温度Tcmi2、冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口必要温度Tcni1、第2冷媒凝縮器7の空気側必要吐出温度Taso1、第2冷媒凝縮器7の入り口必要冷媒圧力Prsi1等の設定値が読み込まれる。
続いて、ステップS2において、図1に配設位置が図示されているセンサ40によりモータ/バッテリ23のクーラント入り口温度Tcmi、センサ41によりモータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmo、センサ42により冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口温度Tcni、センサ43により冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno、センサ44により換気排熱回収器のクーラント出口温度Tcho、センサ45により外気温度Taot、センサ46により第2冷媒凝縮器7の空気側必要吐出温度Taso、センサ47により第2冷媒凝縮器7の入り口必要冷媒圧力Prsi等が検出され、その検出値が読み込まれる。
さらに、ステップS3において、制御パネル(図示省略)に設けられている送風スイッチ、エアコンスイッチ、温調ダイヤル等のパネル設定が読み込まれる。
これらのデータに基づいて、ステップS4において、まず送風スイッチのオン/オフが判断される。送風スイッチがオンされておれば、ステップS5に移行し、また、ブロア5がオフされておれば、ステップS6に移行し、ステップS6では、後述の通りモータ/バッテリ冷却制御運転が実行される。
一方、ステップS5においては、エアコンスイッチのオン/オフが判断され、エアコンスイッチがオンされておれば、ステップS7に移行し、エアコンスイッチがオフされておれば、ステップS8に移行する。ステップS8では、温調ダイヤルがマックスクール(最大冷房)か否かが判断され、「YES」であれば、ステップS9に移行し、ステップS9において、後述の通り送風モード制御運が実行される。また、ステップS8で「NO」と判断されると、ステップS10に移行し、ステップS10において、後述の通り暖房制御運転が実行される。
さらに、ステップS7においては、同様に温調ダイヤルがマックスクール(最大冷房)か否かが判断され、「YES」であれば、ステップS11に移行し、ステップS11において、後述の通り冷房制御運転が実行される。また、ステップS7で「NO」と判断されると、ステップS12に移行し、ここでは、センサ45により検出された外気温度Taotと、予め設定されている蒸発器6のフロスト温度Taefとの関係が、Taot<Taefか否かが判断される。その結果、「YES」であれば、上記ステップS10に移行し、後述の通り暖房制御運転が実行され、「NO」であれば、ステップS13に移行し、後述の通り除湿暖房制御運転が実行される。
このようにして、車両空調システム1を上記した冷房制御運転(1)、モータ/バッテリ23の冷媒冷却を含む送風モード制御運転(2)、モータ/バッテリ23を冷媒冷却するモータ/バッテリ冷却制御運転(3)、暖房制御運転(4)、および除湿暖房制御運転(5)のいずれかで自動運転することができる。従って、電気自動車にあって、モータ/バッテリ23の排熱および換気排熱を有効利用した快適な空調運転、ならびにモータ/バッテリ23の効率のよい冷却運転を実現することができる。
以下に、冷房制御運転(1)、送風モード制御運転(2)、モータ/バッテリ冷却制御運転(3)、暖房制御運転(4)、および除湿暖房制御運転(5)の具体的な運転制御方法を図3ないし図7に示す制御フローと図9ないし図27のサイクル図を用いて説明する。
[冷房制御]
冷房制御時は、図3に示されるように、まずステップS21において、モータ/バッテリ23が空冷利用か否かが判断される。これは、センサ40により検出されたモータ/バッテリ23のクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1との関係が、Tcmi>Tcmi1か否かによって判断される。この結果、TcmiがTcmi1未満で「NO」と判断された場合、ステップS22の冷房時3に移行し、図11に示されるように、ヒートポンプサイクル3において、冷媒圧縮機8から吐出された冷媒を冷媒切替え手段11により第1冷媒凝縮器12、第1膨張弁14および冷媒蒸発器6の順に循環させ、HVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6でブロア5からの空気を冷却し、車室内に吹出すことによって冷房運転を行うことができる。この場合、モータ/バッテリ23の冷却は不要と見做され、モータ/バッテリ23の冷却運転は見合わされる。
一方、ステップS21において、TcmiがTcmi1以上で「YES」と判断された場合、引き続きステップS23において、モータ/バッテリ23が冷媒冷却利用か否かが判断される。これは、センサ40により検出されたクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2との関係が、Tcmi>Tcmi2か否かによって判断される。TcmiがTcmi2以上で「YES」と判断された場合、ステップS24の冷房時1に移行し、図9に示されるように、ヒートポンプサイクル3において、冷媒圧縮機8から吐出された冷媒を第1冷媒凝縮器12に導いて凝縮させ、この冷媒を第1膨張弁14および冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して循環させるようにしている。
このため、HVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6でブロア5からの空気を冷却し、車室内に吹出すことによって冷房運転を行うことができるとともに、冷媒/クーラント熱交換器20でクーラントの冷却運転を行い、このクーラントおよびクーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒冷却することができる。さらに、ステップS23において、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満で「NO」と判断された場合は、ステップS25の冷房時2に移行し、図10に示されるように、ヒートポンプサイクル3により第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒を、第1膨張弁14を介して冷媒蒸発器6のみに循環させ、HVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6でブロア5からの空気を冷却し、車室内に吹出すことによって冷房運転を行うことができ、また、モータ/バッテリ23については、ラジエータ35にモータ/バッテリ冷却回路36を介してクーラントを循環させることによって空冷することができる。
以上のように、冷房制御時においては、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度Tcmiが予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1以上か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒をHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6に流し、モータ/バッテリ23の冷却なしで冷房運転を行うようにしている。このため、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度によりモータ/バッテリ23に対する冷却の要否を確認しながら、冷房運転することができる。
また、クーラント入り口温度Tcmiが空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、クーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2以上か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒をHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6と冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して流し、冷房運転と共にクーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒冷却するようにしている。さらに、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、冷媒蒸発器6のみに冷媒を流し冷媒/クーラント熱交換器20への冷媒循環を中止して、モータ/バッテリ23を空冷運転するようにしている。このため、冷房運転を行いながら、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度に応じてモータ/バッテリ23を適切に冷却することが可能となる。
[送風モード制御]
送風モード制御時は、図4に示されるように、まずステップS31において、モータ/バッテリ23が空冷利用か否かが判断される。これは、センサ40により検出されたモータ/バッテリ23のクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1との関係が、Tcmi>Tcmi1か否かによって判断される。この結果、TcmiがTcmi1未満で「NO」と判断された場合、ステップS32の送風モード時3に移行し、図14に示されるように、HVACユニット2のブロア5のみが運転されることにより、送風運転が行われる。この場合、モータ/バッテリ23の冷却は不要と見做され、モータ/バッテリ23の冷却運転は見合わされる。
一方、ステップS31において、TcmiがTcmi1以上で「YES」と判断された場合、引き続きステップS33において、モータ/バッテリ23が冷媒冷却利用か否かが判断される。これは、センサ40により検出されたクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2との関係が、Tcmi>Tcmi2か否かによって判断される。TcmiがTcmi2以上で「YES」と判断された場合、ステップS34の送風モード時1に移行し、図12に示されるように、ブロア5の運転により送風運転が行われるとともに、ヒートポンプサイクル3が運転される。これにより、冷媒圧縮機8から吐出された冷媒が冷媒切替え手段11により第1冷媒凝縮器12に導かれて凝縮された後、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20の順に循環されてクーラントの冷却運転が行われ、該クーラントおよびクーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒冷却することができる。
さらに、ステップS33において、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満で「NO」とされた場合は、ステップS35の送風モード時2に移行し、図13に示されるように、ブロア5を運転して送風運転を行い、ヒートポンプサイクル3を停止するようにしている。この場合、モータ/バッテリ23は、ラジエータ35にモータ/バッテリ冷却回路36を介してクーラントを循環させることによって空冷運転されることになる。
以上のように、送風モード制御時においては、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1以上か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、モータ/バッテリ23の冷却は不要とみなし、HVACユニット2のブロア5のみを運転して送風運転を行うようにしている。このため、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度によりモータ/バッテリ23に対する冷却の要否を確認しながら、送風運転することができる。
また、クーラント入り口温度Tcmiが空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、クーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2以上か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、ヒートポンプサイクル3により第1冷媒凝縮器12で凝縮された冷媒を第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20に流し、送風運転と共にクーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒冷却するようにし、また、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、ヒートポンプサイクル3を停止し、モータ/バッテリ23を空冷運転するようにしている。このため、送風運転を行いながら、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度に応じてモータ/バッテリ23を適切に冷却することが可能となる。
[モータ/バッテリ冷却制御]
モータ/バッテリ冷却制御時は、図5に示されているように、まずステップS41において、モータ/バッテリ23が空冷利用か否かが判断される。これは、センサ40により検出されたモータ/バッテリ23のクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1との関係が、Tcmi>Tcmi1か否かによって判断される。この結果、TcmiがTcmi1未満で「NO」と判断された場合、ステップS42のモータ/バッテリ冷却時3に移行し、図17に示されるように、モータ/バッテリ23の冷却は不要と見做され、モータ/バッテリ23の冷却運転は見合わされる。なお、この場合、HVACユニット2は停止状態とされている。
一方、ステップS41において、クーラント入り口温度Tcmiが空冷切替え温度Tcmi1以上で「YES」と判断された場合は、続いてステップS43において、モータ/バッテリ23が冷媒冷却利用か否かが判断される。これは、センサ40により検出されたクーラント入り口温度Tcmiと、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2との関係が、Tcmi>Tcmi2か否かにより判断される。TcmiがTcmi2以上で「YES」と判断された場合、ステップS44のモータ/バッテリ冷却時1に移行し、図15に示されるように、ヒートポンプサイクル3において、冷媒圧縮機8からの冷媒を冷媒切替え手段11により第1冷媒凝縮器12、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20の順に循環させてクーラントの冷却運転を行い、クーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒冷却することができる。HVACユニット2は停止状態が維持される。
さらに、ステップS43において、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満で「NO」と判断された場合は、ステップS45のモータ/バッテリ冷却時2に移行し、図16に示されるように、ヒートポンプサイクル3を停止するようにしている。この場合、モータ/バッテリ23は、ラジエータ35にモータ/バッテリ冷却回路36を介してクーラントを循環させることによって空冷運転されることになる。
以上のように、モータ/バッテリ冷却制御時においては、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている空冷切替え温度Tcmi1以上か否かを判断し、TcmiがTcmi1未満の場合は、モータ/バッテリ23の冷却は不要とみなし、モータ/バッテリ23の冷却運転を見合わせるようにしている。このため、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度によりモータ/バッテリ23に対する冷却の要否を確認しながら、モータ/バッテリ23の冷却運転を見合わせることができる。
また、クーラント入り口温度Tcmiが空冷切替え温度Tcmi1以上のときは、クーラント入り口温度Tcmiが、予め設定されている冷媒冷却切替え温度Tcmi2以上か否かを判断し、TcmiがTcmi2以上の場合は、ヒートポンプサイクル3により第1冷媒凝縮器12において凝縮された冷媒を第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20に流し、クーラントサイクル4を介してモータ/バッテリ23を冷媒冷却するようにし、また、クーラント入り口温度TcmiがTcmi2未満の場合は、ヒートポンプサイクル3を停止し、モータ/バッテリ23を空冷運転するようにしている。このため、モータ/バッテリ23のクーラント入り口温度に応じてモータ/バッテリ23を適切に冷却することができる。
[暖房制御]
暖房制御時は、図6に示されるように、まずステップS51において、モータ/バッテリ23が排熱利用か否かが判断される。これは、センサ41により検出されたモータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoと、センサ43により検出された冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcmo>Tcnoか否かによって判断される。
この結果、TcmiがTcmi1未満で「NO」と判断された場合は、ステップS52の暖房時5に移行し、図22に示されるように、電気ヒータ24に通電され、第5電磁弁29が開、第3電磁弁27、第4電磁弁28および第6電磁弁31が閉とされる。これにより、クーラントサイクル4のクーラントは第1バイパス回路30に循環され電気ヒータ24によって加熱される。同時にヒートポンプサイクル3においては、冷媒圧縮機8から吐出された冷媒が冷媒切替え手段11によりHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20の順に循環され、電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うことができる。
一方、ステップS51において、モータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上で「YES」と判断された場合は、ステップS53に移行する。ここでは、換気排熱回収器22が排熱利用か否かが判断される。これは、センサ44により検出された換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoと、センサ43により検出された冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcho>Tcnoか否かによって判断される。
この結果、TchoがTcno未満で「NO」と判断された場合は、ステップS54に移行し、更に電気ヒータ(PTC)24が利用か否かが以下の条件を満たしているか否かによって判断される。
(a)センサ42により検出された冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口温度Tcniと、予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係が、Tcni<Tcni1か否か。
(b)センサ46により検出された第2冷媒凝縮器7の空気側吐出温度Tasoと、予め設定されている第2冷媒凝縮器7の空気側必要吐出温度Taso1との関係が、Taso<Taso1か否か。
(c)センサ47により検出された第2冷媒凝縮器7の入り口冷媒圧力Prsiと、予め設定されている第2冷媒凝縮器7の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、Prsi<Prsi1か否か。
上記(a)ないし(c)が各々条件を満たさず「NO」と判断された場合は、ステップS55の暖房時4に移行し、図21に示されるように、電気ヒータ24はオフとされるとともに、第4電磁弁28および第6電磁弁31が開、第3電磁弁27および第5電磁弁29が閉とされ、クーラントサイクル4のクーラントは、モータ/バッテリ23のみに循環されその排熱により加熱される。同時にヒートポンプサイクル3では、冷媒圧縮機8から吐出された冷媒が冷媒切替え手段11を介してHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20の順に循環され、モータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うことができる。
また、上記ステップS54において、上記(a)ないし(c)が各々条件を満たし「YES」と判断された場合は、ステップS56の暖房時3に移行され、図20に示されるように、暖房時4の場合に加えて電気ヒータ24が通電状態とされる。これによって、クーラントサイクル4のクーラントが電気ヒータ24およびモータ/バッテリ23の双方により加熱されることになり、ヒートポンプサイクル3は、この電気ヒータ24およびモータ/バッテリ23により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うことができる。
さらに、上記ステップS53において、換気排熱回収器22のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上で「YES」と判断された場合は、ステップS57に移行し、電気ヒータ(PTC)24が利用か否かが上記と同様、(a)ないし(c)の条件を満たしているか否かによって判断される。この結果、上記のTcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1の条件が満たされず「NO」と判断された場合は、ステップS58の暖房時2に移行される。ここでは、図19に示されるように、電気ヒータ24はオフとされるとともに、第3電磁弁27および第4電磁弁28が開、第5電磁弁29および第6電磁弁31が閉とされ、クーラントサイクル4のクーラントは、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23に循環されその排熱によって加熱される。
同時に、ヒートポンプサイクル3においては、冷媒圧縮機8からの冷媒が冷媒切替え手段11を介してHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20の順に循環され、ヒートポンプサイクル3は、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源として上記と同様ヒートポンプ暖房運転を行うことができる。
上記ステップS57において、上記(a)ないし(c)の条件、すなわちTcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1の条件が満たされ「YES」と判断された場合は、ステップS59の暖房時1に移行され、図18に示されるように、暖房時2の場合に加えて電気ヒータ24が通電状態とされる。これによって、クーラントサイクル4のクーラントは、換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23および電気ヒータ24により加熱されることになり、ヒートポンプサイクル3は、換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23および電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源として上記と同様ヒートポンプ暖房運転を行うことができる。
以上のように、暖房制御時においては、モータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoが、冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合は、電気ヒータ24に通電してクーラントを加熱するとともに、ヒートポンプサイクル3によりHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7で凝縮された冷媒を第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20に流し、電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。このため、モータ/バッテリ23の排熱が利用できず、通常ではヒートポンプ暖房が困難な低外気温時(例えば、−10℃)や暖房立ち上がり時にも、電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源とすることにより、必要な暖房能力を確保して効率のよい暖房運転を行うことができる。
また、モータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上のときは、換気排熱回収器22のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断している。そして、TchoがTcno未満の場合は、更に冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口温度Tcniと予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係、第2冷媒凝縮器7の空気側吐出温度Tasoと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の空気側必要吐出温度Taso1との関係、および第2冷媒凝縮器7の入り口冷媒圧力Prsiと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、各々Tcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1か否かを判断し、各々が条件を満たしていない場合は、クーラントをモータ/バッテリ23の排熱により加熱するようにしている。
同時に、ヒートポンプサイクル3において、HVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7で凝縮された冷媒を第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20に流し、モータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。また、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合は、電気ヒータ24に通電してクーラントを電気ヒータ24およびモータ/バッテリ23の双方により加熱するとともに、ヒートポンプサイクル3により、このクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。
さらに、換気排熱回収器22のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上のときは、冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口温度Tcniと予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係、第2冷媒凝縮器7の空気側吐出温度Tasoと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の空気側必要吐出温度Taso1との関係、および第2冷媒凝縮器7の入り口冷媒圧力Prsiと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、各々Tcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1か否かを判断し、各々が条件を満たしていない場合は、クーラントを換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23の排熱により加熱するようにしている。
同時に、ヒートポンプサイクル3において、HVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7で凝縮された冷媒を第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20に流し、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。また、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合は、電気ヒータ24に通電してクーラントを換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23の排熱および電気ヒータ24により加熱し、このクーラントを熱源としてヒートポンプ暖房運転を行うようにしている。
このように、暖房制御時、モータ/バッテリ23の排熱が利用できる場合は、換気排熱器22が利用できるか否かを判断し、換気排熱器22が利用できる場合は、さらに電気ヒータ24の利用が必要か否かを判断し、本当に電気ヒータ24が必要な場合に限って電気ヒータ24に通電してクーラントを加熱するようにしている。このため、各々の状態において、必要な暖房能力を確保して効率のよい暖房運転を行うことができると同時に、電気ヒータ24の使用を可及的に抑制し、空調システム1側での消費電力を低減して車両の走行距離延長に貢献することができる。
[除湿暖房制御]
除湿暖房制御は、暖房制御とほぼ同様であり、図7に示されるように、まずステップS61において、モータ/バッテリ23が排熱利用か否かが判断される。これは、センサ41により検出されたモータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoと、センサ43により検出された冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcmo>Tcnoか否かによって判断される。
この結果、TcmiがTcmi1未満で「NO」と判断された場合は、ステップS62の除湿暖房時5に移行し、図27に示されるように、電気ヒータ24に通電され、第5電磁弁29が開、第3電磁弁27、第4電磁弁28および第6電磁弁31が閉とされる。これにより、クーラントサイクル4のクーラントは第1バイパス回路30に循環され電気ヒータ24により加熱される。同時にヒートポンプサイクル3においては、冷媒圧縮機8から吐出された冷媒が冷媒切替え手段11によりHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7に導かれ、ここで凝縮された後、第1膨張弁14およびHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して循環される。
これによって、HVACユニット2においては、ブロア5からの送風空気を冷媒蒸発器6で冷却除湿した後、冷媒凝縮器7で加熱することができ、この空気を車室内に吹出すことにより車室内を除湿暖房することができる。この間、ヒートポンプサイクル3は、電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うことができる。
一方、ステップS61において、モータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上で「YES」と判断された場合は、ステップS63に移行する。ここでは、換気排熱回収器22が排熱利用か否かが判断される。これは、センサ44により検出された換気排熱回収器のクーラント出口温度Tchoと、センサ43により検出された冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcnoとの関係が、Tcho>Tcnoか否かによって判断される。
この結果、TchoがTcno未満で「NO」と判断された場合は、ステップS64に移行し、更に電気ヒータ(PTC)24が利用か否かが上記した(a)ないし(c)の条件を満たしているか否かにより判断される。ここで、上記のTcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1が条件を満たさず「NO」と判断された場合には、ステップS65の除湿暖房時4に移行し、図26に示されるように、電気ヒータ24はオフとされるとともに、第4電磁弁28および第6電磁弁31が開、第3電磁弁27および第5電磁弁29が閉とされ、クーラントサイクル4のクーラントは、モータ/バッテリ23のみに循環されその排熱によって加熱される。
同時にヒートポンプサイクル3では、冷媒圧縮機8から吐出された冷媒が冷媒切替え手段11を介してHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7に導かれ、ここで凝縮された後、第1膨張弁14およびHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して循環される。これにより、HVACユニット2においては、ブロア5からの空気が冷媒蒸発器6で冷却除湿された後、冷媒凝縮器7で加熱されて車室内に吹出され、ヒートポンプサイクル3においては、モータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うことができる。
上記ステップS64において、上記(a)ないし(c)が各々条件を満たし「YES」と判断された場合は、ステップS66の除湿暖房時3に移行され、図25に示されるように、除湿暖房時4の場合に加えて電気ヒータ24が通電された状態とされる。これによって、クーラントサイクル4のクーラントは、モータ/バッテリ23および電気ヒータ24に循環されその双方により加熱されることになり、ヒートポンプサイクル3は、このモータ/バッテリ23および電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源として上記と同様ヒートポンプ暖房運転を行うことができる。
また、上記ステップS63において、換気排熱回収器22のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上で「YES」と判断された場合は、ステップS67に移行し、電気ヒータ(PTC)24が利用か否かが上記と同様、上記(a)ないし(c)の条件を満たしているか否かにより判断される。この結果、Tcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1の条件が満たされず「NO」と判断された場合、ステップS68の除湿暖房時2に移行される。ここでは、図24に示されるように、電気ヒータ24はオフとされるとともに、第3電磁弁27および第4電磁弁28が開、第5電磁弁29および第6電磁弁31が閉とされ、クーラントサイクル4のクーラントは、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23に循環されその排熱によって加熱される。
同時に、ヒートポンプサイクル3においては、冷媒圧縮機からの冷媒が冷媒切替え手段11、冷媒配管17を介してHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7に循環され、ここで凝縮された後、第1膨張弁14およびHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して循環され、ヒートポンプサイクル3は、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源として上記と同様ヒートポンプ除湿暖房運転を行うことができる。
さらに、上記ステップS67において、上記(a)ないし(c)の条件、すなわちTcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1の条件が満たされ「YES」と判断された場合は、ステップS69の除湿暖房時1に移行され、図23に示されるように、除湿暖房時2の場合に加えて電気ヒータ24が通電された状態とされる。これにより、クーラントサイクル4のクーラントは、換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23および電気ヒータ24により加熱されることになり、ヒートポンプサイクル3は、この換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23および電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源として上記と同様ヒートポンプ除湿暖房運転を行うことができる。
以上のように、除湿暖房制御時においては、モータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoが、冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断し、TcmoがTcno未満の場合は、電気ヒータ24に通電してクーラントを加熱するとともに、ヒートポンプサイクル3によりHVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7で凝縮された冷媒を第1膨張弁14およびHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して流し、電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。このため、モータ/バッテリ23の排熱が利用できず、通常ではヒートポンプ除湿暖房が困難な低外気温時(例えば、−10℃)や暖房立ち上がり時にも、電気ヒータ24により加熱されたクーラントを熱源とすることにより、必要な暖房能力を確保して効率のよい除湿暖房運転を行うことができる。
また、モータ/バッテリ23のクーラント出口温度Tcmoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上のときは、換気排熱回収器22のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上か否かを判断している。そして、TchoがTcno未満の場合は、更に冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口温度Tcniと予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係、第2冷媒凝縮器7の空気側吐出温度Tasoと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の空気側必要吐出温度Taso1との関係、第2冷媒凝縮器7の入り口冷媒圧力Prsiと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、それぞれTcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1か否かを判断し、各々が条件を満たしていない場合は、クーラントをモータ/バッテリ23の排熱により加熱するようにしている。
同時に、ヒートポンプサイクル3において、HVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7で凝縮された冷媒を第1膨張弁14およびHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して流し、モータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。また、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合は、電気ヒータ24に通電してクーラントをモータ/バッテリ23および電気ヒータ24の双方により加熱するとともに、ヒートポンプサイクル3により、このクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。
また、換気排熱回収器22のクーラント出口温度Tchoが冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント出口温度Tcno以上のときは、さらに冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口温度Tcniと予め設定されている冷媒/クーラント熱交換器20のクーラント入り口必要温度Tcni1との関係、第2冷媒凝縮器7の空気側吐出温度Tasoと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の空気側必要吐出温度Taso1との関係、第2冷媒凝縮器7の入り口冷媒圧力Prsiと予め設定されている第2冷媒凝縮器7の入り口必要冷媒圧力Prsi1との関係が、それぞれTcni<Tcni1、Taso<Taso1、Prsi<Prsi1か否かを判断し、各々が条件を満たしていない場合は、クーラントを換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23の排熱の双方により加熱するようにしている。
同時に、ヒートポンプサイクル3において、HVACユニット2に配設されている第2冷媒凝縮器7で凝縮された冷媒を第1膨張弁14およびHVACユニット2に配設されている冷媒蒸発器6と、第2膨張弁19および冷媒/クーラント熱交換器20とに並行して流し、換気排熱回収器22およびモータ/バッテリ23の排熱により加熱されたクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。また、クーラント入り口温度Tcni、空気側吐出温度Tasoおよび入り口冷媒圧力Prsiが各々の条件を満たしている場合は、電気ヒータ24に通電してクーラントを換気排熱回収器22、モータ/バッテリ23の排熱および電気ヒータ24により加熱し、このクーラントを熱源としてヒートポンプ除湿暖房運転を行うようにしている。
このように、除湿暖房制御時、モータ/バッテリ23の排熱が利用できる場合は、換気排熱器22が利用できるか否かを判断し、換気排熱器22が利用できる場合は、さらに電気ヒータ24の利用が必要か否かを判断し、本当に電気ヒータ24が必要な場合に限って電気ヒータ24に通電してクーラントを加熱するようにしている。このため、各々の状態において、必要な暖房能力を確保して効率のよい除湿暖房運転を行うことができると同時に、電気ヒータ24の使用を可及的に抑制し、空調システム1側での消費電力を低減して車両の走行距離延長に貢献することができる。
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、HVACユニット2は、冷媒蒸発器6の下流側に温調用のエアミックスダンパを備えた構成としてもよい。また、ヒートポンプサイクル3において、冷媒切替え手段11を構成する第1電磁弁9および第2電磁弁10は、三方切替え弁あるいは四方切替え弁等によって代替してもよい。さらに、クーラントサイクル4において、第4電磁弁28と第7電磁弁33、第3電磁弁27と第5電磁弁29および第6電磁弁31は、他の三方切替え弁や四方切替え弁等によって代替してもよい。