JP5296811B2 - クライオポンプ及び真空バルブ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、クライオポンプ、及びクライオポンプ等の真空装置に使用するために好適な真空バルブ装置に関する。
例えば特許文献1には、真空ポンプと真空チャンバとに連結され該真空チャンバ内の雰囲気を排気する排気路に介設され該排気路に開閉する真空バルブが記載されている。この真空バルブは真空ポンプにより真空チャンバを排気しているときは開放されている。一方、真空ポンプ停止時には真空チャンバにガスが逆流するのを防止するために真空バルブが閉鎖される。
特開2009−85241号公報
例えばクライオポンプに代表される気体溜め込み式の真空ポンプは、当該ポンプの内部に気体を凝縮または吸着することにより真空排気を行う。溜め込まれた気体は、一般に再生と呼ばれる処理によって、ある頻度でポンプの外部に排出される。再生処理中にはポンプ内部に溜め込まれた気体が再気化して内部の圧力が高まることがある。こうした高圧は通常、排出のための経路から適切に放出される。
過度の高圧が内部に生じるのを避けるために、通常の排出経路とは別に安全弁を設けることが要請されている。再生中だけではなく、ポンプの異常や故障に伴って圧が高まることもある。通常の内圧変動範囲を超える異常な高圧が作用したときに安全弁は開放される。つまり安全弁は、通常は閉鎖状態に保たれており動作しない構成部品である。そうした構成部品は、閉鎖状態でのリークの発生を防止する等の所望の品質を有することを前提として、なるべく低コストであることが好ましい。
本発明の目的の1つは、真空容器から過度の高圧を解放する機能を真空システムに低コストに実現することを可能とする真空バルブ、及びそうした真空バルブを備えるクライオポンプを提供することにある。
本発明のある態様のクライオポンプは、凝縮または吸着により気体を排気するためのクライオパネルと、前記クライオパネルを収容するためのクライオポンプ容器と、前記クライオポンプ容器の内部の圧力を測定する圧力センサと、前記クライオパネルに排気された気体を前記クライオポンプ容器の外部に排出するために前記クライオポンプ容器に設けられているベントバルブと、前記クライオポンプ容器の外部に対して内部に陽圧が生じたか否かを前記圧力センサの測定値に基づいて判定し、陽圧が生じたと判定した場合には前記ベントバルブを開放し、陽圧が生じていないと判定した場合には前記ベントバルブを閉鎖する制御部と、を備える。前記制御部が前記ベントバルブを閉鎖しているときに前記クライオポンプ容器内外の差圧の作用によって機械的に開弁され得るように前記ベントバルブの閉弁力が調整されている。
この態様によると、クライオポンプ容器の外部に対して内部に陽圧が生じた場合にはベントバルブを開放する制御によって内圧を外部に解放することができる。また、制御によって開放されない異常時においても差圧の作用によってベントバルブを機械的に開いて圧力を開放することができる。こうして制御バルブに安全弁の機能を組み込むことにより、それぞれの機能を個別の弁としてシステムに設ける場合に比べて低コスト化を実現することができる。
本発明の別の態様は、真空バルブ装置である。この装置は、真空容器の内部に生じた陽圧を外部に解放するための排気路に設けられる真空バルブ装置であって、前記真空容器の内部が真空であるときは前記排気路を閉鎖し、外部圧より高圧である基準値を前記真空容器内の測定圧が超えたときに前記排気路を開放するよう制御される常閉型の制御バルブを備える。前記制御バルブは、制御により開放されていないときであっても前記陽圧と外部圧との差圧の作用により機械的に開弁され得るように閉弁力が調整されている。
本発明によれば、真空容器から過度の高圧を解放する機能を真空システムに低コストに実現すること可能とする真空制御バルブ、及びそうした制御バルブを備えるクライオポンプを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るクライオポンプを模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る真空排気システムを模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るベントバルブを模式的に示す図である。
図1は、本発明の一実施形態に係るクライオポンプ10を模式的に示す図である。図2は、クライオポンプ10を含む真空排気システムを模式的に示す図である。クライオポンプ10は、例えばイオン注入装置やスパッタリング装置等の真空チャンバ112(図2参照)に取り付けられて、真空チャンバ112内部の真空度を所望のプロセスに要求されるレベルまで高めるために使用される。クライオポンプ10は、クライオポンプ容器30と、放射シールド40と、冷凍機50と、を含んで構成される。
冷凍機50は、例えばギフォード・マクマホン式冷凍機(いわゆるGM冷凍機)などの冷凍機である。冷凍機50は、第1シリンダ11、第2シリンダ12、第1冷却ステージ13、第2冷却ステージ14、バルブ駆動モータ16を備える。第1シリンダ11と第2シリンダ12は直列に接続される。第1シリンダ11の第2シリンダ12との結合部側には第1冷却ステージ13が設置され、第2シリンダ12の第1シリンダ11から遠い側の端には第2冷却ステージ14が設置される。図1に示す冷凍機50は、二段式の冷凍機であり、シリンダを直列に二段組み合わせてより低い温度を達成している。冷凍機50は冷媒管18を介して圧縮機52に接続される。
圧縮機52は、例えばヘリウム等の冷媒ガス、すなわち作動気体を圧縮して、冷媒管18を介して冷凍機50に供給する。冷凍機50は、作動気体を蓄冷器を通過させることにより冷却しつつ、まず第1シリンダ11の内部の膨張室で、次いで第2シリンダ12の内部の膨張室で膨張させてさらに冷却する。蓄冷器は膨張室内部に組み込まれている。これにより、第1シリンダ11に設置される第1冷却ステージ13は第1の冷却温度レベルに冷却され、第2シリンダ12に設置される第2冷却ステージ14は第1の冷却温度レベルよりも低温の第2の冷却温度レベルに冷却される。例えば、第1冷却ステージ13は65K〜100K程度に冷却され、第2冷却ステージ14は10K〜20K程度に冷却される。
膨張室で順次膨張することで吸熱し、各冷却ステージを冷却した作動気体は、再び蓄冷器を通過し、冷媒管18を経て圧縮機52に戻される。圧縮機52から冷凍機50へ、また冷凍機50から圧縮機52への作動気体の流れは、冷凍機50内のロータリバルブ(図示せず)により切り替えられる。バルブ駆動モータ16は、外部電源から電力の供給を受けて、ロータリバルブを回転させる。
冷凍機50を制御するための制御部20が設けられている。制御部20は、第1冷却ステージ13または第2冷却ステージ14の冷却温度に基づいて冷凍機50を制御する。そのために、第1冷却ステージ13または第2冷却ステージ14に温度センサ(図示せず)が設けられていてもよい。制御部20は、バルブ駆動モータ16の運転周波数を制御することにより冷却温度を制御してもよい。そのために制御部20は、バルブ駆動モータ16を制御するためのインバータを備えてもよい。制御部20は圧縮機52、及び後述する各バルブを制御するよう構成されていてもよい。制御部20はクライオポンプ10に一体に設けられていてもよいし、クライオポンプ10とは別体の制御装置として構成されていてもよい。
図1に示されるクライオポンプ10は、いわゆる横型のクライオポンプである。横型のクライオポンプとは一般に、冷凍機の第2冷却ステージ14が筒状の放射シールド40の軸方向に交差する方向(通常は直交方向)に沿って放射シールド40の内部に挿入されているクライオポンプである。なお、本発明はいわゆる縦型のクライオポンプにも同様に適用することができる。縦型のクライオポンプとは、放射シールドの軸方向に沿って冷凍機が挿入されているクライオポンプである。
クライオポンプ容器30は、一端に開口を有し他端が閉塞されている円筒状の形状に形成された部位(以下、「胴部」と呼ぶ)32を有する。開口は、スパッタ装置等の真空チャンバ112(図2参照)から排気されるべき気体が進入する吸気口34として、設けられている。吸気口34はクライオポンプ容器30の胴部32の上端部内面により画定される。また胴部32には吸気口34としての開口とは別に、冷凍機50を挿通するための開口37が形成されている。胴部32の開口37には円筒状の冷凍機収容部38の一端が取り付けられ、他端は冷凍機50のハウジングに取り付けられている。冷凍機収容部38は冷凍機50の第1シリンダ11を収容する。
またクライオポンプ容器30の胴部32の上端には径方向外側に向けて取付フランジ36が延びている。クライオポンプ10は、排気対象容積であるスパッタ装置等の真空チャンバ112(図2参照)に、取付フランジ36を用いて取り付けられる。
クライオポンプ容器30は、クライオポンプ10の内部と外部とを隔てるために設けられている。上述のようにクライオポンプ容器30は胴部32と冷凍機収容部38とを含んで構成されており、胴部32及び冷凍機収容部38の内部は共通の圧力に気密に保持される。これによりクライオポンプ容器30は、クライオポンプ10の排気運転中は真空容器として機能する。クライオポンプ容器30の外面は、クライオポンプ10の動作中、すなわち冷凍機が作動している間も、クライオポンプ10の外部の環境にさらされるため、放射シールド40よりも高い温度に維持される。典型的にはクライオポンプ容器30の温度は環境温度に維持される。ここで環境温度とは、クライオポンプ10が設置されている場所の温度、またはその温度に近い温度をいい、例えば室温程度である。
また、クライオポンプ容器30の冷凍機収容部38の内部に圧力センサ54が設けられている。圧力センサ54は、冷凍機収容部38の内部圧力すなわちクライオポンプ容器30の圧力を周期的に測定し、測定圧力を示す信号を制御部20に出力する。圧力センサ54はその出力を通信可能に制御部20に接続されている。なお圧力センサ54はクライオポンプ容器30の胴部32に設けられてもよい。
圧力センサ54は、クライオポンプ10により実現される高い真空レベルと大気圧レベルの両方を含む広い計測範囲を有する。少なくとも再生処理中に生じ得る圧力範囲を計測範囲に含むことが望ましい。圧力センサ54として、本実施形態では例えばクリスタルゲージを使用することが好ましい。クリスタルゲージとは、水晶振動子の振動抵抗が圧力によって変化する現象を利用して圧力を測定するセンサである。あるいは圧力センサ54はピラニー真空計であってもよい。なお、真空レベルの測定用の圧力センサと、大気圧レベルの測定用の圧力センサとが、個別にクライオポンプ10に設けられていてもよい。
クライオポンプ容器30には、ベントバルブ70、ラフバルブ72、及びパージバルブ74が接続されている。ベントバルブ70、ラフバルブ72、及びパージバルブ74はそれぞれ制御部20により開閉が制御される。
ベントバルブ70は、排出ライン80の例えば末端に設けられている。あるいはベントバルブ70は排出ライン80の中途に設けられ末端には放出された流体を回収するためのタンク等が設けられていてもよい。またはベントバルブ70はクライオポンプ10が接続される真空チャンバ112(図2参照)に付随する排気系統に接続されていてもよい。
ベントバルブ70が開弁されることにより排出ライン80の流れが許容され、ベントバルブ70が閉弁されることにより排出ライン80の流れが遮断される。排出される流体は基本的にはガスであるが、液体または気液の混合物であってもよい。例えばクライオポンプ10に凝縮されたガスの液化物が排出流体に混在していてもよい。ベントバルブ70が開弁されることにより、クライオポンプ容器30の内部に生じた陽圧を外部に解放することができる。
排出ライン80は、クライオポンプ10の内部空間から外部環境へと流体を排出するための排出ダクト82を含む。排出ダクト82は例えばクライオポンプ容器30の冷凍機収容部38に接続されている。排出ダクト82は流れ方向に直交する断面が円形のダクトであるが、その他のいかなる断面形状を有してもよい。排出ライン80は、排出ダクト82を排出される流体から異物を除去するためのフィルタを含んでもよい。このフィルタは、排出ライン80においてベントバルブ70の上流に設けられていてもよい。
ベントバルブ70は、いわゆる安全弁としても機能するよう構成されている。ベントバルブ70は、排出ダクト82に設けられている例えば常閉型の制御弁である。ベントバルブ70は更に、所定の差圧が作用したときに機械的に開弁されるよう閉弁力が予め設定されている。この設定差圧は例えば、クライオポンプ容器30に作用し得る内圧やポンプ容器30の構造的な耐久性等を考慮して適宜設定することができる。クライオポンプ10の外部環境は通常大気圧であるから、設定差圧は大気圧を基準として所定の値に設定される。ベントバルブ70の閉弁力の設定については、図3を参照して後述する。
ベントバルブ70は通常、例えば再生中などのようにクライオポンプ10から流体を放出するときに制御部20によって開弁される。放出すべきでないときは制御部20によってベントバルブ70は閉弁される。一方、ベントバルブ70は、設定差圧が作用したときに機械的に開弁される。このため、クライオポンプ内部が何らかの理由で高圧となったときに制御を要することなくベントバルブ70は機械的に開弁される。それにより内部の高圧を逃がすことができる。こうしてベントバルブ70は安全弁として機能する。このようにベントバルブ70を安全弁と兼用することにより、2つの弁をそれぞれ設ける場合に比べてコストダウンや省スペース化という利点を得られる。
ラフバルブ72は、粗引きポンプ73に接続される。ラフバルブ72の開閉により、粗引きポンプ73とクライオポンプ10とが連通または遮断される。粗引きポンプ73は典型的にはクライオポンプ10とは別の真空装置として設けられ、例えばクライオポンプ10が接続される真空チャンバ112を含む真空システムの一部を構成する。パージバルブ74は図示しないパージガス供給装置に接続される。パージガスは例えば窒素ガスである。制御部20がパージバルブ74を制御することにより、パージガスのクライオポンプ10への供給が制御される。
放射シールド40は、クライオポンプ容器30の内部に配設されている。放射シールド40は、一端に開口を有し他端が閉塞されている円筒状の形状、すなわちカップ状の形状に形成されている。放射シールド40は、図1に示されるような一体の筒状に構成されていてもよく、また、複数のパーツにより全体として筒状の形状をなすように構成されていてもよい。これら複数のパーツは互いに間隙を有して配設されていてもよい。
クライオポンプ容器30の胴部32及び放射シールド40はともに略円筒状に形成されており、同軸に配設されている。クライオポンプ容器30の胴部32の内径が放射シールド40の外径を若干上回っており、放射シールド40はクライオポンプ容器30の胴部32の内面との間に若干の間隔をもってクライオポンプ容器30とは非接触の状態で配置される。すなわち、放射シールド40の外面は、クライオポンプ容器30の内面と対向している。なお、クライオポンプ容器30の胴部32および放射シールド40の形状は、円筒形状には限られず、角筒形状や楕円筒形状などいかなる断面の筒形状でもよい。典型的には、放射シールド40の形状はクライオポンプ容器30の胴部32の内面形状に相似する形状とされる。
放射シールド40は、第2冷却ステージ14およびこれに熱的に接続される低温クライオパネル60を主にクライオポンプ容器30からの輻射熱から保護する放射シールドとして設けられている。第2冷却ステージ14は、放射シールド40の内部において放射シールド40のほぼ中心軸上に配置される。放射シールド40は、第1冷却ステージ13に熱的に接続された状態で固定され、第1冷却ステージ13と同程度の温度に冷却される。
低温クライオパネル60は、例えば複数のパネル64を含む。パネル64は例えば、それぞれが円すい台の側面の形状、いわば傘状の形状を有する。各パネル64は、第2冷却ステージ14に取り付けられているパネル取付部材66に取り付けられている。各パネル64には通常活性炭等の吸着剤(図示せず)が設けられている。吸着剤は例えばパネル64の裏面に接着されている。
パネル取付部材66は一端が閉塞され他端が開放されている円筒状の形状を有し、閉塞された端部が第2冷却ステージ14の上端に取り付けられて円筒状側面が第2冷却ステージ14を取り囲むように放射シールド40の底部に向けて延びている。パネル取付部材66の円筒状側面に複数のパネル64が互いに間隔をあけて取り付けられている。パネル取付部材66の円筒状側面には、冷凍機50の第2シリンダ12を通すための開口が形成されている。
放射シールド40の吸気口には、真空チャンバ112等からの輻射熱から第2冷却ステージ14およびこれに熱的に接続される低温クライオパネル60を保護するために、バッフル62が設けられている。バッフル62は、例えば、ルーバ構造やシェブロン構造に形成される。バッフル62は、放射シールド40の中心軸を中心とする同心円状に形成されていてもよいし、あるいは格子状等他の形状に形成されていてもよい。バッフル62は放射シールド40の開口側の端部に取り付けられており、放射シールド40と同程度の温度に冷却される。
放射シールド40の側面には冷凍機取付孔42が形成されている。冷凍機取付孔42は、放射シールド40の中心軸方向に関して放射シールド40側面の中央部に形成されている。放射シールド40の冷凍機取付孔42はクライオポンプ容器30の開口37と同軸に設けられている。冷凍機50の第2シリンダ12及び第2冷却ステージ14は冷凍機取付孔42から放射シールド40の中心軸方向に垂直な方向に沿って挿入されている。放射シールド40は、冷凍機取付孔42において第1冷却ステージ13に熱的に接続された状態で固定される。
なお放射シールド40が第1冷却ステージ13に直接取り付けられる代わりに、接続用のスリーブによって放射シールド40が第1冷却ステージ13に取り付けられてもよい。このスリーブは例えば、第2シリンダ12の第1冷却ステージ13側の端部を包囲し、放射シールド40を第1冷却ステージ13に熱的に接続するための伝熱部材である。
図2に示されるように、バッフル62と真空チャンバ112との間にはゲートバルブ110が設けられていてもよい。このゲートバルブ110は例えばクライオポンプ10を再生するときに閉とされ、クライオポンプ10により真空チャンバを排気するときに開とされる。ゲートバルブ110が開かれているときは真空チャンバ112とクライオポンプ容器30とが1つの真空容器を構成し、ゲートバルブ110が閉じられているときはクライオポンプ容器30は真空チャンバ112とは別個の真空容器を構成する。
図3は、本発明の一実施形態に係るベントバルブ70を模式的に示す図である。ベントバルブ70は、図3に示す閉鎖状態においては真空ポート84から排気ポート86への流通を遮断する。一方、開放状態においてはベントバルブ70は、真空ポート84から排気ポート86への排出流れを許容する。この排出流れを図3に矢印Aで示す。なお破線にて開放状態での弁体の位置を示す。ベントバルブ70は図3に示す排出流れAと逆向きの流れも可能であるが、ベントバルブ70をクライオポンプ10に適用した一実施例においては排出流れAのみを許容するようベントバルブ70は動作する。
ベントバルブ70はバルブ筐体88によって外部から仕切られている弁室90及びピストン室92を含んで構成される。弁室90とピストン室92とは隣接しており仕切板94で仕切られている。仕切板94は真空ポート84に対向する弁室90の内壁である。弁室90には2つの開口が設けられており、一方の開口が上述の真空ポート84であり、他方の開口が排気ポート86である。
真空ポート84から弁室90に流入した排出流れAは弁室90の内部で垂直方向に折り曲げられて排気ポート86から流出する。真空ポート84は排出ダクト82(図1参照)を通じてクライオポンプ容器30に接続される。排気ポート86は排出流れAを外部に導くための配管に接続されてもよいし、あるいは外部環境に直接開放されてもよい。
弁室90にはベントバルブ70の弁体としてのバルブプレート96が収容されている。バルブプレート96の外周部が真空ポート84の周囲部分98に押し当てられるように、バルブプレート96の外形寸法は真空ポート84の開口寸法よりも大きくなっている。例えば、バルブプレート96及び真空ポート84はともに同心の円形であり、バルブプレート96のほうが真空ポート84よりも径が大きくなっている。バルブプレート96の外周部が真空ポート84の周囲部分98に押し当てられる領域(例えば環状領域)がシール面100として機能する。シール面100にはシールのためのOリング(図示せず)が設けられている。このOリングは例えばシール面100内でバルブプレート96に形成された溝部に収容されている。
ピストン室92には、ベントバルブ70のバルブ駆動機構の一部であるピストン102が収容されている。ピストン102はその外側面がピストン室92の内壁に摺動可能に支持されている。ピストン室92はピストン102によって二室に区切られている。ピストン102はバルブプレート96と連結軸104で連結されている。連結軸104は、バルブプレート96のシール面100とは逆向きの面の中心部から垂直に延びてピストン102に固定されている棒状の部材である。連結軸104は仕切板94を貫通しており、その貫通孔において軸方向に移動可能に例えば軸受け(図示せず)により支持されている。よって、ピストン102はピストン室92の内壁に沿って連結軸104の軸方向に摺動可能である。連結軸104で固定されていることにより、バルブプレート96はピストン102と一体に軸方向に移動可能である。
バルブ駆動機構は例えば圧空式の駆動機構である。すなわちピストン室92に圧縮空気が供給されることによりピストン102は駆動される。バルブ駆動機構はピストン室92への圧縮空気の供給及び供給停止を切り換えるための電磁弁を含んでもよい。ピストン102で区切られたピストン室92の一方の室には圧縮空気供給口及び排出口が設けられており、これら供給口及び排出口は上記の電磁弁を含む圧縮空気供給系に接続されている。制御部20は電磁弁の開閉を制御する。電磁弁が開放されるとピストン室92に圧縮空気が供給されピストン102が初期位置から移動される。電磁弁が閉鎖されるとピストン室92から圧縮空気は放出され後述のスプリング106の作用によりピストン102は初期位置へと戻される。
なおバルブ駆動機構はその他の任意の駆動機構であってもよい。例えばピストン102をソレノイドの電磁吸引力で直接駆動するいわゆる直動式であってもよいし、あるいは、弁体をリニアモータやステッピングモータ等の適宜のモータで駆動する方式であってもよい。
ベントバルブ70はスプリング106を含む閉弁機構を備える。スプリング106は、バルブプレート96の外周部を真空ポート84の周囲部分98に押し当ててシール面100にシール圧力を作用させるために設けられている。スプリング106は、真空ポート84から流入する排出流れAとは逆向きにバルブプレート96を付勢する。スプリング106は、バルブプレート96のシール面100とは逆向きの面に一端が取り付けられ、他端が仕切板94に取り付けられて、連結軸104に沿って設けられている。こうしてベントバルブ70は常閉型の制御弁として構成されている。
スプリング106は、所定の圧縮力の取付荷重で取り付けられており、この取付荷重がベントバルブ70の閉弁力を定める。つまり、差圧によってバルブプレート96に作用する差圧力がスプリング取付荷重すなわち閉弁力を超えたときに、バルブプレート96は差圧力によっていくらか移動されてベントバルブ70が開く。この機械的な開弁によって、真空ポート84から排気ポート86への流れが許容される。通常の真空チャンバ112(図2参照)の使用状態においては真空側のほうが排気側よりも低圧である。スプリング106はバルブプレート96を真空ポート84へと付勢するから、ベントバルブ70が機械的に開かれることはない。真空ポート84側が排気ポート86側よりも高圧という例外的な状況でベントバルブ70は機械的に開弁され得る。
なおベントバルブ70の閉弁機構はスプリング式には限られない。例えば磁力による閉弁機構であってもよい。バルブプレート96と真空ポート84の周囲部分98とを磁力の吸引力によって固定することにより所望の閉弁力を与えるようにしてもよい。この場合、バルブプレート96と真空ポート84の周囲部分98との少なくとも一方に、両者間に吸引力を作用させるための磁石が設けられる。あるいは、静電吸着による閉弁機構またはその他の適切な閉弁機構であってもよい。
ベントバルブ70は、圧力センサ54の測定結果に基づいて制御部20により制御される制御弁である。制御部20は、圧力センサ54により測定されたクライオポンプ容器30の内圧が基準値を超えたか否かを判定する。基準値を超えたと判定した場合には、制御部20はバルブ駆動機構によってベントバルブ70を開弁する。すなわち、制御部20は、ピストン102及びバルブプレート96を閉弁状態の位置(以下、これを閉鎖位置または初期位置と呼ぶことがある。)から開放状態の位置(以下、これを開放位置と呼ぶことがある。)へと移動する。図3においては閉鎖位置を実線で示し、開放位置を破線で示す。
一方、圧力センサ54により測定されたクライオポンプ容器30の内圧が基準値に達していないと判定した場合には、制御部20は、ピストン102及びバルブプレート96を閉鎖位置に維持する。この場合、制御部20がバルブ駆動機構を作動しないことにより、ピストン102及びバルブプレート96はスプリング106の閉弁力によって閉鎖位置に保たれる。
ベントバルブ70の開閉制御のための圧力基準値は、クライオポンプ10の外部環境の圧力に設定される。あるいは、ベントバルブ70を開弁したときの外部からポンプ内部への逆流を確実に防止することを重視する場合には、圧力基準値は、外部環境の圧力よりも若干高く設定される。すなわち、制御部20は、クライオポンプ容器30の外部に対して内部に陽圧が生じたか否かを圧力センサ54の測定値に基づいて判定し、陽圧が生じたと判定した場合にはベントバルブ70を開放し、陽圧が生じていないと判定した場合にはベントバルブ70を閉鎖する。このようにして、クライオポンプ10の内部が例えば再生中に外部に対し高圧となったときにベントバルブ70が制御によって開放され、内圧を外部に解放することができる。
外部環境の圧力は典型的には大気圧であるから、ベントバルブ70の開閉制御のための圧力基準値は大気圧またはそれよりも若干高圧(例えばゲージ圧で0.1気圧以内の大きさ)に設定される。
制御弁は通常、想定の使用環境において、制御により開放(または閉鎖)しているときは開放状態(または閉鎖状態)が確実に維持されるよう構成されている。常閉型の制御弁であれば、閉鎖状態において弁に作用すると想定される差圧範囲において勝手に開弁してしまうことのないように閉弁力が想定最大差圧よりも大きくされている。
ところが本実施例のベントバルブ70は、想定される圧力範囲内で機械的に開弁し得るように閉弁力が調整されている点を1つの特徴としている。制御部20がベントバルブ70を閉鎖しているときにクライオポンプ容器30の内部に生じた陽圧と外部圧との差圧の作用によって機械的に開弁されるようにベントバルブ70の閉弁力が調整されている。具体的には、ベントバルブ70は、クライオポンプ10の正常運転時に想定される差圧を超える設定差圧で機械的に開弁されるよう閉弁力が調整されている。ここでの正常運転にはクライオポンプ10の排気運転と再生運転の両方が含まれる。ベントバルブ70は例えば、ベントバルブ70自体の制御系統に異常が生じた場合や、何らかの要因によってクライオポンプ容器30の内部が過度に昇圧した場合に機械的に開弁される。
ベントバルブ70は、予め定められたクライオポンプ容器30の上限内圧と大気圧との間に設定された設定圧にクライオポンプ容器30の内圧が達したときに機械的に開弁されるよう調整されている。制御中の機械的開弁を防ぐためには、この設定圧は上述の判定基準圧よりも高いことが好ましい。設定圧は、1気圧乃至2気圧の範囲、好ましくは1気圧乃至1.5気圧の範囲、より好ましくは1.2気圧から1.3気圧の範囲から選択された圧力である。ゲージ圧で言えば、ベントバルブ70は設計上、1気圧以内の、好ましくは0.5気圧以内の、より好ましくは0.2乃至0.3気圧の差圧が作用したときに機械的に開弁されるよう閉弁力が調整されている。このようにすれば、クライオポンプ容器30の耐圧、またはクライオポンプ10によって排気される真空チャンバ112との間に設置されるゲートバルブ110の耐圧にクライオポンプ内圧が到達する前に、ベントバルブ70を通じて機械的に内圧を外部に解放することができる。
制御部20によるベントバルブ70の弁体の開閉ストロークDは、差圧の作用による機械的開弁における弁体移動量よりも大きくされている。すなわち、上述の設定圧が作用したときの定常状態におけるバルブプレート96の移動量よりもバルブ駆動機構による開閉ストロークDのほうが大きくなるようベントバルブ70は構成されている。制御による開閉は比較的大きなストロークでバルブプレート96を移動するようバルブ駆動機構は構成されている。このようにすれば、排出流れAに含まれる異物粒子をベントバルブ70の通常制御の開閉時に噛み込むリスクを、開閉ストロークが微小である場合に比べて小さくすることができる。よって、ベントバルブ70のシール性を良好に維持することができる。
上記の構成のクライオポンプ10による動作を以下に説明する。クライオポンプ10の作動に際しては、まずその作動前にラフバルブ72を通じて粗引きポンプ73でクライオポンプ容器30の内部を1Pa程度にまで粗引きする。圧力は圧力センサ54により測定される。その後クライオポンプ10を作動させる。制御部20による制御のもとで、冷凍機50の駆動により第1冷却ステージ13及び第2冷却ステージ14が冷却され、これらに熱的に接続されている放射シールド40、バッフル62、クライオパネル60も冷却される。
冷却されたバッフル62は、真空チャンバからクライオポンプ10内部へ向かって飛来する気体分子を冷却し、その冷却温度で蒸気圧が充分に低くなる気体(例えば水分など)を表面に凝縮させて排気する。バッフル62の冷却温度では蒸気圧が充分に低くならない気体はバッフル62を通過して放射シールド40内部へと進入する。進入した気体分子のうちクライオパネル60の冷却温度で蒸気圧が充分に低くなる気体は、クライオパネル60の表面に凝縮されて排気される。その冷却温度でも蒸気圧が充分に低くならない気体(例えば水素など)は、クライオパネル60の表面に接着され冷却されている吸着剤により吸着されて排気される。このようにしてクライオポンプ10は真空チャンバ112の真空度を所望のレベルに到達させることができる。
図1に示されるクライオポンプ10は、排気処理と再生処理とを交互に繰り返す。排気処理においては、ゲートバルブ110を開放し真空チャンバ112を排気して真空度を所望のレベルへと高める。排気処理が継続されることによりクライオパネル60には捕捉された気体が蓄積されていく。よって、蓄積した氷または吸着した気体分子を外部に排出するために、所定の再生開始条件が成立したとき、例えば排気処理が開始されてから所定時間が経過したときにクライオポンプ10の再生が行われる。再生処理は通常、ゲートバルブ110を閉弁してクライオポンプ10を真空チャンバ112から分離して行う。
例えばパージバルブ74を通じてパージガスを導入することにより排気処理中のクライオパネル温度よりも高温である再生温度に昇温し、表面に捕捉された気体を再気化する。そのため、クライオポンプ容器30の内部は外部の大気圧よりもいくらか高くなりやすい。こうした陽圧を利用して外部に気体を排出することが、粗引きポンプ73等の真空系統に常に依存するよりも合理的である。
そこで、制御部20は、クライオポンプ容器の外部に対して内部に陽圧が生じたか否かを圧力センサ54の測定値に基づいて判定し、陽圧が生じたと判定した場合にはベントバルブ70を開放する。これにより排出ライン80を通じてクライオポンプ10内部の高圧を外部に解放することができる。制御部20は、陽圧が生じていないと判定した場合にはベントバルブ70を閉鎖する。こうして、容器内が減圧されているときは容器内へのリークをシールする。
再生処理で排出されるべき気体の大半がベントバルブ70を通じて排出されると、クライオポンプ10の内圧は大気圧レベルに低下し、ベントバルブ70からの排出量は減少する。制御部20は、ベントバルブ70を閉じ、ラフバルブ72を通じた粗引きに切り換える。十分に減圧されたら、制御部20による制御のもとで冷凍機50によりクライオパネル60が冷却され、上記と同様にして排気運転が再開される。
一実施例においては、制御部20は、再生処理においてラフバルブ72を開くと同時にベントバルブ70を閉じる。あるいは制御部20は、ラフバルブ72を開く直前にベントバルブ70を閉じるようにしてもよい。つまり制御部20はベントバルブ70への閉弁指令、ラフバルブ72への開弁指令の順序で両バルブを制御してもよい。このようにすれば、再生処理の終盤でラフバルブ72を開いたときのベントバルブ70を通じた外部からの逆流を確実に防止することができる。
本実施例によれば、ベントバルブ70は安全弁としても機能する。クライオポンプ10に高圧が生じたときには外部との差圧によってベントバルブ70は機械的に開弁される。このようにして、通常時にはベントバルブ70の開閉制御によって、更に異常時には安全弁としての機械的開弁によって、クライオポンプ10の内圧を外部に解放することができる。排気のための制御弁と安全弁とをそれぞれクライオポンプに設ける場合に比べて、低コストに安全弁をクライオポンプ10に組み込むことが可能となる。また、ベントバルブ70の開閉ストロークが機械的開弁による弁体移動量よりも大きくなるようベントバルブ70は構成されている。こうして十分な開度をとることにより、ベントバルブ70の制御開閉時の異物の噛み込みや詰まりを抑制することができる。
なお上述の実施例では、本発明の一実施形態に係る制御バルブをクライオポンプ10に適用した例を説明したが、制御バルブの適用対象はクライオポンプ10には限られず、クライオポンプ以外の気体溜め込み式真空ポンプを含むその他の真空装置に適用することも可能である。
よって、本発明の一実施形態に係る制御バルブは、真空容器の内部に生じた陽圧を外部に解放するための排気路に設けられる真空バルブ装置であってもよい。この制御バルブは、真空容器の内部が真空であるときは排気路を閉鎖し、真空容器の内部の測定圧が外部圧より大きい基準値を超えたときに排気路を開放するよう制御される常閉型の制御バルブであってもよい。制御バルブは、制御により開放されていないときであっても真空容器内の陽圧と外部圧との差圧の作用により機械的に開弁されるように閉弁力が調整されていてもよい。すなわち制御バルブは、閉鎖されているときに真空容器内の陽圧と外部圧との差圧の作用により機械的に開弁され得るよう閉弁力が調整されている。
この場合、制御バルブは、予め定められた真空容器の上限内圧と大気圧との間に設定された設定圧に真空容器の内圧が達したときに機械的に開弁されるよう調整されていてもよい。また、制御による制御バルブの弁体の開閉ストロークは、差圧の作用による機械的開弁における弁体移動量よりも大きくなるよう構成されていてもよい。
10 クライオポンプ、 11 第1シリンダ、 12 第2シリンダ、 13 第1冷却ステージ、 14 第2冷却ステージ、 20 制御部、 30 クライオポンプ容器、 40 放射シールド、 43 冷凍機挿通孔、 50 冷凍機、 60 低温クライオパネル、 70 ベントバルブ、 72 ラフバルブ、 80 排出ライン、 82 排出ダクト、 96 バルブプレート、 106 スプリング、 110 ゲートバルブ、 112 真空チャンバ。

Claims (6)

  1. 凝縮または吸着により気体を排気するためのクライオパネルと、
    前記クライオパネルを収容するためのクライオポンプ容器と、
    前記クライオポンプ容器の内部の圧力を測定する圧力センサと、
    前記クライオパネルに排気された気体を前記クライオポンプ容器の外部に排出するために前記クライオポンプ容器に設けられているベントバルブと、
    前記クライオポンプ容器の外部に対して内部に陽圧が生じたか否かを前記圧力センサの測定値に基づいて判定し、陽圧が生じたと判定した場合には前記ベントバルブを開放し、陽圧が生じていないと判定した場合には前記ベントバルブを閉鎖する制御部と、を備え、
    前記制御部が前記ベントバルブを閉鎖しているときに前記クライオポンプ容器内外の差圧の作用によって機械的に開弁され得るように前記ベントバルブの閉弁力が調整されていることを特徴とするクライオポンプ。
  2. 前記ベントバルブは、予め定められた前記クライオポンプ容器の上限内圧と大気圧との間に設定された設定圧に前記クライオポンプ容器の内圧が達したときに機械的に開弁されるよう調整されていることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
  3. 前記設定圧は1気圧乃至1.5気圧の範囲から選択された圧力であることを特徴とする請求項2に記載のクライオポンプ。
  4. 前記制御部による前記ベントバルブの弁体の開閉ストロークを、前記差圧の作用による機械的開弁における弁体移動量よりも大きくしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクライオポンプ。
  5. 前記クライオポンプ容器を粗引きポンプに接続するための経路に設けられているラフバルブをさらに備え、
    前記制御部は、クライオポンプの再生処理において前記ラフバルブを開くと同時に前記ベントバルブを閉じることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクライオポンプ。
  6. 真空容器の内部に生じた陽圧を外部に解放するための排気路に設けられる真空バルブ装置であって、
    前記真空容器の内部が真空であるときは前記排気路を閉鎖し、外部圧より高圧である基準値を前記真空容器内の測定圧が超えたときに前記排気路を開放するよう制御される常閉型の制御バルブを備え、
    前記制御バルブは、制御により開放されていないときであっても前記陽圧と外部圧との差圧の作用により機械的に開弁され得るように閉弁力が調整されていることを特徴とする真空バルブ装置。
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